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肢体不自由教育における学習評価に関しての一考察-自立活動を主とする教育課程における学習評価の観点について-

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Academic year: 2021

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はじめに

2016 年 12 月, 中央教育審議会は答申 (「幼稚園, 小 学校, 中学校, 高等学校及び特別支援学校の学習指導要 領等の改善及び必要な方策等について」) を発表した (以下 「答申」 と略す). 答申は 「第 9 章 2. 評価の三つ の観点」 において, 現在 「 知識・理解 技能 思考・ 判断・表現 関心・意欲・態度 (注 1) の四つの観点が設 定されている」 (答申) 観点別評価について 「目標に準 拠した評価の実質化や, 教科・校種を超えた共通理解に 基づく組織的な取り組みを促す観点から, 小・中・高等 学校の各教科を通じて 知識・技能 思考・判断・表 現 主体的に学習に取り組む態度 の 3 観点に整理す ることとし, 指導要録の様式を改善することが必要であ る」 (答申) としている. これにより, 今後学習評価の 観点は現在の 4 観点から 3 観点に変更されることとなっ た. 渡邉 (東京学芸大学名誉教授)(注 2) によれば, 現行の

肢体不自由教育における学習評価に関しての一考察

自立活動を主とする教育課程における学習評価の観点について

 木

日本福祉大学 子ども発達学部

One Consideration about the Learning Evaluation in the Limbs Inconvenient Education

−About the Point of View of the Learning Evaluation

in the Curriculum Mainly Involving the Independence Activity−

Hisashi TAKAGI

Faculty of Child Development, Nihon Fukushi University

Keywords:自立活動を主とする教育課程, 学習評価の観点, 自立活動, 子ども理解, 子どもたちに学ぶ 要旨 学習評価の観点が現行 4 観点から 3 観点に移行されることが提起された. 肢体不自由特別支援学校の自立活動を主とする 教育課程に在籍する子どもを担当している教員に調査を行ったところ, 現行学習評価の 4 観点が真に定着しているとは言い 難い結果が示された. 現行 4 観点は, 「健康・身体」 や 「コミュニケーション」 の観点の欠如など, 自立活動を主とする教 育課程の子どもたちには問題がある. そこで, 自立活動を主とする教育課程の学習評価の観点を検討した. 自立活動の 6 つ の内容の枠組に, 内容ごとに項目を設定し提案した. 授業や関りの目標やねらいから内容や項目を選択して活用できるもの である. 子どもたちの行動を多角的な観点から見ていくことで, 子ども理解を深め, 授業改善に資する可能性が開けると考 えられる.

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学習評価の 4 観点は 1991 年の 「学校教育法施行規則の 一部を改訂する省令」 による学習指導要録の改訂によっ て明らかになった新学力観によっているものである. 渡 邉は 「学習指導要領によって教科等の目標を示し, 指導 要録によって評価するという一体性を持たせているが, 指導要録によって指導要領の意味が付加されている関係 が理解できる. そして, 新指導要録では 新学力観 に 立った教育実践を評価するために 観点別学習状況 の 欄が設けられ, 評価の観点としては 関心・意欲・態度 , 思考・判断 , 技能・表現 , 知識・理解 の 4 つで 構成されることになった. なかでも, 評価の観点は, 指 導の観点でもあり, 学力の構造を表すものであると位置 づけられているため, 関心・意欲・態度 は文部省の いう 新学力観 の中核を占めるにいたっている」(注 3) としている. 特別支援教育においても上記の学習評価の 4 観点は実 施されており, 渡邉は 「知的障害教育において・・・・ 学習指導要録において観点別の評価として 関心・意欲・ 態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解 が示 されたが, 今日, この観点別評価は定着した感があ る」(注 4) と述べている. しかし, 肢体不自由教育におい てはどうであろうか. 特に, 肢体不自由特別支援学校に おける自立活動を主とする教育課程では, 上記 4 観点の 学習評価は定着したとはいい難い状況があるのではない かと思われる. 指導案作成時に指導案に記述することが 「定着」 とはいい難い. 実際に教員が学習評価において 活用し, 子どもたちへの理解を深め, 授業改善に役立て ていることが真の 「定着」 といえる. 筆者は以前 「現在, 授業の評価については 評価の四 観点 (①関心・意欲・態度), ②思考・判断, ③技能・ 表現, ④知識・理解 が示されていますが, どうも評判 がよくありません. 本来小・中学校の教科学習用に開発 されたものですので, 特別支援学校の障害の重い子ども たちの授業に, そのまま適用するというのは無理な話で す.」(注 5) と述べたことがあるが, 現在もその気持ちは変 わっていない. また, 文科省は 2014 年 3 月 24 日の 「児童生徒の学習 評価の在り方について (報告)」 において, 障害のある 児童生徒の学習評価に係る基本的な考え方は 「障害のな い児童生徒に対する評価の考え方と基本的に変わりがな い.」 としながら, 特別支援学校に在籍する児童生徒に 係る指導要録上の工夫においては 「各学校において, 一 人一人に応じて設定する具体的な指導内容をふまえると ともに, 教育課程や実際の学習状況を考慮して記述する ことが適当である.」 と述べている. このことをふまえ れば, 特別支援学校において, 少なくとも自立活動を主 とする教育課程では独自のものが工夫されてしかるべき であろうと考える. 本小論は, 肢体不自由特別支援学校 の自立活動を主とする教育課程において, 学習評価の 4 観点がどのように 「定着」 しているかを調査するととも に, 調査の結果をふまえ, 自立活動を主とする教育課程 に適当と思われる学習評価の観点を考察することを目的 とするものである.

1 4 観点の 「定着度」 調査

学習評価の 4 観点が肢体不自由特別支援学校の自立活 動を主とする教育課程を担当する教員にどの程度定着し ているかを調査するためアンケートを実施した. アンケー トは資料 1 である. (1) 目的 学習評価の 4 観点が肢体不自由特別支援学校の自立活 動を主とする教育課程を担当する教員にどの程度定着し 活用されているかを調査する. (2) 対象 ある自治体の肢体不自由特別支援学校 (知肢・病肢併 置校の場合は肢体不自由部門) において自立活動を主と する教育課程に在籍する子どもを担当している教員. (3) 期間 2017 年 6 月∼8 月 (4) 方法 質問紙法で資料 1 のアンケートに答えてもらった. 尚, アンケート実施時点では 「授業評価」 という文言を使用 していたが, 本小論では文科省にならい 「学習評価」 と 表記する. 従って, アンケートの内容に関する部分では 「授業評価」 という文言を使用する. (5) 回答数 回答数は, 11 校 31 人であった. ちなみにこの自治体 には肢体不自由特別支援学校 (知肢・病肢併置校の場合 は肢体不自由部門) は 2017 年 4 月現在 18 校設置されて

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いる. (6) 結果 結果は以下のようである. ①指導案に 「授業評価の四観点」 を記述していますか ○記述している 29 ○記述していない 2 ②「授業評価の四観点」 の記述はスムーズに行えますか ○行える 3 ○行えない 26 ○その理由については ・「技能・表現」 「知識・理解」 の観点を定めるのが大変 苦労する. ・「知識・理解」 以外がはっきり分化していないので, 分けて評価できない. ・「思考・判断」 と 「知識・理解」 の書き分けが難しく, どう評価するのか難しい. ・四観点に分けるほど認識の力が分化していない. 特に 「思考・判断」 「技能・表現」 「知識・理解」 が分けに くい. ・観点分けが難しく, 重複した表現になってしまう. ・「意欲」 なのか 「思考」 なのか, 「表現」 も 「技能」 の 一つと言える部分もあり, 「知識・理解」 と 「思考・ 判断」 が関連する部分もあり, どこに何を書けばよい のか, 悩むことが多い. ・「関心・意欲・態度」 はスムーズに書けるが, 他はう まく記述できない. ・「思考・判断」 と 「知識・理解」 が似たような記述に なってしまう. などが挙げられていた. ③授業評価を 「授業評価の四観点」 を基に行っています か ○行っている 15 ○行っていない 14 と半々の状況であった. 行っていないと回答した教員は, 指導案に記述した観 点以外の観点で評価を行っている, ということになる. ④ 「授業評価の四観点」 の枠組みは, 自立活動を主とす る教育課程に在籍する子どもたちの実態・課題にあっ ていると思いますか ○あっている 1 ○あっていない 25 ○どちらともいえない 3 であった. 大多数の教員が 「あっていない」 と回答しているが, 「前項の回答」 と合わせてみると, 半数の教員は 「実態 に合っていない」 から別 (自分なり) の観点で評価して いる, ということになる. 尚, 「どちらともいえない」 との回答の中には, ・これで行うことが大前提なので, これが合っているか どうかという視点で考えたことがありませんでした. この観点に合わせて (あてはめて) 児童・生徒の評価 を行っている現状です. ・このような観点をもって授業の中で生徒をみること, 取り組みを考えることで, 生徒のもつ力を伸ばせるの かな, 可能性を見出せるのかなとも思います. 指導案 を書く上で, 子どもたちに合わせて書くことが難しい と感じることもあります. との記述もあった. ⑤「授業表の四観点」 について自由に記述してもらった. ・自立活動の生徒たちには 「情動・意欲」 「思考・表現」 の二観点で評価するのが良いと考える. ・指導案を作る時には毎回迷いながら何かと分けていま すが, あまり意味のあることには思いません. ・四観点で書くように指導されるので無理やり埋めてい るように感じます. 自立活動主・重度の子は授業の中 でのめあても多く設定するのは難しく, 1・2 点のこ ともあるので四観点で評価のめあて (規準) をたてる のは無理があるように感じています. ・子どもの表出を見てそれが何によるものか考えて授業 を評価するときに, 四観点だと判断しにくい. もう少 し, 自由に, というか別の方法で考えられるといいと 思う. ・実際にそれをもとに評価はしていないが, 認識的には どうだろう, 意欲は?などと, 評価の観点は自分の中 で存在する. ただし, 重度の子どもにとっては, 分け られるものでなくつながっていることが多いので, 観 点別にするとかえって評価しにくくなるのではないか. ・指導案の形式で評価基準の記入が定められる前に 「授 業の中で期待する子どもの姿」 というものを指導案に

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記述していたことがあったので, 具体的な姿を記述す る評価規準については同様に考えることができました. ただそれを 4 観点にするとなると, 一つの子どもの姿 がいくつもの観点にまたがるような記述になりやすかっ たと思います. (現在は, 慣れたのか子どもの姿を詳 しく書きすぎないようにしているのか, 4 観点に当て はめて書くようにしている気がします). 息子や娘の 学校での書類にも同じものを目にして, 普通校と同様 な規準で, 特別支援学校の子どもたちの評価も行って いることが不思議に思ったことがありました. ・手や表情を使ってうまく表現することができない児童 に 「技能」 「知識」 という観点をどう評価していくか わからず, 指導案を書く際, いつも納得できないまま ムリやり書いていたところがあった. もし改善される のであれば, 指導者がより, 明確に指導を案として整 理できる項目になればと思う. ・教員側に生徒の表出を読み取る力がなければ, 正しい 評価は難しいと思います. 本人が意図してやらないの か, 未発達なのかの判断はベテランでも難しい. 思っ た通りに動かせないのに 「技能」 の評価は難しいと思 います. 以上のように, 様々な意見があった. (7) アンケートの考察 アンケート結果からは以下のことが指摘できると考え る. ○アンケートに回答してくれた教員は指導案作成時に 「学習評価の 4 観点」 を記述しているが, 記述には困 難が伴い, 苦労している. ○半分程度の教員は指導案に記述した 「学習評価の 4 観 点」 を授業の評価に使っておらず, 独自の観点で評価 を行っている, ○アンケートに回答してくれた大半の教員は 「学習評価 の 4 観点」 の枠組みが, 自立活動を主とする教育課程 に在籍している子どもたちの実態と課題にあっていな いと感じている. 以上のことから, 「学習評価の 4 観点」 は肢体不自由 特別支援学校 (知肢・病肢併置校の場合は肢体不自由部 門) の自立活動を主とする教育課程に在籍する子どもを 担任している教員には, 真の意味で定着しているとはい い難い状況にある. 自立活動を主とする教育課程に在籍 する重い障害のある子どもたちの実態と課題に応じた 「学習評価の観点」 を工夫していく必要がある, といえ る.

2 「授業評価の観点」 について

(1) 観点とは 「観点」 とは, 「物事を考察・判断するときの立場」 (大辞林第三版) と説明されている. 「物事」 は 「子どもの行動」 であり 「授業」 である. 子 どもの行動を見ていく場合の様々な角度を提供するのが 「観点」 である. と同時に, 子どもだけでなく, 教員も 評価される (この場合は自己評価も含む). 以上をふま え, 肢体不自由特別支援学校での自立活動を主とする教 育課程における 「学習評価の観点」 について, 現行 4 観 点をもとに考えていきたい. (2) 自立活動を主とする教育課程の子どもたちにとっ ての現行 4 観点の問題点 自立活動を主とする教育課程の子どもたちは健康面・ 身体面に大きな課題がある. 医療的ケアが必要な子ども たちや常時健康に不安がある子どもたち, 呼吸障害があっ たりや体温調節が苦手な子どもたち, 身体面では, 過度 の緊張や変形や拘縮など常に特別の配慮が必要な子ども たちが多い. 従って, 健康面や身体面の課題は重要な視 点である. まず, 子どもたちの成長発達にとって重大な 課題となる. また, 学習に生き生きと参加し行動し達成 感や成就感を得ていくうえでもその時その時の体調が大 きく作用する. 場合によっては, 命を守るという課題に 直面することも少なくない. このような点から考えると, 現行 4 観点には 「健康・身体」 の観点が見いだせない. この点は大きな問題点である. 授業中に過度の緊張を誘 発してしまっては授業が台無しである. 「子どもが過度 に緊張していないか」 ということは 「過度な緊張を誘発 していないか」 と教員に返ってくるのである. 「過度な 緊張をしない」 ことを 「(過度な緊張をしない) 技能」 とするのは, やはり無理がある. 次に, 「コミュニ―ケーション」 の課題である. 自立 活動を主とする教育課程の子どもたちとのコミュニケー ションは言語によるコミュニケーションのみにあらず, いろいろな形で行われる. その場合, 伝わるか伝わらな いかという点では双方に半分ずつの責任があると考えら れてきている. 伝わらなかった場合受け止める方にも半 分の責任があるという考え方である. 現行 4 観点の 「思

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考・判断・表現」 にしても, 旧 4 観点の 「表現・技能」 にしても, 「子どもがつける力」 が前面に出てきており, しっくりこないのである. 第 3 点目は, 分化と未分化の問題である. アンケート の回答にもあったが, 「関心・意欲・態度」 は別として も, 「思考」 「判断」 「表現」 「技能」 「知識」 「理解」 の文 言と分類は, 通常の小学校の教育課程, 学問を基礎に分 化された教育課程で学ぶ子どもたちに対応するようにと らえられるが, 現状で獲得している力がまだそこに至っ ていない, 今後の課題となる子どもたち, 言われるとこ ろ 「未分化」 をその特徴とする子どもたちにとっては適 切ではないと考えられる. 以上のような問題点の原因は, 通常校の枠組みをその まま移行してきたことに見いだされる. 問題点の 1 健康・ 身体, 2 コミュニケーションは通常校ではすでに獲得さ れたこととして前提にされていることである. 子どもた ちの実態・課題が違うから特別支援学校で特別の教育課 程を編成して教育活動を行っているのであるから, 授業 評価の観点が枠組みも含めて違ってくるのは当然のこと と考えられる.

3

自立活動を主とする教育課程の授業評価の

観点 (試案) を提案する

「教師はまなぶ者としての子どもたちの諸能力さらに は人格を豊かに発達させたいと願う存在である. 教師は その願望を実現するために, 教授活動を通じて, 子ども の学習活動を組織する−どんな知識や技能を子どもたち に獲得させたいか, 教える目標 (教授目標) をたてて, 子どもに働きかけ, 子どもの反応を受け取ることを通じ て, 学習活動を組織する. 一連の教授活動の結果, 子ど もが実際に修得した知識や技能の状態が, 目標とする状 態に一致しているかどうかを点検する. この両者が一致 しているとき (教授活動がうまくいったとき) には, 次 の課題, 次の教科内容に進み, そうでないとき (うまく いかなかったとき) には, 教え方や目標の立て方を検討 しながら, 新しいやり方を工夫して教える.」(注 6) 子どもたちの学習の評価することは, メダルの表裏の 関係で, 教員自らの授業の評価を行うことでもある. 以上の点もふまえて, 肢体不自由特別支援学校におけ る自立活動を主とする教育課程の授業評価の観点を検討 したい. アンケートの回答にもあるような 「重度の子ど もにとっては, 分けられるものでなくつながっているこ とが多いので, 観点別にするとかえって評価しにくくな るのではないか」 という意見にも答えていく必要がある. 筆者は以前ある実践報告において評価の観点を提案し たことがある(注 7)が, その提案を現在の状況に応じて再 構成し提案したい. それは, 自立活動の 6 つの内容を 「学習評価の観点の 枠組み」 として活用するということである. 自立活動の 6 つの内容は, 1 健康の保持, 2 心理的な安定, 3 人間関 係の形成, 4 環境の把握, 5 身体の動き, 6 コミュニケー ションで構成されている. 以上 6 つの内容は, 教科の国 語・算数・社会などのように授業単位を表す概念ではな く, 子どもの行動を様々な角度から見ることができると いう, まさに 「観点」 として考えることができるし, ま た活用することも可能である. この 「観点」 は現行 4 観 点と違い以下のような特徴を持たせることができる. ① (この 6 つの内容は) 相対的に独自のものでありなが ら深く関連しており, 未分化を特徴とする自立活動を 主とする教育課程の子どもたちに上手く対応できるこ とである (だから, 「自立活動を主とする」 のである が). ②学習の目標やねらいに合った観点を選ぶことができる ものである. もともと学習の評価は, 学習の目標・ね らいに沿ってなされるものなので, 現行 4 観点のよう に全部を無理して記述する必要はないものである. ③しかし, その上で授業の時の子どもたちの行動や状況 によっては, 初めに教員が意図していなかった観点を 援用できるものである. 具体的には以下のようなものである. <学習評価の観点 (試案)−自立活動を主とする教育課 程> (1) 健康の保持 ①呼吸状態はどうだったか, 配慮は適切だったか ②疲労への配慮はどうだったか ③発作の誘発はなかったか ④姿勢は整っていたか, 配慮は適切だったか (2) 心理的な安定 ①関りを落ち着いて受け止め楽しむことができたか, 配 慮は適切だったか ②過度にびっくりしなかったか (させなかったか) ③新しいものへの関り方はどうだったか

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④常同行動・防衛行動などの様子はどうだったか (3) 人間関係の形成 ①授業者への注目とやりとりはどうだったか, 配慮は適 切だったか ②サブの教員とのやりとりはどうだったか ③友だちの行動への注目はどうだったか, 配慮は適切だっ たか ④集団や友だちの認識はどうか, 関りと行動の調整はど うか ⑤総じて, 人との関わりを楽しみ, 行動できたか (4) 環境の把握 ①よく見たか, よく聞いたか, よく触れたか, よく楽し んだか, 配慮はどうだったか ②見分け, 聞き分け, 感じ分け, 心の動きはどうか ③課題の理解はできたか, 葛藤はどうだったか, 配慮は 適切だったか ④予測や見通し, 因果関係や空間の認識などはどうだっ たか ⑤集団や友だちの認識はどうか ⑥自発性は発揮されたか (5) 身体の動き ①姿勢は整っていたか ②体幹の動きはどうだったか ③上肢 (下肢) の動きはどうだったか ④粗大運動 (微細運動) はどうだったか ⑤目的的な動きはどうだったか ⑥自発的な動きはどうだったか (6) コミュニケーション ①情動・感情・意思の表出・表現はどうだったか (受け 止めて返したか) ②人との共感・やりとりはできたか, 求めたか ③ 「ことば」 に限らずコミュニケーション手段を十分に 使えたか, 伝わったことの確認はできたか, 配慮は適 切だったか 以上であるが, 前述したように上記項目のすべてにわ たって検討する必要はない. 学習の目標やねらいと関連 する内容・項目を選択しておさえることが重要である. 選択した内容・項目と照らし合わせながら, その授業の 内容や教材・関わり方を評価することで, 子どもたちへ の理解を深め, 次の授業改善に資することができると考 える. 指導計画のどの時期の授業か, そして, 子どもた ちの行動や気持ちの変化によって授業の目標やねらいは 変わってくる. 全体としても, 指導計画の初めのころは, 授業の内容や教材に子どもたちがなじんだり, 楽しんだ りすることがねらいの中心をなす. 授業が進むにつれて, 落ち着いて受け止めたり, 楽しんだりする中で子どもた ち一人ひとりの行動に変化が生まれてくる (教員が予測 できることも, できないことも含めて). そこを捕まえ てはなさない子どもの見方や観点が, 教員の力が必要で ある. 尚, 各内容の具体化された項目は試案である. 実践を 進めていく中でより良いものに修正していくことが必要 と考えられる.

まとめにかえて

授業や関りの中で子どもたちが見せてくれる様子・仕 種・行動は多様で豊かである. それは内面の豊かさを表 しているのであるが, 受け手の教員の力も試されている. 現場にいると実感することだが, 私たちの想像を超える ことも少なくない. その子どもたちから学ぶために, 子 どもたちが示してくれる絶好のチャンスを逃さないため にも, 教員には多角的な観点の引き出しをもちすぐに活 用できる力が必要と考えられる. <謝辞> アンケートに回答いただいた先生方にこの場をお借り して御礼申し上げます. ありがとうございました.

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注 1:中教審答申は 「現在, 各教科について, 学習状況を分析的 に捉える 観点別学習状況の評価 と, 総括的に捉える 評定 とを, 学習指導要領に定める目標に準拠した評価 として実施することが明確にされている. 評価の観点につ いては, 従来の 4 観点の枠組みを踏まえつつ, 学校教育法 第 30 条第 2 項 113 が定める学校教育において重視すべき 三要素 ( 知識・ 技能 思考力・判断力・表現力等 主 体的に学習に取り組む態度 ) を踏まえて再整理され, 現 在, 知識・理解 技能 思考・判断・表現 関心・意 欲・態度 の四つの観点が設定されているところである.」 と述べている. 2: 「考える力」 を育てる教育実践の探求 (渡邉健治監修 障害児教育実践研究会編 ジアース教育新社 2013 年) 3:同上 4:同上 5: 障害の重い子どもの授業づくり Part 4 (飯野順子・ 授業づくり研究会I&M 編者 ジアース教育新社 2008 年) 6: 発達と学習 (岸本弘・柴田義松 編著 学文社 1990 年) 7:同注 6 資料 1 「授業評価の四観点」 についてのアンケート 自立活動を主とする教育課程に在籍している子どもたちを担当している先生にお聞きします。 どうぞ、 よろ しくお願いします。 該当するものに丸印をお願いします。 1 指導案に 「授業評価の四観点」 を記述していますか ○記述している ○記述していない −以降は 「記述している」 と答えた方にお聞きします。 「記述していない」 と答えた方は以上で終了です。 ありがとうございました。 2 「授業評価の四観点」 の記述はスムーズに行えますか ○行える ○行えない 「行えない」 と答えられた方にお聞きします。 その理由は? 3 授業評価を 「授業評価の四観点」 を基に行っていますか ○行っている ○行っていない 4 「授業評価の四観点」 の枠組みは、 自立活動を主とする教育課程に在籍する子どもたちの実態・課題にあっ ていると思いますか。 ○あっている ○あっていない 5 「授業評価の四観点」 について御意見がありましたらお願いします (自由記述)。 ありがとうございました。

参照

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