「研究論文」
環境保全を意思決定要素に組み入れたビジネスゲームの開発
−離島における環境旅館経営ゲーム「ResortIsland」−
福田正弘(初等教育講座)
1.はじめに
本稿は、離島における中学校社会科教育実践を支援するために開発したビジネ スゲーム教材について、その内容及び試行実験の結果を報告するものである。
本教材の開発に至る背景としておおよそ次の3点が挙げられる。
(1)新たな経済教育ブーム
2005年の「経済教育サミット」で、当時の竹中平蔵・経済財政政策担当大臣が
「今年を日本の経済教育元年にしたい」と述べ、それ以降学校教育における金融 経済教育の普及のための取り組みが一層強化されるようになった0今期の学習指 導要領改訂においても、特に中学校社会科において法教育と並んで金融経済教育 が重視されている。こうした傾向の中で、教師の授業のねらいに応え、生徒の学 習ニーズにあった教材をどう開発していくのかが課題となっている0各種経済教 育支援団体や民間企業から様々な教材が開発され供給されてもいる(福臥2006)
が、それらと併せて使い勝手の良い良質な教材を作っていく必要がある0
(2)社会科におけるゲーミング手法の普及
良質な教材を開発していく際の重要な要素となるのが、学習内容の質の高さと 学習方法の適切性である。社会科の学習内容はコトバによる理解に留まりがちで
実体が伴わず、よく社会科は「暗記教科」と椰輸されてきた。社会科の学習内容 を実体のあるものにし、児童生徒が学習内容を社会生活において活用できるもの にするためには、社会科の学習内容を単なる名辞的知識ではない概念的知識に変 換するとともに、知識の習得過程を知識使用の文脈として構成する必要がある0 この点はこれまでも社会科教育学界で指摘されてきたところであるが、この課題 に応える一つの手法としてシミュレーション・ゲーム(ゲーミング・シミュレー ション)の有効性が提唱されている(福田、2003)。我々は、これまで幾つかのシ ミュレーション・ゲームの教材について実験的にその効果を検証してきた(福田、
2007)が、その研究成果を活かし教育ニーズに応える教材の開発に着手する必要 がある。
(3)離島の抱える教育課題への挑戦
離島における社会科授業実践上の課題の一つに小規模校故に他とのコミュニケ ーションが固定化し、また地域規模も小さいことから、競争を旨とする市場経済 を実体験として理解することが困難であることが挙げられる0 こうした環境下で
育 つ 子 ど も の 市 場 経 済 理 解 を 支 援 し て い く た め に は 、 今 日 の
I C T
環 境 を 利 用 し て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 機 会 を 拡 大 し 、 市 場 経 済 活 動 を 模 擬 体 験 で き る 学 習 環 境 を 構 成する必要がある(福田、 2008)0これら 3点 か ら 、 我 々 は イ ン タ ー ネ ッ ト を 介 し た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 型 の ビ ジ ネ ス ゲ ー ム の 開 発 に 着 手 し 、 そ の 試 行 版 を 完 成 さ せ たO
2.ゲームの基本コンセプト (1)使用システム
今回開発したゲームは、 YBGの ビ ジ ネ ス ゲ ー ム シ ス テ ム (http://ybg.ac.jp/) を 使 用 し た も の で あ るo YBGの ビ ジ ネ ス ゲ ー ム シ ス テ ム は 、 市 販 さ れ て い る 多 く の ビ ジ ネ ス ゲ ー ム と は 異 な り 、 複 数 の プ レ イ ヤ ー に よ る 共 時 的 対 決 ゲ ー ム で あ るD
す な わ ち 、 参 加 す る プ レ イ ヤ ー が 入 力 す る 様 々 な 変 数 の 値 に よ っ て 、 市 場 の 需 給 が そ の 都 度 決 定 さ れ 、 あ た か も 実 際 の 市 場 下 で 意 思 決 定 を し て い る よ う な リ ア リ テ ィ の 高 い ゲ ー ム で あ る 。 そ れ ゆ え 、 コ ン ビ ュ ー タ に あ ら か じ め 経 営 上 の 正 解 が 仕 組 ま れ て い る よ う な 融 通 性 の な い ゲ ー ム で は な い 。
ま た 、 こ の シ ス テ ム は 、 独 自 の プ ロ グ ラ ム 言 語 を 持 っ て お り 、 比 較 的 容 易 に ゲ ー ム を プ ロ グ ラ ミ ン グ す る こ と が で き るD 例 え ば 、 入 力 変 数 項 目 の 数 の 設 定 や 変 数 問 の 関 係 式 の 記 述 を 通 し て ゲ ー ム の レ ベ ル を 操 作 す る こ と が で き 、 教 育 目 的 や プ レ イ ヤ ー の 習 熟 度 に 応 じ て ゲ ー ム を 設 計 す る こ と が で き る よ う に な っ て い るO
(2) 対 象 学 年 及 び 学 習 内 容
本 ゲ ー ム の 対 象 学 年 は 中 学 校 2年 生 以 上 と し た 。 こ れ は 、 中 学 校 2年 生 以 上 は YBGシ ス テ ム の ゲ ー ム が 充 分 な レ ベ ル で 遂 行 可 能 で あ っ た ( 福 田 、 2006) のに対 し 、 中 学 校 1年 生 で は 満 足 な レ ベ ル で は 遂 行 で き な か っ た ( 福 岡 、 2008) という こ れ ま で の 我 々 の 実 験 授 業 か ら 導 か れ た 事 実 に 基 づ い て い るo
ま た 、 本 ゲ ー ム の 内 容 は 、 学 習 指 導 要 領 の 上 で は 、 中 学 校 3年 生 の 〔 公 民 的 分 野 〕 の 学 習 内 容 に 含 ま れ る 口 中 学 校 学 習 指 導 要 領 ( 平 成 10年 版 ) の 社 会 〔 公 民 的 分 野 〕 の 記 述 で 該 当 部 分 を 抽 出 し て み る と 次 の よ う に な る ( 下 線 部 は 筆 者 ) 。
目標
(2) 民 主 政 治 の 意 義 , 国 民 の 生 活 の 向 上 と 経 済 活 動 と の か か わ り 及 び 現 代 の 社 会 生 活 な ど に つ い て , 個 人 と 社 会 と の か か わ り を 中 心 に 理 解 を 深 め る と と も に , 社 会 の 諸 問 題 に 着 目 さ せ , 自 ら 考 え よ う と す る 態 度 を 育 て る 。
内 容
(2) 国 民 生 活 と 経 済 ア 私 た ち の 生 活 と 経 済
身 近 な 消 費 生 活 を 中 心 に 経 済 活 動 の 意 義 を 理 解 さ せ る と と も に , 価 格 の 働 き に 着 目 さ せ て 市 場 経 済 の 基 本 的 な 考 え 方 に つ い て 理 解 さ せ る 。 ま た , 現 代 の 生 産 の 仕 組 み の あ ら ま し ゃ 金 融 の 働 き に つ い て 理 解 さ せ る と と も に , 社 会 に お け る 企 業 の 役 割 と 社 会 的 責 任 に つ い て考えさせる。
内 容 の 取 り 扱 い
(3) 内 容 の(2)に つ い て は , 次 の と お り 取 り 扱 う も の と す る 。
ア ア に つ い て は 網 羅 的 で 高 度 な 取 扱 い に な ら な い よ う 特 に 配 慮 す る と と も に , 身 近 で 具 体 的 な 事 例 を 取 り 上 げ , 経 済 活 動 が 様 々 な 条 件 の 中 で の 選 択 を 通 じ て 行 わ れ る と い う 点 に 着 目 さ せ て , 市 場 経 済 の 基 本 的 な 考 え 方 を 理 解 さ せ る こ と 。
下 線 部 に 示 し た よ う に 平 成 10年 版 学 習 指 導 要 領 で は 、 「 経 済 活 動 」 を 「 個 人 と 社 会 の か か わ り Jを 中 心 に 理 解 さ せ る た め に 、 「 現 代 の 生 産 の 仕 組 み の あ ら ま しj
を 理 解 さ せ 、 「 社 会 に お け る 企 業 の 役 割 と 社 会 的 責 任 」 を 考 え さ せ る よ う に な っ て いる。その際、「身近な事例Jを 取 り 上 げ 、 「 経 済 活 動 が 様 々 な 条 件 の 中 で の 選 択 を 通 じ て 行 わ れ る と い う 点 に 着 目 さ せ 」 る 必 要 が あ る と 指 摘 さ れ て い る 。 す な わ ち 、 市 場 経 済 に お け る 具 体 的 な 選 択 的 状 況 の 中 で 、 企 業 が し 、 か に 社 会 的 責 任 を 果 た し て い く か を 理 解 さ せ る こ と が 求 め ら れ て い る の で あ る 。
(3) ゲ ー ム コ ン セ プ ト
こ れ ら よ り 、 本 ゲ ー ム の 到 達 目 標 ( 理 解 目 標 ) を 次 の よ う に 設 定 し たD
[本ゲームの到達目標(理解目標)]
O
企 業 は 、 経 営 要 素 の 最 適 な 組 み 合 わ せ を 選 択 す る こ と で 自 己 の 利 益 を 最 大 化 す る と 同 時 に 、 自 ら の 経 済 活 動 の 基 盤 を 提 供 す る 公 共 の 環 境 の 維 持 に 努 め る こ と が 必 要 で あ る こ と を 理 解 す るOO
企 業 が 利 益 を あ げ る に は 、 損 益 分 岐 点 以 上 の 販 売 量 ( 又 は 価 格 ) を 実 現 す る 必 要 が あ る こ と を 理 解 す るOO
環 境 維 持 の た め の 費 用 は 企 業 に と っ て は コ ス ト と な る が 、 社 会 全 体 で 不 足 す る と 環 境 が 維 持 で き な く な り 、 企 業 経 営 そ の も の が 存 立 し え な く な る こ と を 理 解 するDこ の 目 標 を 実 現 す る た め 、 ① 従 来 の 競 争 市 場 に お け る 経 営 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ・ ゲ ー ム の 手 法 を 踏 襲 す る 、 ② 経 営 と 環 境 を 対 立 的 に だ け で な く 相 補 的 に も 捉 え る 、
② 離 島 で の 場 面 設 定 を す る 、 の 3つ を 柱 に し て 、 離 島 と い う テ ー マ を 生 か す 形 で ゲ ー ム の 具 体 的 イ メ ー ジ を 作 り 上 げ たD そ の 結 果 、 地 域 の 環 境 保 全 を 考 え な が ら 競争市場で利益追求を図っていく旅館経営ゲームの構想、を得、
r
Resort IslandJと い う 名 称 で 開 発 す る こ と と し た 。 そ の 基 本 仕 様 は 以 下 の 通 り で あ る 。
‑ 競 争 市 場 に お け る 旅 館 の 集 客 競 争 を シ ミ ュ レ ー ト す るo
・ ゲ ー ム は ラ ウ ン ド 制 と し 、 ラ ウ シ ド 毎 に 需 要 分 配 等 が 計 算 さ れ る 。
・ 競 争 要 素 は 、 宿 泊 料 金 、 提 供 料 理 の 質 、 企 業 の 環 境 態 度 の 3点とする0
.意思決定変数は全て数量変数とする。
・ 各 旅 館 の 私 的 利 益 追 求 と 市 場 全 体 の 利 益 追 求 を 関 連 付 け る 。 つ ま り 、 前 者 の 結 果 が 後 者 に 影 響 を 与 え 、 後 に 後 者 が 前 者 の 前 提 条 件 と な る と い う フ ィ ー ド パ
ックの関係を設ける。
‑ そ の ー っ と し て 、 旅 館 の 意 思 決 定 に 依 存 し て 、 市 場 全 体 の 需 要 が ラ ウ ン ド 毎 に 変 動 す る よ う に す るO
3.ゲームモデル ( 1 )ビジネスモデル
i Resort IslandJの ビ ジ ネ ス モ デ ル は 図 1の 通 り で あ るD
唾台 + 1
R e s o r t I s l a n d Game のビ.ジネス構造
.
個別的意思決定 意思決定変数
心 価 格 競 争 力 叶 宿 泊 料 計 │ 品 質 詩 争 力 同 料 理 費 出 ← │ 環 境 貢 献 度 叶 環 境 費
│宿泊客数│
i
島で合計総環境需要 │ , . . . . ; '
骨・4・・・・・...・・・・・・・・... ・
次期総需要 社会的意型決定
図 1 Resort Island Gameのビジネスモデ、ル
本 ゲ ー ム で は 、 離 島 に お け る 旅 館 の 集 客 競 争 を メ イ ン ス ト ー リ ー と し 、 旅 館 は 宿 泊 料 、 料 理 費 、 環 境 費 に よ っ て 競 争 を 展 開 す るO 環 境 費 は 島 の 環 境 保 全 の た め に旅館が任意で出す寄付金である。本ゲームでは、競争力という内部変数を設け、
これら 3変 数 の 値 を 評 価 し 、 宿 泊 料 が 安 く 、 料 理 費 が 高 く 、 環 境 費 を 多 く 出 す 旅 館 に 泊 ま る と い う 客 の 行 動 傾 向 を 実 現 し て い るO
一 方 、 旅 館 の 環 境 費 は 島 全 体 で 合 計 さ れ 、 そ の 多 寡 ・ 満 足 度 が 評 価 さ れ 、 次 期 の 来 島 者 数 に 影 響 を 及 ぼ す よ う に な っ て い る 。 つ ま り 、 旅 館 が 経 費 を 抑 え る た め 環 境 費 を 少 な く し 、 島 全 体 で 必 要 な 環 境 費 が 満 た さ れ な い 場 合 、 環 境 が 悪 化 し た
と し て 客 が 島 に 来 な く な る と い う 設 定 で あ るO
こ の よ う に 、 本 ゲ ー ム で は 企 業 の 利 益 追 求 と い う 個 別 的 意 思 決 定 と 、 そ の 結 果 を 社 会 的 に 反 映 さ せ 市 場 全 体 へ の 影 響 に つ い て も 考 え る と い う 社 会 的 意 思 決 定 を ミックスさせた構造になっている。
( 2 )損益モデル
以 上 の ビ ジ ネ ス モ デ ル か ら 損 益 モ デ ル を 構 成 し ( 図 2)、 各 旅 館 の 損 益 を 計 算 す るo
Resort Island Game の 利 益 構 造
+
図 2 Resort Island Gameの 損 益 モ デ ル ( 3 )実行モデ、ル
上 記 の モ デ ル を プ ロ グ ラ ミ ン グ し 、 ゲ ー ム と し て 実 行 可 能 に す るo 図 3は プ レ イ ヤ ー の 入 力 画 面 、 図 4は 販 売 状 況 画 面 、 図 5は 損 益 計 算 書 画 面 で あ る 。 プ
レイヤーは図 3の 画 面 で 意 思 決 定 変 数 の 3つ の 値 を 入 力 し 、 そ の 結 果 を 図 4、図 5 お よ び 貸 借 対 照 表 に よ っ て 確 認 す る こ と が で き る 。
NewRes口rtIsland
セッション名:ctrl
宿泊料を入力してください。(5‑‑‑15千円) 料理曹を入力してください。 (2‑‑‑15千円) 環境費を入力してくださし¥0(10'"""‑'200口千円) 単位は全て千円です。注意して下さい。
宿 泊 料
F
科 理 費
F
環 境 費
回
I
J};:I¥ III)-~~ ~I
チ ー ム 名 :01
図 3 Resort Island Gameの 入 力 画 面
ラウン~ : 01
原 売 拭 況
語日1期:島に来たお客の鼓〈人):10日日
第01期:島の環境費合計〈千円):1890
お 客 さ ん の 島 全 体 の 理 墳 に 対 す る 評 価
: r
環 境 保 全 努 力 に 好 意 が 持τ
ます骨』Team:
01 02 日3 日4 05 06 07 08 09 10宿 泊 朝 15 12 15 12 9 15 9 12 12 12
母 境 費 500 100 150 100 100 500 100 120 10日
~~~I
宿 泊 客 数 96 112 96 1口1 54 117 118 106 101 10 売 上 高 1440 1344 1440 1212 486 1755 1日62 1272 1212 1212
直訂
図
4 Resort I s l a n d Game
の 販 売 状 況 画 面損益計算書
第01日、チーム:01
Round: 。 。
01竺5垂i:...t一 明EEt司F
。
1440売 上 原 価
。
576亮 土 器 利 益
。
864一 位 管 理 費 500 50口
環 境 費
。
50口宮 重 利 益
。
‑136累 積 宮 菜 利 益 日 ‑136
匡 訂
図
5 Resort I s l a n d Game
の 損 益 計 算 書4.ゲームの試行実験と評価
本 ゲ ー ム の 開 発 に お い て は 、 ダ ミ ー デ ー タ に よ る コ ン ビ ュ ー タ 上 の 試 行 実 験 を 繰 り 返 し 、 基 本 計 算 式 の 検 討 と パ ラ メ ー タ 値 の 調 整 を 行 っ た 。 そ の 後 、 実 際 の プ レ イ ヤ ー に よ る 試 行 実 験 を 2回 (2008年 1月 30日、 2月 14日)実施した 1回 目 の 試 行 実 験 で は 、 既 定 の パ ラ メ ー タ 値 と 内 部 に 組 み 込 ん だ 計 算 式 で は 、 変 数 聞 の 関 係 が プ レ イ ヤ ー に 見 え に く く 、 意 思 決 定 に 支 障 が 出 る こ と が 確 認 さ れ たO そ の た め 、 パ ラ メ ー タ と 計 算 式 の さ ら な る 調 整 を 施 し 、 2回 目 の 試 行 実 験 を 実 施 す る こ と と し たo 以下、 2回 目 の 試 行 実 験 の 結 果 に 基 づ い て 、 本 ゲ ー ム の 妥 当 性 を 検討したい。
( 1 )試行実験の結果
こ の 実 験 の 被 験 者 は 、 本 学 部 4年 生 で 筆 者 の 授 業 の 受 講 生 で あ るD 彼 ら は 、 授 業 に お い て YBGの ゲ ー ム ( ベ ー カ リ ー ゲ ー ム と レ ス ト ラ ン ゲ ー ム ) を 体 験 し て お
り 、 あ る 程 度 の 習 熟 度 は 持 っ て い る ( 写 真 l、2)0
写真 1 試 行 実 験 の 風 景 1
哩ず宮車h
写真 2 試 行 実 験 の 風 景 2
試 行 実 験 で の 参 加 チ ー ム 数 は 10、 実 施 ラ ウ ン ド 数 は 9で あ っ た 。 本 ゲ ー ム の 難 易 に 大 き く 影 響 す る 総 需 要 ( 宿 泊 客 数 ) (図 6) を 見 る と 、 ラ ウ ン ド 2 (R02) から ラウンド 6 (R06) に か け 増 減 し 、 そ の 後 漸 減 し て い るO これは、総環境費の動き に 連 動 し て お り 、 島 全 体 の 環 境 保 全 へ の 取 り 組 み を 反 映 し た も の で あ る 。
総環境費と総需要(宿泊客数) n u
n u
巧4
4・
・ ・
1150 r
1100
‑ <
1050 i1000 950 900
3500 3000 2500
2000 ‑‑‑‑‑‑‑‑=̲
S::: iCコ総需要 ト
ト ;ーφー総環境費;
1500 ← 一一
1000 500
。
~1 ~2 ~3 ~4 ~5 ~6 ~7 ~8 ~9
図 6 総 環 境 費 と 来 島 者 数 ( 総 需 要 )
各 チ ー ム の ゲ ー ム 成 績 は 図 7の 通 り で あ る 。 ラ ウ ン ド 6以降総需要が漸減し、
経 営 環 境 が 厳 し く な る 中 、 各 チ ー ム の 累 積 営 業 利 益 が 増 加 し て お り 、 ゲ ー ム へ の 習熟効果が見られる。
累積営業利益(千円)
1 5 0 0
1 0 0 0 5 0 0
o
刃4 0
+ + + 十 + + 一 一 +
ー
5 0 0
i
‑ 1 0 0 0
‑ 1 5 0 0
I図 6 各 チ ー ム の ゲ ー ム 成 績
( 2 )被験者の評価
本 試 行 実 験 は 、 開 発 ゲ ー ム の シ ス テ ム と し て の 妥 当 性 を テ ス ト す る も の で あ っ た の で 、 本 ゲ ー ム の 到 達 目 標 に つ い て の 特 別 な 評 価 は 実 施 し て い な い 。 そ の 代 わ
り に 、 本 ゲ ー ム の プ レ イ ヤ ー で あ っ た 学 生 に ゲ ー ム に つ い て の 事 後 評 価 を 自 由 記 述 し て も ら っ て い るD そ の 結 果 を 以 下 に 示 す 。 ( 冒 頭 の 数 字 は チ ー ム 番 号 。 )
1 環 境 費 に 比 較 的 高 い 数 値 で 投 資 し て き た が 、 宿 泊 客 の 増 加 に は つ な が ら な か っ た の が 残 念 だ っ た 。 こ の ゲ ー ム の ね ら い はL売 上 げ も 大 切 だ が 、 環 境 へ の 配 慮 、 も 大 切 だ と い う こ と だ と 思 っ た の で す が 。 環 境 へ の 総 投 資 費 用 も 考 慮 に 入 れ て 宿 泊 客 数 の 増 減 が あ る と 面 白 い と 思 う 。 そ の 期 そ の 期 の 宿 泊 料 、 料 理 費 、 環 境 費 だ け で な く 、 継 続 し て い る こ と へ の 評 価 が 客 数 に 反 映 さ れ る と い う プ ロ グ ラ ム は で き な い の で し ょ う か 。
2 最 初 の 頃 は 赤 字 が 続 い た の で 、 少 し ず つ 料 理 費 の 割 合 を 減 ら し て 黒 字 に 戻 し て い こ う と し た 。 後 半 回 復 し て い っ た が 、 最 後 に 環 境 費 を け ち っ た ら 、 客 数 が か な り 減 少 し た の で 、 環 境 費 に も 気 を 配 る 必 要 が あ っ た 。 宿 泊 料 が ど の 班 も 同 じ く ら い の 金 額 の と き に 、 料 理 費 を い く ら ぐ ら い に 設 定 し ょ う か 迷 う と こ ろ だ っ た 。
3 ‑ 1 全 て の チ ー ム が 環 境 費 に つ い て 考 慮 し な け れ ば 客 が 来 な い の で 、 チ ー ム 全 体 の 動 き を 見 な け れ ば い け な い と こ ろ が 難 し か っ た 。 環 境 費 と 料 理 費 が 庖 の 利 益 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か は っ き り 分 か る の に 時 間 が か か っ た 。 メ ッ セ ー ジ で 自 分 の 庖 の 状 態 が わ か る の は よかった。
3 ‑ 2 以 前 ゃ っ た レ ス ト ラ ン ゲ ー ム よ り 客 の 変 動 が あ る の で 面 白 い と 思 っ た 。 レ ス ト ラ ン の と き も 思 っ た が 、 他 の 人 の 入 力 数 値 に よ っ て 変 わ っ て く る の で 、 難 し か っ たo ぎりぎり の ラ イ ン を 見 定 め る の が 重 要 だ と 思 っ た 。 ね ら い と し て は 、 経 済 の 面 白 さ 、 そ し て 環 境 費 に よ っ て 客 の 総 数 が 変 わ る と い う 、 レ ス ト ラ ン ゲ ー ム と 違 う 点 を 学 習 す る こ と だ と 思 う 。 レ ス
ト ラ ン ゲ ー ム よ り は こ ち ら の 方 が 総 数 も 変 わ る の で 、 盛 り 上 が る の で は な い か と 思 う 。 4 環 境 費 を 安 く す る と 、 「 環 境 保 全 努 力 が 足 り な し リ と 出 て く る が 、 環 境 費 を あ ま り 高 く 設 定 し す ぎ る と 、 利 益 が あ ま り 出 な い 。 環 境 費 と 料 理 費 を ど の よ う に 設 定 す る か が 難 し か っ たo 他 チ ー ム が ど の よ う に 環 境 費 を 設 定 す る か な ど を 読 み 取 り な が ら 料 金 を 設 定 し て い く の が 楽 し か っ た 。 利 益 の 増 減 が 激 し く な っ て し ま い 学 習 能 力 が 足 り な か っ た よ う に 思 う 。
5 ‑ 1 こ の ゲ ー ム は 、 環 境 に 配 慮 し た 経 営 を 行 う こ と の 重 要 性 を 学 ぶ こ と が で き る 教 材 だと思うo環 境 費 を 全 体 の 平 均 を 下 回 る 額 で し か 出 さ な か っ た ら 客 が 減 っ た こ と か ら 分 か る 。 特 に 、 こ の 島 は 自 然 環 境 を 観 光 資 源 と し て い る の で 、 利 益 だ け に 頭 を 向 け る の で は な く 、 公 共 の も の に も 目 を 向 け た 事 業 の 必 要 性 を 理 解 で き る も の だ と 思 っ た 。
5 ‑ 2 こ の ゲ ー ム に お い て は 、 環 境 費 と い う 項 目 を 設 け る こ と で 、 利 益 だ け を 求 め る の で は 客 足 が 遠 ざ か る 。 す な わ ち 、 利 益 中 心 の 営 業 で は 成 り 立 た な い の だ と い う こ と に 気 づ か せ る ね ら い が あ る と 考 え ら れ る 。 環 境 費 は 他 の 旅 館 と の 比 較 が で き る た め 、 少 な す ぎ ず 多 す ぎ ず と い う こ と を 考 え る こ と が で き る 。
6 環 境 費 を ケ チ っ た と き の デ メ リ ッ ト を も っ と 深 刻 に す べ き で あ る 。 環 境 対 利 益 の ゲ ー ムになっていたと思う。
7 最 初 の 数 値 の 入 力 が 後 ま で 響 く な と 分 か っ た 。 良 い 流 れ が く れ ば , そ の ま ま 最 後 ま で 地 道 に 利 益 を 増 や す こ と が で き る と わ か っ たo 子 ど も 達 に 活 動 さ せ る と な る と 、 何 も 考 え ず 数 値 入 力 を す る こ と が あ る か も し れ な い の で 、 あ る 段 階 ま で は 数 値 の 入 力 範 囲 を 狭 め る こ と や 環 境 費 を 上 げ る こ と を 指 導 し て い か ね ば な ら な い な と 思 っ た 。 環 境 を 大 切 に し つ つ も 利 益 を 出 し て い か ね ば な ら な い と い う 現 在 の 企 業 の 状 況 を 表 し て い る と 思 っ た 。
8 レ ス ト ラ ン を 経 営 す る ゲ ー ム と 同 様 に 、 見 え て い な い 部 分 ( こ の ゲ ー ム で は 料 理 費 ) を し 、 か に 設 定 す る か が ポ イ ン ト で あ っ た 。 宿 泊 費 に お け る 料 理 費 の 割 合 を い か に バ ラ ン ス よ く 設 定 し 、 か つ 環 境 費 を 全 体 と の バ ラ ン ス を 考 え て 抑 え る か が こ の ゲ ー ム の ポ イ ン ト で あ る 。 こ の ゲ ー ム に 関 し て 大 切 な の は 、 「 料 理 費j で 「 個 の 利 益 」 を 一 番 に 考 え な が ら 、 「 環 境 費j
に お い て 「 全 体 の 利 益 」 も 考 え て い か ね ば な ら な い こ と で あ る と 考 え た 。
9 ど の 項 目 が ど の 項 目 と 関 連 し て い る か が 分 か り づ ら い と 感 じ た 。 環 境 対 策 が 個 々 で は な く 全 体 と し て 適 用 さ れ て い る よ う な の で 、 個 々 人 に す れ ば 結 果 も 変 わ っ て く る の で は な い かと思う。
10 環 境 対 策 費 が 島 全 体 と 個 々 の 旅 館 で そ れ ぞ れ ど の く ら い 影 響 が あ る の か よ く 分 か ら な か っ た 。 売 上 高 と 売 上 原 価 の バ ラ ン ス が と れ れ ば 順 調 に 利 益 を 上 げ る こ と が で き る よ う だ 。
こ れ ら の 記 述 か ら 、 被 験 者 は 本 ゲ ー ム の ね ら い を よ く 理 解 し て い る こ と が 分 か る 。 旅 館 経 営 は 利 益 追 求 の み で も 環 境 保 全 の み で も 駄 目 で 、 両 者 の バ ラ ン ス を 損 益 分 岐 点 の 範 囲 内 で 取 っ て い く こ と が 大 事 で あ る こ と が 理 解 さ れ て い る 。 ま た 、 環 境 費 が 宿 泊 客 数 の 決 定 に ど う 寄 与 し て い る の か が 分 か り に く か っ た 、 あ る い は 環 境 へ の 累 積 投 資 が 評 価 さ れ る よ う に し て 欲 し い な ど 、 ゲ ー ム の モ デ ル 自 体 に 対 す る 観 察 と 関 心 を 示 す 学 生 も お り 、 被 験 者 が ゲ ー ム を 客 観 的 に 捉 え て い る こ と が 分かる。
6.おわりに
以 上 、 離 島 に お け る 中 学 校 社 会 科 教 育 実 践 を 支 援 す る た め に 開 発 し た ビ ジ ネ ス ゲ ー ム 教 材 に つ い て 、 そ の 内 容 及 び 試 行 実 験 の 結 果 を 報 告 し て き た 。 被 験 者 の ゲ ー ム 成 績 と 評 価 を 見 る 限 り 、 本 ゲ ー ム の ね ら い は 充 分 に 達 成 さ れ て い る と 判 断 し で も よ い と 思 わ れ る 。 し か し な が ら 、 新 た な 課 題 も い く つ か 浮 上 し て き て い るD
第 1は 、 環 境 費 の 取 り 扱 い の 問 題 で あ るo 木 ゲ ー ム で は 、 環 境 費 は 2つ の 意 味 合 い で 扱 わ れ て い るD す な わ ち 、 個 々 の 旅 館 の 宿 泊 客 分 配 に 影 響 を 与 え る 経 営 変 数 と し て 扱 わ れ る 場 合 と 、 島 全 体 の 環 境 費 と し て 次 期 総 需 要 に 影 響 を 与 え る 社 会 変 数 と し て 扱 わ れ る 場 合 で あ る 口 特 に 後 者 が 分 か り づ ら い と い う 指 摘 が あ っ た 。 こ の 点 は 、 モ デ 、 ル や 内 部 関 数 の 検 討 を 含 め 、 再 考 す べ き 余 地 が あ る と 考 え る 。
第 2は 、 本 ゲ ー ム が ICT活 用 の ゲ ー ム 教 材 で あ る と い う 以 外 に 、 そ れ 自 体 と し て 離 島 の 教 育 課 題 に ど れ だ け 応 え る こ と が で き る か と い う 問 題 で あ るO ゲ ー ム の モ チ ー フ と し て 離 島 に お け る 環 境 を 資 源 と し た 観 光 を 取 り 上 げ て い る が 、 こ の 内 容 自 体 が 離 島 の 教 育 ニ ー ズ に ど こ ま で 応 え て い る か は 不 明 で あ るD
第 3は 、 被 験 者 が 大 学 生 で あ っ て 、 直 接 の 学 習 対 象 者 で あ る 中 学 生 で な い こ と で あ るO 今 後 、 中 学 校 で の 本 実 験 ・ 本 実 践 を 計 画 し 展 開 し て い く 必 要 が あ る 。
く 付 記 >
本 稿 は 、 財 団 法 人 科 学 技 術 融 合 振 興 財 団 平 成 17年 度 調 査 研 究 助 成 、 研 究 課 題 「 離 島 の 学 校 に お け る ビ ジ ネ ス ゲ ー ム の 有 効 性 と そ の 導 入 に 対 す る 意 向 の 調 査Jに よ る 研 究 成 果 の 一 部 で ある。
文 献
福 田 正 弘 (2003). iシ ミ ュ レ ー シ ョ ン ゲ ー ム に も と づ く 社 会 科 授 業 J, 社 会 認 識 教 育学会編, ~社会科教育のニューパースペクティブ~ ,明治図書, 236‑245.
福 田 正 弘(2005).iビ ジ ネ ス ゲ ー ム に よ る 数 理 的 社 会 認 識 の 育 成 ‑ 中 学 校 社 会 科 に おける『ベーカリーゲーム』の場合一j,
w
長 崎 大 学 教 育 学 部 紀 要 教 科 教 育 学J
No.45, 1‑13.
福 田 正 弘 (2006). iビ ジ ネ ス ゲ ー ム に よ る 数 理 的 社 会 認 識 の 育 成(2)‑中 学 校 経 済 未 学 習 生 徒 の ゲ ー ム パ フ ォ ー マ シ ス ーJ, ~長崎大学教育学部紀要教科教育学 J No.46, 17‑25.
福 田 正 弘 (2007).iゲ ー ム 作 り を 通 し て 学 ぶ 社 会 科 授 業 構 成J,~長崎大学教育学部 附属教育実践総合センター紀要~ No.6, 93‑102.
福 田 正 弘 (2008).i離 島 地 域 の 中 学 校 に お け る ビ ジ ネ ス ゲ ー ム の 導 入 に 関 す る 基 礎 的 研 究J,W 長崎大学教育学部紀要教科教育学~ No.48, 1‑9.
横 浜 国 立 大 学 ビ ジ ネ ス ゲ ー ム (2006). i横 浜 国 立 大 学 ビ ジ ネ ス ゲ ー ム Webサ イ トJ, http://ybg.ac.jp/.