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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 半 澤 芳 恵

    学位論文題名

    Molecular and Genetic Analyses     of the Arabido姑ぬ4CA乙現ZS5gene.

(シロイヌナズナのA(M乙死脚遺伝子に関する分子遺伝学的解析)

学位論文内容の要旨

    ロゼット植物であるシロイヌナズナは、栄養成長期においてはロゼット状に平ら に葉を展開し、ほとんど節間成長を行わないが、生殖成長期ヘ移行後、花芽の形成に伴っ て急速に花茎を伸長させる。このように植物の花序の全体的な形態は、いつ・どこの節間 の茎が・どの程度伸長するかによって決定されている。本研究では、植物の花序形成機構 を理解するために、花茎の伸長に特異的に欠損を持つa塑ulis(acl)5変異株の解析を行うと 共に、染色体歩行によってその原因遺伝子を単離した。

    ac15変異株は栄養成長期においては野生型株との形態的差異はほとんど見られな いが、生殖成長期に移行した後の花茎伸長に特異的に著しい欠損が観察された。花茎の細 胞切片の観察から、茎の長さに比例して細胞が短くなっていることが明らかになった。ま た、細胞伸長にかかわると予想されており細胞壁構造変化に関与するエンド型キシログル カン転移酵素、E'XT A‑ヱと液胞膜の水チャネルタンパク質、gTIPのac15の茎における mRNA量は著しく低いことが示された。これらのことから、ACL5遺伝子は花茎の細胞伸 長に関与する機能を持っと予想された。一方、ジベレリンやブラシノライド等の植物ホル モン添加によって表現型の回復は見られなかった。このようにac堕は新規のグループに属 する矮小変異株と考えられた。

    そこでACE5遺伝子の機能を解明するために、染色体歩行による遺伝子単離を目指 して、染色体座位を決定したところ、5番染色体上腕のマーカー、nga106の近傍に位置す ることが示された。この点からYACクローンを用いて染色体歩行を開始し、1つのYAC上 の約400Kb内に存在することが示された。続いてこの領域をP1クローンを用いた染色体歩 行によってcontigを作成し、AC工5の存在領域を1つのP1クローン、約80Kbに絞り込んだ。

そこでまずこのP1のミニ・ライブラりをAファージベクターを用いて作成し、この80Kb 領域のゲノミックDNAファージクローンによるcontigをっなげた。続いてこの領域内に制 限酵素多型を検出するPCRマーカーを多数見つけてさらに存在範囲の絞り込みを目指した。

その結果最終的に5つのスクローンにわたる約54Kbに狭めることができた。しかしなが

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らこの領域は、シ口イヌナズナゲノムプロジェクトによる塩基配列解読がまだ進められて いないため、さらに2‑3Kbのサブクローンを作成して全体を網羅し、この領域の全塩基配 列を決定した。

    この 塩基配列を 解析した結 果、少なく とも11個の遺 伝子が存在 することが明ら かになり、続いてこれらの中からACL5の候補となる遺伝子を探索した。はじめにこれら の遺伝子の発現器官をノーザン解析により明らかにし、花序・花茎で発現の見られる6個 の遺伝子をACL5候補遺伝子とした。さらにこれらの遺伝子のac15変異株における塩基配 列を決定し、野生型株との比較からac15変異の原因となる塩基配列突然変異を持つ遺伝子 を探索した。その結果、1個の遺伝子に突然変異部位が見っかった。この遺伝子は予想さ れるアミノ酸配列からこれまで動物や植物、酵母、大腸菌などに広く見っかっているポリ アミン合成酵素のーつ、スペルミジン合成酵素と高い相同性が見られた。ポリアミンは動 物では核酸に結合し、核酸の安定化やタンパク質の翻訳などに関与していること、生理活 性としては細胞増殖・分化を促進する成長調節物質であることが示されている。植物でも 古くから細胞増殖などの生理活性を持つことが示唆されているが、その役割はよくわかっ ておらず、大変興味深い。また発見された突然変異部位は、スペルミジン合成酵素のc0‑

factorである脱炭酸型S.アデノシルメチオニンの結合部位と予想されているよく保存され た領域に存在することが明らかになった。

    そこでこの遺伝子を最重要ACL5候補遺伝子と考え、この遺伝子領域と上流約1.5kb を含むゲノム断片をac15変異株へ遺伝子導入し、相補性検定を行った。その結果、8個体 の形質転換株が得られ、そのうち7個体がTl世代においてac15表現型を完全に相補し野生 型表現型を示した。ノーザン解析により発現部位を調べると、花茎で特に強い発現が見ら れた。この結果はac15表現型とよく一致する。さらに、ac15変異株における発現量は、野 生型株の約20倍に上昇していることが明らかになった。このことから、通常この遺伝子 の発現は負のフ彳ードバック調節を受けていることが示唆された。以上のことから、この スペルミジン合成酵素と高い相同性を示す遺伝子がACL5遺伝子そのものであることが確 認された。

    単離 されたACL5遺伝子がスベルミジン合成酵素活性を保持しているかどうか確認 するために、夕ンパク質発現ベクターに導入し、大腸菌内で活性の測定を試みた。しかし ながら融合タンパク質を誘導すると、スペルミジンではなく、スペルミジンを基質として 生成されるスペルミンのスポットが新たに検出され、逆にスベルミジン量は大きく低下し ていた。この結果から、ACL5遺伝子はスペルミン合成酵素活性を持つ可能性が示唆され た。植物ではスペルミジン合成酵素を含むその他のポリアミン合成酵素は複数単離されて いるが、スベルミン合成酵素は植物で初めて単離された。さらに、植物においてポリアミ ン合成遺伝子の欠損が成長・分化にもたらす影響に関する報告は未だ見られず、本研究に よって初めて形態形成にポリアミンが関与していることが遺伝子レベルで直接的に示され た。

    ‑ 252−

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    米田好文 副 査    教授    落合    廣 副査   助教授   加藤敦之

    学位 論 文 題 名

    Molecular and Genetic Analyses     of the Arabidopsis ACAULIS5 gene・

( シ ロイ ヌ ナ ズ ナ のACA ULIS5遺伝 子に 関す る分 子遺 伝学 的解 析)

    植 物 の 花 序 形 成 機 構 を 理 解 す る た め に 、 花 茎 の 伸 長 に 特 異 的 に 欠 損 を 持 つ aca ulis(acl)5変異株の解析を行うと共に、染色体歩行によってその原因遺伝子を単離した。

    ac15変 異 株 は 栄 養成 長 期 に お い て は 野 生 型 株 と の 形 態 的 差 異は ほと んど 見ら れな いが 、生 殖成 長期 に移 行し た後 の花茎伸長に特異的に著しい欠損が観察された。花茎の細 胞切 片の 観察 から 、茎 の長 さに 比例して細胞が短<なっていることが明らかになった。ま た、 細胞 伸長 にか かわ ると 予想 されており細胞壁構造変化に関与するエンド型キシログル カ ン 転 移 酵 素 、EXT A‑ヱ と 液 胞 膜 の 水 チ ャ ネ ル タ ン パ ク 質 、gTIPのac15の茎 にお ける mRNA量 は 著 し く 低 い こと が 示 さ れ た 。 こ れ ら の こ と か ら 、ACL5遺伝 子は 花茎 の細 胞伸 長に 関与 する 機能 を持 っと 予想 された。ー方、ジベレリンやブラシノライド等の植物ホル モン 添加 によ って 表現 型の 回復 は見られなかった。このようにac15は新規のグループに属 する矮小変異株と考えられた。

    そ こ でACL5遺伝 子 の 染 色 体 座 位 を 決 定 し た と こ ろ 、5番 染 色 体 上 腕 の マ ー カ ー 、 nga106の 近 傍 に 位 置 する こ と が 示 さ れた 。こ の点 からYACク ロー ンを 用い て染 色体 歩行 を 開 始 し 、1つ のYAC上の 約400Kb内 に存在 する こと が示 され た。 続い てこ の領 域をPlク ロー ンを用いた染色体歩行によってcontigを作成し、ACL5の存在領域を1つのPlクローン、

約80Kbに 絞り 込ん だ。 そこ でま ずこ のPlの ミニ ・ラ イブ ラり をス ファ ージ ベク ター を用 いて 作成 し、 この80Kb領域 のゲ ノミ ックDNAフ ァー ジク ロー ンによるcontigをっなげた。

続い てこ の領 域内 に制 限酵 素多 型を 検出 するPCRマ ーカ ーを 多数見つけてさらに存在範囲 の 絞 り込 みを 目指 した 。そ の結 果最 終的に5つ のス クロ ーン にわ たる約54 Kbに 狭め るこ とが でき た。 さら に2‑3Kbの サブ クロ ーン を作 成し て全 体を 網羅し、この領域の全塩基配 列を決定した。

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    少な くと も11個の遺 伝子 が存 在す ること が明らかになり、これらの遺伝子の発 現器官をノーザン解析により明らかにし、花序・花茎で発現の見られる6個の遺伝子を ACL5候補遺伝子とした。その結果、1個の遺伝子に突然変異部位が見っかった。この遺 伝子は予想されるアミノ酸配列からこれまで動物や植物、酵母、大腸菌などに広く見っか っているポリアミン合成酵素のーつ、スペルミジン合成酵素と高い相同性が見られた。

    そこでこの遺伝子を最重要ACL5候補遺伝子と考え、この遺伝子領域と上流約1.5kb を含むゲノム断片をac15変異株ヘ遺伝子導入し、相補性検定を行った。その結果、8個体 の形質転換株が得られ、そのうち7個体がTl世代においてac15表現型を完全に相補し野生 型表現型を示した。ノーザン解析により発現部位を調べると、花茎で特に強い発現が見ら れた。この結果はac15表現型とよく一致する。さらに、ac15変異株における発現量は、野 生型株の約20倍に上昇していることが明らかになった。このことから、通常この遺伝子 の発現は負のフイードバック調節を受けていることが示唆された。以上のことから、この スペルミジン合成酵素と高い相同性を示す遺伝子がACL5遺伝子そのものであることが確 認された。

    単離されたACL5遺伝子がスペルミジン合成酵素活性を保持しているかどうか確認 するために、夕ンパク質発現ベクターに導入し、大腸菌内で活性の測定を試みた。しかし ながら融合夕ンパク質を誘導すると、スペルミジンではなく、スペルミジンを基質として 生成されるスペルミンのスポットが新たに検出され、逆にスペルミジン量は大きく低下し ていた。この結果から、ACL5遺伝子はスペルミン合成酵素活性を持つ可能性が示唆され た。植物ではスベルミジン合成酵素を含むその他のポリアミン合成酵素は複数単離されて いるが、スペルミン合成酵素は植物で初めて単離された。さらに、植物においてポリアミ ン合成遺伝子の欠損が成長・分化にもたらす影響に関する報告は未だ見られず、本研究に よって初めて形態形成にポリアミンが関与していることが遺伝子レベルで直接的に示され た。

    よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認め る。

参照

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