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数値解析と実験による低温流体用管フランジの * 数値解析と実験による低温流体用管フランジの熱 力学挙動の評価 * 熱 力学挙動の評価 ** 福岡俊道福岡俊道 Evaluation of Thermal and Mechanical Behaviors of Pipe Flange Connectio

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1. はじめに 管フランジは配管の接合部に使用される重要な機械 要素であり,内部流体のシールを目的とする.管フラ ンジは通常室温で組み立てられ,その後運転状態にな ると,内部流体から受ける熱負荷によって各部に熱膨 張差が生じてボルト軸力が変化する.その場合,ボル ト軸力の低下量が大きいと,2 枚の管フランジの界面 に挿入されているガスケットの面圧が大きく低下して, 内部流体が漏洩することがある.一方,ボルト軸力が 上昇して面圧が高くなると,ガスケットが破断する場 合がある.以上の点から,熱負荷に対する管フランジ 締結体の熱および力学挙動を明らかにすることは,配 管全体の安全性を保証するために極めて重要といえる. 高温の熱負荷を受けると,管フランジを締結している ボルトの軸力が低下することは,過去の研究によって 明らかにされている1),2),3).各部の熱膨張差以外に,軸 力低下を引き起こす主な要因は“ガスケットの剛性低 下”である.そこでシートガスケットを対象として, ガスケット温度が種々変化した場合に対応可能な圧縮 試験装置を開発して,面圧-ひずみ関係に対するガス ケット温度の影響を定量的に評価した研究が報告され ている 4).一方,低温熱負荷を受ける管フランジ締結 体を対象として,その挙動を実験あるいは解析により 評価した研究はほとんど見あたらない. そこで本研究では,低温流体用配管に使用される管 フランジの熱・力学挙動の解明を目的として,液体窒 素を使用した冷却実験により,管フランジが常温から 低温状態となり,その後常温に戻る過程における締め 付けボルトの温度と軸応力の時間変化を測定する.つ ぎに,さまざまな流動条件に対する挙動を数値解析に より評価できる手法の確立を目指して,上記の冷却実 験の過程を三次元有限要素法により解析する. 2. 熱負荷を受ける管フランジ締結体の ボルト軸力変化 配管に高温の流体が流れると,管フランジを締結す るボルトの軸力は,常温であった初期状態より低くな ることが多い.とくにシートガスケットを用いた場合, その傾向は顕著である.軸力が低下するメカニズムは 以下の通りである.図1(a)は,規定のボルト軸力で締 結された常温状態の管フランジ締結体を示している. 熱流体の温度・圧力が高いと,図のように接触面が段 付きとなった平面座のフランジが使用される.ガスケ ットの種類については,温度・圧力が比較的低い場合

数値解析と実験による低温流体用管フランジの熱・力学挙動の評価

* 福岡俊道** 八百悠介***

Evaluation of Thermal and Mechanical Behaviors of Pipe Flange Connections for Low Temperature Fluids by Numerical Analysis and Experiments

By Toshimichi FUKUOKA and Yusuke YAO

Sealing of contained fluids is the primary criteria required for pipe flange connections. Recently, there is a rapid rate of increase in the use of low temperature fluids, and leakage related accidents have been reported. Its leakage mechanism seems to be different from the case in pipe flange connections at elevated temperatures. In this paper, it is examined how the leakage of low temperature fluids occurs, in which a pipe flange connection is cooled by liquid nitrogen. The variations of bolt temperature and bolt force are continuously measured. Experimental results show that the bolt force is reduced to as low as about 65% of the initial value. Next, a numerical method based on three-dimensional FEM is proposed to simulate the cooling process. Numerical results are in good agreement with those from experiments. Applying the numerical method to the pipe flange connections for LNG, showed a bolt force reduction of 70% of the initial value. The numerical method proposed in this paper is expected to be applied to cases of different low temperature fluids under various flow conditions.

*原稿受付 平成 27年 4月 16 日.

**正会員 神戸大学(神戸市東灘区深江南町5-1-1). *** 神戸大学大学院海事科学研究科

熱・力学挙動の評価

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flange contact pressure distribution rotation (b) running condition due to change of gasket stiffness thermal load variation of bolt preload

gasket stiffnessdecrease of

(a) completion of assembly

1 高温熱負荷によるボルト軸力の低下 はシートガスケット,高くなるとうず巻き形ガスケッ トが使用されるケースが多い.アスベストの使用が全 面禁止となった後,シートガスケットとしては膨張黒 鉛や PTFE を主成分としたタイプが広く使用される ようになった.これらのシートガスケットは,フラン ジ本体に比べてはるかに剛性が低いために,図1(a)に 示したように,ガスケット面圧が半径方向に急激に上 昇するという特徴的な分布パターンを示す.ガスケッ トの低剛性とフランジ界面の段付き形状に起因して, ボルト締結時にフランジが大きく回転するように変形 する現象を“フランジローテーション”と呼ぶ. 配管に高温流体が流れると,締結部を構成する各部 材間に熱膨張差が発生し,ガスケットの剛性が低下す る.その結果,図1(b)に示したようにフランジローテ ーションがさらに顕著となり,ボルト軸力が大きく低 下することがある.一方,低温流体が流れる配管でも 漏洩が発生するという事例が報告されている.簡単な 形状の構造物に発生する熱応力について,高温熱負荷 と低温熱負荷を受ける場合を比較すると,応力の絶対 値が同じで符号が逆となる.一方,高温・低温のいず れの熱負荷を受けても締め付けボルトの軸力が低下す る現象は,管フランジ固有のものといえる.次節では, 低温流体が流れる配管を模して製作した実験装置を用 いて,低温熱負荷によるボルト軸力低下現象の基本的 なメカニズムを明らかにする. 3. 管フランジの冷却実験 3.1 実験装置の概要 LNG が流れ始めると配管の温度が低下し,やがて 定常状態となり,その後LNG の移送が完了すると室 温に戻る.以上の過程を実船で測定することは,セン サの設置方法や安全性の観点からかなり困難である. 32.5 58 70 87.5 19 8 R6 R2 flange 図2 実験用管フランジの寸法 bolt gasket cooled by LN2 computer data logger strain amplifier personal upper flange lower flange wood 図3 液体窒素を用いた冷却実験装置 strain gage to bridge box M16 thermocouple 90 10 2.5 strain gage 図4 ボルト試験片 そこで本研究では,比較的取り扱いやすい液体窒素 LN2を使用する.液体窒素の温度はマイナス196℃で あり,マイナス163℃の LNG よりもさらに低い.ま た,低温流体が流動する配管系を実験装置で再現する ことは難しいため,底付きの管フランジに液体窒素を 注ぐ実験により代用する.図2 は実験に使用した管フ ランジの寸法を示しており,JIS 規格の呼び圧力 20K, 呼び径 65 に合わせて製作している.管フランジは 8 組のM16 のボルト・ナットによって締結されており, 管フランジとボルトの材質はいずれも SUS304 であ る.図3 に実験装置の構成を示す.下側のフランジは 液体窒素を注ぐために蓋付きとなっている.2 枚のフ ランジの間には低温用のフッ素樹脂ガスケット(日本

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バルカー工業製,N0.7020)を挿入する.ガスケット の寸法は内径と外径がそれぞれ65mm と 116mm,厚 さは3mm である.ガスケットの圧縮特性については 4.1 節で説明する. 3.2 実験方法 実験に使用したボルトには,図4 に示すように熱電 対とひずみゲージを装着している.熱電対はJIS の K タイプ(クロメル-アルメル)である.ボルトの軸応 力は,軸部に2 本の低温用ひずみゲージを 180°離し て貼り付けて,3 線式 2 アクティブゲージ法により測 定する.ここで,ボルト軸応力に起因する真のひずみ は,測定したひずみから低温負荷よる自由収縮のひず みを差し引いた値となる.ボルト温度と自由収縮ひず みの関係は,ボルトを液体窒素中に浸漬した予備実験 から求めている.管フランジを締結する8 本のボルト のうち,4 本のボルトに低温用ひずみゲージと熱電対 を装着し,軸部温度と軸応力の時間変化を測定する. 残りの4 本のボルトには,管フランジの組立時に高い 精度で軸応力を与えるために,通常の常温用ひずみゲ ージを貼り付けている.ボルト軸応力は100MPa とす る.この軸応力に対するガスケット平均面圧は約 22MPa である.なお,8 本のボルトを逐次締め付ける と弾性相互作用により軸応力が変化するため5),すべ てのボルトの軸応力が 100MPa となるまで締め付け 作業を繰り返す. 液体窒素を管フランジに注ぐと沸騰して気化する. そこで管フランジの液面を一定に保つために,液体窒 素は継続的に注入する.実験開始から18000 秒後に注 入を止め,その後ボルト温度が室温になるまで軸部温 度と軸ひずみの計測を続ける. 3.3 実験結果および考察 図5 は,温度場がほぼ定常状態となったときの管フ ランジ締結体の外観を示している.フランジのまわり にかなりの量の霜が付着している.図6 はボルト軸部 温度と軸応力の測定結果である.縦軸は各時間におけ るボルト軸応力bを初期軸応力iで除した値とボルト 軸部温度,横軸は時間である.ここで,bとiの比を “軸応力残留率”と呼ぶこととする.実験は4 回実施 した.図中の4 種類のレジェンドは,熱電対と低温用 ひずみゲージを装着したNo.1からNo.4の各ボルトに おける4 回の実験の平均値である.冷却開始後十分時 間が経過すると,ボルト軸部温度はマイナス155℃程 度まで低下している.一方,ボルト軸応力は初期状態 の約65%まで低下している.この結果は管フランジの シール性能に対して無視できない値といえる.実際の 配管では,流動状態が異なるために軸応力残留率の値 も変化すると考えられるが,いずれにしても管フラン ジを締結するボルトの軸応力は,低温熱負荷を受けて 図5 冷却実験中の管フランジ締結体 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 -200 -150 -100 -50 0 50 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 Bol t Te m per at ur e Time (sec) (℃ ) bolt temperature bolt stress No.1 Bolt No.2 Bolt No.3 Bolt No.4 Boltb / i Bo lt St res s R et ain ed Ra te 図6 ボルト軸部温度と軸応力の時間変化 かなり低下することがわかる.液体窒素の注入を止め ると,軸部温度,軸応力ともしだいに初期状態に戻る. 十分時間が経過すると,軸部温度は室温に戻っている が,軸応力は初期状態の93%程度までしか回復してい ない.その原因は,ガスケット圧縮特性のヒステリシ ス現象によると考えられる. 実験値のばらつきについて,ボルト軸部温度は4 本 のボルト間でほとんど差がない.また図には示してい ないが,各ボルトについて4 回の実験の間でもほとん どばらつきは見られなかった.軸応力については,軸 部温度に比べてボルト間のばらつきは大きくなってい るが,実験誤差の範囲内に収まっていると判断できる. また各ボルトについて,4 回の実験間のばらつきは 2 ~3%以内であったことから,図 6 に示した実験結果 の再現性はかなり高いといえる.

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図7 管フランジ締結体の有限要素モデル 図8 変位場と温度場の境界条件 表1 解析モデルの材料定数と熱定数 Young's modulus (GPa) Poisson's ratio Coefficient of linear expansion (1/K) Thermal conductivity (W/mK) Specific heat (J/kgK) Density (kg/m3) SUS304 200 0.3 17.3×10-6 16 499 7920 gasket 0.45 45.2×10-6 25 1000 2330 4. 有限要素解析による管フランジの 熱・力学挙動の評価 4.1 解析モデルと境界条件 本節では,管フランジの冷却実験で測定したボルト 軸部温度と軸応力を有限要素解析により求める.図7 は解析に使用した有限要素モデルの全体図であり,蓋 の部分を除いて実験で使用した管フランジと寸法・形 状を合わせている.ねじ部はそろばん玉形状と仮定し てモデル化している.締結部形状の対称性を考慮する と1/16 モデルで解析可能であるが,モデリングの容易 さから全体の1/8 をモデル化した.図 8(a),(b)に境界条 件を示す.管フランジ,ボルト・ナットは線形弾性体 とし,ヤング率は200GPa,ポアソン比は 0.3 とする. 接触面の摩擦係数は0.15,雰囲気温度と管フランジの 初期温度は20℃とする.なお,本研究における解析で は管フランジに機械的外力は作用しないので,摩擦係 数の大きさの影響は無視できると考えられる.温度場 の境界条件として,管フランジの内表面はマイナス 196℃の液体窒素が流れる熱伝達境界,同じく外表面 Strain gradient b c d a loading curve unloading curve 図9 ガスケットの非線形特性の扱い方 も熱伝達境界とする.解析には汎用解析コード ABAQUS Ver.6.12 を使用した. 冷却実験において,液体窒素を管フランジ内に注入 すると沸騰して蒸発するため,表面熱伝達率を正確に 推定することは困難である.そこで,管フランジ内表 面は沸騰熱伝達あるいはそれに近い状態にあり,かな り高い値になると考えて表面熱伝達率を5000 W/m2K から15000 W/m2K の範囲で変化させ,実験結果と近 い値が得られる8000 W/m2K と仮定した.管フランジ の上下端面は断熱境界,その他の管フランジ表面,ボ ルト・ナット表面の熱伝達率は8 W/m2K とする.管 フランジとボルト・ナットの材料は実験に合わせて SUS304 とする.表 1 は解析に使用した材料定数と熱 定数である6) 実験に使用したフッ素樹脂ガスケットの圧縮応力と 圧縮ひずみの関係は,線形ではなく図9 に示したよう に特徴的な圧縮特性を示す.そこで,数値解析のひと つの技法として,除荷曲線を直線と仮定し,圧縮曲線 の原点近傍の非常に小さな領域では,仮想的にその直 線と等しい傾きを持つ線形弾性体と考える.それに続 く圧縮曲線の本体部分の非線形特性は,金属材料の塑 性挙動と同じ手法で定式化する.ここで除荷時のヤン グ率は,実測データより0.8GPa とする.以上の仮定 により,図9 に示したガスケットの圧縮曲線・除荷曲 線は,近似的に金属材料の弾塑性挙動と同様に扱うこ とができる.すなわち,図9 の各部分を弾塑性応力解 析と対比すると,(a-b:線形弾性領域,b-c:塑性変形 領域,c-d:除荷領域)となる. 4.2 管フランジと締結用ボルトの温度と応力の時間変 化 図10 は冷却開始 200 秒後と 18000 秒後の温度分布 を示している.等温線のスケールの最高温度は 0℃, 最低温度はマイナス196℃である.冷却開始から 200 秒経過すると,管部分はかなり液体窒素と近い温度に なっているが,ボルト・ナット部分はそれに比べると

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10 管フランジの温度分布 11 管フランジのミーゼス応力分布 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 -200 -150 -100 -50 0 50 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000b / i Bo lt St res s R et ain ed Ra te Bol t Te m per at ur e Time (sec) (℃ ) bolt temperature bolt stress FEM experiment 図12 解析結果と実験結果の比較 高い状態にある.温度場が定常状態となった18000 秒 後では,全体が液体窒素に近い温度となっており,と くにフランジの段付き部分より内側の部分はほぼ一様 温度である.ボルト・ナット部分の温度もかなり低下 しているが,ボルト頭部からはめあいねじ部に向かっ てやや温度が高くなっている.図11 は,図 10 に対応 したミーゼス応力の分布である.最大応力に着目する 図13 霜が付着した管フランジ締結体の有限要素モデル と,冷却開始200 秒後の 522MPa に対して,定常状 態になるとその68%にあたる 356MPa まで低下して いる.その場合,ボルト穴より外側の管フランジ部分 に発生していた高い応力が消えている. 図12 では,軸部温度と軸応力の時間変化について, 図6 と同じ表示方法により解析値と実験値を比較して いる.図中の実験値は 4 本のボルトの平均値である. 定常状態ではボルト軸部温度,軸応力のいずれについ ても,両者の値はかなりよく一致しているといえる. 一方,液体窒素の供給を止めた後の常温に戻る過程で は,両者の差がやや大きくなっている.実際の冷却実 験では,液体窒素の供給を止めると液面が徐々に低下 し,やがて完全に消滅する.その間,かなりの時間に わたって管フランジ内に液体窒素が存在する.これに 対して有限要素解析では,供給を止めると配管内部の 温度はただちに室温となり,内表面の熱伝達率は外表 面の値に等しいと仮定している.その結果,解析では 実験に比べて短時間でボルト軸部温度が上昇したと考 えられる.したがって,数値解析の観点からかなり困 難であるが,液体窒素の液面が徐々に低下する影響を 考慮することができれば管フランジ締結体の温度上昇 がゆるやかになり,解析値と実験値はかなり近い値に なると推察される. 4.3 管フランジに付着する霜の影響 液体窒素の注入を開始した後,ある程度時間が経過 すると図5 のように管フランジの表面に霜が付着する. 実際のLNG 配管でも同様の現象が起こる.そこで, 霜の付着が管フランジの熱・力学挙動に及ぼす影響を 検討する.図 13 は表面に付着した霜を含めてモデル 化した管フランジ締結体の有限要素モデルである.霜 の熱物性値は文献6 に示された透明氷と雪に対する値 を参考にして,熱伝導率,比熱,密度をそれぞれ 1.6W/mK,1600J/kgK,920kg/m3とした.氷の熱伝 導率はSUS304 の 1/10 程度である.また,霜の剛性 は金属に比べて著しく低いことから,ヤング率はフラ ンジ本体の値の1/500 を中心に変化させたが力学挙動 に及ぼす影響が無視できる程度であったため,数値解 析が実行可能な範囲で小さな値とした.以上の仮定に 基づいて得られた計算結果は,ボルトの軸部温度,軸 応力のいずれについても,霜の影響を考慮していない

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-196 -194 -192 -190 -188 -186 0 20 40 60 80 100 120 Temper atu re of pip e inne r surf ace

Distance from the center of gasket (mm)

(℃ ) 5000 5000 10000 15000 coefficient of heat transfer (W/m2K) 図14 管フランジ内表面温度分布と表面熱伝達率 図12 の解析結果とグラフ上でほとんど差が認められ ない値となった.このことから,霜の影響は無視して も差し支えないと考えられる. 4.4 ボルト軸応力の低下メカニズムと表面熱伝達率の 影響 管フランジが低温熱負荷を受けたとき,軸応力が低 下する現象のメカニズムを図6,図 11,図 12 から考 察する.図11 によると,管内表面に近い部分の温度 はボルト・ナット部分に比べて低い.そのため,2 枚 の管フランジの収縮量はボルト・ナットに比べて大き くなり,ボルト軸応力が低下する要因となる.また, ガスケットの低温における剛性の測定例はほとんど見 当たらないが,高温熱負荷を受けた場合ほど大きく変 化しないと考えられる.その結果,低温熱負荷を受け ると,管フランジ締結体は全体としてボルト軸応力が 減少するように変形すると考えられる.応力の時間変 化について図11(a)と図 11(b)を比較すると,フランジ 先端側のボルト穴周辺に発生していた高い応力が消え ている.その理由は,前述の変形パターンにより,時 間の経過とともにフランジローテーションが緩和され たためと推察される. つぎに,管フランジ内表面の熱伝達率がボルト軸部 温度と軸応力変化に及ぼす影響について検討する.図 7 に示した解析モデルを用いて,4.1 節で仮定した 8000W/m2K を中心に表面熱伝達率を 5000,8000, 12000,15000 W/m2K と変化させたが,ボルト軸部温 度と軸応力に対する影響はほとんど認められなかった. 図14 は,管フランジ内表面の温度分布に対する表面 熱伝達率の影響を示している.原点はガスケットの中 表2 液体メタンの物性値 Temperature (K) Density (kg/m3) Specific heat at constant pressure (J/kgK) Dynamic viscosity (Pa·s) Thermal conductivity (W/mK) Density (kg/m3) numberPrandtl 110 424.8 3469 186 186.1 424.8 2.255 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 -200 -150 -100 -50 0 50 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000b / i Bolt St res s Retaine d Rate Bo lt Temp er atu re Time (sec) (℃ ) 1000 2000 3000 h (W/m2K) bolt temperature bolt stress 図15 LNG 配管におけるボルト軸部温度と軸応力 央面である.熱伝達率の増加に伴ってわずかに表面温 度が低下しているが,その影響は小さい.図の結果よ り,5000~15000 W/m2K という熱伝達率は,管フラ ンジ締結体の温度分布,ボルト軸部温度および軸応力 にほとんど影響しないほど十分高いと推察される.し たがって,ここで仮定した熱伝達率の値は,管フラン ジの熱・力学挙動を実用的なレベルで評価する目的に 対して有効と考えられる.以上の結果から,本研究で 提案した解析手法はさまざまな仮定をおいているが, 図 12 に示したボルト軸部温度と軸応力残留率がもっ とも低下したときの値を実用的な精度で評価する目的 に対して有効と判断できる. 5. LNG 配管用管フランジのボルト軸応力変化 前節の解析手法を用いて,内部流体がLNG の場合 のボルト軸部温度と軸応力の時間変化を求める.LNG の成分割合は産地によって異なるが,主成分はメタン である7).そこでLNG の熱物性値として,表 2 に示 した液体メタンの値を用いる 6).表面熱伝達率は円管 内強制対流の発達した乱流域での推定式から求める 8)

Nu

0.023

Re Pr

0.8 0.4 (1) Nu,Re,Pr はそれぞれヌセルト数,レイノルズ数, プラントル数である.表2 の物性値を代入して,管内 流速が0.5,1.0,1.5,2.0m/s の場合の表面熱伝達率

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を求めると,1013,1674,2440,3071 W/m2K とな る.そこで,有限要素解析ではLNG の温度をマイナ ス 163℃とし,表面熱伝達率を 1000,2000,3000 W/m2K と変化させる.その他の解析条件は液体窒素 の場合と同じとする.図15 に解析結果を示す.ボル ト軸部温度,軸応力とも図12 に示した実験結果,解 析結果と同じ傾向を示している.冷却開始後十分時間 が経過したときのボルト軸部温度は約マイナス135℃, 軸応力残留率は約70%である.ここで,液体窒素の場 合と差が生じた主要な原因は,流体温度の差によると 考えられる. 6. 結 言 (1)低温流体用の管フランジを対象として,液体窒 素を用いた冷却実験により,締め付けボルトの軸部温 度と軸応力の時間変化特性を定量的に明らかにした. (2)管フランジ部分に連続的に液体窒素を供給する 実験では,温度場が定常状態になるとボルト軸部温度 はマイナス155℃,ボルト軸応力は初期値の 65%程度 まで低下し,常温に戻ると93%程度まで回復する. (3)上記の冷却実験における管フランジおよび締結 用ボルトの熱・力学挙動を三次元有限要素解析でシミ ュレーションする手法を提案し,実験値と解析値が実 用的な範囲で一致することを示した. (4)LNG の流動開始から移送作業終了までの過程に ついて,管フランジ締結用ボルトの軸部温度と軸応力 の時間変化を解析した.その結果,配管内が一様流れ の場合,ボルト軸部温度はマイナス135℃,ボルト軸 応力は初期値の70%程度まで低下した. 実際の配管では,流動開始直後と移送完了前は管の 下部のみにLNG が流れている.このように流動状態 が変化する場合の影響を正確に評価するためには,実 際に即した適切な境界条件を設定する必要がある.そ れに対して本研究で紹介した解析手法は,実際の配管 の熱・力学挙動を実用的な精度でシミュレーションす るための基礎的な手法を提案するものである.おわり に,有限要素解析の実施にあたり,ガスケット圧縮特 性の定式化に関してご教示いただいた佐藤広嗣氏(日 本バルカー工業(株)に深く感謝する次第である. 参考文献 1) 福岡,野村,西川,日本機械学会論文集(C 編), 75-759,(2009),3069-3075.

2) Nechache, A. and Bouzid, A.H., ASME PVP Conference (Cleveland), Vol.457, (2003), 139-148. 3) Sawa, T. and Maezaki, W., ASME PVP Conference (San Diego), Vol.478, (2004), 61-68.

4) 福岡,野村,西川,朝比奈,圧力技術,46-6,(2008), 363-369. 5) 福岡,日マリ学誌,46-3,(2011),419-423. 6) 日本機械学会編,伝熱工学資料(改訂第 5 版), (2009),287-322,丸善 7) 低温工学協会編,超伝導・低温工学ハンドブック, (1993),13-18,オーム社 8) 片山,岩井,牧,斉藤,伝熱工学演習,(1966), 79-82,実業図書

図 1  高温熱負荷によるボルト軸力の低下  はシートガスケット,高くなるとうず巻き形ガスケッ トが使用されるケースが多い.アスベストの使用が全 面禁止となった後,シートガスケットとしては膨張黒 鉛や PTFE を主成分としたタイプが広く使用される ようになった.これらのシートガスケットは,フラン ジ本体に比べてはるかに剛性が低いために,図 1(a)に 示したように,ガスケット面圧が半径方向に急激に上 昇するという特徴的な分布パターンを示す.ガスケッ トの低剛性とフランジ界面の段付き形状に起因して, ボルト
図 7  管フランジ締結体の有限要素モデル  図 8  変位場と温度場の境界条件  表 1  解析モデルの材料定数と熱定数  Young's modulus (GPa) Poisson'sratio Coefficient of linear expansion(1/K) Thermal conductivity(W/mK) Specificheat(J/kgK) Density(kg/m3) SUS304 200 0.3 17.3×10 -6 16 499 7920 gasket 0.45 45.2×10
図 10  管フランジの温度分布  図 11  管フランジのミーゼス応力分布  0 0.20.40.60.81 -200-150-100-50050 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000b / iBolt Stress Retained Rate Bolt Temperature  Time (sec) (℃)bolt temperaturebolt stressFEMexperiment 図 12  解析結果と実験結果の比較  高い状態にある.温度場が定常状態とな

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