質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の 考察
著者 田中 貴子
雑誌名 主流
号 73
ページ 29‑55
発行年 2011‑11‑10
権利 同志社大学英文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015240
質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
田 中 貴 子
1 .背景
数多くの研究が冠詞体系を持たない母語を持つ第二言語学習者にとって英 語の冠調が習得困難であることを報告している (e.g.,Kharma, 1981; Mas旬r, 1987, 1995). 日本人学習者も例外でなく,様々な研究がその困難さやその原 因を才食討している (e.g.,Butler, 2002; Yamada & Matsuura, 1982). しかし ながら,冠詞の誤用の理由について,学習者の冠詞選択理由を考慮して分析 している研究 (e.g.,Akamatsu & Tanaka, 2008; Butler, 2002)は少ない.
また,従来の量的研究手法だけでなく,質的研究手法と組み合わせた形で、行っ た研究となるとさらに限られる (e.g.,Butler, 2002) よって本研究では,
Akamatsu and Tanaka (2008)の量的研究において高い冠詞得点をおさめ た参加者たちを対象に,英語の冠調の理解度が高い学習者の冠詞知識がどの ように構築されているのか,またある冠詞項目を選択する際に,どのような 思考を経てその解答を導き出すのかを質的に考察した.
2.先行研究
母語に冠詞体系の存在しない第二言語学習者にとって,冠調に関する正し い知識を習得することは大変困難であることを数々の研究が報告している (e.gリ 阻larma,1981; Master, 1987, 1995).それらの研究の多くは,英語を 第二言語・外国語 (ESUEFL)とする学習者の英語冠詞の使用に関する知 識やその冠詞習得における第一言語の影響を考察する研究 (e.g.,Master,
30 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
1987; Yamada
&
Matsuur丸 1982)もあれば,特定の冠詞に関する知識構築 に焦点をあて,学習者の間違った冠調使用の原因を考察しているものもある (e.g., Butler, 2002; Ionin, Ko, & Wexler, 2004; Yoon, 1993).冠詞の習得が困難であるという点においては,日本人英語学習者もその例 外ではない.Yamada and Matsuura (1982)は, 日本人の上級英語学習者 を対象に,彼らの冠詞使用を考察した最も多かった間違いは無冠詞または 不定冠詞が用いられるところでの定冠詞の使用によるものであった.定冠調 を入れるべきところへ不定冠詞を入れるというミスは最も少なく,無冠詞と なるべきところに不定冠詞を用いる場合も全体的な間違いの中ではそう多く はなかったが,不定冠詞の代わりに無冠調を用いることは3番目に多かった.
また,英語力との関係に関して,英語力中級レベルから定冠詞と無冠詞使用 の正確さが著しく伸びる一方,不定冠詞の使用は上級英語学習者にとっても 最も困難であることが明らかになった.
Yoon (1993)は,可算性に対する見方の違いと可算性に対する直感的判 断を基準に,不定冠調・無冠詞の使用における,英語母語話者と日本人英語 学習者の相違について調査した.その結果,判断自体には大差は見られなかっ たが,英語母語話者が文脈に応じて名調の可算性を正しく判断するのに対し て,日本入学習者は文脈での判断というよりは,個別に提示されたときの判 断を重視して誤った冠調を選んでいることが分かった中でも,個別に提示 された際に不可算名詞として判断したものは文脈的に可算として扱う必要が あるものでも,不可算として扱うことが多いために,不定冠調を用いるべき ところに無冠詞を用いる誤りが多かった.
Butler (2002)は,日本人英語学習者の冠詞に関するメタ認知知識を分析 しその冠調使用の理由,そしてその学習者の冠詞使用に関するアプローチ の仕方と習熟レベルとの関係性を検証した.この研究には日本人大学生・大 学院生80名と英語の英語母語話者20名が参加し彼らは英語の冠調穴埋め 問題を解くとともに,その後各問の冠調選択理由を述べた.その結果による
と,習熟度により指示性と可算性の捉え方に違いがあり,習熟度が低い学習 者は,指示性と可算性の両方において,教科書や授業で学んだ規則のみを適 用し解答を導き出していた.対照的に,習熟度が上がると,文脈をより正確 に考慮しながら指示性・可算性の変化にも注目し,冠詞の使い分けが出来る ようになる傾向が見られたしかしながら,習熟度がかなり高い学習者でも,
英語母語話者に比べて冠調の誤りが目立ち,話し手・書き手の指示するもの が呆たしてすでに聞き手・読み手にとって周知のものなのか,そしてそれが 数えられるものなのかといった冠調の概念を正確に文脈で判断することは困 難であり,これが日本人学習者の冠詞誤用の原因のひとつであるとしている.
Akamatsu and Tanaka (2008)では, 252名の日本人大学生(l年以上の 英語圏滞在経験なし)を対象にKharma(1981)の空所補充問題の改良版 を実施し英語冠詞使用における適切さ(知識の正確さ)を冠詞選択の理由,
適切な冠詞使用に対する自信度,そしてそれぞれの要因と英語習熟度との関 係を考察したその結果(1)冠詞の種類(不定冠詞,定冠詞,無冠調)に より,その使用の適切さに顕著な差があること, (2) 習熟度の高い学習者 ほど英語冠詞に対する知識がより正確であり,そしてその使用に関する客観 的判断力を備えている,ということがわかった.
数多くのESIAFL学習者の冠調使用に関する研究が行われているが,そ の多くが間違いの傾向を考察するものであり,なぜ冠調誤用が多いのか,と いうことを学習者自身の冠調選択理由を取り入れて考察している研究は数少 ない.さらに,研究手法の点においても,冠詞に関する研究のほとんどが量 的手法を用いて行われており,質的研究手法を用いてその誤用の原因を探っ ている研究も限られている. しかしながら,量的研究手法と質的研究手法は 相補完的な関係であると理解されるべきであり (Larsen‑Freeman
&
Long, 1991) ,量的研究に基づいて選ぴだされた実験参加者に対し質的研究。分析 手法を用いることにより,特定のグループ層の冠詞知識を深く考察できると 期待される.32 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
3.本 研 究 の 目 的
本研究の目的は,比較的正確に英語冠詞を使用できる日本人英語学習者を 対象に,彼らの冠詞に関する知識がどのように構築されているのか,調査・
考察することである.より具体的には,次の2点について明らかにする.
1.英語の冠詞の理解度が高い学習者の冠詞(a/an,the,無冠詞)に関する 知識はどのようなものか?
2. 日本人英語学習者の多くが冠調を誤用する場面で,研究参加者はどうし て誤用を避けることができるのであろうか?
4.研究手順
2008年4月,日本人英語学習者の冠詞知識構築をより詳細に調査するた め, Akamatsu and Tanaka (2008)の実験参加者252名の中から,冠詞テ ストにおいて高得点を修めた上位10名に対し本研究への参加を依頼した.
そのうちの4名が参加した.参加者は, Akamatsu and Tanaka (2008)で 用 い た 阻larma(1981)の改良版を使用し,1)定冠詞,不定冠詞,無冠 詞に関する空所補充問題(問題数は,定冠詞11問,不定冠詞10問,無冠詞 19聞の合計40問)を解き, 2)各解答に対する理由について記述するよう 求められた.冠詞テストは各参加者個別に行われ,テスト中,研究者は参加 者を観察し解答の際の行動等,気づいた点をノートにとった.テスト終了 後,解答用紙及び観察ノートをもとに, stimulated recall interview (Gass
& Mackey, 2000)を用い,それぞれの解答理由について一つずつさらに深 く聞いた.同時に,各参加者の英語学習経験や冠詞学習についてもインタ ビューした.
5.実験参加者
Akamatsu and Tanaka (2008)で実施した冠詞テストにおいて高得点を 修めた上位10名のうち, Midori, Mina, Takashi, Masayuki (すべて仮名) の4名が参加した全員, 2007年度1月時点で, 1年以上の海外経験を持 たない私立大学文学部英文学科に所属する大学生であった.彼らのTOEFL‑
ITPのスコアは表1の通りである.
表1 実験参加者のTOEFL‑ITPスコア
2007Winter 2008 Winter
Section 1 Section 2 Section 3 Total Section 1 Section 2 Se氾tion3 Total Midori 48 55 57 533 43 57 47 490
E但na 51 49 51 503 56 49 49 513 Takashi 51 58 52 537 未受験
Masayuki 42 44 49 450 51
~
I 51ー し
522008年4月に行われたインタビューデータから明らかになった英語学習経 歴及び冠詞学習に関する経験は表2の通りである.
34 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
表2 英語学習歴と冠調学習経験
中学校から英語学習を開始.しかし中学校では冠詞はあま り扱われなかった.高等学校は丈法書を用いてしっかり冠詞 Midori
I
の勉強をした予備校での精読の授業で冠詞に目が向いたが,大学では.Writingの授業でも先生はあまり冠詞を重要視し ていなかった.
Mina
Takashi
Masayuki
英語を学び始めたのは小学校であった.中学校,そして塾で も冠詞の扱いは小さく,あまり記憶もなければ.Mina自身 も興味はなかった.公立中学校で他の文法事項と同じく基本 的な部分だけ教えられた.高校は国際科へ進学し.Native speakerの担当するspeakingクラスのスピーチの原稿への
フィードパックで冠詞の重要性に対して少し気づく.また,
大学2年の時のWritingのクラスで先生が冠詞の説明を熱心 にやってくれ「なんとなくわかった」気がしている.
公立中学校で冠詞の「触り
J
の部分を学ぶ.自分の中でも冠 詞はそれほど重要でなく他の文法項目に目が向いていた.基 本的に文法が大好き.r
わからないことはきちんと説明して もらわないと気持ちが悪い.J
そして,将来教師としてきち んと「なぜなのか」を明瞭に説明できる必要があると感じ,説明できるように理解すよう日々心がけている.また,短期 語学留学中も英語母語話者の英語使用には注意を払ってい た.
小学校の時に自宅近くの英会話学校へ.そこでは,母音の前 はan,特定できるものはtheということを学んだ.中学校で は自由作文があり,先生が冠詞をチェックしていたので,注 意を払い,冠詞について考える機会があった.英語重視のコー スの高校クラスに入るが,冠詞はあまり重点が置かれなかっ た.大学のWritingのクラスで冠詞の重要性に気づくような 機会が授業であった.書いたものを訂正されることで,自分 でも辞書を見て,冠詞の正しい使用ルールを学んでいった
本研究への参加者は共通して,小学校,または中学校の英語教育において
冠詞はしっかりと教授されていなかった.また,高等学校や大学での経験は 様々であるが,学習過程のある段階で冠調の重要性を気付かされる経験を 持っていることがわかる.例えば, MinaとMasayukiは自分で考えて英語 で書いたものに対して教師が与えるフィードパックを通して,またMidori は予備校の精読の授業を通じて,Takashiは「文法が好き
J
.I将来の職業(教 員)のために説明できる知識が必要であるJ
と冠調を正確に理解する機会を 自ら積極的に求めていっている.冠詞得点の高い学習者の経験に共通してい たことは,本人の意識の高さ,そしてその意識を持ち,高めるきっかけを作り出す環境の重要性である.
6.分 析
実験参加者の冠詞に関する知識を詳しく調べるため.2007年1月実施テ スト CTest 1)と今回2008年4月に実施したテスト CTest2)における 各参加者の冠詞得点を算出し解答及び解答理由を精査した.具体的には,
正答と解答理由を照らし合わせ,正答であったとしても,解答理由が間違っ ている場合には誤答と見なし,冠詞得点が正しい知識を反映するように分析 したそして,英語冠調のタイプ別に正答の傾向を分析すると同時に, Test IとTest2における解答及び解答理由の変化についても分析を行い, どの タイプの冠詞が理解できていないのか,また,参加者が全体的に正確な冠詞 知識を構築しているのかどうかについても分析した.
集められたインタビューデータは全て書き起こされ,その後,質的データ 分析ソフト Nvivo8を 用 い て 分 析 を 行 っ た 特 に 実験参加者の冠詞項目 別解答理由,英語学習経験と冠詞の知識構築の関係に焦点、を当て,最も誤答 の多かった項目に関して焦点を当てた分析を行った.
36 質的研究手法による日本人大学生の英語冠認使用の考察
7.結果
7.1 冠詞理解度の高い学習者の冠詞知識
Test 1と2の結果を比較し,英語の冠詞の理解震が高い学習者の冠詞(不 定冠詞,定冠詞ラ無冠詞)に関する知識を考察した.
7.1.1 全体の正答率
Test 1では.合計40問中24間,そしてTest2では20聞を全員が正解 しており, 2度のテストにおいて,半数以上の問題において 100%の正答率 をおさめていた 特に,定冠詞に関しては正確かつ安定した知識を有してお り.Test 1では4名全員が9問正解し L正答率 82%),Test 2では4名全 員が全問正解であった.不定冠詞については.Test 1においては,全員正 解した問題が40札 そ し てTest2では70%となっている.この数字は,定 冠詞に関する知識と比較した場合,正確で安定しているとは言い難い. しか し不定冠詞の正答分布から考察すると, 3名以上が正解している問題の割 合はTest1が90%,そしてTest2では100%を示している点を考慮すれば,
次に述べる無冠詞ほど困難ではなかったと言える.最も正答率にばらつきが みられた冠詞項目は無冠詞であった.Test 1, 2ともに半数の問題におい ては全員が正解しているが,他の2冠詞項目と異なり,参加者のもつ知識の ばらつきが伺える結果となっている(表3参照).
表3 冠詞項目別正答率
種類 テスト時 全員正解 3名正解 2名正解 I名正解 全員不正解 不定冠詞 Tωt 1 40% ( 4110) 50%(5/10) lO%(lJlO) 0%(0110) 0%(0110)
10向 Te由t2 70% (7110) 30%(3/10) 0%(0110) 0%(0/10) 。%(α10) 定冠詞 Test 1 82% (似11) 18%(2111) 0% (Olll) 。%(Olll) 0% (Olll) 11問 T巴st2 lω%非(1l/11) 。%(α11) 0%(α
1 1 l
0%(0/11) 0%(0/11) 無冠詞 Test 1 58% (1l/19) 21 % (4119) 11 % (2/19) 11 % (2/19) 0%(0/19) 19間 Tωt2 53% (1α19) 26%(5/19) 11 %(2/19) 0.5%(ν19) 0.5%(ν19)小数点第3以下四捨五入
7.1.2 各参加者の冠詞得点、の変化
表4は各参加者のTest2における全体的及び各項目別正答率を表したも のである.Midoriの正答率変化は2.5%であり,これは定冠詞に関する問題 を1問多く正解したことによる変化であり,不定冠詞及び無冠詞に関しては 変化がなかった.Minaは正答率を 5%下げたが,定冠詞に関して変化はな く,安定した知識を示していると言える.しかしながら,不定冠詞について はTest2で2問正答を増やしたが,逆に無冠詞の問題で2問不正解となっ ており,知識の暖昧さを示している.最も大きな変化を見せたのはTakashi である.TakashiはTest2で,全ての冠詞項目においてTest 1よりもよ
り正確な知識を呈示し,全体で12.5%増の正答率をあげている(問題数にし て5題).Masayukiに関しては.Test 2において,各冠調項目における点 数に変化はなく,全体的な正答率も同じであった.これらのことを踏まえ,
正答数には問題数にして各項目最大2聞の違いであり,冠調知識に関して大 きな変化は見られず¥全体的に実験参加者の冠詞知識は安定していると言え るだろう.
38 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
表4 実験参加者別 全体・各項目別正答率
2007年1月 2008年4月 Tota1(%) 項目別 Tota1(%) 項目別 Tota187.5 <a/an> 100 (10/10)
Tota190 <a/an> 100 (10/10) Midori
(35/40) くthe> 91 (10/11)
(36/40) <the> 100(11/11) く の > 79 (15/19) くの〉 79 (15/19) Total82.5 くa/an> 60( 6/10)
Tota177.5 <a/an> 80( 8/10) Mina
(33/40) <the> 91 (lO/H)
(31/40) <the> 91 (10/11) くの > 79(15/19) く の > 68 (13119) Tota182.5 くa/an> 90( 9/10)
Tota195 <a/an> 100(10/10) Takashi
(33/40) <the> 82 ( 9/11)
(38/40) くthe> 100 (11/11) くの > 79(15/19) く の > 89 (17/19) Tota190 くa/an> 90 ( 9/10)
Total90 <a/an> 90( 9/10) Masayuki
(36/40) くthe> 100 (11/11)
(36/40) <the> 100 (11/11) くの〉 84(16/19) くの〉 84 (16/19)
7.1.3 各参加者の誤答について
各参加者が受けた2回のテストの解答と解答理由を精査した(表5参照).
総体的に見てTest1で不正解であった問題はTest2でも不正解となって いることがわかる.Midoriは, 5問の誤答のうち3聞を再度間違い(どれ も無冠詞), Minaは7つの誤答のうち4つ で 同 じ 間 違 い を 繰 り 返 し た 同 様に, Takashiも2題,そしてMasayukiも5問中4問を再度間違っている.
また,無冠調とするべきところに定冠詞を用いる誤答パターンが最も多く見 られた(延べ数19回).また,最も誤答の多かった項目は4香, 1番, 11番 (誤答率)11夏)の 3問で、全て無冠詞に関する問題であった
表5 実験参加者別Test1とTest2に お け る 解 答 及 び 解 答 理 由 Test 1 正答 解答 解答理由 Test2 正答 解答 解答理由
Q2 無冠詞 the 特定・不特定 Q2 無冠詞 the 特定・不特定 Q4 無冠詞 the 特定・不特定 Q4 無冠詞 the 特定・不特定 Qll 無冠詞 the 特定・不特定 Qll 無冠詞 the 特定・不特定 Midori 特定・不特定/
Q13 定冠詞 a 可算・不可算 Q39 無冠調 a イディオム Q18 無冠詞 無冠詞 キーワード
(理由ミス)
Q 1 無冠詞 a 特定・不特定 Q 1 無冠詞 a 特定・不特定 Q2 無冠詞 the なんとなく Q4 無冠詞 the 特定・不特定 Q5 不定冠詞 the 理解不可能 Q5 不定冠詞 the 特定・不特定
な理由
Q7 不定冠詞 the 特定・不特定/Q7 不定冠詞 the なんとなく 可算・不可算
Mina Q26 不定冠詞 無冠詞 なんとなく Q12 無冠詞 the 一般・総称 Q28 不定冠詞 the イディオム Q16 無冠詞 the 一般・総称 Q39 無冠詞 a キーワード Q17 無冠詞 the ー般・総称 Q28 不定冠詞 the イディオム Q35 無冠詞 the 一般・総称 Q39 無冠詞 a イディオム Ql 無冠詞 a 特定・不特定 Q 1 無冠詞 a 特定・不特定/可算・不可算 Q3 定冠詞 the イディオム Q4 無冠詞 特定・不特定/
(理由ミス) a 可算・不可算 Q4 無冠詞 a 特定・不特定
Takashi
Q5 不定冠詞 可算・不可算 a (理由ミス) Q9 定冠詞 the イディオム(理由ミス)
Ql1 無冠詞 the 特定・不特定/可算・不可算
Q 1 無冠詞 the 特定・不特定 Q 1 無冠詞 the 特定・不特定 Q4 無冠詞 the 特定・不特定 Q4 無冠詞 the 特定・不特定 Masayuki Q21 無冠詞 the 特定・不特定 Qll 無冠詞 the なんとなく
Q39 不定冠詞 the なんとなく Q39 不定冠詞 the なんとなく Q40 不定冠詞 the なんとなく Q40 不定冠詞 the なんとなく
仁二コの部分は2回のテストに繰り返し間違った問題
40 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
以上,全体的な分析から言えることは,1)冠調テスト高得点者にとっても 冠詞の習得は容易ではなく, 2) とりわけ無冠詞に関する正しい知識の習得 が特に困難であることがわかった
7.2 特に誤答の多かった無冠詞の問題の解答へのプロセス
冠調得点の高い学習者にとっても最も苦手な項目は無冠詞であることがわ かったが,ここでは最も正答率の低かった無冠詞の3間 (4番, 1香, 11番) に焦点を当てる.各実験参加者はどのようなプロセスを経て,その解答へ行 きつくのか,をStimulatedrecall interviewの結果と関連付けて考察した その結果,同じ不正解であっても,各参加者それぞれ正解,不正解への道筋 が異なることが分かつた.まず,冠詞得点の高い学習者が最も苦手とした問 題 (4番, 1番, 11番)は以下のようなものである.
Michael Faraday was one of those remarkable men who begin
ロ エ 二 3
life in (2)... very modest circumstances and yet reach (3)... top ofth位 professionthro
昭:hITI[日
determinationand (5)... certain amount of ( 6 ). . . . . good luck. Although he began his career as ( 7 ). . . . . poorly educated salesman,
he became internationally known as ( 8 ). . . . . scientist before he reached (9)... age ofthirty. He devoted (10)... most of his liおto国 1 ) . • • • 1 .
experiments with (12)...山 廿icity.He was (13)... man who invented (14)... first dynamo as well as (15)... typeoftr百lsformer.7.2.1 問題 (4) に関して
最も正答率の低かった4番の問題は, Test 1ではMina以外の3名が無冠 詞とするところを,不定冠調もしくは定冠調を選ぴ, Test 2では4名全員 が不定冠詞もしくは定冠詞を選ぶという間違いをしていた(表6参照)•
表 6 問題 (4) の解答の根拠 Question 4
Test 1 Test 2
MidoriMina Takashi Masayuki 特定・不特定! なんとなく !特定・不特定!特定・不特定
I !L.+;‑i‑‑... ‑‑r‑"'tlrf‑‑rL.. I特定・不特定/I
特定・不特定│特定・不特定I T.J..N‑ ~I "T'J..N‑
l
j 可算・不可算l
1特定・不特定しかしながら,その答えに行きつく経緯は参加者によって異なっている Test 2の解答に関するインタビューにおいて各参加者は以下のようにコメ
ントしている.
Midori (定冠詞を選択)
Midori: ~ん沙諸政定され τる感とで ぞの "determinαtionつ
τ
いう況に忠ク.
Reseαrcher: ぞの"はどこ;少ら!1J
τ
ぐるのPMidori:え っ と こ の … ラ ん ?through the" determinαtion ・? 会んか玄室中の…~んだろ P…文掌…うーん…え,文脈 から,河島
fL ‑
τpこの後,
I
なぜ、特定されていると思うのか」とさらに問うたが, Midoriは考 え込み,それ以上の説明はできなかった.また, Midoriは冠詞選択の際に は文脈も考慮するといい, determinationの意味を「目標」と理解していた ことも影響を与えていたと考えられる.Mina (定冠詞を選択)
Mi九α
x
ええx.と,なんやろ,ぞのお…,determinαtionでいラ ,X
, だ万ミらぞの,えっ,難 L い~ (:5f;), ~んか説明すぶのが難Lい. …Jとえよ …, ぞのと去んか…, …, ぞの, このtop
42 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
o[ their pro[essionの,ええ ,the, うん,えX, ぞの,top o[ the pro[ession
D
, に周4
更す0,x
えっ ,determinαti01も はひとづ L‑:;j>安いβミら,この場合はとPんJか会んやろ….Resoαrcher:だ〉がら,ぞの"through the determi間前九のdetermi附 tぬn はそのま乏のtheωrpo[ their prof白swnに周係Lてぶつ
τ
ことF M仇α:fiい 少 な と 留 っ た …Reseαrcher:だからぞれ去ぞれに持定され
τ
ぃo
ガミら theが7ぐんやということ P M仇α:そんと之そんな, です
なぜ定冠詞を選択したのか, ということを明確に説明することに難しさを感 じているが,問題になる個所の前後の文章を考え,特定という解答を導き出 している.
Takashi (不定冠詞を選択)
Tαhαshi: あんまり,あんまりです• Determinαti01もっていうの:;j"
持定で, ,者窟認か α がつぐかと士 • The fiワ:;j寸いかな,っ ていう.
Rθ'Searcher:迷ったんやね.ぞれで
. 1
智恵認でfit :
ぐυTaka'Shi : makeαdecisionつでいいまするんね.mαkedecision?多 ゑ mαkeαdecisionですよね.多分.だ〉からdeterminαtionる おんなど感Cかとえっていうt惑とで.
Reseαrcher:ヲ
τ
いう感とで, 主立若宮で石持定だ万ミらa:;jrつぐと.Tαhαshi:そうですね.
この問題で不定冠詞を選択したのは唯一Takashiだけだが,その解答理由
はその他の参加者とは異なっている.彼は, determinationという単語の意 味を正確に理解し,そのうえで同じ意味を持つdecisionと関連付け不正解 ではあるが解答へ至った.また,正解が無冠詞であると告げると,さほど意 外な感じでもなくその可能性も考えたが, make a decisionと同じ考え方で 不定冠詞を選んだという.
Masayuki (定冠詞を選択)
Mαsayuki : 1/#.定で ~Æ ;ðゆ the.
n
字定'J1::'ムE
う理局I:i,r
子の,やづ
τ
きた…f調査)?これ?J
determinαtionがちょっ と 意 味 料 あ や ふ や で .Reseαrcher : Ji;, j言語;ð~芳沙諸らんかった F
Mαsαyuki:多分五調査
J
みたいなぞんな感とでReseαrcher: 調査 P 調査でl:it: い • determination f,: ~調査ノっ τ 意味あった??
Mαsα:yuki:いや,/.:';d通ら多分,
l
iiJ;dミこ》ちゃになっτ
んです.Researcher : t.やる解ぐとさに音域る孝之て鯨いでAのP Mαsa:γuki:搭務ユ
t ! T
売ですねaMasayukiは解答する時に文脈を考えているとのことだが,この場合,
determinationという単語の意味が暖味であったため,うまく文脈を掴めな かったということである.
7.2.2 問題(1)について
問題(1)は2番目に低い正答率で, Test 2においてMidoriのみが正解し ている(表7参照)•
44 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
表7 問題(1)の解答の根拠 Question 1
Test 1 Test 2
Midori Mina Takashi I Masayuki 可算・不可算
l
特定・不特定!理解不可能な理由│特定・不特定1.1,.J.or‑i‑,. ~tL""";--1--.,. 1 特定・不特定/ I
可算・不可算│特定・不特定│I "1'J1'l‑‑ '1 ‑1'J1'l‑‑1 可算・不可算 │特定・不特定i
各参加者の理由づけは以下の通りである.
Midori (可算・不可算)
Reseαrcher: (解 答JIJ.嵐を屈ながら )lifeが不可算名詞だ万通ら,窟 認はつかと去いP
Midori: Iiい.
Reseαrcher: the はつかと長いのF Midori:ラーん….
Reseαrcher:安んで, この3ワの中l'?
Midori : those I ,i menを修厳Lてるから,theだけにすぷとliif;が 腐定されちゃうのか安易ヲ '"{"_t立つで…人生みたいと~. l'… いらと士いの3少なあ.
Midoriは1ifeという名調の意味を「人生
J
と正しく理解し不可算名詞だ から無冠調を選択している.Mina (特定・不特定)
Minα: Michαelのlifeやz少らthelifeとEいまLJ.:. Reseαrcher:凌んか選ったと;がぞんなのめ}.)?
Minα:みなんか,え ,
r
α,かなPノフ τ
ちょヮム留づたんですけと なんでJがαはちゃうか去っτ
,なんとなぐReseαrcher : tJ:んガミαで/itJ:いと去っ仁留った?tJ:‑3ほ と 成 案 /iαにLて/i‑3):.
Minα:
え x . x . ヲ
fReseαrcher : J!ij /i aにL
τ τ
, で,今回/ithe会んやね. で ふ 実/i正 解/i去にるつ;少ないの.Minα:ええっf
Minaはこの文章の主語であるMichaelの人生だから,限定する意味で定冠 詞を選んだ.しかしなぜ不定冠調が入らないのかという点については説明 ができない.この点, Test 1においては不定冠詞を選んでいたこと,また 正解が無冠調である,ということを聞いた際の驚きを考慮すれば, Minaの 中にはこの文脈においてlifeと無冠詞という組み合わせは選択候補にもな かったと言える.
Takashi (単数・不特定)
Reseαrcher: 1 番です';:ð~ Michael RαII出D'was one of those remarkαble men who beginA life.
Tαhαshi: /iい.
Reseαrcher: f
P f
でαとなのかといラムTakαshi : Jif.裁で,持定L
τ
いと去い.hisでるいい;かる, つでいう 感と?提案Lでぶんですけどね. ;}, the lifeοで,今の と こ ろ ど ん 去 生 活 か る 分 か ら へ ん し …beginthe lifw"式 今 ま で 尼
τ
きた英文でる alifeの才が使:bftて た支がすべ5… 主 基 衣 こ こ ま で 孝 之 ん と , 今 ま で 居 てきたのがこうやヮJ乞 っ
τ
いうのが一替でかい?すね.i
諸持すると去らこうかと士Pヮていうのがありますけと46 質的研究手法による日本人大学生の英語冠調使用の考察
Takashiもまた,不定冠詞か定冠詞のうちで選択をし.
r
単数で不特定だか らj という理由で不定冠詞を選んだ.その過程においては,各冠詞項目への 理解とこれまでの記憶に頼る部分があることがわかる. しかしながら,Takashiは自身の解答に自信があり,冠詞選択の思考プロセスには,無冠調 という選択はなく,正解(無冠調)を伝えると「そんなはずはない」とかな り驚いていた.
Reseαrcher:これ,芸事;K./.オ,実fi{iifるつかないんです.
Tαたαshi: begin lifeですか.
Reseαrcher : begin life.と去んマす.
Takαshi:ぞんと乞ぞん会ハズfi去い.…多えた.}Fl認に注言をおっ τ きたポ~.来. life fi countαble で~ liuesつでありまする ん点だから,子ういうのが6っと界経にと去フてきて.・
最近,概念ゃったらかけないと;d"いろいろあるってい うのは分かフてるんですけとあまり分からないですね 探ぐまでは.
Masayuki (特定・不特定)
Reseαrcher : "the"をいれたんやねて"解答理由ばマイナルのλ
生fi持定できる3がら theがつぐと the以外に何;d>,
これ結持活わずに解けたP Mαsα:yuki:いや, ちょっと迷いまLたね.
Reseαrcher:停と迷ヲJ士P
Mαsα:yuki:何かるう普通にわるーーってきて,何やこれみたいな.
Reseαrcher:勉にと去んかワぐと;少何るつ;dミへんのちゃラ;かとかつで 考えたP
Mαsα:yuki: っかへんの;ð寸フて"'~応全郵孝之ま L たね.
Reseαrcher:ぞれでtheをいれた理由1:1ぞこに(解答周病にj普い であ‑3と13りP
Mαsα:yuki:子うですね.
Masayukiは無冠調という可能性も含め,全ての冠詞を入れる可能性を考え たうえで,
I
特定できるJ
という理由で定冠詞を選んでいる.MinaとMasayukiは, Michaelという特定の人物の人生であるから定冠 詞が必要であると考えた一方,不定冠調を選んだTakashiはbeginthe lifeよりも begina lifeの方がよく目にしてきた,という理由に加え, lifeと いう名詞はIivesがあることから可算名詞だから不定冠調をつけるという選 択をした.Midoriを除いた3名は正解か不正解かという点においては等し く皆不正解には変わりはないが,その解答に行きつくプロセスは各参加者に より様々である.
7.2.3 問題 (11)について
問題(11)においてはMina以外の参加者は,一度は誤答している問題であ る.MidoriとTakashiがTest1で間違い, Test 2においては, Midoriと Masayukiが誤った解答または説明をしている.この問題の解答においても,
前述の問題(1)のケースと同じく,同じ解答であれどのような思考過程を たどるのか,はそれぞれである.またその過程において,各参加者聞の冠調 理解の深さの相違もうかがうことができる(表8参照)•
48 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
表8 問題 (11)の解答の根拠
Question 11 Midori Mina Takashi Masayuki Test 1 特定・不特定 可算・不可算 特定・不特定/
なんとなく 可算・不可算
Test 2 特定・不特定 可算・不可算 特定・不特定/
なんとなく 可算・不可算
Midori (特定・不特定)
Midori:ぞの彼のPヂfった実験P実験ですかPなんかぞういうの?!‑...
Reseαrcher:伎が王子子づた実験だから P Midori:はい.
Reseαrcher:さっきωhoとJがofとかが使われたら,後ろにJ1fてき たりとかLたら,ぞれが修飾Lてるから .theがつぐ んや,っていう尻に考えた教Jとられてきたクていク 尻にぎったよねPでふこれの揚合のtheがワぐのは,
どういう意味で鹿定されてるつでいク属に思ったん かなP
Midori:ラーん・ーなん;1', ,{J;! い込んだのは,彼;1~、行った実験ヮ τ
いラユ
t
}t死で考えてLまって,役が行った毅々の実験みた いと去…で~r ;
ゃtheをづけなぐっちゃお;がLいの3少なヲ て思って~;tづたんです.Mina (可算・不可算)
Reseαrcher : 11悉 こ れ が 楽LをJJfんマ‑3.理由
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(解答用紙?!‑屈ながら )experiments,直後の名認か複数影だから the はつかと去いと
Minα:I:iい.
Reseαrcher : A
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the る要らと去いとはい,Researcher : (議官
1 i J i
まだ万通ら )Aがつかと士いのはわかAけ と the ft{iifで要らと士いのFMinα : The, x., the,え,theをづけてLまったらタ X, ぞのお,
実験のタ実験全9s'"実験の,
f t
,会んやろ…, ;h, /f待定 のグノループを1i
,指すんやったか<<'?なんやヲたけ?(笑j x. X, な ん 仇 …,実験τ
いうのがいっぱ。いるフでタ the experiment fごすぷ/しゃったら子のやのまたちょヮと 1‑‑1士楽 団…之フ.Takashi (不特定。複数)
Reseαrcher: (解答JtJ.威主
: r
Jl <<'がら)11番 {iifDλら会い.で,こ れ沢不可持定で按設だJがら.目 的shi:叫perimentsで す ね , 実 験 で す よ ね . ま み …theのに
;sい1:i1‑‑ない, 1‑‑必いんですけとま,なん/O>,
D
1‑‑か LたらみA
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1‑‑かLたら.多分95%は無定調やと留ったんですよただ;なん/O¥5 %;が4%
3が3%;が2%/O'. 99%タん一,100%
< < '
1‑‑とは言い坊れ へんJがったんやとE
うんですよTakαshi:た だ こ れ に が 厚LτAとや会いですか
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厚Lてτ, Reseαrcher: ;hー,次のwith以 下 がFTαhαshi:ぞラです.ゲ犀Lてるから挟まるとゃないですか,潜就 experiments がいづぱいあって, ωith~フでいうので少
1‑‑};ぞまぶとゃない?すJれ ぞ れ でtheのにぷいを感とぷ
50 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
んて宗すよ多分;提まっJ士ら theみたいな!1.震とで.
Reseαrcher:符定されてふ,フて,j$!ってLまうねんね.
Tαhαshi:ぞうです,ぞうです.
Reseαrcher:
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ずの跨る持定eヂ#定クて若手x τ
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目 的shi:たなど?の最近の孝之で/:i, ちょっと狭まってるまだ濯 全に持
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されてと士かったら theはかかんのちゃラか, つτ ぃラ.
Masayuki (なんとなく)
Reseαrcher: (解答周病苦
' " : A
去がら)11喜1f;j'f.e再perimentsのJ!if:{去の でtheがづぐ. で,fiifとと去ぐ,…うん何となぐまで 行き若いたちょヮと,こ土経緯;;r教x
てるらヲτ
ぃLミP
Mαsαyuki:だJ少らるう…ぞのやフてきた,実験というのは分;j勺 でるからぞれでるう, どういラこと Lたかとか分かる から the;がと去っ
τ .
Reseαrcher:子の勉の可薩佐と Lでは…P Mαsα:yuki:ナシかtheか.
上記の正答率が最も低かった3聞の解答及びstimulatedrecall interview データの分析から,正解であれ不正解であれ,それぞれの学習者がその解答 を導き出すまでの道筋はさまざまであり,冠調得点が高い学習者間でもその 知識の在り方もまたさまざまであることが分かった.さらに,解答用紙上に 書かれている解答説明をインタビューでより掘り下げていくことで,表面上 の解答及び解答理由は一見正しく見えるものの,より明確な説明を求められ るとできないことや各参加者の知識の深さの違いがあることも明らかとなっ た.
8.考察
8.1 英語冠詞得点、が高い学習者の冠詞知識
2007年1月及ぴ2008年4月に行った2度の冠詞テストにおいて高得点を 取得した学習者にとっても冠詞の習得は困難であり,特に困難な冠調項目は 無冠調であることがわかった.また,日本人大学生を対象に行われた研究結 果(e.g.,Akamatsu
&
Tanaka, 2008; Yamada&
Matsuura, 1982)と同じく,無冠調にすべきところに定冠詞を選択する傾向が見られた.英語と同じ冠調 という概念を持たない日本語を母語とする学習者にとってはやはり習得が困 難なのであろう.さらに, Test 1とTest2における解答変化を精査したと ころ,全体的に実験参加者の冠詞知識にさほど大きな変化は見られなかった.
40問中20聞に関しては, 2度のテストで4名とも変化はなく,残りの項目 もほぼ全員ができているものが多かった.また, Test 1で、間違っていたも のはTest2において間違っていることが多かった.このことは,正しい知 識は正しく内在化されているが,暖昧な知識は暖味なままになりがちであり,
fossilization (Selinker, 1972)が見られていることを表している.と同時に,
この1年数か月の間隔を聞けた同一テスト結果の比較から,いわゆる化石化 された知識の再構築の困難さを反映していると思われる (e.g.,Akamatsu, 2011) . し か し そ の 中 で 少 し 異 な る 傾 向 を 見 せ た の はTakashiである.
Takashiは参加者の中で最も冠調得点の変化が大きかった学習者であり,
Test 1とTest2の比較においても,同じ問題 (2問)を両テストにおいて 間違えたという点においては同じであるが, Test 2においてはTest1より も正答率が高くなっている.この点については, Takashiの解答を導き出す 過程と大きく関係しているため,次セクションにて論じる.
8.2 特に誤答の多かった無冠詞の問題の解答へのプロセス
Stimulated recall interviewデータからは各研究参加者が解答を選ぶ際の
52 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
道筋や冠調に関する知識の質と量が異なっていることが証明された.そして,
正しい答えを選ぶことができても,必ずしもその冠詞に対する知識量が同じ とは言えない,ということもわかった.これは学習者聞の「言語化」できる 知識の質の相違を示している.例えば,問題 (11)のMinaのように,少し 深く問うと,それ以上答えられないという場合もあれば.Takashiのように 正答であれ,誤答であれ,一貫して冠詞使用に関する根拠を明確に説明でき る学習者もいた.そして,この違いは冠詞の知識を深めるためには何が重要 なのかを示唆するものだと考えられるのではないだろうか.例えば,
Takashiはどのような文法項目も明確に説明できることを目標としているた め,普段から「なぜそうなるのか?
J
と考える学習習慣を身につけていた.このことは今井・野島 (2003) が概念変化を必要とする外国語学習において 重要だと主張している 言語に関する感性を養うこと"(p.l42).言い換え れば,メタ言語認知の重要性と一致する結果と言えよう.
9.研 究 の 限 界 点 ・ 将 来 の 研 究 課 題 , そ し て 教 育 へ の 示 唆 本研究の限界点としては,冠詞に関する知識を測定するためにKharma (1981)の空所補充テストを用いたことが挙げられる.冠詞全般に関する知 識を測定する上記のテストではなく,特定の冠調項目(例えば,無冠調)の 特徴をより深く考察するために,それに特化したテストを使用することでよ り正確な冠詞に関する知識を測定することが可能であったと思われる.そう することで,例えば正答率が高い無冠詞とそうでない無冠詞に関する学習者 の知識がどのように構築されているのかをより深く考察することが可能に なったと思われる.
また,今後,量的研究と組み合わせた形での質的研究がさらにおこなわれ る必要性がある.本研究が示したように,量的研究により特定の学習者層を 選び出しその層に焦点を当てた形で,インタビューなどの質的研究手法を
取り入れることで,学習者の知識構造をより詳細に考察することが可能とな る.本研究で明らかになったように,学習者は様々な理由づけでそれぞれの 解答を導きだしているだけでなく,その異なる過程が示していたように冠詞 知識の深さもそれぞれであった.つまり,表面的な解答理由からだけでは見 えてこない解答へ至る思考プロセスもまたインタビューを取り入れることに より追究できるであろう.さらに,学習者の解答へのプロセスを知ることに より, どの部分で学習者が蹟いているのかを知ることができ,冠詞の教え方 への示唆を提供することができるだろう.
教育においては,研究からの示唆を生かし,アウトプット(例えばWriting という形で)の機会を提供し学習者のレベルに合わせたフィードパックが 行われる必要がある.また.Takashiの例が示すように言語に対するメタ認 知を高めることが重要で、あるため,学習者が特定の文法項目について考え,
それを言語化する機会を作り出していくことも重要で、ある (e.g.,Swain, 2000; Swain, Lapkin, Knouzi, Suzuki, & Brooks, 2009).
10.結論
本研究は,母語に冠詞という概念を持たない日本人英語学習者の中でも,
特に高い冠詞知識を有する学習者を対象に,質的研究手法を用いて,冠詞使 用に関する知識を調査・考察した.その結果,次の3点が明らかになった.
まず,習得困難な冠調項目は無冠詞であることが明らかになった.また一度 身についた冠調使用に関する知識は質量ともにあまり変化することがないこ とが示されたさらに,個々の学習者の冠詞選択のプロセスの考察から,同 じ解答を選択している学習者間でも,その知識の深さや正確さには相違がみ られた.そして,その違いが学習者の冠調に関する知識の発達に影響を与え る大きな要因となっている可能性を示唆していた.
冠調に関する正確な理解を身につけるために,鍵になるのが言語に対する
54 質的研究手法による日本人大学生の英語冠詞使用の考察
メ タ 認 知 で あ る . 常 に 母 語 と 第2言語の類似点や相違点に意識を向けて考え ていくことが,外国語学習には不可欠である. したがって,英語の教授にお いてはこの点を教員が認識し,その機会を提供していくことが必須で、ある.
参考文献
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