通常学級における特別支援教育のあり方
─小学校担任教員と大学生との連携から─
中 村 義 行
本論文では、小学校での通常学級における特別支援教育のあり方について、担任教 員と大学生との連携に視点をあてて検討した。具体的には、小学校での通常学級にお ける特別支援教育に関する研究についての最近数年間の文献から概観し、次に、小学 校と大学の連携プロジェクト「特別支援教育プログラム」による取り組みを継続的に 実施している小学校での通常学級担任教員とそのクラスに補助教員の役割を担う個別 支援教育実習生として参加し、担任教員と連携しながら特別支援教育を実践してきた 大学生に、2年間の実践について、担任教員と大学生の連携による効果性や問題性に ついてアンケート調査し、通常学級における特別支援教育のあり方について検討した。 その結果、通常学級の担任教員に対しての支援には、より適切な支援システムを構築 する必要があるということ、その支援システムのひとつとして担任教員と大学生との 連携による取り組みがあり、特別支援教育を実施していく際に担任教員と大学生との 連携により効果的な成果をあげる可能性があるということが示された。 キーワード 通常学級,特別支援教育,発達障害,小大連携,担任教員と大学生Ⅰ.問題提起及び目的
2007年4月1日より,学校教育法一部改正が施行され,本格的な特別支援教育が始まることに なった。LD,ADHD,高機能自閉症等の発達障害児への特別支援教育のあり方についての基 本的な方針は文部科学省が提示しているが,小中学校での特別支援教育を実施していくには, 発達障害の特性理解,具体的な支援方法,校内支援体制の組織化,コーディネーターの役割の 具体化,保護者との連携,教員の意識改革,行政の役割のあり方等の多くの課題を解決してい く必要がある。具体的な教育的支援方法のあり方としても,発達障害児に対する直接的なかか わりによる支援と発達障害児とかかわる教員に対する間接的な支援が考えられる。発達障害児 に対する直接的なかかわりによる実践研究等は,発達障害児の特性理解や教育的ニーズ,発達 〔抄 録〕状況,学習・生活上の困難等の把握,その分析等についての実践や調査等,これまですでに多 くの研究がなされてきている。しかし,発達障害児とかかわる教員に対する間接的な支援に関 する研究はまだまだ始まった状況であり,これまでの特殊教育諸学校や特殊学級等で障害児と かかわり,専門性を培ってきた教員ではなく,小中学校の通常学級で担任等をしてきた教員に 対する直接的,間接的な支援や連携についての実態調査や実践研究による検討が求められてく る。小中学校担任教員に対する間接的な支援は,専門家チームや巡回相談員により担任教員と のコンサルテーションによって行われてきている。 小学校の通常学級で発達障害児の教育支援を実践していく際,上記で述べた課題に対応して いく方法として,担任教員一人による支援からチームによる支援のあり方についての検討があ げられる。具体的には,補助教員や学生ボランティア等の学級参加,校内委員会の設置,専門 家チームの設置,巡回相談の導入によって実現化される。 本論文では,まず,最近数年間の小学校での通常学級における特別支援教育に関する研究に ついて文献から概観し,次に,小学校と大学の連携プロジェクト「特別支援教育プログラム」 による取り組みを継続的に実施している小学校での通常学級の担任教員とそのクラスに補助教 員の役割を担う個別支援実習生として参加し,担任教員と連携しながら特別支援教育を実践し ている大学生に,その小学校担任教員と大学生との連携による2年間の取り組み実践について アンケート調査を実施し,通常学級における特別支援教育のあり方について検討する。
Ⅱ.通常学級での発達障害児に対する取り組みに関する最近の先行研究から
通常学級に在籍する発達障害児に対する特別支援教育に関する研究は,これまですでに数多 くの研究がなされてきている。発達障害児に対する直接的なかかわりによる支援(直接的支援) 研究については,今後,別の機会に述べるとして,ここでは,発達障害児とかかわる担任教員 に対する支援(間接的支援)に関する最近数年間の我が国の研究について概観し,通常学級に おける特別支援教育のあり方について述べる。以下,最近の間接的支援に関する研究について, 「特別支援教育の現状・実態把握」,「支援側からの学校へのかかわり・巡回相談・校内支援体 制」,「教員への直接的支援」,「補助教員・大学生との連携等による取り組み」の視点から順に 述べていく。 1.特別支援教育の現状・実態把握 特別支援教育に取り組む担任教員への支援体制の整備が求められる中では,発達障害児等特 別支援を必要とする児童の正確な実態把握・現状把握が重要な課題となってくる。特別支援教 育の現状に関する調査研究については,日本 LD 学会研究委員会プロジェクトチーム(2006) が,理解促進・研修,特別支援連携協議会,専門家チーム,巡回相談,小・中学校の支援体制,連携・ネットワーク等を調査項目として,行政関係者や専門家に対してアンケート調査を実施 し,特別支援教育の現状を把握し,現実的問題を明らかにしようとしている。このように特別 支援教育の現状を把握するための実態調査を繰り返すことにより,今後の特別支援教育に取り 組む担任教員に対するより適切な支援システムを構築していく際に必要な情報が得られていく と思われる。 また,特別支援教育実践の実態に関する調査ではなく,教員の児童の実態把握の困難性や指 導の困難感に関する調査を行っている研究も見られる。別府と宮本(2007)は,LD,ADHD 等 を有する児童生徒の学習面・行動面の困難の実態把握とともに,教員の認識を明らかにし,教 員の指導困難感や特別支援教育を必要とする指導の実態把握のあり方と教員支援の体系の必要 性を指摘している。児童にかかわる教員側の困難性や困難感に視点をあてたかかわる側の支援 体系の構築も求められる。 また,通常学級における「配慮」に関する実態把握に関して,玉木ら(2007)は,支援のひ とつであり通常の学級での配慮としてもとらえられる「インストラクショナル・アダプテー ション」の実施可能性を検証するために,実践研究報告からアダプテーションの項目(話す, 聞く,読む,書く,計算する,推論する,不注意,行動面・情緒面,作業・領域全般,条件整 備の9つのカテゴリーについての68項目)を調査項目として,通常学級の担任教員に実施可能 性を評定する調査を行っている。その結果,学級担任教員は,「社会性/動機づけにかかわる 工夫」「テストや課題条件の工夫」「文具の工夫」「視覚的/言語的手がかりの工夫」等の学級 全体に対して行われる,あるいは多くの準備時間を必要としないアダプテーションの実施をよ り容易と感じており,「読み書きの学習方略や教材の工夫」「指導の形態や場の工夫」「電子機 器の利用」等の個別に対して行われる,あるいは多くの準備時間やカリキュラムの変更を必要 とするアダプテーションの実施をより困難と感じていると述べている。支援の効果をより確実 なものにしていくためには,これらの配慮視点を持ってかかわることは可能だが,担任教員一 人では配慮が適切に実施されているかを評価することは困難であり,準備時間やカリキュラム の変更等の配慮に対応して行けるような補助教員や学生ボランティア等による連携や学校内外 の支援体制が求められる。 2.支援側からの学校へのかかわり・巡回相談・校内支援体制 専門家チーム等の支援する側が学校にかかわる際,「支援する側の課題は何か」ということ を認識しながら小中学校にかかわる必要がある。牟田(2003)は,学校を支援する側の課題 として,①支援のシステムの内容の構築(支援専門家チームの設置,巡回相談員の人数設定, 様々な専門家や補助員等の役割分担等),②計画・実施・評価・実行をどのように行うか(シ ステムが効果的に動いているか,専門家の助言は効果的だったか等),③個別の支援計画の作 成(誰がどのようにどの程度まで作成するか等)の3点をあげている。これらの課題を踏まえ
た支援システムの構築を計画・実施・評価・実行していく必要がある。 浜谷(2006)は,通常学級の軽度発達障害児の教育実践を支援する巡回相談のあり方を検討 するための支援モデルを提示し,対象児理解や教育実践評価等の第1次支援(教育実践の評価, 教育実践方針の作成)を実現し,第2次支援(教職員の協力関係や保護者との関係,専門機関 との連携),第3次支援(教員の心理的安定,人生への意欲促進)までの実現を確認し,支援の 効果レベル等についても分析し,巡回相談のあり方を心理学的方法と実務的制約の2点から検 討すべきであるとしている。このように巡回相談による発達障害児等の総括的な教育実践支援 モデルを構築していくことも必要と考えられる。 通常学級に在籍する発達障害のある児童に対応した校内支援体制に関する学級担任の意識を 明らかにするために,室岡ら(2005)は小学校の通常学級担任を対象に調査を行っている。そ の調査から,学級担任は自らの教育的対応を基本としながらも校内の教員との協力や地域資源 の活用が必要であると判断していること,校内委員会の役割として教職員間の共通理解の形成 が最も重視されたこと,校内委員会として学級担任自らの参加と管理職の参加を重視していた こと,調整役として教頭あるいは専門性のある教員をあげていること等の傾向がみられ,校内 支援体制を構築する際にはそれぞれの役割分担を明確にしていくことが必要であることを指摘 している。 3.教員への直接的支援 教員への直接的なかかわりによる支援としては,LD 児の個別の指導計画作成に対する教師 支援プログラムの有効性について,海津と佐藤(2004)が,LD への支援には詳細な実態把握 が不可欠であり,集団の場において個を見る視点,個に配慮する支援を可能にするものとして, 個別の指導計画に着目し,個別の指導計画の作成経験が少ない教員に対し,教員支援プログラ ムを実施し,つまずきの要因把握や適切な手立てへの見通し等教員の意識・実践面ともに変化 が見られたことを報告している。 また,通常学級に在籍する LD・ADHD 等が疑われる児童への教育的支援について,梶と藤 田(2006)は,通常学級に在籍する LD・ADHD 等が疑われる児童への教育的支援で問題を抱 えている通常学級担任教員に対して,養護学校の教員がコンサルテーションによる支援を行い, 教員の評価行動機会が増加し,行動問題の提言が見られたことを報告している。このことから 発達障害児とのかかわり経験の少ない教員や教育支援で困難性を抱えている教員の支援システ ムの構築が必要であると言える。 4.補助教員や大学生との連携による取り組み 通常学級での特別支援教育での担任教員への直接的間接的かかわりとして,補助教員や学生 ボランティアとの連携による実践が行われ始めている。長尾(2003)は,補助教員の支援のあ
り方について約10 ヶ月間の一斉授業への参加から検討し,対象児にあった教科書作り,興味・ 関心や認知特性にあった分かりやすいかかわり等の配慮に有効であったと述べ,補助教員は児 童グループ全体の支援者となることが重要であることを指摘している。 学生ボランティアとの連携に関する研究では,山口と小谷(2004)が LD 周辺児のソーシャ ルスキル指導に学生ボランティアを活用したプログラムを開発している。そこで,学生は指導 者という立場ではなく,支持的立場をとる仲間という役割を取り,LD 周辺児のソーシャルス キルを向上させるのに有効であったことを報告している。 教員と大学生が連携して取り組んでいく上での障壁として,大石と田中(2000)は,①事業 の設定の問題(大学生の立場や責任の不明確さ,教育委員会と学校現場との連携の不足等), ②運営・実施体制の問題(知識を蓄え技術を高める教育研修機会の不足,ケースカンファレン スやスーパービジョンの機会の不足,教育委員会の関与の希薄さ等),③実践活動の調整の問 題(連絡・協議機会の不足,コンサルテーション機会の不足等)の3点を指摘し,これら3点 が学校の受け入れ体制として整備されていないと,大学生が学校現場で機能することが難しい としている。このような担任教員と大学生との連携による特別支援教育の取り組みを分析,評 価し学校側の受け入れ態勢を整備していくことが求められ,そのためには学校内外の連携や 大学側と小学校と教育委員会との連携が必要になってくると思われる。さらに,大石(2004) は,大学生を学校現場に活用する際に生じる教員の抵抗感が実践活動の障壁となる可能性につ いて述べ,このような教員の抵抗感を顕在化させないための取り組みの指針として,①教員の 養成に積極的に応答すること,②短期間で効果の現れる領域で活動すること,③授業観察記録 を含む報告を適時的に行うことをあげている。 また,大石(2006)は,特別支援教育体制の整備に際し,「通常学級の基盤整備」と「財政 的問題の解決策としての大学生の活用」という課題に着目し,3自治体での実践活動の問題点 を整理している。大学生の活用と大学生の日常的学校受け入れ体制の整備は,相互補完的な関 係にあることが望ましいと述べ,「必要資格や学修要件」「教育研修の体系」「スーパービジョ ンの体制」は,調査対象のいずれの自治体においても条件整備が不十分であったことを指摘 し,その解決には教育委員会の関与や事業担当者と大学関係者との相談・協議等をあげてい る。小学校担任教員と大学生との連携の視点から通常学級における特別支援教育のあり方を考 える際,大石(2006)の指摘は多くの示唆を与えてくれている。
Ⅲ.これまでの小大連携による通常学級での取り組み実践経過
1.小学校での通常学級における特別支援教育の実現に向けて 小大連携(小学校と大学との連携)目的は,小学校での教育実践を通して,大学での「理論 知」と学校現場での「実践知」とを融合し,即戦力となる教員を養成することにある。佛教大学では,このような観点から,京都市教育委員会との包括協定の一環として,教育実践力の ある教員の育成と学校現場への具体的なサポート体制を確立する取り組みとして小大連携プロ ジェクトを2004年度途中から開始した。本年度(2007年度)で取り組み開始4年目を迎えてい る。小大連携プロジェクトの一つに児童生徒の教育を充実していくことをねらいとした「学校 実践プログラム」があり,筆者が大学教員として担当する 「特別支援教育プログラム」 はその ひとつである。 特別支援教育プログラムでは,教員一人による支援からチームによる支援による連携に視点 をあてた取り組みを行い,①小学校側から大学側には,実践力のある教員養成機会・研究を提 供し,また,②大学側から小学校側には,児童支援,教員支援,サポート体制確立の協力等を 提供する。そのため大学での「ゼミ」を単位として,小学校教員,大学生,大学教員という三 者で連携をとって取り組んでいる。 2.「特別支援教育プログラム」の活動内容 特別支援教育プログラムのテーマ・目標・実践内容については,前年度の本教育学部論集 (中村 ,2007)において述べているので,本報告では省略する。 3.2005年度から2006年度までの2年間の取り組み:A小学校の場合 (1)参加形態,打ち合わせ等 2005年度は小学校2校で実践しているが,2006年度は小学校5校で特別支援教育プログラム による取り組みを実施している。A小学校では,2005年7月から2007年3月まで,筆者の大学 ゼミ学生8名から15名が週1回,月曜日,火曜日,木曜日,金曜日に数名ずつに分かれ,3つ の学年(3クラス)に個別支援教育実習生(個別支援を重視するという視点から参加大学生は 本名称で取り組んでいる)としてクラスに入り,担任教諭と連携して児童に対する支援を行っ た。また,一人の学生が週に1回か2回,毎回一つの同じクラスに参加し,同じクラスに入る 他の学生との間(ゼミ生間)で連携した。併せて,学期ごとに学校長を含めた小学校教員と学 生・大学教員(筆者)との事前打ち合わせを数回,学級担任と学生・大学教員との事例検討会 を数回実施した。 (2)教育支援取り組み手続き 実際の取り組み手続きは学期(2学期:前期・後期)毎に進められる。詳細については,前 年度の本教育学部論集(中村 , 2007)において述べているので,本報告では省略する。
Ⅳ.特別支援教育で連携する小学校担任教員と大学生に対するアンケート調査
1.調査目的 特別支援教育プログラムで連携して特別支援教育に取り組んでいる小学校担任教員と大学生にアンケート調査を実施し,通常学級における小学校担任教員と大学生との連携に視点をあて て,効果性や問題性,今後の連携のあり方について検討する。 2.調査方法 (1)対象 A小学校で2005年7月から2007年3月まで,特別支援教育プログラムで継続的にかかわった 通常学級担任教員2名(B教員,C教員と以下記述)と各々の担任のクラスに1名ずつ個別支 援教育実習生として参加した大学生2名(D学生,E学生と以下記述:筆者のゼミ生)にアン ケート調査を実施した。B教員とD大学生はA小学校で同じ学年の同じクラスで連携し,同様 にC教員とE大学生は同じ学年の同じクラスで連携して取り組んだ。 (2)実施期間 調査実施時期は,2006年3月と2007年3月の年度末に1回ずつ,計2回実施し,特別支援教 育プログラムによる実施経過による変化を調査できるようにした。 (3)アンケート調査内容と実施手続き アンケート調査内容は,特別支援教育プログラムによって取り組んでいく際に,下記の①か ら⑤までの連携による取り組みの効果がみられると予測し,取り組んでみて下記の項目にあげ る効果が見られたかどうかについて回答してもらった。回答は3件法(「はい」「どちらでもな い」「いいえ」)で回答してもらった。さらに,その回答理由を自由記述で回答してもらった。 また,小学校担任教員と大学生との連携による2年間の取り組みを振り返って思うことを自由 記述の形で回答してもらった。 ①児童に対する個別的な教育支援が可能となる ②教育支援をチームでより効果的に取り組める ③学校内外でのチームによるシステムや連携を強化できる ④指導の成果や問題点に対してフィードバックが可能(支援の軌道修正)となる。 ⑤ある程度の時間的スパンで継続して学校でのかかわりが可能(支援の継続性)となる 3.調査結果 アンケートの回答結果のうち,連携による取り組みの効果の可能性については,表1に示し ている。表中,○は「はい」という回答で,効果の「可能性が高い,ある,」という結果を示 し,同様に,×は「いいえ」で「可能性が低い,ない」,△は「どちらでもない」という回答 結果を示している。回答理由は筆者が回答者の回答記述の文を簡略化して記述した。 表2は小大連携「特別支援教育プログラム」での2年間の取り組みを振り返って思うことの 自由記述回答全文を担任教員2名と大学生2名毎に示している。
表1 担任教員と大学生との連携による効果性と問題性について 質問内容 年度 B教員 D学生 C教員 E学生 ① 個別的教育支援 が可能 2005 ○児童の学力・生活 面のスキルがアッ プした ○ 個別に支援する事 で小さな変化に気 づけた ○ 児童の様子や躓き 箇所を交流する事 で担任へのより確 かな理解が図れた ○ 児童を見る大人の 目(視点)が増え た 2006 ○ 個に応じた支援が 可能になり、児童 の自尊感情の向上 に影響した ○ 全体を見る担任教 員とは別の視点か ら児童を細かく見 ることができた ○ 学生と連携しなが ら担任一人なら目 の行き届かない子 どもにも支援がで きた ○ 学生と現場教員が 学級運営との両立 方法を模索できる 機会ができた ② チームで効果的 に取り組める 2005 ×ま だ ま だ 担 任 − 学 生 だ け の チ ー ム で、 組 織 化 が 必要だから △ 担任教員や大学教 員と別々に話す機 会が多くチームで 検討会が少なかっ た △ 小学校教員と大学 生・ 大 学 教 員 で チームとして教育 支援を進められた ○ 担任教員から「児 童 理 解 が 深 ま っ た」との言葉(評 価)をもらった 2006 ○ 教員学生双方の視 点で児童の状態像 を捉え、情報を共 有でき、より良い 支援法が見出せた ○ 現場の先生と意見 交換し大学教員か ら助言をもらい、 より良い支援につ ながっていた ○ 各々の立場からの 気づきや考えを定 期的に話し合い次 への教育活動に生 かすことができた ○ 授 業 中 は T.T. が 可能になり、学生 は 現 場 教 員 と 比 べ、活動中休み時 間等で児童への支 援もできた ③ システムや連携 の強化が可能 2005 △まだまだ不十分な 点がある ○ システムの働きや連携 のとり方を学びチー ムでの支援につい て 考 え る よ う に なった × 当事者だけの取り 組みとせず、校内 での取り組み機会 を深めたかった ○ 事例検討会や活動 を通して小学校と 学生と大学教員と の連携がとれた 2006 ○ 大学教員や学生を 交えて検討会を開 きその内容を校内 委員会で伝達でき た ○ 一緒に検討会をし たり普段から意見 交換して連携を強 化できた △ 直接児童と関わっ ている者同士で進 めがち、広く成果 を知らせる事が今 後必要 △ 教員・学生・大学 教員の連携は任意 のもので、システ ムが強化されたと は考えにくい ④ 支援の軌道修正 が可能 2005 ○学生個々の視点を 取り入れ多角的に 実態把握ができた ○ 事例検討会で児童 の実態を把握し学 習会で専門知識を 身につけられた ○ 支援方法が分からな くなった時大学教員 に研究者としての返 事をもらえた ○ 担任教員が、学生 が感じたことに、 耳を傾けてくれた 2006 ○ 学生から支援カー ドを通じて連携を とり、児童理解・ 支援のあり方に繋 がった ○ 現場の先生方と支 援のあり方や内容 について検討しな おすことができた ○ 早い段階で不適切 な接し方を指摘し てもらい児童への 教育成果が現れた ○ 1つの事例に対し て何度も検討機会 を設け、検討事項 を現場教員が指導 に反映してくれた ⑤ 支援の継続性が 可能 2005 △週1回の関わりな ので継続性は難し い ○ 可能だが多く関わ れる方が支援が効 果的だと思う ○ 学生たちに半年間 継続的に関わって もらえた △ 実習等学生の都合 で活動できない期 間もあったため 2006 △ 今年度も週1回の 関わりで継続性と い う 点 で 課 題 が あった。1年間通 しては関われた ○ 実際に継続的にか かわらせてもらっ た ○ 継続して児童と関 わり、担任と交流 して児童の実態把 握や支援の効果が 確かになることを 実感した ○ 年度初めの手続き 期間と学生自身の 教育実習期間を除 き、継続的に受け 入れてもらえた
4.調査結果からの考察 (1)担任教員と大学生との連携による効果・問題性 ここでは,通常学級における小学校担任教員と大学生との連携に視点をあてた調査結果から, 担任教員と大学生との連携の効果性や問題性について考察するため,表1の5つの効果の予測 項目毎の回答結果から考えられることを以下述べていく。 ①児童に対する個別的な教育支援が可能となる 2005年度と2006度の2年間を通して教員も学生も,全員○という結果で肯定的意見がすべて であり,「個に応じた支援が可能になり」小さな変化に気づけたこと,学生との情報交換で担 任が「より確かな(児童)理解が図れた」こと等を教員,学生とも認めている。 表2 小大連携「特別支援教育プログラム」での2年間の取り組みを振り返って −担任教員と大学生の自由記述回答から− 自由回答記述全文 自由回答記述全文 B教員 特別支援教育を進める上で、教員、大学、 保護者、委員会、専門家などの連携が非常 に重要であると感じる。来年度は、校内体 制を整えるとともに、連携を今まで以上に 蜜にしていきたい。 学生に対しては児童への直接的な支援に 限らず、教材作成や授業記録など様々な面 で、学習支援・生活支援を行ってもらおう と思っている。 D学生 2年間継続して同じ児童にかかわること で、一人の児童の成長を肌で感じることが でき、子どものもつ可能性の大きさを改め て実感することができた。私の入り方は特 殊だったが、密に関わらせていただき、子 ども一人一人の発達段階や能力に応じた個 別支援の必要性やあり方について深く考え させられ、自身の教育観を変えるきっかけ となった。私自身、ケースに入っている学 生同士で検討会を持つ機会が少なかったの で、もっと意見をぶつけ合い、支援の統一 を計ればよかったと反省している。継続的 にかかわれる以上、「その場だけの支援で 終わるのではなく、子どもの先を見つめた 支援を心がけていきたい。」 C教員 学生の現場に対する純粋で素直な態度 は、教員として新鮮であり、日々の教育活 動を自分自身見直す機会ともなっていた。 また、子どもとともに日々成長していく学 生の姿を見るのも大変喜ばしく思った。小 大連携による一人一人の子どもへの教育効 果は大変大きなものであった。京都市には まだまだ支援を必要としている児童がたく さんいるし、担任一人では支援に手が回ら ない現実もある。また、雑多な仕事もこな さなければならない教員とは別に、子ども にだけ純粋に集中して関われる学生がサ ポートすることは、教員にとっても大きな メリットがある。この取り組みがより有意 義なものとなり、教育現場にうまく生かさ れていくことを強く願っている。 E学生 小学校現場で個別支援教育実習生とし て、また、授業補助者として「対象児との 関係」、「担任との関係」、「学級の子どもと の関係」、「学年にかかわる先生との関係」 等を一つ一つ築いていくことは、私にとっ て容易ではなかった。保護者や現場教員の 中で大学生や特別支援教育への解釈が異 なっている場面もあったので。特別支援教 育プログラムでの活動では、対象児に関わ る専門的知識を身につけることや実践力の 育成に加えて、ゼミ大学教員やゼミの仲間 のバックアップの下、携わる人、一人一人 との関係の築き方も学ぶことができた。今 後もこの経験を生かして少しでも子どもた ちにフィードバックできればと考えてい る。
②教育支援をチームでより効果的に取り組める 2005年度は,×△○と三様だが,否定的意見からは検討課題が見出せる。すなわち,教員と 学生とのチーム・連携はとれつつあるが,まだまだ「担任−学生」だけの関係であり,校内外 での「組織化」が求められ,学生自身は「担任教員と大学教員と別々に話す機会が多く」,各々 がそろって「チームで検討」が必要であるととらえている。2年目の2006年度では教員,学生 とも全員○となり,「教員学生双方の視点で児童の状態像を捉え,情報を共有でき,より良い 支援法」を見出したり,「教育活動に生かすことができ」るようになっている。 教育支援をチームでより効果的に取り組めるようにするには,担任と学生,大学教員,校内 のその他の教員という横の連携のみでなく,チームとして成長するための時間的継続性に視点 をあてて取り組むことも必要である。 ③学校内外でのチームによるシステムや連携を強化できる 2005年度は,教員が△×,学生が○であり,学校内外でのチームによるシステムや連携につ いては,教員は「まだ不十分な点が」多いととらえ,「当事者だけの取り組み」となり「校内 で」の取り組みとして広く伝えられなかったと述べている。学生の方は,連携のとり方や事例 検討や活動記録について学び,チームでの教育支援の有効性を実感できたようである。2006年 度では,同じクラスで取り組んだB教員とD学生が○,同様にC教員とE学生が△となってい る。B教員とD学生は,事例「検討会」の成果を「校内委員会で」伝達したり,普段からの 「意見交換」することにより連携を強化できたと判断し,C教員は「児童と関わっている者」 が成果を他者に発信する必要性を述べ,E学生は「教員・学生・大学教員の連携は任意のもの で」システムから強化されたものではないことを指摘している。チームとして機能するには, 教員・学生・大学教員という児童に直接かかわる当事者が連携の必要性を唱えるのではなく, システムとしてチーム・連携の機能を強化できるようにしていく必要がある。 ④指導の成果や問題点に対してフィードバックが可能(支援の軌道修正)となる。 2年間を通して教員も学生も,全員○という結果で肯定的意見がすべてであり,「①児童に 対する個別的な教育支援が可能となる」の結果と合わせて,担任教員と大学生との連携による 特別支援教育の取り組みの効果的可能性を立証すべき意見と言える。具体的には,教員は「支 援カード」(直接教員と学生との話し合い機会を設けにくいため,学生が担任教員に個別支援 に入った際の学生の気づき等を文書で毎回報告している)を通じての連携,支援方法に対する 大学教員による助言,不適切な接し方の早期の指摘による修正をあげて,支援の軌道修正につ いての効果性を述べている。これらのことから,情報交換による連携の工夫,指導の成果や問 題点に対して即時の具体的フィードバックが支援の軌道修正に役立つ方法としてあげられる。 ⑤ある程度の時間的スパンで継続して学校でのかかわりが可能(支援の継続性)となる 2年間を通して○と△という結果を示しているが,断続的な継続的支援は可能で有効だが, 多くの場合,週1回という学生の参加・かかわりであり,1年間という期間では継続してかか
わっているが,1週間という期間では,週1回というかかわりであり,継続してかかわってい るとは言いがたい状況にある。同じクラスに4〜5名の学生が連携して児童にかかわるように システム化することは可能だが,一日おきに代わる代わる異なる学生がかかわることの問題性 もあり,学生と担任教員と連携して特別支援教育に取り組んでいく際,この「週1回のかかわ りでは支援の継続性が難しい」という問題が大きな課題となってくる。 (2)特別支援教育プログラムでの2年間の取り組みを振り返り 2年間の取り組みを振り返っての担任教員と学生の自由記述回答から,担任教員と学生がよ り効果的に連携し,特別支援教育を実践していくための示唆をいくつか見出すことができる。 B教員は,特別支援教育を進める際,教員,大学,保護者,委員会,専門家等の連携の重要 性を指摘し,まずは,校内体制を整えて連携を密にしていきたいと考えている。また,学生に 対してはこれまでの児童への直接的な支援に限らず,教材作成や授業記録等様々な面での学習 支援・生活支援の方向性を打ち出している。B教員は本取り組み2年目に学内の特別支援教育 コーディネーター役を担い,学生や大学教員と小学校教員とのコーディネートを的確に行い, 小大連携を深めたと言っても過言ではない。 C教員は,連携による取り組みの中での学生の素直な態度を自分の見直し機会とも捉え,連 携による支援の子どもへの教育効果を高く評価し,子どもだけに集中してかかわれる学生の存 在の効果性を指摘している。また,C教員は常日頃学生の言葉に耳を傾けてくれ,学生自身の 成長にも目を向けてくれており,教員と学生とが互いに認め合い,高めあっていたように思わ れる。 D学生は,2年間継続して同じ児童にかかわることで,一人の児童の成長を肌で感じること ができ,子どものもつ可能性の大きさを改めて実感することができ,自身の教育観を変える きっかけとなったと述べているさらに,「その場だけの支援で終わるのではなく,子どもの先 を見つめた支援を心がけていきたい」と,移行支援,生涯発達の視点から特別支援教育に取り 組んでいく必要性についても指摘している。 E学生は,「対象児との関係」や「担任との関係」等,支援又は連携すべき人との関係を築 いていくことの困難性について指摘している。チームや連携の具体的な実践は他者との関係性 においてなされており,一学生が一人で教員集団の学校に入っていき,活動することの難しさ を訴えている。しかしながら,そのような状況でも専門的知識を身につけたり実践力がついて きたり,ゼミ大学教員やゼミの仲間のバックアップの下,携わる人,一人一人との関係の築き 方も学ぶことができたと自己の成長に気づき始めている。
Ⅴ.全体考察
特別支援教育の主な支援対象としては,第一に児童,そして保護者,教員があげられる。本論文では児童に対する直接的な支援ではなく,児童や保護者とかかわる担任教員に対する支援 に視点をあてて小学校での通常学級における特別支援教育のあり方について論じてきた。本論 文での先行研究の概観とアンケート調査の結果から,通常学級の担任教員に対する支援には, より適切な支援システムを構築する必要があるということ,その支援システムのひとつとして 担任教員と大学生との連携による取り組みがあり,特別支援教育を実施していく際に担任教員 と大学生との連携により効果的な成果をあげる可能性があるということが示された。 本論文で述べてきたように,担任教員を支援するためのより適切な支援システムを構築して いくには,様々な課題があげられる。児童の実態把握とその理解,教育支援で困難性を抱えて いる教員への対応,専門家チームや巡回相談員の設定,補助教員等の役割分担とその機能化, 校内委員会の設置とその機能化,教職員間の共通理解の形成と協力,調整役として専門性のあ る教員・コーディネーターの設置とその機能化,地域資源の活用,等々,これらの課題を一つ 一つ確実に取り組んでいくべきであり,それらの取り組みによる教育実践を科学的に実証し, あるいは分析し,それらの実証・分析に基づいた更なる取り組みや検討をしていく必要がある。 また,小学校担任教員と大学生との連携による「特別支援教育プログラム」は,アンケート 調査結果から担任教員を有効に支援する可能性が見出せた。すなわち,担任教員と大学生の連 携による取り組みにより確かな児童理解が図れたこと,個に応じた支援が可能になったこと, 指導の成果や問題点に対して即時の具体的フィードバックによる支援が軌道修正に役立ったこ と,等々,担任教員や大学生の回答から確認できた。しかしながら,教員と学生との連携はと れたが,「担任と学生」だけの連携であることが多く,システムとして「チーム・連携の機能 を強化」できるように構築していく必要性が認められた。また,「支援の継続性」という点で は,大学生は年間を通して断続的にかかわれるが,週に1回か2回程度の参加であり,大学生 間での連携等の工夫による支援の継続性に取り組む必要があることも確認できた。そして,担 任教員自身,大学生との連携による取り組みが自分自身を見直す機会ともなり,大学生は一人 の児童の成長を目の当たりにして児童の持つ可能性に気づき,児童の今後の支援を心がけるべ く,移行支援や生涯発達の視点から特別支援教育に取り組む必要性を指摘できた。 今後は,より適切に担任教員と大学生が連携して特別支援教育に取り組むために,まず,担 任教員の支援としては,担任教員が負担感を感じている個別支援のために必要な教材作成や授 業記録等任教員が大学生に求めている様々な学習支援・生活支援のあり方を把握する必要があ り,大学生が補助教員として機能するための役割の設定やその明確化,支援するための体系的 な知識や技能の獲得,事例検討会による児童理解や教員との連携等に対して大学教員による大 学生に対する更なる指導,支援が必要と思われる。 また,通常学級における特別支援教育の継続的な連携による取り組みには,その目的や目標, 計画,実践,評価,再び実践等様々な取り組み要素が含まれている。今後は,担任教員と大学 生の取り組み実践における目的や目標,計画,実践,評価等の様々な要素を分析し,特別支援
教育実践を科学的に実証することにより,更なる特別支援教育のあり方について追求していき たい。 〔参考・引用文献〕 別府悦子・宮本正一 2007 LD,ADHD 等を有する児童に対する教師の認識と教育的対応 発達障害研究 29(3), 193-202. 浜谷直人 2006 小学校通常学級における巡回相談による軽度発達障害児等の教育実践への支援モデル 教育心理学研究 54(3), 395-407. 海津亜希子・佐藤克敏 2004 LD 児の個別の指導計画作成に対する教師支援プログラムの有効性─通常 の学級の教師の変容を通じて─ 教育心理学研究 52(4), 458-471 梶正義・藤田継道 2006 通常学級に在籍する LD・ADHD 等が疑われる児童への教育的支援─通常学級 担任へのコンサルテーションによる授業逸脱行動の改善─ 特殊教育学研究 44(4), 243-252. 清原浩 1984 教育実践の科学化のために 障害児教育実践体系第1巻 労働旬報社 230-240. 茂木俊彦 1982 障害児の実践研究における教育学の若干の課題について 障害者問題研究 ,29,33-34. 室岡徳・惠羅修吉・大庭重治 2005 通常の学級に在籍する軽度発達障害のある児童に対応した校内支援 体制に関する学級担任の意識調査 発達障害研究 27(4), 316-330. 牟田悦子 2003 支援する側からの学校へのアプローチ「支援する側の課題は何か」LD研究12(2), 166-178. 中村義行・大樋剛士・岡本恵子・吹上律子・栗山淳実・日下菜穂子 2006 小大連携から特別支援教育を 考える 佛教大学シンポジウム発表要旨集 中村義行 2006 通常学級における特別支援教育の取り組み 佛教大学教育学部論集 長尾秀夫 2003 注意欠陥/多動性障害(ADHD)児の教育支援─一斉授業における補助教員のあり方─ 発達障害研究 25(2), 99-109. 日本 LD 学会研究委員会プロジェクトチーム 2006 特別支援教育の現状把握 LD研究15(1),85-95. 大石幸二 2006 特別支援教育の実践活動をめぐる課題─通常の学級の整備と大学生の活用─ 教育心理 学年報 第45集 155-161. 大石幸二・田中亜子 2000 学校教育相談における支援スタッフの機能に関する事例的検討 人間関係学 部研究 7(1), 55-65. 関戸英紀 2004通常学級に在籍する特別な教育的ニーズのある児童に対する支援─有効な支援を行うため の要件の検討─ 特殊教育学研究 42(1), 35-45. 玉木宗久・海津亜希子・佐藤克敏・小林倫代 2007 通常の学級におけるインストラクショナル・アダプ テーションの実施可能性─小学校担任の見解─ LD研究 16(1),62-72. 上野一彦 2005 今あらためてLDを考える─軽度発達障害と特別支援教育─ LD研究 , 14(3), 244-251. 山口正剛・小谷裕実 2004 LD 周辺児のソーシャルスキル指導の試み─学生ボランティアを活用したプ ログラムの開発─ LD研究 13(2), 173-180. 湯浅恭正 1988 障害児教育実践の研究方法 特殊教育学研究 26(2), 59-64. 謝辞 本研究をまとめるにあたり,A小学校のB教員,C教員,学校長,そしてゼミ生のD学生,
E学生には多大のご協力をいただきました。ここに記して感謝いたします。
(なかむら よしゆき 教育学科) 2007年10月11日受理