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リスク・コミュニケーション・ギャップの分析手法

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Academic year: 2021

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博士(国際広報メデイア)/J ヽ川晴也

学 位 論 文 題 名

リスク・コミュニケーション・ギャップの分析手法

―【リスク管理者】が【リスク被受者】を理解するための指針一

学位論文内容の要旨

研 究 目 的

本 論 文 の 目 的 は , リ ス ク に 関す る 合 意 形 成に 必 要 不 可 欠 な議 論 分 析 ツ ール を 開 発 し ,新 た な り ス ク・ マ ネ ー ジ メ ン ト ・ シ ス テ ム の 可 能 性 を 考 察 す る こ と で あ る .

萱量 塑よ埜 意義

現 代社会 には様 々なり スク がある ,我々 はその りス クを野 放しに するこ とはで きな い反面 ,ゼロ ・リス クを 求める こ と も 不可 能 な 状 況 に置 か れ て い る, し た が って ,その りスク をどの ように 取り 扱うの かにつ いての 意見 を調整 し , そ の処 理 方 法 に 関す る 合 意 形 成を す る 必 要が ある. この合 意形成 のため のプ ロセス はりス ク・コ ミュ ニケー ショ ンと呼 ばれ ている .

リ ス ク ・コ ミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン の 重 要性 は 既 に 認識 され, 様々な 観点か らの研 究も 進めら れてい る.し かし ,未だ 試 行錯誤 が続け られて おり ,より 一層の 改善が 必要 なのが 実状で ある, これま での りスク ・コミ ュニケ ーシ ョンの 中 心課題 は「如 何に説 得す るか」 であっ たが, 時代 の経過 ととも に「な ぜ説得 され ないの か」に 移り, 「参 加機会 提 供の重 要性」 を経て ,現 在では 「信頼 醸成の 重要 性」^ と議論 のポイ ントが 移っ てきた ,しか し,「 リス クに関 す る 当 事 者 問 合 意 形 成 の 方 法論 」 に つ い ては 正 面 か ら 研 究対 象 と さ れ たこ と が な く ,実 際 に は 合 意形 成 以 前 の問 題とし て, 相互理 解すら 達成さ れてい ない のが現 状であ ると考 えら れる.

そ こで筆 者はり スク・ コミ ュニケ ーショ ンをり スク ・マネ ージメ ント・ システ ムの 中のー つの機 能と位 置付 けなが ら, リスク ・コ ミュニ ケーシ ョンに合意形成のためのツールを組み込むことにより,相互理解とりスク・マネージメン ト・ システ ム全 体の機 能改善 を図ることを目指した.したがって,本研究はりスク・コミュニケーションを行おうとす る 者に対 し,相 互理解 のた めの具 体的指 針を与 える だけで なく, リスク ・マネ ージ メント ・シス テム全 体の 効率向 上を もたら すと いう実 践的な 社会的 意義を も有 してい る.

研 究内容

本 研究で は,以 下の 作業を 通じ目 的の達 成を図 るも のであ る.

◎ リスク ・マネ ージ メント ・システムの観点から,種カのりスク研究分野におけるりスク概念およびりスク・コミュニ ケ ーショ ンの意 義を 検討す る.

◎ 本研究 におけ るり スク・ コミュ ニケー ション の意 義を再 規定す る,

◎ 再 規 定 した り ス ク . コ ミュ ニ ケ ー シ ョン の 意 義 に 基づ き , 合 意 形成 の た め の 分 析ツ ー ルを 仮説と して導 入す る ,

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@ 範疇分 類され た三事 例を基 に, 仮説の 有効性 と限界 を検 証する .

◎ 検証さ れた合 意形成 のため の分 析ツー ルを用 い,リ スク ・コミ ュニケーションおよびりスク・マネージメント・シ ス テム改 善の可 能性を 考察す る.

璽 究方 法

本 研 究 は , 理論 的 考 察 と 実 証分 析 か ら 構 成さ れる .理論 的考 察にお いては ,リス ク・マ ネー ジメン ト・シ ステム 論 を理 論構築 の基盤 とし, 種々の りス ク研究 分野の 知見を そこ に組み 込むことにより,リスク・コミュニケーション の 意義 を再規 定した .そし て,そ の再 規定し た意義 から, リス ク.コ ミュニ ケーシ ョンに 関す る仮説 を導出 した,

実 証 分 析 に お い て は , 事 例 を 用い て 仮 説 の 検 証を 行 っ た . そし て , リ ス クに 関 す る 妥 協が 成 立 す る 原 因お よ び プ ロ セ ス ,な ら ぴ に り ス クに 関 す る 議 論が 発散 ・混乱 する 原因お よびプ ロセス を,本 論文 の仮説 により 説明可 能 であ ること を示し た.

璽窒鐘 墨と童 塞

本論文 の構成 は次の とおり であ る.

第一 部 ( 第2章〜 第5章 ) では , 理 論 的 考察 を 行 い , リス ク . コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン の意 義 を 再規 定し た.そ の際 に用 い た 先 行 リス ク 研 究 分 野は , リ ス ク 認知 心 理 学 , リ スク の 社 会 的 増幅 理 論(SARF)お よび りス ク社会 論( ベ ックお よびギ デンズ )であ る. その結果,リスク関係者を最も単純な二項である【リスク管理者】と【リ冫ワ被受者】

とした 場合, リスク .コミ ュニ ケーションの意義とは,両者がそれぞれ設定している「回避可能なりスク」と「不可避 の 危 険 」 を 峻 別 す る 【 諦 念 の 境 界 】 の 乖 離 を , 縮 減 ・ 解 消 す る こ と で あ る と 規 定 で き た . 第二 部 ( 第6章) で は , 再 規定し たりス ク・コ ミュ ニケー ション の意義 から, リス ク関係 者間で 発生す る不 安・不 満の 原 因 を 分 析す る 「3つ の乖離 」モデ ルとい う原 因仮説 を導出 した. さらに ,そ の仮説 から「 リスク に関 する妥 協成立 」仮説 および 「リス クに 関する 議論の 発散・ 混乱 」仮説 を派生 させた .

第 三 部 ( 第7章 〜 第9章 ) で は , 実 証 分 析 が 展 開 す る , 先 に 挙 げ た 三 つ の 仮 説 検 証を , 農 薬 , ウシ 海 綿 状 脳 症(BSE)および 外因性 内分 泌撹乱 物質(EDC)の 事例を 用いて 行った .

農薬 の 事 例 で は, 農 薬 リ ス クに 関 す る 説 明会 で あ る「農 薬ゼミ 」のア ンケー ト結 果を基 に,「 農薬ゼ ミ」 の効果 と 限 界 を 本 仮 説 に よ り 説 明 で き る こ と を 示 し た .BSEに 関 し て は 米国 産 牛 肉 の 禁 輸〜 輸 入 再 開 〜再 禁 輸 の 事 例 を 用 い , 日 米 両 政 府 間 の 交 渉 過 程 お よ び 新 聞 読 者 投 稿 記 事 の 内 容 の 変 化 を , 本 仮 説 を 用 い て 説 明 可 能 であ る こ と を 示し た .EDCに 関 し て は ,政 府 ・ 行 政 ,研 究 者 , 産 業界 お よぴ ジャー ナリス トが発 信し た情報 を基 に ,EDC問 題 に 関 す る 議 論 が 発 散 ・ 混 乱 し た 理 由 を , 本 仮 説 に よ り 説 明 可 能 で あ る こ と を 示 し た . 第 四 部 ( 第10章 〜 第11章 ) で は , 本 研 究 論 文 の 結 論 お よ ぴ り ス ク 研 究 分 野 にお け る そ の 意義 を 示 す と と も に, 今 後 の 課 題と し て , 本 研究 に よ り 得 られ た 知 見を基 にりス クに関 する議 論を 再構成 し,よ り効果 的な 合意形 成を得 るため の応用 可能性 の模 索と提 言を行 った,

結論

以 上 の よ う に , 本 論 文 で は りス ク に 関 す る 議論 を 分 析 す るた め の 新 た な方 法 論 を 提 示し , そ の 有 効 性を 過 去 の事 例を用 いて 検証し た.こ の方法論をりスク・マネージメント・システムに組み込むことにより,リスク.コミュニ ケー ション とり スク・ マネー ジメン ト・ システ ム全体 の機能 改善が 可能 になると考えられる.したがって,本研究の 成果 は,実 務者 にとっ て多大 な実践 的意 義があ ると考 えられ る.

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本研 究の論述過程で考案・提示されたりスク・コミュニケーションの概念およぴ意義は,これまで共約不可能 であったりスク研究諸分野の関連諸概念を,包括的にりスク・マネージメント・システムに取り込んだ結果生まれ た成果である.これは,新たな形のりスク・コミュニケーションを模索する上での契機と社会的基盤を提供するも ので あり,実務者だけに留まら ず,広く社会一般に対しても 一定の成果を提示するに至ったと考えられる.

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

准教授 教授 准教授

伊藤 小早川 長島

直哉     護 美織

     学位論 文題名

リス ク・コ ミュニケーション・ギャップの分析手法

―【リスク管理者】が【リスク被受者】を理解するための指針一

  

本論文は、社会的リスクに関する合意形成、リスク.コミュニケーションに必要不可 欠な議論分析ツールを開発し、このツールを利用した新たなりスク・マネジメント・シ ステムの可能性と限界を考察したものである。

  

議論分析ツールの開発に際しては、様々なりスク研究におけるりスク概念の検討から 始まり、本論に即したりスク.コミュニケーションの再規定が行われ、仮説としてのり スク議論分析ツールが提示される。この仮説の検証として、二軸プロットから範疇分け された三っの具体的な事例検討が行われ、仮説の有効性と限界が考察されている。以下、

審査委員会において行われた質疑応答の内容をまとめる。

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.仮説モデルの汎用性および応用可能性にっいて

    

本論考においてはマーケティング.コミュニケーションによる解決方法が提言され ているが、原子力発電所立地のように、消費者による選択が適用できない事例に関す る有効性と限界をどのように考えるか。また、事例として、選択肢の可能性が非現実 的なものとなるものも存在しているのではないか。

2.

「参加」という概念を巡ル

    

リスク管理者が相手の「諦念の境界」を動かすのか、自分自身の諦念の境界を動か すのかが不明確な記述部分が存在している。本論考の流れに従えば、参加とは双方向 的な境界の移動とをるのではないか。

3.

「妥協成立の構造モデル」に関して

    

ニつの仮説のーっであるりスクの妥協成立構造モデルに関し、議論の発散・混乱モ

デルと異なり、妥協成立の構造が不明確な部分がある。また、妥協成立を生み出すパ

  

ラダイム、コンプライアンス、フレームの関与の仕方が説明不足なのではないか。

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4.

リスク管理者の資質に関して

    

本研究におけるりスク管理者はしばしば政府や行政の場合が多いと考えられる。そ

  

の際、提案されたりスク・マネジメント・システムが、リスク被受者である市民から

  

の意見を柔軟に受け入れ、両者の諦念の境界を柔軟に動かしえるかどうかは当該モデ ルからは保障されておらず、システム運用上の問題点となる可能性は高いと思われる。

5

.事例による検証に関して

  

本研究の仮説モデルは、農薬ゼミ、

BSE

、EDC (環境ホルモン)という三っの事例に より検証が行われているが、想定される最終のりスク被受者である一般市民のデータ が三っ目の

EDC

事例のみ取られず、その代替としてジャーナリストの発信情報により 検証されている。この検証方法の違いと三っ目の事例の特性はどのような関係がある のか。

  

以上のような質疑に対し、本研究の設定した射程内での的確な応答が行われ、ツール の利用方法、活用方法を含む射程外の諸問題に関しては、今後の研究において継続的に 研鑽が積まれる旨が述べられた。

  

本研究は、リスク・コミュニケーション研究が数々存在している中、その合意形成の ための具体的なツール開発に正面から挑むという、先行研究の殆ど存在していない領域 を出発点としている。様々た領域の先行研究の統合的解釈から、大胆な構造仮説モデル を用い、リスクに対する漠然とした不安の原因分析、リスク.コミュニケーションによ る成功と失敗のメカニズム分析、及ぴその合意形成に向けた方法論の提示等、既存のり スク・コミュニケーション研究では到達し得なカ)った領域に踏み込んだ点は注目に値す る。時代的にも地域的にもりスク管理を発端とした事件や事故が頻発し、リスク.コミ ユニケーションの社会的重要性やニーズが高まる中、本研究のもたらした実践的な貢献 は社会的にも渇望されているところである。その意味において、本研究のオリジナリテ イと必要性は大いに評価されるものと思われる。その一方で、仮説モデルの妥当性と応 用可能性に関しては現在の到達点を十分に認識し、より以上の飛躍を期待したぃとぃう のが審査委員会の一致した認識である。本研究における仮説ツールの具体的な使用者、

使 用 場 面 、 使 用 方 法 等 を 巡 り 、 今 後 の 研 究 の 持 続 と継 続 的発 展 が望 ま れる 。

  

以上のような経緯を踏まえ、審査委員会内で慎重な議論を踏まえた結果、本研究の学

問的オリジナリティ、仮説モデルの信頼性、汎用性、研究成果の社会的インパクト等を

考 慮 し 、 北 海 道 大 学 博 士 の 学 位 に 相 応 し い 研 究 内 容 で あ る と 判 断 し た 。

  

よって本研究の著者は、北海道大学博士(国際広報メディア)の学位を授与される資

格があるものと認める。

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