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サルコイドーシスを合併した脾原発悪性リンバ腫の1剖検例

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Academic year: 2021

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(1)仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. 脾原発悪性リンパ腫と sarcoidosis-lymphoma syndrome. 症例 サルコイドーシスを合併した 脾原発悪性リンパ腫の 1 剖検例 小泉薫 1、高橋広喜 1、今村淳治 2、岡直美 3、鈴木博義 4、鈴木森香 1、鵜飼克明 1 1. 国立病院機構仙台医療センター 総合診療科、2. 同 感染症内科、3. 同 病理診断科 4. 同 病理診断科、臨床検査科 抄録 症例は 58 歳、男性。X-4 年より統合失調症で前医に入院していた。X 年 4 月下旬より 37℃台の発熱、腹痛、 下痢が出現した。整腸剤と抗生剤で経過を見ていたが解熱せず、夕方になると 38℃以上の高熱が出現するよ うになった。症状の改善ないまま 10 日ほど経過したため精査目的に当院へ紹介となった。入院時の採血所見 で貧血、血小板数の低下、フェリチン値、sIL-2R の高値を認めた。造影 CT 検査にて脾梗塞、脾腫を認めた ため血液疾患が疑われ、第 7 病日目に骨髄生検を施行した。入院後抗菌薬投与を継続していたが解熱な く、第 9 病日目には DIC を発症し、肝障害や高 LDH 血症を呈したことから血球貪食症候群の併発が疑 われた。プレドニン投与で加療したが奏功せず死亡した。剖検を施行したところ、脾臓および骨髄に B 細胞 性マーカーである CD20 陽性リンパ球の小集簇巣を認めた。また、心筋と肺門リンパ節に多核巨細胞を伴う 非乾酪性類上皮肉芽腫の形成を認めた。以上から本症例をサルコイドーシスに合併した脾原発悪性リンパ腫 と 診 断 し た。 サ ル コ イ ド ー シ ス 患 者 は そ の 経 過 中 に 悪 性 リ ン パ 腫 を 合 併 す る こ と が あ り sarcoidosislymphoma syndrome として報告されるようになった。本症例も両者を合併し、DIC ならびに血球貪食症候 群を来した 1 例であり、文献的考察を加え報告する。 キーワード:サルコイドーシス、脾原発悪性リンパ腫、sarcoidosis-lymphoma syndrome、血球貪食症候群 1. はじめに. たので報告する。. サルコイドーシスは、経過中に悪性腫瘍を合併す ることが以前から指摘されている。特に悪性リンパ. 2. 症例. 腫の合併は、Brincker らが sarcoidosis-lymphoma. 症例:58 歳 男性. syndrome(SLS)として提唱している。SLS は慢. 主訴:不明熱、下腹部痛. 性活動性のサルコイドーシスがもたらす免疫異常が. 既往歴:45 歳 統合失調症. 悪性リンパ腫の発症に関連していると考えられて. 現病歴:X-4 年より統合失調症で前医に入院してい. いる 。今回、サルコイドーシスに脾原発悪性リン. た。X 年 4 月下旬より 37℃台の発熱、腹痛、下痢. パ 腫 を 合 併 し、 播 種 性 血 管 内 凝 固 症 候 群. が出現した。整腸剤と抗生剤で経過を見ていたが解. (disseminated intravascular coagulation:DIC). 熱せず、夕方になると 38℃以上の高熱が出現する. な ら び に 血 球 貪 食 症 候 群(hemophagocytic. ようになった。症状改善ないまま 10 日ほど経過し. syndrome: HPS)を発症した SLS の 1 例を経験し. たため精査目的に当院へ紹介となった。. 1). 57.

(2) 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. 脾原発悪性リンパ腫と sarcoidosis-lymphoma syndrome. 初診時現症:身長 166cm、体重 46.9kg、BMI 17、. 入院後経過:CT 所見より脾梗塞が疑われたが心エ. 体温 39.6℃、血圧 120/96mmHg、脈拍 77 回 / 分、. コー検査では疣贅は認めなかった。フェリチン、. SpO2 96%(room air)であった。眼球結膜に軽度. sIL-2R 高値を呈しており悪性リンパ腫が疑われ、. 貧血あり。体表のリンパ節腫脹なし。胸部 : 心雑音. 第 7 病 日 に 骨 髄 生 検 を 施 行 し た。 第 9 病 日 に は. やラ音は聴取せず。腹部 : 下腹部正中に圧痛あり。. DIC を併発し、骨髄生検の速報において悪性リン. 反跳痛なし。. パ腫が疑われた。また、入院時から認めていた発. 血液検査所見:Hb 9.4g/dl、血小板数 11.0 万 /μl. 熱、脾腫、高フェリチン血症、sIL-2R 高値に加え. と軽度低下していた。Alb は 2.4g/dl に低下してい. て末梢血で 2 系統以上の血球減少も進行したこと. た。LDH は 532IU/L、フェリチンは 2084ng/ml、. から血球貪食症候群を併発したと考え、プレドニン. sIL-2R は 5316.9U/ml と高値を呈していた。CRP. 投与(1mg/kg/day)を開始したが奏効することな. は 8.9mg/dl と上昇しており、赤沈も 90mm/hr と. く死亡した。急激な経過をたどった原因について検. 亢進していた(表 1) 。. 討するため剖検を行う方針となった。 剖検結果:脾臓は 310g と腫大していた(図 2)。脾 非梗塞部には B 細胞性マーカーである CD20 陽性、. WBC. 5000 /μl. LDH. 532. IU/L. Hb. 9.4. ALP. 319. IU/L. Plt. 11.0万/μl. γ-GTP. 53. IU/L. Alb. 2.4. フェリチン. 2084 ng/ml. ンパ球の小集簇巣を認めた(図 4a、4b、4c) 。また. T-bil. 1.4 mg/dl. CRP. 8.9. AST. 64. IU/L. sIL-2R. 5316.9U/ml. CD68 陽性組織球による血球貪食像を呈していた. ALT. 31. IU/L. 赤沈1hr. 90. g/dl. g/dl. CD3 陰性の異型リンパ球が増生していた(図 3a、 3b、3c)。骨髄組織内には脾臓同様に CD20 陽性リ. mg/dl. (図 4d)。さらに、心筋および肺門リンパ節に非乾. mm. 酪性類上皮肉芽腫の形成(図 5a、5b、5c)ならび. 表1 入院時血液検査所見. 入院時画像所見:腹部 CT 検査にて、脾臓は 78 × 130mm と腫大しており、脾臓に楔形の造影不良域 を多数認めた。脾周囲も含め腹腔内にリンパ節腫脹 は認めなかった(図 1) 。. 図2 脾臓肉眼剖検所見:脾腫大(310g)。斑状に梗塞巣 (黄白色調変化部)あり。. 3a. 図1 腹部 CT 検査 : 脾臓は78×130mm と腫大し、楔形 の造影不良域を多数認める(矢印)。. 3b. 3c. 図3 脾臓非梗塞部(赤脾髄)(HE 染色) 核異型を伴 うやや大型のリンパ球の増生あり(a)。異型リンパ球は CD20陽性(b)、CD3陰性(c)。. 58.

(3) 脾原発悪性リンパ腫と sarcoidosis-lymphoma syndrome. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. 患についても鑑別することが重要と思われる。本症 例においても入院時の CT 検査において脾腫ならび に脾梗塞を認めたが所属リンパ節および腹腔内に明 4a. らかなリンパ節腫大は指摘できなかった。血液検査. 4c. 所見および骨髄生検から悪性リンパ腫が疑われ、ス テロイド投与を行ったが DIC ならびに HPS を合併 し、急激な経過をたどり死亡した。剖検結果から脾 4b. 4d. 原 発 悪 性 リ ン パ 腫 と 確 定 診 断 し た。 組 織 型 は. 図4 骨髄(HE 染色)(a)。骨髄(HE 染色 / 強拡大) (b)。骨髄組織内に脾臓と同様な CD20陽性リンパ球の小 集簇巣あり(点線内)(c)。CD68陽性組織球の血球貪食 像が目立つ(d) 。. WHO分類の splenic B-cell lymphoma/ leukemia,unclassifiable(SBL-U)に該当した。本 邦において 2002 年から 2010 年に脾臓組織検査を 行った Shimizu-Kohno らの報告によると 184 症例 のうち 115 症例がリンパ系腫瘍であった。組織型 としてはびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫が 46. 5a. 5b. 5c. 例(40%)、 脾 臓 濾 胞 辺 縁 帯 リ ン パ 腫 が 28 例. 5d. (24%)、濾胞性リンパ腫が 11 例(10%)、SBL-U は 6 例(5%)など B 細胞性リンパ腫が多かった。. 図5 心筋肉眼所見 心臓中隔右側に白色調変化あり(枠 内)(a)。心室白色調部(HE 染色) 白色調部で多核巨 細胞を伴う類上皮肉芽腫形成あり(b)。肺門部リンパ節 (HE 染色 / 強拡大) 線維化を伴う類上皮肉芽種形成あり (c) 。多核巨細胞(d) 。. SBL-U 症例では血小板数の低下が全例で報告され ており、6 例中 5 例で骨髄浸潤が確認され臨床病期 は第Ⅳ期であった。これらの所見は本症例とも合致 する 5)。. に多核巨細胞(図 5d)が認められた。以上から本. さらに本症例では心筋及び肺門部リンパ節に多核. 症例をサルコイドーシスに合併した脾原発悪性リン. 巨細胞を伴う類上皮肉芽種が存在し、サルコイドー. パ腫と診断し、DIC ならびに HPS から循環不全に. シスを合併していたことも判明した。 サルコイドーシスは、全身性に非乾酪性類上皮肉. より死亡に至ったと考えた。. 芽腫を形成する原因不明の疾患である 6)。全身性病 変 分 布 は 肺 78.3%、 心 71.0%、 肝 42.4%、 脾. 3. 考察 脾原発悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の約. 41.6%、リンパ節 87.4% であり脾病変も高頻度に. 1%とされ比較的まれなリンパ腫である。本疾患は. 認められる 7)。本症例は、受診前にサルコイドーシ. 脾腫や脾臓内の腫瘍性病変を呈するも、所属リンパ. スを疑う症状はなく、脾臓を含め心筋や肺門部以外. 節以外のリンパ節に腫大を伴わないことも多く、し. には明らかなサルコイド結節は指摘できなかった。. ばしば診断に苦慮することが知られている 2)。本邦. サルコイドーシスに悪性腫瘍が合併しやすいことは. における脾原発悪性リンパ腫 98 例の検討において、. 1974 年に Brincker ら 8) が指摘して以来、多く報. 男女比は 2.2:1、平均年齢は 48.8 歳(14 ~ 75 歳). 告されてきた 9)10)11)。本邦では肺癌の合併が最多. と報告されている。症状としては腹痛、左季肋部. でサルコイドーシスに合併した悪性腫瘍の. 痛、腹部腫瘤、発熱など脾腫に起因するものが多. 12.5% ~ 36.8% 程度を占める 12)13)14)15)。一方で. い 3)。また、脾梗塞の原因疾患についての検討では. サルコイドーシス患者における悪性リンパ腫の合併. 感染性心内膜炎、弁膜症、心房細動などの心疾患に. 頻度は 0.18 ~ 0.5% と報告され 10)16)17)、SLS とし. よるものが 38%、鎌状赤血球症、白血病などの血. て知られている。SLS の特徴として 1. サルコイドー. 液疾患によるものが 29% であったとする報告もあ. シスが先行しその後リンパ腫と診断されるまでの平 均が 24 か月程度、2. サルコイドーシスの発症年齢. 4). る 。このため脾原発悪性リンパ腫も含めた血液疾 59.

(4) 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. 脾原発悪性リンパ腫と sarcoidosis-lymphoma syndrome. が 41 歳と通常より 10 年高く、サルコイドーシス. Kiyasu,et al. Malignant lymphoma of the. が慢性活動性を示す、3. ホジキン病の合併が多い. spleen in Japan: A clinicopathological analysis of 115 cases. (ただし本邦では非ホジキンリンパ腫が多い)の 3 つが提言されている 。SLS の病態は依然として不. 6 ) 水本拓也、後藤直大、外山博近、他:脾悪性リ. 明な点も多く、サルコイドーシスにおける制御性 T. ンパ腫を疑い腹腔鏡下脾摘術を施行した脾サル. 細胞の機能異常に伴うナイーブ T 細胞やエフェク. コイドーシスの1例 日臨外会誌 2017;78:126-. ター T 細胞の IL-2 産生亢進が機序の一つとして想. 129. 8). 定されている。IL-2 産生亢進は B 細胞の増殖を刺. 7 ) 立花暉夫、武村民子、岩井和郎:サルコイドー. 激するため SLS において B 細胞性リンパ腫の 1 つ. シス全国剖検例の脾病変の検討 日サルコイ. であるびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫の合併. ドーシス会誌 2011;31:11-15. 。本症例の脾. 8 ) Brincker H, Wilbeck E. The incidence of. 原発悪性リンパ腫も B 細胞性リンパ腫のため、類. malignant tumours in patients with. 似した病態が存在する可能性がある。. respiratory sarcoidosis. Br J Cancer. が多いと考察した報告も存在する. 18). 1974;29:247-51. 本症例においてサルコイドーシスの合併がいつか ら生じていたのかは不明であるが、脾原発悪性リン. 9 ) Askling J, Grunewald J, Eklund A, Hillerdal. パ腫が急激な転帰をたどった背景には慢性活動性サ. G, Ekbom A. Increased risk for cancer. ルコイドーシスによる SLS が影響していると考え. following sarcoidosis. Am J Respir Crit Care. られた。サルコイドーシス患者においては悪性腫瘍. Med. 1999;160:1668-72 10)Cohen PR, Kurzrock R. Sarcoidosis and. の合併に留意するとともに、悪性リンパ腫の合併に. malignancy.Clin Dermatol.2007;25:326-33. ついても慎重な対応が求められると思われる。. 11)平澤康孝、山口哲生、前村啓太、他:サルコイ 4. 結語. ドーシスにおける悪性腫瘍合併例の検討 日サ 会誌 2012;32:107-111. サルコイドーシスに脾原発悪性リンパ腫を合併 し、DIC ならびに HPS により急激な転帰をたどっ. 12)市川裕久、片岡幹男、尾形佳子、他:サルコイ. た 1 例を経験した。本症例の要旨は、第 20 回日本. ド ー シ ス 患 者 に お け る 肺 癌 合 併 日 サ 会 誌. 病院総合診療学会(2020 年 2 月、福岡)にて報告. 2005; 25:17-20 13)立花暉夫、竹中雅彦、井上義、他 : 大阪地区サ. した。. ルコイドーシス症例の合併症に関する検討 日 サ会誌 2004;24:31-35. 5. 文献. 14)立花暉夫 : サルコイドーシスの全国臨床統計 日. 1 ) Brincker H. The sarcoidosis-lymphoma. 本臨牀 1994;52:1508-1515. syndrome. Br J Cancer 1986;54:467-73 2 ) 清田実希、大西朗生、荒木康伸、他:血球貪食. 15)Boffetta P, Rabkin CS, Gridley G. A cohort. 症候群を合併した脾臓原発悪性リンパ腫の 2. study of cancer among sarcoidosis patients.. 例 松仁会医学誌 2017;56:100-105. Int J Cancer. 2009;124:2697-2700. 3 ) 村上義昭、布袋裕士、津村裕昭、他:脾原発悪. 16)Ji J, Shu X, Li X, et al. Cancer risk in. 性リンパ腫の 1 例および本邦報告 98 例の検討. hospitalized sarcoidosis patients: a follow-up. 1988;49:716-722. study in Sweden. Ann Oncol.2009;20:1121-1126. 4 ) Jaroch MT, Broughan TA, Hermann RE :The. 17)Chalayer É, Bachy E, Occelli P,et al.. natural history of splenic infarction. Surgery. Sarcoidosis and lymphoma: a comparative. 1986;100:743-750. study.QJM. 2015 Nov;108(11):871-8. doi:. 5 ) Kei Shimizu-Kohno,Yoshizo Kimura,Junichi. 10.1093/qjmed/hcv039. Epub 2015 Feb 5 60.

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