九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
浮体式海洋構造物の位置制御システムの開発研究
百留, 忠洋
九州大学総合理工学研究科大気海洋環境システム学専攻
https://doi.org/10.11501/3166891
出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第四章無係留浮体式海洋構造物のスラスターによる位置 制御
水深が深くなると係留システムの位置保持性能が悪くなり、 目的によっては 使えなくなることがある。 本章では係留を使わない位置保持について述べる。
このような位置保持システムとして、浮体にスラスター等の推進器を取り付け、
それらを制御することによって位置を制御する方法が考えられる。 洋上におい て、浮体が受ける力は、波・潮流・風による漂流力及び波による線形波浪強制 力に分けられる。 このうち線形波浪強制力は起振力が大きく、スラスター程度 の推力では動揺を抑制することが困難である。 したがって、スラスターが波周 期の運動に反応するとエネルギーの無駄遣いに なると考えられる。 そこで、エ ネルギー効率のよい制御を行うためには、波周波数領域の運動に反応しない位 置制御コントローラの設計がここでも必要となる。
使用するスラスターの種類としては、固定式のものと首振り可能なものが考 えられる。 固定式のスラスターを用いると複雑な可動部分をなくすことができ、
コントローラの設計も比較的簡単になるという利点がある。 他方、首振り式ス ラスターを用いるとの,8),9)刈,31)、波・潮流の外乱の向きに全推力を集中すること ができ、 固定式のものに比べて効率の良い位置制御が可能と考えられる。
前章において、H∞制御は特定帯域の外乱を選択的に抑制する問題に有利で、
高度な周波数整形が可能で・あり、位置制御に最適であることがわかったので、
本章においても、 H∞帝IJ御理論に基づいた位置制御用コントローラを設計し、
固定式及び首振り式のスラスターを用いた模型実験を行い、その性能を比較検 討した。
4.1固定式スラスターによる位置制御 4.1.1線形数学モデル
(2.3)、(2.4)、(2.60)式を制御に必要と思われる変数X,y,ø,θ,ψ,U ,V,β,4,rに ついて解くと(4.1)式が得られる。
(4,1) 九(X,y,ø,θ,,!/,U,v,p,q,r,Fxr ,Fyr ,M zr,F XW,Fy予.."Mzw)
f2(X,y,ø,θ,,!/,U, v,p,q,r,Fxr ,Fyr,M zr ,F xw,F yw,M zw) f3(X,Y,ムθ,,!/,U,ν,p,q,r,Fxr,Fyr,M zr ,F xw,F yw,M zw) 人(X,Y,ムθ,,!/,U,v,p,q,r,Fxr,Fyr ,M zr ,F xw,F yw,M zw) fs(X,y,ø,θ,,!/,U, v,p,q,r ,Fxr ,Fyr ,M zr ,F xw,F yw,M zw) 人(X,y,ø,θ,,!/,U,v,p,q,r,Fxr,Fyr ,M zr ,F xw,F yw,M zw) f7(X,Y,仇B,,!/,u,v,p,q,r ,Fxr' Fyr ,M zr' F xw,F yw ,M zw) ん(X,Y,Ø,B,,!/,u,v,p,q,r,Fxr ,Fyr ,M zr,F xw,F yw,M zw) 人(X,Y,仇B,,!/,u,v,p,q,r ,Fxr ,Fyr ,M zr' F xw,F yw,M zw) f以X,y,ø,θ,,!/,U,v,p,q,r,Fxr ,Fyr ,M zr ,F xw,F yw,M zw)
一
-X・Y・0・θ
- V ・
uV -P・q・r
コントロー (4.1)式を(4.3)式に従って平衡点まわりで線形化することにより、
ラ設計に必要な線形数学モデル(4.2)式を得る。
(4.2)
w B + u B +
f||JIll-、
vd -xぷα
(4.3) αュ=一一一一θfj
り ôx ,l 本 * *
J Ix=xμ=U ,W= W
噌 θfj
- 一
、土町一 :::l
_.
fア 11
.
I‘ 本 不 ボー J Ix=x ,U =u ,w=w b 1り
一三五 -θW,I * * *
J Ix二X ,U=U ,w=w
ajj, b1jj, b2jj・は行亥UA,BJ,B2の要素、xは状態変数、uは制御入力、wは外乱、yは 観測出力である。ど, u., w・は平衡点における状態変数値、 制御入力及び外部入 力である。
(4.4) x=[X Y ψ θ v
U =
[
Fxr Fyr M zrr
I
F xwI I
F xwave1 + F xwave2I
W =
I
F ywI
=I
F ywave1 + F ywave2I
I
M zw 11M zwavel + M zwaνezJ
y = [X +0.07θ Y -0.10ψ ,!/y =
ド
q p u V
Y
X, Yは回転中心におけるサージ、 スウェイである。
ここで、
スラスターによる制御力凡打F戸MJま3ユ1節の(3.26)式と同様に計算される。
4.1.2コントローラの設計
4.1.1節で得られた線形数学モデルを用いてコントローラ設計を行う。
この線形システムは以下により可制御、可観測である。
rank[À/ - A
B2ト
10(\/λ(A)) rank[λ1 - AT CT]
= 10(刊(A))
制御目的はスラスターを波周波数領域(線形波浪外力〉に反応しないように 駆動させ、位置を制御することである。 つまり、コントローラは次の制御仕様 を満たさなければならない。
-仕様1
波・潮流の外乱下において、位置制御を精度良く定常偏差なしに行う0 .仕様2
波浪外力F_... F._... M JW' �'AZW から制御力FふF戸Mzrまでの伝達関数のゲイン特性 を波周波数領域4"'-' 1 0 rad/secで出来るだけ小さくする0
・仕様3
実機のスラスター性能の限界を考慮、して、スラスターの推力の範囲を -0.2 KgくF仙Fth2, Fth3< 0.2 Kgとする。
Fig.4.1にH∞コントロールシステムの相互結合系2:7)泊)を示す。 コントローラKact は積分動作とアクチュエーターダイナミックスCFig. 4.2)を含む。 アクチュエ ーターダイナミックスは、スラスターダイナミックスを持たないモデルを実機 と同じスラスターダイナミックスを持つかのように動作させるために必要であ
る。 プラントの伝達関数Gは次式で計算できる。
G =
C(s 110 - A)
-1[
B1
B2]
(4.5)W2, W4, J九は重み関数で、 トレードオフの関係にある、精度よく位置を制御
することと、波力から制御力までのゲイン特性を波周波数領域で十分小さくす ることを、共にできるだけ高い次元で満足させるように決定する。 本節ではFig.
4.4に示すような重み関数を選択した。
以上の準備の下で、Fig. 4.3に示す極配置制約下、できるだけ小さなr>Oに対 して、制御目標r= [X c YC ljI c Yから制御量Z=[Z1 Z2 Z3 Z4 Z5 Z6Yまで の伝達関数のH∞ノルムを最小にするコントローラKを求める。
IITr→z 11∞<r (4.6)
コントローラの設計にはMatlabの LMIControl Toolbo�9)を使用した。 設計さ れたコントローラ-Kact'ま状態空間表現に直され、 離散化することにより実装さ れた。 Fig. 4.3の極配置制約はコントローラを離散化して実装するために必要で‘
ある。 この制約がなければ閉ループ系とコントローラの極にハイゲインのもの が現れ、 実装するとノイズを増幅してしまうので、 スタートアップすることが できない。 離散化のタイムステップは、 使用するAD、 DA変換機の性能やCPU の 能力 、 コ ン ト ロ ー ラー の次数 に よ っ て決ま り 、 本実 験 の 場 合約 0.012三(1/20) /4 秒である。 スラスターへの入力電圧は、 コントローラでスラス ター推力が計算されたあと、(3.9)式で計算した。 H∞コントローラの周波数特 性をFig.4.4に示す。左側の図は目標値からそれぞれの運動までのゲイン特性を、
右側の図は波力から制御力までのゲイン特性を表している。 右側の図の重み関 数W2,W4, W6はゲイン特性を波周波数領域で十分小さくするように選ばれてい る。
4.1.3 実験方法
固定式スラスターによる位置制御実験の状態図をFig. 4.5、 4.6に示す。 スラス ター配置は3.2.1節(Fig.3.37)と同じである。
模型の運動〈前後揺、左右揺、 船首揺〉は摩擦などの影響を受けない非接触 式の光学式運動計測装置で計測、縦揺・横揺は傾斜計により計測され、 実時間 でディスプレイ上に表示した。 潮流は運動計測装置を曳航電車上に設置し、 曳 航電車を動かすことによって相対的に発生させた。 すべてのデータ はサ ンプリ ンクマ周波数10Hzで'410秒間記録した。 運動計測装置・傾斜計からのアナログ出 力はAD変換され、 パソコンに入力される。 コンビューターは制御則に従って 演算を行い、 スラスターの制御信号を出力する。 出力はDA変換された後スラ スター駆動用サーボパックに入力されスラスターが制御される。
4.1.4 実験結果及び考察
まず、 平水中で-のステップ指令(Xc'Yc,'I'c)に対する応答(前後揺・左右揺・
船首揺〉をFig. 4.7に示す。 ステップ指令は同時に入力され、 目標値はそれぞれ Xc = 0.15m、又= 0.15m、 'l'c = 15度である。 図より定常偏差なく変位が行われ、
H∞コントローラが効果的に働いていることがわかる。 実験と計算の結果は過 渡応答の前半ではよく一致しているが、 後半では若干のズレ が見られる。 これ は模型が初期位置から離れると、 電源及び各種信号伝達用のケーブノレの影響が 強くなってしまうためであると考えられる。 これは運動方程式にケーブノレの影 響として線形バネを付加して数値シミュ レーションを行った結果と実験結果が よく一致することで確認した。
次に、波と潮流が同時に入射する場合の位置保持実験の結果をFig.4.8に示す。
実験に使用した不規則波は有義波高0.04m、 平均周期1.0秒である、 また、 潮流
速度は0.08m/secで、ある。 実機では、それぞれ4.0m、10秒、1.6knotに相当する。
波・潮流ともに入射角はα,()o= 60度 (Fig. 21)である。 実線が実験結果を、破線 が計算結果を示している。 浮体模型は波・潮流の外乱下でも良くその位置を保 持しており、さらにスラスターが波周波数領域に反応していないことがわかり、
コントローラが設計仕様をよく満足していることが確認された。 また、計算結 果と実験結果はよく一致しており、数学モデルの精度が良好であることがわか る。
Fig. 4.9 ,._ Fig. 4.11'こ不規則波中〈有義波高0.04m、平均周期10秒、入射角
。0=60度〉の前後揺、左右揺、船首揺それぞれの方向についてのステップ指令 に対する応答の実験結果を示す。 目標値はそれぞれ Xc= 0.15m、民=0.15m、
Ifc = 20度 である。 どの応答も定常偏差・オーバーシュートなく、精度よく位 置変更が行われていることがわかる。 また、Fig.4.11より、回頭中(波・潮流の 入射角が時々刻々変化する〉であっても模型はその位置をよく保持しているこ とが確認できる。
Fig.4.12は、不規則波中の位置制御実験の結果である。 ステップ指令は同時入 力されている。 目標値はそれぞれX = 0.15m、 y_ =0.15m、 1ft" = 15度である。
この場合も、定常偏差・オーバーシュートなく位置変更が行われていることが わかる。
Fig. 4.13は、波及び潮流〈入射角α,θ。=60度〉が存在する場合の位置制御実 験 結 果で あ る 。 ス テ ッ プ 指令は同時入力さ れている。 目 標 値 は そ れ ぞ れ Xc = 0.15m、民=0.15m、 Ifcニ15度である。 波・潮流が存在する場合でも、定 常偏差・オーバーシュートなく位置変更が行われていることがわかる。
続いて、ロワーハルに外力が垂直に入射し、最も制御が困難であると思われ る、α,()o=90度(Fig.21)の場合について行った実験結果を示す。
波と潮流が同時に入射する場合の位置保持実験の結果をFig.4.14 に示す。 実線 が実験結果を、破線が計算結果を示している。 横波の場合でも浮体模型は波・
潮流の外乱下で良くその位置を保持している。 また、スラスターは波周波数領 域の運動に反応しておらず、 コントローラが設計仕様をよく満足していること が確認された。
Fig. 4.15 ,._ Fig. 4.17に不規則波中(有義波高0.04m、平均周期10秒、入射角
。0=90度〉の前後揺、左右揺、船首揺それぞれの方向についてのステップ指令 に対する応答の実験結果を示す。 目標値はそれぞれ Xc= 0.15m、え=0.15m、
Ifc = 20度 である。 どの応答も定常偏差・オーバーシュートなく精度よく位置 変更が行われていることがわかる。
Fig.4.18 は、不規則波中の位置制御実験結果である。 ステップ指令は同時入力 されている。 目標値はそれぞれX_ = 0.10m、 Yc= 0.10m、 Ifc= 10度である。 横 波の場合でも、定常偏差・オーバーシュートなく位置変更が行われていること がわかる。
Fig.4.19は、波及び潮流(入射角α,θ。=90度〉が存在する場合の位置制御実 験結 果で あ る 。 ス テ ッ プ 指令 は同時 入力 されている。 目標値は そ れ ぞ れ
X_ = 0.15m、YC = 0.15m、fIIc = 15度である。潮流が存在する場合でも、定常偏 差・オーバーシュートなく位置変更が行われていることがわかる。
最後に、有義波高0.035m、平均周期0.7秒の不規則波中(入射角。0=60度)の位 置保持実験の結果をFig.4.20に示す。図より異なる波条件下においても制御仕様 をよく満たし、効率よく位置保持ができていることがわかる。
4.2
ゲ イ ンス ケ ジ
ュールド
H∞コントロ
ーラに よ る 固定式スラスタ
ー
を 用
いた位置制御
4.1節では、H∞制御理論を用い、波周波数領域の運動に反応しない位置制御 用コントローラの設計を試み、模型実験及び数値シミュレーションを行った結 果、設計された位置制御用コントローラを用いると、スラスターが波周波数領 域の運動にほとんど反応せず、エネルギーを無駄遣いすることなく、精度の良 い位置制御が可能で‘あることがわかった。
しかし、このコントローラは定点保持を主体として設計されており、回頭角 指令値が大きくなると応答が振動的になりCFig.4.26)、制御性能が劣化してし まうという問題を抱えていた。この節では、位置制御用コントローラの性能の 向上を目指し、大きな回頭角指令に対応できる、ゲインスケジュールドコント ローラの設計を行い、模型実験・数値シミュレーションによりその性能を確認
した。
4ふ1
線形数学モデル
二章の運動方程式を基にゲインスケジュールドコントローラ設計に必要な線 形数学モデルを導出する。
線形数学モデル
�=A ç +Bι+ Bi;2
(4.7)j=c-c:
S1
=S1 - S]
は一般に非線形モデル
ç
=f(Ç,Sl'S2)
(4.8)より
a
fi
α -- 一一一一
り a çj
lç=どζバ;.(2=(;
b
一三五 -
W θSlj
lç=ç・'(1=(;・(2=(�
b 2ij
-
一三五
θS2iり I lç=ç- .(1=(1.(2=(2
(4.9) ( 4.10) ( 4.11)
で得られる。 れま状態変数ベクトル、 (1は外乱、 (2は入力変数ベクトルであ り、添字*は平衡点における値であることを表している。 この手法を(2.3)、(2.4)、
(2.60)式に示した浮体式海洋構造物の運動方程式に適用すると線形モデルが以下 のように求まる。
山+
[B; 吋]
三A'x+
B
u ' (4.12)y=Cx
xはシステムの状態、u1 は外乱、u2 は操作入力、yは観測出力であり、
x = [X Y
øθ ljI-ljI. I
u ν p q,f
Fxwaνe1+Fm匂νe2 Fxw Fmwe1+F抑制e2 F 戸ν
1
M zwavel +M Mzwu= Fxr
一
FXIFyr Fyr
Mzτ Mzτ
y = [X + 0.07(B
COSljI.
+れinljI.
) Y + 0.1O(
B sinljI. -ゆCOSljI. ) ljI -ljI. r
三[X
Y ljI-ljI. r
( 4.13)
( 4.14)
( 4.15)
1
。 。 G 。 。 。 。 。 。。
1
。 。 G 。 。 。 。 。。 。
1
G 。 。 。 。 。 。。 。 G
1
。 。 。 。 。 。。 。 。 G
1
。 。 。 。 。E=I
。 。 。 。 。 m+Al1 。 。 mZG +A1S 。。 G G G 。 。 m+A:n -mzG +A24 。 。
。 G 。 。 。 。 -mzG +A42 I;a: + A44 。 。
。 。 G 。 。 mZG +ASl 。 。 1 yy + AS5 。
。 G G 。 。 。 。 。 。 1 zz +A“
( 4.16)
。 。 。 。 。 cos If/ - sm If/ . 。 。 。
。 。 。 。 。 sm If/ cos If/ 。 。 。
。 。 。 。 。 。 。 1 。 。
。 。 。 。 。 。 。 。 1 。
A'=IQ
。 。 。 。 。 。 。 。。 。 。 。 。 -bll -bllv 。 。 -b15 。
。 。 。 。 。 。 -b22 -b22ν -b24 。 。
o 0 -mgGM 。 。 。 -b24 -b糾-b44ν 。 。
。 。 。 -mgGML 0 -bS1 。 。 -b55 -bssv 。
。 。 。 。 。 。 。 。 。 -b66 -b66v
( 4.17)
。 。 。 。 。 。「
。 。 。 。 。 。
。 。 。 。 。 。
。 。 。 。 。 。
B,= I Q 1
。 。 。 。。 。
1
。 。( 4.18)
。
1
。 。1
。。 。 。 。 -Zr 。
。 。 。 Zr 。 。
。 。
1
。 。1
I
1
1 0 � � 007 sin fII-��_ . ・ 0.07∞sfll ・ .0 I1
0 0 0 0 0� � � � �I1
c=
l
o 1 -0.10cOSfll. 0.10 sinfll. 01
0 0 0 0 01
10 0 0 0 110 0 0 0 01
4.2.2 コントローラの設計
コントローラ設計の際に設けた制御仕様は次の通りである0
・仕様1
( 4.19)
波・潮流の外乱下において、 位置制御を精度よく定常偏差なしに行う0 .仕様2
波浪外力Fxw, Fyw, Mzwから制御力凡ロF戸Mzrまでの伝達関数のゲイン特性 を波周波数領域4'""'10 rad/secで出来るだけ小さくする。
・仕様3
実機のスラスター性能の限界を考慮、して、スラスターの推力の範囲を
・0.2 Kg<FI仙F仰Fω< 0.2 Kg とする。
・仕様4
大角度の回頭を安定して行う。
4.1節では、(4.17)式において fII.=Oとしてコントローラの設計を行った。 と ころが模型が回頭を行うとvの値が時々刻々変化する為、回頭角が大きくなる に従って数学モデ、/レがv.二0 とした数学モデルからかけ離れたものになってし まう。 この為、回頭角指令値が大きくなると応答が振動的になり(Pig.4.26)、
制御性能が劣化してしまったと考えられる。
この問題を解決するために、Pig.4.21に示すi:36度(1回転の1/5)の回頭範囲 を考える。 ここで、cosfII, sin fIIの値はそれぞれ0.809'"'"1.0、-0.588'""'0.588の間 で半径1の円周上を変動することになる。 従って(4.17) 式においてCOS fII. , sin fII.
の値がこの範囲で変動しても安定であるコントローラが設計できれば、+36度 の範囲で応答が発散することなし安定した回頭が行えると考えられる。 本来 は+36度で区切られた半径1の円周上におけるCOS〆, sin fII・の値の変化だけに 対応できればよく、それが理想的であるが、ここでは簡単のためPZ, P2, P3, P4で、
囲まれた長方形のパラメータボックスを考え、このパラメータボックス内で COS fII. , sin fII・の値が変化しても対応可能なコントローラを設計することにする。
回頭角範囲については、範囲を大きく設定するとパラメータボックスの面積 が大きくなり、本来安定化する必要のない部分の面積まで拡大してしまう為、
1回転の1/5の72度範囲に決定した。 360度の回頭を行うには・1.0から1.0までの変 化に対応できなくてはならないが、範囲が広すぎて本手法では設計不能であっ た。 この為、+36度を越える回頭を行う場合はコントローラのスイッチングを 行うことにする。 コントローラのスイッチングについては後節で詳しく述べる。
COS fII., sin fII・の値の変動を考慮すると、 前節に示した線形モデルよりcosv.,
sin fII・がアフィンに入る次の線形モデルを得る32)。
土=E-1(Ai+cosv.AF .+sintJF AL -)χ+ E-1B'u ∞S'I' SlD '1'
但し、
。。
F。。
。。
o 0 A ; 一 | 。。
o
1 0 0
。。
三E吋A;+αlA�,1 + a2A�?)x + E-1B'u � "2
= (Ao +α1Aa1 + a2Aa2 )x + Bu 三A(αl'a2)x+ Bu
y=Cx
。 。 。 。
。 。 。 。
。 。 。 。
。 。 。 。
。 。 。 。
。 。 。
-bll -bllv。
。
。
。
。
。
。 。 。 。
-b22 -b22νo 0
-mgGM。 。 。
-b42。。 。
-mgGML0
-bS1。
。。 。 。 。 。 。
。 。。。。 1 。。 。 ol
。 。。。。。 1 。。。
。 。。。。 o 0 0 0 。
。。。。 。 o 0 0 0 。
A' = a1
10 。。。。 。。。。。 0 0 0 0
。。。。。 o 0 0 0 。
。。。。。。 0 0 0 。
。。。。。 o 0 0 0 。
。。。。。 o 0 0 0 。
。
。 1
。
。
。
-b2A -b44 -b44ν
。
。
(4.20)
。
。
。 1
。
-b15
。
。
-bss -bssν
。 ( 4.21)
(4.22)
。
。
。
。 1
。
。
。
。
-b66 -b66ν
00000 o -1 0 0 0 00000 1 。 000 00000 。 。 000 00000 。 。 000
, 10 0 0 0 0 。 。
A -
|
(4.2 3 )a2 10 0 0 0 0 。 。 000
00000 。 。 000 00000 。 。 000 00000 。 。 000 00000 。 。 000 ーJ
。l' a2 の最小値、 最大値 をa1mωa2min, a1max, a2ma.xと し、 端 点pμ1min,a2min),
P2(α1 ma.x,a 2min) , P.μ1max,a2ma.x), P la 1min,a2max)で‘固まれたパラメータボックスを考える CFig.4.21)。 代表点として Prwm(a1nomバみJをとると、 これらによる行列A(αIん) の端点表現として、
A(Iαl'αz) = PIAl + pAZ Z + P3A3十P4A4 Pl =� - αlma,; - alnom )(a2ma,; -a2nom)
�
(αlma,; - a1min )(a2max -a2min)P? 2 = αlnom -a1max )(α2max -a2nom)
�
(αlma,; - a1min)(α2max -a2min) P1 二 (a1nom-a1min )(a2nm -a2min)
.J (a1max -a1min )(a2max -a2min)
P4 4 = αlmax - alnom)(α2nom -a2min)
�
(αlmax -a1min )(α2max -a2min) P1 + P2 + P3 + P4 = 1
(4.24) (4.25)
(4.26)
(4.27)
(4.28)
(4.29) を得る。A1,A2,A3'んは、Fig.4.21の端点P1,P2, P3, P4におけるαl'a2の値を用 いたA(α川2)で・ある。 また、該当パラメータボックス の任意の点に対応する線形 モデル(4.20)式においては、
[� �]
= P1Sl + P2S2 + p,S, + P (4.30)-フ
ロ
tp
ンコ
の
Lデ
'レ,,ノ
を 、= モ
。
A・ c 峨
数B 0 . . ーーーの 線
形
l」つ|ら
stれ
れソ
なと( 4.31 )
ら=
AKxK
+BK[yl
Xc YC lfIc](4.32)
で安定化を行うのがここでの制御問題である。 そこで、多モデル・多仕様に対 応できるLMICLinear Matrix Inequarity)ベース設計法の適用を試みた。 これは 今の場合、 4つの端点モデルの同時設計を行うだけで、Fig.4.21の四角形パラメ ータボックスの任意の点をカバーで-きる特徴を持つ。 このコントローラは、
a仏マ
k cdd抽マ
p +K
Cリp +内,u
k ぐリ司L
P + k cu p 一一寸1111110」
K K
B D
K K A
「l111111L C
( 4.33)
sm=
[ t t i (i = 1,…"',4) (4.34)
のように構成する。 各端点コントローラには次の仕様を与える。
-仕様1
できるだけ小さなァ>0に対して、Fig.4.1に示すH∞コントロールシステ ム 相 互 結合 系 に おけ る 制 御目的r
= [X c YC lfI c Yから制 御量
Z=[Z1 Z2 Z3 Z4 Z5 Z6Yまでの伝達関数のH∞ノルムを最小にする。
IITr→zll
< r (4.35 )-仕様2
閉ループ系の極が含まれる極領域は原点を中心とする半径35の左半円と する。
H∞コントロールシステムの相互結合系27)泊)CFig. 4.1 )において、コントロー ラKactは積分動作とアクチュエータダイナミックスCFig.4.2)を含む。 4.1節と 同様にFig.4.22の極配置制約は、コントローラを実装するために必要であり、 こ の制約がなければ、閉ループ系とコントローラの極にハイゲインのものが現れ、
実装するとノイズを増幅してしまうので、スタートアップする事ができない。
多モデルに対するコントローラを実装するためには、 サンプリングを早くする 必要があったため4.1節より大きな極配置制約となっている。 W2, W4, Wóは重み 関数で、 トレードオフの関係にある、精度よく位置を制御することと、 波力か
ら制御力までのゲイン特性を波周波数領域で、十分小さくすることを、共にでき るだけ高い次元で満足させるように決定する。 今回はFig. 4.23に示すような重み 関数を選択した。
各端点について上の仕様をLMI表現し、 これらを連立させて、 端点コントロ ーラのパラメータとyを決定変数とする線形目的関数の最小化32),33)を、 Matlabの LMI Control Toolbo�9)を用いて行った。 各端点コントローラが設計されれば、
回頭により時々刻々変化するαlnom' a2nomの値が計算で-きるので、(4.32)、(4.33)式 より時々刻々コントローラのパラメータが変化するゲインスケジュールドH∞
制御が可能となる。
Fig. 4.23に端点P1,PO' P4におけるコントローラの周波数特性を示す。 左側の 図は指令値からそれぞれの運動までのゲイン特性を、右側の図は波力から制御 力までのゲイン特性を表している。右側の図の重み関数夙,Wム院は、 ゲイン 特性を波周波数領域で‘十分小さくするように選ばれている。 Fi_g.4.24は本手法に より設計した端点P1,PO' P4におけるコントローラの指令値か
る
制御力までのゲイン特性を、 4.1節で設計したH∞コントローラのものと比較した図である。 回
頭角が大きくなると、 指令値Xcから制御力久r及び指令値Yから制御力Fy..へのゲ、
インが大きくなる必要があるにもかかわら
ず
、4.1節で設計したH∞コシ
トローラではこれらのゲインが非常に小さい。 この為、 回頭角が大きくなると制御性 能が劣化したのもと考えられる。 本手法により設計した端点P1,PO' P4における コントローラではこれらのゲインが指令値Xc から制御力九r及び指令値�から 制御力Fy,へのゲインと同じくらい大きい為、 制御性能を劣化させることなく、
大角度の回頭が可能となる。
4.2.3コントローラのスイッチング
4ユ2節に示した手法では360度回頭のような非常に大きな回頭を可能にする コントローラは設計できなかった。 そこでこのような非常に大きな回頭には、
し、くつかのコントローラを用い、それらをスイッチすることにより大きな回頭 を実現する必要がある。 コントローラのスイッチングを行うには、 次に示す2 通りの方法が考えられる。
方法1 : 1回転360度を適当な範囲で分割し、 分割されたそれぞれの角度範囲 について前節に示した手法に従ってコントローラを設計する。 例え ば、 5分割したとすると、・36度""36度、 O度""72度、 36度,_,108度、 72 度,_,144度、108度""180度、144度""216度、180度""252度、216度""288 度、 252度,_,324度、 288度""360度の角度範囲で'10個のコントローラ を設計する。 o度から回頭を始めたとすると、 36度田頭した時点でコ ントローラを2番目のコントローラにスイッチする。 更に72度まで回 頭した時点で3番目のコントローラにスイッチする。 この操作を繰り 返していけば360度回頭のように非常に大きな回頭が可能となる。 各 コントローラの守備範囲はこの場合36度つeつ重なっている。 この重
なりがないとすると、 回頭指令がコントローラのスイッチング角度 と一致した場合、 少しの誤差で隣ど、うしのコントローラ間で・の切り 替えが頻繁に起こってしまい好ましくない。 重なりがあると、 い「
たんコントローラが切り替わった後は、 切り替わり点近傍ではスJ ッチ後のコントローラが制御を受け持つことになり、 切り替わり点 近傍における誤差による頻繁なコントローラのスイッチングを防止 できる。
方法2:1回転360度を適当な 範囲で分割し、 分割された一つの角度範囲につ いて前節に示した手法に従ってコントローラを設計する。 例えば、 ベ 分割したとすると、 -36度"'36度の範囲で・コントローラを一つ話十 し、 36度お きに同じコントローラを配置するCFig.4.25)0 0度から回 頭を始めたとすると、 36度の回頭まではコントローラ①が制御を受 け持つ。 36度回頭した時点で、コントローラ②にスイッチするが、 コ ントローラそのものはコントローラ①とまったく同じで、 コントロ ーラ②に入力される浮体の位置、 指令値等がコントローラ②用に 座 標変換されたものになる。 この操作を繰り返していけば360度回頭の ような非常に大きな回頭が可能となる。 コントローラに守備範囲を 持たせるのは方法1と同じ理由による。
どちらの方法も長所、 短所を併せ持つ。 方法1でiま多数のコントローラを設 計しなくてはならないが、 スイッチングは比較的単純に行える。 方法2ではコ ントローラの設計は1つでよいが、 スイッチングを行う際に、 位置、 指令値等 の座標変換を行 わねばならず、 指令が次々に入力されるとスイッチングが複雑 にはる。 また、 いず-れの方法においても、 1つのコントローラが守備する範囲 が広いほど回頭に要するスイッチの回数が減り有利であるが、 広い角度範囲を 安定化しようとするほど、 本来安定化する必要のない領域も増える為、 コント ローラの性能が劣化する。 これら2つの関係はトレードオフの関係にあり、 本 実験では5分
割
とし、 1つのコントローラの守備範囲を72度とした。 本実験では 2つの方法を試みた結果、 方法2の方が制御性能が良いことがわかった。 この為、実験結果CFig.4仏4.32)は方法2'こ従ってスイッチンクーした結果を示した一 方法1で設計した0度"'72度の範囲を受け持つコントローラを単独で-動作さ
込
ても制御性能はあまり良くなかったことを考慮すると、 同じ重み関数を用いて
叩
個のコントローラを設計したため、 性能が方法2に比べて良くなかったと考 られる。4ム4 実験方法
る
?
定式スラスターによる位置制御実験状態は4.1.4節のFig.4.5、 4叩じであ実験の方法についても同様である6 コントローラの実装はゲインスケジュー リングによりCPUの負荷が大きくなるため、 制御システムを高速サンプリン グが可能なDSPボードを使用したものに変更して行った。
4ム5 実験結果及び考察
FiQ. 4.26は4.1節で設計したコントローラによる、 平水中でのステップ指令 (V
7
=別eg)に対する応答{X軸方向変位(前後揺〉・ Y軸方向変位〈左右 揺γ
. 回頭角〈船首揺〉・スラスター推力)を示している。 大角度の回頭を行 うと応答が振動的になっていることがわかる。 この傾向は点線で示した数値シ ミュレーションにおいても同様に現れている。 なお、 スラスターへの電源及び 各種信号伝達用のケーブルの影響が無視できないことが4.1節の実験結果でわか っているので、 この数値シミュレーションにはこれらの影響をバネ・夕、ンハ一 系として取り入れている。 さらに大きな回頭角指令を入力すると実験・シミュレーションともに応答が発散し、 制御不能となった。
FiQ.4.27はゲインスケジュールドH∞コントローラによる、 Fig.4.26の場合と同 じ
ス
テップ指令(ljI cニ35 deg)に対する応答である。 応答が非常に安定しており 、Fig.4.26のような振動が見られない。
FiE.
4
mは回頭角をO→35→O→-35→O度と、 設計限度いっぱし、に変更した 結果
を示している。 0.15mのX方向およひ,y方向変位指令が回頭角指令と同時 に与えられている。 X、 Y方向への移動中も回頭がスムーズに行われ、 オーバ ーシュート・定常偏差ともに認められず、 ゲインスケジュールドH∞コントロ ーラが非常に効果的に働いていることがわかる。 また、 シミュレーション結果 は実験結果とよく一致している。次に入射角度60度の不規則波中においてX、 Y方向変位指令及び回頭角指令 を与えた場合の実験結果をFig.4.29に示す。 実験に使用した不規則波は有義波高 0.04m、 平均波周期1.0秒であり、 実機ではそれぞれ4.0m、 1 0秒に相当する。 ま た、 図中破線で示すように、 回頭角に対してはO→35→O→-35→O度、 x、
Y方向変位に対してはO→ 0.15→Omのステップ状の指令を与えた。 波という 外乱が存在するにもかかわらず、 どの指令に対してもオーバーシュートがほと んどなく、 定常偏差も認められず、 精度の良い位置制御が行われていることが わかる。 また、 5 0秒後から 15 0秒間の時系列より、 回頭中〈波の入射角が 25度 から95度まで時々刻々と変化する〉であっても模型はその位置を保持している ことがわかる。 さらに、 入射波時系列、 スラスター推力時系列の部分拡大図か ら、 スラスターが波周波数領域の運動にほとんど反応していないことがわかる。
実験によりコントローラは設計仕様をよく満足し、無駄なエネルギーを消費し ない効率のよい位置制御が行えていることが確認された。
FiQ.4.3 0は不規則波 (有義波高0.04m、 平均波周期1.0秒〉に潮流 κが加わっ た
場
合の実験結果である。 波・潮流ともに入射角は60度である。 オーバーシ
ユートが若干大きくなるものの、 波・潮流の外乱下でも定常偏差なく精度の高い
位置・回頭角変更が行われており、スラスター推力も波周期で変動していない ことがわかり、ゲインスケジュールドH∞コントローラの優秀性が確認された。
最後にコントローラをスイッチングし、70度の回頭と0.15mのX、Y方向変 位を同時に行った場合の実験結果Fig.4.31、4.32に示す。Fig. 4.31が平水中にお ける実験結果、Fig.4.32が60度の入射角で入射する波〈有義波高0.04m、平均波 周期1.0秒〉・潮流の外乱下における実験結果である。36度を越える大角度の回 頭の場合、回頭角指令は図中の破線で示すようにランプ状に与え、その傾斜は 指令角の大きさに反比例するように決めることにする。コントローラが切り替 わった直後、位置の誤差が若干大きくなるものの、回頭そのものは非常に滑ら かに進行していることがわかる。波・潮流の外乱下でもコントローラの切り替 えは問題なく行われ、スラスターも波周波数領域の運動に反応していない。
4.3首振り式スラスターによる位置制御
4ふ1
コントローラの設計
4.1節で得られた線形数学モデルを用いて位置制御用コントローラ設計を行う。
制御目的はスラスターを波周波数領域(線形波浪外力〉に反応しないように 駆動させ、位置を制御することである。つまり、コントローラは次の制御仕様 を満たさなければならない。
-仕様1
波・潮流の外乱下において、位置制御を精度よく定常偏差なしに行う0 .仕様2
波浪外力F:x;w, Fyw, Mzwから制御力凡打F戸Mzrまでの伝達関数のゲイン特性 を波周波数領域4,..._,10 rad/secで出来るだけ小さくする。
・仕様3
実機のスラスター性能の限界を考慮、して、スラスターの推力の範囲を
・0.2Kg<l\仰Fω<0.2 Kg とする。
Fig.4.33にH∞コントロールシステムの相互結合系を示す27),28)。コントローラ Kactは積分動作を含む。プラントの伝達関数Gは式(4ので計算できる。
W2, W4, W6は重み関数で、トレードオフの関係にある、精度よく位置を制御 することと、波力から制御力までのゲイン特性を波周波数領域で十分小さくす ることを、共にできるだけ高い次元で満足させるように決定する。本実験では Fig.4.34に示すような重み関数を選択した。
以上の準備の下で、Fig.4.3に示す極配置制約下、できるだけ小さなr>Oに 対して、制御目的r=
[X
c YC ljI c rから制御量Z=[Zl Z2 Z3 Z4 Zs z6fま での伝達関数のH∞ノルムを最小にするコントローラKを求める。コントローラの設計にはMatlabのLMI Control Toolbo�9)を使用した。H∞コ ントローラの周波数特性をFig.4.34�こ示す。左側の図は目標値からそれぞれの運
動までのゲイン特性を、右側の図は波力から制御力までのゲイン特性を表して いる。 右側の図の重み関数W2, W4, W6はゲイン特性を波周波数領域で十分小さく するように選ばれている。
4ふ2制御力の配分方法
実験に使用した1/100模型(全長: 1 m、全幅: 0.64 m、排水量: 38.0 Kg) をFig.4.35に示す。 スラスター配置に関しては、一般的には4機以上の複数のス ラ
ス
ターを用いることが多いと思われるが、実験装置の都合上、2機を対角線 上に配置した。 1機のスラスターは少なくとも2機分の推力を発生しうる大き さのものをここでは想定する。 そのため、プロペラの直径が大きくなっている。また、2機以上の複数個のスラスターを使用する場合でも故障等を考えると、
位置制御に必要な最小限のスラスター数(2機〉による制御性能を検討してお くことも重要であると思われる。
コントローラKの出力は、スラスターが発生しなければならないx,y軸方向 の推力及び、 z軸回りのモーメントであるから、これらの制御力を各スラスタ ーに配分し、スラスターの推力F仙Fωと、首振り角度δ1 ,02を決定する必要 がある(Fig.4.36)。 本研究では以下に示す2種類の配分法を用いた。
(配分法1)スラスター推力の自乗和を評価関数とした場合:
(以後、推力最小配分と表現する〉
評価関数
品1
+ ft;
Yl + f;!
2 + ft;
y2 ( 4.36)が最小となるように、Lagrangeの未定乗数法を用いて配分を行う。 位置保持 に必要な推力及びモーメントτ=(九円F戸Mzr)と、No.1、2の各スラスターの推力 成分んρん2,ft的ryl'んry2は、束縛条件
と
ん+ん=え んyl+んy2=Fyr
2λhxl+λ1 -lthYλ3 = 0 2fl山2+λ1 + 1仇yλ3=0 2fthYl +λ2 + 1伽λ3=0 2fthy2 +λ2 -1山λ]=0
(4.37)
(4.38)
を連立させて解くことによって次の ように得られる。
1
� 1伽九1zλh1=-tlUl 2 fJ X - 2(1ι+1ら)y \
1
� 1伽凡1zfんhr2-一+
f
Jゐ三
‘問旧� . 2 J X 2(1ム+1ん仇らY空
1
� 1上,小いλ4ι' fhmv1=-fyl 2 � v+y
?三2(I+ 1仇/hx Y)
1
� 1,I.v九17fth=I恥 2Y 2(lv2 一九 一 ?
三
tb+l仇Y)(4.39)
この各スラスターの推力成分より、推力・首振り角が次式より計算される。
Fth1 =
�
f:!l +瓜1Fω=
�
ft�2 +ル= tan吋ん1/んY1 )δ1 δ2
= tan吋 fthr2/ fthY2)
〈配分法2)首振り角の正接の自乗を評価関数とした場合:
(以後、 角度最小配分と表現する〉
( 4.40)
潮流等の外乱の入射方向の変化に伴ってスラスターの首振り角δa (スラス ターはこの平均首振り角のまわりで首振り運動をする事になる。〉が変化する
はずであるから、 この平均首振り角を中心に
{tan(δl-Ôa)Y+{tan(δ2一δa)Y (
4.41)
が最小になるように、Lagrangeの未定乗数法を用いて配分を行う。NO.1、2 の 各スラスターの推力のδaの 方向とそれに直角方向の推力成分ftJu1' t;仇出f内,1,んly2
は、 束縛条件
ん+ん=人 んyl+んy2=
fyr
fxτ=-Fyτsin 九+Fxr∞s8a f..-r = F,,-r cosô + n Fvヂsinô n
J yτ yr -��� a . � xτ u
lん=1伽COSÔa-1均sinδa l;hy = 1伽sinゐ+1均∞SÔa
(4.42)
と次式を連立させて解くことによって得られる。
lん(!thx1!1仇:Y1!1ふーん2!t�Y1んy2) -[ん(仏1は2-必2瓜1)
= 0 (4.43) 各スラスターの推力成分が求まると、推力・首振り角は次式により計算される。Fth1
=� ι1+必1
Fω= � 必2+品2
δ1 =
tan吋久hx1/んy1)
+δa82
=t釦一\!thx2/!thy2)十九
( 4.44)
(4.42)、(4.43)式は高次式となるので、複数個の解が求まった場合は絶対値が最 小のものを採用し、解がすべて虚数となった場合は、推力の自乗和が最小にな るように配分した。
ここで設計されたコントローラはスラスターを逆転させ、 マイナスの推力を 発生させることはない。 マイナスの推力が必要な場合、コントローラはスラス ターを180度旋回させようとする。 首振り運動には角速度の制限があり、 この ような動きは現実には不可能である。 そこで平均首振り角δaから+90度以上の 首振りが必要となった場合は次に示す規則に従うことにする。
δ1 >π/2+δa δ2 >π/2+δa
δ1 -δ1ーπ
52=δ2ーπ
Fth1
=-Fth1 Fth2
=-F;δ1 <ーπ/2+δa δ2<-π/2+δa
δ1=51十π
δ2 -δ2+π
( 4.45)Fth1
=-Fth1 Fth2
=-F;ーπ/2+δ壬δlgπ/2+δa π/2+8 �δ2壬π/2+δa
δ1 -δ1
δ2 -δ2
Fth1
=Fth1 F的2=Ft
4.3.3 スラスターダイナミックス
模型のスラスターは、 ほぼ瞬時に指令値どおりの推力・旋回角に達するが、
実際のスラスターはダイナミックスを持ち、 目標とする推力・旋回角に達する までに時間的な遅れが生じる。 さらに旋回運動については角速度にも制限があ る。 これらの特性はすべてコントローラの性能を劣化させ、最悪の場合制御不
能という事態を引き起こす。そこで模型実験では、これらの特性を ( 4.40)、( 4.44)
式
に付加し、模型スラスターを実機の特性を持つかのように動かし、制御性能 を検討する必要がある。 従って、実際に実装したコントローラは Fig. 4.37に示 すように、設計されたコントローラにアクチュエータダイナミックスを付加し たものとなっている。 図に示すように、時定数0.7秒の一次遅れで推力が発生す るように設定した。 また、スラスターの旋回角速度ωの制限については、実際 に使用されているスラスターを想定して、上限値を:t20 (deglsec)とした3九スラ スターの旋回範囲は+90度であるので、最大でも4.5秒(実機に換算して45秒〉の時聞があれば任意の方向に向けることが可能である。
4ふ4 実験方法
首振り 式スラスターによる位 置制御実験の状態図をFig.4.38、4.39に示す。
実験の方法は4.1.4節と同様である。 潮流は運動計測装置を曳航電車上に設置 し、曳航電車を動かすことによって相対的に発生させた。 また、運動計測装置 のカメラ〈空間固定座標系Fig. 4.39)を回転させる事により波及び潮流の入射 方向 を相対的に変化させた。 コントローラの実装にはDSPボードを用い、す べてのデータはサンプリング周波数10 HzでAOO秒間記録した。
4ふ5実験結果及び考察
Fil!. 4.40 、 Fig. 4.41 は 、 平水中で の ステップ指令(Xc=0.15m, Yc=0.15m,
Vc
J
15dcg〉に対
する応答{X軸方向変位〈前後揺〉・Y軸方向変位〈左右揺〉・回頭角〈船首揺〉 ・スラスター推力・ スラスター旋回角)、 また、実線が実験 結果を破線が計算結果を示している。 Fig.4.40が推力最小配分を行った場合の実 験結果、Fig.4.41が角度最小配分を行った結果である。 図より定常偏差なく変位 が行われ、-
H∞コントロー ラが効果的に働いていることが分かる。過渡状態に おける実験と計算の結果はよく一致している。また、固定式スラスター(Fig.4.7) と比較しでも遜色ない位置制御性能が得られている。
Fig. 4.42、Fig. 4.43に入射角60度、有義波高0.40m、平均波周期1.0秒の不規則 波中で位置保持実験を行った場合の時系列を示す。 実機ではそれぞれ 4.0m、10 秒に相当する。 Fig. 4.42が推力最小配分を行った場合の実験結果、Fig. 4.43が角 度最小配分を行った結果である。 図は上から}I慎に入射波、X方向変位〈前後揺〉、
Y方向変位(左右揺〉、回頭角〈船首揺〉、スラスター1の推力 ・旋回角、ス ラスター2の推力 ・旋回角の時系列を、 また、実線が実験結果を、破線が計算 結果を示している。 角度最小配分を行った場合、スラスターの旋回運動振幅が 推力最小配分の場合に比べて非常に小さくなっていることがわかる。 また、推 力も想定最大推力0.2Kg以内に収まっていることもわかる。 巨大なスラスター を旋回運動させることを考えると、制御に必要な推力が多少増大しでも、旋回 運動を最小に抑えた制御が望ましいと思われる。 定点保持性能はどちらも優秀
であり、 スラスターが波周波数領域の運動に反応せず、 無駄なエネルギー を使 うことなく位置制御が行えていることがわかる。
Fig.4.44、 Fig.4.45に入射角60度の不規則波と 0.08m/secC実機で'1.6knotに相当〉
の潮流中で、位置保持実験を行った場合の時系列を示す。 Fig.4.44が推力最小配分 を行った場合の実験結果、 Fig.4.45が角度最小配分を行った結果である。 図は上
から順に入射波 、 潮流速度、 X方向変位(前後揺〉、 Y方向変位(左右揺〉、
回頭角(船首揺〉、 スラスター1の推力・旋回角、 スラスター2の推力・旋回 角の時系列を示している。 潮流による方向性の ある強し、外乱が あるため旋回角 度がほぼ一定の位置 で旋回運動が小さくなっていることがわかる。 定点保持性 能 はどちらも優秀であり、 スラスターが波周波数領域の運動に反応せず、 無駄 なエネルギー を使うことなく位置制御が行えていることがわかる。 また 、 固定
式スラスター CFig.4.8)と比較して も遜色ない位置保持性能が得られている。
Fie:. 4.46、 4.47 、 4.48、 4.49に外舌し(有義波高0.04m、 平均波周期1.0秒の不規 則
波
+0.08m/secの潮流〉の入射角が 90度から0度に変化する場合と9 0度から180 度に変化する場合の時系列を示す。 位置計測用のカメラ(空間固定座標系〉を 回転させることにより、 相対的に外乱 の方向 を変化させた。 Fig. 4.46、 4.47が推 力最小配分を行った場合の実験結果、Fig.4錦、 4.49が角度最小配分を行った結 果である。 どちらの場合も 外乱 の方向が変化しでも浮体は一定位置 をよく保持 しているが、角度最小配分の方が旋回運動の振幅変動が小さいことがわかる。次に入射角60度の不規則波と潮流中でX 、 Y 方向変位指令及び回頭角指令を 同時に与えた場合の時系列をFig. 4.5 0、 4.51に示す。 Fig. 4.5 0が推力最小配分を 行った場合の実験結果、Fig.4.51が角度最小配分を行った結果である。 どちらと も外乱が存在する場合でも滑らかな位置変更が行われ 、 定常偏差のない精度の 良い位置制御が行われていることがわかる。また 、固定式スラスターCFig.4.13 )
と比較しでも遜色ない位置制御性能が得られている。
最後に、 旋回運動 の時間遅れ は推力の時間遅れに比べて非常に長いと考えら れる の で、 旋回角速度の制限が制御性能に与える影響につい て検討を行った。
Fig.4.52、 4.53に旋回角速度の制限値を 10deg!sec、 5 deg!secとした場合の不規則 波中(有義波高 0.04m、 平均波周期1.0秒〉における位置保持実験結果を示す。
推力最小配分は、 制限値が 10deg!secC20deg!sec x 1/2) 、 5 deg!sec C20deg!sec x
1/ 4)と厳しくなるにしたがって 、制御性能が劣化していることがわかる。 こ れ は角速度制約が厳しくなるほ どに、 角度最小配分に比べて旋回運動が大きいた め、 スラスターが所定の旋回角度に到達できなくなるためであると考える。 角 度最小配分は、制限値が 10deg!secC20deg!sec x 1/2)の場合、 5 deg!sec C20deg/sec
x 1/ 4 ) の場合、 ともに位置保持性能 の劣化はほとんど認められない。
4.4結果のまとめ
無係留浮体式海洋構造物の位置制御模型実験及び数値シミュレーションを行 った結果、 次 の結論を得た。
1 . ゲインスケジュールドH∞コントローラは、波・潮流の外乱下でも、定 点保持及び、定常偏差・オーバーシュートがなく精度の良いX、Y方向変 位制御並びに大角度の回頭制御が可能である。
2. ゲインスケジュールドH∞コントローラは、波周波数領域でのスラスタ 一反応を抑えることができ、位置制御に必要なエネルギーを節約すること が可能である
3. ゲインスケジュールドH∞コントローラのスイッチングを適当な角度間 隔で行うことにより、無制限の大角度の回頭が可能である。
4. 制御に必要な力及びモーメントを、首振り角度の自乗和が最小になるよ うに各スラスターに配分すると、推力の自乗和が最小になるように配分す る場合に比べて、同じ制御性能でスラスターの首振り運動を非常におとな しくできる。 この場合の推力の変動振幅も、推力の自乗和が最小になるよ うに配分する場合と比べても大きな差はない。
5. 首振り角速度の制限値を小さくしても角度最小配分の場合は制御性能の 劣化が少なく、良好な位置保持が可能である。
6. 外乱の方向が変化しでも本章で設計したコントローラは一定位置を精度 よく保持可能である。