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雑誌名 同志社大学ワールドワイドビジネスレビュー

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Academic year: 2021

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投資環境の変化と欧米におけるディスクロージャー 規制の改革 : ヘッジ・ファンドに関する開示規制

著者 松尾 健一

雑誌名 同志社大学ワールドワイドビジネスレビュー

巻 10

ページ 193‑194

発行年 2009‑03‑31

権利 同志社大学ワールドワイドビジネス研究センター

URL http://doi.org/10.14988/re.2017.0000015962

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投資環境の変化と欧米における ディスクロージャー規制の改革

──ヘッジ・ファンドに関する開示規制──

松尾 健一

(同志社大学法学部准教授)

近年の投資環境の変化を象徴する現象として,投資ファンドの台頭があげられる。投資ファ ンドのなかでもとりわけヘッジ・ファンドについては,通貨危機や金融危機を招いた一因とし て槍玉にあげられるなど,注目を集めている。これにともない,ファンドに対する規制強化の 必要性も説かれているが,いまのところ量的規制等の実体的規制の強化まで主張するものは少 数にとどまり,まずは開示規制を強化して様子をみようという雰囲気が強い。本報告は,その ようなヘッジ・ファンドに対するあらたな開示規制の動向の概要を示すものである。

ヘッジ・ファンドに対して情報開示規制を課す根拠としては,他の投資スキームに対するそ れと同様に,投資者保護・金融市場の安定・不公正取引の排除といったことがあげられる。ヘ ッジ・ファンドについてはとくに金融市場の安定という観点から,投資ポジションの報告等を 求める声も強いが,投資ポジションの開示は投資戦略の開示につながることから,ヘッジ・フ ァンド側の強い抵抗が予想される。

このため,現在想定されている開示規制は,投資者保護の観点から,ヘッジ・ファンドの特 徴に応じた開示情報の拡充を図るものが主流である。投資者保護のための情報開示の観点から 重要となるヘッジ・ファンドの特徴としては,ロング・ポジションだけでなくショート・ポジ ションも有するというように投資対象・投資範囲が広く,それにともないリスクの範囲も拡大 することがあげられる。また,ファンド運用者の報酬が投資リターンに比例して決められるこ とが多いため,投資リターンの評価をめぐり,投資者と運用者との間に利益相反が生じるおそ れがある。そのような利益相反の可能性は,とりわけ市場価格がなく,適正価値の把握が困難 な資産が運用資産に含まれている場合に大きくなる。さらに,大口の投資者を優遇するサイド レター問題もある。

これらのファンドの特徴に応じて,開示情報の拡充を図る試みとして,本報告では,イギリ スのHedge Fund Working Group,Hedge Fund Standards : Final Report, January 2008(HFWG Re- port),およびアメリカのPresident Working Groupの指示により組織された2つの委員会が2008 年4月にまとめた報告書「Best Practices For The Hedge Fund Industry」(AMC Report)および

「Principles And Best Practices For Hedge Fund Investors」をとりあげた。前者は,英国に本拠を 第蠡部:ワールドワイドビジネスと新興経済圏

193

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置く大手ヘッジ・ファンド運用会社14社からなるワーキング・グループが,FSA(英国金融 庁)の定める金融取引業に関する11の原則をふまえて,主として情報開示とガバナンスに焦 点を当てて,ヘッジ・ファンド運用業者が従うべきベストプラクティスをまとめたものであ る。

情報開示の拡充について,具体的には,まず運用資産・運用手法に関する情報として,HFWG

Reportでは,投資戦略の詳細な説明,投資対象に関する一般的な説明,投資上の制限・ガイ

ドラインなどの詳細,戦略を変更する場合の手続き・戦略変更に関するファンド・マネージャ ーの裁量の程度,レバレッジを利用する場合の資金源に関する情報,レバレッジにともなうリ スクを開示することとしている。また,AMC Reportでは,ファンドの目的,戦略,許容され ている投資,リスクレポート(投資資産の種類,地理的要因,レバレッジ,ポジション集中,

資産の配分の重要な変更等に関する継続的な開示)に関する情報を開示することとしている。

つぎに運用担当者の報酬をめぐる利益相反問題に対応するための情報開示については,

HFWG Reportでは,資産の評価について独立した第三者である評価者の採用,内部価格モデ

ル・価格推定の前提条件・価格評価が困難な資産が占める割合の開示,評価のプロセス等(利 益相反を実効的に防止するプロセスを含む)定めた評価方針書の作成,評価方針書には評価が 困難な資産(流動性が低い資産等)について公正な価値を算定する首尾一貫した信頼性のある アプローチを定めることを要求している。AMC Reportでは,GAAPに準拠した公正価値評価 会計を使用した純資産価値の計算,評価方針(投資ポジションの評価方法,評価プロセスにお ける利益相反問題の削減方法を含む)の作成を要求し,第三者機関が果たすべき役割の重要性 を説いている。

最後に,サイドレター問題への対応策として,HFWG Reportでは,サイドレターに定めら れた大口投資者に対する優遇的取扱のうち,重要なものを他の投資者にも開示すべきことを要 求している。同様に,AMC Reportにおいても,他の投資者に不利な影響を与えうる条件をサ イドレターに定めている場合,その条件が他の投資者が与える影響を把握するために必要とな る情報を開示することが要求されている。

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ワールド・ワイド・ビジネス・レビュー 第

10

巻 公開セミナー特集号

参照

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