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形容詞的過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

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Title

形容詞的過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

Author(s)

大野, 京子

Citation

英語学英米文学論集, Vol.33, pp.49-77

Issue Date

2007-03-20

Description

URL

http://hdl.handle.net/10935/988

Textversion

publisher

http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace

(2)

形容詞的過去分詞(Adjectival Past Participle)の 選択束縛1について

大野京子 Key words: Adjectival past participle, Qualia structure, selective binding, telic, troponym, 1.はじめに 形容詞的過去分詞(APP)は、動詞の過去分詞形の形容詞である。このAPP についてBresnan(1982)は、分詞一形容詞変換規則(Participle・Adjective Conversion)として、1)形態的には過去分詞が形容詞化され、2)語彙形式 上の操作は動詞的述部が「状態」を表す形容詞的述部になり、3)分詞の主 語は主題(theme)項である(述部内の主題項は述部によって示される動作や 状態変化を被る項)、と公式化した。たしかにAPPが前側形容詞として用い られる場合の名詞との結びつきは、その基体動詞の項である関係(受動形容 詞+基体動詞の目的語、あるいは、完了形容詞+基体動詞の主語)が典型的 である。しかし、この小論においてAPPと名詞との関係がその基体動詞の 項構造によっては説明できない用例も数多く存在することを示し、その場合 をも含めて説明できる仕組みを探っていく。 APPと名詞との関係は、3)で言われるようなAPPの主語が主題項にあた る語ばかりではない。名詞がAPPの基体動詞.の項ではなく、単なる付加語

(adjunct)である関係も多くみられる。例えば、 broken piecesのpiecθsは

breakの目的語(状態変化を被る主題項)であるとは考えにくい(c.f. A glass

has brokθn in to pieees.)。frigh tθn ed q uestionの場合もquestionはfrigh ten の目的語(主題項)ではない。また、aエi alleged killer(≠a killer that has been allegedり、 reported terrorists(≠terrorists that ha ve been reportθdiも、名 詞がAPPの基体動詞の目的語ではない。このような場合にはAPPと名詞と 1選択束縛(selective binding)1ま、選択制限(selectional restriction)とは異なる。選

択制限は、ある動詞が主語に有生のNPなどを要求するような述語の特性をいうが、選 択束縛は、ある形容詞が修飾する名詞の意味内容のうちのひとつのクオリアを選択する

(3)

の関係は項構造においてとらえることはできない。しかも、さまざまな種類 の名詞と結びつくことによってAPPは多義的となる。この小論において基 体動詞の項構造から説明できる規則的に形成されたAPPも、そうでないも のも、クオリア構造の選択束縛(selective binding)という特性によってその 結びつきを説明できることを論じる。 2.形容詞的過去分詞(APP)とは 形容詞的過去分詞とは、ある種の動詞が過去分詞の形で、形容詞になった もので、一般に形容詞的受身と呼ばれるが、自動詞の過去分詞からも形成さ れるので、形容詞的過去分詞(APP)と呼ぶことにする。これらは動詞から 派生した過去分詞形形容詞として基体動詞の意味や項を引き継ぐ。しかし他 の動詞由来の形容詞、・able(’ible)、・ive、・en t〈・ant)、・y、一〇ry、などの接尾 辞がつく語は基体動詞の項を引「き継がない。例えば、動詞apprθhend由来 の形容詞apprehendedとapprehensiveを比較してみよう。項を引き継いで いるかどうかの違いがあきらかである。apprθhθllded Nの場合はHe

apprehended danger in e very soun d. ) danger is apprehended ’)

apprehended dangerのように、 apprehθndの目的語(theme)に対応する語

がNとなり、「apprehendされた(懸念された)∼」という意味を表すことが

予測される。British National Corpus(BNC)ではapprehended breach、 apprehended infringemen t. apprehended eonsequence. apprehended

eo77isionなどの用例があった。これらの名詞は動詞apprehendの主題項で

ある。一方、apprehensiveはfa ee、100ks、 glanee、 beginner、 curiosity

などの名詞を修飾するが、これらの名詞はapprehendの主題項ではない。

anticipating with apprehension(心配や恐れをもって予想するような)とい

う意味を表し、apprehensゴveは動詞apprehen dの主題項にあたる名詞を修

飾するわけではなく、項を引き継いではいない。

APPは基体動詞の項を引き継ぐが、他の接尾辞の動詞由来形容詞は基体動 詞の項を引き継がないことをみてきたが、APPと名詞との関係にも.2種類 ある。つまり、名詞が基体動詞の項にあたるもの(a brokθn vase、 a frigh tened ehildなど)と、そうでないもの(broken pieees、 a frigh tθned quθstion、 an

alleged」ki71erなど)がある。項ではない名詞を修飾する場合については、語

彙的なAPPと名詞の結びつきとしてセクション5で詳しく見ていく。また、・ APPがどのような動詞から形成されるかについては、セクション3で見て

(4)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について いく。 2.1受動形容詞・完了形容詞は区別する必要はない 大石(2005)は、受動形容詞は項構造のレベルの派生、完了形容詞は語彙概 念構造のレベルの派生だと2種類に区別して論じたが、APPをそのように 区別する必要はないと思われる。英語では受動分詞は形が完了分詞と同一な ので、それを形容詞にすると、どちらが目的語志向でどちらが主語志向かを 考える必要がある。すなわち、broken win do wはth e wido ur is/was broken

として理解され、受身であると想定される。なぜならbroken windowは動

作主がbreakingを行ったことを暗示するからである。同様に、 a fallen leaf は受身ではないことが想定される。なぜなら、fallenは★someone!something has fallen a leafに対応する2項の語彙構造から派生されたはずはなくて、 それはa leafhas fallenに対応する1項の項構造から派生されていると想定 できるからである。しかし、動作主使役(agent・caused)かあるいは自然発生 (spontaneous)として知覚されうる行為を意味する動詞は、同時に受身ある

いは非受身として分析されるかもしれないAPPを形成する。それは次の例

から例証することができる。

(1) a. The boy broke the cloek.

b. the broken clock

c.tv the clock that was broken by the boy

d.Nthe clock that has broken

(2) a. Mother closed the door.

b. the closed door

c. ’v the door that was closed by Mother

d. ’v the door that has closed

(lb)、(2b)のどちらにおいても受動形容詞なのか、完了形容詞なのかを決定

することは可能ではない。それゆえ、仮定された項構造のどちらがそれに付

与されたはずかを決定することも可能ではない。

また、大石(2005,p.31)が述べているように、他動詞用法と非対格用法の

両方をもつ、wilt、fa deのような動詞のAPPの場合はwilted 170 wers、 wilted

le ttueeやfa ded c urta ins、 fa(ded gloryにおいて、完了の意味にも、受身の 意味にもとれるが、様態を表す副詞easilyと結びつくと英語の母国語話者は 他動詞由来の受動の意味にとるという。一方、副詞が伴わない場合は、非対

格動詞由来の完了の意味にとる学者が多い(Bresnan,1982;Levin& Rappaport,1986;伊藤・杉岡,2002)。このように、 APPの意味が受動か完

(5)

了かのどちらにもとれる場合には、判断は受け手にまかされている。APP め意味は受動か完了かにかかわらず、動詞の表す行為あるいは動作の結果状 態を表している。それゆえ、受動・完了形容詞の両方を含めて、結果分詞形 容詞(Resultative participial adjective)と呼ぶ研究者もいる(cf.

且aspelmath,1994)。 2.2否定の接頭辞un・がついたAPPについて (3);1詮:識藩ドt「ies 上記の例のように、helped、 madeのようなAPPは存在しないがunhelped、 unmadθのようなAPPは存在する。 un・は形容詞に付加される接頭辞として 形容詞テストの1つにも用いられてきたが、helped、 madeのような形容詞 的過去分詞ではない語にも付加されている。0:EDによれば、 un・V・θdがV・ed よりも以前に形成された語が相当数存在する。 (4) uncircumcised 1387 / circumcised 15612 unconstrained 1386 / constrained 1571 undecided 1540 1 decided 1790 undeserved 1374 / deserved 1552 undivided 1412 /divided 1565 unfed 1300/fed 1483 unij.ep.t, / .1 3. 4.Q Z k. ept .1678 unliinited 1445 1 limited 1551 unshared 1616 / shared 1923 uncared’for 1597 1 cared’for 1911 un’V・ edがAPPとしてV・edの確立する前に形成されているということは、 それらのun・V・edはV・θdというAPPにun’という接頭辞が付加されたので はないことを示している。このように、un・は形容詞的過去分詞ではない語 に付加された例があることがわかる。それゆえun・が付加されているからと いう理由で、そのV’edが形容詞的過去分詞であるとは断言できない。 un’V・edが存在してもAPPとしてのV−edは存在しな.いhelpedやmadeの ような語も存在する。 V・edに否定の接頭辞un・が付加されたのではない場合には、どのように

してun・V一 edというAPPが形成されたのであろうか。 Marchalld(1966)が

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形容詞過去分詞(Adjectiva1 Past Participle)の選択束縛について

指摘したように、have not been V・ edからhave been unV・edが形成された と考えられる。例えばullplayedの場合に、 The record has not been played 一>The record has been[not played】→The record has been[unplayed]の

ように変化しunplayθdが形成されたと考えられる。 playedはAPPである とは考えにくいので、否定のun’がAPPとしてのplayedに付加されたとは 考えにくいが、このnot playedがunρ1ayθdに、置き換わったと説明するな らば、unplayedは.APPとして存在する事実を説明できる。 unhelpθd、 unmadeもそのような置き換え派生の例であるとみなすことができる。ちな みに、Emonds(2000)はunavoidedというAPPは存在しないと述べていて、 BNCには用例・が見つからないが(avoided Nは1例ある)、 Google上で unavoidedの検索結果のうち英語のページに約354件あり、叙述用法で も、限定用法でもuna voidedの用例が見られた。 用例

1, The competitiQn is unavoided when the two business overlaps.

www.china’review.org/news/manage/image1422182007.doc

2. unavoidedclimate related damages ce would cost between $9 and $41 billions annually. How are these costs to be covered and managed? ... with the risk of residual impacts, and indeed with the cost of unavoidedimpacts. lndeed, ...

’ www.globeinternational.org/filesladaptation−final“draft.pdf Una voidθdの定

a. 1. Not avoided or shunned. ”Shak3.

2. Unavoidable; inevitable. [ObsJ ” B. Jonson.

”’Webster’s Revised Unabridged Dictionary

Cambridge Advaneed Learn er ’s Dictionaryにはuna voidab1θはあるが、 una voidedは載っていない。 una voidθdを見出し語として挙げている辞書は 上記のWebster’s Revised Unabridged Dictionaryのみであった。

一方、通常のun・接辞化の場合は次のようにとらえられてきた。

3 THE TRAGEDY OF KING RICHARD THE SECOND by William Shakespeare ROSS. We see the very wrack that we must suffer;

Andロ刀ヨγoゴdθゴis the danger now, For suffering so the causes of our wrack.

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Pre un’

Y

zへu,

abbreviate ’ed V・edの場合(Y)は、右側主要部の規則,により、主要部となる・edの素性が浸 透してV・ed全体の素性となっている。Preが利用できる情報は、隣接制約4に よると、1つとなりのSufの情報であり、原子条件5によってもYの主要部 のSufの情報である。それゆえ、接頭辞un・は接尾辞・edの素性を利用する ので、形容詞を形成する機能をもつ・edの素性がun・V’ed語全体に浸透して 形容詞を形成すると考えられる。次に、㌔nbreakが形成されない一方で unbrokenやunbreakableが形成されるのはなぜか。 unfoldという動詞の場 合は、否定の接頭辞tin・が付加されて、基体動詞の表す結果状態の部分を否 定し’「おりたたまれていない状態にする」意味を表す。un’が付加されて unfastenは「結ばれていない状態にする」という動詞を形成する。しかし、 *unbreakが形成されないのは、隣接制約があるため、否定的な要素と共起

しないという意味条件によると考えられる。しかしunbrokenや

unbreakableが適格な形容詞を形成するのは、 brokenの一en、 breakableの

一ableが形容詞接尾辞であり、それらの接尾辞の素性がun・接頭辞に利用さ

れ、un’の付加された語全体の素性となり、形容詞となるからである。

1器臨紬}le差。【un【[break】。n]]

3.結果分詞形容詞(Resultative participial adjective)としてのAPP

4隣接制約(Adjacency Constraint)というのは、 Siegel(1978)に述べられている「語構

造において大語彙範疇のまとまりを境にして、1つ隣りの性質だけが条件の適用される 範囲になる」という形態規則の局部性を具体的に表した制約である。

5原子条件(Atom Condition)とは、 Williams(1981a)が提案した、形態規則の局部性を

具体的に表した制約である。「Yに接辞Xを付加するときの制限はYに具現している素

(8)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について Haspelmath(1994・, p 159)は、受動形容詞も完了形容詞もどちらも ‘resultative participle(結果分詞)’で、前の事象からの結果状態を表現するこ とによってその主要部を特徴づけるとしている。Nedjalkov&Jaxontov (1988,p.6)はresultative construction(結果の構文)について通言語的な研 究を行い、resultativeを「前の事象を暗示する状態を表現する動詞形を示 すこと」と定義している。 APPも且aspelmathが主張するように、結果分詞のひとつとするなら、 APPの機能は前の事象からの結果状態を表さなくてはならないこととなり、 終点(endp oint)をもたない動詞は事象の結果状態をあらわせないことになる。 「前の事象を暗示する状態を表現する」という結果状態を表すためには、 APPの形成に関する意味条件として、その基体動詞は終点をもつ動詞でなけ ればならないという制限が生じることになる。 伊藤・杉岡(2002)は「基体動詞の事象構造・アスペクト特性で分詞形容詞 の可否をとらえることもできない(p.43)」と述べ、活動動詞からもAPPが 形成されると論じている。しかし、活動動詞からの例として挙げられている

語にはun・あるいはmuehが付加されている(e.g. umρ1ayed reeords, the

mueh discussed question)。これらの要素なしには通常APPが形成されな い(★played records,★the discussed question)ので、 pla.7やdiseussといっ た活動動詞、つまりatelicな動詞は単独ではAPPを形成しないことを示し ている。基体動詞のアスペクト特性がatelicな活動動詞の場合は終点をもた ず、過去分詞形になっても動作の結果状態を示さないのでAPPにはならな いと考えられる。このように、活動動詞がAPPを形成しないことが示すよ うに、基体動詞が終点をもっか否かというアスペクト特性とAPPの形成の 可否とは関係.があると思われる。この論点は基体動詞のアスペクト特性と APP形成の可否は無関係であると論じた伊藤・杉岡(2002)と大石(2005)とは 立場を異にする主張である。 3.1テリック(telic)な動詞とは 動詞の意味がアスペクト上の構造をもっているという考えはアリストテ レスのMetaphysicsにまでさかのぼる。アリストテレスは動詞の表す時間的 内部の構造に基づいてイベントの類型学を論じた。その後Vendler(1967)は 4つのアスペクト上の動詞クラスの類型学を体系化し、時間的持続,時間的 終了、時間的内部構造の有無に基づいて、状態(State)、活動(aCtiVity)、到 達(achievement)、達成(accomplishment)クラスを同定した。「状態」は内部

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構造と変化をもたず、1活動」は内部の変化と持続を伴う進行中のイベント である。「達成」は持続と時間的終点を伴うイベントで、「到達」は瞬間の終 点をもっており、持続はない。しかし、「到達」と「達成」の違いについて は意見が分かれていて、ある研究者たちはこの二つを統合し、本質的に同じ ものとして扱い6、別の研究者たちは文法的に異なるものとして別々に扱う。 テリックノアテリックもアスペクト上の概念で、時間的終点をもっている かどうかで定義される。テリックは、固有の時間の終点(inherent temporal endpoint)をもつ述部で、アテリックは活動のクラスの動詞句で固有の時間 の終点をもたない。両者を区別するために、inとforの副詞表現をテストと して用いることがある。inを伴う副詞表現は有界(bounded)の事象を表示す る文を修飾し、forを伴う副詞表現は非有界(non・bounded)の事象を表示する 文を修飾する。動詞の過去分詞形がAPPとなって結果状態を表すためには、 まず動詞自体が終点をもっていなければならない。その意味で、有界事象を 表すテリックな動詞でなければAPPを形成しないことが予測される。 3.2トロポニミー的.(troponymic)動詞とは 動詞がアスペクト上の終点をもっていて、結果状態を表せても動詞の意味 範囲が広すぎて事象としてとらえられないなら、APPにならない。 telicな 動詞であっても、トロポニミー的な動詞でなければ過去分詞形で結果状態を 表すことはできないことに論を進める。 Fellbaum&Miller(1990)は、動詞を分類することは名詞を分類すること ほど簡単ではなく、名詞を分解するようには分解できないと述べている。 Oak is a kind oftree, but tree is not part ofoak.のような名詞商の関係を

動詞間の関係に置き換えるなら,to nibble is to eat in a certain mannerの

ようになると主張する。彼らはこの動詞間の意味関係を、様態(mannerあ るいはfashion)を意味するギリシャ語のtroposからとって、トロポニミー (troponymy)と呼んだ。トロポニミーの関係は、ある動詞が別の動詞を「論 理的に含意している」と同時に、「二つの動詞によって示される活動が時間 において同一のスコープをもっている(temporally coextensive)」関係と規 定した。トロポニミーな関係にある動詞の・ nibbleとeatの例でいえば、 nibbleはeatの様態動詞(troponym)であるとした。 WordNet7においては 6Pustejovsky(1991b,1995)はprocess、 stateという2つの単純事象と、transitionと いう複合事象の3つに分類した。

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形容詞過去分詞’(Adjectival Past Participle)の選択束縛について marehはwヨ盈の様態動詞とし、様態動詞(tropollym)をmanner・nameと言 い換えている。他の例を挙げるならtraipseはwalkの、 lispはtalkの様態 動詞である。しかしsnoreはsleepの様態動詞ではないとされる。なぜなら snoreとsleepの関係はsnoreがsleepを論理的に含意しているが、 snore はsleepのなかに時間的に含まれていて、スコープが異なるからである。 テリックな動詞であっても、APPにならない場合は、その様態動詞 (troponym)がAPPになる可能性が大きい。例えば、★taken money / stolen

moneyの場合「とられたお金」では「お金がどのようにされたのか」があい まいで「盗まれたお金」のように、どのように「とられた」という様態を指

定しない限りお金(money)を形容することはできない6 #given fullds81 donated fundsの場合、「与えられた(given)」基金というだけでは、どのよ

うに与えられた基金なのかという「基金」の様態を特定できないため用いら

れない。 #cut meat l sliced meat、#told secret l disclosed secret、 #changed design l altered design、#killed man l murdered manなども同

様に、被修飾主要部ρ名詞の様態を具体的に指定している様態動詞の過去分 詞形が適格なAPPとなる。 4.規則的に形成されたAPP 4.1項構造表示レベル Pustejovsky(1995)は、語の意味は構成的であり、単なる意味特性のリス トではないと主張する。彼は、語の意味は項構造(動詞の項の数と種類)と イベント構造(語が関係している語彙アスペクトとイベントのタイプ)とク オリア構造(語の意味を説明する4つの面からの特性記述)という3つのレ ベルで表示できる、三次元的な豊かな構造をもつものと考えている。これら の表示から基本的な意味の材料が形成され、それから生成的な仕組みが働い て文脈にあう適切な語の解釈をうみだすと考えているのである。 まず項構造のレベルから考察する。:Bresnan(1982)は分詞一形容詞変換 規則(Participle−Adjective Collversio11)として、1)形態的には過去分詞が

George A. Miller. Nouns, verbs, adjectives and adverbs are grouped into sets of cognitive synonyms (synsets), each expressing a distinct conc,ept. Synsets are

interlinked by means of conceptual’semantic and lexical relations.

8#は中立的な文脈において使用されない例であるが文脈によっては使用可能な場合が

(11)

形容詞化され、2)語彙形式上の操作は動詞的述部が「状態」を表す形容詞 的述部になり、3)participleの主語はtheme項であるという条件(述部内 のtheme項は述部によって示されるmotionやchange in stateを被る項)、

と公式化した。このように、APPが修飾する名詞を動詞のtheme項と規定 していることにもなる.Levin&Rappaport(1986)は唯一補語一般化規則

(Sole Complement Generalization)において、「動詞に対し唯一のNP補語

になれる項はAPFによって外項化することができる」としてBresnanの規 則を少し修正した。:Bresnanの「theme項」という公式化を「theme項で なくても、唯一のNP補語になれる項であればよい」として定義しなおした のである。Zubizarreta(1987)は、1)動詞を形容詞に変換する、2)状態素 性を挿入する、という2つの規則を定め、内項の外項化と(もしあれば)元 の外項の挿入はこれら2つの規則からの副作用であると主張している。 Grimshaw(1990)とOshita(1994)に従って、それぞれの動詞クラスの項 構造を表にし、Oshita(1994)のAPP変換規則を考察してみる。 Grimshaw (1990,p。41)は次のような項構造表示を提示した。

Table 1 Grimshaw’s argument structure

Agentive transitive Ditransitive Unergative

(x(y)) (x(y(z))) (x)

Agent Theme Agent Goal Theme Agellt

Psych・Stative Psyc11・Causative Unaccusative

(x(y)) ((x(y))) ((x))

Exp Theme Exp Theme Theme

(X、y、 Zは特定の主題役割を表さず、ただ階層だけを示す。)

Oshita(1994)の項構造テンプレート:(P・1(P−2(P・3)))に従った項構造は次

のとおりである。(注:P・1項は外項を、P・2項は間接内項を、 P・3項は直接

内項を示す。Pというのは単にPositionを意味するPである。) Table 2 Oshita’s argument structure

Agentive transitive ix(0(y))) Ditransitive iX(y(Z))) Unergative ix(②(o))) Psych・Stative ix(②(y))) Psych・Causative iy(0(x))) Unaccusative iの(o(x)))

(12)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

Oshita(1994)もBresnan(1982)やLevin&Rappaport(1986)と同様に、

APPの形成は項構造によって説明できると考えた。 Oshita(1994)は外項の

削除と、theme項ではなく直接内項をR・bindすることを形成条件とし、一 律にすべての動詞クラスにあてはまる規則を考案したので、受動形容詞形成

(Adjectival Passive Formation)となっているが、形容詞的過去分詞形成規

則としたほうがよい。(R項とは、名詞の項構造における名詞の指示物を表 す項(reference argument)のことである。) Oshita(1994)を修正したAPP形成規則:Adjectival、Past Participle Formation (5)i.:P・3項を派生された形容詞のRにする(“R=argument”のように表示) ii.:P・1項を抑制する(“argument=②のように表示)

Table 3 Oshita’s APP Formation Rule Ageロtive transitive `dj:R=y(x=0(0(y))) Ditransitive `dj:R=z(x=0(y(z))) Unergative `dj=R=0(x=0(②(の))) Psych・Stative `dj:R=y(x=②(0(y))) Psych−Causative `dj:R=x(y=0(0(x))) Unaccusative `dj:R=x(e (/ (x))) 上記のAPP形成規則から二つの問題点が浮かび上がる。非能格動詞にはP・3 項が存在せず、非対格動詞にはP・1項が存在しないことである。非能格の場 合、Rが存在しないことになりAPPを形成しない。非対格の場合、もとも とP・1がないので抑制する必要がないがAPPを形成する。要するに、動詞 の項構造からAPP形成について説明できることは、動詞の直接内項がR項 となってAPPが形成されることである。直接内項をもたない非総量動詞は APPを形成できない一方で、基底構造からの直接内項がR項となってAPP が形成される非対格動詞の場合はAPPが形成されることになる。しかし、 この規則の限界は、後続の名詞がAPPの基体動詞の項にあたらない場合は 項構造表示レベルでの説明は用をなさないことである。 4.1.1項構造とAPPの多義 broken Nにおけるbrokenの意味をA且Dで調べると、共起する名詞によ

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って少なくとも10種類の語義が記述されており(Table 4参照)、 BNCを検 索すると7種類の多義が生じていることが観察される。(Table 5参照)

Table4 broken 十 noun (AHD)9 Forcibly Sundered by H:aving bee皿 Incomplete, Intermittellt.ly

separated illto divorce, violated. Being in a stopping and

two or more 「唐?垂≠窒≠狽撃盾氏C or state of ,唐狽≠窒狽撃獅〟G ・ .

oleces・ de8ertion of a disarray; discontinuOUS,

fractured parent or disordered Varying

parents abruptly, as in

pitch:

Spoken with

gap8 alldL errors

a ゐro丑θ辺 乱rη1, わ■0看θ刀 五〇皿θ5, ヨ 加。丑θ刀 aわrO汝θ刀5θ診Of 8 ゐ■・0左θ刀 oaゐ1θ

ゐro左θ〃81855 加。左θη 9

垂窒盾Pロ15θ わ00看5, ’■0②ρθ 響 「e■a刀51η1θ510η, 9

v囮∂rη∂8θ πθθfη8’ fエ1 乃10左θ12 50ゐ5, ゐ■・0看θraエ1汝5 わro」をθ刀」翌η81f5五

Topographically Subdued Crushed by Fillallcially Not rough;uneven totally; grief ruilled functioni119;

humbled: a out of order:

broken spirit.

Weakened and

infirm

ゐ■・0汝θ刀孟θ■7aゴ刀 a ゐro丑θ刀 必bげ o∫ a a 加α産θ刀 卵」fη’6, ゐro左θ刀 わτ0、産θ刀五θヨr彦, wヨ5五f〃8

ゐθ∂16五, 加ao加刀θ

Table5 broken十 noun (2311 hits) (BArC) i o

割れた・こ 骨折した 破棄された 打ちひし 不完全な 断続的 はしたの

われた がれた

glaSS leg(S) ・高≠窒獅≠№ heart(49) English line(S) pieces(12)

(135) (133) (s) (28) man(24) (24) (39) bits(8)

willdows arm(S) ,垂窒盾高撃唐? b・dy(18) veins(9) sleep meats(2)

r

(26) (67) (17) (3) time(3)

bottle(14) nose(47) engagement

9 The American Heritage Dictionary of the English Language, 4th Edition.

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形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について teeth(12) jaw(27) (11) ankle(18) home(S) 11eck(16) (35) bones(54) ribs(24) 1imbs(11)

abroken glass.一a glass that was brokenと一般に合意されているが、 a

brokθn 1θg.=aleg that has broken(Zubizarreta,1987, p.95)と完了の意 味にとる研究者もある。また、broken pieeθsの場合は基体動詞breakの項 構造から直接内項がR項どなって形成されたのではないと考えられる。* pieces are broken 一broken pieees

心理他動詞のfrigh tened Nにおいても、経験者項(Experiellcer)以外の名

詞を修飾している場合に多義性炉観察される。

Table6 frightened+N (221 tokens) (別》6う

. .

撃獅≠獅撃高≠狽 animate

human ani皿al

eyes(16) child(ren)(21) horse(s)(11)

face(7) boy(7) rabbit(6)

voice(4) manlmen(9) animal(4)

questi・n(3) people(4) sheep(3)

cry(3) girl(4) creature(3)

whimper(2) recluse(2) cat(3)

state(2) woman(2) mouse(2)

look(2) baby(2)

expressi・h(2)

例えば、frigh tened eyes、 frigh tenθd g uθstionのeyesやquθstionは心理 他動詞frigh tenの直接内項ではない。*eyes are frightened,★question is

frightened

さらに、上記の変換規則によれば適格なはずのAgentive Transitive動詞

クラス内でも「状態変化」ではなく、「創造(creation)」の意味をもつ、★baked cake、★built houseなどの例はMother baked a cake→a cake was baked by

(15)

よっては説明できない。 4.2共合成(Co・composition)

Mother baked a eake。 The arehitect built a house.とその受動態の文が

適格であるのに、1)なぜ*abaked cake、★a built houseが不適格なのか、 2)baked、 builtに「状態変化」読みのほかに、なぜ「創造」読みが生じる のか、については共合成プロセスによる意味合成によって説明できる。eake、

houseは動詞の示すbaking、 buildingという動作を受けることによって初 めて存在する事物である。一方APPのbaked、 builtはbaking、 building の結果生じた変化の状態を述べる形容詞である。cake、 housθがAPPの表 す変化を被らず結果状態を示さないので不適格となる。Pustejovskyの提案 はbakeの意味を状態変化読みだけを仮定し、 cakeがbakθ.とともに「創造」 読みを指定し、bakingによって姿を現す人工物としての定義を重ねる(共 合成する)ことによって、状態変化読みを「創造」読みに変えるというもの である。次のそれぞれの形容詞と名詞のクオリア統合を考察しよう。 Table 7ゐ盈θゴpota to baked (adj) 匡

ORMAL = baked (ei, x)

GENTIVE=baked−result (ei x, y)

potato

際黙黙z)

Table 8 #baked ea ke

#baked (adj)

[x

ORMAL = baked (ei, x)

GENTIVE=baked−result (ei, w, y)

cake (x)

CONST(w)={egg, fiour, ...}

FORMAL = food (x)

TELIC = eat (e2, z, x)

AGENTIVE=bake (ei, w, y)

形容詞としてのbakedはbakingの結果状態を表すが、 cakeはbakeするこ とによって初めて出来上がるものなので矛盾し、クオリア構造の表示上 bakedとcakeのAGENTIVE qualiaが余剰的となり、不適格となる。#a built

(16)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

Table 9 #劇画が孟五〇〃5θ

# built (adj)

隠耀離1鵡覧y)

house (x)

CONST(w)={rooms, roof, wall...}

FORMAL= building (x) TELIC=live (e2, z, X) AGENTIVE=build(ei, w, y) 4.3新しいAPP形成規則 APPは受動の意味であろうと、完了の意味であろうと、動詞の表す動作の 結果状態を示す形容詞を形成すればよいのだから、動詞を過去分詞形にして 形容詞の資格を与える規則として、動詞の種類を条件で規定すればよい。 (6) V今[VpartlA

Condition: telic and troponymic verbs

さらに、Haspelmath(1994, pp.159−161)は結果分詞(resultative participle)

の形成についての意味的な制限を論じている。あるものが参加した出来事か らの結果状態によって影響を受けていなければならない(=affectedli)という 制約である。 一般に他動詞の表す行為は普通、動作主ではなく、被動者に影響を与える ので、ほとんどの他動詞は被動者志向の結果分詞を形成し、動作主志向の語 は形成しない傾向がある。しかし動作主志向の能動的定位(active orientation)をもつ結果分詞も可能である。 Bresnanは他動詞動作主志向の 結果分詞が形成された例を英語から挙げている(2001,p.36 adapted)。

(7) a. a confessedi2 killer

b. a rec.anted Chomskyan c. (un)declared junior”s d. a practiced liar

iiAffectednessをTenny, C.(1992)はThe Aspectual lnterface Hypothesisにおいて 次のように定義した。

“An affected argument has been generally described as an argument which undergoes some change. ...An affected argument measures out the event by

virtue of its being a direct internal argument. (p.8)”

(17)

これらの例は動詞の表す行為の結果の影響を動作主が受けている例である。 このように、影響を受けるのが被動者である場合も、動作主である場合も

APPが形成される。 ’

4.4アテリックな動詞のテリック化

セクション2.2において、have not been V・edがhave been[not V・ed]→

have bee・1 unV・edとなり、unV・edというAPPになることがあると論じた が、それは「(これまで)∼したことのない」という意味をもち、「発話時点」

までという「事象の終点」を明確にできるからAPPになるのである。例え

ばan architect is a person who buildsなので、 builtはarchitectの意味と 余剰的でありta built a1・ehiteetは不適格だが、 an unbuilt architectは「今

まで一度も建てたことのないことのない」という終点が定められたAPPと なる。また、次の例はdownの追加によってchop the treeという動作が完

了したことを表している。げowηはそのchoppillg動作に終点や到達点(goal) を提供したとみなすこともできる。

(8) a. He chopped the tre.e.

b. He chopPed dorvn the tree.

(8b)のchop downはphrasal verbとみなされるが、このようなdownやup

が動詞に付加された形でのAPPも多数存在している。 Bresnan(2001,p.35) はatelic動詞は内在的に結果状態をもたないが、到達点(goa1)、ある種の制 限(1imit of some sort)を供給されると,結果状態が定義されAPPが形成さ れるために必要な意味基盤を得ることができると述べている。Bresnap

(1982,p.51)は次のようなV・P挿入の語彙規則を考えた。 (9) V’PIncorporation

劇職謝盤1ξ9「m霞9B霞事1卿

彼女は、動詞と前置詞が語彙化されてmarched though=crossed、 paid for=purchased. gone over = examined. looked on = regarded. spoken of=

mentioned、rummaged around in=searchedを意味するようになることと、 動詞と前置詞が一緒に受動化されないものは、前位用法の擬似受動態 pseudo・passiveにならないと述べている。これはおそらく動詞と前置詞が一

(18)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

緒に受動化されるほどの強い結びつきによって語彙化されると、まるで crossやexamineなど、前置詞がもともと挿入されている動詞のようなテリ

ックな動詞とみなされることを意味するからであろうと考えられる。同じ前 置詞句とはいっても、The miller lives over a river.のover a riverのような

動詞と無関係な付加語としての前置詞句はIlive over]として動詞と一緒に受 動化されることはなく、擬似受動態にならない。 ではなぜ、到達点やある種の制限などを供給する前置詞や副詞表現をとも なえば、ある種のアテリック(atelic)な動詞はテリック化されてAPPを形成 することができるのか。それは、テリック動詞が終点をもつ動詞であるよう に、前置詞や副詞表現が到達点(goa1)や制限(1imit)を動詞に供給して終点を 与えるからである。例えば★a run childは、 runがアテリック(atelic)な動詞

なので不適格であるが、awayの付加によってrun ’a way ehildは「家出した 子ども」という意味を表し、適格となる。

しかし、★1eft g・uθstはreeen t!yやawayなどを付加しても、*a recen t!y 1θfr guest、“lefr・a way guestのように不適格なのはなぜだろうか。 Bresnan (2001)は1ea veが不適格なのは、 reeen tlyを付加してもその述部が:ゴール (goal)や結果状態ではなく、動作の源(source of motion)にフォーカスしてい

ることを挙げている。私は1ea vθが不適格なのは、意味が広すぎて結果状態

が特定できないことも理由の一部であると考える。それゆえ、Ieaveの様態

動詞troponymであるdeρart(a deρarted guθst?は適格なAPPを形成する のである。100k forはatelicである一方、 findはtelicであるが、★found N

というAPPにはならない。しかしfoundの様態動詞troponymである

diseo veredはAPPになる。 5 語彙的なA:PPと被修飾主要語 名詞句がAPPの基体動詞に対して項ではなく、単なる付加語である関係 もある。基底の動詞述部のtheme項とは関係なくAPPが名詞を修飾する場

合である。例えば、a failed artistにおいて、失敗するならartistにはなっ

ていないという意味で、artistはfai1のtheme項であるとは考えられない。

また、an alleged kMer、 rep orted terroristsのような名詞がAPPの動詞の

theme項ではない場合もある(≠a killer that has beθn allegθd,≠tθrrorists

that ha ve been 1・ep orte di。このような、基体動詞に対し名詞が主題項でな

(19)

5.1クオリア構造 クオリア構造とは、ある対象物の必須の属性を4つのレベルから定義した もので、Pustejovsky(1991)によれば「それぞれのレベルが1つの単語の意 味に異なる貢献をする。この構成的(環境設定的)アプローチと素性に基づ いたアプローチとの重要な相違点は、語の意味を定義するこの帰納的な計算 法は、自然言語の確かな合成意味論の基礎とその知識表示モデルへの解釈を 提供するものでもあることである。」項構造が動詞の意味を特徴づけるよう に、クオリア構造はある語の分解的意味をとらえることによって名詞句など の意味を特徴づける。それはアリストテレスの形而上学にある説明モードと Moravcsik(1975)の論文に基づき、4つのクオリア役割から構成されている。 ◆Constitutive Role:ある対象物とその構成物質との関係。(材質,重量, 部分や構成要素など) ◆Formal Role:より大きな領域内で、その対象物を区別するもの。(形、 色、大小など) ◆Telic Role:その対象物の目的や機能。 ◆Agentive Role:ある物体がどのようにしてできたのか、その起源に関わ る要因。(自然物、人工の物、因果関係など) 5.2 選択束縛(Selective Binding) 選択束縛とは、Pustejovsky(1995)が提案したメカニズムで、標準的な解 釈規則が、要求されている意味選択の度合いにふさわしくないようにみえる 構文(特に形容月一名詞結合)において、別の意味転移の操作への入力を提 供することである(cf. Nunberg,1995)。 Pustejovsky(cf.1995b)はfastの 多義性を選択束縛という特性によって説明する。例えばfast carがなぜ「ス ピードの出る速い自動車」と「スピードを出した自動車」という2通り13の 解釈がうまれるのかを形容詞と名詞のクオリアを結び付けることによって (Pustejovskyはqualia unificationと呼んでいる)説明する。earのTELIC 役割とfa stのTELIC役割とが結びついて選択束縛され、その意味が活性化 されて、「速いスピードが出るための自動車」あるいは「速いスピードを出 した自動車」という解釈となる。名詞のFORMAL役割と形容詞の同じ

13Pustejovsky(1993, p.93)では‘Ambiguous between a car driven quickly and one inherently fast’と述べている。

(20)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

:FORMAL役割とが結びついて選択束縛され、その意味が活性化されて、二 通りの「速い自動車」という解釈となる。具体的に形容詞と名詞のクオリア

を統合して例示すると次めようになる。

Table 8 fast ear

fast (event predicate)

ORMAL = fast (ei, x

TELIC=fast−act(ei, x) AGENTIVE = fast−result(e2, x)

car

CONST = {body, engine, ...}

FORMAL11LF.y..e. hicle(x) (D’ T肌IC=drive(e1, y, x)② AGENTIVE=produce (e2, z, x) carのフォーマル役割とfastのフォーマル役割が結びつくと、「①速い乗り 物」という意味が活性化され、carのテリック役割とfastのテリック役割と が結びつくと「②速く運転するための自動車」という意味が活性化されるの が示されている。次にfast foodの場合と比較すると、もっとわかりやすい であろう。同じfastという形容詞から「①手早く調理された」という解釈が 出てくるのはfaodの「調理してできあがる」というAGENTIVE役割がfast のAGENTIVE役割と結びつくことによるのである。また同時に、「②手早 く済ませられる食事」という意味が活性化されることがあるのは、foodの「食 べるためのもの」というテリック役割がfastのテリック役割と結びつくこと による。

Table 9 fast food

fast (event predicate)

ORMAL = fast (ei, x)

ELIC=fast−act(ei, x) GENTIVE =fast−result(e2, x)

food

CONST ={nutrition, energy, ...}

FORMAL = nutritious substance (x)

TELIC =eat (ei, y, x)@

AGENTIVE=prepare & cook(e2, z, x)(1)

次に心理形容詞の場合を考えてみる。sa dの場合、 sa d gir1、 sa d eyes、 sa d

eventというように、形容詞と名詞の間にそれぞれ「

??垂?窒奄?獅モ奄獅〟A

manifesting、causingという3つのlinkがみられるとWarren(2003)は論じ たが、Qualia構造を用いるとそのような複数のlinkを生じる多義性が説明

(21)

できる。項構造から考えると、frightenedはfrightened NのNには :Experiencer項が入るはずであり、少めfrightθnθd chi7dはそのような一例

である。

Table 10 frigh tened ehild

frightened (intersective modifier)

ORMAL = frightened (ei, x)

GENTIVE= frightened−result (e2, x, y)

child

CONST={young, immature, irresponsible...} FORMAL= human (x) TELIC =grow(e, x) AGENTIVE=born(, e, x) このfrigh tenedはeventを修飾するのではなく、ehildという個体を修飾し

ているので、childのFoRMAL役割が形容詞のFORMAL役割を選択束縛

し「怯えているこども」という意味を活性化する。次にeventを修飾する frigh ten edの場合をみてみよう。

Table 11 frigh tened cry

frightened (event predicate) 匡

ORMAL = frightened (ei, x)

GENTIVE=frightened−result (e2, x, y)

cry

CONST = {shouting, feeling, tears...}

FORMAL= a loud sound (x),

TELIC = express−fright (e, x, y)

AGENTIVE=experience−fright (e, x, y)

この場合のfrightenedは、恐怖が原因で出た叫びなので、名詞のAGENTIVE 役割が形容詞のAG:ENTIVE役割を選択束縛し、その結びつきが活性化され て「恐怖の叫び声」という意味をもつ適格なA・N結合となる。

BNC examples:

CAB: Crawling out of bed, doubled over with the pain in his gut he hobbled over to the window and let out a frightened cry. He was in a graveyard.

HE: She looked up at him, her face so blotched and swollen that despite himself he put out a hand to comfort her, only for her to let out a

(22)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について

frightened cry, trying frantically to burrow into the sofa to avoid any contact with him.

HHI: Her frightened ery was smothered by yet another explosion that

shook the stones next to her

frigh temed questionの場合のqualia unificationも同様にquestio11の

AGENTIVE qualiaが形容詞のAGENTIVE qualiaを選択束縛し、「恐怖か ら出た質問」という意味が活性化されて適格な結合となる。

Table 12 西ゴ8五オθ11θゴquestゴ。辺14

frightened (event predicate) FORMAL = frightened (ei, x)

AGENTIVE=frightened−result (e2, x, y)

questton

CONST =communicate

FORMAL= ask(e, z, x)

TELIC =seek.for answer (e, z, x) AGENTIVE=make (e, y, x)

frigh tened cryの場合と同様に、 frigh tenedはeventを修飾し、恐怖が原因 の、恐怖を示す質問なので、AGENTIVE qualia.を選択束縛:する。frigh tened

の場合は恐怖をひき起こす原因15を名詞にとれないのは、frigh ten edは

frigh tenの結果状態しか表せないからである。

次にbrokenの例のなかで、通常とは異なる結合をするbrokθn pieeesの

qualia unifieationをみてみよう。形成された元の形はpieces are brokenで もpieces have brokenでもない。breakingという動作の結果によってpieces になった例である。 ・

14BNCでは次のような用例が見つかった。

ACL: Liberal Christians laugh at the frightened question of trad・itionalists: EVH: then a brother was born and when 1 saw him, my first frigh tened question

was: “Can he read?”

HHI: Will they come here do you think?’ The frightened question was out before she could stop it.

15恐怖をひき起こす原因、つまりCause(r)とかStimulusはfrigh teningによって修飾

(23)

Table 13 broken piece’

broken

[x

ORMAL=broken (ei, x)

GENTIVE=broken−result (e2, x, y)

pieces

騰灘欝爵ω

broken piecesのbrokenはevent predicateで、 piecesのAG:ENTIV:E役割 「壊れたことが原因でできた」がbrokenのAGENTIVE役割「壊れたため に」を選択束縛し「こわれて粉々になった破片」という適格な結びつきを活.

性化する。

次に★paid physician l paid escortやgrown man 1#grown treeのような

語用論的説明を要する事例にも選択束縛の特性は説得力があることを示し ていく。語用論的説明では16医者が診察に対して報酬をもらうことは常識的 知識だし、人が成長したら大人になることはどの文化においても共通の理解 であるが、escortに関しては、有償の仕事も無償のボランティアもあり、paid がescortを修飾することはescortを分類することとして意味がある。しか し、treeに関しては、どのような外見になれば成長した姿なのかについて共 通の理解はなくgrownかそうでないかによってtreeを分類することに意味 は感じられないとGoldberg(1996)と:Bresnan(2001)は述べている。この語 用論的説明によりPragmatic Informativenessという制約を提案している。 では、クオリア構造表示を用いて選択束縛の特性による説明ではどのように なるかを考察してみよう。 Table 14 #paゴd、ρ五ア3ゴ。ゴan *paid

融融編.

physician

隙謙三獺郷:ぬ

physicianという名詞の:FORMAL役割はプロの医者であるが、その

professionalとpaidのFORMAL役割とが余剰的となってしまう。「プロの

(24)

形容詞過去分詞(Adjectiva1 Past Participle)の選択束縛について

医者であること」と「有給の」は、意味が重複するので適格な結合とならな

い。

Table 15 paid escort paid

FORMAL = paid (el, x)

TELIC= paid−act (el, x)

AGENTIVE= paid−result (e2, x, y)

escort

FORMAL= human(x)

TELIC = aceompany. someone (e, x, y)

AGENTIVE=underspecified

一方、escortのT:ELIC役割は「誰かに付き添うこと」であり、TELIC役割

の「有給の」を選択束縛することによって「「有給の付添い人」という意味の ある結びつきを作り出す。次にgrown manと#a grown treeを比較する。 grown manはmanが「成長してmanになった」というAGENTIVE役割が grownの「成長したために」というAG:ENTIVE役割を選択し「成長した大 人、成長した男」という結びつきを形成できる。成長すれば人間の場合は大 人になるが、treeの場合には「高くなる、太くなる、実を実らせる」など、 樹木によって異なるので、AGENTIVE役割もTELIC役割も不完全指定とな る。動詞・growは終結点をもつtelicな「成長して∼になる」という意味よ り、むしろ終結点のないatelicな「育つ」17の意味と結びつくのでfully gro wn

treesやeon ta in er・gro wn treesやfield・gro wn trθθsのように副詞や場所な

どを付加して用いられる例が多い。 Table 16 gro w刀1ηヨ刀 grown

膿唾壷1:::1

ロユ 押

脚羅凱.

17atelicなgrowのAPPにgoa1の前置詞を付加したgrown・up manlwomanの使用頻度 は高い。BNOにおいて164回、一方のgrown man/womanは61回であった。

(25)

Table 17 #gro wn tree #grown

FORMAL = grown (el, x) TELIC= grown−act (el, x)

AGENTIVE=grown−result (e2, x) tree FORMAL= plant TELIC =underspecified AGENTIVE=underspecified #grown treeによって「成長した木」を意味するのが難しいのは、上記のよ うにtreeのAGENTIVE役割が不完全指定されているからであると考えられ る。不完全指定のところに副詞表現などで意味を補給すれ・ば、適格な結びつ きとなる。 5.3 Evidential APP 人は言葉を用いるとき、何かの証拠に基づいて自分が本当だと思うことを 話し、その証拠に言及する方法をもっているわけだが、あらゆる言語が文法

範疇としてのevidentialityをもっているわけではない。 Chafe and Nichols (1986)には、さまざまな言語のEvidentialityのパラメータが集められてい

る。例えば英語では、th ey say, l guess, I h ear thatなどもそうだし、alleged

and reportedlyも語彙的evidentialである。 Evidentialityとは言葉の背後 にある証拠のソースを述べることと理解してよいだろう。Epistemic

modalityの下位範疇ではなく、Evidentialは1つの独立した範疇とみな’し

て、他のmodal typeとは区別して考えるほうが適切である(Table 18参照)。

Table 18 Evidential and rnodal type adjectives

Evidential type the θ11θ8θ4 victims, an 3ββθr6θ♂ fact, a 5ロplρ05θ♂ 匿

モ盾獅魔?窒唐≠狽撃盾氏C

the p曜ρor6θ41eader of the group, theσozりbσ加rθ♂dynamics Modal type the poβ5fゐ1θeffect, the proわθ・う1θresult, the」ρπ’3‘ゴγθlead

dancer,

a、ρo‘θ刀距ヨ1customer, the,1泌θ・ケbenefits, an∂,ρPヨrθ濡

discrepancy

Evidentialの意味的な中核は情報のソースであるが、直接の証拠と間接の証

拠に分けられ、直接の証拠はさらに、’Visual’、’Auditory’、’Other sensory’

(26)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について ’lnferring’の二種類に分類され,さらに,’Reported’の証拠は’Hearsay’と ’Folklore’に、Inferringは曾Results’と’Reasoning’に分類される。’Results’ は観察できる証拠を含み、’Reasoning’は頭の中の推理だけを含む。 これら の分類は図にすると次のようになる。 Types of Evidence Direct Indirect ’ Attested Reported Inferring Visual Auditory Other sensory CF Hearsay olklore

Figure 1 Types of evidence

APPのなかには、語彙的Evidentialと思われる語が多く含まれるが、allege d,

reported, p urp ortθdのような形容詞は’lndirect’一 ’Reported’一 ’H:earsayt

の証拠に属し、SuspθetedやsUpposedは’lndirect’・’lnferring’の証拠に 属すると考えられる。 では、このような語彙的Evidentialのallegθdがどのように名詞と結びつ くのか、その選択束縛をみてみよう。APPが受動形であるので、情報のソー スを出さないで、陳述(の一部)を述べることができる。allegedと共起す るsentient、animateな名詞は頻度順にvictim(35)、offe ndet(7)、killer(7)、

members (6), leader (6), contemnor (6), thief (5), collaborators (5).

perpetrators(4)、 murderer(4)などであった。これらはみな、 TELIC役割

をもつ語ばかりで、Pustejovsky(1995, p.229)が呼ぶところの individual・level nominals(IL、N)である。 allegedは後続にsentientで

animateな名詞として、 TEHC役割型の名詞をとり、イベントを暗示する

(27)

れる。なぜであろうか。まず、動詞allegeは目的語やthat節などをとる他 動詞であり、a11θgedという形容詞を派生するが、後続の名詞との関係はほ とんどの場合「allegeされたN」のような単純な関係ではないことが観察さ れる。つまり、allegedはkillerという1つの名詞をまるごと修飾するので はなく、killerのなかのTELIC役割18であるki11を修飾し、「killするのが. 目的の人(殺し屋)」と言われている人のような意味となっている。このよ うな仕組みはQualia構造によって分析しqualia unificationによって複雑 な意味が生成されると説明することができる。幽 Table 19 ヨ刀ヨ11θ8・θゴ」killer alleged FORMAL= reported

TELICi9=default: say(A, true(B) &

pregupposed (B) & AFFECTEDNESS: negative] AGENTIVE=allegd−reuslt (C, true(B))

killer

降豊譜

比較のためにfrigh ten ed k171erのQualia構造を挙げておく。次のように frigh tθnedがkillerというindividualを修飾し、「怯えた殺人者」という単

純な意味だけをもつ。

Table 20 a frigh ten ed kiUer frightened (intersective modifier) [x

ORMAL = frightened (ei, x)

GENTIVE= frightened−result (e2, x, y)

killer

FORMAL = human (x)

TELIC = kill (e, x, w)

一方、susρectedはallegedとよく似た意味をもつが、suspeetedだけがheart

a・tta・ckなどの病名と結びつく。「誰かが疑った心臓発作」という単純な意味

で、’allegedとは異なり、heart a ttaek is suspeetθdから派生されたと考え

18ちなみに、Jackendoff(2002, p.370)はpedestrian、 passenger、 customerなど、そ

れぞれを区別する属性として、典型的な行動をTELIC役割によって表すべきとしたが、

典型的な行動、あるいは関わるイベントを属性としたのでは、stage・level nominals (SLN)とindividual・1evel llominals(ILN)との区別ができなくなり、不適当である。

19Bergler(1992)はallegedについては分析していないが、話法の動詞のQualia記述法

(28)

形容詞過去分詞(Adjectival Past Participle)の選択束縛について ることが可能である。名詞のFORMA:L役割と形容詞のFORMAL役割の選 択束縛となる。 Table 21 susρectedゐθヨ1tヨ‘彦ack suspected FORMAL= inferred

TELIC =default: (A, true(B) &

presupposed(A)&AFFECTEDNESS:

negative]

AGENTIVE=suspected−result (C, true (B))

heart attack (x)

CONST = sudden disease of heart muscle FORMAL=disease of heart TELIC =cause−death (e, x, y)

AGENTIVE=stop−woking (e, w: heart)

以上、APPを形成する動詞はテリック(telic)で様態動詞(troponym)であるこ とK項構造表示レベルでのAPP形成規則にあてはまらないAPPと名詞との 結びつきについてもPustejovsky(1995)のクオリア構造の選択束縛によって

説明できることを論証した。APPと名詞の結びつきにおいて名詞のクオリア がAPPの同じクオリアを選択束縛して適格な表現を活性化し、結果的に適

切な表現を形成するのである。例えばfrigh tened q uestionのfrigh tρnedは

questionのAGENTIVE役割「作った質問」がfrig:htenedのAGENTIVE

役割「恐怖のために」を選択束縛し「恐怖が原因でした質問」という適格な

結びつきを活性化する。an alleged killerのallegedは語彙的なevidential

であり、ki11θrのような名詞のTELIC役割「殺す人」がallegedのTELIC 役割「誰かがそう言ったが私は責任をもたないで言った」と結合して「殺人 者と言われている人」という複雑な構造を作り出すことが可能だからである。 また、APPには受動形容詞と完了形容詞があるという区別は不要で、どちら も基体動詞の表す動作・行為の結果状態をあらわし、現れる環境に基づいて 受身の意味になったり完了の意味になったりすること、動詞的受身、形容詞 的受身という区別や、受身構文か主語補語構文かという区別も不要であり、 これらもV・edの前後の環境によってその区別が生じるだけであることなど について論じた。

(29)

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Table 17 #gro wn tree #grown FORMAL = grown (el, x) TELIC= grown−act (el, x) AGENTIVE=grown−result (e2, x) tree FORMAL= plant TELIC =underspecified AGENTIVE=underspecified #grown treeによって「成長した木」を意味するのが難しいのは、上記のよ うにtreeのAGENTIVE役割が不完全指定されているからであると考えられ る。不完全

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