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社会福祉法人の地域公益事業の展開方法:岡山県における取組みからの考察

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Academic year: 2021

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社会福祉法人の地域公益事業の展開方法

〜岡山県における取組みからの考察〜~ 社会福祉学科特任教授 小坂田 稔 1.はじめに 少子高齢化が急速に進む現在、地域生活に おいて、従来とは異なり、生活ニーズは多様 化、複雑化、重複化してきている。こうした 生活ニーズに対応していくために、2000 年 に制定された社会福祉法において「地域福祉 の推進」がこれからのわが国の福祉の中核と して位置づけられた。そして、さらに 2017 年の改定において、社会福祉法人に大きな役 割が求められることとなった。それが「社会 福祉法人の地域公益事業」(以下、「地域公益 事業」)の推進である。 本研究では、この事業の展開方法について 岡山県社会福祉協議会を中心としたこれまで の取り組みを基に考察し、今後の地域公益事 業の取り組みにつなげていくことを目的とし ている。 2. 地域公益事業が求められる背景 (1)要介護高齢者の増加 2000 年の介護保険制度の開始以来、確実 に要介護高齢者は増加し、2014 年度では 590 万人を超える数となっている。(図 1) 図 1 第1号被保険者の要介護度別認定者数の推移 出所:内閣府「平成 29 年度版高齢社会白書」 (2) 認知症者の増加 要介護者の増加の中でも特に増加している のが認知症者の増加である。軽度認知症者 (MCI)を含めると約 862 万人と推計されてお り(図 2)、団塊世代が後期高齢者となる 2025 年には 1,000 万人を超えると推計されている (図 3)。 図 2 認知症者数の推計 図 3 認知症高齢者の将来推計 出所: 厚生労働省(H26.11.19) 「第 115 回 社保審-介護給付 費分科会」資料 (3)高齢者のみ世帯の増加 高齢者数の増加とともにひとり暮らし高齢 者、高齢者夫婦のみ等の「高齢者のみ世帯」 が増加し、高齢者世帯全体の約 6 割を占め、 1980 年の約 2 倍となってきている(図 4)。

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図 4 高齢者世帯の状況 出所:内閣府「平成 29 年度版高齢社会白書」 (4)ひきこもり者の増加 ひきこもり者の年齢は 30 歳代、40 歳代、 50 歳代が多く、こうした人たちは 60 歳代、 70 歳代、80 歳代の高齢の親と同居してお り、「8050 問題」「7040 問題」「6030 問題」 と呼ばれ、「介護や経済的な問題を抱えた生 活となっている(図 5)。 図 5 ひきこもり者の状況 資料:総社市社会福祉協議会「ひきこもり懇談会調査」2015 年 (5)地域生活問題の多様化・複雑化・重複化 —制度の狭間の問題の増加 上記の高齢者を取り巻く状況により、「老 老介護」「認認介護」「介護離職」「高齢者虐 課題が起こっている。さらにこれらの問題 は、複雑化とともに1世帯の中に重複してい るところに大きな特徴を持っている。 そしてこれらのほとんどが既存の制度では対 応できない「制度の狭間の問題」となってい る。 3.改正社会福祉法とこれからの社会福祉法 人の役割 (1)改正社会福祉法による社会福祉法人制度 改革の目的 2016 年 3 月、社会福祉法が改正された。 その主たる目的は以下のものである。 ①社会福祉法人は、社会福祉事業に係る福祉 サービスの供給確保の中心的な役割を果たす だけでなく、他の経営主体対応困難な福祉サ ービスの供給を含め、地域におけるさまざま な福祉ニーズを充足するための取組に積極的 に取り組んでいくことを本旨とする存在であ る。 ②こうした社会福祉法人の本旨は、現行社会 福祉法第 24 条において、 「経営の原則」 として規定されているところであるが、福祉 ニーズが多様化・複雑化・重複化する中、社 会福祉法人の果たすべき役割がますます重要 になっていることを踏まえ、同条を改正し、 社会福祉法人が社会福祉事業及び公益事業を 行うに当たっての責務として明確に規定する こととした。 (2)社会福祉法人と地域公益事業(経営の原 則) この社会福祉法改定の目的を基に社会福祉 法第 24 条に第 2 項(経営の原則)が付け加え られ、社会福祉法人が積極的に「制度の狭間 の問題」に取り組む方向が示された。

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4.岡山県内社会福祉法人の取り組み状況— アンケート調査結果から 社会福祉法改定を受け、岡山県内社会福祉 法人の地域公益事業の取り組み状況を把握す ることを目的に以下の内容で調査を実施し た。 ・調査実施者: 岡山県社会福祉協議会 岡山県地域公益活動推進研究会(座長小坂田 稔) ・調査対象:岡山県内社会福祉法人の主要事 業所 490 箇所 ・調査期間: 平成 28 年 12 月〜1 月 ・調査方法: 郵送調査法 ・回収数: 241 事業所(回収率 49.2%) 高齢者関係 112(46.5%) 障害者関係 63(26.1%) 児童関係 75(31.1%) その他 3(1.2%) その結果、取り組み状況が見えてきた。 (1)アンケート調査結果 〔質問〕貴施設・事業所では、『地域におけ る公益的な取組』をしていますか? ① ①「している」・・40 件(全体の 16.6%) ②「しているが、その取組が『地域における 公益的な取組』にあたるかどうか不明。」・・ 54 件(22.4%) ③「していない」・・68 件(28.2%) ④「現在、取り組みに向けて検討してい る」・・67 件(27.8%) 施設・事業所分野別では、 ①「している」・・ 高齢者関係では 26 件(23.2%)、 障がい者関係では 7 件(11.1%)、 児童関係では 11 件(14.7%)

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にあたっての課題は?(複数回答) [質問]『地域における公益的な取組』を行 っていくにあたり、県社協や市町村社協の 役割として、どのようなことを期待してい ますか?(複数回答) (2)調査結果から見えてきたこと 多くの社会福祉法人が「地域における公益的 な取組」に取り組む姿勢があることが分かっ た。しかし、まだ具体的な内容については情 報の不足等により不十分な理解・認識にとど まっている。そのために、研修の場や情報提 供、さらには環境(人材や財源等)整備の体制 づくりが喫緊の課題といえる。こうした課題 解決に向けての役割が県社会福祉協議会と町 村社会福祉協議会に期待されている。 5岡山県地域公益活動推進研究会での検討 ー様々な課題解決への研究・検討 祉法人の地域公益事業の取り組み状況を踏ま えて、オール岡山としての取組みを進めてい くための研究を行うこことし、岡山県社協に 「岡山県地域公益活動推進研究会」(座長小 坂田)を設置し検討を進めた。 ◆ 委員構成 6. 「岡山県地域公益活動推進センター」設 立ーオール岡山への拠点 (1) 岡山県地域公益活動推進センター」設立 研究会での協議を経て、オール岡山の地域 公益事業を推進していくための拠点「岡山県 地域公益活動推進センター」を設立していく こととし、その取組みを進めた。 図 6 地域公益活動推進センター構想図 そして平成 30 年 3 月 27 日、「岡山県地域 公益活動推進センター」(愛称:岡山ささえ愛 センター)を設立した。(写真) 5 54 51 94 108 85 114 113 187 46 0 50 100 150 200 その他 行政・社協との連… 職員への周知や意識… 取り組み方法が不明 地域ニーズの把握方… 活動拠点・関係機関… 情報の不足 財源の不足 人材の不足 個人情報の取り扱い… 7 144 130 135 129 87 78 0 50 100 150 200 その他 地域ニーズ調査 市町村域での支援の… 活動についてのコー… 必要な情報発信、情… 複数法人での取組み… 行政との連絡・調整役

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(2) 岡山県地域公益活動推進センター 組 織体制・推進体制 組織体制・推進体制は、各種別組織からの代 表者等により構成する「運営委員会」を中核 として、「地域公益推進会議」(3 つの部会を 持つ「課題別検討会」)などから構成する(図 7)。 図 7 岡山県地域公益活動推進センター 組織体 制・推進体制 (3)主たる推進事業 事業としては「機運づくり」「モデルづく り」「市町村域ネットづくり」「ひとづく り」「見える化」の 5 つの事業を推進してい く(図 8)。 図 8 主な 5 津の推進事業 7. 今後の研究に向けて 今後は、これまでの研究や取組みを基にし て、さらに以下の点を加え、地域福祉の視点 から分析・考察を進めていく。 (1)「岡山県地域公益活動推進センター」の 果たす役割と成果・課題についてみていく (2)市町村域のネットワーク活動の取り組み について、成果と課題をみていく (3)各社会福祉法人の地域公益活動への参加 意識について調査・分析していく (4)これからの社会福祉法人による地域公益 活動の在り方について纏めていく これらのことについて地域福祉の視点で分 析・考察を進める。

参照

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○ また、 障害者総合支援法の改正により、 平成 30 年度から、 障害のある人の 重度化・高齢化に対応できる共同生活援助