異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定(1) : 量的分析を中心に
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定⑴ ― 量的分析を中心に ―. 幸坂健太郎・大谷 周子*・柚木 朋也**・川邊 淳子***・佐々木貴子****・ 西原 千博*****・和田 恵治******・平岡 俊一*******・古川 雄嗣********・ 前上里 直*********・宮前 耕史**********・長根 智洋*********** 北海道教育大学札幌校 国語科教育研究室 *. 北海道教育大学札幌校 非常勤講師. **. 北海道教育大学札幌校 理科教育研究室. ***. 北海道教育大学旭川校 家庭科教育研究室. ****. 北海道教育大学札幌校 家庭科教育研究室. *****. 北海道教育大学札幌校 近代文学研究室. ****** *******. 北海道教育大学旭川校 地学研究室. 北海道教育大学釧路校 地域社会と環境研究室. ******** *********. 北海道教育大学札幌校 学校保健研究室. ********** ***********. 北海道教育大学旭川校 教育学研究室. 北海道教育大学釧路校 地域文化研究室. 北海道教育大学釧路校 理科教育研究室 . An Assessment of Educational Effect of “Ikiru” that is a cultural subject utilizing a variety of perspectives of academic fields ― quantitative analysis ―. KOSAKA Kentaro, OTANI Shuko*, YUNOKI Tomoya**, KAWABE Junko***, SASAKI Takako****, NISHIHARA Chihiro*****, WADA Keiji******, HIRAOKA Shunichi*******, FURUKAWA Yuji********, MAEUEZATO Naoshi*********, MIYAMAE Yasufumi********** and NAGANE Tomohiro*********** Department of Japanese Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education *Outside Lecturer, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education **. Department of Science Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. ***. Department of Home Economics Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education. ****. Department of Home Economics Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education *****. Department of Modern Literature, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. ******. Department of Earth Science, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education. 223.
(3) 幸坂健太郎・大谷 周子・柚木 朋也・川邊 淳子・佐々木貴子・西原 千博・和田 恵治・平岡 俊一・古川 雄嗣・前上里 直・宮前 耕史・長根 智洋 *******. Department of Regional Society and Environment, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education ******** ********* ********** ***********. Department of Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education. Department of School Health, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. Department of Regional Culture, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. Department of Science Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,北海道教育大学で2016年度より開講されている教科横断型教養科目「生きる」 の教育効果について,特に量的な分析を行ったものである。「生きる」は,本学の全学連携科 目のモデルの一つとしての役割が期待されており,今後も継続して開講していくため,その教 育効果の測定が求められる。本研究では,「生きる」のルーブリックと事前・事後アンケート を開発し,2016年度「生きる」の受講生を対象にアンケート調査を実施した。 その結果,「生きる」を通して,受講生がよりよく生きる方法に対する興味や,自分自身へ の満足度を高めたこと,また,さまざまな観点から自分のこれまでの生き方を振り返られたこ となどが明らかになった。一方,講義後も受講生がこれからの自分の生き方については考えを 持てていないことなどが見受けられ,今後の課題(改善点)が明らかになった。. 1.はじめに. 会を設置し,2016年度より教科横断型教養科目 「生きる」(以下,「生きる」)を実施することに. 1−1.研究の背景. した。本科目は, “生きること”をコアとしてテー. ⑴ 教科横断型教養科目「生きる」とは. マに据え,教員養成課程を有する本学の3つの. 北海道教育大学(以下,本学)は,札幌校・旭. キャンパスに所属するさまざまな専門領域の教員. 川校・釧路校の3つの教員養成課程を有し,その. が担当する,キャンパス間の双方向的な教養科目. それぞれが教員養成に取り組んでいる。しかし,. である。受講生も,札幌校・旭川校・釧路校3キャ. キャンパスを横断した全学的な教育体制を整える. ンパスから受け入れ,それぞれのキャンパスを双. 必要性もこれまで求められてきた。そのため,平. 方向遠隔授業システムによって中継しながら講義. 成18(2006)年度の教員養成課程改組の際には,. を進める。このようにして実施される「生きる」. キャンパスを越えた全学連携科目も新設された。. の意義は,次の通りである。. しかし, この科目は形骸化してしまった。それは,. ・教職に就いた際,教師として,一人の人間とし. それぞれのキャンパスが独自の特色を持っている. て,児童・生徒,あるいは保護者等とどう向き. が,その特色の把握やすり合わせが不十分なまま. 合うのか,自己の生き方について見つめ直す機. に, 科目を開設したことが要因として挙げられる。. 会を学生に提供することができる。. いかにしてそれぞれのキャンパスの特色を活かし. ・本学の3つのキャンパスに所属する異領域の研. ながら,全学的な連携科目を構想し,実施してい. 究者が講義を担当することで,一元的には捉え. くかという点に,他の教育大学にはみられない本. ることが困難な「生き方」というテーマに多角. 学ならではの課題がある。. 的なアプローチで接近することができる。. このような課題を受け,本学では教科横断型部. 224. ・本学の各キャンパスに所属する異領域の研究者.
(4) 異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定⑴. が一つのコアとなるテーマのもとで行う,全学. ることに対する知見を広げたり深めたりするため. 的な連携科目のモデルとすることができる。. の科目となり得るのかどうか,その教育効果を分. ⑵ 「生きる」の2016年度の内容. 析する観点の議論は十分になされていない。「生. 「生きる」の初年度となる2016年度は,第1回. きる」を単なる一時的な取組ではなく,実質的な. から第15回まで,下記の内容で進めることとなっ. 成果を上げ,今後も継続して本学で実施されるモ. た。なお,括弧内は講義担当者である。. デル講義としていくためにも,「生きる」の教育. 第1回 ガイダンス. 効果の分析は重要である。. 第2回 なぜ生きる意味を問うのか(古川). 以上より,本研究では,「生きる」の教育効果. 第3回 アンドロイドやロボットは生きているか. を分析するための方法を開発し,実際にその方法. −マンガを中心に−(西原). を用いた分析を行う。この分析により, 「生きる」. 第4回 これまでの人生と健康(前上里). が受講生に実質的な教育効果を上げるものになり. 第5回 生きることと死ぬこと(前上里). 得たのかどうかを明らかにすることを目指す。な. 第6回 生きることと「物語る」こと(幸坂). お,今回は量的な分析に焦点化する。質的な分析. 第7回 生を縛り付ける「物語」(幸坂). については別稿で論じることとする。. 第8回 キャンパスごとのディスカッション. 1−3.方法. 第9回 地域で活躍する講師による講演. 本研究は,以下の流れで進める。. −瓜田勝也氏−(平岡・宮前). ①生きることに対する知見を広げたり深めたりし. 第10回 地域で活躍する講師による講演. た状態を評価するための評価ルーブリックを開. −近江正隆氏−(平岡・宮前). 発する。. 第11回 瓜田氏・近江氏とのディスカッション. ②開発した評価ルーブリックに基づき, 「生きる」. (平岡・宮前). 受講生を対象とした事前・事後アンケートを開. 第12回 遺伝子組換えと生命科学(長根). 発・実施する。. 第13回 キャンパス間での意見交流. ③実施したアンケートの項目のうち,特に数値化. 第14回 キャンパス間での意見交流. できる項目に焦点を当て,「生きる」を受講し. 第15回 講義のまとめ. た学生に教育効果があったといえるかどうか,. このように,「生きる」では,教育学,文学,. 量的な分析をする。. 学校保健,国語科教育学,生命科学等のさまざま. . (幸坂健太郎・川邊 淳子・佐々木貴子). な領域の教員がコアテーマである生きることに関 する講義を行う。さらには,外部講師を招いたり, キャンパス間での交流を行ったりするなど,教員. 2.評価ルーブリックの開発. から学生への一方向的な講義にとどまらない講義. 受講生が生きることに対する知見を広げたり深. 形態が目指されている。. めたりしたかどうかを評価するため,その達成具. 1−2.問題設定・目的. 合をみとるための評価ルーブリックを開発した。. このようにして「生きる」は具体的に構想され. 開発したルーブリックを表1に示す。. てきたわけだが,構想する中で浮上した課題があ. まずは開発したルーブリックの縦軸である。こ. る。それは, 「生きる」の教育効果の測定である。. の縦軸は,「生きる」の評価規準を示している。. 教科横断型部会では,「生きる」の講義内容・シ. 一つ目の規準は「理解」である。「理解」は,講. ラバスの検討や, 「生きる」実施に関わる実務を. 義の内容がきちんと理解できているか(A)と,. 中心に進められてきた。その一方で,そのように. その講義内容を観点として自分や他者の生き方を. して実施される「生きる」が本当に受講生の生き. 捉えられているかどうか(B)の二つを区分した。. 225.
(5) 幸坂健太郎・大谷 周子・柚木 朋也・川邊 淳子・佐々木貴子・西原 千博・和田 恵治・平岡 俊一・古川 雄嗣・前上里 直・宮前 耕史・長根 智洋. 表1 「生きる」評価ルーブリック. 二つ目の規準は「思考・判断」である。「思考・. た上での関わりができているかどうか. 判断」については,これまでの自分を振り返って. 以上に述べたルーブリックを,「生きる」の教. いるか(C) , これからの自分について考えを持っ. 育効果を測定するための評価規準・基準とする。. ているか(D) ,自分と他者・社会の関わりにつ. すなわち,この表1の評価ルーブリックの6規準. いて考えを持っているか(E)という三つを区分. が「十分に達成」となっている状態を, 「生きる」. した。三つ目の規準は, 「講義での他者との交流」. 受講生が生きることに対する知見を広げたり深め. (F)である。これら計6規準を,「生きる」の. たりした状態とみなす,ということである。. ための評価規準として設定した。. . (大谷 周子・古川 雄嗣・長根 智洋). 次に,ルーブリックの横軸である。横軸は,6 つの規準から見た場合の達成具合を示す評価基準 を示している。評価基準は,「十分に達成」「あと. 3.事前・事後アンケートの開発. 少しで達成」 「努力が必要」という三つを設定した。. 開発したルーブリックをもとに,「生きる」の. そして, これらの縦軸・横軸が交差する部分に,. 受講生を対象とした事前・事後アンケートを作成. 具体的な学生の姿を位置づけている。なお,「思. した。このアンケートは,「生きる」受講生が生. 考・判断」 (C・D・E)については,その規準. きることについてどのような考えを持っており,. の性質上,どの程度達成できたかの程度を捉える. なおかつそれが「生きる」受講前後でどのように. ことが難しい。開発したルーブリックでは,下記. 変容したかを明らかにするためのものである。. のように基準を具体化することにより,「思考・. 3−1.項目. 判断」の達成具合をみとることを意図した。. 事前・事後アンケートの具体的な項目を,表2. ●C(これまでの自分)・D(これからの自分). に示す。基本的には事前・事後アンケートでほぼ. →「思考・判断」の際に,さまざまな観点を. 同じ内容を問うアンケートとした。. 用いることができているかどうか. 具体的には,講義で扱われる各領域の興味や,. ●E(他者・社会との関わり). そ の 領 域 に 対 す る 自 分 の 満 足 度 を 問 う 項 目. →単に他者・社会と関わるだけではなく,自. ( 2 ・ 3 ),これまでの自分や将来の自分に対. 分と他者・社会との考え方の違いを踏まえ. する考えを問う項目を設けた( 4 ・ 5 )。これ. 226.
(6) 異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定⑴. 表2 「生きる」事前・事後アンケートの項目. 227.
(7) 幸坂健太郎・大谷 周子・柚木 朋也・川邊 淳子・佐々木貴子・西原 千博・和田 恵治・平岡 俊一・古川 雄嗣・前上里 直・宮前 耕史・長根 智洋. らの項目により,開発したルーブリックの特に「理. 川校の受講生が95名,釧路校の受講生が28名であ. 解」 「思考・判断」の側面を問うことを意図した。. る。. 一方,受講生が講義で扱われる内容にとどまらな. ⑶ 本稿の分析範囲. い視点から生きることを捉えている,または捉え. 1−2で述べたように,本稿では量的な分析に. られるようになる可能性もある。そのような講義. 焦点化する。具体的には,数値による回答がなさ. 内容を越え出る視点を把握するため,受講生によ. れており量的な分析が可能な 2 ・ 3 ・ 4 ⑴・. る自由記述欄も設けた( 1 ・ 6 )。 3−2.受講生への注意事項 本アンケートでは,受講生によっては問う内容. 5 ⑴に限定して分析を行う。受講生による記述 回答がなされた 1 ・ 3 ⑵・ 4 ⑵⑶・ 5 ⑵⑶・ 6 については,本稿では分析対象としない。. が非常にデリケートな問題にまで踏み込むことが. 4−2.生きることに対する考えの傾向. 予想される。その場合,受講生が自分の思いを素. ⑴ 事前アンケート. 直にアンケートに記述できなくなるおそれがあ. 事 前 ア ン ケ ー ト の 各 項 目 に つ い て 相 関 分 析. る。そのため,事前・事後ともに,アンケートの. を 行 っ た 結 果 を , 表 3 に 示 す (*.300≦r<.400,. 最初に次の注意事項を記し,可能な限り受講生の. **. 思いを引き出すことを意図した。. 表3からは,次の5点を見出すことができる。. *** .400≦r<.700, .700≦r)。. ●生きる意味への興味と他の項目の相関 このアンケートに書いた内容を,本科目の成績 評定に反映することはありません。また,本授業 科目担当者とあなた以外の人には,アンケートを 書いた個人が特定される情報を示すことはありま せん。今のあなたの考えを正直に答えてください。 書きづらいと感じる項目があれば,飛ばしてもか まいません。. 2 のa「生きることの意味」は,b「よりよ く生きる方法」(r=.565**,p<.05)やe「地域で の生き方」(r=.391*,p<.05)等の間に弱い相関 があった。このことから,受講生の中には「生き る」受講前の段階で既に生きることの意味を問う 者がおり,彼らはよりよく生きる方法や地域での 生き方等にも興味を持っていることがわかる。ま. . (大谷 周子・平岡 俊一・宮前 耕史). た, 「生きることの意味」は,3 のa「自分自身」 への満足度と弱い負の相関があった(r=-.355*,. 4.結果分析・考察. p<.05)。すなわち,自分自身に満足度を持ててい ない受講生ほど,自分が生きることの意味を問お. 4−1.基礎的情報. うとする傾向がややみられるといえる。. ⑴ 実施日・時間. ●よりよく生きる方法と地域での生き方の相関. 2016年度「生きる」の講義中に実施した。事前. 2 のb「よりよく生きる方法」への興味は,. アンケートは第1回のガイダンス時,事後アン. e「地域での生き方」への興味と弱い相関がみら. ケートは第15回の講義のまとめ時に実施した。事. れた(r=.331*,p<.05)。このことは,地域とい. 前・事後ともに,それぞれ約20分間の回答時間を. うコミュニティとの関連の中で受講生が生きるこ. 設けた。. とを捉えている弱い傾向があることを示している。. ⑵ 有効回答数. ●他人の生き方への興味と家族関係の相関. 「生きる」受講生全300名のうち,事前アンケー. 2 のc「他人の生き方」への興味は,3 のb. トは276名,事後アンケートは269名の回答を得ら. 「家族関係」への満足度と弱い負の相関があった. れた。そのうち,事前アンケートと事後アンケー. (r=-.355*,p<.05)。このことから,自分の家族. トの両方に回答した248名分を有効回答とした。. 関係への満足度が低い受講生ほど,他人の生き方. この248名の内訳は,札幌校の受講生が125名,旭. に興味を抱く傾向がややあることがわかる。. 228.
(8) 異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定⑴. 表3 「生きる」事前アンケートの項目間相関分析. ⑵ 事後アンケート. ●死への興味と各項目の満足度の相関 2 のd「生と死」への興味は,3 のb「家族 **. **. p<.05) , c「友人関係」 (r=-.442 , 関係」 (r=-.449 , *. p<.05) , d「大学」 (r=-.383 ,p<.05),e「趣味」 **. **. 次に,事後アンケートで見られた傾向を分析す る。事後アンケートの各項目を相関分析した結果 を,表4に示す。. (r=-.415 ,p<.05),g「将来」(r=-.471 ,. ここでは,表4で見出せることのうち,特に表. p<.05)への満足度とそれぞれ有意な負の相関が. 3の事前アンケートで見出せた傾向とは異なる傾. あった。このことは,家族や友人との関係性,大. 向を2点述べる。. 学・趣味等から成る日常,ひいては自分の将来に. ●他人の生き方への興味と他の項目の相関. 不満感を持つ者ほど,死について興味を示す傾向. 2 のc「他人の生き方」への興味は,それぞ. があることを示している。. れa「生きることの意味」への興味(r=.368*,. ●各領域の満足度間の相関. p<.05), b「 よ り よ く 生 き る 方 法 」 へ の 興 味. 3 の満足度を示す各項目は,その多くに有意. (r=.370*,p<.05)と弱い相関があった。これは. な正の相関が見られた。特に,b「家族関係」へ. 事前アンケートでは見られなかった相関である。. ***. の満足度とc「友人関係」への満足度(r=.793 ,. 講義を通して,受講生が生きることの意味やより. p<.05) ,c「友人関係」への満足度とd「大学」. よく生きる方法を模索する際,同時に他人の生き. への満足度(r=.774***,p<.05)には強い相関が. 方にも目を向けようとする傾向が少し出てきたと. 見られた。つまり,家族関係に満足している者は. いえる。. 友人関係にも満足している傾向にあり,また友人. ●死への興味と各項目の満足度の相関. 関係に満足している者は大学生活にも満足してい. 事前アンケートでは,日常や将来に不満感を持. るといえる。. つ者ほど死への興味が高まる傾向が見出せた。し かし,事後アンケートではこれらの間に有意な相. 229.
(9) 幸坂健太郎・大谷 周子・柚木 朋也・川邊 淳子・佐々木貴子・西原 千博・和田 恵治・平岡 俊一・古川 雄嗣・前上里 直・宮前 耕史・長根 智洋. 表4 「生きる」事後アンケートの項目間相関分析. 関が見出せなくなっている。このことから,日常. には,それらの平均得点について,両側検定の. や将来への不満感と死への興味の高まりが直接は. t 検 定 を 行 っ た 結 果 を 示 し て い る(*p<.10,. 結びつかなくなってきていることがわかる。ここ. **. から示唆されるのは, 「生きる」の講義を通して,. ⑴ 各領域への興味の変容. たとえ日常や将来に不満感を感じてもそれを死へ. まず,表5に示された 2 の事前・事後の変容. の興味に直結させず,他の視点からも考えること. についてである。3キャンパス全体でみると,b. ができるようになった受講生の思考の仕方の変容. 「よりよく生きる方法」に対する興味の増加に,事. である。. 。 前・事後間の有意な差が見られた (t(247)=.038**). 4−3. 「生きる」受講前後の変容. キャンパス別にみても,旭川校で同様の有意差が. さて,4−2の相関分析からも,「生きる」受. 見られた(t(94)=.010**)。「生きる」受講が,受. 講前後で受講生に変容が見られたことが示唆され. 講生のよりよい生き方への興味を高めることにつ. た。では,具体的に受講生の各項目の回答は,事. ながったといえる。一方,その他の項目について. 前アンケートと事後アンケートでどのように変容. は,受講生全体として事前・事後間の変容に有意. したのか。項目ごとに受講生の事前・事後の変容. な差は見いだせなかった。. を示したものが,表5~7である。. ただし,キャンパスごとに見てみると変容に有. 表5が 2 ,表6が 3 ,表7が 4 ⑴・ 5 ⑴. 意な差が見られた他の項目もあった。まず,札幌. の事前・事後における変容をそれぞれ表してい. 校ではc「他人の生き方」に対する興味の減少に. る。各表とも,札幌校・旭川校・釧路校の3キャ. 有意傾向が見いだせた(t(124)=.051*)。つまり,. ンパス別の平均得点の変容と,全体の平均得点の. 札幌校の受講生は,他人がどう生きているのかに. 変容を矢印で繋いで記している。また,矢印の下. 対して興味を減じたということである。また釧路. 230. p<.05)。.
(10) 異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定⑴. 表5 事前―事後での平均得点の変容( 2 各領域への興味). a.生きることの意味 b.よりよく生きる方法 c.他人の生き方 d.生と死 e.地域での生き方 f.科学と生き方. 全体 事前 事後 3.246 → 3.272 (.591) 3.435 → 3.532 (.038**) 2.931 → 2.895 (.548) 3.286 → 3.224 (.193) 2.746 → 2.774 (.593) 2.766 → 2.685 (.188). 札幌 事前 事後 3.200 → 3.104 (.192) 3.368 → 3.432 (.334) 2.984 → 2.832 (.051*) 3.240 → 3.168 (.273) 2.544 → 2.560 (.822) 2.712 → 2.576 (.104). 旭川 事前 事後 3.284 → 3.395 (.139) 3.463 → 3.653 (.010**) 2.832 → 2.926 (.396) 3.295 → 3.205 (.284) 2.874 → 2.842 (.734) 2.832 → 2.758 (.509). 釧路 事前 事後 3.321 → 3.607 (.018**) 3.643 → 3.571 (.626) 3.036 → 3.071 (.813) 3.464 → 3.536 (.573) 3.214 → 3.500 (.043**) 2.786 → 2.929 (.212). 表6 事前―事後での平均得点の変容( 3 各領域の満足度). 表7 事前―事後での平均得点の変容( 4 ⑴・ 5 ⑴). 校の受講生については,a「生きることの意味」. り得たといえるだろう。. , e「地域での生き方」 (t(27)=.043 ) (t(27)=.018 ). ⑵ 各領域の満足度の変容. への興味に事前・事後で有意な差が見られた。釧. 次に,表6に示された 3 の事前・事後の変容. 路校は,他のキャンパスと比べたときに,特に地. についてである。全体では,a「自分自身」への. 域とのかかわりを重視した教育・研究を展開して. 。 満足度の伸びに有意な差があった (t(247)=.002**). いるという特色がある。釧路校の「生きる」受講. 「生きる」を通して,受講生が自分自身への満足. 生の多くも,そのような釧路校の特色に期待し,. 感,すなわち自己肯定感を高めたことがわかる。. 地域と自己とのかかわりについて考えを深めよう. その一方で,d「大学」への満足度については,. としていると推測される。「生きる」が,釧路校. 事前から事後で有意な得点率の減少が見られた. の受講生のそのような思いに応え,地域と自己と. 「生きる」受講前後で, (t(247)=.020**)。つまり,. のかかわりに対する興味をさらに高める機会にな. 受講生は大学に対して不満感を募らせたというこ. **. **. 231.
(11) 幸坂健太郎・大谷 周子・柚木 朋也・川邊 淳子・佐々木貴子・西原 千博・和田 恵治・平岡 俊一・古川 雄嗣・前上里 直・宮前 耕史・長根 智洋. とである。もちろん,受講生は「生きる」以外の 講義も受講し,大学という場所で日常生活を送っ. 5.総合考察. ている。そのため,彼らが募らせた不満感は, 「生. 2016年度「生きる」を通して,受講生には4−. きる」という科目だけに向けられたものとは考え. 2と4−3で述べたさまざまな変容が見いだせ. にくい。表6の結果からわかるのは,「生きる」. た。各キャンパスごとに違いはあったが,受講生. という科目が彼らの大学への満足度を高めること. 全体で見れば,「生きる」は,よりよく生きる方. には寄与しなかった,ということである。. 法に対する興味を高めたり,自分自身に対する満. キャンパスごとに見ると,釧路校に他のキャン. 足度,すなわち自己肯定感を高めたりすることに. パスとは異なる変容が見られた。釧路校では,f. 寄与したといえる。さらに,4 ⑴の結果からわ. **. 「社会貢献」への満足度(t(27)=.005 ),g「将 **. かるように,「生きる」で扱ったさまざまな視点. 来」への満足度(t(27)=.026 )に,それぞれ有. を用い,受講生は自分のこれまでの生き方を振り. 意な増加があった。ここから,釧路校の受講生は,. 返ることもできるようになっていた。これらを,. 「生きる」を通して自分が社会貢献できていると. 「生きる」による教育効果として挙げることがで. いう満足度を高め,また自分の将来にも肯定感を. きる。. 持つことができるようになったといえる。. 一方,2 の結果をみると,「生きる」で扱った. ⑶ これまでの生き方の振り返りとこれからの生. にもかかわらず受講生の興味を高めることができ. き方への考えの変容. なかった領域もある。これらの領域については,. 最後に,4 ⑴と 5 ⑴の変容を,表7から見て. 今後どのようにして受講生の興味を高めていく. みよう。. か,改善が求められる。また 5 ⑴の結果からは,. 4 ⑴は,これまでの自分の生き方を振り返る. 「生きる」がこれからの生き方についての考えを. ことができているかを問う項目である。この項目. 受講生に持たせることにあまり寄与できていない. については,受講生全体事前から事後への有意な. ことが明らかになった。これまでの生き方を振り. **. 。キャンパス別 増加が見られた(t(247)=.000 ). 返るだけではなく,ではどのようにして今後生き. **. ていけばよいかについて受講生に考えさせる活動. *. , 釧 路 校(t(27)=.095 ) の そ れ ぞ れ で =.000 ). を仕組むような改善が求められる。. 有意な差があった。ここから,「生きる」を通し. . にみても,札幌校(t(124)=.000 ),旭川校(t(94) **. (柚木 朋也・和田 恵治). て受講生が自分の生き方を特定の観点,ないし多 角的な観点から振り返ることができるようになっ たことがわかる。. 6.今後の展望. それに対して,5 ⑴の変容をみてみると,旭. 今後は,今回行ったアンケートで顕著な変容が. 川 校 で の み 事 前・ 事 後 に 有 意 な 差 が 見 ら れ た. 認められた受講生個々人のレベルに焦点を当て,. *. (t(94)=.052 )が,札幌校・釧路校,そして全. 「生きる」の教育効果に関する質的な分析を行う。. 受講生でみると有意な増加はなかった。したがっ. また,今回開発したルーブリックやアンケートを. て, 「生きる」という科目は,これからの生き方. 用い,継続して「生きる」の教育効果の測定を行っ. に対する受講生の考えを形成することにはさほど. ていく。そして,今回明らかにされた「生きる」. 寄与することができなかったといえる。. の課題と併せ,「生きる」を本学における全学連. . 携科目のモデルとして改善していきたいと考える。. (幸坂健太郎・前上里 直). . 232. (西原 千博).
(12) 異領域の多角的視野を活かした教養科目「生きる」の教育効果の測定⑴. 【付 記】 本研究は,平成28年度北海道教育大学学長戦略 経費(共同研究推進経費)の助成を受けている。 (幸坂健太郎 札幌校講師) (大谷 周子 札幌校非常勤講師) (柚木 朋也 札幌校教授) (川邊 淳子 旭川校教授) (佐々木貴子 札幌校教授) (西原 千博 札幌校教授) (和田 恵治 旭川校教授) (平岡 俊一 釧路校准教授) (古川 雄嗣 旭川校准教授) (前上 里直 札幌校准教授) (宮前 耕史 釧路校准教授) (長根 智洋 釧路校講師) . 233.
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日髙真吾 企画課長 日髙真吾 園田直子 企画課長 鈴木 紀 丹羽典生 樫永真佐夫 樫永真佐夫 樫永真佐夫 川瀬 慈 齋藤玲子 樫永真佐夫 三島禎子 山中由里子 川瀬
池田 史果 小松市立符津小学校 養護教諭 小川 由美子 奥能登教育事務所 指導主事 小田原 明子 輪島市立三井小学校 校長 加藤
● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き
● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き
具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.
麻生区 キディ百合丘 ・川崎 宮前区 クロスハート宮前 ・川崎 高津区 キディ二子 ・川崎 中原区 キディ元住吉 ・川崎 幸区