• 検索結果がありません。

ウェアラブルカメラの動画に基づく活動量による 基礎看護技術の評価の試み −ベッドメイキングにおける熟練者と初心者の比較−

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ウェアラブルカメラの動画に基づく活動量による 基礎看護技術の評価の試み −ベッドメイキングにおける熟練者と初心者の比較−"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

速 報. ウェアラブルカメラの動画に基づく活動量による. 基礎看護技術の評価の試み. −ベッドメイキングにおける熟練者と初心者の比較−. 土 屋 守 克 �)�) ・伊 藤 幸 太. �) ・柳 田 徳 美. �) ・藤 田 文 子. �). 髙 橋 誠 一 �) ・渡邊裕見子. ) ・坂 上 貴 之. ) ・眞 邉 一 近. �)�). �)日本大学大学院総合社会情報研究科 �)日本医療科学大学保健医療学部看護学科 �)大阪大学人間科学研究科生物人類学分野. �)帝京平成大学ヒューマンケア学部看護学科 �)目白大学看護学部看護学科. �)埼玉医科大学総合医療センター看護部 )東京医科大学医学部看護学科. )慶應義塾大学 �)日本大学生物資源科学部. Assessment of basic nursing skills by activity based on wearable camera video:. Comparison between expert and novice nurses in bed-making. Morikatsu Tsuchiya �)�) ;Kohta Ito. �) ;Narumi Yanagida. �) ;Ayako Fujita. �) ;. Seiichi Takahashi �) ;Yumiko Watanabe. ) ;Takayuki Sakagami. ) and Kazuchika Manabe. �)�). 1) Graduate School of Social and Cultural Studies, Nihon University. 2) Department of Nursing, Faculty of Health Sciences, Nihon Institute of Medical Science. 3) Laboratory of Biological Anthropology, Department of Human Sciences, Osaka University. 4) Department of Nursing, Faculty of Health Care, Teikyo Heisei University. 5) Department of Nursing, Faculty of Nursing, Mejiro University. 6) Nursing Office, Saitama Medical Center, Saitama Medical University. 7) School of Nursing, Faculty of Medicine, Tokyo Medical University. 8) Keio University. 9) College of Bioresource Sciences, Nihon University. ― 101 ―. 看護理工,8:101〜108,2021. 連絡著者:土屋 守克 受領日 2020 年�月 12 日. 日本医療科学大学保健医療学部看護学科. 〒350-0435 埼玉県入間郡毛呂山町下川原 1276. E-mail:[email protected]. Abstract. Purpose: This study aims to assess video-based activity (hereinafter referred to asÏvideo activityÐ) and acceleration. for bed-making techniques simultaneously and compare the differences between expert and novice participants. It also. investigates the characteristics of video activity. Methods: An expert nurse (nursing faculty member) and three novices. (nursing students) were included in the study. The subjects used a wearable camera and smartphone on their chest and. were asked to perform bed-making. Optical flow was used to calculate the video activity. Results: Video activity and. acceleration were lower in skilled participants, and work time was shorter in the expert participant. The entropy of video. activity and acceleration was the lowest for the expert participant, and a level of proficiency was exhibited by the novice. participants. Conclusion: The values calculated from video activity and acceleration differed between expert and novice. participants. It was suggested that this could be used as an indicator of proficiency in nursing techniques.. Key words: optical flow, wearable camera, activity, acceleration, entropy. 要 旨. 目的:ベッドメイキング技術を対象として,動画に基づく活動量(以下,動画活動量)とともに加速度を測定したう. えで,熟練者と初心者の相違について比較し,動画活動量の特性について検討することを目的とした.方法:熟練者. (看護学科教員�名)と初心者(看護学科学生�名)を対象とした.対象者は,胸部にウェアラブルカメラとスマート. フォンを装着したうえで,ベッドメイキングを行った.動画活動量の算出にあたっては,オプティカルフローを使用し. た.結果:動画活動量および加速度は,熟練者が少なく,作業時間は熟練者が短かった.動画活動量および加速度のエ. ントロピーは,熟練者が最も低値であり,熟練度との対応関係があった.結論:動画活動量や加速度から算出された値. が,初心者と熟練者の間に相違が認められた事実から,看護技術の「熟練度」の指標としての可能性が示唆された.. キーワード:オプティカルフロー,ウェアラブルカメラ,活動量,加速度,エントロピー. キーメッセージ. �.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?. 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?. ウェアラブルカメラで撮影した動画のÏブレÐへの関心を端緒に,コンピュータービジョン技術のなかの�つであ. る,オプティカルフローを応用した身体活動量の測定を試みた.. �.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?. 看護・介護の実施者が装着したウェアラブルカメラで撮影した動画データのみから熟練度の測定が可能になる.さ. らに,技術の熟練度の評価が必要となるほかの分野においても広く応用が期待できる.. �.今後どのような技術が必要になるのか?. 2D情報に基づく分析のため,奥行きを考慮した身体活動量の測定技術が必要となる.. はじめに. 現在では,腕や頭部など,身体に装着して利用する. ことが想定された端末である,いわゆるウェアラブル. デバイスによって容易に装着者の活動量が測定可能と. なっている 1)−4) .これらの機器の多くは加速度計を利. 用して活動量を測定している 5) が,測定対象者の実際. の行動の詳細を把握することは容易ではない.そのた. め,測定された活動量と対象者の実際の行動を対応さ. せるために,対象者への質問紙などの併用によって情. 報を補う必要性が提案されている 6)7) .. そこでわれわれは,これまで動画に関連した研究を. 遂行するなかで,ウェアラブルカメラによって撮影さ. れた動画のÏブレÐがカメラの装着者の加速度等と近. 似するとの仮説から,動画データに基づく活動量(以. 下,動画活動量)の測定方法を着想した.言わばÏブ. レÐを定量化する動画活動量の算出にあたっては,デ. ジタル画像の分析において動体検出等に使用されるオ. プティカルフロー(Optical Flow)を応用した.オプ. ティカルフローの算出によって,動画の前のフレーム. にあるピクセルと同じ画像上の特徴的な点(特徴点:. keypoint)をつぎのフレームで見つけ出すことで,そ. のピクセルの移動量を推定することが可能になる 8) .. ウェアラブルカメラの動画データのみから加速度ある. いはそれに類似したデータが得られれば,定量的な. データを収集できるだけでなく,撮影した動画から動. 作の詳細が把握できるようになる.それによって,先. 述のような加速度計を利用した活動量測定の課題を解. 決するための一助となると考えた.この動画活動量に. かかわるこれまでの報告として,土屋 他 9) は,対象者. 看護理工学会誌(2021). ― 102 ―. にウェアラブルカメラを装着し,いくつかの基本的な. 動作において動画活動量と加速度を同時に測定し,動. 画活動量の活動量としての一定の妥当性を示してい. る.そして,看護分野であれば被写体との距離などの. 条件が比較的統制されている手術室看護師の技術や,. 注射,輸液の準備,ベッドメイキングなどの基礎看護. 学技術の評価に応用が可能と結論づけている.. 一方,Shannon 10) により情報理論に応用されたエン. トロピー(entropy,平均情報量)とは,その情報源. がどれくらいの情報量を提供してくれるのかを平均的. に予測したもの 11) であり,複雑性の指標とされている.. このエントロピー,あるいはこれに類する近似エント. ロピー(Approximate Entropy,ApEn)やサンプル. エントロピー(Sample Entropy,SampEn)などにつ. いては,医療分野に限定しても,これまで身体動. 作 12)−16) ,不整脈. 17)−19) ,心拍変動. 20) ,心機能. 21) ,体温. 22) な. どの多くの分析に応用されてきた.. われわれは,動作の「熟練度」にはさまざまな概念. が含まれるが,「効率性」や「円滑さ」がそれに含ま. れると考えた.そして,それらはウェアラブルカメラ. によって撮影された動画のÏブレÐに反映することに. より,動画活動量によって測定可能と予測した.その. ため,以上のような既存研究をふまえ,動画活動量や. 加速度,さらに複雑性の指標としてのエントロピー. が,看護技術における「効率性」や「円滑さ」など,. いわゆる「熟練度」が包含すると思われる指標として,. 一定の妥当性があるとの仮説を立てるにいたった.. そこで本研究においては,基礎看護技術のうち,. ベッドメイキング技術を対象として,動画活動量とと. もに,これまで活動量の測定に多く用いられている加. 速度を比較対象として測定した.そして,この�つの. データについて,熟練者と初心者の相違についてエン. トロピーを含めて比較し,特に動画活動量の特性につ. いて予備実験的に検討することを目的とした.. 方 法. 本研究における動画の撮影方法,加速度の計測方法,. 分析方法等については,土屋,他 9) に準拠した.. �.対象. 熟練者(看護教員�名:看護教育歴 20 年以上)と. 初心者(看護大学生�名)とした.熟練者は,基礎看. 護学の科目においてベッドメイキングの授業を担当し. ている看護教員とした.初心者は,ベッドメイキング. の授業は受けているものの,演習などにおいてわずか. な経験しかない看護大学�年次生とした.. �.使用機器. ベッドメイキングに使用した機器は以下のとおりで. ある.. ・シーツ(シーツ:オカダ医材株式会社). ・マットレスパッド(防炎防ダニベッドパッド:植. 村縫工株式会社). ・マットレス(エバーフィットマットレス,. KE-523A:パラマウントベッド株式会社). ・ベッド(�クランクギャッジベッド,KA-. 59121A:パラマウントベッド株式会社). ・床頭台(ベッドサイドキャビネット,KF-. 6005A:パラマウントベッド株式会社). 動画の撮影には,ウェアラブルカメラ(GoPro. HERO4 Silver Edition,CHDHY-401-JP:GoPro,. Inc.)を使用した.動画の撮影にあたっては,ビデオ. 解像度 1080 p,フレーム/秒 30 fps,スクリーン解像. 度 1920×1080 で設定した.. 加速度は,スマートフォン(iPhone 5 ND299J/A:. Apple Inc., OS:iOS 10.3.3)に内蔵された�軸加速. 度計(LIS331DLH:STMicroelectronics,分解能:約. �mG,測定範囲:±2 g/±4 g/±8 g,出力周波数範. 囲:0.5 Hz-1 kHz) 23)24) のデータを,加速度計測アプ. リケーション(加速度ロガー:Naoki Kisara氏)を使. 用して,分析用 PC(CF-LX3JEABR:Panasonic. Corporation,OS:Windows 10 Pro,プロセッサー:. Intel Core i5-4310U,動作周波数:2 GHz,RAM:8. GB)に出力した.本研究においては,人の主要な活. 動が 0.3-3.5 Hz であること 25) やデータ処理などを考. 慮して,加速度のサンプリング周波数は 30 Hz で活. 動が十分に把握可能と判断した.. スマートフォンとウェアラブルカメラは,胸部用. ハーネス(Chest Belt Strap Mount:Zookki Business. Co., Ltd.)によって,対象者の胸部に装着した(図. �).. �.手続き. 対象者には,ウェアラブルカメラとスマートフォン. を装着し,研究者の指示により開始・終了位置から. ベッドメイキングを開始および終了するように指示し. た.ベッドメイキングに使用する物品は,あらかじめ. ベッド,ベッドの頭側付近に設置した床頭台の上に配. 置した.使用した物品の配置と対象者の動作を図�に. 示した.. ベッドメイキングの手順の概要は以下のとおりであ. る.なお手順については,通常の授業中に守本,他 26). に準じて指導を行った.. ①開始・終了位置に立位で待機し,研究者の指示に. より開始する.. ②床頭台に配置した畳んであるマットレスパッド. を,ベッド上のマットレスの上に広げる.. ③広げたマットレスパッド上に,シーツを広げる.. ④ベッドの四角をシーツに三角形を作ったうえで. 看護理工学会誌(2021). ― 103 ―. マットレスの下に敷き込む.. ⑤すべての作業が終わったのち,開始・終了位置に. 戻り,作業終了の合図をする.. �.分析方法. 動画活動量の算出にあたっては,Visual C ++ 2010. Express(Microsoft Corporation)および画像処理ラ. イブラリ OpenCV 2.2 27) の CalcOpticalFlowPyrLK 関. 数(画像ピラミッドを利用して Lucas-Kanade 法を. 反復実行することにより,疎な特徴集合に対するオプ. ティカルフローを求める) 28)29) を使用した.. 動画の時刻 tにおけるフレーム内特徴点座標を pi,. 時刻 t + 1 における対応点の座標を pʼiとすると,特徴. 点の移動量は式(�)で得られる.本研究において. は,オプティカルフローの算出に cvGoodFeatures-. ToTrack関数により画像上のコーナー(角)につい. て 100ヵ所の特徴点検出を行い,各点の移動量の平均. 値をフレーム間の動画活動量として式(�)により算. 出した.. ‖pʼi−pi‖ (�). 動画活動量(pixels)= Σ100i=1‖pʼ i−p i‖. 100 (�). 加速度は,個々の加速度計の特性を相殺するため. に,スマートフォンを机上に�秒間静止させた状態に. 出力される x軸,y軸,z軸の加速度から合成加速度. (G)を式(�)で算出し,その平均値を差し引いた. うえで,絶対値の経時的変化を算出した.. 合成加速度(G)= ax2+ay2+az2 (�). ここで,ax,ay,azは,x,y,z軸の加速度. 動画活動量と加速度のノイズ成分を除去するために. 1.0 Hz の�次バターワース型ローパスフィルター 30). を適用した.. 動画活動量と加速度の累積量,単位時間(�秒)あ. たりの平均値(標準偏差)を算出した.また,対象者. 間のベッドメイキングの動作の複雑性を評価するため. に,動画活動量と加速度のエントロピーを R version. 3.6.3 31) の entropyパッケージで算出した.エントロ. ピーの単位は,情報量の単位である nat(natural unit. of information)を使用した.さらにこのエントロ. ピーが,初心者と熟練者の判別や動作の変化の判別を. 可能にすると考えた.そこで,対象者間のベッドメイ. キングの動作の複雑性の類似度を評価するために,作. 業時間を 10 分割した場合における各対象者のエント. ロピーを算出し,最長距離法(最遠隣法)による階層. クラスタ分析を行い,樹形図(デンドログラム)を描. 画した.分析には,R version 3.6.3 31) を使用した.. �.倫理的配慮. 本研究の実施にあたっては,日本医療科学大学 研. 究・倫理委員会の承認を得るとともに(受理番号:. 2017023),対象者への研究の概要の理解,研究参加へ. の任意性,匿名性,個人情報の守秘性等について十分. に配慮した.対象者へは上記の内容について書面を用. いて説明したのち,署名により同意を得た.. 結 果. 撮影された動画の�例を図�に示した.対象者の動. 画活動量および加速度の累積量の推移を図�,�に示. した.なお,初心者Cの加速度は欠損データであった.. 動画活動量および加速度の累積量は,熟練者が最も. 少なく,作業時間は最も短かった.累積量の曲線の勾. 看護理工学会誌(2021). ― 104 ―. 図� 物品の配置と対象者の動作. 図� ウェアラブルカメラとスマートフォンを装着した. 対象者. 配が急であれば高い活動率(単位時間あたりの量が多. い),緩やかであれば低い活動率(単位時間あたりの. 量が少ない)ことを意味する 32) .動画活動量および加. 速度の累積量の推移における曲線の勾配は,初心者と. 熟練者との対応関係は認められなかった.この傾向. は,単位時間(�秒)あたりの動画活動量と加速度の. 平均値においても同様であった(図�,�).. エントロピーは値が高いほど複雑性が高いと判断さ. れる.ベッドメイキング技術における動画活動量のエ. ントロピーは,初心者A:8.96 nats,初心者B:9.25. nats,初心者C:9.24 nats,熟練者:8.46 nats,加. 速度のエントロピーは,初心者A:9.26 nats,初心. 者B:9.50 nats,熟練者:8.72 nats であり,いずれ. においても熟練者の値が最も低値であった.これらの. 結果について,作業時間を 10 分割した場合における. 各対象者のエントロピーを算出したうえで,階層クラ. スタ分析を行った(図 , ).グラフにおいては,濃. 色が高いエントロピー,淡色が低いエントロピーを示. している.その結果,動画活動量および加速度いずれ. においても,初心者と熟練者がそれぞれクラスタリン. グされた.. 考 察. 本研究においては,ベッドメイキング技術を対象と. して,動画活動量とともに加速度を測定したうえで,. 熟練者と初心者の相違について比較し,動画活動量の. 特性について検討した.. 対象者の動画活動量および加速度の累積量の推移. は,いずれにおいても熟練者が最も少なく,作業時間. は最も短かった.また,累積量の勾配および単位時間. あたりの動画活動量と加速度の平均値において熟練度. による相違がなかった.これらの結果は,いずれの. データにおいても,熟練者はベッドメイキングという. �つの作業にあたり,初心者とくらべて少ない動作で. 遂行できる事実を示しており,熟練者の技術の「効率. 性」を示唆している.. 動画活動量および加速度のエントロピーは,熟練者. が最も低値であった.この結果は,いずれのデータに. おいても,熟練者の動作は初心者とくらべて最も複雑. 性が低く,初心者と比較したときのベッドメイキング. 動作の「円滑さ」を示唆している.さらに,この結果. について,作業時間を 10 分割した場合における各対. 象者のエントロピーについて階層クラスタ分析を行っ. た結果,いずれにおいても,初心者と熟練者がそれぞ. れクラスタリングされた.この結果は,動画活動量お. よび加速度のエントロピーが,初心者と熟練者を判別. しうる指標である可能性を示唆している.. これまで,エントロピーによる動作の「円滑さ」あ. るいは「なめらかさ」については,小島 13) や水野 他. 33). によって検討されている.小島 13) は,高齢者を対象に,. 歩行動作時に�軸加速度計から得られたデータについ. てエントロピーを算出し,転倒群と非転倒群を比較し. た結果,通常歩行・最大努力歩行時に有意差があった. 看護理工学会誌(2021). ― 105 ―. 図� 対象者の動画活動量の累積量の推移. 図� 撮影された動画の�例. 図� 対象者の加速度の累積量の推移. ことを見出し,転倒の指標としての有用性を見出して. いる.また,水野 他 33) は,若年者と高齢者を対象に,. 反復動作時の�軸加速度計から得られたデータについ. てエントロピーを算出したが,若年者と高齢者に有意. 差は見いだせず,この結果の理由として,対象とした. 課題が直線的で容易であったことなどをあげている.. エントロピーの算出方法は若干異なるが,これらの既. 存研究の知見と,本研究の結果を考え合わせると,直. 線的な動作の課題においては,エントロピーの対象者. 間での相違の検出はむずかしいものの,歩行動作や本. 研究で取り上げたベッドメイキングのような比較的複. 雑な動作においては,エントロピーの算出により対象. 者間の特性の相違を検出できる可能性がある.. 一方,本研究で対象としたベッドメイキングに関連. して,看護師には,「看護職が対象に働きかける行為. であり,看護業務の主要な部分を成すものをいう 34) 」と. 定義される看護実践の能力が求められている.このよ. うな看護実践能力の維持,向上を目指すためには,な. んらかの評価が必要となる.そのため,これまで質問. 紙による評価尺度,実践ポートフォリオ,Objective. Structured Clinical Examinations(OSCEs)などによっ. て評価されてきた 35)−39) .しかし,多くの評価方法が人. の判断に基づくために主観の入る余地があるとともに,. 評価に費やされる労力は少なくない.これに関連して,. 土屋 40) は,電気・電子機器による看護師の活動・行動. 測定方法に関する文献をレビューしているが,レ. ビューの対象論文においては,本研究で取り上げたよ. うな,「熟練度」が包含するような「効率性」や「円. 滑さ」などの視点から分析を試みた研究は少ない.そ. のため,本研究で開発した動画活動量や加速度に基づ. く「熟練度」の評価方法は,看護師の看護実践能力の. 評価の自動化への一助となる可能性がある.. また,本研究においては,活動量測定に多く使用さ. れている加速度と,われわれが開発した動画活動量を. 同時に測定し,いずれのデータにおいても,熟練度の. 指標としての可能性を見出した.しかし,先に述べた. 看護理工学会誌(2021). ― 106 ―. 図 対象者の動画活動量のエントロピーの比較. 図� 単位時間(�秒)あたりの加速度の平均値. 図� 単位時間(�秒)あたりの動画活動量の平均値. 図 対象者の加速度のエントロピーの比較. とおり,加速度に基づく活動量からは,測定対象者の. 実際の行動の詳細を把握することはむずかしい.その. 点,動画活動量は,元の動画を確認すれば,対象者の. ベッドメイキングの手順や,ベッドの完成度など,動. 作の詳細や環境の変化が把握可能であるため,加速度. よりも優位性があると考えられる.また,本研究で試. みたように,ウェアラブルカメラを使用すれば,カメ. ラの設置場所に依存することなく動画が撮影,動画活. 動量が算出可能であるため,可搬性に富むというメ. リットがある.一方,オプティカルフローの算出にあ. たっては,画像上で装着者が動作したのか,撮影され. た被写体が動作したのか判別できない.そのため,基. 礎看護技術で言えば,患者に動きがある状況での車椅. 子移乗,体位変換,清拭などを評価の対象とするのは. むずかしいものの,�名で実施可能な,ベッドメイキ. ング,注射・輸液などの準備や,被写体に動作のない. 人形やシミュレーターを使用した基礎看護技術の評価. などにおいては十分に応用が可能と考えられる.. 本研究の問題点としては,対象者が�名と少ない点,. 単純に初心者と熟練者の動作を比較したのみにとどま. る点,ベッドメイキングの手順やベッドの完成度が検. 討されていない点,特徴点の数や検出方法,データの. フィルタリングの周波数,測定時間のエントロピーへ. の影響など,適切な分析方法が検討されていない点が. あげられる.今後は,より対象者を増やすとともに,動. 画活動量の外的基準とのさらなる比較や,上述のよう. な基礎看護技術をはじめとして,より複雑な看護技術. 等における検討,適切な特徴点の検出やデータのフィ. ルタリングの方法の検討などを進める必要がある.. ま と め. 本研究においては,ベッドメイキング技術を対象と. して,動画活動量とともに加速度を測定したうえで熟. 練者と初心者の相違について比較し,動画活動量の特. 性について検討した.その結果,動画活動量や加速度. から算出された値が初心者と熟練者の間に相違が認め. られた事実から,動画活動量や加速度の看護技術の. 「熟練度」の指標としての可能性が示唆された.今後. は,より対象者を増やすとともに,動画活動量の外的. 基準とのさらなる比較や,より複雑な看護技術などに. おける検討,適切な特徴点の検出やデータのフィルタ. リングの方法の検討などを進める必要がある.. 謝 辞. 本研究をまとめるにあたり,適切なご助言をいただき. ました,池谷のぞみ先生(慶應義塾大学文学部),松永伸. 太朗先生(長野大学企業情報学部企業情報学科),阿久津. 達矢様(慶應義塾大学大学院文学研究科図書館・情報学. 専攻博士課程),中澤弘子様(社会医療法人緑泉会米盛病. 院看護部),安齋勝人様(埼玉医科大学総合医療センター. 救急科),日本大学大学院総合社会情報研究科眞邉研究室. の皆様に心より御礼申し上げます.. 利益相反. 本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はな. い.. 文 献. 1)Apple Inc. Watch. Apple (2020). 2020/5/26,[https://. www.apple.com/watch/]. 2)Garmin Ltd. Fitness Watches Smartwatches GPS. Sport Watches (2020). 2020/5/22,[https://buy.gar-. min.com/en-US/US/c10002-p1.html]. 3) 株式会社タニタ.活動量計・歩数計(n.d.). 2020/5/. 22,[https://www.tanita.co.jp/product/c/c1020j0/]. 4) オムロン ヘルスケア株式会社.歩数計・活動量計 商. 品情報(2020).2020/5/22,[https://www.healthcare.. omron.co.jp/product/hja/]. 5) Dowd KP, Szeklicki R, Minetto MA, et al. A. systematic literature review of reviews on techniques. for physical activity measurement in adults: a. DEDIPAC study. Int J Behav Nutr Phys Act 15: 15,. 2018.. 6) 山村千晶,田中茂穂,柏崎 浩.身体活動量に関す. る質問票の妥当性について.栄養誌 60:265-276,. 2002.. 7)柏崎 浩.エネルギー代謝測定法:最近の進歩.臨. スポーツ医 18:409-418,2001.. 8)永田雅人,豊沢 聡.実践 OpenCV 3 for C ++:画像. 映像情報処理,263-305,カットシステム,東京,2017.. 9)土屋守克,伊藤幸太,髙橋誠一,他:オプティカル. フローに基づく新たな活動量測定方法の妥当性の検. 証 −アクションカメラの動画を利用した装着者の活. 動量測定の試み−.看護理工 7:149-161,2020.. 10)Shannon CE. A Mathematical Theory of Communica-. tion. Bell Syst Tech J 27: 379-423, 1948.. 11)青柳忠克. エントロピーのおはなし−「役に立つ,役. に立たない」はどうしてはかる?−,23-37,日本規. 格協会,東京,1993.. 12)飯田智行,宮川 健,枝松千尋,他:歩行速度の違. いが Approximate Entropy を用いた歩行中の頭部動. 揺周期の規則性に及ぼす影響.体力科学 56:481-. 488,2007.. 13)小島基永.加速度計を用いた高齢者歩行の安定性評. 価(動作の円滑さという視点から).バイオメカニズ. 看護理工学会誌(2021). ― 107 ―. ム会誌 30:138-142,2006.. 14)小島基永,大渕修一.地域在住虚弱高齢者に対する. 筋力増強トレーニングの最適負荷見極めにおける,. 加速度時系列スペクトルのエントロピーの有用性の. 検討.理療科 27:291-296,2012.. 15)Kojima M, Obuchi S, Mizuno K, et al. Power Spectrum. Entropy of Acceleration Time-series during Move-. ment as an Indicator of Smoothness of Movement. J. Physiol Anthropol 27:193-200, 2008.. 16)大橋秀平,芹田美佳,永田 萌,他.加速度時系列. スペクトルのエントロピーを用いた Star Excursion. Balance Test の試み.東京医療学院大紀 7:17-27,. 2018.. 17)Cirugeda-Roldán EM, Molina Picó A, Novák D, et al.. Sample Entropy Analysis of Noisy Atrial Electro-. grams during Atrial Fibrillation. Comput Math. Methods Med 2018: e1874651, 2018.. 18)Horie T, Burioka N, Amisaki T, et al. Sample Entropy. in Electrocardiogram During Atrial Fibrillation.. Yonago Acta Med 61: 49-57, 2018.. 19)Liu C, Oster J, Reinertsen E, et al. A comparison of. entropy approaches for AF discrimination. Physiol. Meas 39: 074002, 2018.. 20)Fujiwara Y, Sato Y, Shibata Y, et al. A greater. decrease in blood pressure after spinal anaesthesia in. patients with low entropy of the RR interval. Acta. Anaesthesiol Scand 51: 1161-1165, 2007.. 21)Cullen J, Saleem A, Swindell R, et al. Measurement of. cardiac synchrony using Approximate Entropy. applied to nuclear medicine scans. Biomed Signal. Process Control 5: 32-36, 2010.. 22)遠藤 裕,本多忠幸,大橋さとみ,他.体温曲線の. 複雑性による敗血症由来の多臓器機能不全患者の予. 後評価.日集中医誌 15:515-520,2008.. 23)DʼAlessandro A, DʼAnna G. Suitability of Low-Cost. Three-Axis MEMS Accelerometers in Strong-Mo-. tion Seismology: Tests on the LIS331DLH ( iPhone ). Accelerometer. Bull Seismol Soc Am 103: 2906-2913,. 2013.. 24)STMicroelectronics. MEMS digital output motion. sensor ultra low-power high performance 3-axes. ÏnanoÐaccelerometer (2009). 2019/5/23,[https://. www.st.com/resource/en/datasheet/lis331dlh.pdf]. 25)Sun M, Hill JO. A method for measuring mechanical. work and work efficiency during human activities. J. Biomech 26: 229-241, 1993.. 26)守本とも子,吉村雅世.環境調整技術.基礎看護技. 術Ⅱ(第 17版),10-24,医学書院,東京,2017.. 27)OpenCV team. OpenCV (2020). 2020/2/21,[https://. opencv.org/]. 28)OpenCV 2.2 C++ Reference. Motion Analysis and. Object Tracking-opencv v2.2 documentation (2010).. 2020/2/21,[http://opencv.jp/opencv-2.2_org/cpp/. video_motion_analysis_and_object_tracking.html?. highlight=calcopticalflowpyrlk#calcOpticalFlow-. PyrLK]. 29)Lucas BD, Kanade T. An Iterative Image Registration. Technique with an Application to Stereo Vision.. Proceedings of the 1981 DARPA Image Understand-. ing Workshop, 121-130, 1981.. 30)Butterworth S. On the Theory of Filter Amplifiers.. Exp Wirel Wirel Eng 7: 536-541, 1930.. 31)The R Project for Statistical Computing. R: The R. Project for Statistical Computing ( 2020 ). 2020/6/4,. [https://www.r-project.org/]. 32)堀 耕治,河嶋 孝,佐藤方哉,他.行動研究の基. 礎.行動心理ハンドブック(杉本助男,佐藤方哉,. 河嶋 孝 編),3-27,培風館,東京,1989.. 33)水野公輔,小島基永,柴 喜崇,他.平均情報量を. 用いた「なめらかさ」の評価について.理学療法学. 33:47,2006.. 34)日本看護協会.看護業務基準 2016 年改訂版(2016).. 2018/8/14,[http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/. kijyun/pdf/kijyun2016.pdf]. 35)Flinkman M, Leino-Kilpi H, Numminen O, et al. Nurse. Competence Scale: a systematic and psychometric. review. J Adv Nurs 73: 1035-1050, 2017.. 36)松谷美和子,三浦友理子,平林優子,他.看護実践. 能力:概念,構造,および評価.聖路加看会誌 14:. 18-28,2010.. 37)髙瀬美由紀,寺岡幸子,宮腰由紀子,他.看護実践. 能力に関する概念分析:国外文献のレビューを通し. て.日看研会誌 34:103-109,2011.. 38)Wilkinson CA. Competency Assessment Tools for. Registered Nurses: An Integrative Review. J Contin. Educ Nurs 44: 31-37, 2013.. 39)Yanhua C, Watson R. A review of clinical competence. assessment in nursing. Nurse Educ Today 31: 832-. 836, 2011.. 40)土屋守克.電気・電子機器による看護師の活動・行. 動測定方法に関する文献レビュー.日看医療会誌. 22:76-86,2020.. 看護理工学会誌(2021). ― 108 ―

参照

関連したドキュメント

活動後の評価    心構え   

ベクトル計算と解析幾何 移動,移動の加法 移動と実数との乗法 ベクトル空間の概念 平面における基底と座標系

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

Fostering Network のアセスメントツールは、コンピテンシーに基づいたアセスメントである。Skills to

一、 利用者の人権、意思の尊重 一、 契約に基づく介護サービス 一、 常に目配り、気配り、心配り 一、 社会への還元、地域への貢献.. 安

の 立病院との連携が必要で、 立病院のケース ー ーに訪問看護の を らせ、利用者の をしてもらえるよう 報活動をする。 の ・看護 ・ケア

では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動

基本目標2 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり1.