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熱力学-6-熱力学的関数の応用

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Academic year: 2022

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(1)

VI 熱力学的関数の応用

VI-1 ファン・デル・ワールスの状態方程式

ファン・デル・ワールスの状態方程式

理想気体の状態方程式 PV=nRTに補正を加えると、液体を扱うことも可能になる。

液この式がファン・デル・ワールスの状態方程式である。分子間力と分子の有限な大きさ を考慮して、ファン・デル・ワールスの定数と呼ぶ分子のよって異なる定数 a と b を導入する。液体分子は結晶化せずに自由に動くことができるので、

まず、分子間引力の圧力への影響を考える。分子密度が高いと、壁際の分子は壁と 逆側にある分子からの引力で壁を押す力が弱まる。一つの分子に働く圧力を弱める力 は隣接する分子数に比例するので、分子密度n/Vに比例する。また全体では壁を押す 分子の数も分子密度に比例するので、観測される圧力の減少はn2/V2に比例する。そ こで定数aを導入し、圧力p の減少分を-an2/V 2とする。

分子の大きさの影響は、自由に運動できる体積Vの減少である。減少分は物質量n に比例するので定数b を導入し、状態方程式中のVV-nbと置き換える。結局、状 態方程式は以下となる。

abは、分子によって値が異なる定数である。

この式を等温条件でV-P 図に描いたものが右 図になる。この図の右下(低圧で体積大)では ほぼ理想気体で、右から左上への線上の移動は

定温圧縮を意味する。B-C-D線上の奇妙な状態を経て、密度の高いD-Eの状態にな る。この状態D-Eが液体であって、体積Vは分子が密に詰まった体積 nb に近づき、

(6.1.1)

p = nRT Vnba n

2

V

2

P

V

nb

A B

C

D P E

A

VA VE

(2)

気化と液化

前ページの図はマクロな状態変化を表すが、

B-C-D 線上の状態は実現しない。この状態の

物質を密閉容器に封入し、密閉容器内を自由に 動くビストンで分けたとしよう。ピストンが僅 かでも左へ動くと、体積が減った左は分子間力 が働き圧力は下がる。圧力差からピストンには 左への力がかかり、左側の圧縮と右側の膨張が 進んでしまう。そして左が全て D-E(液体)、

右が全て A-B(気体)となってピストンは停

止する。安定な分子集団の状態は液体のEか気体のAのいずれかしかない。

図の奇妙な曲線A-B-C-D-Eは、実際に起きる状態変化ではなく、(安定性を無視し て)可能な可逆過程を示しているのである。A からE への凝固過程をミクロで考え ると、分子が隣の分子に近づき、強く結合することで体積を減らす変化なので、Bと Dを経ていない。マクロの変化も同様で、現実に起きる現象は定圧で、状態A(気体)

の物質量が減少し、状態B(液体)の物質量が増える過程である。

V P

F

P

b

(3)

VI-2 飽和蒸気圧

マクスウェルの規則

圧力 pAでは気相と液相が平衡状態で共 存する。つまりpAはこの温度における飽和 蒸気圧である。熱力学的関数を使うとpAに 対する条件が得られる。VI-1 で示した図の 過程 AàBàCàDàE と AàE はともに可逆過 程である。従って 2 つの過程を合わせた横 8 の字ループは、過程一周で状態量変化が ゼロである。この条件でヘルムホルツの自

由エネルギーの変化を計算する。定温過程なので式(5.2.7)はdF=-pdVである。さら に∫pdV は、V-p 図では横 8の字で囲む面積なので、

[ABC の面積] =[CDE の面積] (6.2.1)

である。この条件をマクスウェルの規則といい、ここからpAが決まってしまう。この 条件は状態方程式が 2 相を示せば成立し、ファン・デル・ワールスの状態方程式出な くとも成立する。

気相と液相の平衡状態では、状態 A と E の化学ポテンシャルが等しいとしても同じ 結果が得られる。状態 A から状態 E への可逆過程 AàBàCàDàE(ループではない)

でDG=0でなければならない。等温過程なので式(5.2.10)は dG= Vdp である。Vでは なくpに沿っての積分なので、図を90°回転させると解りやすいが、

DG=∫ABCDEVdp =[ABC の面積]–[CDE の面積] (6.2.2)

P

nb V

p

A

p

A E

D C

B

∫dF

∫dG

(4)

クラペイロン・クラウジウスの式

GA=GEという条件から飽和蒸気圧の温度依存が求まる。GA=GE の全微分をとると VAdp–SAdT = VEdp–SEdT (6.2.3)

である。ここから飽和蒸気圧の温度依存は

dp/dT = (SA–SE)/(VA - VE) (6.2.4)

と書ける。さらに気相と液相間の移動は可逆過程なのでDS=DQ/Tであり、DS=SA–SE

に相当するDQは気化熱Lである。こうして得られる

(6.2.5)

をクラペイロン・クラウジウスの式という。VAとVEはそれぞれ、温度Tにおける気体と 液体の体積,pは飽和蒸気圧である。この式もファン・デル・ワールスの状態方程式 に限らず成立する。

dp

dT = L T(VAVE)

(5)

VI-3 温度と内部エネルギー

温度と内部エネルギー

理想気体であれば内部エネルギーは温度によって決まるので、(¶U/¶V)T =0である。

この式の一般性を見るため、dU=TdS-pdV を出発点として、理想気体を前提とせずに

(¶U/¶V)T を計算しよう。

内部エネルギーUをTを一定としてVで変微分すると、上式から

(6.3.1)

である。ここでマックスウェルの関係式を使うとpとT の式にすることができ、

(6.3.2)

となる。右辺はゼロであるとは限らず、ゼロとなる条件は

(6.3.3)

である。つまり温度一定で内部エネルギーが変わらないのは、体積一定でpとTが比例 関係にある場合である。

ファン・デル・ワールスの状態方程式では

(6.3.4)

なので、内部エネルギーを増やさないと等温膨張にならない。外部から与えるのは、

分子間力によるポテンシャルエネルギー相当である。言い換えれば内部エネルギーの 変化しない真空膨張では温度は下がることになる。

∂U

V

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

T

= T ∂S

V

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

T

p

∂U

V

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

T

= T ∂p

T

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

V

p

∂p

T

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

V

= p T

∂U

∂V

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

T

= a n

2

V

2

(6)

ジュール・トムソン効果

ジュール・トムソン膨張とよばれる断 熱膨張がある。図のように両端がピスト ンの容器内に多孔質の仕切りがあり、左 右のピストンにかかる圧力に差があり、

pA>pBであるとする。この場合にpA側の気体は仕切りを通ってpB側へ流れる。この変

化は緩やかに進むので準静的だが、逆流しないので不可逆である。この膨張過程で現 れる温度変化をジュール・トムソン効果である。理想気体ではこの温度変化はゼロとな るが、実在気体では温度が下がるのである。

高圧側でpAVAであった気体を全て低圧側に移してpB、VBになったとする。この場 合の外部からの仕事はW=pAVA–pBVBで、理想気体であればnR(TA–TB)である。一方、可 逆な断熱膨張では式(3.2.12)より、W = nR (TA–TB) /(γ–1)である。2つの過程で行われ る仕事が同じにならないのは、前者が不可逆過程だからである。

この過程は実在の気体を理想気体モデルと比較する目的で行われたが、多くの冷却 機構で使われている。第IV章で学んだ逆カ

ルノーサイクルを使えば、熱を低温部から高 温部へ移動させる仕事ができる。現実の冷却 装置では、断熱圧縮はコンプレッサーが行う が、断熱膨張は不可逆過程を使う。高圧から 低圧への膨張を細管を通すことで緩やかに 行えば、機械的可動部は不要になる。ここで ジュール・トムソン効果が現れる。

P

A

T

A

P

B

T

B

(7)
(8)

ジュール・トムソン係数

前述の過程はDU=D(pV)なので、エンタルピーH=U+pVが保存している。この圧力 変化による温度変化率 (¶T/¶p)Hをジュール・トムソン係数という。

この係数を計算しよう。まずHをTとpの従属変数と考えて全微分をとる。

ここでdH=0 として計算した dT/dp は(¶T/¶p)H なので、ジュール・トムソン係数は

である。右辺の分母は式(5.3.3)の定圧モル比熱で (¶H/¶T)p= nCPである。また分子は、

Maxwellの関係式V = (¶G/¶p)TG=H-TS を代入して V=(¶H/¶p)T –T(¶S/¶p)T とし、

この右辺第2項にMaxwellの関係式(¶S/¶p)T=-(¶V/¶T)pを使うと

になる。更に熱膨張率 a=(1/V)(¶V/¶T)pも使うと分子は (¶H/¶p)T =V(1–aT)である。従 ってジュール・トムソン係数は下式で与えられる。

(6.3.5)

次にファン・デル・ワールスの状態方程式を使ってジュール・トムソン係数を計算 しよう。まずファン・デル・ワールスの状態方程式(6.1.1)の全微分をとる。

ここでdp=0とすると、(¶V/¶T)pを計算できる。さらに定数aとbが十分小さいとして近 似すると

dH= ∂H

∂T

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

p

dT+ ∂H

∂p

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

T

dp

T

p

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

H

=− ∂H

p

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

T

H

T

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

p

V = ∂ H

∂p

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

T

+T ∂ V

∂T

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

p

T

p

⎝ ⎜ ⎞

⎠ ⎟

H

= V

nC

p

(1 − T α )

dp= nR

VnbdTnRT

(V−nb)2−2an2 V3

⎣⎢

⎦⎥dV

V

T

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

p

= nR Vnb

nRT

(V−nb)2−2an2 V3

⎣⎢ ⎤

⎦⎥ ≈Vnb+2an/RT T

(9)

である。この式をa=(1/V)(¶V/¶T)pに代入し、得たaをさらに(6.3.5)に代入すると、以下 のジュール・トムソン係数が得られる。

(6.3.6)

理想気体であればa=b=0なのでこの係数はゼロになる。実在気体では低温で負、

高温で正の値で、分子間力が強い(aが大きい)と負値を取りやすい。冷却機関では 常温で体積膨張させると温度が下がる物質を使うと効率が良いことになる。

T

p

⎝⎜ ⎞

⎠⎟

H

b−2an/RT Cp

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