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社会科歴史教育と神話学習

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社 会 系 教 科 教 育 学 会『 社 会系 教 科 教育 学 研 究 』 第 9号 1997 (pp.29-36)

社 会 科 歴 史 教 育 と 神 話 学 習

History Education in Social Studies and Myth Study

井 之 上 良 一 ( 鹿 児 島県 喜 界 町 立 第 一 中 学 校) 1  は じ め に 1989 年 の教 育 課 程 改訂 によ って ,高 校 で は「 歴 史」 が社 会 科 か ら独 立 し,「 地 理 歴 史 科 」 と し て 指 導 さ れ る こと に な った。 こ の高 校 社 会科 の再 編 に つ い て は, 将来 の全面 的 な 社会 科 解 体 ・ 歴史 独 立 に 向 け て の 橋頭 堡 が確 立 さ れ た とい う受 け 止 め方 も な さ れ て おり, 社 会 科 の存 続 を 危惧 す る声 も聞 か れ る。 一 方, この よ うな 動向 に呼 応 す る形 で , 学 習 指 導 要領 や 指導 書 で は神話 学 習 の一 層 の強化 が 図 ら れ て い る。す な わ ち, 1989 年 版 小学 校 学 習指 導 要 領 に お い て ,「 神 話 ・ 伝 承 に つ い て は 古 事 記 , 日 本 書 紀 , 風土 記 な ど の 中 か ら 適 切 な も の を 取 り 上 げ る こ と 」1)と, 初 め て 取 り 扱 う べ き 神 話2)の 出 典 が 明 示 さ れ たO さ らに, 1989 年 6月 に刊 行 さ れ た小 学 校 指 導 書 社 会 編 で はそ れを 受 け て ,「 国 の形 成 に関 す る 考 え 方 を く み と るこ と ので き る神 話 ・ 伝承 と し て , 高 天原 神話 , 天孫 降 臨, 出 雲国 譲 り, 神 武東 征 の物 凪 日本 武 尊 の物 語 な ど があ る。 こ れ らの 神 話 ・ 伝 承 の 中 か ら児 童 に興 味 や関 心 を も たせ るこ と の で き る も のを 精 選 して 取 り上 げ て 指導 す るこ と が大 切 で あ る 」3)と, 取 り上 げ る べ き 神 話 例 が 具 体 的 に示 さ れ て い る。 この こ と に関 わって ,佐 藤 伸雄 氏 は次 の よ う な 重 要 な 指 摘 を して い る4)。 す な わち, 1989 年 版学 習 指 導 要 領 が中 間 発 表 さ れ た 時 点 で,「 す で に小 学 校 社 会 科 六年 ( 歴史) で卑 弥 呼を 初 め と し て 四 二 名 の人 名 が あ げ ら れて い た( こ の中 に東 郷 平 八 郎 も 入 っ て い る)。 そ れ に対 し て , 自民 党 の 『 教 科 書 問 題 を 考 え る議員 連盟』 が卑弥 呼を 外 し て神 武 天 皇 を 入 れ ろ と要 求 し たが, 文 部省 はさ す が にそ の ま ま は受 け 入 れず, 『古 事 記, 日 本 書 紀, 風土 記 な ど の中 か ら』 神 話 ・伝 承 を取 り上 げ る とい う こ とで 妥 協 し た ( と い う より は実 際 に要求 に応 じ た こ と な の だ が )」 と 述 べ てい る。 さ ら に,前 述 のよ う に 5つ の 神 話 が 例 示 さ れ た こと に対 し て「 五つ の『神 話 ・ 伝 承 』 を 扱 う こ と は,か つ て の国 史 教科書 のはじめの部 分とそ っ くり同 じ にな っ てし ま う とい うこ とな の で あ る」 と 指 摘 して い る。 つ まり ,学 習 指導 要 領 や 指 導 書 が 求 めて い るの は国 の始 ま りを 神 話( 神 話上 の 人 物 ) で 教え よ とい う こ とで あ り , 神 話 は「 国 史 教 育 へ の 逆 もど り」5)だ と い うO こ の指 摘 は, 神話 学 習 に よ って 社 会科 歴 史 教 育 が 実質 的 に歴 史科 歴 史 的 な歴 史 教育 へ の転 換 を 余 儀 な く さ れ る可 能 吐 があ る こ とを示 唆 して い よ う。 だ と す れ ば, 歴 史 教育 への 神話 の導 入 あ るい は 神 話 学 習 の 強化 は, 冒 頭 で述 べ た動 向 と も決 して 無 関 係 の も の で はな く,一 面 で は将来 的 に歴 史科 歴 史 教 育 へ の 道を 切 り 開 く こ と にそ の ね らい が あ った こ と が推 察 さ れ る。 そ の意 味 で, 神話 学 習 の問 題 は 軽 視 で き な い重 大 な 問 題を 孕 ん で お り, この よ う に 神 話 学 習 の 性 格 が鮮 明 に な る に及 ん で,歴 史 教育 に 神 話 が 導 入 さ れ た こと の意 味 や ね ら いを 改 めて 問 い 直 し て み る 必 要 があ る と いえ る。 以 上 の問 題 意識 か ら, 本 研究 で は今 一 度 こ の 問 題 に ア プロ ーチ し,神 話 学 習 の実 態 や現 状 を 分 析 す る こ と によ って, 社会 科 歴 史 教育 へ の 神話 導 入 の 問 題 の本 質 を 解 明 す ると と も に,現 行 社 会科 歴 史 教 育 の 問 題性 の一 側面 を 明 ら か にす る こ と にし た。 n  研 究 仮 説 の 設 定 学 習 指導 要 領 を 中心 とし た分 析 を 行 っ た結 果 , 社 会 科歴 史 教 育 につ い て は, 1955 年 の学 習 指 導 要 領 の 改 訂 を 圉 期 と して ,現 在( 現 代) を理 解 す る 歴 史 教 育 か ら,過 去( 歴 史) を理 解 す る 歴史 教育 ( 通史 学 習) ― 29 ―

(2)

へ と 明 瞭 な変 化 が あ っ た こ と が 確認 で き た。一 方 , 神 話 に つ い て も, 社 会 科 歴 史 教 育 の転 換 と軌 を 一 に す る か の よ う に1955 年 版 中 学 校 学 習 指 導 要 領 を 転 機 と し て, 科 学 的 ・ 批 判 的 な 取 り 扱 い か ら肯 定 的 な 取 り 扱 い へ と, 重 大 な 変 更 が 行 わ れ て い る こ と が 明 ら か に な っ た。 以 上 の事 実 は, 社 会 科 歴 史 教 育 が 通 史 学 習 に 転 換 さ れ た こ と と 神 話 の 導 入 ( 肯 定 的 な 取 り 扱 い へ の 転 換 ) と の 密 接 な 関 連 を 示 唆 す る も の で あ る。 し か し, 神 話 導 入 の 問 題 に 関 す る 先 行 研 究 を 分 析 し た 結 果 , こ の点 に つ い て は言 及 さ れて お ら ず, 社 会 科 歴 史 教 育 の 本 質 を め ぐ る論 究 が な さ れ て い な い こ と が 明 ら か に な っ た6)。 そ こ で , 匚神 話 導 入」 の 問 題 を と ら え 直 す た め の研 究 仮 説 を 次 の よ う に設 定 し た。 【 研 究 仮 説 】

歴史 教育へ の神話 の導入 は, 社会 科歴史 教

育 を否 定し, 歴史科歴 史的 な歴史 教育 を 強化

す るた めで あっ た。具 体的 に は,子 ど もの主

体性 と現在的 課題 意識 に依拠し た歴史学 習を

排 除し,通 史的 な人 物中 心 の歴 史学習 を完成

させる ために神話 が導入 さ れた。

Ⅲ  研 究 仮 説 の 検 証 と 検 証 結 果 上 記 研 究 仮 説 の 有 効 欧 を 検 証 す る た め に, 歴 史 教 科 書 及 び 神 話 を 活 用 し た 歴 史 授 業 実 践 , 人 物 を 活 用 し た 歴 史 授 業 実 践 の 分 析 を 試 みる こ と にし た。 以 下 , 本 研 究 で 試 み た 検 証 方 法 及 び 検 証 結 果 を 略 述 す る と 次 の よ う に な る 。 1 . 歴 史 教科 書 にお け る神話 に 関 す る記 述 の 分 析7) こ こ で は, 日 本 神 話 に 対 す る 科 学 的 ・ 批 判 的 な 習 指 導 要 領 の時 期 を 神 話 「 導 入 前 」, 日 本 神 話 の 意 味 や 意 義 に着 目 し た肯 定 的 な 取 り 扱 い へ の 変 化 が み ら れ る1955 年 版 中 学 校 学 習 指 導 要 領 か ら1958 年 版 中 学 校 学 習 指 導 要 領 に か け て の 時 期 を 「 過 渡 期 」, 小 学 校 の 歴 史 学 習 へ の 神 話 の 導 入 が 図 ら れ た1968 年 版 小 学 校 学 習 指 導 要 領 以 降 を 「 導 入 期 」 と と ら え, こ れ に現 行 学 習 指 導 要 領 の 時 期 (「 現 行 」) を 加 え , 4つ の 時 期 に 区 分 し , 小 学 校 及 び 中 学 校 の 教 科 書 を そ れ ぞ れ 2 ∼ 3 社 ず つ 抽 出 し , 記 述 の 傾 向 性 を 対 比 的 に 分 析 し た。 そ の 結 果 , 次 の よ う な こ と が 明 ら か に な っ た。 ①  神 話 導 入 前 は, 神 話 の 意 味 や 性 格 を 中 心 と し た 記 述 が一 般 的 で あ っ た が, 神 話 導 入 後 は, 神 話 を 大 和 朝 廷 に よ る国 土 の統 一 と関 連 づ け て 取 り 上 げ , 史 実 と の関 連 性 を 示 唆 す る 記 述 に変 化 し て き て い る。 ②  神 話 導 入 後 , 全 体 の 記 述 が 人 物 を 中 心 と し た 記 述 に変 化 し て きて い る の に 対 応 し て , 神 話 に 関 す る 記 述 の 中 に も 具 体 的 な 物 語 ( 例 え ば, ヤ マ ト タ ケ ル の物 語 な ど) が例示 さ れる よ う にな っ て き て い る。 ( た だ し, こ の よ う な 顕 著 な変 化 は, 中 学 校 教 科 書 にお い て は 確 認 で き な か っ た。) 2. 神 話 を 活 用 し た 歴 史 授 業 実 践 の分 析8 ) 社 会 科 教 育 関 係 書 籍 や 雑 誌 に 掲 載 さ れ た先 行 授 業 実 践 の 中 か ら, 原 始 ・ 古 代 史 学 習 の 中 で 神 話 を 活 用 し て い る授 業 実 践30 事 例 ( 小18 事 例 ・ 中12 事 例 ) を 抽 出 し , 活 用 目 的 を 目 的 的 活 用 と方 法 的 活 用 に大 別 し , 授業 の ね らい と 展 開 に 着 目 し, 個 々 の 実 践 の 具 体 的 な 活 用 目 的 を 検 討 し た結 果 , 下 の 表 − 1 に 示 す よ う に 活 用 目 的 別 に 5 つ の型 に類 型

取 り扱 いに主 眼が置 か れて いた1951年版中 学校学    化す るこ とがで きた。

【 表 −1】活 用目的 別種型 と事 例数

活用 目 的 別 類型 具   体   的   活   用   目   的 事   例   数 学校段階別 類 型 別 小 中

普 遍 性 解 明 型 日 本 神 話 の 意 味 ・ 意 義 の 解 明 , 理 解 4 0 4 4 12 特 殊 性 解 明 型 日 本 神 話 の 政 治 的 意 図 ・ 作 為 性 の解 明 , 理 解 4 2 6 6 折  衷  型 日 本 神 話 の 意 味 ・ 意 義 、 政 治 的 意 図 ・ 作 為性 の両 面 の 解 明, 理 解 1 1 2 2 方 法 的 歴 史 理 解 型 大 和 朝 廷 によ る 国 内 統 一 の経 過 の理 解 6 1 7 14 18 大 和 朝 廷 の国 内 統 治 の理 解 1 0 1 地 方 の文 化 圏 の成 立 の理 解 0 1 1 む らか ら く に へ の発 展 の経 過 の理 解 1 0 1 狩 猟 , 漁 労 の生 活 の 様子 の 理 解 1 1 2 農 耕 の生 活 の 様子 の理 解 0 1 1 朝 鮮 進 出 の経 過 の理 解 0 1 1 科 学 的 態 度 育 成型 科 学 的 批 判力 の育 成 0 3 3 4 科 学 的 歴 史 の 学 び方 の 理 解 0 1 1

(3)

そ れ ぞ れ の類 型 の特 色 を, 活用 目的 ・活 用 内 容 ・ 活 用 方 法 の 3 つ の 観 点 か ら, 考 察 ・ 整 理 し た も の が 下 の表 − 2 で あ る。 ま た, 以 上 の 考 察 を 踏 ま え て , 神 話 導 入 前 と神 話 導 入 後 で , 神 話 を 活 用 し た 授 業 実 践 に は ど の よ う な 変 化 が み ら れ る の か , 年 代 別 に各 類 型 の 事 例 数 を 比 較 し た の が 下 の 表 − 3 で あ る。 分 析対 象 と し て 設 定 し た 授 業 事 例 の絶 対 数 が 少 な い た め に, 統 計 的 に 問 題 が な い わ け で は な い が, こ れ ら の 分 析 結 果 か ら, お お よ そ の傾 向 と し て 次 の よ う な こ とが 指 摘 で き よ う。 【表 −2】 神話を活 用した歴史授業 実践 の各類 型の対比 科 学 的 態 度 育 成 型 及 び 特 殊 性 解 明 型 の 授 業 実 践 は, 神 話 導 入 後 は徐 々 に減 少 して きて い る。 代 わっ て , 歴 史 理 解 型 の 授業 実 践 が 次 第 に増 加 し て き て い る こ と が 明 瞭 に 確 認 で き る。 こ の こ と か ら, 神 話 を 活 用 し た 原 始 ・ 古 代 史 学 習 の 授 業 実 践 に お い て は, 考 古 学 そ の 他 の学 問 成 果 を 重 視 し, 神 話 に 対 す る 批 判 的 な 認 識 の 形 成 を 意 図 す る 授 業 に代 わ り , 神 話 を 歴 史 資 料 と し て 重 視 し, 積 極 的 に活 用 し よ う と す る 実 践 か お る 程 度 一 般 化 し て き て い る こ と を う か が い 知 る こ と が で き る。

ゐ燹

目   的   的   活   用 方  法  的  活  用 普 遍 性 解 明 型 特 殊 性 解 明 型 折   衷   型 歴 史 理 解 型 科 学 的 態 度 育 成 型 活  用 目  的 神 話 本 来 の 意 味・ 性 格 の 解 明 , 理 解 日 本 神 話 の も つ 政 治 性 や 作 為 性 な ど , 特 殊 な 性 格 の 解 明 , 理 解 日 本 神 話 の 意 味 ・ 性 格 の 普 遍 性 , 特 殊 性 両 面 か ら の 解 明 , 理 解 原 始 ・ 古 代 史 の 学 習 内 容 を 理 解 さ せ る た め の 手 段 と し て の 活 用 科 学 的 な 批 判 力 や 歴 史 の 学 び 方 な ど , 方 法 的 能 力 の 育 成 の た め の 手 段 と し て の 活 用 活  用 内  容 ・ 記 紀 の 中 の 物 語 を 中 心 と し た 活 用 高 天 原 神 話 の 活 用 が 目 立 つ 特 定 の 物 語 内 容 を 取 り 上 げ る 場 合 の 他 , 記 紀 全 般 と し て 取 り 上 げ る の が 特 色 記 紀 の 中 の 特 定 の 物 語 の 活 用 特 に ,F  ̄神 武 天 皇 」 と 厂日 本 武 尊 」 に 関 す る 物 語 が 典 型 的 な 教 材 「 神 武 天 皇 」 に 関 す る 物 語 へ の 活 用 の 集 中 活  用 方  法 物 語 内 容 の 読 み 聞 か せ と 感 想 の 発 表 等 , 国 語 的 な 活 用 奈 良 時 代 で の 活 用 が 特 色 記 紀 編 纂 の 意 図 に 対 す る 思 考 ・ 判 断 を 重 視 物 語 内 容 の 理 解 と と も に , 記 紀 編 纂 の 意 図 に 対 す る 思 考 ・ 判 断 も 重 視 古 墳 時 代 で の 取 り 扱 い に 集 中 物 語 内 容 の 理 解 を 中 心 と し た 歴 史 資 料 的 活 用 物 語 内 容 を 考 古 学 等 の 成 果 と 対 比 さ せ る こ と に よ る 資 料 批 判 的 な 活 用 【 表 − 3】 神 話 を 活 用 七 た 歴 史 授 業 実 践 の変 遷 よ 辿 寤 活 用目 的別類型四 万 考 古 学 的 資 料 の重 視        ← →       神 話 の重 複 科 学 的 態 度 育 成 型 特 殊 性 解 明 型 折  衷  型 普 遍 性 解 明型 歴史 理 解型 神 話 導 入前 1950 ∼1955 年 2 過  渡  期 1956 ∼1967 年 1 2 1 1 4 神 話 導 入 後 導 入 期 1968 ∼1969 年 3 1 4 定 着 期 1970 年 代 1 1980 年 代 1 3 現 行 1990 年 代 1 1 1 3 合    計 4 6 2 4 14

3。 神話 活用 の論理 と人 物活 用 の論 理 の共 通性 。

類 似性

こ こで は, 前 項に示 し た分 析か ら, 神話 導入後

次第 に一般 化 して きて い ることが明 らか になっ た

歴史 理解型 の授業 実践 にお ける神話活 用 の論 理 と

人物 を活 用し た歴史授業 実践 にお ける人 物活 用 の

論理 を比較 ・分 析し, そ の共通 性や類 似性 につい

て考察 す ること にし た。 なお, 中学 校の歴史 理解

型 の授業実践 事 例か らは, 授業 記録 の詳 細 な事 例

を抽 出で きなか ったた め, ここで の分 析 は,小 学

校 の事 例 に限定 して行う こと にした。

そ こで, 神話 を活 用し た歴史理解型 の授業実践

人 物を 活用 した歴史 授業実 践と もに 4事 例ずっ を

分析対 象 として設定 し9)

, そ れぞ れの活 用 の論 理

及 び活 用結果 を比較 ・分 析し た結 果, 次 の 2点 が

指摘で き た。

① いず れも教材 として の有 効 吐がそ の具体性 に

求 めら れてお り, 歴史理 解, 究 明 のため の手段

として位置付 け られて いるO

② しかし なが ら, いず れ も結果 的に取 り扱い の

主 眼 が, 人物 (神話上 の人 物) の行為 や働 きそ

の ものの理解 に置 かれてお り, 時代 の特 色や時

代 背景 などを 発展的 に追求 す るものと はなって

いない。

この ことか ら, 神話 は本来 匚

人 物」 と はその特

質 が異な る教材で あ るに もか かわ らず, 実 際に は

−31 −

(4)

「人物

」と極めて類似

した活用がなされているこ

とが

明らかになった

。そこで

,以下

この

点をさら

に明らかにするために

,神話

を活用

した歴史理解

型の授

業実践

,人物を活用

した歴

史授業実践の

から典

型的な事例

をそれ

ぞれ

1事例

ずつ取

り上

1単位

時間の

中で神話や人物が

どの

ように取

り扱

われ

ているのか

を具体的に考察

してみ

たい

(1

『国引き』

『国譲

り』と日本の

あけぽの岬

の授業実践の分析

ア。

授業実践の概要

○ 

授業のね

らいと神話活用の意図

実践報告では

,単元のね

らい,単元の計画は示

され

ておらず

,本時の授

業の

記録が中心に紹介さ

れて

いる

。その

中で

,本授

業の

目標は

「農耕

を始

るようになって

,しだ

いに豊かにな

り,定住生

活を営み

『むら』か

『くに』

と発展

していっ

た過程

を理解

させ

」と示され

ている。

して

,本授業実践では,

「国引き神話」と

「国譲

り神話

」の

2つが取

り上げられているが,

これ

らを活用する理

由は次のように説明され

てい

る。・

まず

「国引き神話」に

ついては,従来の国の

形成に関す

る指導過程

(登

呂遺跡の想像図や魏志

人伝の

一節

をもとに,

「む

ら」から

「くに」へ

と発展

していった

ことを理解させるような展開)

に対

して

「国土統

一の過程を理づめにはつかま

【資

1】本

時の

習活

(1

)大昔の

人々の

生活

を想起

させる

(2

)農耕

生活が

始まって

,人々は

「む

ら」をつ

くり,定住す

るように

なった

ことを知

らせ

る。

(3

ことを理解

「むら」の

させ

人々は

る。

,指導者

を中心に共同生活

をしていた

(4

)い

くつかの

「むら」が統合

されて

「くに」ができたこ

を知らせ

る。

イ。

考 

前項に示

したように

,学習活動

(1)

(4)

ついて

,登呂遺跡の想像

図や魏

志倭人伝の一節

を主教

として

,大昔の

狩猟や漁撈の生活の後,農耕の

始によ

って定住生活が行われ

るようにな

「む

」ができるとともに

,やがて指導者が現れ

「む

」どうしの争いを経て

「くに」ができたこと

を理解

させる展開となっている

。つま

り,ここで

,授

業者が

「図式的平板的」と指摘

していると

ころの匚

来の指導過程」を採用して,

「くに」

ることは

できても

,筋だけでは味気ない」と指

,その

「国引き神話

」は

「庶民的な親

さが

こもって

」お

り,厂

出雲の

人々が,いかに国

土開発

,国造

りということに大きな関心をもち,

それに

向かっていっ

しょうけんめ

いに進も

うと

たかを感

じ取らせ

」ることができるとしている。

さらに

「それぞれの

『むら』や

『くに』の人々

,自分たちの郷土をよ

り住み

く,よ

り豊かに

しよ

うと努

力していた

ことを推察させ」る

ことが

できると述べ

ている

一方,

「国譲

り神話」については

『むら』か

『くに』へ

と発展

してい

く経過を理解させるの

に役立つとともに

,大和朝廷による国家統

一事業

の前段階

的扱いと

して

,取

り上げるにふさわ

しい

もの

」と

している

以上の

ことから

,授業者は従来の

「図式的平板

的な

」取

り扱いにな

りやすい国の

形成に関する学

習を

,神話

を活用することによって,古代の

人々

が国造

りに

対して

,どの

ような願

いや思いを持ち

どの

ように努

力したのか

「くに

」と

「くに」の

合併は

どの

ように行われたのか

,などを想像

し追

求する

,具体的で人間の姿のみ

える学習に転換

たか

ったものと考

えられる

○ 

業の展開

業記録によると

,この授業は大きくは

以下の

7つの学習活動

(資料−

1)で構成され

ている。

(5)大昔の人々が

力していたこと

,自分た

を推察

させ

ちの郷

る。

土をよ

り豊かに

しようと努

(6)小

さな

「くに」が

,だんだん統合

され

,やがて大和朝廷

,国

を統一

してい

くことを理解

させ

る。

剛 

本時の学習

をまとめ

る。

が形成

され

るまでを段階的に理解させている

神話が活用され

ているのは

,学習活動(5)

及び(6)

,学習活動(5)

おいて「くに

づくり」の様子

,学習活動(6)

において「くに」と「くに」との

合併

・統合の様子を理解させる

ように

なっ

ている

こでここでは

,以下学習活動(5)

及び(6)

に焦点を

当てて分析を進め

てみ

たい。

学習活動(5)

の主眼は

,「

国引き神話」の

内容か

ら出雲の国の人々の

姿

を推察

させる

ことにある

国造

りにかける願

Oところが,ここで紹

いや努力の

― 32

(5)

介 さ れ て い る 「 国 引 き 神 話 」 に は ,「 ヤ ツ カ ミ ズ オ ミ ツ ヌ ノ ミ コ ト」 と い う神 の 国 引 き の 行 為 が 物 語 ら れ て い る だ け で , 出 雲 の人 々 は 登 場 し て い な い。 従 っ て , 出 雲 の人 々 の願 い や 努 力 を こ の 神 話 か ら直 接 読 み 取 る こ と は 不 可 能 で あ る 。 そ こ で 「 国 引 き 神 話 」 を 考 え 出 し た 出 雲 の 人 々 が , こ の 神 話 に 何 を 託 し て い た の か, あ る い は ま た, こ の 神 話 が ど の よ う な 事 実 を 象 徴 し て い る の か を 類 推 さ せ る こ と が必 要 と な る 。 そ れを 可 能 に し て い る の が ,「 こ の話 に は, ど ん な 意 味 が あ る と 思 う か」 と い う 発 問 で あ る。 事 実 , こ の 問 い に よ っ て , 「 出 雲 の 人 々 が , 自 分 た ち の く ら し を 豊 か に し よ う と し て , み ん な で が ん ば っ て い た こ とが わ か る」 とい う 発 言 が 引 き 出 さ れ て お り , 子 ど も は神 話 の 背 景 に あ る当 時 の人 々 の 願 い や 努 力 の姿 を 指 摘 し て い る 。 つ ま り , 神 話 の 意 味 を 問 う こ の 発 問 は , 物 語 内 容 に 向 け ら れ て い た 子 ど も た ち の 目 を , 物 語 内 容 の 背 後 に あ る人 々 の 願 い や 意 識 に 向 け さ せ る と い う 役 割 を 果 た し て い る。 こ の よ う に 学 習 活 動(5)で は, 物 語 内 容 の理 解 把 握 に 基 づ い て, 神話 の意 味を 考 え さ せ るこ と によ っ て , 神 話 に 託 さ れ た人 々 の 願 い や 努 力 の 姿 に気 づ か せ て い る。 そ の 意 味 で , こ こで の 神話 の活用 は, ど ち らか と い え ば 客 観 的 ・ 分 析 的 な 神 話 の取 り 扱 い が な さ れ て い る と い え る。 こ れ に対 し て , 学 習 活 動(6)で は, 極 めて 物 語的 , 共 感 的 な 神話 の 取 り 扱 い が な さ れ て い る 。 学 習 活 動(6)の主 眼 は,「 国 譲 り 神 話 」 を 活 用 す る こ と に よ っ て ,「 く に」 と 「 く に」 と の 合 併 の 様 子 を 具 体 的 に と らえ さ せ る こ と に あ る 。 従 っ て こ こ で は,「 国 譲 り 神 話 」 一 高 天 原 の 支 配 者 で あ 【表 −4】 学習活動(6)におけ る神話の取り 扱い る 天 照 大 神 と国 土 の支 配 者 で あ る大 国 主 神 が 念 入 り な 交 渉 や 激 し い 対 決 を 重 ね た 末 に, 敗 れ た 大 国 主 神 が国 土 を 献 上 す る と い う 話 − か ら, 大 和 朝 廷 と 想 定 さ れ る「 高 天 原 」 と 「 出 雲 の 国 」 の 間 で ど の よ う な や り と り が行 わ れ た か を 直 接 読 み 取 ら せ て い く こ と に な る。 こ こで の 神 話 の 取 り 扱 い を 具 体 的 に示 す と下 の表 − 4の よ う にな っ てい る。 表 − 4 か ら わ か る よ う に, こ こ で は 複 雑 で 長 い ス ト ー リ ー持 つ 「 国 譲 り 神 話 」 が 7つ の 場 面 に 分 け て 提 示 さ れ て い る。 さ ら に, 場 面 と場 面 を つ な ぐ 教 師 の問 い に よ っ て , 次 の 展 開 を 予 測 さ せ, そ れ を 次 の場 面 の 読 み 聞 か せ に よ り 確 認 し て い く と い う 方 法 が と ら れ て い る 。 こ れ に よ っ て ,「 く に 」 と 匚く に」 と の 交 渉 や 談 合 の 様 子 を 段 階 的 に み さ せ て い こ う と し て い る わ け で あ る。 場 面 と 場 面 を つ な ぐ 教 師 の 発 問 の 内 容 に 着 目 す る と, 天 照 大 神 ( 高 天 原 ) の 側 ま た は大 国 主 神 ( 出 雲 の 国 ) の 側 の人 物 ( 神 話 上 の 人 物 ま た は神 ) の立 場 に 立 た せ て , 対 応 や 行 動 を予 測 さ せ て い る こ と が わ か る 。 漠 然 と 次 の 展 開 を 問 う の で は な く, 人 物 の行 為 に 焦 点 を 当 て て, な お か つ そ の人 物 の立 場 に な っ て 考 え さ せ て い る わ け で あ る。 つ ま り , 神 話 上 の 人 物 の 立 場 に 立 た せ る( 追 体 験 さ せ る) こ と に よ っ て , そ れ ぞ れ の 側 の 人 物 の行 為 を 共 感 的 に理 解 さ せ よ う と し て い る ので あ る。 こ の よ う に み て く る と, 神 話 を 通 し て 「 く に 」 と 「 く に」 と の 合 併 ・ 統 合 の 様 子 を 具 体 的 に と ら え さ せ る と い う こ と は, 物 語 の 中 の主 た る 登 場 人 物 の 行 為 を 追 体 験 的 , 共 感 的 に理 解 さ せ る こ と に ほ か な ら な い こ と が わ か る。 読   み    聞    か    せ    の    場   面 教  師  の  発  問 ①  天 照 大 神 が, 出 雲 の国 を 平 定 す る た め に アメ ノ ホ ヒ ノ神 を 遣 わし た が, かえ って 大 国 主 神 の 家来 にな って し ま う 。 ②  次 に , 2 番目 の使 者 と し て 天 若 日 子( あ め の わ か ひ こ) を 遣 わし た が, 大国 主 神 の娘 を 妻 に し て こ れ も帰 って こ. な か った 。 ③  そ こで ,武 勇 に 優 れ た建 御 雷 神( た け みか づ ち の か み) を 遣 わし , 大 国主 神 に国 を 譲 る よ う に 迫 ら せ た。 ④  大 国 主 神 が 即 答を 避 け , 子 の 八重 事 代主 命 ( や え こ と しろ ぬし のみ こ と) に相 談 する 旨 伝 え た と ころ , 建 御 雷 神 は八 重 事 代主 命を 呼 び付 け て 直 接 談 判 し た。 ⑤  八 重 事 代主 命 は, 大 国 主 神 に 出 雲 の 国を 天 照 大 神 の 子孫 に献 上 すべ き 旨を 伝え た。 そ こ で , 建 御 雷神 は大 国 主 神 に他 に も意 見 のあ る子 が あ る か と 尋 ね た。 ⑥  国 土 を 無 条 件 に譲 れ とい う 高 天 原 の 要求 に反 対 し た タ ケ ミ ナ カ タ ノ神 が 建 御雷 神 と力 く ら べ を し たが , 屈 服 し た 。 そ こで , 建 御雷 神 は大 国 主 神 に 再 び 国土 の献 上 を 迫 っ た。 ⑦  大 国 主 神 は異 存 のな い 旨 を 伝 え, そ の場 で 死 ん で し ま う。 ① て 天 照 大 神 は ど う する だ ろ う 」 ② て こ う な っ た ら, ど う する だ ろ う」 ③ ’「 大 国 主 神 は ど う し ただ ろ う」 ④ ’「 八 重 事 代 主 命 は ど う返 事 し た と思 うか 」 ⑤ ’「 だ れ か 反 対 す る も のが い る . だ ろ うか 」 ⑥ ’「 大 国 主 神 は,ど のよ う に 返 事 を する だ ろ う か」 ⑦ ’「 高 天 原 で は ど う する だ ろ う 」

(2)「 伊 藤博文 と大日本 帝国憲法」11)

の授業実 践 の

分 析

ア.授業 実践 の概要

○ 授業 のねらい と人 物活 用の意図

まず, 小単元 の ねらい及 び1時 間ごと の主 題 は

次 のように示 されて いる。

−33 −

(6)

【 小 単 元 の ね らい 】 伊 藤 博 文 は, 盛 り 上 が って き た 自 由民 権 運 動 を お さ え , 日 本 を 天 皇 中 心 の 近 代 国家 にし よう と考 え, 国 会 開 設 の約 束 を 国 民 に示 す と と も に, そ の準 備 と し て 大 日 本 帝 国 憲 法 を 作 成 , 制 定 し た が, 近 代 国 家 と し て の完 成 に は さ ら に 時 間 が か か っ た こ と を と らえ さ せ る。 【 小 単 元 の 指 導 計 画 ( 3時 間 扱 い )】 第 1 時  憲 法 発 布 を めぐ っ て 第 2 時  伊 藤 博 文 と 大 日 本 帝 国 憲 法 第 3 時  国 会 の 開 設 次 に, 本 授 業 で は伊 藤 博 文 を 中 心 的 に取 り 上 げ て い る が。 そ の 理 由 に つ い て, 授 業 者 は次 の 2点 を 挙 げて い る。 ・ 「 国 会 の 開 設 」 を 扱 う 場 合 , 開 設 を 促 し た 自 由 民 権 運 動 と, 開 設 の 準 備 を 進 め た政 府 の動 き を 扱 う 必 要 が あ り , 政 府 側 か ら 選 ぶ と す れ ば そ の中 心 人 物 で あ る 伊 藤 博 文 が 挙 げ ら れ る 。 ・ 『 歴 史 的 な 興 味 ・ 関 心 の調 査 』 ( 東 京 都 小 学 校 社 会 科 研 究 会  昭 和52 年 ) に よ れ ば, 6年 生 【 資料 −21 第 2時 の展開計画 の児 童 で 伊 藤 博 文 を 知 っ て い る と 答 え た も の は97 % と な って お り√ 興 味 ・ 関 心 が高 い 。 つ ま り , 学 習 の ね らい ・ 内 容 , 児 童 の 興 味 ・ 関 心 の 2点 を 考 慮 し て, 伊 藤 博 文 を 選 択 し た と し て い る。 そ し て, 伊 藤 博 文 を ど の よ う に取 り 扱 う か につ い て ,「 国 会 開 設 の準 備 と し て , 以 後 の 日 本 の方 向 を 決 定 づ け た も の と し て , 大 日本 帝 国 憲 法 につ い て 学 習 し て お く こ と は重 要 で あ る」 と し た う え で, こ の 憲 法 の 内 容 の 理 解 か ら 一 歩 進 ん で , 「 伊 藤 の 考 え て い た 日 本 を つ か ま せ よ う と し た 」 と 述 べ て い る。 こ の こ と か ら, 大 日 本 帝 国 憲 法 の 作 成 , 制 定 を 行 っ た 伊 藤博 文 の 意 図 や 願 い を 把 握 さ せ る こ と に よ っ て, 当 時 の日 本 が ど の よ う な 国 家 を 建 設 し よ う と し て い た の か, ま た そ れ が ど の う に 実 現 さ れ た の か を 理 解 さ せ た か っ た も の と 考 え ら れ る。 ○  授 業 の 展 開 こ こ で は, 伊 藤博 文 が中 心 的 に 取 り 扱 わ れ て い る 第 2 時 の 授 業 の 概 要( 資 料 − 2)を 紹 介 し た い。 学  習  活  動  ・  内  容 備   考( 資   料 ・ 留  意  点 ) ○ 前 時 に出 さ れ た疑 問 を 調 べて い く。 ○ 伊 藤 博 文 の年 譜 を 示 し, 彼 の業 績 を理 解 す る。 ○ 大 日 本 帝 国 憲 法 の内 容 につ いて 調 べ る。 ○ 憲 法 作 成 過 程 につ い て か ん た ん な 説明 を 聞 く。 ○ 憲 法 発 布 式 典 の絵 か ら, 憲 法 の 性 格を つ か む。 ○ 資 料 6か ら, 伊 藤 博 文 の考 え を 読 み取 る。 ・ 千 円 札 ス ラ イド (or 現 物 ) ・ 伊 藤 博 文 の年 譜 は読 み取 り や す い よ う に し て お く。 ・ 憲 法 の条 文 は, プ リ ント し て お く。 む ず か し い 用 語 に は傍 線 を 引 い て お き, 語 句 を 調 べ さ せ な が ら, 理 解 を は か る。 ・ 資 料 6( 伊 藤博 文 の 憲 法 に 関 す る 演 説 ) はて い ね い に読 ま せ , 伊 藤 博 文 の考 え を し っ か り つ か ま せ る。 イ。 考 察 前 項 で 示 し た第 2 時 の 授 業 の 概 要 か ら わ か る よ う に, 本 授業 は大 日 本 帝 国 憲 法 の 作 成 , 制 定 と い う 伊 藤 博 文 の行 為 ・ 業 績 の 内 容 を 理 解 さ せ る 活 動 と 伊 藤 博 文 が 大 日 本 帝 国 憲 法 を つ く っ た理 由 ( 目 的 や 背 景 ) を 理 解 さ せ る 活 動 の 2つ か ら組 織 さ れ て い る。 具 体 的 に は, 前 半 部 で は, 憲 法 の 条 文 の 理 解, 憲 法 作 成 過 程 につ い て の 説 明 , 憲 法 発 布 式 典 の 絵 か ら の憲 法 の 性 格 の読 み 取 り を 通 し て, 大 日 本 帝 国 憲 法 が ど の よ う な も の で あ っ た の か を 多 面 的 に理 解 さ せ て い る。 後 半 部 で は, 伊 藤 博 文 の 憲 法 に 関 す る演 説 を 提 示 し , こ の よ う な 憲 法 を 作 成 し た伊 藤 博 文 の 考 え 方 を 通 し て , 当 時 の 日 本 の 状 況 や課 題 につ い て理 解 さ せ よ うと して い る。 従 っ て , 伊 藤 博 文 が 中 心 的 に取 り 扱 わ れ て い る の は 後 半 部 の 学 習 活 動 で あ る。 そ こ で, 後 半 部 の 教 師 の 発 問 及 び 児 童 の 応 答 に 着 目 し て み る と, 教 師 は 匚ド イ ツ の 憲 法 を 手 本 に し て , 英 米 仏 の 憲 法 を 手 本 に し な か っ た の はな ぜ だ ろ う」 と い う 問 い に よ っ て , ド イ ツ憲 法 を 選 択 し た 伊 藤 博 文 の 行 為 に 着 目 さ せ る と と も に 伊 藤 博 文 の立 場 に な っ て そ の 理 由 を 考 え さ せ て い る。 こ の よ う な 発 問 に 対 し て , 子 ど も た ち は, 匚明 治 政 府 は, 自 由 民 権 運 動を 弾 圧 し てい た。 伊 藤博 文 だ っ て , 自 由 民 権 運 動 は き ら い だ っ た。 だ か ら , 自 由 や 平 等 が さ か ん に い わ れ る 英 米 仏 の 憲 法 を , 手 本 にし な か っ た」,「 ̄も し , 英 米 仏 の 憲 法 を 手 本 に し た ら, 伊 藤 博 文 が 考 え て い た よ う な , 天 皇 中 心 の 近 代 国 家 が で き に く か っ た と 思 う」 な ど , 伊 藤 博 文 の 願 い や 意 図 に 基 づ い て 行 為 の 理 由 を 説 明 し て い る 。 つ ま り , こ こ で は 時 代 状 況 や 時 代 背 景 を 探 る こ と に よ って 行 為 が 行 わ れ た 理 由 や 必 然 性 を 説

(7)

明す

るのでは

なく

,伊藤博文の

立場

を追体験

させ

その考

えを探る

ことによって行為を説明させ

よう

としているのである

。そ

して

,それ

を通

して,当

時の

日本の状況や課題に

気づかせようと

している

けである。

このようにみ

てくると

,本授

業実践は伊藤博文

という人物の

行為

を追体験的

・共感的に理解

させ

ることによって

,時代の状況や課題を理解させる

ものになっていることが理解

され

る。

以上分析

した

ことか

,神話

を活用

した授

業事

例の学習活動

(6

の部分

と人物

を活用

した授

業事例

の後半部分は

,人物

(神話上の人物)の行為

を追

体験的

,共感的に理解

させる

ことを通

して,時代

の様子あるいは時代の状況を理解

させ

ようと

して

いる点では

,全

く共通

したものになっていること

が指摘できる

。つま

り,全く同様の論理で活用

てお

,部分的にでは

あるが

,極め

て類似

した

授業になって

いるといえる

IV 

とめ

と課

1.研

究仮

説の

当性

いて

社会

歴史

おい

ては

,神

話は

文化

遺産

して取

り上

られ

,位置

られ

きた

もの

この

ことに

いては,

1969

年版

学校

指導

会編の

中に

次の

うに

明示

され

いる

。厂

日本

神話は

,われ

われ

日本

人に

って

,貴

な文

産の

つだ

とい

ことが

きる(

中略)

話は

とは異

なる

元の

物語

して

つま

り古

人の

ものの

方や

え方

,さ

らに信

や希

望や

想像

を如実

反映

した

,精神

的な所

して

を尊

重す

ことがた

いせ

なの

ある

この

うに

を歴

史学

習の

中に文

遺産

て位

ける

らば

,神

話の

を原

・古代の

々の

思想

,信

,観

どを物語るもの

し,

その

り扱

いの

を原

・古

代の

日本

人の

精神

な側

面の

明に

求め

るの

いわ

当然の

とで

,授

業その

ける

神話の

り扱

いも

この

点に

して

され

るべ

あろう

。ところが

話学

習の

状や

態は

必ず

しも

この

うな

で神

これ

話が

での

り上

られ

って

明らか

とは

えな

したよ

うに

歴史教科書においては神話

を国土の統

一と関連

る物語と

して取

り上げ

,具体的な物語内容を例

する

ことによって

,神話と史実

との

関連性を示唆

する記述に変化

してきている

。また,神話を活用

した授業実践に

おいては

,神話の政治的作為性や

虚構性を究明する

,ある

いは古代の

人々の思想

信仰の

反映と

しての意味がある

ことを理解

させ

といった神話の意味や性格を解明する授業実践に

代わ

,神話を古代史解明のための歴史資料と

て評価

,歴史理解のために活用する授

業実践が

徐々に増加

している

。この

ような検証結

果に着目

すると

,歴史教科書にせ

よ,授業実践にせよ神話

の取

り扱

いの

力点は

,原始

・古代史

を,とりわ

国の

形成過程

を神話で具体的に理解させるところ

にあるの

であ

,文化遺産

しての観点

ら原

古代の人々の精神的な側

面を解

明することになっ

ていないことがわかる

さらに

,歴史理解型の授

業実践においては

,神

話が歴史理解

を具体的なものにするための

手段

して位置付けられ

ていなが

,実際には神話上の

人物の行為や働

,心情

などを追体験

・共感的

に理解

させる学習となってお

,結果的に人物学

習と極め

て類似

した学習が行われ

ている

Oす

なわ

,神話学習で扱う人物が歴史上の

人物でないと

いう点を除いて

,人物学習との大きな差異はみ

ないの

である

この

ようにみ

てくると

,神話

を活用することは

結果的に歴史上の人物が見出

し難い原始

・古代史

学習に神話上の

人物を挿入ない

しは登場させるこ

とになっているのであ

,む

しろ神話学習は人物

学習の

一環ととらえた方が実態に近いといえる

って

,研究仮説に示

したように実態と

しては神

話の導入は通史的な人物中心の

歴史学習を完成さ

せることになっている

といっても決

して過言では

ないだ

ろう。

2.現行社会科歴史教育に

おける神話学習の

問題

丿

陛に

ついて

これまでの分析や考察を踏まえると

,現行の社

会科歴史教育における神話学習の根本的な問題

,通史学習の中で,あるいは

通史的な内容の理

を前提と

して神話が活用

され

ているところに

るといえる。なぜ

なら,そのことによって,人物

― 35

(8)

と極

類似

した神

習が

行われ

とに

くと考

られ

るか

らで

ある

この

うに

学習

類似

した

学習

が行わ

場合

,基

的に

問題

とな

とは

,第

1に

上の

物は

いわ

空の

物で

,実在

(証

され

いる

人物

習の

とは

性格

るもの

ある

にも

関わ

らず

,その

上の

を通

して歴

を教

える

とに

とで

ある

。つま

り,神

史実

との

いう

とが絶

えず

問題

となる

O第

2に

,神

上の

為の

点が置

かれ

るため

,神

話の

性格

いった

話その

もの

対す

学的

批判

な認

形成

され

ということである

3に

,第

2の

点に

関わ

って神

上の

物の

を共感

,追体

に理

させ

ことが

重視

され

いるた

,神

話の

記述

して

批判

吟味

える

った

主体

な学

方が

習者

に保

いこ

とで

って

,通

学習

ある

いは

史的

内容の

を前

して

神話

を活用

すれ

,科

学的

な歴

史認

目的

とす

る社

科歴

とは

反す

形の

ことに

,極

て情

く危

,心

性が

的な

ある

史学

とが

習が

指摘

行わ

3.今

後の

で設

した

究仮

,教

育行

レベル

(政策

な)

,ある

いは

会科

史的

点か

らみ

合の

導入のね

らいや

図の

を指

摘す

るもの

とな

いる

。従

,本研

説の

効性

を検

証す

るた

には

,一

では

,教

育行政

関係

籍や

を詳細

に検

討す

ことや

史的

な考

必要

【註】

1)文部省

『小学校学習指導要領社会科

編』,

1989

文部省

『小学校

指導書社会編』学校図書

1989.

6,所収,

p.106

2)神話

(神代の

物語

)と伝承

(神武天皇

以下の

古代伝承)は

,学問的には区別

して考

えられ

いるが

,本研究では伝承も含め

た意味

「神話

という用語

を用いている。

3)文部省

『小学校指導書社会編』学校

図書,

1989.6,

p.77

4)佐藤伸雄

『神話

・伝承』は国史教育への逆

もどり

,歴史教育者協議会編

『新版 

日の

君が代

・天皇

・神話』地歴社,

1990,

p.229

5)佐藤伸雄,

同上書,

p.229

6

)詳しくは,拙稿

『社会科歴史教育と神話学習』

兵庫教育大学修士論文,

1996.12

を参照されたい

7)分析対象として設定した教科書は,次の通り

である。

小学校教科書∼学校図書

(1960

・ 1968

・ 1992

年版)

,教育出版(1963

・ 1968

・ 1992

年版)

東京書籍(1968

年版)

,中教出版(1992

年版)

中学校教科書∼実業之日本社(1951

年版)

日本書籍(1955

年版)

,東京書籍(1965

年版)

中教出版(1966

・ 1972

・ 1993

年版)

,学校図書

(1972

・ 1993

年版)

教育出版(1972

・ 1993

年版)

8)分析対象として設定した授業実践の主な出典

は,次の通りである。

『教育科学社会科教育』

(明治図書,

1967.5),

『神話

・伝承をどう教えるか』

(明治図書1968),

『歴史教育の資料と扱い方』

(地歴社,

1965),

『神話と教育』

(新日本出版社,

1969),

『中学校

社会歴史学習の計画と展開』

(明治図書V

1961),

『新小学社会6年の授業』

(民衆社,

1993)

9)分析対象として設定した授業実践の出典は,

次の通りである。

神話を活用した授業実践

『神話・伝承をど

う教えるか』

(明治図書,

1968)

人物を活用した授業実践∼

『新社会科の単元

構成と展開』

(明治図書,

1981),

「子どもを

生かす社会科学習活動の

工夫」

(明治図書,

1981)

『教育科学社会科教育』

(明治図書

1981.12)

10)高橋早苗

・山口康助編

『神話

・伝承をどう教

えるか』明治図書,

1968,

pp.62-67

11)小林信郎

・里野清一編

『新社会科の単元構成

と展開』明治図書,

1981,

pp.80-91

12)文部省

『小学校指導書社会編』

,大阪書籍,

1969.

5

,

p.

6

−36−

参照

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