プロジフ静注液100
プロジフ静注液200
プロジフ静注液400
CTD 第2部 資料概要
2.4 非臨床に関する概括評価
ファイザー株式会社
2.4.1 非臨床試験計画概略非臨床試験計画概略非臨床試験計画概略非臨床試験計画概略 ... 1 2.4.2 薬理試験薬理試験薬理試験薬理試験 ... 2 2.4.2.1 効力を裏付ける試験... 2 2.4.2.2 安全性薬理試験 ... 4 2.4.2.3 薬理総括 ... 5 2.4.3 薬物動態試験薬物動態試験薬物動態試験薬物動態試験 ... 6 2.4.3.1 血漿中濃度 ... 6 2.4.3.2 トキシコキネティクス ... 7 2.4.3.3 分布 ... 8 2.4.3.4 代謝及び排泄... 9 2.4.3.5 薬物動態学的薬物相互作用 ... 12 2.4.3.6 非臨床薬物動態総括... 12 2.4.4 毒性試験毒性試験毒性試験毒性試験 ... 14 2.4.4.1 単回投与毒性試験... 14 2.4.4.2 反復投与毒性試験... 15 2.4.4.3 遺伝毒性試験... 17 2.4.4.4 がん原性試験... 17 2.4.4.5 生殖発生毒性試験... 18 2.4.4.6 その他の試験... 20 2.4.4.7 所見の考察及び安全性の評価 ... 20 2.4.4.8 毒性総括 ... 28 2.4.5 総括及び結論総括及び結論総括及び結論総括及び結論 ... 30 2.4.6 参考文献一覧参考文献一覧参考文献一覧参考文献一覧 ... 32
2.4.1 非臨床試験計画概略 ホスフルコナゾールは,フルコナゾールをリン酸エステル化したプロドラッグである。フルコ ナゾールは,深在性真菌症の治療に広く使用されているが,重篤な深在性真菌症の患者に静脈内 投与するとき,投与液量の多いことが患者の負担となる場合がある。本薬は,溶解性を高めて液 量を少なくし,かつ生体内でフルコナゾールに変換されてフルコナゾール投与と同様の有効性及 び安全性を示すことを意図して開発された。 薬理試験 薬理試験薬理試験 薬理試験:::効力を裏付ける試験としては,ホスフルコナゾールの in vitro 及び in vivo 抗真菌活: 性 を フ ル コ ナ ゾ ー ル と 比 較 す る 目 的 で , 申 請 菌 種 で あ る Candida spp. 及 び Cryptococcus neoformans の薬剤感受性試験及びラット感染モデルにおける感染防御効果を検討した。ホスフル コナゾールの作用機序及び類薬との比較を含む薬理学的特性については,活性本体であるフルコ ナゾールで既に明らかにされているので参考文献1),2),3),4),実施しなかった。また,ホスフルコナゾー ルの一般薬理試験は,中枢神経系及び呼吸・循環器系を含む各種器官系に対する作用を検討する ために,一般薬理試験ガイドライン注1)で定められている試験を実施した。 薬物動態試験 薬物動態試験薬物動態試験 薬物動態試験:::フルコナゾールは,血漿中濃度と同程度の濃度で全身にほぼ一様に分布するこ: と,血漿蛋白結合率は 11∼12%と低いこと及び主に尿中へほとんど代謝を受けずに排泄されるこ とが既に明らかになっている。これらのことを考慮して,ホスフルコナゾールの薬物動態及び活 性本体であるフルコナゾールへの加水分解の速度と程度を明らかにする目的で,血漿中濃度,体 内分布, in vitro 代謝及び排泄試験を実施した。血漿中濃度,体内分布,in vitro P450 阻害作用 及び尿中排泄については,フルコナゾールと比較した。また,トキシコキネティクスデータを用 いて蓄積性,線形性及び胎盤通過性を検討した。更に,治験相談(平成 年 月 日)の意見注 2),参考文献5)を受けて,蛋白結合に関する薬物相互作用を in vitro で検討した。 毒性試験 毒性試験毒性試験 毒性試験:::ICH ガイドラインに従い,新有効成分医薬品の製造(輸入)承認申請に必要な試験: を実施した。静脈内単回投与毒性試験は,げっ歯類としてマウス及びラットを用い,非げっ歯類 としてはイヌ7日間用量設定試験の成績で代替した。静脈内反復投与毒性試験は,活性本体であ るフルコナゾール静注液の市販後の臨床使用期間がほとんどの患者で 4 週間以内であり,ホスフ ルコナゾールの臨床使用期間も同程度と考えられることから,ラット及びイヌの静脈内1ヵ月及 び6ヵ月毒性試験を実施した。また,ホスフルコナゾールでは溶解性を高めたことから,単回・ 反復投与毒性試験における静脈内投与量はフルコナゾールと比較して高い量を設定した。その他, in vitro 及び in vivo の遺伝毒性試験,ラット及びウサギの生殖発生毒性試験並びにモルモットを 用いた抗原性(アナフィラキシー)試験を実施した。用量設定試験以外の全ての毒性試験は GLP に準拠して実施した。 注1)平成 3 年 1 月 29 日付薬新薬第 4 号:新医薬品等の製造(輸入)承認申請に必要な一般薬理試験 のガイドラインについて。 注2)医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構との個別相談。相談事項 1-2)薬物相互作用について。
2.4.2 薬理試験 2.4.2.1 効力を裏付ける試験 ホスフルコナゾールの in vitro 及び in vivo 抗真菌活性をフルコナゾールと比較するために, Candida spp.及び C. neoformans の薬剤感受性試験及び感染防御試験を実施した。試験菌は,酵母 様真菌のうち深在性真菌症の原因菌として分離される頻度の高い菌種を選択した参考文献6)。 (1) In vitro抗真菌活性(資料番号 PD1,PD2 )
ホスフルコナゾール及びフルコナゾールの Candida spp.及び C. neoformans に対する in vitro 抗
真菌活性を,標準株及び臨床分離保存株注1)を用いて検討した。最小発育阻止濃度(MIC)の測定 は,ミクロ液体希釈法で実施した。ホスフルコナゾールの臨床分離保存株に対する MIC90 注2)は, すべての試験菌種で>64 µg/mL であり,in vitro ではほとんど抗真菌活性を示さないことが明らか となった。また,ホスフルコナゾールは,標準株に対しても MIC が 64∼>64 µg/mL であり,抗 真菌活性をほとんど示さなかった注3)。一方,フルコナゾールの臨床分離保存株に対する MIC 90は,
Candida albicans,Candida parapsilosis 及び Candida tropicalis に対して 0.5∼4 µg/mL であり,
Candida glabrata及び C. neoformans に対して 16∼32 µg/mL であった。フルコナゾールの Candida
guilliermondii及び Candida krusei に対する MIC 範囲は,それぞれ 2 µg/mL 及び 16∼64 µg/mL で
あった。 表 1 臨床分離保存株に対する抗真菌活性 MIC(µg/mL) 試験菌種(菌株数) 試験薬物 範囲 50% 80% 90% ホスフルコナゾール 16 ∼ >64 64 >64 >64 Candida albicans(52) フルコナゾール 0.125 ∼ 8 0.25 0.5 0.5 ホスフルコナゾール >64 >64 >64 >64 Candida parapsilosis(13) フルコナゾール 0.5 ∼ 8 2 2 4 ホスフルコナゾール 32 ∼ >64 >64 >64 >64 Candida tropicalis(12) フルコナゾール 0.25 ∼ 4 0.5 0.5 1 ホスフルコナゾール >64 - - -Candida guilliermondiia) (2) フルコナゾール 2 - - -ホスフルコナゾール >64 >64 >64 >64 Candida glabrata(18) フルコナゾール 2 ∼ 32 4 8 32 ホスフルコナゾール >64 - - -Candida krusei a)(5) フルコナゾール 16 ∼ 64 - - -ホスフルコナゾール >64 >64 >64 >64 Cryptococcus neoformans(16) フルコナゾール 1 ∼ 16 8 8 16 a): 試験株数が少ないため,MIC50, 80, 90は算出しなかった。 注1)1995 年から 1997 年に分離された臨床分離株。 注2)MIC90:90%の試験菌の発育を阻止する最小薬物濃度。 注3)2.6.3.2 (1) In vitro 試験成績一覧の項参照(資料番号:PD1)。
(2) 作用機序 ホスフルコナゾールは,生体内で加水分解されて,活性本体のフルコナゾールが真菌膜成分で あるエルゴステロールの生合成を阻害することにより抗真菌活性を示す参考文献 4)。また,フルコナ ゾールのエルゴステロール生合成阻害作用は真菌に選択的で,ラット肝細胞でのステロール生合 成に対する影響は少ないことが明らかにされている参考文献 4)。 (3) 感染防御効果(資料番号 PD3) ホスフルコナゾールの in vivo 抗真菌活性をフルコナゾールと比較するために,免疫正常及び免 疫抑制ラットの全身カンジダ感染モデル並びに免疫正常ラットの頭蓋内クリプトコックス感染モ デルを用いて,感染防御効果を検討した。 免疫正常ラットの静脈内に C. albicans を接種して作製した全身カンジダ感染モデルに,ホスフ ルコナゾール又はフルコナゾールを感染 1 及び 4 時間後に静脈内投与し,生存数から PD50値 注1) を算出した。ホスフルコナゾールとフルコナゾールの感染 2 日目及び 5 日目の PD50値を比較し た結果,両薬物の感染防御効果に差は認められなかった。また,免疫抑制ラットを用いた同様の 試験においても,両薬物の感染防御効果に差は認められなかった。 免疫正常ラットの頭蓋内に C. neoformans を接種して作製した頭蓋内クリプトコックス感染モ デルに,ホスフルコナゾール又はフルコナゾールを感染 4∼6 時間後に静脈内投与し,その後 1 日 2 回 9 日間注2)静脈内投与し,脳内生菌数を測定した。ホスフルコナゾールとフルコナゾールの 薬物最終投与後 16 時間の脳内生菌数を比較した結果,両薬物の感染防御効果に差は認められな かった。 表 2 各種感染モデルにおける感染防御効果 試験項目 試験菌株 ホスフルコナゾール フルコナゾール 感染後(日) PD50(平均値±標準偏差, mg/kg, 静脈内) 2 0.19±0.13 0.10±0.06 免疫正常ラットの全身カン ジダ感染モデルにおける感 染防御効果 C. albicans Y01.02 5 0.46±0.29 0.50±0.41 感染後(日) PD50(平均値±標準偏差, mg/kg, 静脈内) 3 0.24±0.16 0.22±0.05 免疫抑制ラットの全身カン ジダ感染モデルにおける感 染防御効果 C. albicans Y01.02 4 0.72±0.69 0.76±0.44 投与量 (mg/kg, 静脈内) 生菌数(平均値±標準偏差,Log10CFU/g脳) 5 2.88±0.47 2.70±0.81 1 3.79±0.82 3.63±0.82 0.1 6.68±0.42 6.05±0.84 免疫正常ラットの頭蓋内ク リプトコックス感染モデル における感染防御効果 C. neoformans Y16.03 0 (対照) 7.00±0.26 ホスフルコナゾールの感染防御効果がフルコナゾールと同程度であったことは,ホスフルコナ ゾールが速やかにフルコナゾールに変換されて抗真菌活性を発揮することを示している。また, ヒトにホスフルコナゾールを投与後,血漿中及び組織内に認められるフルコナゾール濃度と MIC の比較から,ホスフルコナゾールは C. albicans,C. parapsilosis,C. tropicalis,C. guilliermondii,
C. glabrata及び C. neoformans による深在性真菌症に対して臨床効果を示すと考えられる。
注1)PD50:半数の動物を生存させる用量(50%感染防御効果:ロジット変換を用いて算出)。
2.4.2.2 安全性薬理試験
(1) 一般薬理試験(資料番号 PD3,PD4)
一般薬理試験は,中枢神経系及び呼吸・循環器系を含む各器官系に対する作用を,静脈内投与 及び in vitro で検討した。静脈内投与試験ではホスフルコナゾール 100 mg/kg 又は 300 mg/kg を最 高用量注1)に,また,in vitro 試験では 10-5 mol/L(3.9 µg/mL)又は 2.6×10-3 mol/L(103 µg/mL)を
最高濃度に設定した注2)。 1) 一般症状・行動及び中枢神経系に及ぼす影響 ホスフルコナゾールは,100 mg/kg(1 日 1 回 5 日間)まで,ラットの一般症状・行動に影響を 及ぼさなかった。 中枢神経系においてホスフルコナゾールは,マウスの自発運動,電撃・ペンテトラゾール・ス トリキニーネ誘発痙攣及び酢酸ライジング,並びにラットの体温に対して 300 mg/kg まで影響を 及ぼさなかった。また,マウスの協調運動に対しても 100 mg/kg まで影響を及ぼさなかった。 しかし,ホスフルコナゾールは,マウスのエタノール誘発睡眠時間に 100 mg/kg まで影響しな かったが,0.3 mg/kg 投与でマウスのバルビツレート誘発睡眠時間を延長した。 バルビツレート誘発睡眠時間の延長作用は,フルコナゾールでも認められている。この作用は, バルビツレート代謝に関与するチトクロム P450 分子種注3)をフルコナゾールが阻害するために生 じることが明らかにされている参考文献7),8)。ホスフルコナゾールは,in vitro でヒトの主要なチトク ロム P450 分子種に対して影響を及ぼさなかったことから注4),ホスフルコナゾールで認められた 睡眠時間延長作用は,生体内で生成したフルコナゾールの作用によると考えられる。 2) 呼吸・循環器系に及ぼす影響 ホスフルコナゾールは,10 mg/kg では麻酔ネコの血圧及び心拍数に影響を及ぼさなかったが, 30 mg/kg及び 100 mg/kg では平均血圧の上昇(17 及び 34%)及び心拍数の減少傾向が認められた。 麻酔イヌでは,40 mg/kg で血圧に対する作用はみられなかったが,心拍数の減少(11%)及びそ れに起因すると考えられる QT 間隔の延長(<5%)が認められた注5)。また,麻酔ラットの動脈血 の pH・pCO2・pO2は,ホスフルコナゾール 100 mg/kg で影響を受けなかった。 フルコナゾールでも同様の循環器系の変化,すなわち,麻酔ネコにおける平均血圧上昇及び心 拍数の減少参考文献9)並びに覚醒イヌにおける心拍数の減少参考文献10)が認められている。 注1)ホスフルコナゾール 100 mg/kg 及び 300 mg/kg(フルコナゾールとして 79 mg/kg 及び 238 mg/kg)は,推定臨床投与量のそれぞれ 5 倍及び 15 倍に相当する(体重 50 kg のヒトにホスフル コナゾール 1000 mg を静脈内投与した場合の 20 mg/kg から算出)。 注2)外国の試験(最高用量:100 mg/kg,最高濃度:10-5 mol/L)は,開発の初期段階にその薬理学的 特性を調べる目的で実施されたため,安全性に重点を置いた国内の試験(最高用量:300 mg/kg, 最高濃度:2.6×10-3 mol/L)と比較して最高用量が低く設定されている。 注3)ミコナゾール及びケトコナゾールもフルコナゾールと同様にバルビツレート代謝に関与するチ トクロム P450 分子種を阻害する参考文献 7),8)。 注4)2.4.3.5 (2) チトクロム P450 分子種に対する阻害作用(in vitro)の項参照。 注5)QT 間隔に関する詳細な考察は,2.4.4.7 (5) QT 間隔と心拍数の関連の項参照。
3) その他 ホスフルコナゾールは,麻酔ネコの坐骨神経刺激による腓腹筋収縮及び上頸交感神経節前刺激 による瞬膜収縮に対して 100 mg/kg まで影響を及ぼさなかった。また,ホスフルコナゾールは, モルモット摘出回腸の各種アゴニストによる収縮及びウサギ摘出回腸の自動運動に対して 2.6× 10-3 mol/L(103 µg/mL)まで作用を示さなかった。ラット摘出子宮のオキシトシン収縮に対して は,10-5 mol/L(3.9 µg/mL)まで作用を示さなかった。 消化器系においてホスフルコナゾールは,ラット小腸輸送能及び胃酸分泌に 100 mg/kg まで影 響を及ぼさなかったが,マウス小腸輸送能に対して 300 mg/kg で抑制(12%)がみられた。 生理食塩液負荷ラットにおいてホスフルコナゾールは,10 mg/kg で Cl-排泄量を増加させたが, 尿量及び Na+・K+排泄量,尿 pH には影響しなかった。30 mg/kg では尿量及び Na+・Cl-排泄量の 増加,100 mg/kg では尿量,Na+・K+・Cl-排泄量の増加及び尿 pH の上昇が認められた。ラットに おける尿量及び尿中電解質排泄量の増加は,フルコナゾールにおいても認められている参考文献11)。 ホスフルコナゾールは,ラット摘出坐骨神経の活動電位に対して 10-5 mol/L まで影響を及ぼさ なかった。各種受容体及び結合部位への選択的なリガンド結合,Na+/K+-ATPase 活性及びアセチ ルコリンエステラーゼ活性に対するホスフルコナゾールの IC50値 注1)は 10-5 mol/L を超える値で あった。 2.4.2.3 薬理総括
ホスフルコナゾールは,in vitro ではほとんど抗真菌活性を示さなかったが,in vivo においては フルコナゾールと同程度の感染防御効果を示した。また,ホスフルコナゾールの一般薬理試験に おいて認められた作用は,いずれもフルコナゾールと同様であり,ホスフルコナゾールに特有な 有害作用の発現を予測させる所見は認められなかった。これらのことから,ホスフルコナゾール は生体内でフルコナゾールに変換され,フルコナゾール投与時と同様の薬理作用を示すと考えら れる。 注1)リガンド結合又は酵素活性を 50%阻害する濃度。
2.4.3 薬物動態試験 ホスフルコナゾールの非臨床薬物動態試験では,薬理試験及び毒性試験で用いた動物種である マウス(CD-1),ラット(Sprague-Dawley)及びイヌ(ビーグル)における単回静脈内投与時の 薬物動態を検討した。また,活性本体であるフルコナゾールを投与してホスフルコナゾールの薬 物動態と比較した。なお,ホスフルコナゾールをラット及びイヌに反復投与したときの薬物動態 及び妊娠ラットを用いた胎盤通過性は,トキシコキネティクスデータを用いて評価した。 生体試料中のホスフルコナゾール及びフルコナゾールの定量には,高速液体クロマトグラフ− 紫外検出(HPLC/UV)法又は高速液体クロマトグラフ−タンデム質量分析(HPLC/MS/MS)法 を用いた。分析試料の調製方法は動物種又は生体試料の種類によって異なったが,生体試料ごと に適切な液−液抽出又は固相抽出による前処理を行った後,分析に供した。 組織分布の検討には, 14C で放射標識した 14C-ホスフルコナゾール及び 14 C-フルコナゾールを用いた。組織中の放射能は,組織切片を較正済みの放射性ポリマー標準ととも にホスホイメージャーを用いてコンピューター画像に変換して測定した。血球移行の検討では, 血漿中及び血液中の放射能を,液体シンチレーション計測法で測定した。 In vitro 代謝試験では,ラット,イヌ及びヒトの組織あるいは酵素標品を用いて,ホスフルコ ナゾールからフルコナゾールへの加水分解の速度と程度を検討した。また,血漿蛋白結合あるい は P450 代謝を介した薬物動態学的薬物相互作用を予測するための in vitro 試験を実施した。 2.4.3.1 血漿中濃度(試験番号 DM1,2,4 ) マウス,ラット及びイヌにホスフルコナゾールを単回静脈内投与したときのホスフルコナゾー ル及びフルコナゾールの血漿中濃度を検討した。得られた薬物動態パラメータを表 3 に要約した。 比較のため,ヒトにおけるパラメータも記載した。 ホスフルコナゾールを静脈内投与後,ホスフルコナゾールの血漿中濃度はいずれの動物種にお いても速やかに低下し,半減期は 0.4 時間以下であった。イヌにおける半減期は,マウス及び ラットに比べて長かった。ホスフルコナゾールの分布容積は,いずれの動物種においても小さく, 0.58 L/kg以下であった。活性本体であるフルコナゾールはホスフルコナゾールを静脈内投与後, 速やかに血漿中に検出された。したがって,ホスフルコナゾールからフルコナゾールへの加水分 解は,いずれの動物種においても速やかであると考えられる。マウス及びイヌの AUC から算出 したホスフルコナゾール投与時のフルコナゾールへの変換率(フルコナゾールとしてのバイオア ベイラビリティ)は,それぞれ 100%及び 94.6%であった。 ヒトにおけるホスフルコナゾールの分布容積は,マウス,ラット及びイヌでみられたと同様に 小さく 0.16 L/kg であった。また,ホスフルコナゾールの半減期は 2.3 時間であり,フルコナゾー ルの半減期の 1/10 未満であった。ホスフルコナゾールはヒトにおいてもほぼ完全にフルコナ ゾールへ加水分解された。
表 3 ホスフルコナゾールを単回静脈内投与したときのホスフルコナゾール及びフルコナゾー ルの薬物動態パラメータa) ホスフルコナゾール フルコナゾール 動物種 投与量 (mg/kg) AUC0-∞ (µg・h/mL) T1/2 (h) Vd (L/kg) CL (mL/min/kg) Tmax (h) Cmax (µg/mL) AUC0-∞ (µg・h/mL) T1/2 (h) F b) (%) マウス 雌 (n=3/各測定時点) 10 − 0.07 0.58 90.0 0.33 6.4 25 2.9 100 ラット 雄 (n=4) 10 4.9 0.09 0.26 33.9 0.13 8.6 80.5 6.87 − イヌc) 雄 (n=2),雌 (n=2) 12.7 d) − (11.4) 0.4 e) 0.2 (1.6) f) 4.7 2.4 10.8 168.5 14.9 94.6 ヒト g) 健康成人男子 (n=8) 1000 h) 205.6 2.3 0.16 1.31 2.5 12.09 619.1 32.9 −i) − 算出せず。 a) マウス及びラットの薬物動態パラメータは 1 コンパートメントモデルを,イヌの薬物動態パラメータは 2 コ ンパートメントモデルを用いて算出した。 ヒトは,ノンコンパートメントモデルを用いて薬物動態パラメータを算出した。 b) ホスフルコナゾール投与時のフルコナゾールとしてのバイオアベイラビリティ。フルコナゾール静脈内投与 時の AUC との比較により算出した。 c) ホスフルコナゾールのパラメータは,雄 1 匹,雌 2 匹より算出した。また,血漿中濃度は雌雄で同様である ことがトキシコキネティクスデータで示されており,雌雄を合わせた平均値を示す。 d) 投与液は, を用いて調製した。投与量はフルコナゾールとして 10 mg/kg に相当する。 e) 値は終末相の半減期を示す。 f) 値は組織コンパートメントの分布容積を示す。 g) 治験 No.UK-292,663-JP- -501 のデータを示す。T1/2及び Vd は,それぞれ終末相の半減期及び定常状態にお
ける分布容積を示す。AUC0-∞,Cmaxは幾何平均値を,Tmaxは中央値を示す。
h) ヒトには 1000 mg を投与した。 i) 治験 No.252-202 のデータから,バイオアベイラビリティは 97.6%と算出されている。 2.4.3.2 トキシコキネティクス(試験番号 076, 048/54, 075 ) ラットにおける 1 ヵ月間反復投与毒性試験及びイヌにおける 7 日間並びに 1 ヵ月間反復投与毒 性試験において,ホスフルコナゾールを反復静脈内投与したときの曝露量を検討した。得られた 薬物動態パラメータを表 4 に要約した。比較のため,ヒトに反復静脈内投与したときのパラメー タも記載した。 ラット及びイヌにおいてホスフルコナゾール並びにフルコナゾールの Cmax及び AUC は投与量 にほぼ比例して増加した。ホスフルコナゾールの血漿中濃度に蓄積性は認められなかった。イヌ において,フルコナゾールの血漿中濃度は反復投与により上昇し,投与 7 日目における AUC は 1日目に比べて 27.6∼65.0%高い値を示した。1 ヵ月間反復投与したときのフルコナゾールの Cmax 及び AUC は 7 日間反復投与したときの値と大差なく,フルコナゾールの血漿中濃度は反復投与 7日目までに定常状態に達していると考えられる。
表 4 ラット及びイヌにおけるホスフルコナゾール 7 日間及び 1 ヵ月間静脈内反復投与毒性試 験の薬物動態パラメータ並びにヒトにおける反復静脈内投与時の薬物動態パラメータ ホスフルコナゾール フルコナゾール 動物種 投与量 (mg/kg) 投与 日数 Cmax a) (µg/mL) AUC b) (µg・h/mL) Cmax (µg/mL) AUC b) (µg・h/mL) 40 27 77.7 − 56.1 309.1 80 27 173.9 167.1 92.4 613.0 ラット c) (n=10) 160 27 404.9 388.8 172.0 1006.7 3 1 11.7 − 3.9 56.1 7.5 1 37.4 − 12.5 141.3 36 1 192.6 106.5 36.2 596.9 90 1 514.1 309.1 80.4 1344.3 3 7 32.9 − 4.9 71.6 7.5 7 74.2 − 14.2 228.5 36 7 238.6 137.6 61.1 920.3 イヌ c) (n=3) 90 7 515.3 304.1 127.6 2218.1 7.5 26 42.7 30.8 11.5 167.3 36 26 166.0 108.6 71.1 748.1 イヌ c) (n=6) 90 26 362.8 224.9 148.5 1627.3 (n=11) 1000 e) 1 133 159 12.2 671 ヒト d) (n=10) 1000 e) 14 132 158 40.0 770 − 算出せず。 a) ホスフルコナゾールの Cmaxは投与後 5 分に観察された血漿中濃度の平均値を示す。
b) ホスフルコナゾールの AUC は,ラットでは AUC5min-2h,イヌでは AUC5min-6h(1 及び 7 日目)及び AUC5min-24h (26 日目),ヒトでは AUC0-∞を示す。
フルコナゾールの AUC は,ラット及びイヌでは AUC5min-24h,ヒトでは単回投与時の AUC0-∞及び反復投
与時の AUC0-24hを示す。
c) 血漿中濃度は雌雄で同様であったため,雌雄を合わせた平均値を示す。
d) 治験 No.252-205 のデータ。ホスフルコナゾールの AUC,フルコナゾールの Cmax及び AUC は幾何平均値を示
す。 e) ヒトには 1000 mg を投与した。 2.4.3.3 分布 (1) 組織分布(試験番号 DM9,10 ) 有色ラットに 14C-ホスフルコナゾール又は 14C-フルコナゾールを単回静脈内投与したときの組 織分布を全身オートラジオルミノグラフィーで検討した。 投与後 5 分の腎臓における放射能の分布には,ホスフルコナゾール投与とフルコナゾール投与 との間で顕著な差がみられ,ホスフルコナゾール投与の方が腎皮質及び髄質に高濃度の放射能が 認められた。ホスフルコナゾール及びフルコナゾール投与とも投与後 30 分以降は,放射能は血 中濃度と同程度の濃度で全身に分布した。これは,ホスフルコナゾールからフルコナゾールへの 加水分解が高率かつ速やかであり,フルコナゾールが体内に広く分布するためと考えられる。組 織内放射能は投与後時間の経過とともに低下し,投与後 96 時間までにほとんど消失した。
(2) 血漿蛋白結合(in vitro)(試験番号 DM6, D-DIS-1 )
ホスフルコナゾールの血漿蛋白結合率を in vitro 限外濾過法で検討した。
ホスフルコナゾールの蛋白結合率は高く,10 µg/mL の濃度ではラット,イヌ及びヒトでそれ ぞれ 80.9,88.4 及び 98.4%であった。更に,ヒトの血漿における蛋白結合率は,20,50 及び 200
µg/mLの濃度でそれぞれ 93.8,92.4 及び 77.7%であり,高濃度で血漿蛋白結合の飽和がみられた。 なお,フルコナゾールの血漿蛋白結合率は,動物及びヒトにおいて in vitro では 11∼12%と低 いことが明らかになっている参考文献12)。 (3) 血球移行(in vitro)(試験番号 DM14 ) ヒト血液に14C-ホスフルコナゾールを添加したときの放射能の血液/血漿中濃度比(濃度比)を 測定し,ホスフルコナゾールの血球移行を検討した。 ホスフルコナゾールの血液中濃度が 10,50 及び 200 µg/mL となるように添加したとき,濃 度比はそれぞれ 0.57,0.58 及び 0.62 であり,添加濃度に影響されずほぼ一定であった。ヒト の標準的なヘマトクリット値(36∼47%)参考文献13)を考慮すると,ホスフルコナゾールは血球中へ ほとんど移行しないと考えられる。 (4) 胎盤通過性(試験番号 079/80 ) 妊娠ラットにホスフルコナゾールを反復静脈内投与した生殖発生毒性試験において,投与 12 日目(妊娠 17 日目)に母体血漿,羊水及び胎児中のホスフルコナゾール及びフルコナゾール濃 度を測定し,ホスフルコナゾールの胎盤通過性を検討した。 投与後 6 時間における羊水及び胎児中のホスフルコナゾール濃度は,母体血漿中と同様に定量 下限値以下であったが,ホスフルコナゾールから生成したフルコナゾールが羊水及び胎児中で認 められ,その濃度は同じ時点の母体血漿中濃度と同程度であった。 2.4.3.4 代謝及び排泄 (1) ホスフルコナゾールの加水分解(in vitro) 1) 組織ホモジネートによる加水分解(試験番号 DM7,11,12 ) ラット,イヌ及びヒトの血液並びに各種組織ホモジネートにホスフルコナゾールを添加してイ ンキュベーションし,ホスフルコナゾールからフルコナゾールへの加水分解の速度について検討 した。 フルコナゾールの生成は,血液中でほとんど観察されなかったが,肝臓,腎臓,心臓及び肺ホ モジネート中で認められた。ホスフルコナゾールの半減期は,いずれの動物種においても腎臓又 は肺で血液及び他の組織に比べて短かった。 2) 酵素による加水分解(試験番号 DM15 ) ホスフルコナゾールの加水分解に関与する生体内における酵素を明らかにするため,主要な酵 素による加水分解の程度を検討した。 ホスフルコナゾールをウシ由来のアルカリホスファターゼとインキュベーション(37℃,120 分間)したとき,ほぼ完全(添加量の 99%)にフルコナゾールに加水分解された。同じ条件下で, ウシ由来の酸性ホスファターゼ又はブタ由来のエステラーゼによる加水分解は不完全であった (それぞれ添加量の 33%及び 12%)。したがって,生体内において,ホスフルコナゾールの加水 分解にはアルカリホスファターゼが大きく関与していると考えられる。
(2) 単離灌流肝における検討(試験番号 DM5 ) 肝臓におけるホスフルコナゾールの代謝を調べるため,ラット単離灌流肝を用いた試験を行っ た。 90 分間の灌流で,ホスフルコナゾールの消失及びフルコナゾールの生成はみられなかった。 また,ホスフルコナゾール及びフルコナゾールの胆汁中排泄率は,添加量のそれぞれ 0.03 及び 0.015%とごくわずかであった。ラットにおいて肝臓はホスフルコナゾールの主要な消失臓器では ないことが示唆される。 (3) 尿中排泄及び排泄物中代謝物(試験番号 DM4 ) イヌにホスフルコナゾールを静脈内投与したとき,投与後 24 時間までに投与量の 53.1%がフ ルコナゾールとして尿中に排泄され,未変化ホスフルコナゾールの尿中排泄率は,投与量の 1% 未満であった。また,フルコナゾールを静脈内投与したときの尿中には,投与後 24 時間までに 投与量の 52.1%が未変化フルコナゾールとして排泄され,ホスフルコナゾールを投与したときの フルコナゾールの排泄率と良く一致した。 イヌに14C-フルコナゾールを 7.5 mg/kg の用量で静脈内に急速注入したとき,投与後 96 時間ま でに尿中に投与放射能の 79%が排泄され,そのほとんどが未変化フルコナゾール(尿中放射能の 90.5%)であることが示されている参考文献 14)。また,マウス及びラットでも投与した14C-フルコナ ゾールは,そのほとんどが未変化フルコナゾールとして尿中に排泄されることが示されている参 考文献 12), 14)。 これらの結果から,ホスフルコナゾールを投与したとき,主にフルコナゾールとして尿中に排 泄されることが示唆された。 フルコナゾールを投与後の代謝物は,既にマウス,ラット及びイヌで明らかにされており,尿 中及び糞中にわずかではあるが,3 種類の代謝物が認められている参考文献 12),14)。そのうちの 2 種類 は,1,2,4-トリアゾール及び脱トリアゾール体のグルクロン酸抱合体であることが明らかにされ ている。 ヒトにフルコナゾールを投与後の代謝物も既に明らかにされている。ヒトの尿中には,動物で も認められる 1,2,4-トリアゾール及び脱トリアゾール体のグルクロン酸抱合体が認められている 参考文献 12)。この他にも尿中にフルコナゾールのグルクロン酸抱合体及び N-酸化体が認められてい る参考文献15)(図 1)。
N N N N N N F F C O CH2 CH2 P O OH O H N N N N N N F F C OH CH2 CH2 P OH OH O O H N N N H O N N N F F C OH CH2 CH2 GLU N N N N N N F F C O CH2 CH2 GLU N N N N N N F F C OH CH2 CH2 O ホスフルコナゾール イヌa) <1%/24h DM4 ヒトb) 0.7%/24h 治験No.252-203 フルコナゾール イヌa) 53.1%/24h DM4 ヒトb) 85.6%/24h 治験No.252-203 N-酸化体 ヒトg) 2.0%/96h 参考文献15) グルクロン酸抱合体 ヒトg) 6.5%/96h 参考文献15) 脱トリアゾール体 グルクロン酸抱合体 ラットc) 1.7%/24h 参考文献12) ヒトf) 0.2%/120h 参考文献12) 1, 2, 4-トリアゾール マウスc) 3.3%/48h 参考文献14) ラットc) 2.4%/24h 参考文献12) イヌc) 2.1%/96h 参考文献14) ヒトf) 2.4%/120h 参考文献12) OH N N N F F C OH CH2 CH2 マウスc) 91.2%/48h 参考文献14) ラットc) 79.3%/24h 参考文献12) イヌc) 90.5%/96h 参考文献14) ヒトg) 87.8%/96h 参考文献15) ヒトf) 77.3%/120h 参考文献12) イヌd) 52.1%/24h DM4 ヒトe) 80.9%/24h 治験No.252-203 尿中放射能に対する% 尿中放射能に対する% 尿中放射能に対する% 尿中放射能に対する% 投与量に対する% 投与量に対する% 投与量に対する% 投与量に対する% 図 1 ホスフルコナゾールの推定代謝経路 数値は尿中排泄率を示す。図中の緑字はホスフルコナゾール投与時の値を,赤字はフルコナ ゾール投与時の値を示す。 a) ホスフルコナゾールを単回静脈内投与した。 b) ホスフルコナゾールを反復静脈内投与した。 c) 14C-フルコナゾールを単回静脈内投与した。 d) フルコナゾールを単回静脈内投与した。 e) フルコナゾールを反復静脈内投与した。 f) フルコナゾールを単回経口投与した。 g) 14C-フルコナゾールを単回経口投与した。 (4) 乳汁中排泄 フルコナゾールを授乳ラットに静脈内投与したとき,乳汁中に血漿中濃度と同程度のフルコナ ゾールが認められている参考文献 12)。したがって,ホスフルコナゾールを静脈内投与した場合にも 乳汁中にフルコナゾールが排泄されると考えられる。
2.4.3.5 薬物動態学的薬物相互作用
(1) 血漿蛋白結合に関する相互作用(in vitro)(試験番号 D-DIS-1 )
ホスフルコナゾールはヒトの血漿における蛋白結合率が高く,分布容積が小さいため,血漿蛋 白結合に関する相互作用を in vitro で検討した。臨床において血漿中に認められる濃度となるよ うにホスフルコナゾールとワルファリン,フェニトイン又はトルブタミドを血漿に添加し,それ ぞれの薬物の蛋白結合率を測定した。 ワルファリンの血漿蛋白結合率は,ホスフルコナゾールによって影響を受けなかったが,フェ ニトイン及びトルブタミドの血漿蛋白結合率は,ホスフルコナゾールの臨床最高用量(1009 mg)を投与直後にのみ認められる血漿中濃度(200 µg/mL)でそれぞれ 17.7%及び 1.8%低下した。 しかし,血漿中のホスフルコナゾールは 2.3 時間の半減期で低下するため,他剤の血漿蛋白結合 率に影響を及ぼすような高濃度は短時間認められるにすぎないと考えられる。一方,ホスフルコ ナゾールの血漿蛋白結合率は,ワルファリン,フェニトイン及びトルブタミドの添加によって影 響を受けなかった。 これらの結果から,ホスフルコナゾールの高い血漿蛋白結合率によって臨床上重大な薬物相互 作用が起こる可能性は低いと考えられる。 (2) チトクロム P450 分子種に対する阻害作用(in vitro)(試験番号 DM8 ) ヒト肝ミクロソームを用いてホスフルコナゾール及びフルコナゾールの各種チトクロム P450 分子種に対する阻害作用を検討した。 ホスフルコナゾールは,主要なチトクロム P450 分子種(CYP1A2,2C9,2C19,2D6,2E1 及 び 3A4)を阻害しなかった。しかし,フルコナゾールは検討したチトクロム P450 分子種のうち, 2C9(IC50,68 µmol/L),2C19(IC50,47 µmol/L)及び 3A4(IC50,214 µmol/L)を阻害すること
が確認された。したがって,ホスフルコナゾールは P450 の阻害による薬物相互作用を生じない と考えられるが,生成したフルコナゾールは他のアゾール系抗真菌剤と同様に参考文献16)チトクロ ム P450(2C9,2C19 及び 3A4)の阻害に基づく薬物相互作用の原因となり得ると考えられる。 2.4.3.6 非臨床薬物動態総括 マウス,ラット及びイヌを用いてホスフルコナゾールを静脈内投与したときのホスフルコナ ゾール及びフルコナゾールの薬物動態を検討した結果から,ホスフルコナゾールは生体内で速や かに活性本体であるフルコナゾールに変換されることが明らかとなった。In vitro における検討結 果から,この速やかな加水分解には,動物及びヒトで多くの組織に広く分布している参 考 文 献 17),18),19)アルカリホスファターゼが大きく関与していることが示唆された。 有色ラットを用いた分布試験の結果から,ホスフルコナゾールは静脈内投与後速やかに加水分 解され,フルコナゾールとして全身に分布すると考えられる。また,特定の組織に対する蓄積性 はないと考えられる。 イヌを用いた排泄試験の結果から,ホスフルコナゾールを静脈内投与すると,主にフルコナ ゾールとして尿中に排泄された。 以上,非臨床薬物動態試験によって,ホスフルコナゾールは静脈内投与後速やかに加水分解を
受け,その後は活性本体であるフルコナゾールとして挙動することが検証された。
なお,ラットでフルコナゾールの胎児移行及び乳汁中排泄が認められていること,並びにフル コナゾールはヒトの CYP2C9,2C19 及び 3A4 を阻害することが認められている。したがって, ホスフルコナゾールの臨床使用では,これらのことに十分に注意する必要がある。
2.4.4 毒性試験 ホスフルコナゾールの毒性評価は,ICH ガイドラインに従い,単回投与毒性試験,反復投与毒 性試験,遺伝毒性試験,生殖発生毒性試験を実施した。更に,モルモットを用いた抗原性(アナ フィラキシー)試験も実施した。ただし,がん原性試験は,活性本体であるフルコナゾール静注 液の市販後の臨床使用期間がほとんどの患者で 4 週間以内であり,ホスフルコナゾールの臨床使 用期間も同程度と考えられるため,実施しなかった。 毒性試験で使用したホスフルコナゾールには,原薬で規格設定されている類縁物質が含まれて おり,その毒性評価はホスフルコナゾールの毒性試験で担保できたものと考えられる。 投与経路はホスフルコナゾールの臨床適用経路である静脈内を選定した。 用量設定試験以外の全ての毒性試験は GLP に準拠して実施した。CD-1 マウス及び Sprague-Dawley 系ラットは ビーグル犬は
New Zealand White ウサギは ,Hartley 系モルモットは
より購入した。 2.4.4.1 単回投与毒性試験(試験番号 082/83, 048/54 ) ホスフルコナゾールをマウス及びラットに 1500,2000 mg/kg(フルコナゾールとして 1189, 1586 mg/kg)の用量で静脈内単回投与した結果,死亡例は認められなかった。2000 mg/kg では, 眼瞼の一部閉鎖,自発運動の減少,円背姿勢が投与後 1∼5 時間みられたが,投与後 24 時間目に はみられなかった。1500 mg/kg では薬物投与に関連した変化は認められなかった。 非げっ歯類の単回投与毒性試験成績は,イヌ静脈内7日間用量設定試験成績で代替した。ホス フルコナゾールをビーグル犬に 3,7.5,36,90 mg/kg(フルコナゾールとして 2.4,5.9,29,71 mg/kg)の用量で 7 日間連日投与を行った結果,いずれの用量でも薬物投与に関連した臨床徴候, 死亡例などの急性毒性は認められなかった。 ホスフルコナゾールの静脈内投与による概略の致死量はマウス,ラットでは雌雄とも 2000 mg/kgを超える量,イヌでは雌雄とも 90 mg/kg を超える量であった。
2.4.4.2 反復投与毒性試験 表 5 反復投与毒性試験一覧表 試験番号 試験期間 投与経路 溶媒 投与用量(mg/kg)a) ラット 076 1 ヵ月 静脈内 生理食塩液 40 80 160 077 6 ヵ月 静脈内 クエン酸−水酸化ナトリウム 水溶液(pH 8.5-9.0) 20 40 100 イヌ 075 1 ヵ月 静脈内 生理食塩液 7.5 36 90 076 6 ヵ月 静脈内 クエン酸−水酸化ナトリウム 水溶液(pH 8.5-9.0) 10 30 60 a) ホスフルコナゾールとしての投与用量。 (1) ラット静脈内反復投与毒性試験 (試験番号 076, 077 ) ラットにおけるホスフルコナゾールの1ヵ月毒性試験では 40,80,160 mg/kg(フルコナゾー ルとして 32,63,127 mg/kg),6ヵ月毒性試験では 20,40,100 mg/kg(フルコナゾールとして 16,32,79 mg/kg)の用量で連日静脈内投与した。 いずれの試験でも薬物投与に起因した死亡例はみられなかった。 毒性徴候として,体重増加抑制,摂餌量の減少が6ヵ月毒性試験の 40 mg/kg 以上の群で認め られたが,1ヵ月毒性試験では高用量の 160 mg/kg まで認められなかった注1)。 肝細胞の脂肪沈着は1ヵ月及び6ヵ月毒性試験ともに各投与群雄で認められた。この変化の頻 度・程度は投与量に応じて増加し,6ヵ月毒性試験の 40 mg/kg 以上の群ではトリグリセリドの 低下も認められた。しかし,血漿中のトランスアミナーゼの上昇,肝細胞壊死などの所見は認め られなかった。肝臓重量の増加,小葉中心性肝細胞肥大が1ヵ月毒性試験では 80 mg/kg 以上の 群で,6ヵ月毒性試験では 100 mg/kg 群で認められ,その変化は雌より雄で目立った。肝臓の電 子顕微鏡学的検査では小葉中心性肝細胞の滑面小胞体の増生が 160 mg/kg 群雄 5 例中 3 例,雌 5 例中 1 例に認められた注2)。また,軽微な甲状腺ろ胞肥大は1ヵ月毒性試験では 160 mg/kg 群雄 (10 例中 6 例)で,6ヵ月毒性試験では 40 mg/kg 以上の群雄(100 mg/kg 群 15 例中 7 例,40 mg/kg 群 15 例中 2 例)で認められた。雌では甲状腺に変化はみられなかった。これらは,薬物 への肝臓の適応性変化及びその二次的変化であり,毒性学的意義はないと判断された注3)。 尿検査(投与後 8 時間目より 24 時間目までの 16 時間蓄尿)では尿量の減少が1ヵ月,6ヵ月 毒性試験ともで認められ,1ヵ月毒性試験では用量に応じた変化であった。尿量の減少に伴い, 尿比重の増加,尿 pH の低下もみられた。いずれの試験でも,摂水量には対照群と投与群で差は みられず,腎障害を示唆する臨床病理学的所見,血液学的所見,病理組織学的所見も認められな かったことから,これらの変化に毒性学的意義はないと判断された注4)。 いずれの試験においても,投与局所に刺激性変化は認められなかった。 以上より,6ヵ月毒性試験の 100,40 mg/kg で摂餌量の減少を伴う体重増加抑制及びトリグリ 注1)2.4.4.7 (1) 体重における変化の項参照。 注2)電子顕微鏡学的検査は1ヵ月毒性試験の対照群及び 160 mg/kg 群雌雄各 5 例について実施した。 注3)2.4.4.7 (2) 肝臓における変化の項及び (3) 甲状腺ろ胞肥大の項参照。 注4)2.4.4.7 (4) 尿量の変化の項参照。
セリドの低下を伴う肝細胞の脂肪沈着が認められたことから,無毒性量は1ヵ月毒性試験では 160 mg/kg/日,6ヵ月毒性試験では 20 mg/kg/日とみなされた。 (2) イヌ静脈内反復投与毒性試験(試験番号 075, 076 ) イヌにおけるホスフルコナゾールの1ヵ月毒性試験では 7.5,36,90 mg/kg(フルコナゾール として 5.9,29,71 mg/kg),6ヵ月毒性試験では 10,30,60 mg/kg(フルコナゾールとして 8, 24,48 mg/kg)の用量で連日静脈内投与した。 いずれの試験でも死亡例はみられなかった。 毒性徴候として,摂餌量の減少を伴う体重減少が1ヵ月毒性試験の 90 mg/kg 群雄(投与開始 時と比較して 6%)でみられたが注1),6ヵ月毒性試験では高用量の 60 mg/kg まで認められなかっ た。 投与量に応じた心拍数の減少が1ヵ月毒性試験では 36 mg/kg 以上の群で,6ヵ月毒性試験で は 30 mg/kg 以上の群で認められ,PQ(PR)間隔,QT 間隔の増加注2)も認められた。6ヵ月毒性 試験では P 波の振幅減少も認められた。しかしながら,いずれの例においても不整脈は認められ なかった。これらの試験で認められた PQ(PR)間隔及び QT 間隔の増加及び P 波の振幅減少は 心拍数の減少による変化とみなされた注3)。 肝臓重量の増加が1ヵ月毒性試験では各投与群で,6ヵ月毒性試験では 30 mg/kg 以上の群で 認められた。小葉中心性肝細胞肥大は1ヵ月毒性試験では 36 mg/kg 以上の群で,6ヵ月毒性試 験では 60 mg/kg 群で認められた。肝臓の電子顕微鏡学的検査では小葉中心性肝細胞の滑面小胞 体の増生が 90 mg/kg 群で認められた注4)。しかしながら,肝細胞の変性・壊死などの所見はみら れないことから,これらの肝臓の変化は肝酵素誘導によるもので,薬物への適応性変化と考えら れた注5)。この適応性変化に伴って,血液生化学的検査項目(脂質,アルブミン,アラニンアミノ トランスフェラーゼ,アルカリホスファターゼ)に変化が認められた注 5)。 いずれの試験においても,投与局所に刺激性変化は認められなかった。 以上より,1ヵ月毒性試験の 90 mg/kg で摂餌量の減少を伴う体重減少,1ヵ月毒性試験の 36 mg/kg以上の群及び6ヵ月毒性試験の 30 mg/kg 以上の群で心拍数の減少が認められたことから, 無毒性量は1ヵ月毒性試験では 7.5 mg/kg/日,6ヵ月毒性試験では 10 mg/kg/日とみなされた。 注1)2.4.4.7 (1) 体重における変化の項参照。 注2)投与前値からの差について対照群と比較を行い,有意差のみられた場合を,「間隔の増加」とし た。 注3)2.4.4.7 (5) QT 間隔と心拍数の関連の項参照。 注4)電子顕微鏡学的検査は1ヵ月毒性試験の対照群及び 90 mg/kg 群について実施した。 注5)2.4.4.7 (2) 肝臓における変化の項参照。
2.4.4.3 遺伝毒性試験(試験番号 -1397-02∼05 )
ホスフルコナゾールの遺伝毒性を,細菌を用いた復帰突然変異試験,哺乳類培養細胞を用いた 遺伝子突然変異試験,ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験及びマウス骨髄細胞を用いた小核試 験を行って評価した注1)。
細 菌 を 用 い た 復 帰 突 然 変 異 試 験 で は , ホ ス フ ル コ ナ ゾ ー ル を Salmonella typhimurium ,
Escherichia coliを用いて最大 5 mg/plate の用量まで調べたが,代謝活性化の有無にかかわらず復
帰突然変異コロニー数の増加は認められなかった。チャイニーズハムスター卵巣由来の培養細胞 (CHO-K1-BH4)を用いた遺伝子突然変異試験では,ホスフルコナゾールの用量に応じた突然変 異頻度の有意な増加は,直接法,代謝活性化法ともに認められなかった。 ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験では,最高用量においても染色体異常の増加は認められ なかった。また,ホスフルコナゾールを最大 2000 mg/kg の用量までマウス雌雄に投与したが, 骨髄細胞の小核形成を指標とした染色体異常を誘発しないと判断された。 以上より,ホスフルコナゾールの細菌及び哺乳類培養細胞を用いた in vitro 試験において突然 変異誘発性は認められず,in vitro 染色体異常試験,in vivo 小核試験においても染色体異常誘発性 はみられなかった。なお,活性本体であるフルコナゾールの細菌を用いた復帰突然変異試験,培 養細胞を用いた染色体異常試験においても,遺伝毒性は認められていない参考文献20)。 2.4.4.4 がん原性試験 平成 9 年 4 月 14 日薬審第 315 号「医薬品におけるがん原性試験の必要性に関するガイダンス について」では,がん原性試験は臨床使用期間が少なくとも連続 6 ヵ月間に及ぶものについて実 施するよう求められており,曝露期間が短いような医薬品は発がんの懸念がなければ必要とされ ない。フルコナゾール静注液の市販後の臨床使用期間はほとんどの患者で 4 週間以内であり,ホ スフルコナゾールの臨床使用期間も同程度と考えられる。また,ホスフルコナゾールの遺伝毒性 試験成績注2)からは,がん原性を示唆する変化は認められず,活性本体であるフルコナゾールのが ん原性試験(混餌投与)参考文献21),22)では良性・悪性腫瘍数及び総腫瘍数のいずれにもフルコナ ゾールによる影響はなかったことから,ホスフルコナゾールにがん原性はないと推察された。 したがって,ホスフルコナゾールのがん原性試験は実施しなかった。 注1)遺伝毒性試験での投与量について
ICHガイドラインでは,毒性が低く溶解性の高い薬物の場合,in vitro での哺乳類の培養細胞を
用いた試験での高用量は 5 mg/mL が望ましいとされている。ホスフルコナゾールは溶解性が高 く,細胞毒性も低いため,in vitro で行った哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験及びヒ トリンパ球を用いた染色体異常試験ではガイドラインに準拠した 5 mg/mL(5000 µg/mL)を設 定した。しかしながら,被験物質原液を 100 倍希釈した後,pH 8.6 に調整を行った結果,最高 用量が哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験の代謝活性化法では 4320 µg/mL,直接法及 びヒトリンパ球を用いた染色体異常試験では 4880 µg/mL となった。この最高用量の 4320 µg/mL, 4880 µg/mLは所定用量の±15%範囲内の値であり,この差は意義の低いものと考えられる。こ のような軽度な変動を除けば,ホスフルコナゾールの in vitro 及び in vivo 遺伝毒性試験はガイド ラインに準拠して実施され,被験物質の遺伝毒性の評価は適切に行われた。なお,現在の遺伝 毒性試験は完全にガイドラインに準拠して実施している。 注2)2.4.4.3 遺伝毒性試験の項参照。
2.4.4.5 生殖発生毒性試験 表 6 生殖発生毒性試験一覧表 試験番号 試験種 動物種 投与期 (days) 投与量 (mg/kg)a) 069 受胎能及 び着床 までの 初期 胚発 生に 関 する 試 験 ラット 雄:交配前 29 日 ∼交配期間終了後 雌:交配前 14 日∼ 妊娠 6 日 6.5 32 95 079/80 胚・胎児 発生へ の影響 に関する試験 ラット 妊娠 6∼17 日 32 70 160 -1397-06 胚・胎児 発生へ の影響 に関する試験 ウサギ 妊娠 6∼18 日 6.5 25 50 091/92 出生前及 び出生 後の発 生並び に 母動物 の機能 に関する試験 ラット 妊娠 6 日∼分娩 20 日 6.5 25 50 a) ホスフルコナゾールとしての投与量。投与は静脈内経路で実施した。 (1) ラット受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験(試験番号 069 ) ラット雌雄にホスフルコナゾールを 6.5,32,95 mg/kg(フルコナゾールとして 5.2,25,75 mg/kg)の用量で,雄では交配前 29 日より交配期間終了後まで,雌では交配前 14 日より妊娠 6 日まで連日静脈内投与した。 薬物投与に起因した死亡例はみられなかった。 毒性徴候として体重増加抑制が 95 mg/kg 群雄で認められた。 発情持続期間の延長を伴う性周期の延長が 32 mg/kg 以上の群雌で認められた。また,着床前 胚死亡率の軽度上昇が 95 mg/kg 群で認められ,初期胚への毒性が示唆された。これらの変化は フルコナゾールでも認められており,薬理作用に起因した変化と考えられる注1)。 以上より,ラットにおいて,雌雄ともに受胎能には影響はみられなかったが,95 mg/kg 群で毒 性所見として親動物雄の体重増加抑制,着床前胚死亡率の上昇がみられたことから,雌雄親動物 の一般毒性に対する無毒性量は 32 mg/kg/日,雌雄親動物の生殖能に対する無毒性量は 95 mg/kg/ 日,胎児に対する無毒性量は 32 mg/kg/日とみなされた。 (2) 胚・胎児発生への影響に関する試験 1) ラット胚・胎児発生への影響に関する試験(試験番号 079/80 ) ラットでは,ホスフルコナゾールを 32,70,160 mg/kg(フルコナゾールとして 25,56,127 mg/kg)の用量で妊娠 6∼17 日まで連日静脈内投与した。 母体では死亡例はみられなかった。母体毒性を示唆する体重増加抑制,着床後胚死亡率の上昇 が 160 mg/kg 群で認められた。また,胎盤重量の増加(33∼70%)が各投与群で投与量に応じて 認められた。同様な所見は類薬でも認められている注 1)。 胎児では,尿管拡張,腎盂拡張,尿管水腫,胸骨分節の形態異常が各投与群で増加し,160 mg/kg 群ではいずれも統計学的に有意であった。160 mg/kg 群では更に口蓋裂,ドーム状頭部, 注1)2.4.4.7 (6) 生殖発生毒性の項参照。
心室中隔欠損がみられたことから催奇形性が示唆された。70,32 mg/kg 群では,口蓋裂,ドーム 状頭部,心室中隔欠損は認められず,尿管水腫などの変異の発生頻度増加がみられたことから, 胎児毒性が示唆された。同様な変化はフルコナゾールを含む他のアゾール系薬物でも認められて いる注 1)。 以上より,ラットでは 160 mg/kg 群で母体の体重増加抑制,催奇形性,32 mg/kg 以上の群で胎 児に変異増加などの胎児毒性が認められたことから,母体の一般毒性に対する無毒性量は 70 mg/kg/日,母体の生殖能に対する無毒性量は 160 mg/kg/日,胎児に対する無毒性量は 32 mg/kg/日 未満とみなされた。 2) ウサギ胚・胎児発生への影響に関する試験(試験番号 -1397-06 ) ウサギではホスフルコナゾールを 6.5,25,50 mg/kg(フルコナゾールとして 5.2,20,40 mg/kg)の用量で妊娠 6∼18 日まで連日静脈内投与した。 いずれの投与群でも耐薬性は良好であった。投与を実施した用量では母体毒性はみられず, 胚・胎児毒性,催奇形性も認められなかった。 以上より,ウサギにおける無毒性量は母体の一般毒性及び生殖能並びに胎児ともに 50 mg/kg/ 日とみなされた。 (3) ラット出生前及び出生後の発生並びに母動物の機能に関する試験(試験番号 091/92 ) 妊娠ラットにホスフルコナゾールを 6.5,25,50 mg/kg(フルコナゾールとして 5.2,20,40 mg/kg)の用量で妊娠 6 日より分娩 20 日まで連日静脈内投与した。 F0母体では,分娩障害に起因した変化として分娩時間の延長,難産が 25 mg/kg 以上の群で, 通常より多い外陰部の出血が 6.5 mg/kg 以上の群で認められた。分娩障害はフルコナゾールでも 認められている。この分娩障害に伴い,母体の死亡が 25 mg/kg 以上の群で,投与量に応じた出 生時生存率の低下が各投与群で,生後 4 日生存率の軽度な低下が 50 mg/kg 群でみられた注1)。 F1死産児では,尿管水腫が 50 mg/kg 群で,腎盂拡張,尿管拡張のいずれかあるいは両方が各 投与群で認められたが,離乳時屠殺した F1出生児では腎尿路系に意義ある変化はみられなかっ た。 F1出生児では体重増加抑制が投与量に応じてみられたが,その原因は明らかではない。また, F1出生児では交尾率の低下が 25 mg/kg 以上の群で投与量に応じて認められた。これは F0母体の 分娩障害が一因と考えられる注 1)。 50 mg/kg群 F1雌では分娩した動物がいなかったため,F2出生児の観察は 25,6.5 mg/kg 群で実 施した。その結果,いずれの群でも F2出生児への影響はみられなかった。 以上より,6.5 mg/kg 以上の群で F0母体に分娩障害,F1出生児で体重増加抑制がみられたこと から,F0母体の一般毒性に対する無毒性量は 50 mg/kg/日,F0母体の生殖能及び F1出生児に対す る無毒性量は 6.5 mg/kg/日未満,F2出生児に対する無毒性量は 25 mg/kg/日とみなされた。 注1)2.4.4.7 (6) 生殖発生毒性の項参照。
2.4.4.6 その他の試験 (1) 抗原性試験(試験番号 -43-81 ) ホスフルコナゾールの抗原性を確認するため,2 種類のアナフィラキシー試験(モルモットを 用いた能動的全身性アナフィラキシー試験及び同種受動的皮膚アナフィラキシー試験)を実施し た。 いずれの試験結果も陰性で,抗原性はないと判断された。 2.4.4.7 所見の考察及び安全性の評価 (1) 体重における変化 ラット:ホスフルコナゾールでは,毒性学的に意義のある体重増加抑制が,1ヵ月毒性試験で は高用量の 160 mg/kg まで認められなかったが,6ヵ月毒性試験では 100,40 mg/kg 群雄で摂餌 量の減少を伴って認められた。 フルコナゾールでは,体重増加抑制は静脈内,腹腔内あるいは経口投与による4週間毒性試験 参考文献23),24),25)の 100 mg/kg 群,腹腔内6ヵ月毒性試験参考文献26)及び経口投与による妊娠前及び妊娠 初期投与試験参考文献27)の 75 mg/kg 群でも認められている。なお,フルコナゾールを 1,3 ないし 6 ヵ月間投与した後にみられた体重増加抑制は 1∼2 ヵ月間の休薬により回復性が認められてい る参考文献 25),26),27)。 表 7 ラットでのホスフルコナゾール及びフルコナゾール投与による体重変化 被験物質 試験種 体重増加抑制率a) 無毒性量 フルコナゾール 静脈内4週間参考文献 23) 100 mg/kg:10.9% 30 mg/kg フルコナゾール 腹腔内4週間参考文献 24) 100 mg/kg:6.7% 30 mg/kg フルコナゾール 経口4週間参考文献 25) 400 mg/kg:14.5% 100 mg/kg:7.9% 4.5%(休薬 1 ヵ月目) 50 mg/kg フルコナゾール 腹腔内6ヵ月参考文献 26) 75 mg/kg: 9.3% 3.5%(休薬 2 ヵ月目) 25 mg/kg フルコナゾール 経口投与による妊娠前及び 妊娠初期投与試験参考文献 27) (3ヵ月間投与) 75 mg/kg: 7.9% 5.3%(休薬 1 ヵ月目) 25 mg/kg ホスフルコナゾール 静脈内6ヵ月 (試験番号 077 ) 100 mg/kg:17% 40 mg/kg: 9% 20 mg/kg a)対照群との差(%)。 イヌ:ホスフルコナゾールでは,毒性学的に意義のある摂餌量の減少を伴う体重減少が1ヵ月 毒性試験の 90 mg/kg 群雄でみられたが,6ヵ月毒性試験では高用量の 60 mg/kg で認められな かった。 フルコナゾールでは,体重減少は1ヵ月及び6ヵ月毒性試験における高用量(経口投与で 30 mg/kg,静脈内投与で 6 mg/kg)で認められなかったが参考文献 10),28),29),30),より高い用量の投与が可 能であればラットと同様に体重に影響を及ぼすことが考えられる。 したがって,ホスフルコナゾールの高用量で認められた体重変化はフルコナゾールの結果から 予期される変化であった。
(2) 肝臓における変化 ラットの投与群でみられた肝細胞の脂肪沈着は雄で目立ち,頻度・程度は投与量に応じて増加 した。これらの所見はアゾール系抗真菌剤(フルコナゾール参考文献31),ケトコナゾール参考文献32), クロトリマゾール参考文献33),イソコナゾール参考文献34),ミコナゾール参考文献35),スルコナゾール参考文 献36))でも同様に認められている。フルコナゾールの毒性試験では,肝細胞の脂肪沈着は静脈内 4週間毒性試験参考文献 23)の 100 mg/kg 群,腹腔内6ヵ月毒性試験参考文献 26)の 75,25 mg/kg 群で認め られた。脂肪沈着の回復性は腹腔内6ヵ月毒性試験で検討されており,2 ヵ月間の休薬により数 例を除き完全な回復が確認されている。一般に脂肪沈着は退行性の変性ではなく,肝実質細胞内 での通常量を超える脂肪の蓄積と解釈されており参考文献37),可逆性の変化で,細胞死を引き起こ す変化ではないと考えられている参考文献38)。ただ,ホスフルコナゾールのラット6ヵ月毒性試験 における 40 mg/kg 以上の群では摂餌量の減少を伴う体重増加抑制,トリグリセリドの低下が認 められていることから,これらの群でみられた脂肪沈着は毒性に関連した変化とみなされた。 ホスフルコナゾールの投与に起因した肝臓重量の増加,小葉中心性肝細胞肥大がラットでは 80 mg/kg 以上の群で,イヌでは 36 mg/kg 以上の群で認められた。いずれも肝細胞の変性・壊死 などの所見はみられず,滑面小胞体の増生がみられていることから,肝酵素誘導に伴う肝臓の適 応性変化と考えられる参考文献39),40),41)。また,イヌでは血液生化学的検査項目(脂質,アルブミン, アラニンアミノトランスフェラーゼ,アルカリホスファターゼ)に軽度∼中等度の変化がみられ たが,肝酵素誘導に伴う二次的な影響とみなされた参考文献42),43),44)。 ホスフルコナゾールの加水分解はアルカリホスファターゼが大きく関与しており注1),イヌの長 期反復投与毒性試験では,肝酵素誘導に伴うアルカリホスファターゼの上昇により,フルコナ ゾールへの加水分解が亢進したと考えられる。しかしながら,ヒトではアルカリホスファターゼ の上昇は反復投与(治験 No.252-203,252-205,252-209,252-212 )により認められないこと,フ ルコナゾールはほとんど代謝されないことから,ヒトにおける有効性への影響はないと考えられ る。 (3) 甲状腺ろ胞肥大 軽微な甲状腺ろ胞肥大はラット1ヵ月毒性試験の 160 mg/kg 群雄及び6ヵ月毒性試験の 40 mg/kg以上の群雄で増加した。雌では甲状腺に変化はみられなかった。 ラットにおける甲状腺ろ胞肥大は多くの薬物で認められ,肝臓における甲状腺ホルモン代謝の 増加によると報告されている参考文献45),46),47),48)。一般に,肝酵素 UDP-glucuronyl transferase(UDP-GT )は甲状腺ホルモン チロキシン(T4)のグルクロン酸抱合に関与し,抱合された T4 は胆汁 中に排泄されることが知られており,UDP-GT が誘導されると,T4 のクリアランスが増加し, 循環血液中の T4 濃度が減少する参考文献 48),49),50)。その結果,甲状腺刺激ホルモン(TSH)が代償的 に増加し,甲状腺ろ胞肥大が惹起される参考文献 47),51),52)。雄ラットでは TSH 濃度が一般に高いため, 雌に比べて影響が大きいと考えられる参考文献53)。 活性本体であるフルコナゾールは肝酵素チトクロム P450 を誘導することが知られている参考文献 54),55)。また,フルコナゾールはラット肝臓の UDP-GT を誘導し,血漿中の T4 を減少させること 注1)2.4.3.4 (1) 2) 酵素による加水分解の項参照。
も報告されている参考文献56)。したがって,ホスフルコナゾールでの甲状腺の変化は,フルコナ ゾールに起因した肝細胞の適応性変化による二次的なものと考えられる。 なお,ラットではヒトに比べて T4 結合グロブリンが少なく,ほとんどが遊離 T4 であり,T4 の半減期が短いことから,ラットの甲状腺は甲状腺ホルモン代謝の変化に敏感と言われている参 考文献57)。また,肝酵素誘導に伴う甲状腺ろ胞肥大はラット特有の変化で,ヒトへの影響はないと 報告されている参考文献58)。事実,ホスフルコナゾールの臨床試験でも甲状腺ホルモン濃度に変化 はみられていない(治験 No.252-209 )注1)。 (4) 尿量の変化 ホスフルコナゾールのラット1ヵ月,6ヵ月毒性試験ともに各投与群で対照群に比べ 10∼ 55%の尿量減少がみられ,この変化に伴って尿 pH の低下,尿比重の上昇もみられた。尿量の減 少は投与量に応じた変化であったが,この変化は投与期間が長くなっても増強することはなかっ た(表 8)。一方,一般薬理試験では,生理食塩液を負荷したラットにおいて尿量の増加がホス フルコナゾールの 100,30 mg/kg でみられ,これに伴い尿 pH の上昇もみられた注2)。一般薬理試 験での採尿時間はホスフルコナゾール投与後 5 時間であり,ラットの反復投与毒性試験では投与 後約 8 時間以降終夜(16 時間)であることから,この採尿時間の違いも試験成績の相違の一因 と考えられる。また,いずれの毒性試験でも,摂水量には対照群と投与群で差はみられず,腎障 害を示唆する臨床病理学的所見,血液学的所見,病理組織学的所見もみられていないことから, 毒性学的意義はないと判断された。 なお,尿量の変化はイヌの毒性試験では認められず,ヒトの臨床試験でもみられていない(治 験 No.252-201,UK-292,663-JP- -501 )。 表 8 ホスフルコナゾールのラット反復投与毒性試験における尿量 雄 雌 試験種 投与日数 投与量 (mg/kg) 平均尿量 (mL) 対照群との差 (%) 平均尿量 (mL) 対照群との差 (%) 1ヵ月 30日目 0 29.4 − 13.4 − (雌雄各10例) 40 21.7 -26 10.8 -20 80 16.7# -43 9.5 -29 160 13.3## -55 6.9* -50 6ヵ月 183日目 0 18.2 − 7.3 − (雌雄各15例) 20 9.4## -48 5.9 -19 40 8.9## -51 6.6 -10 100 9.0## -50 5.1 -30 Modified t検定:# p<0.05,## p<0.01 Dunnettの検定:* p<0.05 試験実施施設における背景値: 11∼18 週齡:雄 10.4 – 49.7 mL,雌 6.2 – 31.9 mL,31∼44 週齡:雄 9.9 – 36.6 mL,雌 4.3 – 26.7 mL。 注1)2.5.5 (6) 1) 甲状腺ろ胞肥大の項参照。 注2)2.4.2.2 (1) 3) その他の項参照。