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低密度ポリエチレン

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Academic year: 2022

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(1)

低密度ポリエチレン (LDPE) の生分解菌の探索と 生分解誘引剤の添加効果に関する研究

2008 年 7 月

長崎大学大学院生産科学研究科

渡邊智子

(2)

-目 次-

第 1章 緒 論 1.1 本研究の目的

1.2 高分子材料の劣化と生分解

1.2.1 ポリエチレンの酸化劣化とその機構

(1) 熱酸化劣化 (2) 光による劣化 (3) 微生物劣化

1.2.2 汎用プラスチックと生分解プラスチックの市場動向

(1) 市場規模

(2) 実用化されている用途 (3) その他の実用化分野 1.3 本研究に関する既往の研究

1.3.1 難分解性プラスチックの生分解

(1) ポリエステル (2) ポリウレタン (3) ナイロン

(4) ポリオレフィン,ビニルポリマー

1.3.2 ポリエチレンの生分解に関する既往の研究

1.3.3 生分解性プラスチックの評価

(1) OECDテストガイドラインをもとにした標準試験法

(2) 国際規格 ISO の制定 1.4 生分解の評価技術

1.4.1 生分解プラスチックの実際の評価手法

(1) 室内試験法 JIS K 6950

(2) 土壌埋設試験(フィールド試験)とその注意点 (3) 促進試験

(4) 分解部の分析評価

1.4.2 生分解プラスチックの分析手法

(1) 走査型電子顕微鏡 (SEM)

(2) 顕微フーリエ変換赤外分光法 (Microscope -FT-IR) (3) 高温ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC) 1.5 本研究の概要

頁 1 1 4 4 4 6 8 9 9 12 12 13 13 13 14 15 16 19 21 21 21 25 25 25 26 29 31 34 34 34 34 35

(3)

文 献

第 2章 32年以上埋設された LDPEと他ポリマー成形品の生分解挙動 2.1 緒言

2.2 実験 2.2.1 試料

(1)サンプリング場所 (2)試料の種類

(3)試料埋没期間

2.2.2 土壌の化学分析と土壌の菌数測定および微生物の同定

(1)土壌の化学分析

(2)土壌微生物の菌数測定および同定 (3)機器分析

2.3 結果と考察

2.3.1 サンプリング場所の土壌状態

2.3.2 外観観察と重量変化

2.3.3 顕微鏡 FT-IR と X線光電子分光装置(XPS)による酸化劣化度

の測定

2.3.4 分子量の変化

2.3.5 LDPEの生分解機構の推定

2.3.6 自然界(畑,庭,野原)に散乱している LDPEフィルムの生分

2.4 要約 文 献

第 3章 LDPE分解菌の特定 3.1 緒言

3.2 実験

3.2.1 LDPE 分解菌分離用試料

(1) 土壌及び分解途上 LDPE フィルムの採取 (2) 分離源培養液の作成

3.2.2 分離培地

3.2.3 集積振とう培養法による一次選別試験

3.2.4 微生物のLDPE 分解能の評価

37 42 42 42 42 42 42 45 46 46 46 46 47 47 49 52 57 61 64

66 67 68 68 69 69 69 69 70 71 73

(4)

3.2.5 微生物の純粋分離と属の同定

3.2.6 LDPE 分解能を有する微生物の取得

3.2.7 バシラス属の種の同定

3.3 結果と考察

3.3.1 微生物のLDPE 分解能の評価

3.3.2 微生物の純粋分離と属の同定

3.3.3 LDPE 分解能を有する微生物の取得

3.3.4 バシラス属の種の同定

3.3.5 LDPE 分解能力の再確認 3.4 要約

文 献

第 4章 生分解誘引剤の開発とその有効性の評価 4.1 緒言

4.2 生分解誘引剤の配合設計

4.2.1 生分解に及ぼす化学的因子

(1) でんぷんの効果

(2) 有機金属化合物(Fe,Al 等)の効果

(3) 酸化オイルの効果 4.3 生分解誘引剤の長期評価

4.3.1 実験

4.3.2 長期土壌埋設用ベースポリマーの選択

4.3.3 埋設土壌および埋設期間

4.3.4 生分解状況の評価

(1) 目視,デジタルマイクロスコープおよび SEMによる外観観察 (2) 重量測定による分解度の算出

(3) 高温 GPC による分子量および分子量分布測定 (4) 顕微 FT-IR による官能基の同定

4.4 結果と考察

4.4.1 土壌埋設試料の外観

4.4.2 試料の表面および断面の形態

4.4.3 重量変化と分解速度

4.4.4 分子量および分子量分布の変化

74 74 75 75 75 78 81 81 83 85 85 87 87 89 89 89 90 94 96 96 96 97 98 98 98 98 99 100 100 101 107 108

(5)

4.4.5 顕微 FT-IR による官能基の同定 4.5 要約

文 献

第 5章 総 括 謝辞

<付 録>

論文リスト

110 112 113 115 119 120 120

(6)

第 1章 緒 論 1.1 本研究の目的

ポリエチレン(Polyethylene:以下PEと称する)の特徴として,耐食性,耐薬品 性,電気絶縁性,可とう性等に優れ,なおかつ廉価でもあり,燃焼時にハロゲンを 含むような有害なガスを発生しないことが挙げられ,安全,安定な高分子材料とし て食品包装用にも多用されている身近なプラスチックで,世界で最も普及した合成 高分子として定着し,工業的にも,生活必需品としても,かけがえのない重要な材 料といっても過言ではない.

PEは,1933年にI.C.I.社の高圧有機合成研究室において合成されたのが最初で

ある1).エチレンを微量な酸素の存在下1000気圧という高圧にすることで重合す るもので,高圧法PEまたは低密度PE(Low Density Polyethylene:LDPE)と呼ば れる.メチル基やエチル基の枝分かれの多い分子構造を示し,透明で柔らかく現在 もポリ袋等として広く用いられている.その後,遷移金属触媒であるチーグラー・

ナッター触媒を用いた合成法が検討され,1950 年代にこの方法で PE が合成され た 1).この方法では,分岐が非常に少ない直鎖状 PE が生成し,高密度 PE(High Density Polyethylene:HDPE)と称され,LDPE とは異なり不透明で硬く脆い性 質を示すため,ビールケース等強度が要求される用途に用いられている.現在では,

エチレンとα-オレフィンを共重合することによって分岐鎖を少量導入し,直鎖状 PEでありながらLDPEのようにしなやかな直鎖状低密度PE(Linear Low Density Polyethylene:LLDPE)や中密度PE(Medium Density Polyethylene:MDPE)と 称される樹脂が開発され,それぞれ用途に合わせた使用が成されている.

しかし,“生あるものは必ず死す”,“形あるものは必ず壊れる”という諺の通りの 運命があり,特にPEは有機材料であるため,他ポリマーと比べ非常に安定とはい え劣化を考慮する必要がある.PEの劣化に関するこれまでの研究は,紫外線劣化,

熱劣化,低温破壊,クリープ,疲労劣化,環境応力破壊劣化,放射線劣化等,物理 的要因,化学的要因等であり,生物的な要因についてはほとんど研究されていない.

この理由としては,PE をはじめとして合成高分子はポリビニルアルコール (Polyvinyl Alcohol:PVA)等の一部の高分子,あるいは低分子量の合成高分子を除 き,微生物には分解されない,永遠に腐らない分子構造であるという強い固定観念 があったためと考えられる.近年,環境保全という一昔前の地域限定の公害を超越

(7)

した地球環境という概念の中で,さまざまな生分解プラスチックが誕生し,それと あいまってか,従来から使用されている汎用プラスチックの生分解性についても少 しずつ注目され,論議され始めている2).世界のPEの生分解性の詳細な研究につ いては,現在AlbertssonらのHDPEに関するもの36)と,大武らのLDPEに関す るもの 718)が中心であり,他は非常に少ないのが現状である.大武らの研究は,

阪神大震災以来,ガス会社ではMDPEを土壌埋設用ガス配管材料としての使用を 進めているが,30 年以上長期土壌との接触を余儀なくされるため,ガス管の微生 物劣化という観点から注視されている.

ところで,最も高い生産量を誇る難分解性汎用プラスチック LDPE が,現在市 場に流れている生分解性プラスチック同様の生分解性をある条件下で示すとした ら,地球環境保護に対する関心が世界中に高まる中,地球環境保全に非常に大きな 役割を果たす一助になると考えられる.このLDPEに対しJIS Z 2911に規定され ているカビ抵抗性試験を実施すると,多量に酸化防止剤を添加された場合を除いて,

ほとんどの供試 LDPE にカビが繁殖する事実からも分解環境条件さえ整えば,分 解の可能性は十分あると考えられる.特に,現在上市されている生分解プラスチッ クは,他の汎用ポリマーと比べて単価が数倍も高いことから市場への浸透は極めて 低く,生分解プラスチック普及の妨げの大きな要因となっているのが実情で,どん なにすばらしい製品でもコストを無視できない厳しいマーケット事情があり,もし LDPE の生分解促進化が可能であればコストの面でも優位な材料になると考えら れる.

本研究では,LDPEの生分解挙動とその分解メカニズムを把握するために,野山,

畑等でのフィールド調査を実施し,32年以上土壌に埋没していたLDPE成形品を 採取して詳細な分析を行い,生分解機構を提案する.また,畑に鋤き込まれて土壌 に埋没して生分解を生じている LDPE 製農業用マルチフィルムとその付着土壌等 を採取し,集積振とう培養により LDPE を特異的に分解する能力を有する菌を探 索,同定する.さらに,生分解メカニズム解析データを基に,LDPEの生分解を促 進するための生分解誘引剤を選択し,生分解誘引剤添加 LDPE フィルムを微生物 活性な土壌に13年という長期間埋設し,生分解誘引剤の有効性を評価することを 目的とした.

(8)

これら一連の LDPE の研究は,生分解プラスチックばかりではなく,土壌に接 するさまざまな成形品の信頼性,耐久性等の評価にもつながり,工業材料に対して も,極めて有益な研究になるものと考えられる.

(9)

1.2 高分子材料の劣化と生分解

汎用樹脂は,成形加工時より僅かずつ劣化が生じ,実際の使用中に劣化が進行す る.劣化の開始としては,熱,光,化学薬品,放射線,機械的応力,微生物などが 挙げられ,酸素,水分が加わると劣化は著しく促進される.

PEの劣化の特徴としては,酸素や水分などによる劣化の促進がPE成形品の非 晶部分の量と関係が深く,酸素の拡散浸透速度が律速となる.また,分子鎖の切断 と同時に,特に酸素存在下では架橋結合が生成されることより,分子鎖の運動を大 きく阻害し,溶解性,流動性,加工性などを低下させる.

生分解の過程は,微生物が樹脂表面に導かれる条件が整っているかどうかによる.

劣化により酸化活性点が生じると,微生物攻撃にさらされやすくなる.また,カル ボニル基などの親水基が増加すると,PEのような疎水性高分子でも水分吸着性を 示すようになり,微生物活動に必要な水分が得られる.生分解は通常の酸化劣化と 相乗して進行するため,その劣化について述べる.

1.2.1 ポリエチレンの酸化劣化とその機構 (1) 熱酸化劣化

PEは融解しないような低温においても,ゆるやかに酸化反応が進行し,その結 果として分子の切断や架橋と共にアルコール,アルデヒド,カルボン酸,ケトンな どの酸化物が生成される.酸化劣化は,必ずラジカルの生成から開始され,その生 成が熱によるのか,光か放射線かの差異があるにすぎない.ここでは酸化反応の基 本的メカニズムをFigure 1.119)に示す.ラジカル同士の停止による架橋や分子の開 裂による分子量の低下の他に,アルコール(-OH),アルデヒド(-CHO),カルボン酸 (-COOH),ケトン(>C=O),エステル(-COOR),ヒドロペルオキシド(-ROOH)など の酸素を有する官能基が生成する.

また,PEの融点以下の熱酸化劣化挙動を調べるために,LDPEを100°Cのオー ブンで 200 日間処理した場合は,架橋によるゲルの生成とともに,分解も生じ,

平均分子量が低下し,分子量分布の幅(Mw / Mn)が狭くなる20)

(10)

○ Initiation reaction

RH RH・(excitation) or R・ + ・H

○ Chain reaction R・ + O2 → ROO・

RH + ROO・→R・+ROOH ROOH → RO・+・OH 2ROOH → RO・+ROO・+H2

ROOR→2RO・ RH+RO・ → R・+ROH HO・+RH → H2O+R・

heat

○ Chain scission O・ O

R-C-R’ → R-C-R” + R’・

R” Ketone (R”=R) Aldehyde (R”=H)

O O O O

R-C-H R-C・ +O2 R-C-OO・ +R”H R-C-OOH Peracid

+R”

-R”H -R”・

○ Termination

R・ + R・ → R-R Molecular enlargement R・+ ROO・→ ROOR

ROO・+・ROO・ → ROOR + O2

R’-CH2-O・+RO・ → R’-CHO + ROH Aldehyde Alcohol

Figure 1.1 Reaction scheme of oixidation.19)

(11)

(2) 光による劣化

PEの光劣化は,上述の熱酸化劣化と基本的には同じである.光劣化は,光エネ ルギーの吸収により開始される.屋外暴露の場合は,雨や風などの光以外の影響を 受ける.さらに,光エネルギーの浸透から考えて劣化が極表面付近に限定されるこ とが特徴として挙げられる.高分子材料は,多くの場合,光エネルギーを吸収し得 る官能基を分子構造中に有するが,可視光領域(約380nm以上の波長)に吸収が ほとんどないことから,UV 領域の光による影響が支配的となる.Figure1.2に波 長,エネルギー,ポリマーの結合解離エネルギーの関係について示す21).C-C, C-H, -OHなどの化学結合を持つ化合物は,波長200nm以下の光を吸収し,カルボニル 基 (>C=O) や共役二重結合は,波長 200nm~300nm の間に吸収の極大が存在す る.300nmの光エネルギーは95 kcal/molに相当するので,PEのC-H解離エネ ルギーに近く,この光エネルギーより解離エネルギーの小さいC-O,分岐のメチ レンの C-Hなどの切断が可能である.波長が 360nm以上の場合,PEは分子量 がほとんど変化せず,劣化も少ない22)

サンシャインウェザーメーターで光を照射したPEのメルトフローレ-ト,不溶 解部分などの測定により,分子切断および架橋が同時に起こることが分かっている

23).GPC 測定による分子量および分子量分布の変化を検討した結果,紫外線吸収 剤を含まないPEでは初期の段階で架橋し,その後分子鎖切断が支配的になる.一 方,紫外線吸収剤を含有するPEでは,分子鎖切断が優先する24)

屋外暴露による劣化は,太陽光による光酸化劣化とともに様々な要因が劣化に関 与するため複雑である.Figure1.3に耐候性に影響する諸因子について示す25)

(12)

35 41 48 57 72 95 143 286 (kcal/mole)

O-O N-N C-I C-Cl C-C C-H O-H 結合解離エネルギー

赤外線 マイクロ波

( カッコ内は透過光 )

とび

遠紫外 近紫外

可視線 紫外線

98.8 3.1

400 25000

33.2 38.0 57.4 78.5 83.1 110.6

(kcal/mole)

1.55 1.8 2.1 2.5 4.1

6.2 12.4 eV

γ線 X線

106~107 103~105

800 700 600 500 300

200 100 10-3 10-1 λ(μm)

12500 14287 16666 20000 33333

50000 100000 ν(cm-1

通常のポリマーが敏感に 反応する光の波長領域

最大劣化を引き起こす 各ポリマーの例

PE,PP

(300nm)

PS

(318nm)

PVC

(320nm)

PC

(280nm)

エステル系PU

(270nm)

PET

(285nm)

35 41 48 57 72 95 143 286 (kcal/mole)

O-O N-N C-I C-Cl C-C C-H O-H 結合解離エネルギー

赤外線 マイクロ波

( カッコ内は透過光 )

とび

遠紫外 近紫外

可視線 紫外線

98.8 3.1

400 25000

33.2 38.0 57.4 78.5 83.1 110.6

(kcal/mole)

1.55 1.8 2.1 2.5 4.1

6.2 12.4 eV

γ線 X線

106~107 103~105

800 700 600 500 300

200 100 10-3 10-1 λ(μm)

12500 14287 16666 20000 33333

50000 100000 ν(cm-1

通常のポリマーが敏感に 反応する光の波長領域

最大劣化を引き起こす 各ポリマーの例

PE,PP

(300nm)

PS

(318nm)

PVC

(320nm)

PC

(280nm)

エステル系PU

(270nm)

PET

(285nm)

Figure 1.2 Relationship between wavelength and degradation.21)

Heat

Sun Light

Moisture Chemicals Bacteria

Air Air

Pollution

Mechanical Stress

Electrical Stress

Deterio- ration Atmospheric

Temperature Temperature

Change Radiation

Temperature

Rain, Snow Humidity

Dew

Surfactant Filler

Pigment

O2

O3

Mist NOx SOx

Wind External Stress Internal Strain Wave length

Heat

Sun Light

Moisture Chemicals Bacteria

Air Air

Pollution

Mechanical Stress

Electrical Stress

Deterio- ration Atmospheric

Temperature Temperature

Change Radiation

Temperature

Rain, Snow Humidity

Dew

Surfactant Filler

Pigment

O2

O3

Mist NOx SOx

Wind External Stress Internal Strain Wave length

Figure 1.3 Various factors affecting weathering25).

(13)

(3) 微生物劣化

微生物劣化,分解は,微生物が活動するのに適した条件が十分に整い,高分子材 料表面に取り付いた微生物が体内にもつ様々な種類の酵素を生成し,それらの酵素 が高分子材料表面に吸着して生じる.微生物は吸水性の官能基や可塑剤を優先的に 攻撃し,材料を劣化させる.微生物の活動には水分が必要であるため,極性プラス チックであるポリアミド樹脂(PA),ポリウレタン樹脂(PU),ポリビニルアルコー

ル(PVA)は,オレフィン系プラスチックに代表される疎水性プラスチックに比べ,

微生物劣化を受けやすい傾向にある.疎水性プラスチックは微生物活動に必要な水 分の供給がないため,微生物に対する抵抗性は極めて高いといわれてきた 26).各 種ポリマーの常態吸湿率についてTable 1.1に示す.

Table 1.1 Moisture content of various polymers at the normal condition.

Polymers Moisture content(%)

Nylon 6 (PA6) 4.0 Nylon 66 (PA66) 2.5 Nylon 12 (PA12) 0.75 Polyoxymethylene (POM) 0.22 Polycarbonate (PC) 0.2 Polybutylene terephthalate

(PBT) 0.07

Polyimide (PI) 2.5 Polymethyl methacrylate

(PMMA) 1.2

Polyvinylalcohol (PVA) 10.0 Silicone1 liquid LTV 0.1

Polyethylene (LDPE) below 0.1

(14)

1.2.2 汎用プラスチックと生分解プラスチックの市場動向 (1) 市場規模

合成プラスチックの生産量は,2004 年度においては世界で約 2 億2400 万トン に達したとされ27),セルロース(100億トン/年),キチンに次いで大量に存在する ポリマー素材となっている.世界の生産量のうち米国では約 26%,ドイツでは約 8%,日本で約6.5%が生産され,この3カ国で世界の約4割を占める27)(Figure 1.4). 近年ではアジアで地域の生産量が増加している.2007 年度の日本における合成プ ラスチックの生産量は1,420万トン (Figure 1.5) で,その主な用途は,建材,包 装資材向けで併せて約 60%であり,金属,無機化合物と並ぶ社会の基盤を構成す る素材となっている. Figure 1.6に示すように,日本の合成プラスチック生産量 は,拡大傾向にある.これら合成プラスチックの種類は,汎用プラスチックである ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチ レン(PS)をはじめとして,ポリエステル系やポリカーボネートなどがあり,エ ンジニアリングプラスチックを含めると100種類を越える.

ウレタンフォーム フェノール樹脂 1.7%

2.1%

その他

(熱硬化性樹脂)

5.2%

その他樹脂 1.4%

ABS樹脂 3.9%

その他

(熱可塑性樹脂)

13.5%

P ET樹脂 4.9%

ポリスチレン 7.6%

ポリエチレン 22.8%

ポリプロピレン 21.7%

塩化ビニル樹脂 15.2%

熱硬化 性樹脂  9 .0 %

その他 樹脂 1 . 0 %

熱可塑 性樹脂 9 0 . 0 %

2007年 生産量

1,420万トン 日本 6 .5%

北米 26 .0 % アジア 2 9 .0 % その他 3 .5 %

アフリカ ・中東 5.5%

東欧 5.5 % その他西欧

2 .0 %

ドイツ 8.0%

フランス 3 .0 % ベネルックス

5 .0 % スペイン

2 .0 % イタリア

2 .0 % イギリス 2 .0 %

Figure 1.4 Production of plastics Figure 1.5 Production of plastics in the world27). in Japan27).

(15)

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000

1975 1980 1985 1990 1995 2000 2004

Year

Production(kt)

The rest of plastics PC

ABS PET PS PVC PP PE

Figure 1.6 Change of production of plastics in Japan.

一方,生分解プラスチックの生産量は,内外調査機関および生分解性プラスチッ ク研究会の推計結果を総合すると 2002 年では全世界で 7~8万トンまで拡大した と考えられる.拡大要因の第一は,カーギル・ダウ社が 2001 年 11 月にポリ乳酸

(PLA)の年 14 万トン製造設備を稼動し始め,2002 年 4 月から本格供給に移っ たことが背景にある.日本では島津製作所がPLA系の「ラクティTM」を上市して いたが,2002 年トヨタ自動車に譲渡した 28).2001 年から 2002 年にかけて Novamont社(伊)およびBASF社(独)は相次いで,でんぷん系の「Mater-BiTM」お よび脂肪族ポリエステル系の「EcoflexTM」製造設備の増設を発表している.日本 の生分解性プラスチックメーカーである昭和高分子も「ビオノーレ TM」製造設備 の倍増体制への移行を示している.このようにして,生分解性プラスチックを構成 する硬質樹脂(PLA系),軟質樹脂(PBS系),でんぷん系樹脂いずれも大規模生 産設備により供給される体制が整えられつつある29)

米国では緩衝材,コンポストバッグ,食品容器用途が,EUではコンポストバッ グ,食品容器向けが中心となっている. Table 1.2に国内外で実用展開されている 生分解性プラスチックと製造企業,生産能力の一覧を示す.

(16)

Table 1.2 Manufacturing company and capability at home and abroad of biodegradable plastics29).

系統 ポリマー名称 商品名 製造企業 生産能力

(t/y)

将来構想

(t/y)

ポリ-3-ヒドロキシブチ

レート[P(3HB)] ビオグリーン 三菱ガス化学 10 1000

微生物 生産系

ポリ(3-ヒドロキシブチ レート/3-ヒドロキシヘ キサノエート)(PHBH)

PHBH カネカ パイロットプラント

エステル化でんぷん コーンポール 日本コーンスターチ パイロットプラント

酢酸セルロース(CA) セルグリーンCA-BNE ダイセル化学工業 100,000 キトサン/セルロース

/でんぷん ドロンCC アイセロ化学 パイロットプラント

Mater-Bi Novamont(国内ケミテッ

ク) 20,000

天然物系

でんぷん/化学合成系 生分解プラスチック

プラコーン 日本食品化工 パイロットプラント

ポリ乳酸(PLA)

NatureWorks レイシア プラメート バイロエコール エコプラスチックU’z

Nature Works(NW) 三井化学 大日本インキ化学工業

東洋紡 トヨタ自動車

140,000 NWと事業提携 パイロットプラント パイロットプラント

1,000 ポリカプロラクトン

(PCL)

TONE セルグリーンPH

Dow ダイセル化学工業

4,500

ポリ(カプロラクトン/

ブチレンサクシネート) (PCLBS)

セルグリーンCBS ダイセル化学工業

1,000

ポリブチレンサクシネ ート(PBS)

GS Pla ビオノーレ#1000

三菱化学 昭和高分子

3,000 30,000

ポリ(ブチレンサクシネ ー ト/ア ジ ペ ー ト)

(PBSA)

ビオノーレ#3000 Enpol 4000

昭和高分子 Ire Chemical

6,000

8,000 50,000

ポリ(ブチレンサクシネ ー ト/カ ー ボ ネ ー ト)

(PEC)

ユーペック 三菱ガス化学 パイロットプラント

ポリ(エチレンテレフタ レート/サクシネート)

(PETS)

Biomax グリーンエコペット

DuPont 帝人

90,000 パイロットプラント ポリ(テトラメチレンア

ジペート/テレフタレー ト)(PTMAT)

EasterBio Eastman Chemicals

⇒Novamont 8,000 30,000 ポリ(ブチレンアジペー

/テ レ フ タ レ ー ト)

(PBAT)

Ecoflex Enpol 8000

BASF Ire Chemical

15,000

8,000 50,000 ポリエチレンサクシネ

ート(PES) ポリ(エチレンサクシネ ー ト/ア ジ ペ ー ト)

(PESA)

ルナーレSE 日本触媒 パイロットプラント

ポリエチレンセバケー

エタナコール 宇部興産 パイロットプラント

ポリビニルアルコール (PVA)

クラレポバール等 ゴーセノール等

ドロンVA J-POVAL

クラレ 日本合成化学工業

アイセロ化学 日本酢ビ・ポバール 化学合成系

ポリグリコール酸

(PGA) 呉羽化学 パイロットプラント

200,000

(17)

(2) 実用化されている用途

生分解性プラスチックは,使用するときには従来のプラスチックと同様に扱え,

廃棄されたときには自然界に存在する微生物などによって最終的に水と二酸化炭 素にまで分解されるプラスチックである.したがってその用途は,自然界で使われ る分野,回収やリサイクルの難しい分野,リサイクルに掛かる費用やエネルギーが 大きな分野となる.環境適合性資材として化粧品の容器から始まり,文房具(シャ ープペンシル,ボールペン,書類挟み),かみそりの柄,各種容器,道路標識,包 装用クッション材,各種農業用資材としてマルチフィルム,土嚢,移植用ポットな どと用途は広がり,加工法の開発進展とともに市場を広げつつある.さらに食品包 装・容器への PLA の承認により,食品容器・包装資材への展開もなされ,2005 年の愛知万博会場では,PLA が各種食器類の主材として導入された.しかし,現 実には,開発当初よりはかなり価格が低下したものの,汎用プラスチックと比べ2

~3倍高いため,一般には受け入れ難くなっているのが実情である.

一方,医療分野においては,手術用縫合糸として,PGA(ポリグリコール酸),PLA が使用されている.生体に埋め込んだ場合,PGAは約 3ヵ月,PLAは約12ヵ月 でそれぞれ人体に無害なグリコール酸と乳酸に分解され,代謝サイクルの中で二酸 化炭素と水に分解され体外に排出される.

(3)その他の実用化分野

わが国では,2000 年に制定された環境型社会構築基本法を根幹とする多くの取 り組みが進められてきた.2002 年バイオテクノロジー戦略大綱により,バイオマ スを原材料とする資材,生分解性を持つ資材の重要性が強調され,環境負荷低減に 資する製品の普及促進が図られている.コンポスト化を目的とした生ゴミ袋も応用 事例の一つであり,北海道富良野市と近隣4町村で,好気的コンポスト処理共同事 業が行われている.主材として脂肪族ポリエステル系,PCL 系,変性でんぷん系 などが使用され,PLA,紙粉,でんぷん,無機充填剤などが添加されている.また,

窓付き封筒の窓部分に植物原料のPLAフィルムを使したものは,自然界に散逸し ても一定期間が経過すれば,紙と同様に自然に戻るとして,環境配慮の認識が高い 企業,公共団体で採用されている.最近では,エネルギーや CO2を低減する材料 として,長期に耐久性を求められる家電・電子機器の筐体,自動車の内装部品の射 出成形部材としても注目され,PLAを中心に商品開発が進められている.

(18)

1.3 本研究に関する既往の研究

1.3.1 難分解性プラスチックの生分解

多糖類,タンパク質,核酸などの天然高分子は,一般に微生物によって容易に分 解され,無機化される.しかし,合成プラスチックは,もともと天然高分子の代替 品として開発されたものであるが,その化学構造は天然高分子とは全く異なるため,

微生物によって分解され難く,物理的,化学的にも強靭,安定であるため,自然界 の物質循環系には入り難い.さらに,工業材料としての優れた性質により,大量に 製造,使用されるため,いったん廃棄されると,その安定性ゆえに環境中に蓄積し,

環境の景観を損なうだけでなく,生態系の調和を乱し環境悪化につながる可能性を 有していると言われている.

微生物の合成プラスチックに対する作用についての研究は,このような環境問題 が認識される以前は,プラスチック製品に添加されている可塑剤などを利用して微 生物が生育し製品の品質が劣化する,いわゆる微生物劣化現象について,その原因,

防止策を明らかにする目的で行われた.そのため,これらの研究では試験法に定め られたカビや劣化した製品から分離した微生物を用いるのが通常で,積極的に合成 高分子を分解する微生物を探索することは行われなかった.

一方,合成プラスチック廃棄物の問題が顕在化してからは,分解微生物を探索し 微生物処理技術を開発することや,合成プラスチックの微生物分解性を明らかにす ることを目的とした研究が積極的に展開されるようになってきた.これまでに,数 種の合成プラスチックについては,分子量数千から数万のものを分解して生育する 微生物が見出されている.

本節では汎用合成プラスチックの微生物分解に関する研究について,既存の成果 と研究を概説する.

(1) ポリエステル

これまでに,種々の脂肪族ポリエステルが微生物によって分解されることが見出 され,これらのうち,ポリカプロラクトン[-C-(CH2)5-CO-]n,ポリエチレン アジペート[-C-(CH2)2-OOC-(CH2)4-CO-]nは微生物によって完全に分解さ れることが明らかにされている30)

ポリカプロラクトン(PCL)フィルムにはカビがよく生成し,土中にPCLを

(19)

埋めておくと分解されてしまう 30.平均分子量 25,000のPCLを完全に分解する Penicillium属のカビが,PCLを炭素源とする集積培養法によって得られている31. PCLの分解産物としてε-ヒドロキシカプロン酸がこのカビの培養液に蓄積するこ とにより,PCL の分解はエステル結合の加水分解によって起こると推測されてい る.また,このカビはPCL以外の種々の脂肪族ポリエステルにも生成するが,脂 環式,芳香族ポリエステルには生育しない.

また,ポリエチレンアジペート(PEA)分解菌としてもPenicillium属のカビが 見出されている32.このカビは,平均分子量3,000のPEA(2g/L)を5日間で完 全に分解し,PEA のほか種々の脂肪族ポリエステルにも生育する.分解産物とし て培養液から,アジピン酸,エチレングリコールが検出されている.このカビの PEA 分解酵素は培養液中に生産される菌体外酵素であり,誘導的に生産される.

この酵素が精製され,その分解性を調べたところ,脂肪族ポリエステル類の他,脂 環式ポリエステルであるポリシクロヘキサンジメタノールアジペートも分解する が,芳香族ポリエステル類には活性を示さない 33.この酵素はさらに,植物油,

トリグリセド,脂肪酸メチルエステル類も分解することにより,一種のリパーゼで あると考えられている.

また,Rhizopus delemar34やその他の微生物起源のリパーゼ,ブタ肝臓エス テラーゼ35によっても,脂肪族ポリエステルが分解されることが確認されている.

さらにプロテアーゼであるキモトリプシンによっても,ある種のポリエステルが分 解される 36.また活性汚泥 37や,細菌のエネルギー貯蔵物質であるポリ-β-ヒド ロキシ酪酸を分解する微生物 38によって脂肪族ポリエステルが分解されることも 報告されている.これらのことから,脂肪族ポリエステルは微生物の分解作用を受 けやすいといえる.しかし,繊維,フィルムなどに広く用いられているポリエチレ ンテレフタレートのような芳香族ポリエステル類については,現在までに分解微生 物は見出されていない.

(2) ポリウレタン

ポリウレタン製品が微生物劣化を受けることは,古くから認められてきている

39.市販の製品に存在する添加剤の影響を避け,微生物分解性を評価するために 種々のポリウレタンを合成し,分解性をカビの生育試験によって調べた例が報告さ

(20)

れている 40.その結果によると一般的にポリエステル型のポリウレタンは分解さ れ易く,ポリエーテル型やグリコール型のものは分解されにくい.グリコール型の ものではウレタン結合間に,ある程度の長さの直鎖メチレン鎖が存在するものが分 解を受けやすく,側鎖が存在すると分解され難くなる傾向が認められている.また,

ポリウレタンの合成に用いるジイソシアネートの種類によっても分解性が異なる ことが認められている.

古川らは,易分解性ポリウレタンの研究において,ポリウレタンをオリゴラクチ

ド末端 PTMG(ポリオキシテトラメチレングリコール)と 4,4’-ジフェニルメタン

ジイソシアネートと1,4ブタンジオールから合成し,コンポスト中での分解挙動を 機械特性,表面状態,重量減少などについて,コントロールのPTMGベースポリ ウレタンと比較評価した 41).その結果,オリゴラクチドを組み込んだ新規ポリウ レタンは分解が容易であることを見出した.

さらに,古川らは,分解後は必須アミノ酸であるリジンになるリジンイソシアナ ートとポリオールに脂肪族ポリエステル,植物由来ひまし油を用いてポリウレタン を合成し,分解への化学構造の影響及び分解特徴の研究を行っている42)

(3) ナイロン

高分子量のナイロンを分解する微生物は見出されていないが,6-ナイロン[-NH

-(CH2)5-CO-]nの低重合体である 6-アミノヘキサン酸オリゴマーを分解する細 菌 と し て Corynebacterium aurantiacum43の ほ か ,Flavobacterium44 Achromobacter45 属 細 菌 が 見 出 さ れ て い る . 分 解 菌 Corynebacterium aurantiacum は環状の2 量体には生育せず,3~5量体の環状及び 2~4量体の直 鎖オリゴマーを分解して生成する 43.この細菌は 2 種のオリゴマー分解酵素を有 する46.一種類めの酵素は,環状オリゴマー(3~5量体)を開環し,かつ生成す る直鎖オリゴマーを 2 量体単位で分解する加水分解酵素であり,直鎖及び環状 2 量体には作用しない.他方の酵素は,環状オリゴマーには作用しないが,直鎖オリ ゴマーを単量体単位で加水分解し,6-アミノヘキサン酸を精製する.

Flavobacterium属の分解菌44,47は前述の細菌と異なり,環状2量体を資化でき,

そのほか6量体までの直鎖オリゴマーに生育できる.この細菌も二種の分解酵素を 有している.一種類めの酵素は環状2量体を開環して直鎖の2量体を生成するが,

(21)

直鎖オリゴマーには作用しない加水分解酵素である 48.もう一方の酵素は,前述 の細菌の分解酵素と同様に,環状2量体には作用しないが,種々の直鎖オリゴマー を分子鎖末端(アミノ末端)から分解し,6-アミノヘキサン酸を生成する加水分解 酵素である 49.したがって,環状の 2 量体の分解は,これらの酵素によって以下 のように進行する.

NH-(CH2)5-CO H2N-(CH2)5-COOH 2H2N-(CH2)5-COOH CO-(CH2)5-NH

6-アミノヘキサン酸 6-アミノヘキサン酸直鎖2量体 6-アミノヘキサン酸 環状2量体

Decomposition of cyclic dimer

(4) ポリオレフィン,ビニルポリマー

主鎖が炭素結合だけで構成されているプラスチック類,合成ゴム類,水溶性高分 子などは,種々のものが多量に生産され使用されている.これらのうち,ポリビニ ルアルコールは特に低分子量のものは微生物によって容易に分解され,その他数種 のものについてはオリゴマーを分解する微生物が見出されている50,51)

(a) ポリブタジエン

平均分子量650および2,350の1,4-ポリブタジエン(PB)のオリゴマーをそれ ぞれ分解して生育する Acinetobacter 52および Moraxella 53細菌が見出さ れているが,これらはそれぞれ高分子量のPBには生育しない.後者の細菌を用い た研究では,培地中に懸濁されたPBオリゴマー粒子径が生育速度に大きな影響を 及ぼすことが認められ,下記のポリイソプレンオリゴマー分解菌の場合と同様に 1,4-ポリブタジエンに存在する1,2-結合部分が分解を阻害することが推定されてい る.

(22)

CH2-CH-

CH (-CH2-CH=CH-CH2-)n CH2

1,4-ポリブタジエン 1,2-結合構造

Structural formula of polybutadiene

(b) ポリイソプレン

天然ゴムは少なくとも十数万の分子量を有するcis-1,4-ポリイソプレン(PI)で あるが,加硫していないものでは微生物の分解を受けることや,土中に埋めておく と完全に分解されてしまうことが古くから知られている 54.しかし,天然ゴムと 本質的には同様の構造をもつ合成のcis-1,4-PIでは,天然物にはない3,4-結合のイ ソプレン単位が一般に数%存在し,それが微生物分解性に大きな影響を与えること が,オリゴマー分解菌の研究で指摘されている55

このオリゴマー分解菌は,平均分子量950の合成cis-1,4-PI(3,4-結合,約10%)

を分解して生育することができ,重量減少で約 60%の分解を示す.しかし,平均

分子量2,500のものにはほとんど生育することができない.ゲルパーメーションク

ロマトグラフィー(GPC)で分子量1,000までのものは分解されることが確認されて いる55.分解残渣を調べると,3,4-結合の存在割合が元の試料よりもかなり高くな っていた.すなわち,この細菌は 1,4-結合で構成されている部分を分解できるが,

3,4-結合部分は分解できず,そこで分解が止まると推察される.この細菌が高分子 量成分に生育できないのもそのためであると考えられている.

CH3

CH3 H -CH-CH2 -CH2-C- 2

C=C C-CH3 CH

-CH2 CH2 n CH2 CH2

Cis-1,4-ポリイソプレン 3,4-結合構造 1,2-結合構造 Structural formula of polyisoprene

(23)

なお,Nocardia属細菌による天然ゴムの分解では,cis-1,4-PI鎖は次のように分 解される56

CH3 CH3 CH3

-CH2-C=CH-CH2-CH2-C=CH-CH2-CH2-C=CH-CH2

↓O2

CH3 CH3

-CH2-C=CH-CH2-CH2-C=O O=C-CH2-CH2-C=CH-CH2

H CH3

Decomposition of cis-1,4- polyisoprene

(c) ポリスチレン

ポリスチレンを分解する微生物は,現在のところ見出されていない.土壌や活性 汚泥中で,14Cで標識したポリスチレンからの14CO2の遊離を測定する方法によっ て微生物分解性を検討した結果が報告されているが,長期の実験によってもポリス チレンはほとんど分解されていない57,58.ただ,2量体である1,3ジフェニルブタ ン 57や 1,3-ジフェニル-1-ブテン 59が微生物によって分解されることが報告 されている.

(24)

1.3.2 ポリエチレンの生分解に関する既往の研究

高分子量PEの生分解性に関する詳細な研究は,AlbertssonらのHDPEに関す るもの 36)と大武,渡邊らの LDPE によるもの 718)が中心で,他者の研究は非常 に少ない.東京ガス(株)では,大武らの32~37年間長期土壌埋没LDPEの微生物 分解に関する研究に注目し,土壌に数十年という長期間埋設して使用される MDPE 製ガス管の劣化評価を大武らの研究をもとに,生物活性が高い条件下(好 気性活性汚泥浸漬,嫌気性活性汚泥浸漬,カビ培養培地静置)で処理し,引張破断 応力,引張破断ひずみ,FT-IRスペクトルの変化で評価している60.5種類のMDPE をパイプのままで処理すると,好気性活性汚泥浸漬,嫌気性活性汚泥浸漬ともに引 張破断応力,引張破断ひずみの低下は極僅かであるが,MDPE パイプより作成し たフィルムで処理を行うと,原料の種類により好気性活性汚泥浸漬よりも嫌気性活 性汚泥浸漬において引張破断ひずみの低下が顕著に認められる.また,カビを接種 したMDPEパイプより作成したフィルムは,カビを接種せずに培地のみに静置し た場合と比較すると,フィルム表面にカビの繁殖と黄変が認められ,引張破断応力 はわずかな低下傾向を示している.Figure 1.9にMDPEパイプより作製したフィ ルムのカビ培養培地静置処理期間と引張破断応力の変化の例を示す.

20 25 30 35 40 45

-2 0 2 4 6 8 10 12 14

Treatment period (months)

Tensile strength (MPa)

cultivation on fungi agar cultivation on agar only

20 25 30 35 40 45

-2 0 2 4 6 8 10 12 14

Treatment period (months)

Tensile strength (MPa)

cultivation on fungi agar cultivation on agar only

Figure 1.9 Relationship between tensile strength and treatment period of the cultivation on fungi agar60.

PEの微生物劣化に関する初期の研究は,固体培地上にPE試験片を置き,カビ あるいは微生物を接種してその後の劣化状況を調べる方法を取っているものが多

(25)

い.この方法は,試験期間が約1週間から3ヶ月と比較的短いため,試験結果を早 く得ることができる.1961年Jen-Houらは,炭素を20個程度含む分子量300~ 400のn-パラフィンを比較試料とし,培地上に試料をのせて微生物を接種し増殖を 比較した.その結果,PEはn-パラフィンと比較して微生物の増殖は少なく,特に 分子量5000以上のものにおける微生物の増殖は極めて少ないということを示した

61).1972年Pottsらは,分子量170~620の直鎖状PEを培地上で微生物により培 養した後,微生物分解状況を調査した結果,分子量 451 以下のものは非常によく 分解されるが,これよりも高分子量のものは分解されにくいとした62).また,PE 上の微生物の成長は,高分子鎖に生育したものではなく,分子量 500 以下の分子 鎖を分解したため,あるいは添加物に生育するため等であり,高分子量成分での生 分解に対して否定的な報告がなされている63)

日本では,多くの PE 製品でカビや微生物の増殖が見られ 6475),分子量 1000 程度のオリゴマーでは,微生物分解が可能であることが,確認されているが,通常 の成形品レベルの高分子領域では,非分解性ポリマーであるといわれてきた76)

1970 年代後半になると Albertsson らは,HDPE の分解,劣化診断にラジオア イソトープ技術を用いて感度良く微量な変化を捉えることに成功した.14Cでラベ ルしたHDPEを土壌に2年間埋設し,14CO2の放出量からHDPE分解量の算出を 試みた.800日間の埋設でラベルした炭素のうち CO2としての放出量は,0.2%の 重量減少に相当することを確認している 3,4).この量は,PE の生分解が n-パラフ ィンの場合と同様に炭化水素鎖末端からの酵素的酸化によって生じるとするなら ば,ほぼPEの末端量に相当し,分子量を問わず末端が等しい確率で酸化されるこ とを示唆している.さらに引き続いて起こる酸化の過程で生じると考えられるカル ボニル基や炭素―炭素二重結合の量の経時変化の測定から,PE の劣化には通常の 酸化反応とは異なる微生物分解が関与していると主張している 5,6).しかし,

Albertsson らが述べているように,酸化劣化と微生物分解には相乗効果があり,

微生物分解の機構は単純なものではなく通常酸化との複合機構として捉えなけれ ばならない.

(26)

1.3.3 生分解性プラスチックの評価

生分解プラスチックの分析方法として,これまで使われている規格化された評 価方法について述べる.

(1) OECDテストガイドラインをもとにした標準試験法

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」で行われている 化学物質一般の分解性の評価方法である修正MITI法(Ⅰ),(Ⅱ)を応用した方法

がある77,78).この方法をもとに,高分子の分解性試験方法がJIS K 6950:1994

「プラスチック-活性汚泥による好気的生分解度試験方法」として制定された.

これは,馴化していない活性汚泥を用いて好気的条件下,閉鎖系酸素消費量測定 装置を使用して生物化学的酸素要求量を測定し,分解度を算出する方法である.

OECDテストガイドラインをTable 1.5に示す.

(2) 国際規格ISOの制定

1999 年に国際規格となった ISO14851,14852 は,微生物源として活性汚泥,

土壌,コンポストの懸濁液いずれかを用いる.ISO14851 は酸素消費量の測定,

ISO14852 は発生する二酸化炭素の量を測定することにより分解度を求める方法

である.また,ISO14855はコンポスト中での分解度を求める方法で,発生する二 酸化炭素の量を測定することにより分解度を求める.評価条件の一覧をTable 1.6, 1.7,1.8に示す.生分解度評価法,微生物源,好気分解か嫌気分解かなどの組み合 わせで分類される.試験方法は,試料の親水性や,製品として使用され最終的に生 分解するフィールドから選定され,水産利用資材の場合はISO14851(JIS K6950), 食品容器の場合はISO14855(JIS K6953)がそれぞれ推奨される.

(27)

Table 1.5 OECD test guidelines.

分類 No. ガイドライン 評価方法

301A DOC Die-Away 溶存有機炭素量 301B 修正Sturm 二 酸 化 炭 素 発 生

301C 修正MITI法(Ⅰ) 酸素消費量

301D Close Bottle 溶存酸素量 301E 修正OECDスクリーニング法 溶存有機炭素量 昜分解性

301F Manometric Respiromet 酸素消費量 302A 修正SCAS法(Ⅱ) 溶存有機炭素量

302B Zahn-Wellens/EMPA

溶存有機炭素量 化 学 的 酸 素 消 費

本質的分解性

302C 修正MITI法(Ⅱ)

酸素消費量 全有機炭素量 直接定量 シミュレーション試験 303A Aerobic Sewage Treatment

Coupled Units Test

Table1.6 Standard test methods of biodegradability plastics.

生分解性プラスチック 製品の規格

生分解性試験方法の 規格

崩壊性試験方法の

規格 環境毒性試験

ISO ISO14855

ISO14851 ISO14852

ISO16929 ISO14855

OECD OECD301C

TG201 TG202 TG203 TG207 TG208 アメリカ ASTMD6400 D5338(=ISO14852)

D6002

欧州 EN13432 EN14046(=ISO14855) EN14045 ドイツ Products made of

Compostable materials 日本 生分解性プラスチック

JIS K6950(=ISO14851)

JIS K6951(=ISO14852)

JIS K6952(=ISO14855)

JIS K6952(=

ISO14855 (財)日本環境協会 生分解性プラスチック製品WG資料:1-5

(28)

USA

ASTM 6400 Standard Specification for Compostable Plastics コンポスト可能なプラスチックの標準規格 ASTM D 5338

(=ISO 14852)

Standard Test Method for Determinig Aerobaic Biodegradation of Plastic Materials Under Controlled Composting Conditions

制御されたコンポスト化条件におけるプラスチックの好気的な生物分 解性に関する標準方法

ATSM D 6002 Standard Guide for Assessing the Compostability of Environmentally Degradable Plastics

環境負荷がない分解性プラスチックの生分解評価に関する標準ガイド

EU

EN 13432

Packing-Requirements for packing recoverable through composting and biodegradation-Test scheme and evaluation criteria for the final acceptance of packing

包装‐コンポストによる埋立及び生分解の要求-テストスキームと包装の 最終受入れの評価基準

EN 14046

(=ISO 14855)

Packaging-Evaluation of the ultimate aerobic biodegradability and disintegration of packaging materials iunder controlled composting conditions-Method by analysis of released carbon dioxide

包装-制御されたコンポスト化条件下における包装材料の好気的究極生分 解度及び崩壊度の評価・発生二酸化炭素量の測定による方法

EN 14045

Packaging-Evaluation of the disintegration of packaging materials in practical oriented tests under defined compositing conditions

包装・制御されたコンポスト化条件下における実用向き試験での包装材料 の崩壊度の評価

Table 1.7 Aerobaic and anaerobaic degradation of test method by JIS and ISO.

分解条件 好気的分解 嫌気的分解

分解度評価法

分解環境 酵素消費量 CO2発生量 CH4,CO2発生量 汚泥

水系

ISO 14851 JIS K 6950

ISO 14852

JIS K 6951 ISO 14853

コンポスト ISO 14855

JIS K 6953

埋立地 ISO 14985

土壌 ISO 17556

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