Ⅰ. はじめに
製品価格とマーケティングコミュニケーショ ンは,どのように互いに影響し合い,消費者行 動を決定づけるだろうか。本研究は,製品の相 対価格,つまり,そのカテゴリーの参照価格に 対する製品価格が,製品関連のコミュニケー ションの具体性または抽象性に対する消費者の 反応にどう影響するかを検証する。
本研究は,製品価格がある参照の文脈で高い または低いと知覚される程度は消費者の考え方 に影響を及ぼすと提案する。例えば,相対的 高価格は消費者に心理的距離を遠く感じさせ, 抽象的,目標関連的,望ましさ関連的なもの を表す高次解釈レベル(Trope and Liberman 2003)と適合する。相対価格によって引き起こ される考え方(心理的距離:遠い/近い)と製 品コミュニケーションの解釈レベル(抽象的 / 具体的記述語)との適合は,製品コミュニケー
製品の相対価格と
効果的製品コミュニケーションの設計
Allard, Thomas, and Dale Grifin (2017),“Comparative Price and the Design of Effective Product Communications,”
Journal of Marketing Vol.81(September), 16-29.
要約
本研究は,製品の相対価格を製品コミュニケーションの解釈レベルと関連させるモデルを提案し,相 対価格がマーケティングコミュニケーションの言葉遣いに対する消費者反応をどのように決定づけるか を示す。6 つの実験により,製品カテゴリーの絶対価格の高低にかかわらず,相対価格の高い(低い)製 品は高次(低次)解釈レベルのメッセージを伴った時に好ましいと示される。それは,相対価格によっ て引き起こされる心理的距離と解釈レベルとの適合がもたらす概念的流暢さのためである。本研究のモ デルは,効果的なマーケティングコミュニケーションの設計に新たなインプリケーションを与える。具 体的には,低価格製品の相対的に高価なバージョン(例えば , 値段の高いチョコレートトリュフ)はよ り抽象的スローガンで販売促進したほうが望ましいが,高価格製品の相対的に安価なバージョン(例えば , 値段の安いダイヤモンドペンダント)は,より具体的スローガンで販売促進したほうが望ましい。製品 の相対価格とそれに適合する解釈レベルとのつながりを分析することにより,本研究はマーケティング における価格と製品コミュニケーションの相互作用に重要な見解を与える。
キーワード
相対価格,解釈レベル,心理的距離,広告
早稲田大学大学院 商学研究科 博士後期課程
ションの情報をより流暢に処理させるから,最 終にポジティブな態度と購買意図につながる。 さらに,相対価格の適合効果は,絶対価格の幅 広いレベルで有効だと示される。
消費者の購買意思決定を理解することについ ては,本研究は2つの点で貢献をする。具体的 には,①絶対価格に関係なく,製品の相対価 格の高低が心理的距離(Trope, Liberman, and Wakslak 2007)の変化を引き起こせることを 説明し,価格が消費者の意思決定に与える影響 のメカニズムを明らかにする。②製品の相対価 格と解釈レベルとの適合効果という新たなタイ プを解明し,そしてこの適合効果が製品カテ ゴリー関与(例えば,Zaichkowsky 1985)と 認知的努力(認知欲求[NFC]で評価される ; Cacioppo and Petty 1982 ; Cacioppo, Petty, and Feng Kao 1984)によって調整されること を測定し,この効果のヒューリスティックな特 性を証明する。
Ⅱ. 理論的フレームワーク
1. 心理的距離と精神的表象
解釈レベル理論(Trope et al. 2007)は,人 が消費財などの対象に対して感じる心理的距 離(例えば,時間的,空間的,社会的距離; Trope and Liberman 2003)の遠近によって, その対象を精神的に異なるレベルの具体性で表 すことを示す。心理的距離が遠い場合,解釈レ ベルは高次となり,製品に対して抽象的,中心 的または望ましさ関連的な記述語の使用は特徴 だが,心理的距離が近い場合,製品に対する解 釈レベルは低次となり,より具体的,周辺的ま たは実現可能性関連的な特性がある。
2. 価格関連の手掛かり,心理的距離と解釈レベル 本研究は,相対価格が心理的距離に与える影 響と,それが製品コミュニケーションの情報処 理に与える影響と,情報処理が消費者の態度, 意図,購買行動に与える影響に焦点を当ててい
る。本研究の概念的モデルは図−1に示される。
先行研究は,ラグジュアリー製品が高次解釈 レベルのコミュニケーションによって説明され るのはより普遍的であることを示した(Hansen and Wänke 2011,Hansen et al. 2013)。しかし, 本研究は,「適合」は製品の絶対価格に関係せ ず,相対価格と製品コミュニケーションの解釈 レベルとの一致を意味すると考える。価格の推 論は,ある比較の文脈で価格の評価から起こる ため,価格の高低は本来主観的なものである(例 えば,Monroe, Della Bitta, and Downey 1977 ; Slonim and Garbarino 1999)。また,特定の価 格の手がかりは,一般的なマネープライムと反 対の効果を持ち,低レベルの具体的表象につな がる可能性がある(Hansen et al. 2013)。その ため,消費者の製品価格に対する解釈は,他の 製品の価格との比較により起こるから,相対価 格の高低に対応していくと考える(モデルの第 1段階参照)。したがって,次の仮説が導かれる。
H1:相対価格のレベルとマーケティングメッ
セージの解釈レベルとを一致させる(例えば, 相対的低価格と低次解釈レベル,相対的高価格 と高次解釈レベルの組み合わせ)のは,不一致 の場合よりも消費者選好にポジティブな影響を 及ぼす。
の製品を評価する際に経験した流暢さの程 度によって影響されると示された(例えば, Novemsky et al. 2007 ; Tsai and McGill 2011)。 情報は,その文脈との概念的適合によって 流暢に処理されることができる(Alter and Oppenheimer 2009)。このような適合効果はブ ランド評価(Labroo and Lee 2006),製品選択 (Hong and Lee 2008),説得力と消費者の評価 (Kim and John 2008 ; Kim et al. 2009 ; White
et al. 2011)に影響を与えることができる。 本研究は,製品の相対価格がマーケティング コミュニケーションの解釈レベルに適合する際 に,その概念的適合は流暢さのポジティブな経 験を生じさせると予測する(モデルの段階2参 照)。消費者は,そのような適合経験をマーケ ティングメッセージの品質に当てはめ,製品や そのメッセージに対してよりポジティブな評価 をすることができる(例えば,Avnet, Laufer, and Higgins 2012 ; Bornstein and D'Agostino 1994 ; Pham 1998)。そこで,次の仮説が導か れる。
H2:製品の相対価格のレベルを製品メッセー
ジの解釈レベルと一致させることが消費者選好 に与える影響は,知覚される適合によって媒介 される。
本研究のモデルは,消費者が概念的適合の経 験を関連製品に対する好みに帰することを示し ている。このような流暢さの経験の帰属に基づ く評価的推論はヒューリスティック処理を意味 する(Vessey 1991)。また,先行研究により, 情報は高いモチベーションのもとでシステマ ティックに処理されるが,低いモチベーション
のもとでヒューリスティックに処理されると示 された(例えば,Chaiken 1980 ; Darke et al. 1998)。そのため,製品カテゴリー関与が高い 場合,価格と解釈との適合に関連する流暢さの 効果は減少または排除されると考えられる。消 費者判断に関する先行研究では,高 NFC の人 はヒューリスティック処理をしにくいと示され た(Meyers-Levy and Tybout 1989)。本研究は, 適合効果によって生じるポジティブな消費者選 好は低関与と低 NFC の消費者にとってより強 く,彼らはマーケティングコミュニケーション に対してヒューリスティック処理を行う可能性 が高いと予測する。そこで,次の仮説が導かれ る。
H3a:相対価格と解釈レベルとの適合が消費者
選好に与える影響は,製品カテゴリー関与に よって調整される。その影響は低関与の人に とって強いが,高関与の人にとって弱い。
H3b:相対価格と解釈レベルとの適合が消費者
選好に与える影響は,認知欲求(NFC)によっ て調整される。その影響は低 NFC の人にとっ て強いが,高NFCの人にとって弱い。
Ⅲ. 研究概観
本研究は,マーケティングコミュニケーショ ンの解釈レベルを製品の相対価格と適合させる ことが消費者のよりポジティブな評価につなが るかどうかを検討し,6つの実験を用いて概念
的モデル(図−1)を測定する。実験 1a はモデ
実験1aの知見を再現する。実験2は,適合効果 が相対価格によって引き起こされることを検証 する。実験 3 はモデルの第 2 段階を測定し,相 対価格の高低の意識は非関連的なマーケティン グコミュニケーションに対して知覚される適 合に影響を及ぼすと検証する。実験4は,モデ ルの第 2 と第 3 段階を測定し,相対価格によっ て引き起こされる心理的距離の考え方とマー ケティングコミュニケーションの解釈レベルと の適合は概念的流暢さの経験に影響し,最終的 に消費者の選択に影響を及ぼすと示す。そして その影響が製品カテゴリー関与の低い消費者に とって最も強いことを証明する。最後に,実験 5 は,このプロセスが認知欲求の低い消費者に とって最も強いことを証明し,価格と心理的距 離と消費者判断をつながるプロセスのヒューリ
スティックな特性を一般化する。
1-1. 実験1a (1)方法
参加者と設計: 2水準被験者間要因(相対価 格:低い / 高い)と 2 水準被験者内要因(製品 説明の解釈レベル:低次/高次)の2元混合計 画の実験を行った。参加者(126 名)はキャン パス内の買い物客であった。従属変数は2種の チョコレート間の選択であり,一方は低次解釈 レベルの広告スローガンとの組み合わせだが, 他方は高次解釈レベルの広告スローガンとの組 み合わせであった。
手順:3日間にわたってキャンパス内でチョ コレートのポップアップストアを設立した。い つでも2つの異なるチョコレートオプションは
紹介され,そして店内で購入することが可能で あった。もう1つのチョコレートは比較オプショ ンとして店内で提示されたが,紹介されなかっ た。
紹介された2つのチョコレートは実験のため に注文された$1のミルクチョコレートであり, 同じ成分(ミルク 38%)と重さを持ち,同様 な半透明の封筒にパッケージされたが,一方は 硬貨の形であり,他方はワッフルの形であった。 チョコレートはサービングプレート上に並べて 提示され,1つのチョコレートのポスターで は「濃厚なミルクチョコレート」という測定可 能な内容を表す低次解釈レベルの説明が記載さ れたが,もう1つのチョコレートのポスターで は「贅沢な夢(例えば,Trope and Liberman 2003)」という抽象的食感を表す高次解釈レベ ル説明が記載された。
比較オプションのチョコレートを変更するこ とで,2つの $1 のチョコレートの相対価格を 操作した。低価格条件では,2つの $1 のチョ コレートを$10 のダークチョコレートの隣に 提示し,相対的安価に見えるようにした。高価 格条件では,2つの $1 のチョコレートを $.25 のチョコレート(Tootsie Rolls)の隣に提示し, 相対的高価に見えるようにした。消費者が来店 した時に,研究助手は事前に準備されたスクリ プトにしたがい,2つの$1 のチョコレートだ けを紹介した。価格条件,広告スローガンとチョ コレートの形との組み合わせ,チョコレートの 提示順序を1時間単位でランダムに釣り合わせ た。2つの$1のチョコレートの区別について尋 ねた消費者には,両方ともミルクチョコレート で作られたが,異なる市場に出されると説明し た。2つの$1のチョコレートの代わりに,比較
オプションのチョコレートを購入した消費者は 合計4人であり(1 人は $.25 のチョコレートを 購入し,3人は$10のチョコレートを購入した), 彼らのデータを今回の分析から取り除いた。
(2)結果
製品選択:相対的高価格の条件では,大多数 の参加者は高次解釈レベルの広告スローガンで 宣伝された $1 のチョコレートを好んだ(70% [49/70])が,相対的低価格の条件では,大多 数の参加者は低次解釈レベルの広告スローガン で宣伝された$1のチョコレートを好んだ(56% [29/52] ;
x
2=8.19, p<.01 ; Cohen's d=.54)。よっ て,本研究の主要仮説は支持された。補足分 析では,これらの比率は単にランダムな選択 (50%)よりも高い(片側検定 ; 相対的高価格 の条件 : t(121)=4.51, p<.001 ; 相対的低価格 の条件 : t(121)=1.35, p=.09)と証明された。 また,チョコレートの形は実験結果に影響され ないと示された(F<1)。(3)議論
実験 1a の結果は,消費者選好が製品コミュ ニケーションの解釈レベルと相対価格との適合 によって高まることを証明する。このような適 合効果は,ラグジュアリー製品に限らなく低価 格製品の場合にも生じることができる。また, 製品価格が一定に保たれても,適合効果は相対 価格の操作によって引き起こされることが可能 である。次の実験では,絶対価格の高いレベル (>$1,000)でこの効果の頑健性を検証する。
参加者と設計:280 人は被験者間要因(相対 価格:低い/高い)と被験者内要因(製品説明 の解釈レベル:低次/高次)の2元混合計画の 実験に参加した。従属変数は2つのダイヤモン ド間の選択であり,一方は低次解釈レベルのス ローガンとペアになり,他方は高次解釈レベル のスローガンとペアになった。
手順:キャンパス内の博物館の入り口で,2 名の研究助手は来館の人にアンケートを配布 し,彼らにとって親しい人のためのギフトとし てダイヤモンドペンダントを購入すると想像す るよう伝えた。参加者にプリンセスカットのホ ワイトダイヤモンドペンダントの写真を提示 し,それは彼らが検討しているペンダントのモ デルだと示した。価格条件によって,そのペ ンダントの値段($1,299)は店内で最も高いま たは安いと伝えた。価格条件を3日間にわたっ て 6 つの 2.5 時間単位でランダムに釣り合わせ た(11A.M.から 4P.M.まで)。参加者には,その
ダイヤモンドペンダントが2つの異なるブラン ドから購入でき,それぞれが同じ品質を持ち, 異なるブランドスローガンを伴っていると伝え た。提示順序はランダムであり,1 つのスロー ガンの特徴はダイヤモンドの客観的特性(「完 璧な質と純粋な色」)を表す低レベルの解釈だ が,もう1つのスローガンの特徴はダイヤモン ドの象徴的意味(「忘れられないものにする」) を表す高レベルの解釈であった。その後に,参 加者にそのうちから好きなペンダントを選択し てもらった。
(2)結果
製品選択:大多数の消費者は,相対的高価 格の条件では高次解釈レベルのスローガン付
きのダイヤモンドペンダントを選好した(57% [92/160])が,相対的低価格の条件では低次解 釈レベルのスローガン付きのダイヤモンドペ ンダントを選好した(55%[66/120] ;
x
2=4.29, p<.05 ; Cohen's d=.25)。補足分析により,こ れらの比率は相対的高価格の条件(t(279) =2.51, p<.01)と相対的低価格の条件(t(279) =1.67, p<.05)両方においても統計的に有意で あった(片側検定)。(3)議論
実験1bは,絶対価格の代わりに,相対価格 が価格—解釈の適合効果を生じさせることに対 してさらなる支持を提供する。その後の実験で は,その効果のメカニズムや境界条件について さらに検証していく。
2. 実験2 (1)方法
参加者と設計:相対価格2種類(低い/高い) ×変動源 2 種類(対象製品の価格 / 比較製品の 価格)× 広告スローガンの解釈レベル 2 種類 (低次/高次)の被験者間計画の実験を行った。
Amazon Mechanical Turk(MTurk) か ら 募 集された参加者 325 名(内 39% が女性 ; 平均年 齢 32.2 歳)は実験 2 に参加した。従属変数は製 品評価であった。
ギーバーの価格は $1.99 だが,彼らが検討して いたエネルギーバーは平均価格より安く($1.49 ;相対的低価格条件),または平均価格より高く ($2.49 ; 相対的高価格条件)販売されていると 伝えた。比較製品の価格変動の条件では,参加 者には,彼らが検討していたエネルギーバーの 価格は $1.99 だが,ほとんどのエネルギーバー は$1.49で販売され(相対的高価格条件),また は$2.49で販売されている(相対的低価格条件) と伝えた。次に,参加者にはエネルギーバーの 広告①「炭水化物とタンパク質のバンランスが とれた源泉」(低次解釈レベルの条件 ; 具体的 製品説明にフォーカスされる)と広告②「安定 して長持ちする忍耐力」(高次解釈レベルの条 件 ;抽象的製品ベネフィットにフォーカスされ る)のうちの一つを見せた。その後に,参加者 にエネルギーバーについて評価してもらった(3 バイポーラ項目10点尺度;例えば,「このエネ
ルギーバーは魅力的に見えない/見える」,「...ま
ずそうに見える / おいしそうに見える」,「... 満 足できない/満足できる」 ;
α
=.90 ; Godin et al. [2010]参照)。(2)結果と議論
分散分析の結果により,相対価格と解釈レベ ルの 1 次の交互作用が有意であり(F(1,317) =9.65, p<.01 ; Cohen's d=.35),主要仮説は支持 された。その交互作用は価格の変動源によって 調整されなく(2 次の交互作用 , F<1),対象製 品の価格変動の条件(図−2, Panel A)と比較 製品の価格変動の条件(図−2, Panel B)との間 に効果の大きさに有意差は見られなかった。単 純効果により,価格変動源を問わず,相対的に 安いエネルギーバーは高次解釈レベルのスロー ガン(M=4.55, SD=1.53)よりも低次解釈レベ ルのスローガン(M=5.02, SD=1.44)と一緒に
表現された時に,よりポジティブに評価された (F(1,317)=4.36, p<.05)。一方,相対的に高 いエネルギーバーは低次解釈レベル(M=4.33, SD=1.41)よりも高次解釈レベルのスローガン (M=4.83, SD=1.21)と一緒に表現された時によ
り好評された(F(1,317)=5.31, p<.05)。 実験2の結果によって本研究の主要仮説は支 持された。適合効果は対象製品の価格が一定に 保たれ,比較製品の価格のみが変更された場合 にも生じることができると示された。
3. 実験3 (1)方法
参加者と設計:2(相対価格:低い/高い)×2(広
告スローガンの解釈レベル:低次/高次)の被 験者間計画の実験を行った。大学の実験参加者 プールから 195 名の参加者を募集した(内 67% が女性 ; 平均年齢 20.3 歳)。従属変数は製品の 広告スローガンに対して知覚される適合であっ
た。
(具体的行動にフォーカスする低次解釈レベル の広告スローガン),または「自由に流れるア イディアのために」(抽象的結果にフォーカス する高次解釈レベルの広告スローガン)であっ た。知覚される流暢さを測定するため,参加者 には製品とスローガンの適合を2項目 10 点尺 度で評価してもらった(例えば,「このスロー ガンは製品によく合う」 ;1=非常に賛成しない, 10=非常に賛成する ;
α
低次解釈=.90,α
高次解釈=.89)。(2)結果と議論
相対価格:結果により,参加者は相対的低 価格の条件(M=2.75, SD=1.40)よりも,相対 的高価格条件(M=4.90, SD=1.34)では Acura TSX をより高価に評価した(t(193)=10.89, p<.001)。これらの結果は価格操作の有効性を 確かめた。
知覚される流暢さ:分散分析の結果により, 車の価格条件とペンの広告スローガンの解釈レ ベルとの相互作用は有意であった(F(1,191) =10.99, p<.001 ; Cohen's d=.48)。車の相対的高 価格の条件(M=6.25, SD=1.82)に比べ,相対 的低価格の条件(M=7.27, SD=1.91)では,参 加者は低次解釈レベルの広告スローガンがペン により適合すると判断した(F(1, 191)=5.33, p<.05)。それに対し,車の相対的低価格条件 (M=5.82, SD=2.70)に比べ,相対的高価格条件 (M=6.81, SD=1.87)では,参加者は高次解釈レ ベルの広告スローガンがペンにより適合すると 判断した(F(1, 191)=5.67, p<.05)。本実験の 結果により,製品の相対価格は別の製品広告ス ローガンの解釈レベルと適合する際に,そのス ローガンが別の製品にも適合するという考え方 をアクティブにすることが可能であると証明さ
れた。
4. 実験4 (1)方法
参加者と設計:2(相対価格:低い/高い)×2(ス
ローガンの解釈レベル:低次/高次)×連続変 数(カテゴリー関与)の被験者間計画の実験を 行った。MTurk から 241 名の参加者(内 46% が女性 ; 平均年齢 37.2 歳)を募集した。従属変 数は製品の購買意図と,その製品の広告スロー ガンに対して知覚される適合であった。 手順:参加者には電動歯ブラシの写真を提示 し,その歯ブラシの購入を想像するよう伝えた。 電動歯ブラシの写真を一定に保ちながら,明確 な金額の手がかりの代わりに,相対的低価格も しくは相対的高価格を示す製品説明を参加者に 提示した。マニピュレーションチェックとして, 次の画面でその歯ブラシの相対価格について参 加者に評価してもらった(実験3と同じ質問項 目を使用した ;
α
=.94)。次に,参加者にその電動歯ブラシと広告ス ローガンを提示した。広告スローガンは,低次 解釈レベルの条件では具体的製品説明「歯茎や 歯を優しく清潔にする」であったが,高次解釈 レベルの条件では抽象的製品ベネフィット「最 適な口腔衛生のために」であった。広告スロー ガンに対して知覚される概念的流暢さを,実験
3 と同じ項目で参加者に聞いた(
α
=.92)。別α
=.91 ;Zaichkowsky 1994 ;例えば,「電動歯ブ ラシは私にとって重要である/重要ではない」)。(2)プリテスト:心理的距離
実験4に使用される価格の操作は同じ母集団 (MTurk)から抽出された別のサンプルでプリ テストした。参加者には,心理的距離の4つの 主要な次元(空間的,社会的,時間的,確実性) を含む記述語(12 組 ; 例えば,「近い / 遠い」) を 1 つ ず つ 提 示 し た(Bar-Anan, Liberman, and Trope 2006 ; Hansen and Wänke 2011)。 参加者にその時の自分に最も合うような単語を 各組から選択してもらった(コード化:0= 心 理的近い , 1= 心理的遠い)。次に,12 組の答え を平均して心理的距離の指標を作成した(KR − 20=.86)。相対的に高価な製品ラベルに触れ た参加者の心理的距離の得点(M=.40, SD=.30) は相対的に安価な製品ラベルに触れた参加者 の得点(M=.29, SD=.26)よりも高く(t(135) =2.45, p<.05),つまり,心理的距離が遠いとい う考え方は相対価格の操作によって引き起こさ れることができると示唆された。
(3)結果と議論
マニピュレーションチェック:参加者は相対 的高価格の条件(M=6.43, SD=.85)では,相対 的低価格条件(M=1.71, SD=1.14)よりも製品 を高価に知覚した(t(154)=29.50, p<.001)。 関与による調整効果:相対価格,解釈レベ ルと関与の2次交互作用が有意であった(B= −.71, SE=.30 ; t(233)=2.38, p<.05 ; 95%信頼 区間[CI95=[−1.30, −.12]]。また,相対価格
と解釈レベル(B=1.26, SE=.33 ; t(233)=3.85, p<.001 ;CI95=[.61, 1.89] ; Cohen's d=.75),解
釈 レ ベ ル と 関 与(B=.68, SE=.22 ; t(233) =3.05, p<.01 ;CI95=[.24, 1.11])の1次交互作
用は有意であり,相対価格条件の主効果は有 意であった(B=−.90, SE=.23 ; t(233)=3.93, p<.001 ;CI95=[−1.35,− .44])。
関与の平均値より 1SD 上下の参加者の得点
は図−3に示される。製品関与の低い消費者(M
− 1SD =3.62)の場合,相対的低価格の製品は低
次解釈レベルのスローガンとペアになる時の 方が(M=5.26),高次解釈レベルのスローガ ンとペアになる時(M=4.55)よりも購買意図 が高い(t(233)=1.97, p=.05 ; CI95=[− 1.40,
.00])。相対的に高価な製品は高次解釈レベル のスローガンとペアになる時の方が(M=5.38), 低次解釈レベルのスローガンとペアになる時 (M=4.02)よりも購買意図が高いと示された (t(233)=4.38, p<.001 ; CI95=[.74, 1.96])。一
方,製品関与の高い消費者(M + 1SD =5.86)の
場合,適合効果は示されなかったが,スローガ ンの解釈レベルが購買意図に与える影響の単純 主効果は相対的低価格の条件(B=.82, SE=.33 ; t(233)=2.51, p=.01 ; CI95=[.18, 1.46])と相
対的高価格の条件(B=1.27, SE=.33 ; t(233) =3.83, p<.001 ; CI95=[.62, 1.92])両方において
も見られた。
流暢さの媒介効果:製品カテゴリー関与を統 制しながら,知覚される流暢さは適合効果を媒 介するかについて検証した(Hayes 2013)。結 果により,知覚される流暢さの間接効果は有意 であり(B=.60, SE=.12, CI95=[.38, .86]),広告
合よりも広告スローガンに対して知覚される流 暢さを高めた。同様に,より流暢な広告スロー ガンに対する知覚は高い購買意図につながっ た(b-path ; B=.40, SE=.03 ; t(237)=12.09, p<.001 ; CI95=[.33, .46])。
調整媒介効果:流暢さの媒介効果は製品カテ ゴリー関与の高低によって変化されるかどう かを測定した(Hayes 2013)。結果により,調 整媒介の指標は有意であり(B= − .37, SE=.09, CI95=[− .56, − .21]),相対価格と解釈レベル
との一致,不一致により生じた流暢さの差異 は,大多数の参加者の購買意図を説明すること ができる(関与の平均値より1SDを下回る場合: B=.106, SE=.17, CI95=[.75, 1.37] ; 関与の平均
値となる場合: B=.65, SE=.13, CI95=[.38, .91])
が,製品カテゴリー関与の高い参加者には適用
しなかった(関与の平均値より1SDを上回る場 合:B=.24, SE=.18, CI95=[−.11, .56])。よって,
適合効果は大多数の消費者の消費選択に影響で きるが,製品カテゴリー関与の高い人は例外と なることがわかった。
5. 実験5 (1)手法
参加者と設計:2(相対価格: 低い/高い)×2(広
告の解釈レベル: 低次/高次)×連続変数(NFC) の被験者間計画の実験を行った。従属変数は購 買意図であった。MTurk から 210 名の参加者 (内40%が女性 ;平均年齢は34.8歳)を募集した。
手順:参加者は広告の4つのバージョンのい ずれかにランダムに割り当てられ,それぞれは 同じエネルギードリンクの写真を使用した。エ
ネルギードリンクの価格は $2.00(低価格)ま たは $4.00(高価格)が,カテゴリーの平均価 格は$3.00であった。広告スローガンは「カフェ インを増やす」(低次解釈レベル)または「よ り効率的になる」(高次解釈レベル)であった。 参加者には,この製品の購入を想像するよう指 示した。マニピュレーションチェックとして, 参加者はエネルギードリンクの相対価格に対し
て評価した(前の研究と同じ項目 ;
α
=.97)。異なるページに,参加者は購買意図を評価した
(実験4の尺度を使用した ;
α
=.95)。その後に,参加者は NFC 尺度について回答した(18 項目 NFC尺度 ; 1=「完全に正しくない」, 5=「完全 に正しい」 ;
α
=.90 ; Cacioppo et al. 1984)。(2)結果と議論
マニピュレーションチェック:参加者は相 対的高価格条件(M=5.79, SD=.92)では,相 対 的 低 価 格 条 件(M=2.65, SD=.80) に 比 べ, 製品をより高価に知覚した(t(208)=26.37, p<.001)。
購買意図:相対価格,解釈レベルとNFC(中 心化)の間の2次交互作用は有意であった(B= − 1.32, SE=.65 ; t(202)=2.06, p<.05 ; CI95=
[−2.60, −.04]。また,相対価格と解釈レベル 間の交互作用は有意であり(B=1.22, SE=.45 ; t (202)=2.69, p<.01 ; CI95=[.33, 2.11] ; Cohen's
d=1.02),価格条件に主効果が見られた(B=− 2.13, SE=.32 ; t(202)=6.62, p<.001 ; CI95=[−
2.76, −1.50])。
相対価格と広告スローガンの解釈レベルの 交互作用について詳しく説明するため,NFC
得点が平均より 1SD 上下の参加者の結果を図−
4に示した。低 NFC の消費者(M− 1SD =2.71)
にとっては,低価格製品は高次解釈レベルのス ローガン(M=3.90)よりも低次解釈レベルの スローガン(M=4.91)と一緒に提示された方 が購買意図は高いと示された(t(202)=2.23, p<.05 ; CI95=[− 1.91, − .12])。高価格製品は
低次解釈レベルのスローガン(M=2.32)より も高次解釈レベルのスローガン(M=3.45)と 一緒に提示された方が購買意図は高いと示され た(t(202)=2.50, p=.01 ; CI95=[.24, 2.03])。
高 NFC の消費者(M + 1SD =4.11)にこのよう
な適合効果は見られなかった。製品価格を問わ ずに,解釈レベル条件間で購買意図の有意差は 見られなかった(低価格製品:t<1 ; CI95=[−1.01,
.73] ; 高価格製品:t<1 ; CI95=[−.77, 1.06])。
実 験 5 の 結 果 に よ り, 相 対 価 格 と マ ー ケ ティングメッセージの解釈レベルとの適合は, ヒューリスティックな情報処理を通してマーケ ティングコミュニケーションへの反応を高める が,システマティックな情報処理者,つまり高 NFCの消費者の場合は起こらないと示された。
Ⅳ. 総括議論
本研究は,相対価格が心理的距離を引き起こ す手がかりであることを証明し,解釈レベル理 論を広げた(実験 3)。心理的距離を引き起こ す手がかりについて,今後さらなる研究が必要 である。先行研究は,ラグジュアリー製品が普 通の製品よりも抽象的に見られると議論した (Hansen and Wänke 2011)が,本研究はラグ ジュアリー製品さえもそのカテゴリーで相対的 高価または安価に見えることが可能であり,抽 象的もしくは具体的に表現することができると 示した。製品と価格を一定に保っても,比較対 象によって製品を相対的に高くまたは安く見え るようにすることができ,消費者の考え方を変 化させることができると証明した。
消費者の判断に影響を及ぼす流暢さの効果に ついては,認知欲求の高い消費者が製品のプロ
モーション資料を評価する際に,流暢さの経験 に関する属性に頼る可能性が少ないと示され た。つまり,努力した思考は流暢さの効果に頼 るマーケティングコミュニケーションの効果を 弱めると示唆された。この問題をより深く研究 するため,これからより多くの実証研究が必要 である。また,先行研究では,情報処理の方式 を安定した消費者志向として検討することが多 かった(例えば,Epstein et al. 1996)。将来の 研究は,プロモーション活動に適合する方法の 普遍性を測定するため,消費環境において自動 的vs. 分析的情報処理方式の採用を促進する要 因(例えば,Bhargave and Montgomery 2013 ; Sujan, Bettman, and Sujan 1986)を確認する ことが求められる。
相対価格とマーケティングコミュニケーショ
ンの解釈レベルとの相互作用について,本研究 で得られた知見は経営者に実質的なインプリ ケーションを与えることができる。具体的には, 企業は製品の絶対価格の代わりに,相対価格の 高低によってプロモーション活動を調整するべ きである。さらに,製品価格を一定に保ちなが ら,経営者はマーケティングコミュニケーショ ンを製品の相対価格と一致させることによって 製品への需要を増やすことができる。例えば, 店内陳列やネットショッピングのインタフェー スで製品とそのプレミアムバージョンとの対照 によって,その製品を安価に見えるようにする ことが可能である(実験1-3参照)。
本研究から得られた洞察は,製品が比較対象 よりも手頃であるか高価であるかにかかわら ず,製品の具体的または抽象的ベネフィットに フォーカスしてプロモーションをすることは最 も説得力のあると示唆する。ただし,マーケティ ングコミュニケーションの情報処理に力を注 ぐ(例えば, 実験4の製品カテゴリー関与 ;実験 5のNFC)ような消費者は例外となる。将来の 研究が抽象性と具体性との代替的操作を用いて 本研究の結果の有効性を分析することは期待さ れる。絶対価格と相対価格のツインコンセプト はすでに大量な研究に注目されたが,このよう な多くの面で消費者に影響を及ぼす経済的,心 理的手掛かりについてまだまだ多くのことを解 明していく必要がある。
孫 ジン怡(そん じんい)