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石村耕治著 『透明な租税立法のあり方』東京税理士政治連盟 (二〇〇七年、VI+一四一頁)

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Academic year: 2021

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石村耕治著﹃透明な租税立法のあり方﹄東京税理士政治連盟

現代民主主義国家においては、政策そのものの妥当性のみ ならず、政策の立案から決定に至る過程の妥当性が必要と される。本書では、現状で最も政策決定プロセスが不透明な 分野のひとつである租税政策に対して、透明性の確保を求め ている。日本の税法は、その改正にあたり国民への意見募集 ︵パブリックコメント︶がない。また、法人所得課税におい て、関係者に対する改正の中身の周知徹底も満足に図られな いまま施行されている。その背景としては、税法の複雑さを あげることができる。著者はもちろんそうした状況を把握し つつも、それでもなお、民主主義国家における租税政策の必

︵二〇〇七年、.W+一四一頁︶

浅羽隆史

要不可欠な条件のひとつとして、透明性の確保を求めている。 こうした主張は、本書の題名によって明確に示されている。 類書において、政策提言を試みているにもかかわらず、漠然 とした題名が付けられポイントが絞れないケースが散見され る。一方、本書はその題名において、政策提言の内容がきわ めて簡潔にポイントを絞った形で唱えられている。こうした ことは、簡単なようでいて、実際にはとても難しいことが他 書を見れば分かるだろう。編集者の力量にも左右されるとこ ろだが、とても重要な事であり、本書はそれを見事にクリア している。

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もちろん内容についても、題名から期待して本書を手にし た読者を裏切ることはないだろう。専門である税法の研究を 基盤として、納税者の権利やプライバシーの問題、さらにア メリカを中心に国際的な税の動向などにも深い造詣のある著 者ならではの中身になっている。 また、若干表現が強すぎると感じる部分も散見されるもの の、さまざまなメディアで発言・執筆している著者だけあっ て、全体を通じて文章が簡潔で分かりやすい。これも、研究 者だけでなく、多くの人に提言を読んでもらヶという場合に は必須の条件だが、簡単にクリアできるものではない。 内容とポイント 本書の内容とポイントを見てみることにしよう。本書は、 以下の通り十一の弓畦ごと﹁むすび﹂で構成されている。 ℃⇔耳− ℃四詳2 勺餌口3 勺餌耳4 ℃餌耳5 ℃四辱6 勺餌詳7 勺ゆ耳8 ℃餌耳9 ℃貰け10 問われる税制改正のあり方 税金の法律づくりの仕組み 国の租税政府立法過程をもっと詳しく知る 租税法律主義と租税立法 租税法律不遡及の法理 租税議員立法の現実と課題 法案パブリックコメント手続 租税立法をただすための司法の活用 透明な租税立法に向けた税理士会の展望と課題 アメリカの租税立法過程を学ぶ 勺即辞Hイギリスの租税立法過程を学ぶ

むすび

℃畦けーでは、現行の日本の税制改正の問題点を提起してい る。とくに、透明性を欠いた税制改正の過程について、具体 例を示して問題提起を行っている。それをふまえた℃費け2 と℃貰け3は、本書における著者の真骨頂が表れている第一 の部分となっている。両勺餌耳において、現在の日本の租税 立法過程を詳細に分析し、具体的な問題点が明確に表り出さ れている。そして、われわれが考えるべき課題が示されている。 評昏4および評辞5では、民主主義国家における税法に まつわる理念や原則が示される。とくに、憲法第八四条で示 されている租税法律主義について、改めてその意義を強調し ている。そして、日本の租税立法の実態に警鐘を鳴らし、ま た遡及的不利益課税の実質的な意味について再検討を求めて いる。 そして、本書第二の核とも言える評詳6∼評昏9におい て、日本の租税立法過程の課題に対する解決の方策が検討さ れている。なかでも、議員立法と法,案パブリックコメントに ついて、その限界も含めた議論が展開され、本書の主題であ る﹁透明な租税立法のあり方﹂が示唆される。そこでは、単 に机上の空論として理想論が語られるだけでなく、現実の日 本の諸制度に含まれる﹁影﹂の部分まで言及している点に特 徴がある。著者が学問の府にとどまらず、国会や税理士会と の交流などの実践的な活動を行ってきたことが十分に活きた

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内容となっている。 著者ならではの内容は、℃貰け10と勺貰什Hにおいても見る ことができる。両評旨は、著者が専門性を有するアメリカ、 そしてイギリスの租税立法過程を紹介している。両国の税制 や予算制度などは財政学者などの手により、日本に多く紹介 されている。しかし、租税立法過程となると、学術的に耐え られる水準で取りまとめられた著作物は多くない。きわめて 明快に、両国の特徴が描き出されており、本書が仮にこの両 評昏だけだったとしても、研究者にとって必須の書となる といっても過言ではない。 むすびでは、本書の要約と提言がコンパクトにまとめられ ている。アメリカやイギリスの制度をそのまま日本に適用せ よというのでは無く、良い部分を日本流にアレンジしつつ ﹁開かれた租税立法のあり方﹂に近づける方法が提案されて いる。そこには、理想を現実的に取り込んでいく著者の真摯 な姿勢が感じられる。 このほか、巻末に参考資料として、納税者憲章に関する論 文が掲載されている。ここでは、諸外国における納税者憲章 の制定の例を詳しく紹介するとともに、その意義を示してい る。日本における納税者憲章制定への道筋まで検討されてお り、巻末資料という位置付けを超える第一級の論文となって いる。この論文を収めたことで、結果として、本書の価値を さらに高めることに成功している。 若干の注文 このように高い水準をもつ著書だが、評者としていくつか の要望がある。その多くは、本書が新しい動きに意欲的に切 り込んでいる部分に関連する。 ℃餌辞3のなかで、著者は﹁租税政策に競争原理を﹂と提言 している。確かに日本では、租税に限らず政策全般について、 政府の絶対的優位があまりに顕著であり、多様性を阻んで弊 害をもたらしていることは間違いない。そのため、競争原理 を求める筆者の考え方には賛成できる。そうしたなか、日本 経団連を中心とした最近の動きをどう捉えるか、著者の見解 を示して欲しかった。日本経団連によって設立された二十一 世紀政策研究所が、法人課税について積極的に提言を行って いる。とくに二〇〇六年から、同じ背景を持つ日本租税総合 研究所︵現企業税制研究所︶が、財務省主税局で法案作成を 担当するなどしてきた朝長英樹氏を招聰し、税制改正の条文 まで作成する動きがある。そして二〇〇七年十月時点におい て、その案が公開されている。こうした動きについて、本書 で必要と唱えた﹁競争原理﹂にもとづくもののひとつとして 肯定的に捉えるのか、それともいわゆる財界によるロビー活 動の一環と位置付けるのかなど、評価を是非して欲しかった。 海外の制度の紹介でも、アメリカとイギリスにとどまらず、 より多くの国の例を紹介して欲しいと言うのは、望みが高す ぎるかもしれない。ただし、予算制度について言えば、アメ リカやイギリスでは予算として税収を含む歳入全体を議決対

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象としないのに対して、ドイツやフランスは日本と同様に、 税収を含めた歳入を審議の対象とする。とくにドイツの連邦 予算は、歳出と歳入を予算段階において均衡させるという点 において、日本の一般会計と類似した予算制度である。また、 本書において一年税原則についてイギリスを例に紹介してい るが、フランスであれば原則としてすべての税目が一年税原 則である。両国についても、租税立法過程を紹介する機会を もって欲しいというのは、楽をして知識を得たいという評者 の怠慢かもしれない。 財務省主税局と比較して、総務省自治税務局の記述がとて も少ない。財務省主税局よりも相対的に少なくなるのは当然 かもしれない。しかし、昨今の税源移譲や法定外税の拡大の 一方での締め付けなど、地方税に関する自治税務局の役割の 重要性は言うまでもない。本書では地方税の条例制定過程に ついて詳しい記述があるうえ、問題点や課題が明示されてい るのだから、もう少し詳しく総務省自治税務局について、分 析・評価しても良いのではないだろうか。 ℃巽け3の政府税制調査会の議論について、より公開性を高 めるべきという意見には評者も全面的に賛成する。しかし、 ﹁政府税調答申には、少数意見があっても、まったく明らか にされることがないことも問題視されています﹂との指摘は 強すぎるのではないだろうか。二〇〇三年度の答申︵二〇〇 二年一一月︶から、別冊等で﹁答申に盛り込まれていない主 な意見﹂、現在は﹁その他の主な意見﹂が公表・配布される ようになっている。また、具体的な発言内容についても、紙 べースのものだけでなく≦3でも議事録が確認できる。議 事録の表記については、総会を例にとると二〇〇三年六月一 七日のものから、発言者の名前が明記されるようになってお り︵それまでは、委員か事務方かの区別しかなく、誰の発言 かは分からなかった︶、反対意見を述べた者が誰なのかも分 かるようになっている。これらの点については、参考文献と して若干古いものを利用していることが影響していると考え られる。 また、同じく政府税制調査会について、﹁その審議は非公 開です﹂という表現も気にかかる。著者の意図は、﹁開かれ た租税立法﹂をめざして記者などに対して原則としてすべて 公開をめざすべきということであろう。この観点からすれば、 現状の政府税制調査会の公開度合は、著しく不十分であるこ とは間違いない。一方で、議事録が公開されているというこ と、そして最近では審議中継が≦3上で動画配信されるよ うになっている。もちろん、すべての分科会の審議が中継さ れているわけではなく、一部に過ぎないので、公開性を高め るべきだが、本書の表現はやや強く、意図とは異なる誤解を 招く恐れがあるように感じられる。 英訳化も一考か 最後にいくつか、評者としての要望などを記したが、もち ろんそれで本書の輝きが鈍るものでは決してない。政策担当

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者や研究者はもちろんのこと、国及び地方公共団体の議員、

そして広く国民・住民に推奨したい本である。また、日本の

租税立法過程を海外に紹介する貴重な学術文献として、本書

の英訳化を検討しても良いのではないだろうか。

参照

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