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中学生の集団内におけるいじめの抑制要因-いじめ加害経験者といじめ加害無経験者との違いから-

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Academic year: 2021

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(1)  中学生の集団内におけるいじめの抑制要因 一いじめ加害経験者といじめ加害無経験者との違いから一  学校教育学専攻 臨床心理学コース.     m07077j    加納由紀子          問題と目的.          予備調査.  いじめは自殺や不登校など様々な問題と関連し. 方法. ている社会的問題とされており,友人問において. 調査対象 関西地区の大学生・大学院生男女18. も存在することが示唆されている(森田地,1994)。. 名(男性5名,女性13名)。. 全般的ないじめと友人間でのいじめではいじめ加.  調査時期2008年9月上旬から中旬. 害・被害防止のためのスキルが異なることから(本.  手続き まず自由記述の質問紙を実施。その後1. 問,2003・Ne㎜an et.aL,2000・三島,2003),両者. 回約30分の半構造化面接を実施し,収集された資. は異なる形態のいじめであると考えられる。また,. 料をKJ法によって整理した。. 本間(2003)は,全般的ないじめにおいていじめ加. 結果 収集した資料を整理した結果,3つに大別. 害経験者と加害無経験者,共に自尊感情が高い傾. できた。これらから計32項目をrグループ内での. 向があることを示し,両者の自尊感情の形成のあ. いじめに対する認識尺度」の質問項目とした。. り方が異なると示唆した。速水池(2004)は他者軽.          本調査 方法. 視に基づく有能感として自尊感情と無相関の「仮 想的有能感」という概念を提唱している。仮想的.  調査対象 関西地区の大学生109名(男子32名,. 有能感はSTAXIと正の相関を持ち(速水池,2004),.  女子77名)。. いじめ加害者の多くは怒りのレベルが高い(岡安.  調査時期 2008年10月中旬. 他,2000)ことから,本問(2003)が示唆したいじめ.  手続き予備調査で作成した32項目について質. 加害経験者と加害無経験者の自尊感情の形成のあ.  聞紙調査を実施。そして,「グループ内でのいじ. り方の違いに仮想的有能感が関わっている可能性.  めに対する認識尺度」について信頼性を検討し,. が考える。また,いじめに関する誤った理解がい.  因子分析を行った。. じめを増幅,維持させるという指摘がある(Newman.   結果 因子分析の結果,4つの因子が見出され. et,a1.2000)。しかし,いじめに対する意識に関.   た。F1(第1因子の意。以下順に同じ)〈否定的. する研究は,平松(2004)や橋本(1999)があるもの.   感情〉,F2〈消極的防衛〉,F3〈ゲーム的感覚〉,. の,いじめ加害経験者と傍観者とを比較した研究.   F4〈被害者責任〉と名付けた。. はみられない。以上より、本研究ではいじめ発生.           研究皿. 率が最も高い(内閣府,2006)中学生の集団内いじ.  目的 中学生の集団内でのいじめに焦点をあて,. めに焦点を当て,集団内いじめの特徴といじめ加.  集団内でのいじめの特徴といじめ加害経験者と傍. 害経験者と傍観者のいじめに対する認識の違いと.  観者のいじめに対する認識の違いを検討し,さら. 抑制に関連している要因を検討することとした。.  に,抑制に関連している要因を検討する。.          研究I.  方法. 目的 中学時代の「グループ内でのいじめに対する.   調査対象 関西地区の大学生1∼4年生の男女. 認識尺度」の作成。.   304名(男性103名,女性201名)。. 一168一.

(2)  調査時期 2008年10月中句から下旬. 極的防衛〉では性別の主効果を得た(F(1,71):20,0.  調査内容 中学時代について,1)グループ所属. 87,pくlOO1)。F4く被害者責任>で性別(F(1,71)=1,. の有無,2)グループ内でのいじめの有無,3)グル. 284,p〈.05),いじめ加害関連3群(F(2,71)=4,152,. ープ内でのいじめ加害経験の有無,4)グループ内. pく.05)の両要因で主効果を得た。. でのいじめ被害経験の有無、各1項目。5)グルー.  r被害経験群」r両経験群」r傍観群」の3群で. プ内でのいじめに対する認識尺度、25項目。. 「いじめ被害関連3群」を作成し,性別,いじめ. 6)Hayamizu et.a1.(2004)の仮想的有能感尺度. 被害関連3群の2要因分散分析を行った。仮想的. (ver2)11項目、7)Rosenberg(1965)の自尊感情尺. 有能感で「いじめ被害関連3群」の主効果を得た. 度の日本語版(山本地,1982)1O項目。. (F(2,59)=4,570,p〈.05)。F1く否定的感情〉でrいじ.  分析 中学時代のグループ内でのいじめに関し. め被害関連3群」の主効果を得た(F(2,59)・3,64. て男女差があるかを分析する。そして,中学生時. 3,p〈.05)。F2〈消極的防衛〉では,有意な交互作用. 代,グループ所属,グループ内いじめ,グループ. がみられた(F(2,59)=4,353,p〈、05)。. 内いじめ加害・被害経験の有無を組み合わせ,「加.          全体考察. 害経験群」r被害経験群」r両経験群」r傍観群」r無.  「いじめ関連6群」各群の特徴を述べたい。r加. 関係群」rグループ無所属群」のrいじめ関連6. 害経験群」ではグループ内いじめの原因は被害者. 群」を作成し,性別,いじめ関連の2要因分散分. にあると,加害者なりの加害理由を持っているこ. 析を行った。. とが示された。r被害経験群」では,学校生活にお.  結果 まず,中学生時代のグループ所属では男. いて他者軽視に基づく仮想的有能感を抱かざるを. 女問に有意な差がみられた(π2=9.17,仕1,ρく.01)。. 得なかったと考えられる。「爾経験群」は,「加害. しかし,グループ内いじめ,いじめ加害・被害経. 経験群」と比較すると、特に女子においてグルー. 験では男女間に有意な差はみられなかった。. プ内でのいじめから身を守るために周囲と同調的.  性別,いじめ関連6群の2要因分散分析を行っ. に振る舞うことが示された。「傍観群」では,く否. たところ仮想的有能感でいじめ関連6群の主効果. 定的感情〉以外に他群と差がみられなかった。『加. を得た(F(5,292)=3,954,pく、01)。F1く否定的感情>. 害経験群」と比較するとこの2群の違いとしてい. で性別(F(1,292)=12,438,pく.001)といじめ関連6. じめ行為を正当化しているかどうかということ、. 群(F(5,292)=7,872,pく.001)の両要因の主効果を. r傍観群」の自尊感情の低さも大きな特徴であっ. 得た。F2く消極的防衛>では交互作用がみられた(F. た。中学生は小学生と比べて,いじめに無関心な. (5,298)=2,818,pく.05)。F3くゲーム的感覚〉でいじ. 傍観者層が現れる(橋本,1999)。このことから,「無. め関連6群の主効果を得た(F(5,292)=4,667,pく.00. 関係群」と「グループ無所属群」では,他のグル. 1)。F4く被害者責任>で,いじめ関連6群の主効. ープ内いじめに対する無関心さが,社会的に望ま. 果を得た(F(5,298)=3,960,pく.01)。. しい回答を増やしたと考えられる。.   r加害経験群」r両経験群」r傍観群」の3群で.  本調査は大学生に回答を求めたため,現在の中. 「いじめ加害関連3群」を作成し,性別,いじめ. 学生の回答とずれが生じている可能性がある。今. 加害関連3群の2要因分散分析を行った。その結果,. 後,調査対象者に対する十分なアフターケアを行. 自尊感情でいじめ加害関連3群の主効果を得た(F. う体制を整え,当事者である中学生に対して調査. (2,71)=3,809,pく.05)。F1〈否定的感情〉では性別(F. を行いたい。. (1,71)=12,201,pく.O1),いじめ加害関連3群(F(2,7.            主任指導教員 岩井圭司. 1)=7,385,pく.O1)の両要因で主効果を得た。F2く消.            指導教員   有園博子. 一169一.

(3)

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