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各種媒質の表面張力がセメント硬化体の圧縮強度に及ぼす影響

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Academic year: 2022

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(1)

各種媒質の表面張力がセメント硬化体の圧縮強度に及ぼす影響 

九州大学大学院  学生会員  取違  剛    フェロー  松下  博通  正会員    鶴田  浩章    正会員    佐川  康貴  学生会員  尾上  幸造 

1. 目的 

  硬化コンクリートの強度と含水量は非常に密接な関係があり,養生条件や強度試験時の供試体の乾湿状態の 違いがコンクリートの強度に影響を与えることはよく知られている。堀1)は,セメント硬化体の強さを表面エ ネルギーの面から検討し,異なる表面張力を有する数種類の媒質中において曲げ強度試験を行い,媒質の表面 張力が増大するほど曲げ強度が直線的に低下することを報告しているが,これまでに媒質の表面張力と圧縮強 度との関係を報告した例は見当たらない。 そこで本研究では,含水状態の違いが硬化体の圧縮強度に与える 影響(試験1)について検討を行い,さらに数種類の媒質に浸漬させた供試体の圧縮強度試験により,硬化体 中の空隙を飽和する液体の表面張力と圧縮強度の関係(試験2)について調べた。

2. 実験概要

2.1  使用材料および配合 

  試験1,試験2ともに使用したセメントは,普通ポル トランドセメント(密度

3.16g/cm

3)であり,細骨材に は海砂(表乾密度

2.57g/cm

3,吸水率

1.60%),粗骨材に

は砕石

2005(表乾密度 2.89g/cm

3,吸水率

1.10%)を用

いた。また,混和剤としてリグニンスルホン酸系の

AE

減水剤およびアルキルアリルスルホン酸系の空気連行

剤を使用した。コンクリートおよびモルタルの配合をそれぞれ表−1,

表−2に示す。また,試験2においては,コンクリートを腐食させな い有機溶媒を使用し,その有機溶媒中でモルタルの強度試験を行っ た。表−3に本試験で用いた有機溶媒および表面張力(20℃)を示す。

2.2  試験方法 

(1)試験1

  コンクリートおよびモルタル供試体はφ7.5×15cmの円柱供試体と した。脱型後直ちに水中養生を開始し,材齢

7

日,28日,91日で圧 縮強度試験を

JIS A 1108

に従って行った。この際,供試体を表乾状態

(水中養生直後の状態)および絶乾状態の

2

通りに調整した。なお,

ここでの絶乾状態とは,所定の材齢に達した時点で

110℃の乾燥炉に

投入し,一定質量になった状態をいう。

(2)試験2

  モルタル供試体は

4×4×16cm

の角柱供試体とし,圧縮強度試験は

JIS R 5201

に従った。媒質として水を用いる場合については所定の材齢で試験を行ったが,空気中での場合は,

供試体を絶乾状態にした後に試験を行った。また,その他の媒質(有機溶媒)を用いる場合については,絶乾 状態にしたモルタルを各々の媒質に浸漬させ,内部に十分含浸した時点で媒質中において試験を行った。

キーワード:含水量,圧縮強度,表面張力

連絡先:〒812-8581  福岡市東区箱崎

6-10-1  TEL 092-641-3131 (内線 8654) FAX 092-642-3271

表−1  コンクリートの配合 

5〜10

(mm)

10〜20

(mm)

40 45 168 420 756 419 628 1575 8.40 50 45 168 336 787 436 654 1050 6.72 60 45 168 280 808 447 671 875 5.60

AE 減水剤

(g/m3) AE剤 (ml/m3) 水

W セメ ント C

海砂 S

砕石 G 水セメ

ント比 W/C

(%)

細骨 材率 s/a

(%)

単位量(kg/m3)

表−3  有機溶媒の表面張力(20℃)

使用溶媒

空気 0

ジエチルエーテル 16.5

ヘキサン 18.4

エタノール 22.3

シクロヘキサン 25.5 ベンジルアルコール 39.0 ベンズアルデヒド 40.0

水 72.8

表面張力

(dyn/cm)

表−2  モルタルの配合 

水 W

セメント C

海砂 S 40 1.9 275 687 1305 50 2.6 275 550 1416 60 3.2 275 458 1491 試験2 50 2.4 284 567 1361 単位量(kg/m3)

試験1 試験方法

水セメ ント比 W/C

(%)

砂セメ ント比 S/C 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑597‑

5‑300

(2)

3. 試験結果および考察

3.1  含水状態が圧縮強度に与える影響 

図−1にコンクリートおよびモルタルの表乾状態 および絶乾状態の

28

日圧縮強度を示す。水セメント 比に関係なく,コンクリートおよびモルタルの圧縮 強度は,表乾状態の方が絶乾状態よりも小さい値に なっていることが分かる。この傾向は,材齢

7

日,

91

日においても同様であった。この理由として,ク ラックへの水分の浸入によるひび割れの成長促進が 考えられる。Griffithによると,載荷によるひずみエ ネルギーは新しいクラックが発生されることでクラ

ックの界面エネルギーとして消費される。ここで,界面エネルギ ーとは異なる

2

相間の境界に存在するエネルギーであり,硬化体 中に存在するクラックの界面エネルギーは,固体の表面エネルギ ーからそれと接する媒質の表面エネルギーを差し引いたものとな る。表乾状態において供試体中の空隙を充たしているのは水であ り,水分がクラックに浸入することでクラックの界面エネルギー が減少するため,クラックはさらに新たな破壊面を作ることで荷 重に対して安定になろうとする。従って,水分が存在することで クラックの成長が促進され,破壊に必要な外部からの仕事量が少 なくて済むことになり,結果として表乾状態の供試体の圧縮強度 は絶乾状態の値より小さくなったと考えられる。 

3.2  各種溶媒の表面張力と圧縮強度の関係 

  図−2にモルタルの圧縮強度比と各種媒質の表面張力の関係を

示す。なお,圧縮強度比は水中における圧縮強度の値を基準として求めた。エタノールを除く媒質中における モルタルの圧縮強度は,表面張力が大きくなるに従い直線的に低下することが認められる。すなわち,曲げ引 張力を与えた場合とはひび割れ進展の過程が異なるにも関わらず,圧縮力を与えた場合においても既往の研究

1)と同様に,媒質の表面張力と強度との間に相関が認められたこととなる。これは3.1で述べたクラックの 界面エネルギーの減少に起因すると考えられる。液体において,表面張力は表面エネルギーと等価であるため,

クラックに浸入する液体の表面張力が大きいほど,クラックの界面エネルギーが減少し,クラックの成長が促 進され,外力の行うべき仕事量が少なくて済む。従って,見かけ上モルタルの強度は,硬化体中の空隙を飽和 させる媒質の表面張力が大きいほど低下したと考えられる。また,エタノールの場合に直線関係から外れた原 因については今後の検討課題である。 

 

4. まとめ 

(1)コンクリートおよびモルタルの圧縮強度は表乾状態の方が絶乾状態よりも小さくなる。この原因として,

水分の存在によりクラックの表面エネルギーが下げられたことが考えられる。 

(2)供試体中の空隙を飽和させる媒質の表面張力とモルタルの圧縮強度には相関が見られた。 

【参考文献】 

1)堀素夫:表面エネルギーから見たセメント硬化体の強さ,窯業協会誌,707pp54-591958 

図−2  モルタルの圧縮強度比と        溶媒の表面張力の関係 

0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6

0 10 20 30 40 50 60 70 80 表面張力(dyn/cm)

圧縮強度

エタノール

ベンジルアルコール ベンズアルデヒド

ジエチルエーテル

シクロへキサン へキサン

空気

図−1  コンクリートおよびモルタルの 圧縮強度(材齢 28 日) 

コンクリート

0 10 20 30 40 50 60 70 80

40 50 60

水セメント比(%) 縮強度(N/mm2 )

モルタル

40 50 60

水セメント比(%) 表乾 絶乾 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑598‑

5‑300

参照

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