フレキシブルアームの制御
2011SE136小島涼平
指導教員:陳幹
1
はじめに
フレキシブルアームは高度の精度も要求される状況にお
いて,例えば軽量化によってアームの剛性が低下しそれま
で起きなかった振動が発生すると,性能低下につながって
しまう.それは制御によって抑制する必要がある[1].
制御対象はフレキシブルリンクモジュールを取り付けた
SRV02プラントである.本研究では論文[1]に対して減衰
振動を考慮したモデリングを行い,最適サーボシステムに
よって追従性能の改善を目的とする.
2
モデリング
2.1 モデリング
図1に制御対象である1自由度のフレキシブルリンクの
俯瞰モデルを示す.制御対象はトルクを加えた時,根本のハ
ブ(モータ)が
θだけ回転し,そこから先端部がばねの力の
みによって
αだけ回転する.
図1 フレキシブルリンクの俯瞰モデル
モータの仕様書と論文[2]より,入力電圧
V と負荷出力
トルク
τの関係は次式になる.変数の詳細は表1に示す.
τ = ηmηgKtKg(V − KgKm
˙
θ)
Rm
(1)
制御対象の運動エネルギー
T はハブとリンクに存在し,
ポテンシャルエネルギー
U はばねのみに存在している.ま
たラグラジアン
Lは以下となる.
T = 1
2
Jeq
˙
θ2+1
2
JLink( ˙
θ + ˙α)
2
(2)
U = 1
2
KStif fα
2
(3)
L = 1
2
Jeq
˙
θ2+1
2
JLink( ˙
θ + ˙α)
2
−1
2
KStif fα
2
(4)
これより
θ, αを一般化座標として,オイラ−・ラグラン
ジュの運動方程式を得る.ここで
−Beqθ˙は摩擦についての
項であり,
−c ˙αは減衰振動についての項(減衰項)である.
δ
δt(
δL
δ ˙θ)
−
δL
δθ = τ− Beq
˙
θ (5)
δ
δt(
δL
δ ˙α)
−
δL
δα =
−c ˙α (6)
2.2 減衰振動
本研究では制御対象の減衰振動を考慮する.論文[2]より
剛性
KStif f,減衰比
ζ(臨界減衰係数
cc分の減衰係数
c)か
ら減衰係数
cは以下となる.
KStif f = ωd2
JLink= 1.722 (7)
ζ = c
cc
=
c
2√
JLinkKStif f
c = 0.158 (8)
表1 制御対象のパラメータ
記号 詳細 値
ηg ギヤボックス効率 0.9
ηm モータ効率 0.69
Kt モータトルク定数 0.00767[Nm/A]
Kg システムギヤ比 70
Jeq ハブでの等価慣性モーメント 0.002[kgm2]
Rm 電機子抵抗 2.6[Ω]
Beq 等価粘性減衰係数 0.004[Nm/(rad/s)]
Km 逆起電力係数 0.00767[V/(rad/s)]
L フレキシブルリンク長さ 0.43[m]
M フレキシブルリンク質量 0.065[kg]
ωd 減衰固有角振動数 20.735
ζ 減衰比 0.9517
JLink リンクの慣性モーメント 0.004
KStif f 剛性 1.722
2.3 制御対象の状態空間表現
式(1),(5),(6)からシステムの状態空間表現は次式とな
る.ただし出力は
θ, αである.
˙
x =
0 0 1 0
0 0 0 1
0
KStif f
Jeq −S
c
Jeq
0
−KStif f(Jeq+JLink)
JeqJLink S −
c(Jeq+JLink)
JeqJLink
x
+
0
0
ηmηgKtKg
JeqRm
−ηmηgKtKg
JeqRm
u (9)
y = [ 1 1 0
0 ] x (10)
ここでシステムの状態ベクトル
x,制御入力
u, ˙θの係数
S
は以下である.
x =[
θ α θ˙
α˙ ]
T
u = V
S = ηmηgKtK
2
gKm+ BeqRm
JeqRm
3
コントローラ設計
3.1 最適サーボシステムのコントローラ設計
最適サーボシステム[3](詳しくは[4])を設計するために,
式(9),(10)を状態方程式
{
˙
x(t) = Ax(t) + Bu(t)
y(t) = Cx(t) (11)
とする.ここで定常値
x∞, u∞, w∞からの変動を
˜
xe=
[
˜
x(t)
˜
w(t)
]
=
[
x(t)
w(t)
]
−
[
x∞
w∞
]
(12)
˜
u(t) = u(t)− u∞ (13)
と定義すると,以下の拡大偏差システムを得る.
{
˙˜
xe(t) = Aex˜
e(t) + Beu(t)˜
e(t) = Cex˜
e(t)
(14)
Ae=
[
A O
−C O
]
, Be=
[
B
O
]
, Ce= [
−C O ]
次に評価関数
J =
∫
∞
0
(
˜
xe(t)TQex˜
e(t) + ˜u(t)TReu(t)˜
)
dt (15)
Qe=
[
CTQ
11
C O
O Q22
]
を最小化する以下のコントローラを得る.
˜
u(t) = Kex˜
e(t), Ke= [ K G ] =−R−1e B
T
ePe (16)
u(t) = Kx(t) + G
∫
t
0
e(t)dt
+ [
−K + 2GP22
−1P
T
12
I ]
[
A B
C O
]
−1[
O
I
]
yref(t)
− 2GP−1
22
P
T
12
x0 (17)
K =−R−1e BTP11
, G =−R−1e B
TP
12
4
シミュレーションと実験
4.1 重みの設定
評価関数(15)について定義(12)から
J =
∫
∞
0
(
Q11
e(t)2
+ Q22
w(t)˜ 2
+ Re˜
u(t)2
)
dt (18)
となる.よって重みは以下を考慮すればよい.
Q11
> 0, Q22
> 0, Re> 0 (19)
4.2 追従性能の確認
重みを
Q11
= 20, Q22= 700, Re= 1とするとゲインは
Ke= [
−8.9701 −4.5691 −0.57455 −0.40571 26.458 ]
となる.減衰項の影響と追従性能の確認のためにシミュ
レーション及び実験を行った.その減衰項の影響の比較を
図2に示す.図2は
θに対するPIDコントローラによる,
減衰項を含むモデルと含まないモデルの比較である.ただ
し目標値を
π/2として
αはコントロールしていない.2つ
のモデルの波形はほぼ一致している.
図2 減衰項の影響の比較
次に異なるコントローラによる追従性能の比較を図3に
示す.図3は本研究と論文[1]のコントローラでの追従性能
の比較であり,目標値は
π/4とした.本研究のコントロー
ラを使用した方が速く目標値に到達し安定している.
図3 異なるコントローラによる追従性能の比較
5
終わりに
本研究では減衰振動を考慮したモデリングと,最適サー
ボシステムでのコントローラ設計を行った.図3から,論文
[1]と比べ追従性能は改善された.しかし図2より,2つの波
形に違いがなく,減衰項による影響はほとんどない.よって
この制御対象に対して,減衰振動に関する項は無視できる.
参考文献
[1] 水戸健詞:最適レギュレータによるフレキシブルアーム
の制振制御,南山大学数理情報学部2010年度卒業論文
(2010).
[2] 松井祐介,三輪有弘:フレキシブルアームに対するH2制
御によるロバスト安定化, 南山大学情報理工学部2012
年度卒業論文(2012).
[3] 川田昌克:MATLAB/Simulinkによる現代制御入門,森
北出版,pp.169–174(2011).
[4] 池田,須田:積分型最適サーボ系の構成,計測自動制御学
会,Vol.24,No.1,pp.40–46(1988).