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特異な環構造をもつ新規海洋天然物の構造と 立体化学に関する研究

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 題 名

博 士 ( 薬 学 ) 津 田 正 史

特異な環構造をもつ新規海洋天然物の構造と 立体化学に関する研究

学位論文内容の要旨

  本研究では、特異な化学構造をもつ海洋天然物の化学構造の解明を目的として、沖繩産の海 綿動物と海洋微細藻の成分検索を行った。その結果、1)Lufariella属海綿よりy―ラクトン環 をも つ新 規セ スタ テル ペ ンLuffariolide A〜Eを、2)Amphimedon属海綿より、Manzamine Bの 生 合 成 前 駆 物 質 と 考 え ら れ るKeramaphidinBを含 め5種 の新 規ア ルカ ロイ ドを 、3) Amphidinium属の渦鞭毛藻Yー25株の培養 藻体より、工ボキシ環とテトラヒドロビラン環を含 み、天然物としては極めて稀な新規27員 環マク口リド化合物としてAmphidinolideLをそれぞ れ単離し、種々のスペクトルデータや化学反応によりそれらの化学構造を解明するとともに、

そ れ ら の 絶 対 立 体 化 学 を 帰 属 し 、 立 体 化 学 と 生 合 成 と の 関 係 に つ い て 考 察 し た 。

1.Luffarie塑届塰鶴圭!2皇離ヒと麺想皇墨空王坐釡/Luffariolide△ニEcD蟻造と4rf:対L%

配置

  沖縄本島で採取したLuf far冫e′´a属海綿のMeOH抽出物のトルエン可溶部について、種々のク ロマ卜グラフィーにより分離、精製することにより、新規化合物としてLuffariolideA〜Eと既 知 化合 物6E―お よび6Z・Neomanoalideとともに単離した。LuffariolideA〜Eの構造は、2D NMRデータの解析により、いずれもyーラクトン環をもつセスタテルペンであると帰属した。

LuffariolideC〜E(ユド 、恥の3位と4位、およびNeomanoalidef、廴と、Uの4位の絶対立体 配置は、4R配置を有するLuffariolideB(、ぴを出発物質とした、立体選択的な化学変換反応 に よ り 生 成 し た 化 合 物 の 比 旋 光 度 に 基 づ ぃ て 3月 . 4R配 置 と 帰 属 し た 。   LuffarioIideAは 、 血小 板活 性化 因子 (PAF) ゛ 産生 の強 カな阻害活 性が詔められた。

LuffariolldeA〜Eお よ びNeomanoaIideは 培養 腫瘍 細胞 に対 して 殺細 胞活 性を 示 した 。

2:Amphimedon属 逢鶴 圭!2皇 離ヒ を幽anzamine生盒慮前駆麹質と耋7‑壘塾歪麺想Z!ヒ立 ロイドの構造

  沖繩 県慶 良間 にて 採取 した 海綿Amphimedon属海 綿をMeOHで抽出後 、溶媒分画して得た EtOAc可溶部および冂一BuOH可溶部をシリカゲルカラムを用いて繰り返し精製することにより、

KeramaphidinBとC, KeramamineC, お よ びIrcinolAとBを 既 知 のManzamineA,B,C、

|rcinalAとBとともに単離した。

  KeramaphidinBは 、'3C NMRと 各種2D NMRデ ー タの 詳細 な解 析、 およ びX線 結晶 解析 の

−142 ‑

(2)

結果から、1,4―ethenoー2,7―naphthylidine骨格に11員環と13員環が結合したきわめて特異な 化学 構造 を 有し てお り、Baldwinらの 提 唱しているManzamineBの生合成前駆物質に 相当す るこ とが わ かっ た。 またKeramaphidinBは、X線 結晶 解析 とキ ラルHPLC分析の結果 から、

(十)一体と(ー)―体の両エナンチオマーが存在するラセミ混合物であることが示された。

KeramaphidinCは 、 各 種 ス ペ ク 卜 ル デ ー タ か ら 、ManzamineCの62・azacycloundecene 部 分 に 相 当 す る も の と 帰 属 し た 。 ― 方 、KeramamineCは 、ManzamineCの テ卜 ラヒ ド口 体で ある と 帰属した。これ らの構造からManzamineCの生合成中間体と推定される。 ―方、

lrcinolAとBは、スペクトルデータの解析に基づぃて、lrcinalAおよぴBの1位のアルコール 体であると推定した。lrcina|AおよびBのDIBALH還元で得た還元体の比旋光度は、lrcinolA とBの 比旋 光度 と逆 の符 号を 示し 、そ の 結果、lrcinolAとBは、それぞれlrcinalAおよびB のC−1アルコール体の鏡像異性体であると帰属した。

3: 渦塑 垂濠Amphidinium sp: よ!2皇離 ヒを 麺擾2Z員 還ヱ2旦リ ドAmphidinolideLQ撞造   沖 繩産ヒラムシAmphiscolops breviviridisより分離した渦鞭毛藻Amphidinium sp.を大量 培養 し、得られた藻体の抽出物のトルエン可溶画分を種々のカラムクロマトグラフイ一用いて 精 製す る こと によ り、 新規27員 環マ クロ リド 化合 物と してAmphidinolideLを単離した。

AmphidinolideLの 平面 構造 は、 各種2次元NMRスペ クト ルの 解析 の 基づ ぃて、一部立体化 学を 含めて帰属した。AmphidinolideLを過ヨウ素酸分解で得られたC―22〜C−26フラグメン トを 立体選択的に合成し、合成品と天然物のオゾン分解で得られたフラグメントは比旋光度を 含め たスペクトルデータがよぃ−・致を示したことから、AmphidinolideLのテトロヒド□フラ ン 環 部 の 絶 対 立 体 配 置 は 、21S,22S,23R.25Rで あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。   AmphidinolideL(2馴のC一8,C−9,C−11,Cー16,C−18,C−20の立体化学を、安定配座解析 とNMRデ ー タ に基 づ ぃてAmphidinolideL( 恕Jの 全絶 対立 体配 置は 、8S, 9S.11R,16R.

18S,20S,21S,22S,23R,25Rであると推定した。

  [結論]

.1)Luffariolide A〜Eは、y―ラクトン環を有するホスホリパーゼA2阻害剤Manoalideの酸 化段階および環化位置が異なる生合成関連新規セスタテルペンであり、LuffariolideBの化学 変換反応によりLuffariolide C〜Eの絶対立体配置と、これまで絶対立体配置が未決定であった Neomanoalideの絶対立体配置を決定することができた。

  2)特 異な 環 構造 を有 するManzamine類の生合成過程を明らかにする上で、きわめて重要 な 化 合 物 と 考 え られ るKeramaphidinBとC、KeramamineC、 お よび |rcinolAとBを単 離し た 。KeramaphidinBは 、Baldwinの 提 唱 し たManzamineBの 生 合 成 経 路 の5環性 中間 体に 相 当 す る 化 合 物 で あ る 。KerampahidinCとKeramamineCは 、ManzamineCの 生 合 成 中 間 体と考えられる。―方、|rcinolAとBは、lricna|AとBのC−1アルコール体のアンチボードで あった。

  3)AmphidinolideLは、テトラヒドロビラン環とエポキシ環に加え天然物に は稀な奇数員 環をもつ新規27員環マクロリド化合物であ |J、メチル基とメチル基が隣接するなど、通常のポ リケチド生合成経路では説明不可能な骨格を有してぃる。微量の天然物の分解反応生成物を合 成することにより、21位、22位、23位、および25位の絶対立体配置を解明するとともに、計 算 化 学 を 駆 使 し た 安 定 配 座 解 析 結 果 とNMRデ ー タ か ら 全 絶 対 立 体 配 置 を 推 定 し た 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    小林 淳一 副 査    教授    橋本 俊一 副査   教授   森   美和子 副査   助教授    石橋正己      学 位 論 文 題 名

特異な環構造をもつ新規海洋天然物の構造と      立化学に関する研究

   海 洋 生 物 か ら は 化 学 構 造 お よ び 生 物 活 性 の 両 面に お い て 特 異 な 2 次 代 謝    産 物 が 数 多 く 分離 さ れ 、 新し い医薬 品の りー ド化 合物と して 、あ るいは 生

. 命科学 の基 礎研 究に 有用な 生物 学試 薬として期待され、実用面で具体的成.

. 果があ げら れつ っあ る。

. 本 研 究 で は 、 特異 な 環 構 造を もつ海 洋天 然物 の化 学構造 と立 体化 学の解 .    明を目 的と して 、沖 繩産の 海綿 動物 と海洋微細藻の成分検索を行った。そ,

   の結果 、1 )Luf ′ ar ′  el ′a 属海 綿よ りY‑ ラク 卜ン環 をも つ新 規セスタテ    ル ベ ン Luffariolide A‑ 〜 E を 、 2 ) Amphimedon 属 海 綿 よ り 、 特 異 な 多

. 環 性 構 造 を も つ ManzamineB の 生 合 成 前 駆 物 質 と 考 え ら れ る

.   KeramaphidinB を 含 め 5 種 の 新 規 ア ル カ □ イ ド を 、 3 ) Amphi び nium .

・ 属の渦 鞭毛 藻Y 一25 株の 培養 藻体よ り、 エポ キシ 環とテ 卜ラ ヒド □ピラン.

. 環 を 含 む 新 規 27 員 環マ ク 口 リ ド 化 合 物 と し て AmphidinolideL を 、 そ れ ・    ぞれ単 離し 、種 々の スペク 卜ル デ一 夕や化学反応によりそれらの化学構造.

   を 解 明 す る と とも に 、 そ れら の絶対 立体 配置 を帰 属し、 化学 構造 と生合 成    との関 係に つい て考 察した 。

.    ] : Luffariella 属 注 蘊よ 竺皇離 ヒと 新規 ‑ 丕 2 三!k 釜 2 ヒ uffariolide .

・A 〜E(D 撞造圭絶対立儘配置

.   沖繩本島で採取したLuf ′ ar ′ el /a 属海綿のメタノール抽出物のトルエン.

.可 溶部 につ いて、 種々 のク 口マ卜 グラ フィ―により分離、精製することに.

   よ り 、 新 規 化 合 物 と し て Luffariolide A 〜 E を 既 知 化 合 物 6E 一 お よ び

  62‑ Neomanoalide と と も に 単 離 レ 、 2D NMR デ 一 夕 の 解 析 に よ り 、 い ず

(4)

れ もY‑ ラ ク卜 ン環を もつ 新規セ スタ テルベ ンで あるこ とを 明かに した 。 Luffariolide C 〜 E お よ び Neomanoalide の 4 位 の 絶 対 立 体 配 置 は 、 LuffariolideB よ り 誘 導 し た 化 合 物 の 比 旋 光 度 に基 づ い て 決 定 し た。

LuffariolideA に は 血 小 板 活 性 化 因 子 ( PAF ) の 強 カ な 阻 害 活 性 を 、

.ま た、Luffariolide A 〜 E およ びNeomanoalide には培養腫瘍細胞に対す

.る殺細胞活性を見い出した。

, 2 . Amphimedon 扈塰蘊よ竺皇離ヒ挺Manza 田!ロ!生合成薗璽物質圭   .

,耋墨壘担墨新規7 坐力□イドQ 擡遣

   沖 繩 県 慶良 問 に て 採 取 し た Amphimedon 属 海 綿 のメ タ ノ ― ル 抽 出 物の 酢酸 工チルおよびブタノール可溶部をシリカゲルカラムで精製することに

. よ り 、 新 規 ア ル カ □ イ ド と し て Keramaphi dinB と CIKeramamineC ,

. および lrci nolA と B を 、既知 の ManzamineA , BIC 、 および lrci nalA .

・と B とともに単離することに成功した。Ker.amaphidinB は、 NMR デ一夕.

.の詳細な解析およびX 線結晶解析の結果から、1 |4 − et heno ―2 ,7 一n .

. aphthylidine 骨格に11 員環と 13 員環が結合したきわめて特異な化学構造,

を 有 し 、 Bal dwin ら の 提 唱 する ManzamineB の 生 合成 前 駆 物 質 に 相 当す    ることを見い出した。また、 Keramaphi dinB は、)(線結晶解析とキラル HPLC 分析の結果から、(十)‐体と(・)・体の約20 :1 の混合物であることを

. 明 か に し た 。 . ― 方 、 ManzamineC の 生 合 成 中 間 体 と 考 え ら れ る .

・  KeramaphidinC と KeramamineC の単 離に 成功 レた。 また 、スペ クト .

.ルデ一夕の解析ならびに誘導反応に基づいて、 lrcinolA とB は、それぞ.

.れlrcinalA およびB の C ―1 アルコール体の鏡像異性体であると決定した。.

   さらに、本海綿より単離したすべてのマンザミン関連化合物の構造と存在.

比 に 基 づ い て 、 マ ン ザ ミ ン A , B , C の 生 合 成 経 路 を 提 唱 し た 。

.    弖: 過 鞭 毛 Amphidin 坐 璽 sp :よ 竺 皇 誰 ヒ と 新 規2Z 員 環 ヱ 2 旦 リ ド

.Amphidinolide ヒ Q 撞造

.    沖 縄産 ヒラム シAmphiscolops breviviri び s より分離した渦鞭毛藻.

.Amphi び r7ium sp. を大量培養し、得られた藻体の抽出物のトルエン可溶.

   画分を種々のカラムク□マ卜グラフィ一用いて精製することにより、新規,

  27 員環 マク□ リド 化合物 とし て Amphi di nolideL を 単離し 、 2 次 元NMR    デ一夕の解析に基づいて平面構造を明かにした。また、 Amphi di nolide

. L を 過ヨウ 素酸 分解で 得ら れた C‑22 〜 C‑26 フラグメン卜を立体選択的に

.合成し、天然物のオゾン分解で得られた相当するフラグメントと比旋光度.

―145

(5)

   を含 めたスベク卜ルデ一夕を比較することにより、 AmphidinolideL の.

   テ卜口ヒド□ピラン環部の絶対立体配置を明らかにした。一方、計算化学    を 用 い た 安 定 配座 解 析 と NMR デ 一 夕に 基づ いて、 AmphidinolideL の全

.絶対立体配置を推定した。

・ 以上 、本研 究で は 2 種 の海綿 なら びに 1 種の渦鞭毛藻より 3 系統合計11 .

.個の新規化合物の単離、構造決定を成功している。KeramaphidinB は、.

  Bal dwin ら の提 唱した ManzamineB の生合成経路の 5 環性中間体に相当.

   する化合物であり、.特異な環構造を有するManzamineA や B の生合成過程    を明 らか にする 上で 、きわ めて 重要な 発見 と位置 づけ られる 。ま た、

.   KerampahidinC と KeramamineC の 単 離 は 、 ManzamineC の 生 合 成 経

. 路を 強く示唆する興味深い発見である。一方、 AmphidinolideL は、天.

・然物としては稀な奇数員環をもつ新規27 員環マク□リド化合物であり、.

,メチル基とメチル基が隣接するなど、通常のポリケチド生合成経路では説.

,明できない特異な骨格を有している。この微量な天然物の分解反応生成物.

   の合成、ならびに計算化学を駆使した安定立体配座解析とNMR デ一夕解析.

   から全絶対立体配置を推定しており、微量な天然物の立体化学を解明する    た め の ひ と つ の チ ャ レ ン ジ ン グ な 方 法 と し て 評 価 さ れ る 。

.    本研究は、新しいタイプの天然有機化合物の発見、新しい分離・分析法.

・や立体化学の解析法の展開、生合成中間体の分離、など天然物化学の分野.

.でいくっかの重要な研究成果を挙げたものといえる。本研究成果は、既に.

.多〈のー流国際学術誌に発表されており、博士(薬学)の学位を受けるに.

   値する業績と判断された。

参照

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