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サンディエゴ州立大学の国際化戦略

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Academic year: 2021

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(1)サンディエゴ州立大学の国際化戦略 サンディエゴ州立大学 日暮 嘉子 1.はじめに.  サンディエゴ州立大学は、カリフォルニア州立大学機構に所属する23. 校のうち最大で最難関の大学として知られている。1897年創立で10 0年以上の歴史を誇る本学は、学生33000人(男女比 4対6)、教 員1737人(常勤55% 非常勤45%)を擁iし、人文学部、商学部、 教育学部工学部、人間科学部、芸術学部、理学部の7学部から成り立って. いる。学士号が81の分野で、修士号が72の分野で、そして他大学との 共同による博士号が16の分野で出されている。教育を大切にするのは無 論であるが、教員は出版業績がなければ生き残れない「研究主体の大学」 のカテゴリーに入っている。.  2005年5月に授与された学位数は、学士6325件、修士1677 件、博士44件となっている。サンディエゴ在住の大卒者の7人に1人が 本学の卒業生であるというのも、お分かりいただけると思う。. 2.大学の構想  1996年に第七代学長として就任したスティーブン・ウェバー学長は、 就任早々自分の構想は述べず、教員、職員、在校生およびその両親、そし て卒業生と頻繁に意見交換を目的としたミーティングを開いた後、大学の 基本五大構想を掲げた。その中の一つに、 「真に国際化された大学を創ろ う」というのがある。.  真に国際化された大学であるための要素として、 (1)学生を海外の大 学に留学させること、 (2)国際的な視野と要素を持ち合わせた教員を抱 えること、この二点が考えられた。 *Yoshiko Higurashi, PhD., Profbssor and Director. Japanese Language Program, Department of. Linguistics and Oriental Languages, San Diego State University,5500 Campanile Drive, San Diego, Califbmia 92182−7727, U.S,A. E−mail: hl urash1ωmall sdsu edu, Phone:(619). 594−1005. 一19一.

(2)  日本の場合、国際化というと、「○○年までに留学生の受け入れ数を×× に増やそう」などという目標を掲げるのが一般的であるが、本学の場合、 「学内の人間を国際化するのが先決」、と考えている点がおもしろい。.  言うまでもなく、学内の国際化を図るためには、海外からの留学生や研 究員を大切に扱い、年々数を増やすようにしなければならないが、外から 訪れる人間に頼っていないところが非常にユニークで実践的であると思わ れる。.  そして、この自助努力的な構想の実現のために、 「2008年までに、. 卒業生の30%が12週間(夏期休暇)から16週間(秋学期または春学 期)の間、海外に留学したと言えるようにしよう」という具体的な目標が 1998年に就任したナンシー・マーリン副学長(英語名ではProvost。学長 に次ぐ第二の地位にあるが、実質的な統括最高責任者)によって設定され た。.  この目標が設定された2003年当時、大学教育の一環として留学経験. のある学生の割合は、12%にすぎなかったが、2006年現在では18% に増えている。小論では、2008年の30%実現に向けて、本学がどの ような戦略を練り、どのような成果を得ているか、簡単に述べてみたい。. 3.組織の国際化  国際交流プログラムに関しては、1999年までは「海外交流センター」 が取り仕切っていた。ここの責任者の役職名は、ディレクターにすぎず、 他の役職も兼任するのが通例であった。.  しかしながら、1999年以降は、新たに「国際交流室」ができ、トッ プの人間の役職名も 副学長(Assistant Vice President fbr Intemational. Programs) となり、専任職となった。権限が実際に増したことはもちろん であるが、大学の国際交流に対する多大なる意気込みを示した。. 4.学生の国際化  一人でも多くの学生に留学経験を積ませるためには、どうしたらよいの であろうか。学生は高い授業料を払っていると考えているので、余分な費. 一20一.

(3) 用がかかるようでは留学を敬遠するであろう。また、海外の大学で取得し た単位や、会社や非営利団体でのインターン経験が認められないようであ れば、その分卒業が遅れるわけであるから、やはり躊躇するであろう。.  そこで、留学して戻ってきた学生の単位認定にスムーズに行えるよう、 学科と留学学事事務所の人世が親密に連絡を取り合うようになった。.  また、海外経験を積むことを卒業の条件にする学科が出てきた。例えば. 国際経営、国際経済、スペイン語、ヨーロッパ地域研究、世界安全保障と 紛争解決、演劇等の八学科である。.  さらに、将来、地球規模でものを考えられる人間が就職により一層有利 になることをふまえて、複数の大学から卒業証書がもらえるプログラムも つくられた。アメリカとメキシコの大学から学位が出るメクサス(MexUs). プログラム、アメリカとメキシコとカナダの大学三校から学位がもらえる カメクサス(CaMexUs)プログラムがその代表例である。.  なお、少額ではあるが、留学を希望する学生の旅費の負担を軽減するた めに、大学が奨学金を出している。学位のために留学が必要な学生が優先 されるのは、言うまでもない。.  このような戦略の成果を反映してか、2006年11月に発表された統. 計によると、2004年度には、1257人もの学生が55ヶ国に留学し た。. 人気上位10ヶ国を挙げると、メキシコ(309人)、スペイン(176 人)、イギリス(157人)、フランス(68人)、イタリア(58人)、. オーストラリア(49人)、ブラジル(45人)、日本(40人)、コス タリカ(37人)、チリ(30人)の順になっている。. 5.教員の国際化  国際的な視野を持った教員を増やすためにはどうしたらよいであろうか。 本学は、 「新規に教員を採用する際にそのような人間を雇えばよい」とは. 考えなかった。新規採用は、常にカリフォルニア州政府の予算に左右され ている。従って、真の国際化を迅速に進めるためには、新規採用者に依存 するのは得策とは言えないからである。. 一21一.

(4)  しかしながら、本学で既に教鞭を執っている教員は、研究業績と出版業 績がなければ生き残れない厳しい状況の中で、教える仕事と研究のバラン スをかろうじてとっているのが現実である。上からどんなに「国際化」「国. 際化」と叫ばれても、元々海外と密接な関係がある教員以外は、誰も真剣 に取り組む余裕がない。.  周知のように、アメリカの大学の教員は原則として9ヶ月契約である。. 夏の間も給料が出るのは、9ヶ,月半の年俸が12に分割され支給されてい るからである。夏の間、給料が欲しい場合は、夏期講座を教える。お金よ り研究に集中する時間がほしい場合は、研究室か自宅の書斎に籠る。夏の 3ヶ月は契約期間に入っていないので、本来全く自由な時間なのである。. 従って、大学は、教員に夏の間大学関連の仕事をするよう強要する権利が ない。しかしながら、海外と関係のあることをするのは、時間に余裕のあ る夏が最適である。.  そこで、大学は、予算を計上して、教員に海外経験を積むことを奨励し 始めた。これは、国際的に意義のあるプログラムやプロジェクトを開発ま. たは拡充をするために、資金を一回につき4000ドル(約40万円)ま で出す、というものである。具体的には、交換留学の提携校を新たに開拓 する、インターンシップ先を拡大する、既存のプログラムで問題がある場 合、現地におもむき処理にあたる、等である。.  これまでに、477人が授与されているが、テニュア(終身在職権)や 昇進などの勤務評定の際、大学に対する貢献として考慮に入れるようにし、 教員の士気を高める努力をしている。. 6.情報入手の簡素化  大学が在校生と教員に資金援助をするといっても、金額に限界がある。 そこで、学外からの奨学金にどうしても頼らざるをえない。そのためには、. 奨学金や助成金の情報を入手しやすくしなくてはならない。.  こう考えた大学は、学内にフルブライト奨学金事務局分室を設置し、フ ルブライトフェローとして留学した経験のある教員をフルブライトアドバ イザーとして雇った。.  1997年の設置以来、2005年に最多の受賞者10人(在校生4人、. 一22一.

(5) 卒業生2人、教員4人)が出たが、これもアドバイザーが広報に努めた成 果と言えよう。. 7.広報戦略  大学の国際化戦略ではないが、アメリカの大学は何かのデータを比較す るときに、必ずと言ってよい程、「全米の○○グループの大学の中で、××. 番目」という表現を使っている。この方が、インパクトが強く、読者の記 憶に鮮明に残る上、別格の大学群と比較しても歯が立たないだけでなく、 意味がないからである。  ちなみに、本学は、Doctoral/Research University−Intensiveというグループ. に入っており、海外経験を積ませるという点にかけでは、三年連続して全 米で二番目にランクされている。. 8.おわりに.  上記のような努力が実を結び、2006年現在、44ヶ国と様々な交流 プログラムが190本存在している。 「2008年までに卒業生の30% が留学経験ありと言えるようにする」との目標は、十分に実現可能圏内に 入ってきているようである。.  筆者は、本学の日本交換留学プログラム選考委員会の座長をしているが、. 横浜国立大学は学生の間で最も人気の高い大学である。大学の格の高さは 言うに及ばず、日本語のプログラムが充実していること、留学生用に出さ れる日本語以外のコースの内容が多岐にわたること、個人指導が徹:底して. いること、細かいところまで心の行き届いた配慮が事務方の皆さんから得 られること、などが主な理由である。  横浜国立大学の短期留学プログ ラム(ジョイ・プログラム)は、留学プログラムの鑑である。このような素. 晴しいプログラムの拡充と発展に責任者として10年もご尽力された石川 雄一先生に深く感謝の意を表したい。.  なお、本学の留学生教育および日本語科プログラムの拡充に関しては、 次回に譲りたい。. 一23一.

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