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都市における水面・緑地の暑熱緩和に関する調査研 究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

都市における水面・緑地の暑熱緩和に関する調査研 究

北山, 広樹

九州大学総合理工学研究科熱エネルギーシステム工学専攻

https://doi.org/10.11501/3090246

出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第4章 都市内公園池および緑地の暑熱緩和効果とその周囲への熱的影響

1 . はじめに

都市において自然が失われつつ ある中で、 居住環境のアメニティ形成のために 水面や緑地などの保全、 復活が叫ばれるようになって久しい1)。 このような中で、

公園緑地が都市内部で低温域を形成し、 周囲に影響を 及ぼすこと はすでに報告さ れている2. 3)。 しかし、 これらは、 都市内の比較的大きな緑地を対象としたもの であり、 点在する小さな規模の緑地について考えた場合、 必ずしも類似の結果が 得られるかどうかわからない。 緑地の規模や周囲の状況を考慮して、 緑地内の熱 環境の特徴や、 影響範囲等について実証的に検討した例は少ない4. 5)。

都市内の池 ・ 湖など水面の熱的効果に関して は、 緑地との相乗的な効果を報告 したものがみられるが6)、 水面そのものを対象として、 その効果を明確に示した もの は非常に少ない。 宮沢等7)は、 周囲の長さ1--1.5km程度の池を対象に 調査を行い、 池が周辺に対して冷熱源として作用し、 その影響が周囲150m程 度まで及ぶことを示している。 また、 Ta.ka.ha.shiら8)は、 北海道の洞爺湖を対象 に調査を行い、 湖の風下への影響が沿岸より約1.5kmまで及ぶことを明らか にしている。 小林9)も、 島根県松江市の中海を対象に、 その北西沿岸に 及ぼす影 響を調査し、 年間を通して日最高気温に対する影響因子として、 湖面水温と風向 風速が重要であることを指摘している。 これらの報告では、 対象とする池や湖の 周辺に水田や畑などのオープンスペースが多く、 必ずしも市街地を対象としたも のではなく、 また影響範囲も、 対象とする水面の規模や周囲の状況により異なる ものと考えられる10)。

本章では、 まず福岡市の中央部に位置する大濠公圏内の池が周辺市街地に 及ぼ す熱的影響に関し、 池に水が ある場合とない場合の比較調査より考察する。 次に 福岡市郊外に位置する公園を対象に、 緑地内の種々の熱的要因の特徴を実測によ り明らかにする。 さらに、 福岡市内の公園および神社等の緑地とその周辺で気温 測定を行い、 測定点周囲の緑の量と 気温との関係について考察する。

- 59 -

(3)

2 . 大きな池を有する公園周囲の熱環境

対象とする公圏内の池は、 1988年に、 この人工池の完成後60年を経過し て浄化が計画され、 水がほぼ完全に排水された状態となった。 池に水がある時と ない時を直接比較することができれば、 池の存在効果をより明瞭に示すことがで きるものと考えられる。 そこで浄化排水時と満水時の比較実測を行う。

2.1 実測対象地域の概要

実測対象とした大濠公園とその周辺の、 航空写真による概観を図4.1(a)お よび(b)に示す。 (a)は浄化排水状態のものであり、 池の底部はヘドロを除き砂 が敷き詰められている。 しかし小さな水溜まりが所々にみられ全体に湿潤状態で ある。 (b)は浄化後の池を満水にした状態である。 池の周囲と内部にある植栽に 対する浄化排水の影響はほとんどないようである。

浄化排水以前の漏水状態における、 大濠公園の池を中心とする周辺表面温度分 布に関するリモートセンシングデータによれば11)、 夏季晴日の正午における池 の水面部分の表面温度が300C前後に集中しているのに対して、 建物、 道路、 公 園緑地が混在する池の周辺の表面温度は30-- 8 OOCの範囲に分布し、 両者の平 均温度の差は200Cに及んでいる。

図4.1 実測対象地域の概観 60

(a)浄化排水時(1988年)

(b)満水時(1989年)

(4)

2.2 測定点および測定方法

池周辺の気温分布の測定は、 池を中心とする測定地点の領域の広さを2段階に 分けて行われている。 1つは東西700m、 南北1000mの範囲に36の移動 測定点を設けており、 この実測を以降、 周囲調査と呼ぶ。 他の1つは測定範囲を 広げて東西1800m、 南北2000mの間に39の移動測定点を設けている。

この実測を以降、 広域調査と呼ぶ。 両調査の測定地点を図4.2(a)および(b) に示す。

周囲調査では、 1グループが4地点を毎正時、 1 0分後、 20分後、 30分後 に徒歩により移動して測定する。 広域調査では1グループが4--6地点を順次自 転車で移動し、 毎30分ごとに測定する。 両調査ともにアスマン通風乾湿計を使 用しているが、 周囲調査では乾球温度と湿球温度、 広域調査では乾球温度のみ測 定している。 池の中央部では、 図4.2に示すように常時観測を行う基準点Rを 設け、 1 0分毎に気温、 湿度を測定し、 併せて池および地面の表面温度を放射温 度計により測定している。

口気象台

0 5OOm

(a)周囲調査 (b)広域調査

図4.2 周囲調査および広域調査における測定点

- 61 -

(5)

実測日の気象状況 2.3

周囲調査は、 池が満水状態では1986年8月5日に、 排水状態では1988 年8月24日に行われている。 池の満水状態および排水状態における実測日に、

絶対湿度、 水平面 池の南側に位置する福岡管区気象台において観測された気温、

全天日射量および平均風速・ 風向をそれぞれ図4.3および図4.4に示す。 満水 9:00以降実測終了まで風向NW--Nの風が吹き、 日射 状態での実測日には、

量は日最大で約3. 2MJ/m2hを示している。 排水状態での実測日には、 測定 天気はあまりよくなく、 特に9:

開始以後弱い北寄りの風が吹いているものの、

(図4.7 測定も一時中断している

00--10:00にかけてにわか雨が降り、

それと同時に北 10:00以降は日射量が増加し天候も良くなり、

(b)参照)。

寄りの比較的強い風が吹き出している。

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風ベクトル

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24 時刻 実測日の気象状況( 1986年8月5日, 満水時の周囲調査)

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12

図4.3

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12 24

時刻 実測日の気象状況(1988年8月24日, 浄化排水時の周囲調査)

6 18 図4.4

- 62 -

(6)

排水状態では1988年 広域調査は、 池が満水状態では1989年8月5日、

福岡管区気象台の気象 8月25日に行われている。 広域調査の実測日における、

データを図4.5および図4.6に示す。 満水状態での実測日には早朝から海寄り 10:00"-'18:00の実測時間中の風速は5"-'10m/

の風が吹いており、

日射量は最大3.5MJ/m2hに達している。 気 この間快晴であり、

sである。

温は300C以下である。 一方、 排水状態での実測日には、 午前中比較的快晴であ 12:00前後の1時間 11: 00"-'14: 00の間日射量が減少し、

ったが、

は気温も低下している。 実測時間内は平均7"-'8m/sのかなり強い海寄りの風 が吹いており、 気温は3 OOCを越えない。

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時刻 実測日の気象状況( 1989年8月5日, 漏水時の広域調査)

12 18 6

図4.5

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24

12 24

時刻 1 8

12 6

実測日の気象状況( 1988年8月25日, 浄化排水時の広域調査) - 63 -

図4.6

(7)

2.4 周囲調査における気温と湿度の分布

周囲調査において測定された、 基準点Rにおける気温と池表面の温度を満水状 態と排水状態とで比較し図4.7 (a)および(b)に示す。 満水時の水面の温度は 気温よりも1-20C高くなることもあるが、 ほぽ気温に近い変動を示している。

一方、 排水時の日中における池底面の温度は、 その表面が濡れているにもかかわ

らず気温に比較して4-60C高く、 逆に夜間には気温よりも低下している。

満水状態における気温と絶対湿度の南北および東西の断面分布について、 6:

00、 13:00および20:00のそれらを比較して図4.8に示す。 池内部 とその周囲の気温差は6:00および20:00において1 oC以下であるのに対 し、 13:00では池内部において低温であり、 周囲との気温差は30Cに達して いる。 6:00には13:00とは逆に池内部の気温が周囲よりやや高くなって いる。 東西断面において、 西側(c -d)の気温が東側(d' -c')に比較し て高くなっているのは、 西側がマンションなどの住宅の密集地であるのに対し、

東側は植栽の豊かな公園になっているためと考えられ、 前述のリモートセンシン グデータによれば、 地表面温度も西側の方が東側より高温となっている。 絶対湿 度の分布をみると、 池内部の値が周囲に比較して高い値を示しているが、 その分 布は風向によって異なり、 6:00は北側、 13:00および20:00は南側 が高い値を示している。 池表面からの水蒸気が風下に移動するためと考えられる。

また東西断面の分布において、 東側(d'-c')の絶対湿度が西側(c -d) に比較して高い値を示すのは、 気温の場合と同様に地被材料、 土地利用の相違に よるものと考えられる。

12:00-15:00における気温の平均値の水平分布を、 池から離れた市 街地の測定点の気温を基準として、 池の満水状態と排水状態とで比較し図4.9 に示す。 満水時および排水時ともに、 池に近づくほど気温は低くなっている。 満 水時における池の外周と内部における気温は、 周囲市街地より1.5 -2. 50C低 下しているのに対し、 排水時におけるその気温差は1.0 -1 . 50Cに減少する。

毎正時における全地点の気温の平均値、 標準偏差、 最高値および最低値の経時 変化を、 満水状態と排水状態とで比較し、 図4.10(a)および(b)に示す。 排 水状態の実測では、 9:00-10:00の問、 にわか雨があったため気温差が 小さくなるなど特異な現象もみられるが、 全般的に気温の標準偏差および最高値 と最低値の差は、 満水時の方が大きくなっている。 この相違は、 午後特に日盛り の12:00-16:00に著しくみられる。

64 -

(8)

34 ρ 也30 甥'26

戸り内/ム 門/ι

池表面温度

8 10 1 2 14 1 G 18 20 G 時実1J

8 1 0 12 14 16 18

時実11

(a)満水時

図4.7 基準点Rにおける気温と池表面温度の経時変化(周囲調査) (b)浄化排水時

30

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図4.8 満水状態における気温と絶対湿度の断面分布 d

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(9)

-15「日

(a)満水時, 基準温度: 30. 50C (b)浄化排水時, 基準温度: 29. 50C 図4.9 周囲調査における気温の水平分布(12:00---15:00の平均値)

8 10 12 14 16

(a)満水時

最低値 +平均値

・ 標準偏差

8 10 12

(b)浄化排水時

図4.10 全測定点の気温の平均値, 標準偏差, 最高値, 最低値の経時変化

- 66 -

(10)

両調査では気温の分布に影響をおよぼす天候状態が異なるので、 なんらかの方 法で基準を揃えて比較することが望ましい。 図4.1 1は毎正時における全測定 点の気温の標準偏差を水平面全天日射量に対してプロットした散布図により、 満 水状態と排水状態における気温分布の相違を比較したものである。 これによると、

気温の水平分布の標準偏差と日射量との間には相関があることが認められる。 日 射量が同一の場合、 満水状態の気温の標準偏差は、 排水状態のそれに比較して大 きく、 日射量が大きくなるほどその違いが大きい。 満水時には、 池表面温度が図 4.7 (a)に示すように、 日射量の大小にかかわらず気温と同程度に抑えられて いるのに対して、 周囲市街地のアスフアルト舗装面などは、 日射量が大きくなる と6 QOC近くまで上昇し11 }、 池と周囲市街地の表面温度の差は大きくなる。 一 方、 排水状態では図4.7 (b)に示すように、 日射量によって池表面温度も上昇 するので周囲市街地の表面温度との差は満水時に比較して小さくなる。 水の有無 による池と周囲市街地との表面温度の相違が、 気温の分布に大きく影響している。

1.51 I 0 1986年8月5日 相関係数:0.90

/ / / + 十/+/

。。 4

図4.11 の散布状況

- 67 -

(11)

2.5 広域調査における気温分布

この調査では、 池内部の測定点は基準点Rの1点のみであるが、 池の外周から 500m以上離れた測定点もある。 そこで池が周辺市街地に及ぼす熱的な効果の 範囲を明らかにするため、 各測定点と基準点Rとの気温差と、 Rからの距離の関 係について調べる。

図4.2(b)の同心円は、 基準点Rを中心として池の大部分を含む半径300 mから、 半径を100mずつ増大させて、 900mまで描いたものである。 半径 300mの円内には池外周の測定点4点が含まれる。 半径300--400mの範 囲に5点、 400--500mに3点、 500--600mに7点、 600--700 mに5点、 700--800mに5点、 800--900mに5点、 900m以上の 範囲に5点の測定点が含まれる。

半径300m以内、 400--500m、 600--700mおよび900m以上 の各測定点における気温の平均値とR点の気温との差の経時変化を、 満水状態と 排水状態とで比較して図4.12(a)および(b)に示す。 満水状態では、 1 0 : 00--15:00の間R点の気温に比較して池の外周では1 oc以上高温であり、

その気温差は400--500mの距離では20C程度となる。 さらにR点からの距 離が大きくなれば気温差も大きくなる傾向にあり、 900m以上厳れた測定点で は2.50C以上になっている。 しかし、 この気温差は15:00以降急激に減少 し、 18: 00では最大でも1 oC以下である。 一方、 排水状態では、 R点との気 温差は最大で1oC程度であり、 時間的な変化も小さい。 R点から300m以内の 池の外周の気温は、 R点のそれより低い場合も多い。

次に、 図4.12の場合と同様に、 半径100m毎の円環内に含まれる測定点 の気温の平均値とR点の気温との差を求める。 10:00、 12:00、 14:

00および17:00の各時刻における気温差とR点からの距厳との関係を、 満 水状態と排水状態とで比較し図4.13に示す。 満水状態の場合、 10:00、

12:00および14:00において、 R点からの距離400mまでは、 R点と の気温差は1 . 50C以下であるが、 R点から400m以上で気温差は1.50C以上 となる。 さらにR点から600--700mではR点との気温差が2. 0 --2. 50C 以上となっている。 17:00においては、 R点から400mまでは気温差は小 さく0.50C以下、 400m以上では気温差は大きくなって1oC以上となる。 そ れ以上の距離になっても、 気温差はあまり大きくならず1.5 oC程度に止まって いる。 一方、 排水状態の場合、 R点と他の測定点との気温差は満水状態のそれに

- 68 -

(12)

比較して小さい。 R点から400mまでの気温差は:t O. 50C程度で、 400-- 500m以上で0.50C以上の気温差になるが、 それ以上の距艇で気温差が大き

くなる傾向はみられない。

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14 16 18

10

時刻

16 時刻 (a)満水時

12 14

図4.12 R点からの距醗ごとの平均気温とR点の気温との差の経時変化 (b)浄化排水時

10:00

1.0

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基準点Rからの距離

14:00

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m

基準点Rからの距離

満水時 一一寸

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-一浄化排水時

900

m

-1.0

基準点Rからの距離 図4.13 各時刻における気温差とR点からの距店主との関係

- 69 -

(13)

このように昼間の日射量が大きい時、 満水時における池の中央部と他の測定点 との気温差は大きくなり “にじみ出し現象" によって3)池の外周300...400 mまでの気温を低下させる。 排水時におけるこの効果は池の外周100mまでの 範囲に止まる。 これは、 排水状態における池底の表面温度と池周囲の裸地や舗装 面の温度との差が満水時に比較して小さいためである。

池の影響が及ばない離れた場所の気温を基準とする池周囲の気温分布を、 満水 時の本実測結果および宮沢ら7 )、 高橋ら8 )の結果と比較して図4.14に示す。

水面の大きさや周囲の状況および測定時の状況に違いはあるが、 基準温度は30 OC前後である。 気温は水面からの距離とともに指数関数的に変化し、 気温差およ び影響距離は、 対象とする水面が大きいほど大となる。

口宮沢ら(1978年6月29日、 1 4: 30---- 17: 30の平均) 対象:仮想半径.. r=O. 18km . 基準温度 約27"C

勺,La川刑問符妖 -宮沢ら(1978年7月20日、 13: 00---- 16・00の平均) 対象:仮想半径* I'"=O.24km . 基準温度 約3 2"C

円4u 0高僑ら(1977年6月29日、 13:00----14: 00の平均) 対象:仮想、半径., r=4.7 km . 基準温度:約26"c

.筆者ら(1989年8月5日、 1 2:00----15:00の平均) 対象:侃想半径Vγ=0.32km・ 基準温度:約28.5

-4 0 500

池, 湖の外周からの距離 m

*図中の仮想、半径とは、対象とする水面を円形と仮定した場合の 水面のヰ土径を概算したものである

nu nu nu ---E

図4.14 基準温度に対する水面周囲の気温と水面からの距離の関係

- 70 -

(14)

3 . 緑被による日射遮蔽効果と気温への影響

緑被による夏季日中の気温上昇の緩和効果は、 主として緑被の葉層による日射 遮蔽および葉層での蒸散作用に起因すると指摘されている4. 12)。 そこで本節で は、 3種類の緑陰を対象に、 緑被の疎密が緑陰内の気温、 葉面と地表面の温度お よび日射 ・ 放射特性に及ぼす影響を実測により調べる。

3.1 実測調査の概要

3種類の緑陰を対象とした実測調査を以降実測1、 2および3と呼ぶことにす る。 これらは、 福岡市郊外に位置する多目的公園(春日公園)内で実施されてお り(図4.26参照)、 実測地点の詳細、 対象とした緑陰の状況、 樹種およびそ の平均的な形状を図4.15 (a)、 (b)および(c)に示す。 図中には、 各測定点 の地上高さ1.5 mに水平上向きに設置した正射影魚眼レンズによる樹木、 天空 などの形態係数を示している。 これらの値の中で緑陰の樹木(幹や枝および葉を 含む)の形態係数は実測1-実測3へと大きくなっており、 この相違は緑陰での 葉層の状況や日射遮蔽の程度を示すものと考えられる。 本節ではこの値を緑葉率 と定義する。 各実測では、 緑陰内の測定点とは別に、 比較のためにその周辺に1 ないし2の測定点を設定している。 同図(a)に示す実測1では、 緑陰と人工の日 射遮蔽物の下での比較実測を行っている。 なお、 本節における葉表面温度や緑陰 に関しては、 図4.16に示すような取扱いをして以後の記述を行う。

(a) 実測1

図4.15 各実測の測定点とその詳細

71

(15)

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(c) 実測3

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図4.15 各実測の測定点とその詳細

72

3 .(芝地)

(16)

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図4.16 葉表面温度および緑被状況の取扱い

各実測 における測定項目および使用した機器等を表4.1に示す。 測定期間中 すべての 項目を、 昼夜通して10分間隔で連続自動計測 を行っている。 温度測定 にはすべて裸線の 熱電対を使用して おり、 予備測定から測定精度はO.50C以内 であることを確認している。気温 と 表面温度以外の測定項目は、 すべて 地上高さ 1.5m で測定を行っている。 気温のみ 地上高さ約3mまでの数点において鉛直 分布の測定を行っている。 高さ約3mの気温測定点は、葉層内 に位置する。 各実 測の葉表面温度に関する測定は、 図4.15に示すような樹種の葉表面 に熱電対 を貼付して葉層内の数カ所の葉について 行っている。 実測1の葉は、 掌くらいの

大きさ で 薄く、 実測3で は薄い 小さな葉である。 一方、 実測 2の葉は実測1 と同 様に小さいが最も厚い。

表4.1測定項目と測定機器

測定名と測定日 測定項目 測定機器

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φ¢φφ c-c熱熱熱熱電霞電 電対対対

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100μm ø C-C 100μm ø C-C 8月7(1日実9~9測0年8月2) 8 日

気地葉グ温表表ロ面面風温プ( 表速湿度度温・度裏)温度

実月19測10 3 8( 9 0 年日)

※実測3で は、 日射 ・放射の測定は3a, 3 bの測定点でのみ測定している

向《U円ta

(17)

-

実測1--3は、 表4.1に示すように1990年8月7日---10日にかけて実 施している。 この閣の気象状況について、 福岡管区気象台における観測データを 図4.17に示す。 実測期間中は8月10日にやや変動がみられるものの日射量 の変化も少なく、 日中の日射量は最大3MJ/m2h前後に達している。 気温も 日中には300Cを越え、 実測中は概ね夏季の晴天日である。 実測日により多少風

向は異なるが、 日中には最大5-6m/s前後の風が吹いている。

風ベクトル

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-1 0

0 6 1218 0 6 1218 0 6 1218 0 6 121800

8月7日 8月8日 8月9日 8月1 0日 時刻 図4.17 実測期間中の気象状況

3.2 緑陰の日射 ・ 放射特性

緑陰の日射遮蔽の状況を示すために、 実測2および実測3の各測定点における 時刻ごとの水平面全天日射量の測定値の、 公園近くの気象観測塔(九州大学筑紫 地区内の建物屋上に設置) 13)での同時刻の観測データに対する比を求める。 求 めたこれらの値を各測定点で比較して表4,2に示す。 表中の値は測定期間中の 可照時における比をすべて平均したものである。 緑陰に入射する日射量は葉層の 高さによる葉の面積密度の相違や一日の太陽高度の変化に依存する14)が、 日中 の緑陰とその周囲における日射遮蔽の程度を比較するために、 可照時の平均を示 している。

- 74 -

(18)

-・

表4.2 気象観測塔の日射量に対する各測定点の日射量の比

実測2

測定点 比率 (緑2陰b) 2a 12. 2覧

(裸地) 96. 0出

(人工石舗装)2c 81. 5覧

実測3* 1 測定点

(緑3陰b) 3a (アスフアルト舗装)

比率

5. 9先 72. 1覧

キ1 3 cでは日射量の測定を行っていない

周囲の測定点と比較して明らかに緑陰内における比が小さく、 葉層による日射 遮蔽効果が大きいことを示している。 特に実測2の緑陰に比べ緑葉率が大き実測

3の緑陰では、 実測2における比の約半分と非常に小さくなり、 緑葉率が大きい ほど日射遮蔽効果が顕著となっている。 なお、 測定結果から緑陰における反射日 射量の入射日射量に対する比率は 20%前後であり、 周囲の測定点ではその値が 40---50%と反射成分も緑陰で小さくなっており、 これらの値は他の測定例と 類似する12)。

次に日射量と同様に、 隣接する気象観測塔において測定された各時刻の全放射 量(天空から水平面に入射する全波長放射量)を基準として、 これに対する各測

定点での全放射量の実測値の比を算出する。 実測2におけるぞれの経時変化を図 4.18に示す。 日中は緑被の日射遮蔽効果から、 緑陰の値は周囲測定点のそれ に比べ非常に小さい。 逆に夜間では基準値を上回り、 これは緑陰上部の葉層が地 表と大気との聞に一つの層を形成しているためであり、 群落的緑地の特徴と類似 する12)。

ゐR

時100 ぎ80 型60

mr;::

話40

0 6 12 18 0 6 12

8月88 8月9日 時刻

図4.18 気象観測塔の全放射量と各測定点の 全放射量の比の変化(実測2)

- 75 -

(19)

次に、 緑陰および周囲の測定点における地表面の放射収支量の経時変化を実測 図では、 測定点ヘ天空側より入射す 2および実測3について図4.19に示す。

る方向を正として示している。 実測2の緑陰では実測3の緑陰に比べ緑葉率が小 さいため日中に直達日射等の影響で入射する放射量がやや大きくなり、 一時的に

実測2の緑陰に比べ変動 周囲の測定点と同程度の値を示す。 実測3の緑陰では、

が少ない。 実測2や実測3における周囲の測定点では、 緑葉率が小さく他の遮蔽 は負の値となる。

夜間に収支 日中に入射する放射量が大きく、

物もないために、

夜間の収支量も小さく実測2の緑陰ではわず 両実測の緑陰においては、

しかし、

かに負の値を示すが実測3の緑陰では日中から夜間にかけて終日変化がなく収支 このように、 緑陰の放射環境が周囲に比べ大きく異なっ 量の値も非常に小さい。

ている。

2 c (人工石舗装) 3

2

z←ヒ\2 .嗣Mm 阿一一 英語

時実lj 1 8 1 2

8月8日 G 6

1 8 1 2

8月7日

唱EEA ハUV

6

実浪.u2 (a)

装 錦、卜

川 l-\\ ス ァ

b 3

2

三ヒ\2 .酬桝区一謀議

時実lj 1 8

1 2 8月1 0日 (b) 実測3

-1-ム ハハV

6

放射収支量の経時変化 - 76 -

図4.19

(20)

3.3 地表面および葉表面の温度

実測1"'"実測3における地表面温度の経時変化を周辺の測定点と比較して図4.

20に示す。 (a)図は実測1の8月10日の緑陰および人工物の場合を比較して 示している。 日中に日射が遮蔽される人工物の下の地表面温度は、 数本の樹木に よる緑陰よりわずかに低くなっているが、 終日両測定点の温度差は小さい。 実測 2の(b)図では、 日向の人工石舗装(2c)や裸地(2b)の表面温度は、 日中に緑 陰(2a)のそれに比べ1 50C以上高温となり、 裸地(2b)は終日緑陰よりも高く なっている。 緑陰(2a)では一日を通して表面温度は低く保たれ、 一日の較差は 5"'" 8 oCであり、 他の測定点ではそれが2 OOCにも及ぶ。 (c)図に示す実測3の 場合には、 気象状況の違いもあり、 日向のアスフアルト舗装(3b)や芝地(3c) での地表面温度は実測2の場合に比べ低い。 夜間に緑陰(3a)は、 芝地(3c) よりも高くなる。 しかし、 実測2の場合と同様に、 日中に他の測定点に比べ1 5

。C近く低い。 また、 緑陰(3a)の一日の地表面温度の変化は小さく、 その日較差 は数。C程度である。 このように緑葉率が大きな緑陰では地表面温度の日変化も小 さくなる傾向にある。 これは、 表4.2や図4. 19に示す測定結果から、 緑被に よる日射および大気放射の遮蔽効果により、 一日を通して地表面温度の変化が少 ないものと推察される。

次に、 葉層内で測定した葉表面温度とその近傍の葉層内気温の経時変化を実測

1"'"実測3について図4.21に示す。 図は緑陰のほぼ中央部における測定値を 示している。 (a)図の実測1の場合、 葉表面温度と葉層内気温を比較すると、 日 中に葉層内気温がやや高くなり両者の気温差は最大20Cになるが、 夜間にはほぼ 等しい。 葉が疎らで緑葉率も小さいために葉の揺れ具合などによって直射などの 影響が変化する葉表面の表と裏の温度は、 日中に1 oC程度の差がみられる。 (b) 図の実測2では日中に葉表面温度の急激な上昇がみられるが、 それ以外は葉表面 の表と裏の違いに関係なく、 葉表面温度と葉層内気温はほぼ等しい。 また、 (c) 図の実測3においては、 葉表面の表と裏およびその近傍気温はほとんど重なりそ れらの差はみられない。 このように、 葉層内の気温と葉表面温度は緑葉率が大き くなれば差はなくなり等しくなる。 これは葉面がその近傍空気と平衡を保つよう に熱の授受を調整するためであると説明されている12. 14)。

ワtヴI

(21)

40

〆1 a (緑陰)

制30

認25

20

。 6 1 2 1 8 。

8月1 0日 時刻

( a )実測l

50

à-) 4 0

差出

間30制 認

トJ ト�

2 a (緑陰)

20

。 6 1 2 1 8 。 6 1 2 1 8 。

8月7日 8月8日 時刻

( b

)実測2

50

à-) 40

I

(3b(アスファルト舗装)

性出 男ヨ 制30

主主

下二j

3

a (緑陰)

20

。 6 1 2 1 8 。

8月1 0日 時刻

( c

)実測3

図4.20 各測定点における地表面温度の経時変化

- 78 -

(22)

.i

i ;

_.

; 附

一一一 葉層内気温 一一一 葉表面(裏側)

葉表面(表側) 40

35

ハ什un〈U

ハド.Mm

尽き25

時妥11 1 8

1 2 8月10日 ( a )実測l 6

20 0

一一一 葉層内気温 一一一 葉表面(裏側)

ー 葉表面(表側) 40

3 5

� 3 0 悩 甥25

20

0 0

時刻 1 8 6 1 2

。 1 8 1 2

6

8月8日 ( b )実測2

8月7日

一一 葉層内気温 一一一葉表面(裏側)

一葉表面(表側) 40

35

ハハU

ηJ υ。

,wm

場25

20

0 0

時実IJ 1 8

8月10日 ( c )実測3

葉表面温度と葉層気温の経時変化 1 2

6

図4.21

- 79 -

(23)

3.4 緑陰内外の気温と緑陰における気温の鉛直分布

実測2における緑陰と日向における地表面温度および地上高さO.5mと1.5 mの気温の経時変化を比較して図4.22に示す。 図は実測2における8月8日 の測定結果を4時間おきに示したものである。 緑陰および日向における地表面温 度の相違によらず、 図中の各時刻の地上O.5mと1.5mの各測定点における気 温差はほとんどみられない。 また、 実測結果から日中の緑陰と日向での気温差は 一時的に1 --- 2 oc程度に及ぶが、 両者の気温はほぼ等しく、 緑陰での気温が日向 に比べ低くなっておらず、 緑陰での気温の低下はみられない。 なお、 実測3の結 果もほぼ同様な傾向を示し、 緑陰とその周辺の測定点において緑葉率の相違によ る気温差はほとんどみられない。

実測3の緑陰での地表面温度、 地上高さ0.1m、 O.3m、 1.0 m、 2.0m および3.0mにおける気温の経時変化を図4.23に示す。 高さ2---3mの気温 の測定点は葉層内の気温を示している。 図4.22と同様に4時間おきに示して いる。 地表面温度は図4.20(c)に示すように一日の変化が小さいが、 各時刻

30 40 20 30 40 20 30 40 20 30 40 50

�i臼m 度, ℃ ィ品 度, 。C

16:00

2 a (緑陰)

A

2 b (側)

+

2 c (人工石舗装)

。20 30 40 50 20 30 40 20 30 40 温 度 OC

図4.22 各測定点における鉛直温度分布の経時変化(実測2)

1.5 。:00

g

れj

�o� 0.5

ハハUn/U nU

1.5

「町unu

杓 悼

- 80 -

8:00 12:00

(24)

3.0

2.0 E

状j

1日E 1.0

口:8/10 0:00 o : 4: 00

ム: 8 : 00

+: 12:00

X : 16:00 0: 20:00 マ:8/11 0:00

30 35

温 度, OC

図4.23 緑陰における鉛直温度分布の経時変化(実測3}

における各高さの気温に比べ日中は低く、 夜間はそれらとの温度差は日中に比べ 小さくなり、 各高さの気温に近くなる。

実測1の8月10日における人工物の下と緑陰の気温および各表面温度の最高 値と最低値を比較して図4.24に示す。 図中の葉表面温度は表と裏の測定値の 平均である。 (a)図の人工物の場合、 日射遮蔽物の下側表面でも最高値は400C 以上に達するが、 (b)図の葉層内の気温や葉表面温度は緑陰の気温とほぼ等しく 340C程度である。 しかし、 気温および地表面温度は人工物の下と緑陰とで概ね 等しい。 最低温度に関しては人工物の下と緑陰とでほぼ等しい。 このように実測 1の葉が疎らな緑陰の気温と、 その上部の葉層内の気温および薬の表面温度はほ ぼ等しい。 一方、 人工物の下の気温は緑陰のそれと等しくなるが、 人工物表面が 著しく高温となる。

図4.24と同様に、 実測2の8月8日における地表面温度と各高さの気温の 最高値および最低値、 実測3の8月10日におけるそれらを比較して図4.25 に示す。 最高値を示す日中には、 地表面温度が最も低く、 葉層内で最も高くなる 傾向がみられる。 また、 最低値を示す早朝では、 日中とは逆の傾向がみられる。

緑被の密度が小さな 実測1においては、 日中の最高温度および早朝の最低温度と もに地表面が最も高くなっている(図4.24参照)。 これらの違いは、 緑被の 密度の相違から日中の日射遮蔽による地表面温度への影響が異なるためと考えら

- 81 -

(25)

れる。 実測2や実測3で対象とした緑陰における図4.25の鉛直温度分布や図 4.21に示した葉層内気温と葉表面温度の特徴は、 森林や植物群落などのそれ と類似している12・14)。 また、 緑陰での明確な気温の低下はみとめられず、 測定 点が近接することもあり緑陰の気温は周囲の測定点とほぼ等しくなっている。

3

E 2

択J

�a� 1

0

0

\ \

;0

-0一 最高温B -0一一最飯晶彦 .葉表面(最高温度) ム葉表面(最飾品度)

0 4ト

O Q

\

\

O Ili-- o \\

20 40

度,OC ( a)人工物の場合

50 20 jO

温 度.OC ( b )緑陰の場合 図4.24 表面温度と気温の日最高値と最低値の分布(実測1}

8月8日 8月10日

3ト O.

:ヨ:

�i' 0 3r:'♀

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r � J '".,.. -0一

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2 。

最高温度

a ー-0--

b

杭) I

。 。 。

最低温度

�a�

1ト 。

。 / o

0

0

1

20 - 30 - 20 - 30

温 度,OC ( a)実測2の緑陰 ( b )実測3の緑陰

図4.25 表面温度と気温の日最高値と最低値の分布(実測2,3}

- 82 -

(26)

4. 緑地内外の気温分布と緑の量との関係

前節では公圏内の緑陰とその近傍の日向における放射特性および温度の鉛直分 布の実測結果を比較した。 樹冠部の葉層による日射遮蔽の影響により放射特性や 地表面温度に関しては緑陰と日向の聞に大きな相違がみられたものの、 測定点が 近接していたこともあり、 緑陰での気温上昇緩和効果を示す顕著な気温差はみら れなかった。 本節では、 福岡市内の大小の公園、 神社などを対象として緑地内外 の気温の実測を行い、 その測定点周囲の緑の量との関係を調べる。

4.1 実測調査の概要

実測対象とする公園 ・ 神社などの配置を、 それらの面積、 緑被率などとともに 図4.26に示す。 2000m2弱の市街地の中の小公園から約270000m2 の動植物園を有する大きな公園にいたる大小8つの緑地で、 これらをSite 1 --VDI の記号をつけて同図に示している。 各Siteには、 その内外に4つの測定点を設定 し、 これらをそれぞれa、 b、 c、 dとする。

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覧 岡 田 l v - m o

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区 : 管岡 福

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面積: 300000 rn

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2 3

�圃園圃..

4 5 Km

九州大学 �.

白気象観漬Ilt若 図4.26 福岡市に分布する実測対象緑地の概要

-

83 -

(27)

8台のアスマン通風乾湿計を使用し、 それぞれ4つの測定点を移動して乾球温 度を測定する。 この間の測定時間は20分である。 測定日時は1988年8月5 日の7:00--18:00である。 当日の福岡管区気象台における観測データに よれば、 10:00頃明確な陸風から海風への変化がみられ、 以後16:00頃 まで海風が吹き、 その平均風速は11 : 00--1 4 : 00の間5m/sに達して いる。 16:00頃一時的に若干の降雨があったが、 一日を通してほぼ晴天であ る。

4.2 緑被率と緑葉率

各測定点周囲の緑被の状況を示すものとして、 緑被率および緑葉率を用いる。

緑葉率は前節で定義したもので、 各測定点の上半球に占める葉や幹などを含む樹 木の形態係数である。 測定点の葉層の状況を示すものとして薬面積密度や葉面積 指数などが用いられているが15)、 ここでは日射遮蔽の程度を示すものとして緑 葉率を用いる。 各Siteのa--dの測定点において、 前節同様に正射影魚眼レンズ により撮影した写真より緑葉率を算出する。

緑被率は、 測定点を含むある範囲内に占める緑被面積の割合として定義され、

一般的定義17)によれば、 樹木による緑葉18)のみでなく草地や芝地などの地被を

含む。 しかし本節では樹木による緑葉のみを緑被率として扱う。 測定点を含む矩 形のメッシュを対象に緑被率を算出する例6)もあるが、 ここでは各測定点を中心 に半径10m、 20m、 50mおよび100mの同心円を航空写真16)上に描き、

その面積に占める緑被面積の割合を算出して緑被率とする。

算出された緑被率および緑葉率を用いて各測定点におけるそれらの分布状況に ついて、 緑被率の算出半径20mの場合を図4.27 (a)に示す。 緑被率および 緑葉率の50%を基準にして測定点をA--Dの4つに分類する。 次にこれらA-­

Dに該当する測定点の実測時間中(7:00--18: 00)の気温の平均値を算 出する。 図中にはこの平均気温をA--Dごとに平均した値およびA--Dに該当す る測定点の数を示している。 同様に緑被率の算出半径を変えた場合を同図(b)-­

(d)に示している。 (a)-- (d)図における気温の平均値は緑被率、 緑葉率が大き なAで最も低く、 緑被率、 緑葉率が小さなDで高くなる傾向がみられる。 測定点 の分布状況に片寄りはあるが、 半径100mの場合を除けば、 緑被率の変化(A

<:>B、 C<:>D)に対する平均値の相違は緑葉率の変化(A<:>D、 BφC)に対す るそれよりも大きい傾向がみられる。

- 84 -

(28)

.,-

100 点数 ・・4知 nAU 〆b c o c

定 均 測 平 ハu nu QU QU

��æ�a

otd óSiteIV

測定点数: 8 I測定点数:14 平均値: 30. 6"C I平均値: 29.2"C 測定点数:8 I測定点数:2 平均値: 30. 7"C I平均値: 29.TC

(b)半径10m 測定点数: 9 I測定点数: 13 平均値: 30. 50CI平均値: 29.101 測定点数: 8 I浪U58点数:2 平均値:30. 6"C I平均値: 29.9"C

(c)半径50m 測定点数:14 I測定点数:8 平均値: 30.10CI平均値: 29.0"C 測定点数: 7 I測定点数:3 平均値: 30.7"C1平均値: 3O.10C

70

od ò{j

ぷ I .aj

時6

o

� 'U ・ d 固 ; 囚 型222ぉj L

: : : r �;� � -:-�- -�-[6ï-百一-F示

平均値: 30. 70C :

I v � � � e �!

30

20 .C

oa I 口SiteVl

S i te

V

測定点数: 3

I・Si teVll

平均値: 30. O"C 10

S i t e咽 .d

ロC

1 0

口d

o 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

緑被率. %

(a)半径20m (d)半径100m

図4.27 緑被率と緑葉率による測定点の分布状況と平均気温

4.3 緑被率と気温の関係

気温に対する影響は、 測定点上部の緑葉率の相違よりも周囲の緑被率の相違の 方が大きいものと考えられる。 そこで、 各測定点を中心とする半径10m、 20 m、 50mおよび100mの緑被率と8:00、 13: 00および18:00に おける気温との関係を図4.28に示す。 緑被率と気温とは負の相関関係を示す。

両者の相関係数の絶対値は8:00および13:00における半径10m--50 mで0.7--0.8前後となり、 100mにおいて小さくなる。 半径10m--50 mでは緑被率を計算する半径の相違による相関係数の変化は小さい。 また、 1 8 :00の半径10m--100mまでの相関係数の差はそれ以外の時間に比べ小さ くなる。 いずれの時間においても回帰直線の傾きは半径10m--50mまで距厳 とともに大きくなり、 半径50mで最も大きく、 100mで最も小さくなる。

特に、 13:00の半径100mにおける気温と緑被率の関係では、 緑被率の 10%の増加は平均的に気温の0.20Cの低下に対応し、 同様に8:00の半径 100mにおけるその値はO.1 50Cの低下に対応する。 本節同様に緑被率の算 出領域を100m程度とした東京都内での山田等5 )の実測結果によれば、 早朝に おける緑被率の10%の増加に対する気温の低下は約O.1 50C、 日中のそれは 約0.30Cであり、 この緑被率の増減に対する気温の変化の割合は本節での結果 と類似する。

- 85 -

(29)

30

Y=-0.016X+28.1 R=-0.69

++ +

r = 10 m +

30

+ Y=-O. 020X+28. 4 R=ーO. 75

+ r = 20 m

30

251 I I I 25

0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100

A叫.no nノ臼+・AせVA戸。λu・・円ノ臼nuvnuv一nHUnHH -++ +ド+

ヰ→ +

r=50 m

25 0 25

20 4 0 60 80 1 0 0 - -0 緑被率 %

30

r=IOOm

20 40 60 80 100 緑被率 %

(a)8: 00

34 Y=-0.021X+32.3 + R=-0.80

+

+

r = 10 m

34 Y=-O. 023X+32. 3 R =ーO. 76

+

+ 31

34 34

^^ . ^ ^_ 29

o 20 40 60 80 1 0 0 VO 20 4 0 60 80 1 0 0

r = 20 m

: i f

J

r;;

+32 4

1

33

L

+ Y=-

: 日%

1 9

+ +

31

2 緑4被率。% 1 9 2

;

皮率6% 80 1

(b)13:00

図4.28 緑被率と気温の関係(図中のrは半径を示す)

- 86 -

(30)

33

+

+ o m

20 33

+

+

20

33 Y=-0.018X+31.5 R=-0.72

+ +

---士~

+ +

40 60 80

ι1

100 2

:

20 40

33 Y=-0.034X+32.。

ー+ ム� + ー「

r=IOOm + +

40 60 80 100 20 40

60 80 1 00

T�+

60 80 100

緑被率 % 緑被率. %

(c)18:00

図4.28 緑被率と気温の関係(図中のrは半径を示す)

5 . むすび

本章では、 都市内の池や公園緑地の暑熱緩和効果と周囲への影響について、 数 種の実測調査により明らかにした。 その結果をまとめると以下のようになる。

( 1 )日中に池内部の気温はその周囲に比較して低温に保たれており、 池から厳れ るに従い高温となる。 その気温差は、 日射量が大きいほど大きくなる。

(2 )水面からの水蒸気は風によって運ばれ、 池の風上に比較して風下の絶対湿度 は大きくなる。

(3)池が周囲の気温上昇を緩和する程度と距離は、 池の排水時に比較して満水時 に大であり、 池の規模が大きいほど大である。

(4)小規模な緑陰における日中の表面温度は地表で最も低く、 葉層内で最も高く なり、 夜間にはこの傾向が逆になる。 また緑陰内の地表面における放射収支は、

終日小さな値に保たれ、 葉層が第二の地表面として機能している。

(5)緑被率が大きいところほど気温は低下する。 その程度は時刻および緑被率を 算出する面積によって異なる。

(6)周囲100m内の緑被率の10%の増加は早朝において約O. 1 50C、 日中 において約0.20Cの気温の低下に対応する。 この値は他の実測結果とも類似 する。

- 87 -

(31)

く〉参考文献

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7)宮沢哲男ほか:都市域の気温分布に与える小水体の影響, 水温の研究,

第23巻, 第6号, 1980.6. , pp. 32-38

8) Takahashi, H・, et al. : Local Climate near the Small Lake. (Part 2) Air Temperature Distributions near the Lake Toya, Hokkaido, in Spring and Summer, J. Agr. Met., 36 (1), 1980.1., pp.13-18

9)小林哲夫:中海北西沿岸、 本庄地域の気温について, 農業気象, 33 (2) , 1977.2. , pp.61-66

10)吉野正敏:都市気候における水面の効果, 建築雑誌, Vol. 98, No.1208,

1983.6. , pp. 42-45

11 )片山忠久ほか:水面を有する市街地の熱環境に関する調査研究, 日本建築学会 計画系論文報告集, 第372号, 1987.2. , pp.21-29

12 )オーク著、 斉藤直輔 ・新田尚共訳 . 境界層の気候, 朝倉書店, 1981.

13 )田中信之ほか:九州大学の昼光と日射の測定システムと測定機器, 日本建築学 会九州支部研究報告, 第32号, 1991. 3. , pp.33-36

14 )中野芳輔ほか:緑地面の温度環境形成機構とそのモデル化, 農業土木学会論文 集, 第115号, 1985., pp. I-7

15 )大政謙次ほか編:縞物の計測と診断, 朝倉書店, 1988.5., pp. 131-154 16 )福岡市圏飛行マップ, 西日本新聞社, 1986.

17)環境科学辞典, 東京化学同人, 1985.

18 )水田敏也ほか . ,航空機リモートセンシングデータを用いた都市のみどりに関す る環境情報の計量化(その2)樹木・ 芝地・ 草地の細分類, 日本建築学会学術 講演梗概集, 1991. 9., pp.1497-1498

- 88

(32)

第5章 街路に形成される熱環境の実態に関する調査

1 . はじめに

日本の主要な都市は、 その中心部が海岸近くに位置して内陸へ拡がっている。

また、 主要な交通幹線路は、 河川と同様に海岸線に直交して市街地中心部から内 陸へ延びる場合も多い1 }。 第3章では、 海岸に直交する河川上とそれに平行な街 路上において、 気温の比較測定を試みた。 市街地の風通しを考慮した場合、 街路 もまた河川同様に風の通り道としての機能を果たすことが考えられる。 建物や舗 装道路に囲まれた街路空聞が、 夏季の日中、 非常に暑く感じられることは日常体 験するところであるが、 海風による暑熱緩和効果も大きいことが期待される。 本 章では、 福岡市の中心部に位置する交差点周辺の街路上に形成される熱環境を実 測し、 気温分布や海風の暑熱緩和効果に関して考察する。

街路空間に形成される熱環境の研究例は数多いが2. 3. 4)、 それらは、 空間の単 純化とモデル化による解析が主であり、 実測に基づく研究は少ない5. 8)。 しかし、

都市の街路空間は幾何学的特性や構成する材料が多様であり、 これを単純化して 扱うことは問題である7 }。 実際の街路における測定では、 交通障害や測定機器の 設置の制約などを受けるけれども、 実態に関する基礎的なデータの積み重ねが重 要であると考える8)。

2 . 実測調査の概要

2.1 実測対象地域と測定点および基準点

福岡市の中心部に位置する呉服町の交差点付近を対象として、 1990年7月 3 1日,....,8月3日までの4日間にわたり各種熱環境要素の昼夜連続の測定を行う。

博多湾の海岸線に対してほぼ直角に延びる幅約50mの街路1と、 この通りに直 交する幅約25mの街路2の交差点付近は、 低層および中層のピルにより囲まれ ている。 交差点の周辺の状況と測定点の位置を図5.1に示す。 交差点の東角に 位置する8階建てピル屋上に基準点としてR点を、 地上には交差点付近の街路1 に沿う歩道上にA点、 街路2に沿う歩道上にB点およびC点をそれぞれ設置する。

測定点の状況をまとめて表5.1に示す。 各測定点における地上約1.5mの高さ の天空、 建物および道路などの形態係数を正射影魚眼レンズを用いて測定し、 水 平上向きと下向きの別にそれぞれ表5.2および表5.3に示す。 地上の測定点は

89 -

(33)

. ----

歩道上に設置しているため、 地表はコンクリート ・ タイルにより舗装されており、

歩道および街路1の中央分離帯に沿って街路樹も列植されている。

己 目 日 口一一ー; !;:\叫

川!日‘ 一

A

街路2

S :階数を示す

図5.1 測定点およびその周辺の状況

- 90 -

E 州111

(34)

測定点

A

地上 測定点 B C

屋上基準点 R

表5.2

表5.1 測定点の概要 測定点の概要

面幅が約に50mの街上路に 1に植面するし、 地9上階最沿も大う歩き 道く、 付位近置に え込みが る。建測あ定て建点物のの中北で 東天側空 壁率

街 幅面約に25mの街上路に2に面すし、樹沿がう列歩植 道路 されている。位置 る。天9空 階建率て建小物さの南付東が く、 側近 壁に 4側 階建て建道物上の位北路樹 西置側 す壁面に沿点って様おり、 B点率とは反 対く の近歩 に る 植。Bと同 に天 空 が 小さ

付 には街 が列 されている。

交差約を 点3角0にあ る 8 階建て空建率物は屋ほ 上に位0置0し、 地上高西さ 湾は mであがる。き天 ぼ100%で、 北 に

眺むこと で る。

水平上向きにみた測定点周囲面の形態係数

測定点 天空 建物 緑葉 その他

A O. 639 O. 344 O. 005 O. 0 12

B O. 354 O. 456 O. 189 O. 001

C O. 347 O. 390 O. 253 O. 010 R O. 953 O. 047 O. 000 O. 000

表5.3 水平下向きにみた測定点周囲面の形態係数

測定点 舗装面 建物 緑葉 その他

A O. 485 O. 019 O. 496 O. 005 B O. 965 O. 025 O. 000 O. 010 C O. 961 O. 025 O. 000 O. 014

R O. 976 O. 021 O. 003 O. 000

- 91 -

(35)

日中の交通量が多い。 図5.

市の中心部に位置するため、

この交差点周辺は、

2は、 実測期間中の8月1日に基準点R点から交差点付近をビデオカメラにより 撮影して、 各測定点に最も近い車線上の通過交通量を10分ごとに求めたもので 1 0分間 A点付近の交通量が最も多く、

バイク等のすべての車両を含む。

あり、

BおよびC点では約150-- また、

の通過車両は約250--300台に達する。

170台の通過車両がある。

ml副2!J0 f­

議100

18

Cし 12

FU ηυ

C 時刻 8月1日

交差点付近の通過交通量 図5.2

測定項目および測定方法 2.2

各面の表面 測定項目および測定に使用した機器を一覧として表5.4に示す。

1 0分間隔で自動計測を行い、 風向 ・風速につ 温度を除くすべての測定項目は、

R点の風向 ・風速は、 屋上 屋上面より4.8mの高さで測定しており、

いては測定時刻前10分間の平均値を収録している。

のパラペット等の影響を考慮して、

その他の項目は、 地上および屋上面より1.5mの高さで測定している。 また、

地表から0.1、0.3、0.5、1.0、1 .5、2.0および3.

地上の各測定点では、

Omの各高さにおいて気温の鉛直分布を測定している。

予備測定から測定精 温度測定にはすべて裸線の熱電対を使用しており、

度は0.50C以内であること確認している。

- 92 - なお、

(36)

表5.4 測定項目および測定に使用した機器

測定点 測定項目 測定機器

気グ温 ロープ 温度

屋上基準点 相風風水全対速向湿波度路平 (R)

街通

過面長表交放面通白射射温度量分布量量

地気グ温表ロ面温プ度 温度 温 100.umø C-C 電電

地上測定点 相対向湿度

(A,B,C) 放建射射物平壁面収風水反日・風射支面目量量度量速射温

2.3 実測期間中の気象状況

福岡管区気象台において、 実測期間中の7月31日-8月3日に観測された気 象データを図5.3に示す。 図中に示す日射量は水平面日射量であり、 以後これ を単に日射量と略記する。 この期間中は晴天が続き、 8月3日に多少薄曇りとな ったが、 ほぽ快晴であった。 また、 朝9:00頃から風向が海側に変わり、 以後 深夜まで海風 が卓越する。

建物屋上のR点において測定された気象データを図5.4に示す。 測定時間間 隔などの違いから、 多少の差はみられるものの、 日射量をはじめ、 気温 などの変 化傾向は、 気象台とほぼ同じである。 風向は、 気象台とほぼ同時刻に陸寄りから 海寄りへと変化し、 以後深夜まで海風 が卓越している。 比較的周囲が開けた気象 台に比べ、 R点は市街地 の中にあり、 周囲にピルが 建ち並ぶため、 風向のばらつ きが多い。 図中の大気放射量は基準点Rの水平面へ天空側より入射する 長波長放 射量を示している。 この値は、 表5.2に示すようにR点の天空率はほぼ1に近 いが、 わずかに 建物が存在することから厳密には遮蔽物のない水平面の大気放射 量とは異なる。 しかし、 図中では便宜的にこの値を大気放射量として示している。

なお、 次節以降この値を大気放射量として取り扱う。

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