文書提出義務に関する判例について(四)
その他のタイトル Die Rechtsprechung zur Vorlegungspflicht der Urkunde im Zivilprozes (4)
著者 上野 泰男
雑誌名 關西大學法學論集
巻 48
号 2
ページ 415‑476
発行年 1998‑06‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00024505
︹
6 2
︺
文書提出義務に関する判例について四 文書提出命令関係裁判例集五一五頁 下
民 集
一 二
二 巻
九
i
︱ 二
号 一
六
0 六頁
目 次 一 は じ め に
1
本資料の対象2
文書提出義務に関する規定の変遷3
新民事訴訟法︵平成八年法律第一
0
九号︶
4本資料の目的
二文書提出義務に関する判例の紹介とコメント
︹1
︺ ー︹ 1 8 ︺
︵以 上四 七巻 五号
︶
︹19︺ ー
︹ 4 0 ︺
︵以 上四 七巻 六号
︶
︹14
︺ ー︹
6 1
︺︵以 上四 八巻 一号
︶
︹62
︺ ー︹ 8 6 ︺
︵本 号︶
東京高決昭五六.︱ニ・七判時一
0 三五号ニ︱︱頁︑判夕四六七号一︱三頁
文書提出義務に関する判例について
︵ 四 ︶
上
二 九
三
野︵ 四
一 五
︶
券男
︵ 要
旨 ︶ 事実関係は︑判時一 0 ︱二五号︱ニ︱頁からは判明しないが︑本件の判例研究である︑蓮井良憲・判評二八七号︵判時一 0 五
八号︶ニー四頁や早川勝・商事法務一 0 四一号六二九頁によると︑大略次のようである︒
X は ︑
X 株式会社の代表取締役であったが︑ X の倒産に伴う旧債務の整理と再建をはかるため︑ X の債権者である会社の代
表取締役の Y
と の
間 で
︑
Y が全額出資して Y 有 限 会 社 を 設 立 し ︑ Y が名目上の代表取締役となるが︑経営は X が自己および X
会社の機械・器具︑原材料︑技術等を提供し︑その得意先をも引き継いでこれにあたり︑その収益により X 会社の債権者等に
対する債務の弁済にあてる旨の合意がされ︑ Y 会社はこの合意に基づいて経営されていた︒ところが︑ X と X
会 社
は ︑
Y 会社
の 営
業 廃
止 を
理 由
に ︑
Y お よ び Y
を 被
告 と
し て
︑
Y 会社の営業のため x らが提供した物品の引渡しと︑右営業に関して Y
ら に
生じた不当利得金の返還を求める訴えを提起し︑その主張事実前半の立証のため︑民訴法三︱二条︵新ニニ 0 条︶二号及び商
法 三 五 条 に 基 づ き ︑ Y に対し︑その所持する Y 会社の設立︵昭和五二年五月=︱‑日︶から昭和五五年六月二四日までに作成さ
れ た
Y 会社の︑①貸借対照表
出 を
求 め
た ︒
原裁判所は︑本件文書はいずれも Y 会社の営業に関して作成されたいわゆる商業帳簿であるから︑ Y 会社の経営を目的とし
て X
ら と
Y との間に成立した合意に基づく法律関係に付き作成された文書︵民訴︱ニ︱二条
1 1
新 ニ ニ 0 条三号後段︶にあたると
し て
︑
X ら の 申 立 て を 認 め た ︒
こ れ
に 対
し ︑
Y と y は︑本件各文書は Y 会社の商業帳簿であって︑ X
ら と
Y との合意に基づく法律関係に基づいて作成され
た文書ではないこと︵なお︑ Y
ら は
X ら
と
Y と の 合 意 の 存 在 を 否 認 し て い る ︶ ︑ Y 会社の営業を廃止した事実も Y 会社の財産
一 切
を
Y が占有管理している事実もないことを理由に即時抗告を申し立てた︒
︵ 事
実 ︶
抗告棄却
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
②損益計算書 ③営業報告書 ④現金出納簿 ⑤仕入帳簿 ⑥経費帳簿 ⑦銀行取引帳簿の提 二九四︵四一六︶
文書提出義務に関する判例について回 Y ら の 即 時 抗 告 の う ち ︑ Y
の 即
時 抗
告 は
︑
Y に対して文書提出命令が発されていないので︑抗告の利益なしとして不適法却
下 さ
れ た
︒
次 い
で ︑
Y が︑本件各文書は Y の 商 業 帳 簿 で あ っ て ︑ X
ら と
Y との合意に基づく法律関係について作成された文書︑すなわ
ち、民訴三―二条一―la~
段の法律関係文書ではないとした点につき︑本件各文書のうち︑②の損益計算書と③の営業報告書と
を 除 く 各 文 書 が ︑ 商 法 三 二 条 ・ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ 一 条 の 商 業 帳 簿 で あ る こ と は 明 ら か で あ り ︑ ﹁ そ の 民 事 訴 訟 に お け る 提 出 義 務 に つ い て は ︑
同法三五条の定めるところである﹂とした︒これに対し︑②の損益計算書と③の営業報告書については︑商業帳簿に該当する
かどうかにつき争いがあるが︑有限会社法四一二条及び四六条によれば︑損益計算書及び営業報告書は︑商業帳簿である貸借対
照表︵商三三条︶とともに︑毎決算期に作成し︑これを社員と債権者に公示することを義務づけられていることを考えると︑
﹁同時に作成公示を義務付けられている会社の計算に関する文書のうち︑財産目録︑貸借対照表の訴訟上の提出義務は商法三
五条によるが︑損益計算書︑営業報告書についてはそうではないというのはいかに不合理であること﹂︑﹁損益計算書は営業の
成績を示すが財産の状況を示すものではないこと︑また営業報告書は営業の一般的景況を示す説明書であることを理由に右二
者が商業帳簿にあたらないというのは︑専ら会計学等の観点からする商業帳簿の本質論としてはともかく︑右二者が有限会社
のそれである場合の訴訟上の提出義務に関しては︑右に述べた不合理を解消するに足るものとはいえず︑他に右二者を財産目
録︑貸借対照表とを特に区別して商法三五条による提出義務の対象外としなければならないことを相当とする理由は見出し難
い﹂とし︑結局︑﹁本件文書はすべて商法一︳一五条にいう商業帳簿であるか或いはこれに準ずるものであって︑民事訴訟におけ
るその提出義務は専ら同条の適用ないしその準用によるものと解するのが相当である﹂とした︒
な お
︑
Y が本件各文書を所持しないとの点については︑ Y は 本 件 訴 訟 の 当 事 者 で あ り ︑ Y 会社の代表者として︑本件文書を
所持する者であるから︑営業廃止の有無にかかわらず︑所持者として提出義務を負うとした︒
︵ コ
メ ン
ト ︶
二 九
五
︵ 四
一 七
︶
︵ 四
一 八
︶
本件については︑宮川茂夫・法律時報五四巻七号一三四頁︑蓮井良憲・判評二八七号︵判時一 0 五八号︶ニ︱四頁︑松岡誠
之助・ジュリスト八=二号九九頁︑早川勝・商事法務一 0 四一号六二九頁の判例研究があり︵執筆者はいずれも商法学者︶︑
このうち︑蓮井︑松岡両研究は判旨賛成であり︑宮川︑早川研究は︑営業報告書を商業帳簿とした点につき判旨に反対する︒
なお︑昭和四九年の商法改正により︑企業会計の理論と実務に合致しない財産目録中心主義から︑損益主義的考え方に移行
し︑営業の継続を前提とした通常財産目録︵開業財産目録・決算財産目録︶を廃止したので︑本決定が財産目録を商業帳簿の
例として掲げることは﹁誤り﹂である︵蓮井良憲・判評二八七号︵判時一 0 五 九 号 ︶ ニ ︱ 四 頁 ︵ ニ ︱ 七 頁 ︶ 参 照 ︶ ︒
商業帳簿とは︑商法︱‑=一条により︑商人が﹁営業上ノ財産及損益ノ状況ヲ明カニスル為﹂作成する﹁会計帳簿及貸借対照
表﹂であり︑会計帳簿とは︑商法三三条により︑開業又は成立の時の︑および︑決算期その他毎年一定の時期における営業上
の財産およびその価額や︑取引その他営業上の財産に影響を及ぼすべき事項を記載した帳簿をいう︒したがって︑損益計算書
が有限会社の商業帳簿とされることは︑現在では一般に認められているようであり︑商法学者の評釈もすぺて判旨賛成である
から︑問題はない︒営業報告書については︑前年度の営業の経過及び会社企業の状況を記載した説明書で︑計数的表示もない
ことから︑本来計算に関する書類ともいえないとされているようであり︑本件に関する二件の評釈もこれを商業帳簿とみるこ
とはできないとする︒本決定は︑少なくとも商業帳簿に準ずるものとして︑商法三五条による文書提出義務を肯定した︒これ
は一定の説得力をもつが︑蓮井評釈にあるように︑営業報告書は︑貸借対照表や損益計算書により明らかにされる計数的情報
以外の会社の業務•財務に関する情報を明らかにするものとして、営業上の財産に影響を及ぼすべき事項を記載した帳簿とい
うことができ︑会計帳簿︑したがって商業帳簿といって差し支えないのではないか︒
本 件
で は
︑
X らは︑商業帳簿については︑商法三五条が実体法として閲覧請求権を基礎づけ︑したがって︑民訴︱
1二二条二
号により文書の提出を求めたのに対し︑原審決定は民訴三︱二条三号後段の法律関係文書にあたるとして︑文書提出命令を発
し た の で
( X
らが法律関係文書にあたるとの主張をしていたのかどうかは不明である︶︑ Y は︑本件各文書は法律関係文書に
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
二 九
六
文書提出義務に関する判例について同 二項︶の制裁規定の適用がある︒
二 九
七
は該当しないとして︑即時抗告をした︒これに対し︑裁判所は︑商業帳簿は商法三五条に基づき文書提出義務が基礎づけられ るとして︑抗告を排斥したことになる︒文書提出命令の申立ては︑民訴三一三条︵新ニニ一条一項︶五号により︑文書提出義 務の原因を明らかにしてしなければならないが︑それに際しては︑民訴三︱二条各号および商法三五条のいずれにあたるかを︑
具体的事実を示して記載しなければならないと解されている︒したがって︑当事者が記載した具体的事実に基づいて︑当事者
が主張したのと異なる文書提出義務の原因を認定することは可能であろう︒
商法三五条と民訴三︱二条との関係については︑種々の見解が主張されている︵なお︑︹39︺のコメントも参照のこと︶︒国
説 は
︑
X らが採用した見解で︑商法三五条は実体法規定であり︑当事者に閲覧請求権を与え︑民訴三︱二条二号を通じて︑商
業帳簿についての文書提出義務を基礎づけるとするものである︵長島
11
森田・三五二頁︶︒伺説は︑本決定が採用したもので︑
商法三五条は実体法規定ではなく︑むしろ訴訟法規定として︑商業帳簿の文書提出義務を規定したものと解する見解である︒
この伽説によれば︑商法三五条は︑実質的には︑いわば民訴三︱二条四号にあたるべき規定であるとみる︒商法学者の通説で あるといわれ︑早川・蓮井評釈はこの点でも判旨賛成である︒斎藤秀夫ほか編・注解民事訴訟法⑧︹第二版︺
一 五 九 頁 ︹ 斎 藤
11
宮本︺︺も︑この説による︵斎藤ほか編・前掲書一五九頁以下は︑会計帳簿は︑取引先との関係で法律関係文書に該当する
こともあり︑この場合には民訴︱︱二二条一二号により文書提出命令の申立をすることができるとするが︑右規定に基づかなけれ
ばならないとする趣旨かどうかは明白でない︒商法三五条を民訴三︱二条四号にあたるべき規定であるとみるのであれば︑い ずれによってもよいことになろうか︶︒なお︑国⑯説のいずれによっても︑当然︑民訴一=︱六条・三一七条︵新ニニ四条一項 これに対し︑民訴学者の多くは︑むしろ︑商業帳簿には︑民訴三︱二条により文書提出義務が基礎づけられるものもあるこ とから︑民訴法・商法いずれの規定によることもできるが︑商法の規定によった場合には︑民訴三一六条・三一七条の制裁規
定の適用がないとする︵たとえば︑菊井維大
11
村松・民訴法
I I 六︱一頁や兼子一
11
松浦馨ほか・条解民事訴訟法一 0 四八頁な
︵ 四
一 九
︶
︹
6 3
︺
事実 ど
参 照
︶ ︒
文書提出命令関係裁判例集一五二頁 労働判例三八二号六三頁 下民集三二巻九ー︱二号一六︱二頁 東京高決昭五六・︱ニ・ニ四判時一 0 三四号九五頁︑判夕四六四号九九頁
東 高
民 時
報 三
二 巻
︱ 二
号 一
︱
1 0
二 頁
労判速一〇一八号一︱頁
︵ 四
二
0 )
X は︑昭和四九年九月二日付で︑雇主である Y
︵日本鋼管株式会社︶から懲戒解雇の処分を受けた︒しかし︑
X は︑在職中
鉄板線引作業︵マーキン作業︶に従事していたが︑この作業は持続的に前屈姿勢をとり︑しかも︑狭陛な場所での危険な作業 で不断の緊張を要する作業内容であるため︑入社一年後である昭和四七年頃から︑腰部を中心として全身に重苦しい鈍痛を覚 えるにいたり︑昭和四八年三月頃から診療を受けてきた訴外医師Aから︑前記作業に従事することによって惹起された腰痛症 に罹患している旨の診断を得たので︑本件解扉処分は解雇権の濫用であると主張して︑解雇無効確認請求訴訟を提起した︒
X
は︑この訴訟において︑職業性腰痛症に罹患したことを立証するため︑ A 医師が X を診療した診療録に基づいて作成した診断
書等を証拠として提出した︒
こ れ
に 対
し ︑
Y は ︑
X の日頃の勤務態度から︑職業性腰痛症に罹患したことや A 医師の診断には疑義があるとしてこれを争
い ︑
A 医師が勤務する Z 医療法人を相手方として︑証拠保全のため︑民訴三ニ一条︵新ニニ 0
条 ︶
︳ 二
号 前
段 に
基 づ
き ︑
A 医師
が作成した X の診療録等の提出を求めた︒原審がこの申立てを却下したので︑Y即時抗告︒
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
二 九
八
文書提出義務に関する判例について回 ができる﹂とした︒ ︵
要 旨
︶
取消・差戻
二 九
九
民訴三ニ一条三号前段の利益文書とは︑﹁挙証者の法的地位︑権利又は権限を直接証明するために作成された文書及びこれ らの法律関係の発生を基礎付けるために作成された文書﹂であり︑文書の作成目的は︑﹁作成者の作成当時における主観的意 図に拘らず︑客観的かつ合目的的に判定﹂すべきで︑﹁当該文書の内容に直接関係する者との間で︑当該文書に関し︑実質的 に密接な利害関係を有し︑又は有するに至った者がある場合において︑その者が︑訴訟上当該文書を利益に援用する必要性が 大であり︑かつ︑当該文害を開示することによって関係者が受ける法益侵害の程度が軽微であると認められるときは︑右の者 は︑民事訴訟法三︱二条三号前段の規定に準拠し︑当該文書を自己の利益のために作成されたものとして︑その所持者に対し︑
文書提出命令を求めることができるものと解するのが相当である﹂とした︒そして︑診療録は︑﹁医師の診療行為の適正を担 保し︑さらには︑当該診療行為の対象たる疾病︑傷害に係る民事︑行政等の分野における各種請求権の有無が争われる際にお ける証拠を確保する使命を負わされている﹂と解し︑﹁診療録及び通常これと一体をなして意味をもつレントゲン・フィルム 若しくはレントゲン写真は︑作成者である医師︑診療の客体である患者のみならず︑その請求権行使の相手方とされた行政機 関や雇王等の如き第三者においても︑前記諸要件を充足する場合には︑診療録等の所持者に対し︑文書提出命令を求めること
そ し て ︑ 本 件 で は ︑ A 医師の診断にかかる資料が訴訟の帰趨を決する重大な証拠であること︑ A の証人尋問では記憶違い等
の不備を免れないことから︑証拠調ぺの必要性は大きく︑また︑ X 自らが︑本件診療録に基づく診断書を証拠として提出して
い る
の で
︑
X
の法益侵害の余地はまずないことから︑文書提出義務が認められるとした︒なお︑診療録の保存期間は五年であ るが︑本件診療録はすでにその期間を経過しているので︑廃棄される恐れがあるから︑本案訴訟係属中でも︑証拠保全の必要
性はあるとした︵証拠調ぺの必要性に関する判断をする必要があるので原審差戻︶︒
︵ 四
ニ ︱
)
︹
6 4
︺
︵
要 旨
︶
︵ コ
メ ン
ト ︶
た も の と し て ︑ ︹
2 8 ︺ ︹
3 4 ︺ ︹
3 5 ︺ ︹
6 1 ︺がある
o東京高決昭五七・ニ・三判時一 0 四一号八 0 頁︑判夕四七 0 号一三一頁
東 高 民 時 報 ︱ 二 三 巻 二 号 ︱ ︱ 頁
文書提出命令関係裁判例集︱一三頁 三
0 0
︵ 四
二 二
︶
本件に関する判時のコメントによれば︑診療録につき文書提出命令を認めた先例として︑︹
2 4 ︺
︹ 茄
︺ ︹
2 9 ︺ ︹
4 9 ︺が︑否定し
本件は︑利益文書概念を極めて広く解し︑結果的に一般的文書提出義務を肯定するのと同じことになっている︒新法のもと
では︑三号前段の利益文書︑四号文書のいずれに該当するかが問題になる文書である︒もっとも︑ X が本件文書︵診療録︶を
基礎とする診断書を証拠として提出していることから︑民事訴訟三︱二条一号の文書︵引用文書︶にあたるとみることもでき
事実関係は不明である︒ X は蓑子縁組無効確認訴訟の原告であるが︑その係属中︑訴外
z︵保土ケ谷税務署長︶に対し︑訴
外 A 死亡により︑相続税納付義務者である X ら八人の者が提出した相続税申告書およびその修正申告書等につき︑民事訴訟三
︱ 二 条 ︵ 新 法 ニ ニ 0 条︶二号の権利文書にあたるとして︑その提出を求めたところ︑原審はこの申立てを認めた︒そこで︑ N
は︑民事訴訟三︱二条二号の閲覧請求権は私法上のものに限られるとして︑即時抗告を申立てた︒
X は Z に対して︑民事訴訟三︱二条二号により︑文書提出命令を求めるのであるから︑﹁ X が z に対して本件文書の引渡又
事 実
︶
よ う
︒
取消・申立却下 下民集三二巻九 I
︱ 二
号 一
六 二
0 頁
関
法
第
四
八
巻
第
二
号
︹
6 5
︺
文書提出義務に関する判例について同 事実 は閲覧を求める私法上の権利を有することが要件であると解すべきである﹂とし︑ X らは︑本件文書の作成者として︑税法上
の文書の交付又は閲覧請求権を有することは格別、当然に私法上の引渡•閲覧請求権を有するものではないとした。
︵ コ
メ ン
ト ︶
下民集三二巻九ー︱二号一六二五頁
民事訴訟三―二条二号の引渡•閲覧請求権が私法上のものでなければならないとされるのは、公法上の請求権については、
それを直接行使して︵例えば︑本件では X が
zに対して直接行使する︶︑本件文書の引渡又は閲覧を実現すればよいからであ
る︵菊井
1 1
村松・全訂民訴法
I I 六一四頁参照︶︒しかし︑それが拒否された場合のことを考えると︑訴訟法上の文書提出義務
を肯定してもよいのではないか︵兼子一
1 1
松浦馨ほか・条解民事訴訟法一〇五一頁は︑公法上の閲覧請求権につき同旨︒もっ
とも、菊井11
村松•前掲書は拒否処分については別途行政訴訟によって解決をはかるべきであるとする)。
東京高決昭五七・ニ・四判時 1 0 四三号五六頁︑判夕四七一号ニ︱五頁
東高民時報三二巻二号︱二頁
文書提出命令関係裁判例集二九七頁
事実関係の詳細は不明である︵時期からいって︑次の︹
6 6 ︺事件と同一の航空機事故に基づくものと推測される︶︒ X
は ︑
自衛隊の航空機事故に基づく国家賠償事件において︑ Y ︵国︶に対し︑民訴三︱二条︵新ニニ 0 条︶三号後段の法律関係文書
にあたるとして︑航空事故調査報告書の提出を求めたところ︑原審ではこれが認められた︒そこで︑ Y は︑本件航空事故調査
報告書は法律関係文書には該当しないこと︑それは自己使用文書であること︑今後の航空事故調査に支障を来すなど重大な国
家的利益が損なわれることなどを理由に即時抗告を申し立てた︒
三 0
1
︵ 四
二 三
︶
︵ 要
旨 ︶
抗告棄却
1 ︱ ︱ 0 ニ
︵ 四
二 四
︶
﹁三︱二条三号後段の規定の趣旨は︑挙証者の利益︑ひいて訴訟における真実発見の見地からだけではなく︑提出を強制さ
れることによって受ける文書所持者の不利益にも十分思いを致し︑提出すべき文書の範囲を限定するにある﹂としたうえで︑
同規定における﹁法律関係﹂とは︑﹁契約関係のみに限定すべき理由はなく︑契約の不履行に基づく損害賠償請求の権利義務
関係︑更には︑不法行為に基づく損害賠償請求の権利義務関係も右法律関係に含まれると解すべきである︒けだし︑そう解釈
しないと︑右規定は︑その存在理由の一半を失うことになるからである︵但し︑或る事項が訴訟において争われているという
だけで︑右にいう法律関係となるわけではない︒︶﹂とし︑また︑﹁法律関係二付キ作成セラレタルトキ﹂とは︑﹁﹃法律関係に
関し﹂というよりは狭く︑その内容に︑当該法律関係自体が記載されている場合︑当該法律関係の発生︑変更︑消滅をきたす
事実が記載されている場合など︑直接当該法律関係の存否を明らかにするに足る文書をいうものと解すべきである﹂とした︒
そして︑本件航空事故調査報告書は︑﹁本件訴訟の主要な争点である事故機の設置︑管理に関する安全配慮義務違反の存否の
判断に直接影響を及ぼす具体的事実が記載されているものと推認することができ︑本件文書は︑ Y と X 間の法律関係につき作
本件文書が Y の自己使用文書であるとの主張については︑﹁挙証者と所持者との法律関係につき作成された文書であっても︑
それがいわゆる自己使用文書であるとき﹂は法律関係文書にあたらないことは認めたが︑﹁自己使用文書とは︑メモ︑日記な
どのごとく︵例えば︑売買の事実が記載されている場合︶︑所持者が︑専ら自己使用のため作成した文書をいうものと解され
る﹂とし︑本件航空事故調査報告書は︑﹁自衛隊内において航空機事故について︑その原因を究明し︑その後の事故の発生を
防止するために作成されたものである﹂けれども︑その作成は﹁昭和︱︱
1 0
年五月二六日防衛庁訓令第三五号にその根拠をおく
ものであって︑作成者の任意の判断によったものではない﹂こと︑航空自衛隊における航空機事故の発生の状況及び事故原因
について調査した結果を航空幕僚長に報告するために作成されたものとして﹁公益にかかわるものであることなどから考える 成された文書であるというべきである﹂とした︒
関
法
第
四
八
巻
第
二
号
文書提出義務に関する判例について回
立 て
た ︒
︹
6 6
︺
︵
事 実
下民集三二巻九!︱二号一六三六頁 と︑本件文書をもって︑右メモ︑日記などと同列に論ずるのは相当でないというべきである﹂とした︒
なお︑今後の航空機事故調査に支障を来すとの Y の主張については︑文書提出義務と文書提出の必要性が認められる以上︑
﹁こうした理由のみで︑その提出を拒むことができると解することはできない﹂とした︒
︵ コ
メ ン
ト ︶
航空事故調査報告書の提出命令については︑︹
1 6 ︺
︹ 羽
︺ ︹
4 4 ︺があり︑いずれも積極に解し︑消極に解するのは︹
3 7 ︺の原
決定である︹33︺だけである︵次の︹
6 6 ︺のコメント参照︶︒なお︑航空事故調査報告書については︑︹33︺のコメントを参照
の こ
と ︒
東京高決昭五七・――-•一九判時一0四七号八六頁、判夕四七一号―二五頁
東高民時報三三巻三号三 0 頁
文書提出命令関係裁判例集三
0
頁 0
昭和四四年八月六日︑航空自衛隊百理基地︵茨城県東茨城郡︶の東方約一九マイルの海上で発生した F
1 0
四 J ジェット機
の墜落事故によって死亡した航空自衛官の相続人である X
ら は
︑
Y ︵国︶に対し︑安全配慮義務違反を理由とする国家賠償請
求 訴
訟 に
お い
て ︑
Y が安全配慮義務違反の事実を争うので︑その主張立証のため︑民訴三︱二条三号後段により︑本件事故の
航空事故調査報告書の提出を求め︑原審はこれを認めた︒これに対し︑ Y は︑本件文書は法律関係文書には該当しないこと︑
本件文書は内部的文書であること︑本件文書を提出すると︑重大な国家的利益が侵害されること等を理由に︑即時抗告を申し
三 0 三
︵ 四
二 五
︶
の点は﹁主張自体失当﹂とされた︒ ︵
要 旨
︶
抗告棄却
︱ ︱
1
0 四
法律関係文書につき︑それは﹁挙証者と文書所持者との法律関係に関連ある事項を記載した文書又は右の法律関係に関連あ
る事項を記載した文書﹂であるとしたうえで︑これと内部的文書との関係につき︑そのような文書であっても︑﹁所持者が
もっぱら自己使用の目的で作成した文書﹂はこれにあたらないとし︑さらに︑﹁例外として︑所持者が自己使用の目的で作成
した文書であっても︑その文書の作成経緯に照らし︑その文書を挙証者の立証に使用させないことが著しく信義ないし衡平の
原則に反すると認められるときは︑前記の法条に従って︑その提出義務を負担するにいたるものと解するのを相当とする﹂と
した︒そして︑航空事故調査報告書は︑同種の航空機事故の再発防止のために使用することのみを目的として作成されること︑
部外者の閲覧はごく限られ︑公開を予定していないことから︑﹁自己使用のみを目的として作成された Y の内部文書﹂である
が ︑ 航 空 事 故 調 査 に は ︑ X らが参加する余地はないこと︑調査終了後損壊機材は事故現場から除去され︑ X らが後日にいたっ
て独自の立場と費用とによって調査することができないことから︑﹁本件文書は︑前記墜落事故発生直後における事故原因等
についての公的機関による組織的な調査の結果を客観化し保存している唯一の文書﹂であり︑事故調査に参加した職員を証人
尋問することは可能であるが︑その精度は本件文書の記載内容よりはるかに劣ることなどから︑ Y が﹁これを X らの立証に使
用させないことは︑著しく信義にもとり衡平の原則にも反するものといわざるを得ない﹂とした︒
なお︑本件文書を提出すると︑重大な国家的利益が侵害されるとの Y の主張については︑本件文書に﹁防衛上の秘密その他
の重大な国家的利益に関係がある事項の記載を含み得ることは当然であり︑もし本件文書にそのような記載が存在するならば︑
y がその旨を具体的に主張し疎明することによって︑その部分についての提出義務を免れることができると解すべきことは︑
民訴法二七二条︵新一九一条一項︶︑国家公務員法一
0
0 条の各規定の趣旨に照らして当然﹂であるとしたが︑本件では﹁国
家的利益の侵害される可能性を抽象的に云々する以上のものではないことが︑その主張自体によって明らか﹂であるから︑こ
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
︵ 四
二 六
︶
︹
6 7
︺
文書提出義務に関する判例について回
︵ コ
メ ン
ト ︶
判 時
一
0 四七号の本件コメントは︑高裁段階の判例としては︑航空事故調査報告書が法律関係文書に該当することは﹁実務
的にはほとんど確定的な判例法になっているといってよい﹂とし︑それにもかかわらず︑﹁提出命令を受けた国側では︵訟務
当局の方針であろうが︶あくまでも消極説をとり︑提出命令がある度に即時抗告をして同趣旨の抗告理由書を提出している﹂
のは︑事件の一方当事者として上訴権はあるものの︑﹁抗告事件に関する判例法とみられる程度の法解釈に対し頑なにまでそ
で あ
る と
す る
︒
一面において公益の代表者として中立公正な態度をとることを要請される国側の態度として疑問﹂
秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九二号︶ なお︑航空事故調査報告書が法律関係文書にあたるとする先例については︑︹
6 5 ︺のコメントを参照のこと︒その他︑小林
一 五 五 頁 や ︑ 竹 下 守 夫
11
野村秀敏﹁民事訴訟
高松高決昭五七·五•三一判夕四七五号一五0頁
訟 務
月 報
二 八
巻 ︱
二 号
ニ ︱
︱ ︱
︱ ︱
︱ ︱
頁
本 件
は ︑
X ら
が
Y ︵通産大臣︶を被告として提起した︑伊方発電所の原子炉設置許可処分の取消しを求めた訴訟の控訴審係
属中︵一審では X
ら 敗
訴 ︶
︑
X らが︑原子炉の運転管理が極めて不十分なものであり︑運転員の操作ミスによる事故の発生が
避けられないものであるとの事実を立証するため︑①伊方発電所原子炉施設保安規定︑②伊方発電所保守要則︑③伊方発電所 ︵
事 実
︶
文書提出命令関係裁判例集八六頁 下民集三二巻九 i ︱二号一六五二頁
三 0 五
︵ 四
二 七
︶
における文書提出命令﹂②判評二 0 六号︵判時八 0
四 号
︶
︱二四頁︑時岡・民訴法の争点二三一頁なども参照︒ の 主 張 を 固 執 す る こ と は ︑
︱ 二
条 ︵
新 ニ
ニ
0 条 ︶
そ の 提 出 を 求 め た ︒
︵ 四
二 八
︶
保守総括内規︑④伊方発電所保守作業内規︑⑤伊方発電所運転要則︑⑥
I
U 運
転 定
期 点
検 内
規 ︑
⑦ そ
の 他
関 係
規 定
が ︑
民 訴
︱ ︱
︱
一 号 の 引 用 文 書 に あ た り ︑ か つ ︑ Y は訴外 A ︵四国電力︶からその提出を受けて所持しているとして︑
民訴三︱二条一号が引用文書につき提出義務を認めたのは︑﹁当該文書を所持する当事者においてその存在を主張し裁判所
に自己の主張が真実であることの心証を一方的に形成される危険を避けるため︑当該文書を相手方の批判にさらすのが衡平で
あるという実質的考慮に基づくもの﹂であるとし︑この観点からすれば︑引用文書とは︑﹁当事者の一方が︑訴訟においてそ
の主張を明確にするために︑文書の存在について︑具体的︑自発的に言及し︑かつ︑その内容を積極的に引用した場合におけ
し か し ︑ 本 件 で は ︑ Y らは︑原子炉の安全確保の規制は︑原子炉設置許可︵原子炉を設置しようとする段階︶︑工事の計画
についての許可︵原子炉設置工事に着手する段階︶︑工事の工程ごとの使用前検査︵原子炉使用の段階︶︑保安規定の認可︵運
転開始の段階︶︑定期検査︵運転開始後の一定時期ごと︶等︑段階的にされており︑本件では︑まだ︑第一の原子炉設置許可
の段階で︑本件取消しの対象となっている設置許可に際しての安全審査は原子炉施設自体の基本設計ないし基本的設計方針に
係る事項に限られていることを前提としており︑①訴外 A が作成した本件原子炉の﹁運転や定期点検に関する規定﹂によれ
ぱ ︑ TMI
事故︵スリーマイルアイランド原子力発電所事故︶のような事故は生じえないとの Y の主張は︑念のために触れた
運転員の操作を含む原子炉の運転管理に関する事項は﹁保安規定等﹂によって担保されるものであると にすぎないこと︑②
の Y の主張は︑前記段階的規制の第 4 の段階で審査されるものであることを一般的概括的に述べたものに過ぎないこと︑③
本件原子炉の補助給水系の検査や補修作業について規定しているのは︑前記①なしい⑥であるとの Y
の 主
張 は
︑
X らの釈明に
応じて本件文書の存在に言及しただけで︑結局︑いずれも︑﹁本件文書の存在について具体的︑自発的に言及し︑かつ︑その る当該文書を指称するものと解するのが相当である﹂とした︒ ︵
要 旨
︶
申立却下
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
1 0
六
︹
6 8
︺
文書提出義務に関する判例について同 事実関係は不明である︵ただし︑本件の関連事件である︹
8 0 ︺
参 照
︶ ︒
X は訴外 A.B 両弁護士に対する懲戒請求を東京弁
護士会および大阪弁護士会に申し立てたが棄却の決定を受けたので︑ Y ︵日本弁護士連合会︶に対して異議申出をしたが︑こ
の異議申出も棄却されたようである︒本件は︑ X が Y に対し︑右異議申出棄却決定に関連して提起した訴訟のようである︒ X
は︑この訴訟において︑被告 Y ︵日本弁護士連合会︶が所持する A お よ び B 弁護士に関する同会懲戒委員会議事録が民事訴訟
三︱二条︵新ニニ 0 条︶二号の権利文書にあたるとして︑その提出を求めた︒その際︑ X は︑日本弁護士連合会のする懲戒手
続は適正かつ公正でなければならないことから︑条理上︑懲戒異議申出人である X は同懲戒委員会議事録の引渡又は閲覧請求
︵ 事
実 ︶ 東京高決昭五七・六・八判夕四七八号七二頁 で
は な
い か
︶ ︒
︵ コ
メ ン
ト ︶
も な い ﹂ と し た ︒
文書提出命令関係裁判例集一九頁 東高民時報三三巻五ー六号七三頁 下民集三二巻九ー︱二号一六七一頁 内容を積極的に引用しているとはいえず︑本件文書の存在と趣旨によって自己の主張を裏付ける証拠に供しようとするもので
引用の意義については︑本件決定は通説︵菊井
11
村松・全訂民訴法
I I 六 ︱ 二 頁 以 下 ︑ 兼 子 一
11
松浦馨ほか・条解民事訴訟法
1 0
五 0 頁など︶にしたがったものである︵本件に関する判夕四七五号のコメントも参照︶︒本件事案からすれば︑引用文書
にあたらないとされたのは正当であろう︵なお︑この部分は審理の対象とならず︑そもそも文書提出の必要性も否定されるの
= 1
0 七
︵ 四
二 九
︶
︹
6 9
︺
権を有すること︑日弁連懲戒手続規程二六条は︑同懲戒委員会は相当と認めるときは︑異議申出人について︑その事案の審査 期日の調書︑証拠書類及び証拠物を閲覧し︑かつ︑謄写することができる旨規定することを︑その根拠としていた︒申立てを
抗告棄却
民訴法三︱二条二号の﹁挙証者力文書ノ所持者二対シ其ノ引渡又ハ閲覧ヲ求ムルコトヲ得ルトキ﹂とは︑﹁挙証者が文書の
所持者に対し︑私法上の引渡請求権又は閲覧請求権を有する場合をいう﹂としたうえで︑日本弁護士連合会の﹁懲戒手続は適
正かつ公正でなければならないのであることは当然のことであるが︑これらのことから直ちに条理上懲戒異議申出人に懲戒委
員会の議事録の引渡請求権又は閲覧請求権が肯定されなければならないと解することはできない﹂とし︑また︑日弁連懲戒手
続規程二六条からすれば︑﹁異議申出人は同規程上︑当然に当該事件の懲戒委員会の議事録の引渡請求権又は閲覧請求権を有
︵ コ
メ ン
ト ︶
メントも参照のこと︒
下民集三二巻九 i ︱二号一六七七頁 記録の閲覧請求権は︑手続の適正︑法的審尋の付与との関係で大きな意味をもつ︵この点につき︑上野﹁仲裁手続における 記録の閲覧について﹂関大法学論集四一巻五・六号五 0 一頁参照︶︒したがって︑本決定が手続関係書類の閲覧請求権を否定
したことには疑問があるが︑仮にそれが否定されるとすれば︑本決定の結論もやむをえないところである︒なお︑︹64︺のコ
東京地決昭五七•六・ニ五判時一0七九号六六頁、判夕四七六号―10頁
文書提出命令関係裁判例集八九頁 しないものといわなければならない﹂とした︒ ︵
要 旨
︶
却下した原決定に対して X が即時抗告を申し立てた︒
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
三 0 八
︵ 四
三
0 )
文書提出義務に関する判例について四 せるものであることを窺わせる資料も存しない︒﹂ 訴外 A 会社の株主である X は︑商法二七二条に基づき︑ A
会 社
を 代
表 し
て ︑
A 会社代表取締役 Y
に 対
し ︑
A 会社の旧大宮工
場跡地を訴外 B 会社︵イトーヨーカ堂︶にショッピングセンターとして使用させる目的で︑建物および駐車場を建築し︑これ
を B 会社に賃貸する旨の契約を締結してはならないこと︑右跡地を個別にまたは分割して売却してはならないことを求める差
止請求訴訟を提起した︒ Y はこの訴訟において︑右跡地の長期的利用計画の検討を重ねてきたことを主張立証するため︑ A 会
社が第三者に依頼して調査・作成させた報告書や事業計画書の一部を引用し︑乙号証として提出したので︑ X は︑民訴三︱ニ
条︵新ニニ 0
条 ︶
︵ 要
旨 ︶
﹁民事訴訟手続において文書の一部を書証として提出することが許されることは︑民事訴訟法にこれを禁止する規定がなく︑
かえって︑商法三五条のように︑文書の一部の提出命令を認める規定があることからも明らかであるから︑乙第一号証の一
︵この文書のみその全部が提出されていた︶を除く本件乙号各証が︑当該文書の他の部分と一体不可分であるとか︑あるいは
これと一緒でなければ意味内容が不明で証拠として採用できないものであるとか︑ことさら裁判所の判断を誤らせるような抜
粋がされているのであれば格別︑そうでない限り︑ Y は引用した本件乙号各証以外の文書部分の提出義務は負わないものとい
うべきである︒そして︑本件乙号各証が Y 主張のとおり︑特定の部分として可分であり︑文書全体との関連性も明瞭で︑それ
自体として意味内容も完結的で理解できるものであることは記録上明らかであり︑抜粋の仕方がことさら裁判所の判断を誤ら
︵ コ
メ ン
ト ︶
本件については︑岨野悌介・季刊実務民事法 4 ︵ニ︱八頁︶に判例研究がある︒それによれば︑本件判旨は﹁文書の一部だ 申立却下 な お ︑ 本 件 の 関 連 事 件 と し て ︹ 7 3 ︺ が あ る ︒
事 実
︶
一号の引用文書にあたるとして︑その全部の提出を求める申立をした︒
三 0 九
︵ 四
三 一
︶
︹
7 0
︺
事 実
︶
申立却下 けを書証として提出しうる場合についての適切な基準を示したもの﹂であるとされる︒菊井維大
11
村松・全訂民事訴訟法
I I 六
一四頁も本決定を支持する︒ 三一〇
︵ 四
三 二
︶ 理論としてはその通りであろうが︑自分に都合のよい部分だけを提出することを防止するのが引用文書提出義務の根拠の一
つであるから︑文書全体との関連性の判断などは慎重にされる必要があろう︒なお︑文書の一部を隠蔽して証拠申請があった
場 合
の 提
出 義
務 に
つ き
︑ ︹
1 7
︺ ︹
2 0 ︺を参照のこと︒
大阪高決昭五七・八・一九判夕四八 0
号 一
文書提出命令関係裁判例集三八二頁
事実関係は不明であるが︑医療事故の被害者である X が︑医師 Y を相手に損害賠償請求訴訟を提起し︑この訴訟の控訴審に
お い
て ︑
X が︑本件医療事故に関して Y が作成した所属医師会長である A
宛 の
顛 末
書 と
︑
A が Z 医師会に顛末書とともに提出
した副申書の提出を︑所持者である Z 医師会︵兵庫県医師会︶に対し︑民訴一=︱二条︵新ニニ 0 条︶三号後段に基づいて求め
たもののようである︒
︵ 要
旨 ︶
大阪高裁の大野コートの決定の︱つである︒民訴三︱二条を︑﹁文書の所持者と挙証者が︑その文書について特別な関係を 有する場合に︑例外的に︑その所持者の訴訟への提出についての処分権を制限することとして︑この間の利害の調整を計った もの﹂と解釈し︑同条三号後段の法律関係文書については︑﹁これを法律関係に相当密接な関係を有するものに限定すべく︑
更にまた︑かかる文書所持者が単に自己のため︑これを相手方又は第三者に作成させたに過ぎない文書は︑右法律関係に関す
関 法 第 四 八 巻 第 二 号
下民集三二巻九 i ︱ 二 号 一 六 八 0 頁
︱ 二
頁
︹
7 1
︺
文書提出義務に関する判例について四
︵ 事
実 ︶
る記載が包含されていてもこれに該当しないと解すべき﹂であるとし︑本件文書は︑﹁
z医師会共済特別事業規則により︑秘
密資料とされ︑外部不出の取扱のなされていることが認められ﹂るので︑いずれも︑﹁第三者たる同医師会において本件事案
についての共済事業の一環として徴した意見を含む内部的な資料で﹂︑法律関係文書にあたらないとした︒
︵ コ
メ ン
ト ︶
文書提出命令関係裁判例集三八三頁 医師会の社会的役割等を考えれば︑本件文書は訴訟の場に提出させるのが妥当であると考えられる︒少なくとも︑新法の下 では四号文書に該当するが︑要旨中︑﹁
z医師会共済特別事業規則により︑秘密資料とされ︑外部不出の取扱のなされている
こと﹂が内部的文書の根拠とされているのは納得できない︒これでは︑内部的規則などで︑秘密資料とする旨の規定をおいて
おけば︑ほとんどが自己使用文書として︑文書提出義務を免除されてしまうことになるからである︒
浦和地決昭五七•一―·I
0 行集三三巻︱一号ニニ五六頁
x ら
七 五
人 は
︑
Y ︵建設大臣︶が︑昭和五五年一月二五日付で訴外 A
︵ 国
鉄 ︶
お よ
び
B ︵鉄建公団︶に対してした東北新幹
線東京都・盛岡市間︑上越新幹線東京都新潟市間の工事実施変更計画認可の取消しを求める訴えを︑ Y
に 対
し て
提 起
し た
︒
X
らの主張によれば︑当初︑ Y が A
お よ
び
B に対して昭和四六年一 0 月一四日付で認可した東北新幹線東京都・盛岡市間︑上越
新幹線東京都新潟市間の工事実施計画によれば︑ X らが居住する埼玉県南部地域では︑地下方式による鉄道路線の建設が予定
されていたにもかかわらず︑本件変更計画では︑十分な事前調査や X ら住民の意見の聴取をしないで高架方式に変更されたた
め︑建設予定の新幹線鉄道のもたらす騒音や震動等のために︑ X らの財産権が侵害され︑生活・健康・環境が破壊されるおそ
れがあり︑本件認可には手続および内容の両面において明白かつ重大な違法があるとして︑その取消しを求めるものである︒
~
︵ 四
三 三
︶
︵ 要
旨 ︶
文書提出命令の申立書の必要的記載事項である証すべき事実は︑﹁本件文書を閲覧したこともない X らに対し︑それら文書
によって証明し得る程度の個々の具体的な事実を記載しなければならないことを厳格に要求することは︑ X らに不可能を強い 申立却下 し て い る よ う で あ る ︒ はあたらないことなどを理由に︑申立ての却下を求めた︒
~ ︵ 四 一
二 四
︶
こ れ
に 対
し ︑
Y は ︑ 本 件 認 可 は ︑ Y の指示に基づいて新幹線の建設にあたる A
やB が︑工事実施にあたって作成した工事実施
計画に対してされた監督官庁たる Y の承認にあたるもので︑いわば行政機関相互間の内部的な行為と同視すべきものであるか
ら︑行政行為として外部に対する効力を有するものではなく︑その行為によって直接国民の権利義務を形成し若しくはその範
囲を確定する効果を伴う行政行為としての認可にあたらないとして︑抗告訴訟の対象になることを争っている︒
そ こ
で ︑
X らは︑本件認可が︑抗告訴訟の対象となることを立証するため︑ Y に対し︑民訴三︱二条︵新ニニ 0 条︶三号後
段に基づき︑① Y が 昭 和 四 六 年 一 0 月一四日および四八年二月二七日付で A ︑ B に対して認可した工事実施計画︑および︑昭
和五五年一月二五日付で A に対して認可した変更工事実施計画の各認可書︑および︑その添付書類︑② A
又 は
B が各認可申請
にあたって Y に提出した認可申請書︑同添付書類︑参考資料の提出を求めた︒
こ れ
に 対
し ︑
Y は︑証すべき事実の記載は︑当該文書によって証明し得る程度の本案に関する具体的事実を記載しなければ
ならないにもかかわらず︑本件申立てにはその記載がないこと︑民訴三︱二条三号後段の法律関係文書は︑挙証者と所持者の
両者の直接又は間接の関与のもとに作成されたものであって両者の具体的な法的地位が明らかになるような文書を指すものと
解 す べ き で あ る が ︑ Y と X らとの間には本件認可について取消を求め得るような法律関係が存在しないから︑法律関係文書に
なお︑本件では訴えの適否に口頭弁論が制限されており︑また︑本件②の文書については︑裁判所が訴訟関係を明瞭ならし
め る
た め
︑
Y に提出を促したところ︑ Y は乙二号証としてこれを裁判所に提出済みであり︑ X ら訴訟代理人もその写しを受領
関
法
第
四
八
巻
第
二
号
文書提出義務に関する判例について四 なお︑裁判所は︑本件計画によって建設予定の新幹線によって X らの権利が侵害されるおそれがあるときは︑対外的に効力
をもたない本件認可の取消を求めるまでもなく︑ Y の指示によって実施されようとしている新幹線鉄道の建設工事そのもの︑
あるいは工事実施計画の違法性を前提に︑民事訴訟において妨害予防等の救済を求めることができるとした︒
︵ コ
メ ン
ト ︶
本件に対し
xらは即時抗告を申し立てたが︑抗告審決定である東京高決昭五八・九・九訟務月報三 0 巻三号五三五頁︵文書 はもはや結論に影響しない﹂とした︒ 文書提出命令の申立が不適法であるとはいえない﹂とした︒ ることにもなりかねないばかりか︑ひいては文書提出の申立それ自体を事実上封ずることにもなって相当ではない﹂として︑ 本件記載は﹁必ずしも的確な記載であるとはいえないが︑少なくともかかる記載事項であるからという理由だけで X らの本件
民訴三︱二条三号後段の法律関係文書については︑同規定における法律関係とは﹁もともとは契約関係を前提として規定さ
れたものであるが︑これを民事訴訟上のそれと本質的に異なる抗告訴訟の場合に適用するにあたっては︑おのずから右法律関
係の意味をある程度広く解すべき余地があるものと考えられるとしても︑当該行政庁の行為の取消を求めている国民と行政庁
との間に法律関係があるといいうるには︑取消の対象となる行政庁の行為が取消を求めている国民を直接の名宛人としている
ものであれ︑少なくとも当該行政庁の行為の効力が直接国民の権利義務に影響を及ぼすものであるという関係になければなら
ないものと解するのが相当であって︑原・被告間に争訟関係がある場合︑その適否を問わず︑その争訟関係の形成過程におい
て作成され︑あるいは争訟関係に密接に関係する文書を﹂法律関係文書にあたるとすることはできないとした︒
そして︑本件認可処分は︑ Y 主 張 の よ う に ︑ ﹁ Y の立案︑計画にかかる新幹線鉄道の建設を実現する過程でなされた行政機
関内部の行為の性格を有するものと解されるから︑本件認可の存在によって対外的にその法律上の効果が生ずるものではない
し︑国民の権利義務に直接の影響が生ずるものではない﹂から︑﹁本件訴の適否を判断するについては︑本件文書の内容如何
~ ︵
四 三
五 ︶
︹
7 2
︺