早くから石油産業を発展させてきた欧州には、米国と並んで多くの経験や実績を持つ石油企業が存在 する。それらは「セブンシスターズ」を起源とするスーパーメジャーとまではいかなくとも、メジャーま たは準メジャー企業と称される規模で、世界で活動を展開している。もちろん、そのような大規模で活 動できている企業は、元来もしくは現在も国営企業であるものも多く、国営だからこその資本力・技術 力を持っているとも言える。 本稿では、欧州各国の石油上流部門を代表する企業のうち、スーパーメジャーを除くものについて、 それぞれが持つ強みや事業の特徴を踏まえ、活動の動向と戦略について紹介したい。 欧州を基盤とする代表的な石油企業について 図1に、欧州を基盤とする代表的な石油企業の売上高と生産量を示した。 Shell、BP、Totalは世界の5大スーパーメジャーに含まれる企業である。スーパーメジャーの動向に ついてはJOGMEC調査部内で他の担当者が動向を追っているのでここでは触れない。
本稿では、イギリスの BG Group、ノルウェーの Statoil、イタリアの Eni、スペインの Repsol、ドイ ツのWintershallの5社の活動と戦略について紹介する。
は
じめに
欧州石油企業の活動と戦略
1.
BG Group
(1)会社概要 BG Groupは、近年、ガスメジャーと称されることも あるイギリスの企業である。国営British Gas Corp.に起 源を持ち、元々はイギリス国内における天然ガスの購入・ 輸送・配給を独占的に行い、探鉱・開発部門にも進出し ていたが、その活動は小規模なものであった。 1980年代の国営企業民営化の流れのなか、1986年に 同社も株式を公開し、British Gas plc.と社名変更、民営 図1 欧州の代表的な石油企業の売上高と生産量 0 100 200 300 400 500 売上高[10億ドル] 生産量[万boe/d] 生産量 売上高 Shell(イギ リス・オ ランダ) BP(イギ リス) Total(フ ランス) BG Gr oup(イギ リス) Statoil( ノルウェ ー) Eni(イタリ ア) Repsol(ス ペイン) Wintersha ll(ドイツ )化された。そして、この民営化から 2 年後の 1988 年に 探鉱・生産部門を設立、本格的に天然ガスの上流事業に 進出していくこととなり、さらに 1997 年にこの上流部 門がBG plc.として分割・設立された。なお、1997年に 分割された下流部門(英国内でのガス小売り部門)は現在 のCentrica plc.である。BG plc.は、その後の2000年に さらに天然ガス輸送パイプライン事業部門を Lattice Group plc.(現在のNational Grid plc.)として分割し、上 流事業部門が現在のBG Groupとなった(図2)。 (2) 探鉱・生産(上流)部門とLNG輸送・販売部門の2 本柱 BG Groupの事業は、石油・天然ガスの探鉱・生産(上 流)部門とLNG輸送・販売部門2本の柱としている。売 上高では、約 6 割が探鉱・生産(上流)部門、約 4 割が LNG輸送・販売部門である(図3)。 探鉱・生産活動は世界20カ国以上で活動を展開(図4)し、 既存インフラや地質情報が既に整備済みの既存地域と、 リスクは存在するものの大規模発見が期待できる新規地 域とに大別して戦略を掲げている。また、これらの取得機 会を逃さないよう、迅速な意思決定を行うことも重要視し、 そのような組織体制となっていることも標ひょう榜ぼうしている。 BG Groupの生産量推移を図 5 に、2013 年の生産量 の各国別割合を図 6 に示す。2013 年の生産量で最も多 かったのはエジプトで、次いでイギリス、カザフスタン、 トリニダード・トバゴ、アメリカ合衆国となっている。 また、BG Groupが掲げる戦略では、LNGも極めて重要 な位置づけとなっている。今後世界的に拡大していくガ ス需要に対して LNGが主要な役割を果たし、新たな 2000 0 4000 Km LNG 受入基地 LNG 液化基地 (操業中) LNG 液化基地 (計画中) 図4 BG Group の上流事業活動地域と出資する LNG 基地 出所:BG Group ホームページ等を基に JOGMEC 作成 探鉱・生産(上流) 61% LNG輸送・販売 39% 探鉱・生産(上流) 61% LNG輸送・販売 39% その他 <1% 図3 BG Group の売り上げの部門別割合(2013 年)
出所:BG Group Annual Report を基に JOGMEC 作成 図2 BG Group の設立の経緯
LNG供給源の確保が求められるとしている。自らの LNG事業を「独特なLNGモデル」と称し、多様なLNG供 給源から競争力のある LNGを市場へ供給することで、 市 場 で 確 固 た る 地 位 を 築 き 上 げ る と し て い る。BG Groupが販売するLNGのほとんどは、供給源を特定しな いポートフォリオLNGと呼ばれるもので、自社のLNG上 流権益の保有にこだわらず、BG Group自身が買い主と なっているLNGからも供給されている(いわゆるLNGト レーディング)。BG GroupのLNG供給先は7割以上がア ジアで、特に中国が全体の約4割を占めている(図7)。 (3)近年の活動について イギリス北海、エジプトのナイルデルタ沖合、カザフ スタンなど、既に十分な探鉱・生産実績のある地域に加 え、近年はブラジル沖合Santos Basinのプレソルト鉱区 の探鉱や、オーストラリア・クイーンズランド州の非在 来型資源コールベッドメタン(CBM:Coalbed Methane =炭層ガス。オーストラリアではコールシームガス 〈CSG:Coal Seam Gas〉とも言う。石炭層に吸着してい るメタンガスで、近年アメリカやオーストラリアで開発 が進められている)を原料ガスとするLNGプロジェクト など、新たな地域・領域での事業拡大を進めている。ま た、北米からの LNG輸出となるアメリカ合衆国 Lake Charles LNGプロジェクト、およびカナダ・ブリティッ シュコロンビア州のPrince Rupert LNGプロジェクトに も参画している。 ①ブラジルでの探鉱活動 BG Groupは 2000 年にブラジルの南東部洋上 Santos Basinのプレソルト鉱区 3 鉱区に参画して以降、ブラジ ルでの探鉱・開発活動を拡大させてきた(図8)。2013 年には北東部洋上のBarreirinhas Basinの鉱区10鉱区を 獲得した。これらの鉱区の多くは Petrobrasがオペレー タを務めるが、BGが参画する鉱区内でこれまでに発見 した埋蔵量の合計は 60 億 boe(BG Group権益保有分と して)になるとのことだ。 これらの油田は既に生産を開始しているものもある が、計画中のものも全て含めた生産量合計(グロス)は 260 万 boe/dと見込まれ、BG Groupにとって生産量拡 0 10 20 30 40 50 60 70 80 2004 万boe/d 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 年 天然ガス 石油・液体分 エジプト 18% イギリス 16% カザフスタン 15% トリニ ダード・ トバゴ 11% アメリカ 合衆国 9% タイ 6% ブラジル 6% チュニジア 6% ボリビア 6% オーストラリア 4% インド 3% ノルウェー0.3% エジプト 18% イギリス 16% カザフスタン 15% トリニ ダード・ トバゴ 11% アメリカ 合衆国 9% タイ 6% ブラジル 6% チュニジア 6% ボリビア 6% オーストラリア 4% インド 3% ノルウェー0.3% 図5 BG Group の生産量推移 図6 (2013 年)BG Group の生産量の国別割合 図7 (2014 年見込み)BG Group の LNG 供給源と供給先割合 出所:BG Group Annual Report を基に JOGMEC 作成 出所:BG Group Annual Report を基に JOGMEC 作成
大に大きく寄与しよう。 また、新たに獲得したBarreirinhas Basinの鉱区など、 今後の探鉱への期待も大きく、BG Groupにとってさら なる埋蔵量・生産量の拡大につながるポテンシャルを大 きく秘めた地域である。 〈活動経緯〉 2000年 Santos Basinの3鉱区を獲得 2006年 BM-S-11鉱区Lula(Tupi)で石油・ガスを 発見(可採埋蔵量83億バレル) 2008年 BM-S-9鉱区Sapinhoa(Guara)で石油発見 (可採埋蔵量21億バレル) BM-S-11鉱区Iaraで石油発見(周辺鉱区を 合わせて可採埋蔵量50億バレル以上) 2010年 Lula油田で生産開始 2013年 Sapinhoa油田で生産開始 Barreirinhas Basinで10鉱区を獲得 ②タンザニアでの探鉱活動とLNG計画 BG Groupは 2010 年にタンザニア洋上 Block1、3、4 の3鉱区(図9)に参加(2011年からオペレータ。現在の 権益比率は60%)し探鉱活動中で、これまでに埋蔵量合 計として15Tcfの天然ガスを発見した。Block1、3、4は モザンビークと国境を接する同国南部の Rovuma ~ Tanzania Coastal 堆積盆に位置し、最大水深が約3,000m の大水深鉱区である。 なお、Block2はStatoilが60%を保有しオペレータ(パー トナーはExxonMobilで35%保有)を務め、Block2でも 多くの天然ガスが発見された。 BG Groupは、この天然ガスの商業化手段として、 LNGによる輸出プロジェクトを検討しているが、天然 ガス関連法規が未整備であることなどによりその作業が 滞っているので、最終投資決定は早くとも 2018 年にな るという見方も出ている。 図8 BG Group が保有するブラジルの鉱区 出所:BG Group ホームページ
〈活動経緯〉 2010年 タンザニア洋上鉱区Blocks1、3、4に参画 PwezaとChewaで天然ガス発見 2011年 Chazaで天然ガス発見 BG Groupがオペレータとなる 2012年 Jodari、MziaとPapaで天然ガス発見 2013年 Mkiziで天然ガス発見 ③LNGビジネスの拡大 事業戦略として LNGを重要な位置づけとしていると おり、LNGプロジェクトへの参画も拡大する計画であ る(表2)。 2014年12月、オーストラリア・クイーンズランド州 で進める QC LNGプロジェクトが生産を開始し、2015 年1月に第1船目の出荷を果たした。このプロジェクトは、 世界で初めての非在来型天然ガス、コールベッドメタン を原料ガスとしたLNGプロジェクトである。BG Group 表1 BG Group がブラジルで保有する鉱区 出所: 各種資料を基に JOGMEC 作成 地域 鉱区 BG Group 保有割合 パートナー 主な発見 生産開始年等 Santos Basin BM-S-9 30% Petrobras45%、Repsol
Sinopec Brasil25% Sapinhoa(Guara)、Lapa(Carioka) 2013 年 BM-S-11 25% Petrobras65%、
Petrogal Brasil10% Lula(Tupi)、Iara 2010 年 BM-S-50 20% Petrobras60%、Repsol
Sinopec Brasil20% Sagitario 評価中 Barreirinhas
Basin BAR-M-298、340 100% - 探鉱計画中 BAR-M-215、
217、252、254 75% PTTEP Brasil25% 探鉱計画中 BAR-M-300、
342、344、388 50% Petrobras40%、Petrogal Brasil 10% 探鉱計画中
図9 BG Group が保有すタンザニアの鉱区
の LNG供給ポートフォリオに組み込まれ、日本の東京 ガスや中部電力にも供給されることになっている。 また、シェールガス革命によって天然ガス輸出計画が 多数推し進められている北米地域のプロジェクトにも参 画している。アメリカ合衆国のLake Charles LNGプロ ジェクトは、既存のLNG受入基地に液化設備を建設し、 国内パイプラインガスを液化して輸出する計画で、 2019 年に生産開始の予定である。2013 年 8 月にアメリ カエネルギー省(DOE)により非FTA締結国向けの輸出 が承認されている。カナダの Prince Rupert LNGプロ ジェクトは、同国ブリティッシュコロンビア州で生産さ れる天然ガスを液化して輸出するもので、最大 2,100 万 トン/年のLNG生産を行う計画である。
2.
Statoil
(1)会社概要 Statoilは、1972 年にノルウェーの国営石油会社とし て操業を開始し、2001 年より一部民営化が行われてき たが、現在も株式の 67 %は国が保有する。ノルウェー の石油・天然ガス開発で先導的・中心的な役割を果たす 企業である。図10にStatoilの生産量推移を示す。 石油・天然ガスの探鉱・開発(探査、掘削、採掘)で高 度の技術力を有し、特に長年の経験を持つノルウェー大 陸棚における過去 5 年間の探鉱成功率は 70 %以上と、 業界平均の 49 %に比べて際立った成果を上げている。 また、同社は保有する油・ガス田の回収率目標を 60 % と掲げ、これまでの実績としても全油・ガス田平均で 45%以上である(一般的には油・ガス田の回収率は平均 して 30 ~ 40 %とされる)。この採掘技術の高さによっ て既存油・ガス田の埋蔵量を上乗せさせるなど成熟地域 の再開発も進めているが、同国政府の新規鉱区公開に伴 い、未探鉱の海域であるバレンツ海など北極圏側へも探 鉱活動を拡大させている。 近年は南米やアフリカなどの新興国を含めた世界各国 での探鉱・生産活動を拡大させ、活動地域は 30 カ国以 上にのぼる(図11)。 また、欧州地域で現在唯一の LNG輸出プロジェクト であるバレンツ海 Snøhvit LNGプロジェクトにも参画 し、2007年からLNGの生産を開始している。 表2 BG Group が出資する LNG プロジェクト 出所: 各種資料を基に JOGMEC 作成 国 プロジェクト名 (万トン / 年) 生産開始年液化能力 出資者トリニダード・トバゴ Atlantic LNG Train 1 310 1999 BP 34%、BG 26%、Shell 20%、 CIC 10%、NGC 10%
Train 2 330 2002 BP 42.5%、BG 32.5%、Shell 25% Train 3 330 2003 〃
Train 4 520 2005 BP 37.78 %、BG 28.89 %、Shell 22.22%、NGC 11.11%
エジプト ELNG Train 1 360 2005 BG 35.5%、Petronas 35.5%、 EGAS 12%、EGPC 12%、GdF Suez 5%
Train 2 360 2005 BG 38 %、Petronas 38 %、EGAS 12%、EGPC 12%
Train 3 N.A. 計画中 BG、RWE
オーストラリア QC LNG Train 1 425 2014 BG 50%、CNOOC 50% Train 2 425 2014 BG 97.5%、東京ガス 2.5% アメリカ Lake Charles 約 1,500 2019 BG、Southern Union Company カナダ Prince Rupert LNG Train 1、2 1,400 2019 BG
Train 3 700 計画中 BG タンザニア Tanzania LNG N.A. 計画中 BG
(2)ノルウェーの石油・ガス産業における絶対的な地位 全社生産量の約7割はノルウェー国内での生産(図12)。 また、ノルウェー 1 国としての石油・ガス生産量の約 4 割は同社が占める。同国大陸棚(ノルウェー領北海、ノ ルウェー海、バレンツ海)では約40のフィールド開発の オペレータを務め、その他にも多くの保有鉱区でオペ レータとして探鉱活動を進めている。 ノルウェーの石油・天然ガス開発の中心は洋上で、ノ ルウェー領北海、ノルウェー海、バレンツ海の3地域に 大別される。ノルウェー領北海は英領北海と同じく成熟 化 が 進 ん だ 地 域 と さ れ る が、2007 年 に Lundin Petroleumが Edvard Grieg油・ガス田を発見したこと で同地域の探鉱対象に新たな地層・構造が加わった。特 にノルウェー領北海中心部の Utsira High構造と呼ばれ る堆積盆は多くの関心を集める地域である。Statoilは、 2010 年に同地域で埋蔵量 18 億~ 29 億バレルとされる 巨大油田 Johan Sverdrup油田を発見し、現在開発計画 の策定を進めている。一方、ノルウェー海、バレンツ海 といった北方の海域は未探鉱の地域も多く、今後の探鉱 が期待されるフロンティア地域とされる。Statoilもこれ 図11 Statoil の上流事業活動地域 出所:Statoil ホームページ等を基に JOGMEC 作成 図10 Statoil の生産量推移 図12(2013 年)Statoil の生産量の国・地域別割合 出所:Statoil Annual Report を基に JOGMEC 作成 出所:Statoil Annual Report を基に JOGMEC 作成
万boe/d 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013年 天然ガス 石油・液体分 2000 0 4000 Km ノルウェー 71% 南北アメリカ 14% アフリカ 11% ユーラシア(ノルウェー以外) 4% ノルウェー 71% 南北アメリカ 14% アフリカ 11% ユーラシア(ノルウェー以外) 4%
ら海域での探鉱・開発活動に積極的に参画、2011 年に はバレンツ海 Skrugardで石油を発見し、現在 Johan Castbergプロジェクトとしてこれも開発計画の検討が 進められている。 ①ノルウェー領北海Johan Sverdrupプロジェクト 現在 Statoilが国内で最も重要視しているプロジェク トである。Johan Sverdrup油田は 2010 年に発見され、 ノルウェー領北海で発見された油田でも最も大きな発見 の 一 つ と さ れ る。 ラ イ セ ン ス PL501 と ラ イ セ ン ス PL265の両鉱区にまたがる巨大油田である(図13)。現 在、開発計画を策定中だが、その石油埋蔵量は現段階で 18億~ 29億バレルと評価され、ピーク時の生産量は55 万~ 65 万 b/dと見込まれる。これは現在のノルウェー の石油生産量の 4 分の 1 にあたる量だ。Johan Sverdrup 油田の生産開始は、現在 2019 年を予定している。同油 田開発への投資額は、初期フェーズで 150 億~ 180 億 ドル、完全開発には 250 億~ 320 億ドルになると見積 もられている。 2014 年後半からの油価下落により、北海地域の各石 油プロジェクトの採算性が疑問視されるなか、Johan Sverdrupプロジェクトの開発・生産の損益分岐点とな る原油価格は 40 ドル /バレル以下とされるが、2015 年 1月時点(原油価格=45 ~ 50ドル/バレル)においても 開発は予定どおり進めると見られている。 図13 Johan Sverdrup 油田の位置
②バレンツ海での探鉱活動とJohanCastbergプロジェ クト バレンツ海は北極圏に含まれ、気象・海象が厳しく、 技術的に開発が困難とされる。その探鉱・開発活動は約 30 年の歴史を持っているとはいえ、環境影響への考慮 やロシアとの境界問題の解決から間もないこと(2010年 に両国間で合意)などから、鉱区公開は段階的に行われ ている状態で、まだまだ未探鉱の地域も多い。Statoilは 長年の経験と高い技術力を活用し、バレンツ海での探鉱 活動も積極的に進めている。図14にバレンツ海の鉱区 図を示す。 バレンツ海中央部において、2011 年に Skrugard、 2012 年に Havis、2014 年に Drivisでそれぞれ石油を発 見し、これらは現在、合計埋蔵量 4 億~ 6 億バレルの Johan Castberg 油田開発プロジェクトとして計画が検 討されている。しかし、北極圏に近いことで環境難易度 が高い上、輸送パイプラインなどのインフラが整備され ておらず、プロジェクト自体の経済性確保のためにはさ らなる追加埋蔵量の発見が必要とも言われ、計画策定は 難航しているようだ。2014 年 6 月には、技術、コスト の両面で検討期間がさらに必要だとして、開発コンセプ ト選定時期を従来の 2014 年末から 2015 年夏場へと後 ろ倒しした。 とはいえ、Statoilはバレンツ海での探鉱活動をさらに 展開する方針で、2014年には北部Hoop地域で掘削キャ ンペーンを展開したが、これまでのところ同地域での大 きな発見はない。 (3) フロンティア領域も含めた世界で拡大させる探鉱・ 開発活動 ノルウェー領北海での生産がピークを過ぎていること もあり、国内ではバレンツ海などフロンティア地域に活 動を広げる一方、近年では積極的に海外プロジェクトへ の参画を推進している。既にStatoilはアメリカ、カナダ、 ベネズエラ、ブラジル、アンゴラ、アゼルバイジャン、 ロシア、モザンビーク、タンザニア、リビア、インド、 インドネシア、オーストラリア等 15 カ国以上で探鉱・ 生産活動を展開している。 図16 Statoil のタンザニア鉱区図 図15 Statoil のブラジル鉱区図 図14 バレンツ海鉱区図 出所:Statoil ホームページ 出所:Statoil ホームページ 出所:Statoil
長年にわたる北海での操業により、大水深域での開発・ 生産に高い技術(プレソルト開発を擁する Petrobrasと 並び世界最高峰と称される)を有し、各国海上油田の開 発に参入している。Statoilはまた、ブラジルの洋上 Campos Basin、Espirito Santo Basin、Jequitinhonha Basinの深海地域での探鉱・生産活動を展開し、一部の 鉱区ではオペレータも務めている(図15)。 また、2007年よりタンザニア洋上Block2(図16)に 参入し、オペレータ(権益保有比率65%)として活動を行っ ている(パートナーはExxonMobilで 35 %保有)。2012 ~ 2013 年 に か け て、Zafarani、Lavani、Tangawizi、 Mrongeと立て続けに天然ガスを発見し、2014 年にも PiriとGiligilianiで同じく天然ガスを発見した。これまで にStatoilがタンザニアで発見した天然ガスは原始埋蔵量 で 21Tcfと さ れ、Block1、3、4 の 開 発 を 進 め る BG Groupと共同でのLNGプラント建設も検討されているが、 BG Groupの項で述べたように、その進捗度ははかばか しくない。 なお、同じ東アフリカ地域のモザンビークにおいても 2007 年より洋上鉱区の Block2、Block5 に参入し探鉱活 動を行っていたが、探鉱結果が芳しくないことなどを理 由に2014年に撤退した。 その他、Statoilは、アメリカ合衆国のシェール資源や カナダのオイルサンドなどの非在来型資源、アラスカ チュクチ海やグリーンランドなどのフロンティア領域で の開発にも積極的に参画している。 (4)積極的な探鉱活動からの資産の選択と集中 Statoilは、ノルウェー国内での活動も含め、自らが持 つ高い技術力を活用して幅広く探鉱活動を進めながら、 発見した資源の開発においては徹底した選択と集中を 行っている。 特に北海(イギリス領、ノルウェー領ともに)での動き はその傾向が顕著だ。現在、大規模案件である Johan Sverdrupの開発に資本を集中させる必要があるのも事 実だが、小規模な資産については他企業への譲渡を積極 的に行っている。このような Statoilの企業行動は、他 の中小規模石油企業にとって、優良な上流資産を取得す るチャンスになっているとも言えよう。
3.
Eni
(1)会社概要Eni(Ente Nazionale Idrocarburi:イタリア炭化水素 公社)は、ムッソリーニ政権によるイタリア国内石油産 業の強化策に基づき、1926 年にイタリア政府が 60 % 出資して設立された AGIP(Azienda Generale Italiana Petroli:イタリア石油公団)を主体に、同じくムッソリー ニ政権により設立されたその他の炭化水素関係国策会社 を再編して 1953 年に設立された石油企業である。設立 当初はイタリア政府が株式を 100 %所有する国営企業 であったが、1995 年以降、順次、政府保有株式の売却 が行われ、2004 年末の時点で政府保有株式は、(間接 に所有する株式を含めて)30 %まで減少している。た だし、イタリア政府は合併等、Eni の経営の重要事項に 対する拒否権を保有する“黄金株”を所有しているので、 その経営は依然、イタリア政府の強い影響力の下にある。 現在の Eni は、石油の上流、下流事業の展開だけに とどまらず、エンジニアリング、石油化学、発電事業ま で手掛ける石油メジャーの1社であり、これら多部門に わたる事業を連携させながら、世界 7 大陸、約 70 カ国 で活動を広げている。LNGについても、ナイジェリア やエジプトをはじめとする世界各地の液化プロジェクト に出資している他、欧州各地で受入基地の使用権も保有 する。なお、先ごろロシアが建設計画の中止を発表した 天然ガスパイプライン「サウスストリーム」に参画してい た1社でもある。このプロジェクトで保有していた権益 20 %は計画中止発表後の 2014 年 12 月末に Gazpromに 売却することで合意した。 Eniの売上高の各事業部門別割合を図 17 に、石油・ 天然ガス生産量の推移を図18に、上流事業の活動地域 を図19に示す。 (2)アフリカへの焦点とカントリーリスクの影響 生産量の約半分をアフリカ地域が占めているように(図20)、 Eniはアフリカ地域をコアエリアとしており、積極的な 探鉱・開発活動を行ってきている。 Eniのアフリカでの活動は 1954 年のエジプトへの参 入から始まった。その後、リビア、チュニジアなど北ア フリカ地域、およびナイジェリア等へ参入し、2000 年
代以降はモザンビーク、ケニア、ガーナなどサブサハラ 地域へと活動地域を広げている。 Eniのアフリカ地域での生産量推移を図 21 に示す。 リビア、エジプト、アルジェリア、アンゴラでの生産を 順調に伸ばし、2000 ~ 2010 年までの 10 年間でアフリ カでの生産量は約2倍となった。 しかし、2011 ~ 2013 年にかけては、特に石油の生 産量が減少または伸び悩みの状態となった。これは主に リビア、ナイジェリア、アルジェリアでの内政混乱、治 安悪化に伴う生産停止の影響を受けた形だ。 Eniは従来、「コストが低く資源埋蔵が有望な新興地 域での探鉱を重視し、リスクをマネジメントしながら ポートフォリオの拡大・多様化を進める」との戦略をとっ てきたが、近年まさにそれらリスクが顕在化した格好で ある。現状、この戦略を大きく変えるという情報は聞か ないものの、ここ数年のこれらアフリカ諸国の政治的混 乱に伴う売り上げへの悪影響から、その活動方針が転換 を迫られる可能性もある。 一方、最近のアフリカ地域での活動では、探鉱で大成 功を収め、大きな期待をかけて開発を計画している地域 E&P 23% ガス・電力販売 23% 石油精製・販売 41% 化学製品 4% エンジニアリング 8% その他1% E&P 23% ガス・電力販売 23% 石油精製・販売 41% 化学品 4% エンジニアリング 8% その他1% 万boe/d 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013年 天然ガス 石油・液体分 2000 0 4000 Km 図19 Eni の上流事業活動地域
出所:Eni Annuarl Report 等を基に JOGMEC 作成
図17(2013 年)Eni の売上高の事業部門別割合 図18 Eni の生産量推移
がモザンビークである。 < モザンビークArea4における大規模ガス田発見と開発 計画> Eniは、2006年にモザンビーク洋上のArea4鉱区(図22) を取得し、同国に参入した。Area4 鉱区は最大水深約 2,600mの大水深鉱区で、Eniはオペレータとして 60 % の権益を保有する。同鉱区のパートナーはENH(モザン ビーク国営炭化水素公社。保有比率 10 %)、Galp(同 10%)、Kogas(同10%)の3社である。 2011年にArea4のMamba South-1で最初にガス層を 発見し、その後の評価で、原始埋蔵量は80Tcfとされて いる。ただし、このうちの48Tcfのガスは、Area4に隣 接するArea1にまたがって賦存していることも判明して いるので(Area1 では 2010 年にガス層が発見されてい る)、Eniと Area1 のオペレータを務める Anadarkoは、 両鉱区にまたがるガス資源について統合して開発するこ とを協議中だ。 並行して、EniはArea 4に独立して賦存する天然ガス を LNGとして開発・輸出するプロジェクトを計画、液 化設備としてFLNG(浮体式液化設備)を採用することを 検 討 し て い る。 こ ち ら は 現 在 FEEDを 行 っ て お り、 2015年中に最終投資決定すると見られる。 また、モザンビーク政府は国の発展に寄与する天然ガ スの開発に前向きで、2014 年 8 月には新石油法が成立 した。天然ガスの開発に関する法律、税制などの枠組み が整ったことでモザンビークのLNG事業は前進を見せ、 Eniは2019年の生産開始を目指している。 図20(2013 年)Eni の 生 産 量 の 地 域 別 割 合 図21 Eni のアフリカにおける生産量推移
出所:Eni Annual Report を基に JOGMEC 作成 出所:Eni Annual Report を基に JOGMEC 作成
欧州 21% アフリカ 54% アジア 15% 南北アメリカ 8% オセアニア 2% 欧州 21% アフリカ 54% アジア 15% 南北アメリカ 8% オセアニア 2% 万boe/d 年 0 20 40 60 80 100 120 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 天然ガス 石油・液体分 図22 Eni のモザンビーク鉱区図 出所:Eni
(3)今後の戦略 Eniは、生産量を年率3%増加させ2017年までに50万 boe/d上乗せする構えだ。探鉱活動を長期的な成長を支 える柱と位置づけ、アフリカをはじめとした地域での開 発を重点的に取り組む姿勢を鮮明にし、アンゴラやコン ゴ、ケニア、ガーナなどで開発・生産を進める計画である。 一方、ポートフォリオの多様化は継続され、欧州地域(ノ ルウェー、イギリス、イタリア)やアジア地域(カザフス タン、インドネシア)でも活動していく計画である。 また、2014 年後半からの原油価格下落への対応とし ては、会社全体としてコストを10 ~ 15%削減するとは いえ、コアビジネスである上流事業に集約させ、アフリ カで計画されているプロジェクトについては推進する方 針である。 (1)会社概要 Repsolは、スペインの石油部門の再編に伴い、1987 年 に 国 立 炭 化 水 素 院 INH (Instituto Nacional de Hidrocarburos)により国営の統合型石油・ガス企業とし て設立された。その後、1989 年に民営化が開始され、 1997 年に完了した。1999 年にアルゼンチンの YPFを 買収して Repsol YPFと社名変更したが、その後 2012 年にアルゼンチン政府が YPFを接収したことから、再 び社名をRepsolに戻している。 Repsolの事業は上流(探鉱・開発)、下流(精製・販売等)、 LNGの3部門に分類される。そのうち、LNGについては、 操業効率と利益を最大化するという方針の下、ペルーと トリニダード・トバゴのLNG関連資産をShellに売却する など、2014年1月までにほとんどのLNG関連資産の売却 を完了させた。現在、LNGに関連する保有資産は北アメ リカとアンゴラにあるのみとなっている。 また、Repsolは、スペイン最大のエネル ギー・ユーティリティ企業 Gas Natural Fenosaの株式の30%を保有する。 現在、上流事業から下流事業までを含 め世界 50 カ国以上で事業を展開し、特 に中南米では圧倒的なプレゼンスを見せ ている。探鉱・生産活動は、トリニダー ド・トバゴ、ペルー、ベネズエラ、ボリ ビア、コロンビア、エクアドルなど中南 米と、アルジェリア、リビアなど北アフ リカを主要活動地域としているが、近年、 北米およびロシアなど新たな地域へも活 動地域を広げている。 図 23 に Repsolの生産量推移、図 24 に上流事業活動地域を示す。 (2)南米でのプレゼンス Repsolの国・地域別生産割合を図25に示す。生産量 の 4 分の 3 を南米地域が占めているように、下流部門に おける石油製品の販売も含め、Repsolは南米で圧倒的 な存在感を示している。 最大の生産量を占めるトリニダード・トバゴには1995 年から参画し、洋上鉱区(現在7鉱区に参画)の開発に大 規模な投資を行ってきた。なお、同国Atlantic LNGプロ ジェクトにも参画していたが、2014年にShellに売却し、 現在は上流事業に特化した活動が中心となっている。 ペ ル ー で は、 探 鉱・ 生 産 お よ び 石 油 精 製、Gas Natural Fenosaを通じての小売販売を行っている。ペ ルーにおいてもPeru LNGプロジェクトに参画していた が、これも2014年にShellに売却した。 ベネズエラでは7鉱区の権益を保有。現在、重点的に
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Repsol
図23 Repsol の生産量推移出所:Repsol Annual Report を基に JOGMEC 作成
万boe/d 0 10 20 30 40 50 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 年 天然ガス 石油・液体分
進めている開発として、Perlaガス田の開発とCarabobo 重質油田開発があるが、油価の下落とベネズエラ国内の 経済状況が悪化していることもあり、進捗は芳しくない。 ①ベネズエラPerlaガス田開発 2009 年、Repsolと Eniは、 ベ ネ ズ エ ラ 湾 洋 上 の Cardon IV鉱区(図26)でPerlaガス田を発見した。同 ガス田の原始埋蔵量は 16Tcfとされる。Perlaガス田で 生産されるガスを液化して輸出する計画もあったが、 2011年に政府が全てのLNG輸出プロジェクトを凍結す ることを決定、国内パイプライン向けに供給される見通 しだ。なお、生産開始は 2014 年末の予定だったが、ま だ開始したとの情報はない。 ② ベネズエラ Caraboboプロジェクト(オリノコ重質油 プロジェクト) Caraboboプロジェクト(図27)は、同国オリノコベル トに埋蔵される超重質油の開発プロジェクトで、40年間 にわたって40万b/dの原油を生産する大プロジェクトで ある。既に初期生産は開始したが、インフラや投資不足 図24 Repsol の上流事業活動地域 出所:Repsol ホームページ等を基に JOGMEC 作成 ブラジル 3% ペルー 9% トリニダード・トバゴ 39% ベネズエラ 10% 他南米 14% 欧州 2% 北米 9% アフリカ 10% アジア 4% ※南米合 75% ブラジル 3% ペルー 9% トリニダード・トバゴ 39% ベネズエラ 10% 他南米 14% 欧州 2% 北米 9% アフリカ 10% アジア 4% ※南米計 75% 図25(2013 年)Repsol の生産量の国・地域別割合 図26 ベネズエラ Perla ガス田鉱区図
から、その後の生産量は伸び悩んでい る。また、2014 年後半からの油価下 落によりオペレータである国有石油企 業 PDVSAも財務状況が厳しく、プロ ジェクトは停滞気味である。さらに、 ベネズエラ政府としても石油政策の再 考を迫られる可能性があり、今後の進 展についても疑問視する向きもある。 (3) 探鉱重視の成長戦略・油価下落状 況下での資産拡大を狙う Repsolは、2012 ~ 2016 年 の 経 営 戦略で、総投資額の77%にあたる147 億ドルを石油・天然ガスの探鉱・開発 に充当するとしている。これにより、 埋蔵量を2億~ 2億5,000万boe追加(現 状実績:2011 年末埋蔵量 11 億 6,700 万 boe→ 2013 年末埋蔵量 15 億 1,500 万boe)、生産量は年率7 %で増加させ 50万boe/dに到達させる見込みである。 2015年の重点探鉱・開発地域としては、アンゴラ、ア ルジェリア、コロンビア、ブラジル、リビア、アメリカ、 ロシア、ルーマニア、ペルー、カナダが挙げられている。 一方、Atlantic LNGと Peru LNGの売却が完了した 2014 年以降、LNG事業への投資は行わない予定で、 Repsolにとって現状、LNGは中核事業ではない。 また、油価下落が有利に働く中流・下流事業を展開し、 保有するキャッシュも豊富な Repsolは、今般の油価下 落を資産取得のチャンスだと捉えている。上流資産の取 得だけでなく石油企業自体の買収についても機会を伺っ ているところだ。 実際、大規模な資産取得の動きとして、2014年12月 に Repsolは、カナダの Talisman Energyを 83 億ドルで 買収することで合意したと発表した。これにより、 Talisman Energyが保有する各国の上流資産(アメリカ 合衆国、カナダ、インドネシア、マレーシア、コロンビ ア、など)を獲得することとなり、これらを合計すると Repsolの生産量はほぼ倍増、そして特に北米大陸(カナ ダ、アメリカ合衆国)でのプレゼンスをさらに大きくさ せることとなろう。 (1)会社概要 Wintershallは、1884 年に掘削会社として設立された のを起源とするドイツ最大の石油・ガス生産企業である。 1969 年に同国の化学会社 BASFの子会社となり、現在 も BASFグループの1 社として、石油・ガスの生産部門 を担っている(BASFの100 %子会社なので、決算報告 はBASFグループの1部門として会計される)。 事業の中心は石油・ガスの開発・生産だが、Gazprom との合弁企業 WINGASを通じて、ドイツ、イギリス、 ベルギー、フランス、オーストリア、デンマーク、オラ ンダ、チェコなどの欧州地域で天然ガスを販売している。 図28にWintershallの生産量推移を示す。 (2) Gazpromとのパートナーシップとドイツ国内で 培った技術を基盤とする活動戦略 図 29 に Wintershallが探鉱・生産活動を行っている 地域を示す。 ドイツ国内最大の油田である北海 Mittelplate油田の
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Wintershall
図27 ベネズエラ Carabobo プロジェクト鉱区図 出所:Repsol権益 50 %を保有。また、ノルウェー、ロシアについて も重要な資産ポートフォリオの一部として組み込んでい る。Gazpromとのパートナーシップを重視し、ロシア Yuzhno Russkoyeガス田の権益 35 %を保有し同国での ガス生産を拡大している。 ドイツ国内の油・ガス田開発が 同社の技術力の基盤で、国内生産 により培った EOR(石油増進回 収)技術やサワーガス(H2SやCO2 を多く含むガス)の生産技術、タ イトガス採掘技術を海外のフィー ルドに適用することで国際的なプ レゼンスの増大につなげるとして いる。アルゼンチンでは15の油・ ガス田の権益を保有するが、以上 の技術を活用し非在来型資源の開 発についても検討を進めている。 また、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビではADNOC (Abu Dhabi National Oil Company)と協力体制を敷き、
Shuweihatサワーガス田開発プロジェクトを進めようと している。
ま
とめ
今回取り上げた企業は、いずれも欧州を代表する石 油上流企業であり、スーパーメジャーではないが、メ ジャー企業の一角もしくは準メジャー企業という位置 づけである。 図28 Wintershall の生産量推移出所:BASF Annual Report を基に JOGMEC 作成
万boe/d 0 10 20 30 40 50 2009 2010 2011 2012 2013 年 石油・天然ガス計 天然ガス 石油・液体分 2000 0 4000 Km 図29 Wintershall の活動地域 出所:Wintershall ホームページ等を基に JOGMEC 作成
各企業ともに強みとする地域・領域を持ち、これを基 盤として世界横断的な事業拡大と業界でのプレゼンス増 大を図っていると言える。BG GroupはLNGとその供給 ポートフォリオを生かしたトレーディングビジネス、 Statoilはノルウェー大陸棚での圧倒的な存在感とそこで 培った探鉱・生産の技術力、Eniは中下流事業とエンジ ニアリング事業をシナジー(synergy:相乗)させた国 際展開とアフリカ大陸での新規探鉱、Repsolは上流~ 下流までを包括する南米での圧倒的なプレゼンス、 Wintershallはロシアとの協力体制と国内生産を基盤と する技術力といった具合である。 また、各社共通していることは、実績のある成熟地域 での活動だけでなく、技術的・環境的・政治的といった 各リスクを内在させながらも大規模な資源埋蔵の可能性 を持つ新規フロンティアに積極的に参加していることで ある。 もちろん、リスクをはらんだ新規フロンティアに展開 していくためには、これを支える資本基盤と経験、そし てリスク管理能力が必要となる。したがって、他企業が これを模倣することは困難である。逆に、中小石油企業 にとっては、このような強みを持つ企業とのアライアン ス(alliance:連携)構築または取引等による関係性の強 化を図っていくことで、新規フロンティアへの参入の足 掛かりとし、将来に向けた成長と事業拡大を目指すこと もできるのではないだろうか。 執筆者紹介 永井 一聡(ながい かずあき) 東京大学大学院工学系研究科修了。 2002年、東京ガス株式会社入社後、主にLNG受入基地の操業管理、プロセスエンジニアリング業務等に従事。 2013年4月より現職。 趣味は毎週末興じる野球。最近のマイブームは、自動車に七輪を積んでドライブに出かけ、漁港等で調達した食 材を浜焼きで食べること。