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営 業秘密 の侵 害 に対 す る法 的措置 一 不 正競 争 の 防止 に 向 けて

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〈特集 共生社 会 の法 と政 治〉

営 業秘密 の侵 害 に対 す る法 的措置

一 不 正競 争 の 防止 に 向 けて

千 野 直 邦

目 次 1は じめ に II民 事 的措置 皿 刑事 的措置 IVむ すび に

1は じめ に

不 正競 争 防止法 は、 市場 にお け る公 正 な競業秩 序 の維持 とい う公益 と営 業上 の信 用 とい う私益 の両者 を保 護法 益 と してい る。 そ の両者 の どち らに比 重 が あ るか は、各不正 競 争行為 の形 態 に よって異 な る。不 正競争 防止法 所定 の不 正競 争類 型 に該 当す る保 護 法益 の侵害 につ いて は、 当事者 間 にお け る民事 救 済 が 図 られ るが、保護 法益 の侵 害 が顕著 な行 為 には刑 事罰 も科 され る。 営業 秘 密 の侵 害 に対 して も、法 的措 置 として、平成2年 改正 に よ り不正 競争 の類型 に追 加 さ れ て差 止請 求が認 め られ た こ とに よ り民事 救済 が強化 されて い る。 また、 平成

15年 改正 に よ り営業秘 密侵 害罪 を設 け、刑事 罰 の規定 が初 め て導入 され た こ と に よ り刑事制裁 も新 た な展 開 をみ るこ とにな った。営業秘 密 の保 護 につ い て は、

近年 、不正 競 争 防止 法 を中心 として、 関連 法制 を含 めた重 要 な改 正が 、従 前経 験 した ことが ない程 の勢 いで急速 に展 開 され て い る こ とか ら、 その状 況 を的確 に把握 して お く必要 が あ る。営業 秘密 の保 護 の強 化 は、各 分野 にお いて み られ る秘 密情報 の大 量流 出 ・漏洩 問題 へ の法 的 な対応 策 を具体化 した もので あ る。

営業秘 密 の保 護 は、今 日的問題 として急 に顕 出 した もので な く、古 来、 洋 の

東西 を問 わず 、 その法制 度上 の対応 策 が課題 とされ て きた。営 業秘 密保 護 の課

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題 は、 営業 秘 密が 国家成 立 以前 か ら存 して いた もので あ り、社会 に とって有用 な もの として長 期 にわた る克 苦努 力 の上で 開発 され た技術 や成 果物 に係 る秘伝 情 報 の保護 策 を確 立 して おか な けれ ぼ、 それ に依 存 して生 計 を図 って きた人 々

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や 同業 者 に とっ て 、 生 存 が 困 難 に な る こ とに あ る。 この よ うな 営 業 秘 密 の保 護 に関 す る歴 史 を踏 まえ て 、 近 年 の 侵 害 行 為 に対 す る措 置 の 改 正 よ り充 実 が 図 ら れ て き た 状 況 を把 握 して お く必 要 が あ る。 本 稿 は、 か か る状 況 を 背 景 に して 、 営 業 秘 密 の侵 害 に対 す る法 的 措 置 と して の 民 事 救 済 と刑 事 制 裁 の両 制 度 に つ い

て論 及 す る も の で あ る。

豆 民事 的措 置

1概 要 (1)序

不 正 競 争 防 止 法 所 定 の 営 業 秘 密 に係 る不 正 行 為 を禁 止 す る た め に、 他 の 不 正 競 争 行 為 に 対 す るの と同様 に、 その 差 止(不 競3条)やi損 害 賠 償(同4条)、 信 用 回復 措 置(同14条 〉 を請 求 し得 る。 ま た、 訴 訟 段 階 で の権 利 者 の保 護 を図 るた め に、 ① 損 害 額 の推 定 等(不 競5条)、 ② 具 体 的 態 様 の 明 示 義務(同6条)、 ③ 書 類 の 提 出等(同7条)、 ④ 損 害 計 算 の た め の 鑑 定(同8条)、 ⑤ 相 当 な 損 害 額 の 認 定 (同9条)、 ⑥ 秘 密保 持 命 令(同10条)、 ⑦ 秘 密 保 持 命 令 の取 消 し(同11条)、 ⑧ 訴 訟 記 録 の 閲 覧 等 の請 求 の通 知 等(同12条)、 ⑨ 当事 者 尋 問 等 の公 開停 止(同13条)

な どの諸 規 定 が 導 入 され て い る。 以下 で は、 営 業 秘 密 侵 害 行 為 に対 す る差 止 請 求 、 損 害 賠 償 請 求 、 信 用 回復 措 置 請 求 等 につ い て概 説 した 後 、 項 を改 め て 訴 訟 に お け る営 業 秘 密 保 護 手 続 に関 して論 及 す る。

(2)差 止 請 求

営 業 秘 密 不 正 利 用 行 為 に 対 して は 、 営 業 上 の 利 益 を害 され る者 が 、 そ の侵 害

停 止 ・予 防 の差 止 請 求(不 競3条1項)と 、 これ に付 帯 的 な請 求 と して 侵 害 行 為

組 成 物 や 侵 害 行 為 供 用 設 備 の 廃 棄 ・除 去 そ の他 の 侵 害 停 止 ・予 防 に必 要 な行 為

の請 求(同2項)を す る こ とが で き る。1項 は抽 象 的 な請 求 で あ り実 効 を期 しが

た い こ と も多 い と思 わ れ る こ とか ら、1項 の請 求 権 の 行 使 の 具 体 的 な 態 様 を定

め る2項 の 存 在 意 義 は大 き い。 平成Il年 の不 正 競 争 防 止 法 改 正 に よ り、 侵 害 行

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営業秘密の侵害 に対す る法的措置 93

為 組 成 物 に プ ロ グ ラム が 含 まれ る こ とが 規 定 され て い る(同2条10項)。 この差 止 請 求権 の行 使 に 当 って は、 「 不 正 競 争 に よ る営 業 上 の利 益 の侵 害 又 は そ の お そ れ 」 とい う客 観 的要 件 の み を定 め て お り、 損 害 賠 償 請 求(同4条)と 異 な っ て侵 害 者 の故 意 ・過 失 は要 件 と して い な い こ とか ら、 不 正 競 争 防 止 法 に お け る民 事 上 の 措 置 を定 め る重 要 な 規 定 とい え る。

営 業 秘 密 を 不 正 に取 得 して 営 業 が 行 わ れ て い る場 合 、 当該 営 業 自体 を 差 止 め る こ とが 可 能 か とい う問題 が あ る。 営 業 秘 密 の不 正 使 用 行 為 と通 常 の 営 業 行 為 を 判 然 と区別 す る こ とが 困 難 な場 合 が あ る。 この 場 合 に も、 営 業 自体 を 差 止 め 得 る とす る と、 営 業 秘 密 の保 有 者 の保 護 と して は過 大 とな りか ね な い 。 この 場 合 に は 、 営 業 秘 密 の 開 示 行 為 の差 止 め と、 関 係 資 料 等 の 廃 棄 の 限 度 で 差 止 請 求 を認 め 、 そ の ほ か は損 害 賠 償 額 の 問 題 と して 処 理 す る に と どめ ざ る を得 な い場

2)

合 も少 な か らず あ る もの と思 わ れ る。

(3)損 害 賠 償

故 意 又 は過 失 に よ る営 業 秘 密 不 正 行 為 に よ り営 業 上 の 利 益 を侵 害 され た 者 は 、 これ に よ って 生 じた損 害 の賠 償 を請 求 す る こ とが で き る(不 競4条 本 文)。 不 正 競 争 防止 法4条 本 文 が定 め る要 件 の 内 容 は、 民 法709条 とほ ぼ 同 一 で あ り、 不 正 競 争 の分 野 にお け る民法709条 の特 則 とい え る。 した が っ て 、本 条 に も不 法 行 為 に 関 す る民 法710条 以下 の規 定 が 適 用 され る。 平 成17年 改 正 に よ る民 法 の 現 代 語 化 に あ た り、709条 は 権 利 又 は法 律 上 保 護 され る利益 」 と改 正 され た こ とか ら、

「 権 利 」 に代 え て 「 営 業 上 の利 益 の侵 害 」 と明 記 した 不 正 競 争 防 止 法 の存 在 意 義 が 問 われ る と ころ とな る。 この点 、 営業 秘 密 不 正 行 為 の 中 に は民 法709条 の 対 象 とな り得 るか につ いて 判 断 が 難 しい行 為(同2条1項6号 ・9号)も あ る と こ ろ、

この よ うな 不 正 行 為 に つ い て も不 正 競 争 防 止 法4条 の 対 象 とな る こ とか ら、 な

3)

お民 法 の特 則 と して の意 義 を見 い出 し得 る。

不正 競争 防止 法 で は、他 の知 的財産 法 制 と同様 に、 損害 の立証 上 の困i難を救 済 す るた め損害 額 の推定等 の規定 その他 の訴訟 上 の支援措 置が設 け られて い る。

したが って、 これ らの規 定 が活 用 され た場 合 には、4条 の真価 が発 揮 され るこ

とにな る。 なお、不正競 争 防止法4条 但 書 は、15条 の規 定 によ り当該 営業 秘 密

につ いて の差 止 請 求権 が 消滅 した とき には、4条 本 文 が定 め る損害賠 償 請 求権

も消滅 す る こ とを規定 して い る。

(4)

(4)信 用 回復 措 置請 求

故意 又 は過 失 によ る営業 秘密不正行為 に よ り営業上 の信用 を侵 害 された者 は、

その侵 害者 に対 して、 第4条 に基 づ く金銭 に よ る損 害賠償 請 求 に代 わ りに、 又 は これ と合 わせ て、営業上 の信 用 回復 措置 を請 求す るこ とが で き る(不 競14条)。

営業秘 密 を侵 害 され た者 が被 っ た営業上 の信用 に対 す る非財産 的損害 と して の 無形 の損 害 につ いて は、填補 賠 償 だ けで は必 ず しも十分 な もの とはい えず 、 そ の立証 も容 易 で ない場 合 もあ るため、 その救済 として 、一種 の現 状 回復 措 置で あ る信用 回復措 置 は有効 で ある。民法723条 は、他人 の名誉 を殿損 した ものに対 す る名 誉 回復処 分 を定 めて お り、 不正競 争 防止法 は経済 的側 面 か らみ た不 正競 争 の分 野 に お け る民法 の特 則 を定 めた規 定 として位 置 付 け られ る。

(5)不 当利得 返還 請 求

営業秘 密 を侵 害 され た事業 者 は、不正競 争 防止 法4条 の規定 に基づ き侵 害者 に対 して損害 賠償 請 求 を行 う こ とが で き るが 、不 当利 得返 還請 求(民 法703条) につ いて は規定 が 設 け られ て いな いので、 そ の適用 の是 非が議論 され て い る。

営業秘 密 に係 る保護 は行為 態様 に よ り認否行 為 が分 類 さる法制 で あ り、 その よ うな行 為 態様 に留 意す る こ とな く、営業 秘 密 の利用 行 為 に対 して一律 に不 当利 得 を認 め るこ とは法 の趣 旨に反 す るもの として、不 当利得 返還 請 求権 を否定 す

4)

る学 説 が あ る。 不 当利 得返 還 請 求権 は、3年 の 消 滅 時 効(民 法724条)に か か り、

あ るい は 故 意 ・過 失 を 立 証 で きな い た め、 損 害 賠 償 請 求権 が 行 使 で き な い場 合 に、 これ を実 施 す る実 益 が あ る。 不 当 利 得 請 求 権 の場 合 は、 損 害 賠 償 請 求 権 と 異 な り、 故 意 ・過 失 の 存 在 は要 件 とされ て い な い が 、 こ の点 につ い て 、 損 害 賠 償 との 均 等 との 関 係 か ら、 不 当利 得 を認 め るの は利 得 者 に故 意 ・過 失 等 の有 責

5)

が存 す る場 合 に限 るべ きで あ る とす る説 もあ る。

(6)準 事務 管理

準事務 管理 とは、他 人 の事務 を 自己の事 務 と して管理 した者 が 自 ら管理 をな

す権 利 の な い こ とを知 って い る場合 、本 人 は管 理者 が無 断行 為 に よって得 た利

益 の全 部 の 引渡 しを請 求 す るこ とがで きる とす る制 度 で あ る。準 事務 管理 の制

度 を認 め る理 由 は、本 人 は当該 管理 者 に対 して不 法行為 に基 づ いて損 害賠 償 を

請 求 し、 また は不 当利 得 に よって利 得 の償 還 を請 求 し得 るが、 いず れ も請 求範

囲 は本 人 の損失 の限度 に限 られ、 しか も不法行 為 に基 づ く賠 償請 求権 は短期消

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営業秘密の侵害 に対す る法的措置 95

滅 時 効 にか か る とい う こ と に基 づ く。

わ が 民 法 に お い て は、 ドイ ッ民法687条2項 に対応 す る規 定 が な い の で 、 準 事 務 管 理 を認 め るか 否 か につ い て は説 が分 か れ る。 い ず れ にせ よ、 営 業 秘 密 侵 害 行 為 を含 め て 、 他 人 の事 務 を行 う もの と解 し得 る形 態 の不 正 競 業 類 型 の 認 め ら れ な い不 正 競 争 防 止 法 に お い て は、 否 定 的 に解 す べ き もの と考 え る。

(7)適 用 除 外 等(「 取 引 によ る善 意取 得者 の利用 行為」)

不 正 競 争 防 止 法2条1項4号 な い し9号 に定 め る各 行 為 に形 式 的 に は 該 当 す る場 合 で あ っ て も、19条1項6号 に該 当 す る場 合 に は 、 差 止 請 求 、 損 害 賠 償 請 求 及 び刑 罰 の 対 象 とな ら な い 。 営業 秘 密 に つ い て の 事 後 的 悪 意 者 の使 用 ・開 示 行 為 は不 正 競 争 行 為 とな る(不 正競 争2条1項6号 ・9号)。 結 果 と して 、 営 業 秘 密 に係 る取 引 の安 全 を害 し、 当 該 取 引 を萎 縮 しか ね な い 。 この た め 、 善 意 か っ 重 過 失 な しに 営 業 秘 密 を取 得 した者 は 、 そ の 得 た 権 限 の範 囲 内 で 事 後 的 悪 意 者 に転 じた後 も、 営 業 秘 密 を使用 ・開 示 で き る こ とに した(同19条1項6号)。 こ の取 引 に は、 有 償 ・無 償 の 限 定 は 付 され て い な い が 、 取 引 者 は 「 取 引 に よ り取 得 した 」 こ とを立 証 す る必 要 が あ り、 対 価 の 支 払 そ の 他 の 権 原 を確 実 に取 得 し

た と認 め られ る事 情 が 必 要 で あ る。

(8)消 滅 時 効

営 業 秘 密 に係 る不 正 競 争 行 為 類 型 中 、 営 業 秘 密 の 使 用 行 為 に つ い て の 差 止 請 求 権(不 正競 争3条1項)は 、 保 有 者 が継 続 的 不 正 使 用 の事 実 と使 用 者 を 知 っ た

と きか ら3年 間 援 用 しな い と時 効 に よ り消 滅 し(同15条 前段)、 使 用 の 開 始 か ら 10年 を経 過 した と き も 同様 で あ る(同 条後 段)。 差 止 請 求 権 に つ い て 消 滅 時 効 等 を設 け るの は、 我 が 国 で は始 め て の 立 法 例 で あ る。 立 法 趣 旨 と して は 、 営 業 秘 密 の 利 用 行 為 が 長 期 間 継 続 して い る場 合 、 そ こで 生成 され た 事 実 状 態 を保 護 す

6)

る必 要 が あ るた め で あ る と説 明 され て い る。15条 後 段 は 除籍 期 間 を定 め た も の

と解 され て お り、3年 の 短 期 消 滅 時 効 と異 な って 、 起 算 点 は固 定 し、 中 断 事 由

(民法147条)等 はな く、 当事 者 の援 用 を待 た ず に期 間 の経 過 に よ り差 止 請 求 権 は

確 定 的 に消 滅 す る。 な お 、 不 正 競 争 防 止 法4条 但 書 は、15条 の規 定 に よ り当該

営 業 秘 密 に つ い て の 差 止 請 求権 が 消 滅 した とき に は、4条 本 文 が 定 め る損 害 賠

償 請 求権 も消 滅 す る こ とを規 定 して い る。

(6)

2訴 訟 にお ける営業秘 密 の保 護 手続 (D序

知 的財産 法制 にお いて は、知 的財産保 護 の観 点か ら、侵 害行為 や損 害 の立証 を容易 にす る民事訴 訟法 の特 則 が設 け られ て お り、通 常 の民事訴 訟 よ り証 拠 が 提 出 され る場合 が拡 大 して い る。 これ に よ り知 的財産 権訴 訟 に おいて提 出 され る証拠 に は、必 然 的 に営 業秘 密 が含 まれ る場合 も多 々 み られ る ところ とな る。

営業 秘密 は、 不正競 争 防止 法上 、不正 競争 行為 の類型 として列挙 され て お り、

知 的財産 の1つ と して保 護 され るべ き もの とされて い る(不 正競争2条1項4号 ない し9号)。 また、当該営業秘 密 は、 その秘 密性(秘 匿性)ゆ えに存 在価値 が認

め られ る もので あ り、 その直接 の基本 的保 護法 制 た る不正 競争 防止 法 にお いて 秘密 管理 を保護 要件 の1っ として定 めて い る(同 条6項)。 営業 秘 密 に係 る事項 に関 して、公 開 の法廷 で訴 訟手続 を行 い、 当該 秘密 性が保 持 で きな くな る と、

営業 秘密 として の価 値 は喪 失 す る。訴 訟 手続 にお いて営 業秘 密 を保 護 す るこ と が で きない とすれ ば、営業秘 密 は保護 され るべ き財産 とは言 えな い こ とにな る。

したが って、 営業秘 密 の保護 に係 る訴 訟 にお い ては、通 常 の民事訴 訟 以上 に、

立証 の容 易化 ない し真実 発 見 の要請 と営業 秘密 の保 護 の要請 とい う一 見相 対立 す る両者 の関係 を どの よ うに調 整 す るか が課題 とな る。

営業秘 密 を保 護 す るた め に、 現行 法制 として は、 実体 法 としての不 正競 争防 止法 が あ るほか、 手続 法 と して民 事訴 訟法及 び特 許法 等(実 用新案法 ・意匠法 ・ 商標法 ・著作権法)が あ り、 また、 これ らの諸 法制 とは別 に契約 に よる保護 も考 慮 す る必 要 が あ る。営業 秘 密 の保 護 にお け る課題 につ いて、 以下 に、 営業秘 密 が 争点 とな る訴訟 手続 にお け る争点整 理及 び証 拠整 理 の方法 につ いて紹介 した 後 、主 として営業 秘密 に係 る不 正競 争防止 法 と民事 訴訟 法 との相 違点 等 を意識

しなが ら、文 書 の提 出等 の手続 規定 を重 点的 に取 り上 げて論及 す る。

(2)不 正利 用 行為 の証 明 1)具 体 的 態様 の明示 義務

不 正競 争 を理 由 として 、差 止 請 求や損害 賠償請 求、信 用 回復措 置請 求 な どの

民 事救済 を求 め るため に は、 まず、 不正競 争行 為 の存在 が主 張 ・立証 され なけ

れ ばな らない。 す なわ ち、営業 秘密 の保 護 に係 る事 例 が発 生 し、 又 その お それ

が考 え られ る場合 に は、相 手 に対 して警 告 を通 知 し、 それ に よ り自主 的 に解決

(7)

営業秘密の侵害に対す る法的措置 97 で き ない とき は、 最 終 的 に不 正 競 争 行 為 に係 る侵 害 訴 訟 を提 起 す る こ とに な る。

この場 合 に は、 訴 訟 逐 行 上 、 通 常 は相 手 方(被 告)が 不 正 取 得 等 され た 営 業 秘 密 を実 際 に使 用 した とい う こ との 証 明 が争 点 とな る。 不 正 競 争 行 為 の類 型 中 に は、

侵 害 品 を 市 場 か ら収 集 で き る周 知 表 示 混 同行 為 や 著 名 表 示 冒用 行 為 、 商 品形 態 模 倣 行 為(不 正競争2条1項1号 ない し3号)の よ うに、 侵 害 行 為 の解 明 が 容 易 な 形 態 の も の も あ る。 しか し、 営 業 秘 密 に係 る不 正 行 為 は、 そ の形 態 上 、 主 張 ・ 立 証 の 困難 を伴 う類 型 と言 え る。 この類 型 の 場 合 、侵 害 行 為 を組 成 した 物 又 は 方 法 につ い て被 告 の施 設 内 で 管 理 さ れ 、 使 用 され て い る こ とが 多 い た め 、 これ を収 取 し当 該 不 正 競 争 行 為 を 立 証 す る こ とは極 め て 困 難iで あ り、 結 果 的 に原 告 は敗 訴 とな る こ とが 想 定 され る。

この点 に関 して、 民 事 訴 訟 規 則79条3項 で は、 「 準 備 書 面 に お い て 相 手 方 の主 張 す る事 実 を否 認 す る場 合 に は、 そ の 理 由 を記 載 しな けれ ぼ な らな い」 とされ て お り、 積 極 的 否 認 義 務 を規 定 して い る。 しか し、 不 正 競 争 防 止 法 で は 、 さ ら に特 許 法104条 の2の 規 定 に な ら って 、 平 成15年 改 正 に よ り、 侵 害 行 為 者 と し て主 張 され て い る者 が 「 侵 害 の 行 為 を組 成 した物 又 は方 法 の 具 体 的 態 様 を 否 認 す る とき は、 自 己 の具 体 的態 様 を明 らか に しな けれ ば な らな い」 と規 定 した(不 正 競争5条 の2、 平成17年 改正 に よ り6条 に繰 下)。 これ は、 「 相 手 方 に も侵 害 行 為

の 特 定 に積 極 的 に 関 与 させ 、 訴 訟 審 理 の 促 進 ・争 点 の 明 確 化 を 図 る趣 旨 」 とさ

れ る。 た だ し、 「 相 手 方 に お い て 明 らか に す る こ とが で き な い相 当 の理 由 が あ る とき は、 この 限 りで な い 」 とされ て い る(同6条 但書)。

こ こで 対 象 とされ る具 体 的 態 様 の 内容 に営 業 秘 密 が 含 まれ て い る場 合 や 現 実 に具 体 的 内 容 が 存 在 しな い な どの場 合 に は、 「 相 当 の 理 由」 が あ る と して 、 被 告 の 判 断 に よ り、 具 体 的 態 様 の 明 示 を拒 否 で き る。 被 告 に 「 相 当 の 理 由 」 が 認 め られ ず 、 規 定 に従 っ た 対 応 を 拒 否 した場 合 の 制 裁 措 置 は 設 け られ て い な い。 法 制 上 、6条 の 義 務 違 反 の効 果 は 明 らか で な く、 営 業 秘 密 に係 る不 正 競 争 行 為 に お い て も同規 定 を設 け る実 益 は 乏 しい と言 わ ざ る を得 な い 。 しか し、 そ の よ う な 被 告 の 不 誠 実 な 訴 訟 対 応 に つ い て は、 侵 害 組 成 物 件 等 を 使 用 して い る とい う 心 証 を裁 判 官 に与 え、 文 書 提 出 命 令(不 競7条)の 申 立 の 契 機 とな りか ね な い。

この 点 に関 して は、 「 営 業 秘 密 の 中核 部 分 を常 に開 示 す る こ と を求 め な くて も、

周 辺 部 分 の 有 用 情 報 を 開 示 す る こ とに よっ て特 定 が 可 能 とな る場 合 が あ る こ と

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等 か ら、 立 証 の 容 易 化 に資 す る」 と説 明 され て い る。 不 正 競 争 防 止 法6条 の元 とな っ た 特 許 法104条 の2と 民 事 訴 訟 規 則79条3項 との 関 係 を解 明 す る こ と も

9)

必 要 とされ る と こ ろで あ る。

2)争 点 整 理 ・証 拠 整 理

営 業 秘 密 が 争 点 とな る訴 訟 手 続 に つ い て は、 裁 判 公 開 の 原 則 を維 持 しな が ら も、 不 当 に営 業 秘 密 が 開 示 され る こ との な い よ う に配 慮 し、 準 備 手 続 の 利 用 と 相 ま っ て 、 訴 訟 指 揮 権 に基 づ き適 切 な 取 扱 いが 要 請 され る。 近 年 、 営 業 秘 密 の 保 護 に係 る関連 法 の 改 正 が 積 極 的 に行 わ れ、 そ の保 護 制 度 に 改 善 が み られ る も、

な お 課 題 につ い て は、 それ を補 う必 要 も あ り、 そ の 際 に は、 裁 判 制 度 を運 用 す る場 合 の 細 則 と して機 能 す る もの と思 わ れ る。

まず 、 争 点 整 理 と証 拠 整 理 にっ い て は 、 営 業 秘 密 侵 害 訴 訟 は各 事 件 ご とに特 徴 が あ り、 審 理 の 定 型 化 は 困 難 で あ るが 、 迅 速 か つ 適 正 な審 理 の た め に は争 点 整 理 を行 う こ とが 必 要 で あ り、 当該 訴 訟 の 争 点 の特 質 に照 ら し、裁 判 所 の 訴 訟 指 揮 と して 、 口頭 弁 論 及 び 準 備 手 続 に お い て 、 審 理 に傍 聴 を許 さ な い こ とが で き る弁 論 準 備 手 続(民 訴168条)、 営 業 秘 密保 護 を理 由 とす る記 録 の謄 写 閲 覧 の制 限 等(同92条 、民訴規34条)そ の他 の制 度 を活 用 して 、 審 理 の 対 象 を 明確 化 す る

ユの

こ と もで き る。 この よ うな整 理 方 法 を採 用 す る こ とは 、 直 ち に原 告 の 主 張 す る 秘 密 保 護 契 約 の成 立 、 技 術 情 報 の提 供 、 そ の 内容 の秘 密 性 を、 当 該 訴 訟 の 結 論

と して認 定 す る こ とを意 味 す る も ので は な い 。 (2)不 正 競 争 防 止 法 に よ る 措 置

1)概 要

不 正 競 争 防 止 法 上 、 民 事 救 済 と して 、 営 業 秘 密 を侵 害 され 又 は侵 害 され る お そ れ が あ る者 は、 そ の 営 業 上 の利 益 を侵 害 す る者 又 は そ の お それ が あ る者 に対 し、 そ の侵 害 の停 止 又 は予 防 を請 求 す る こ とが で き る(不 競3条1項)。 これ に付 帯 的 な 請 求 と して 、 侵 害 組 成 物 の 廃 棄 や 侵 害 供 与 設 備 の 除 去 そ の他 の侵 害 停 止 又 は 予 防 に必 要 な行 為 の 請 求 が で き る(同 条2項)。 また 、 故 意 又 は過 失 に よ っ て 現 に営 業 上 の利 益 を侵 害 され た 者 に は損 害賠 償 請 求 権 が 認 め られ て い る(同4 条)。 さ ら に、 故 意 又 は過 失 に よ る侵 害 に対 して は営 業 上 の信 用 回復 措 置 を請 求 す る こ と もで き る(同14条)。

損 害 賠 償 を請 求 す る場 合 、 侵 害 者 が 侵 害 組 成 物 を譲 渡 した とき に は 、 そ の譲

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営業秘密 の侵害 に対す る法的措置 99

渡数 量 に、被侵 害者 が侵 害 の行為 が な けれ ば販 売 す るこ とがで きた物 の単位 数 量 当 りの利 益 の額 を乗 じた額 を、被 侵 害者 の 当該物 に係 る販 売 その他 の行為 を 行 う能力 に応 じた額 を超 えな い限度 にお いて、被 侵 害者 が受 けた損 害 の額 とす るこ とが で きる(不 競5条1項)。 ただ し、譲渡 数量 の全 部又 は一部 に相 当す る数 量 を被 侵 害者 が販 売 す る こ とが で きない とす る事 情 が あ る ときは、 当該 事情 に 相 当す る数 量 に応 じた額 を控 除 す る。侵 害者 の得 た利益 を損 害 の額 と推 定 す る 規 定 が あ る と ともに(同2項)、 当該侵害 に係 る営 業秘 密 の使用 に対 し、 受 け る

べ き金銭 の額 に相 当す る額 の金 銭 を損害額 として請 求す るこ とが で き る(同3項 3号)。 侵害行 為 や損害額 の立証 の容易化 等 のた め の具体 的態様 の 明示義務(同 6条)、 書類提 出につ いてのイ ンカ メ ラ手続(同7条)、 損害計算 のた めの鑑 定(同 8条)、 相 当な損害額 の認 定(9条)、 秘密保 持命令 とその取消 しの制 限(同10条 、 ll条)、 訴訟 記録 の閲覧等 の請 求 の通知等(同12条)及 び当事者 尋 問等 の公開停 止(同13条)な どの規 定 も特許 法 と同様 に整備 され て い る。

2)営 業秘 密 の審理

不正競 争防止法1条 は、 「 事業 者 間の公正 な競 争及 び これ に関 す る国際 約束 の 的確 な実施 を確保 す るた め、 不正競 争 の防止及 び不正 競争 に係 る損害賠 償 に関 す る措 置等 をuじ 、 もって国民経 済 の健全 な発展 に寄 与す るこ とを 目的 とす る。 」

と規 定 してい る。 同法 で は損 害賠償 請求権 の ほか、差 止請 求権 や信 用 回復 措置 請 求権 が認 め られて い る点 は、産 業財産権 四法(特 許法、実用新案法、意匠法、商 標法)と 変 わ らない。 しか し、過 失 が推定 され ない等、不 正競 争防止法 と産 業財 産権 四法 とは相違 点 が あ る。

平 成2年 に 旧不 正競 争 防止法 にお いて 営業秘 密 の保 護 が 法定 化 され るまで に は、営業 秘密 を裁 判 の公 開 を前提 とす る訴 訟 手続 におい て保 護 が可 能 か否 か の 議論 も既 に行 われ ていた ところで ある。 この ことは、 営業秘 密 の保 護 につ いて、

公正 を担保 す るた めの裁判 の公開原 則(憲82条)と 裁 判 を受 け る権 利(憲32条)

とが両立 可能 で あ るのか ど うか とい う問題 に直面 す る。例 えば、公 開 の裁 判 で

係争 製 品の技術 上 の情報 に係 る営業秘 密 を訴 状 に記載 しな けれ ぼ訴 訟 を遂 行 す

るこ とが で きず、 これ を記載 して主張 ・立証 すれ ぼ弁 論終 結 時 には営業 秘 密 の

非公 知性 を喪失 し、差 止請 求 は棄 却 され かね な い とか(東 京地判平成3・9・24

判時1429号80頁 参照)、顧 客名簿 等 の営業 上 の情報 に係 る営業秘 密 の具体 的 内容

(10)

を主 張 ・立 証 す る こ とは 、 相 手 方 当 事 者 か ら完 全 な秘 密 情 報 を取 得 す る こ と に な る ほ か、 傍 聴 人 や 当該 秘 密 情 報 の 内容 を閲 覧 した 第 三 者 に営 業 秘 密 を 開示 し、

そ の 意 図 に反 して訴 え を 提 起 す る こ とに よ り、 営 業 秘 密 を外 部 に開 示 す る結 果 を 招 来 す る結 果 とな る危 険 性 が あ るの で は な い か 、 な どの議 論 が 生 じ得 る。

不 正 競 争 防 止 法2条1項7号 は、 訴 訟 の 相 手 方 が 訴 訟 手 続 を通 じて 知 り得 た 営 業 秘 密 の 使 用 ・開 示 を不 正 競 争 行 為 類 型 と し、 同 号 の適 用 に よ り差 止 請 求 を 認 容 す るた め に は 、 当該 営 業 秘 密 が 判 決 の 基 準 時 た る 口 頭 弁 論 終 結 時 に お い て も、 営 業 秘 密 の要 件 を具 備 して い る こ とが 前 提 とな る。 この 点 、 営 業 秘 密 を保 護 す るた め に 、 審 理 手続 に つ い て は 実 体 法 た る不 正 競 争 防 止 法 に よ らず 、 民 事 訴 訟 法 に よ る とこ ろ、 手 続 面 で も様 々 な工 夫 が施 さ れ て よい 。 そ の一 例 と して 、 訴 状 の 「 請 求 の趣 旨」 に お け る営 業 秘 密 の 特 定 と して は、 差 止 めや 廃 棄 の 対 象

とな る もの を、 営 業 秘 密 で あ る顧 客 情 報 が 入 力 さ れ た 磁 気 デ ィ ス ク の よ う な有 体 物 や 技 術 情 報 に基 づ い て作 成 さ れ た製 品 と して 特 定 で き る場 合 に は 、 そ れ に よ る な どの運 用 が 考 え られ る。 また 、 非 公 開 の 弁 論 準 備 手 続 を利 用 して 審 理 を 行 っ た り、 秘 密 管 理 性 の要 件 を 先 に審 理 し、 そ の要 件 が 備 わ っ て い な い と判 断 した とき に は、 判 決 に至 る こ と も考 え られ る。 さ らに 、 「 請 求 原 因 」 と して も、

顧 客 名 簿 に つ い て は 、 そ の 住 所 ・氏 名 ・年 齢 等 名 簿 の 項 目の み を営 業 秘 密 と し て保 護 す る な どの 工 夫 も考 え られ る。

(3)民 事 訴 訟 法 に よ る措 置 1)証 言 拒 絶 ・文 書 拒 絶 理 由

民 事 訴 訟 法197条1項3号 及 び220条4号 ハ の 規 定 に よ る と、 「 技 術 又 は職 業 の秘 密 」 に 関 す る事 項 につ い て 尋 問 を受 け る場 合 で あ っ て も、 黙 秘 の 義 務 が 免 除 され て い な い もの につ い て は 、証 人 は証 言 を 拒 み 、 そ れ が 記 載 され て い る文 書 の 所 持 者 は提 出 を拒 む こ とが で き る と され て い る。 こ こで い う 「 技 術 又 は職 業 の秘 密 」 に つ い て 、 判 例 は 「そ の事 項 が 公 開 され る と当 該 技 術 の 有 す る社 会 的 価 値 が 下 落 し、 これ に よ る活 動 が 困 難 に な る もの 又 は当 該 職 業 に深 刻 な影 響 を与 え、 以後 そ の遂 行 が 困難 に な る もの を い う」(最 決平成12・3・10民 集54巻3 号1073頁)と して い る。 もっ とも、 これ らの 記 載 情 報 が直 ち に除 外 事 項 に当 る と 抽 象 的 に把 え るだ けで は足 りず 、 情 報 の 種 類 ・性 質 や 、 文 書 の 提 出 に よ っ て 所

il)

持 者 が 被 る不 利 益 の具 体 的 内 容 を審 理 判 断 す べ きで あ る、 とさ れ て い る。

(11)

営業秘密の侵害に対する法的措置 101

民 事 訴 訟 法 所 定 の 除 外 事 由 は 、 不 正 競 争 防 止 法 上 の 営 業 秘 密 そ の もの で は な い が 、 営 業 秘 密 該 当事 項 に つ い て は 、 証 言 ・文 書 提 出 拒 絶 扱 い も可 能 と考 え ら れ る。 この扱 い を常 態 化 して しま う と、 相 手 方 当 事 者 た る被 告 の書 提 出 拒 絶 に よ り、 権 利 者 の保 護 が 図 れ な い こ とに な る。 そ こで 、 民 事 訴 訟 法 の 特 別 法 た る 特 許 法 に お い て は、 営 業 秘 密 の み を理 由 と して の 提 出 拒 絶 に つ い て 、 近 年 そ の 妥 当 性 を判 断 す る基 準 の 制 度 設 計 が 図 られ て い る。

ま た、 文 書 提 出命 令 等 につ い て 定 めて い る民 事 訴 訟 法223条6項 前 段 は 「 文 書 提 出 命 令 の 申 立 て に係 る文 書 」 が 提 出 拒 絶 理 由 に 「 該 当 す るか ど うか の 判 断 を す る必 要 が あ る と認 め る とき は 、 文 書 の 所 持 者 に そ の 文 書 の提 示 を させ る こ と が で き る。」 と規 定 し、 イ ン カ メ ラ(lnCamera「 裁判 官 室 での非公 開」)手 続 を 導 入 して い る。 また 、 同項 後 段 は、 「この場 合 に お い て は、 何 人 も、 そ の提 示 さ れ た 文 書 の 開 示 を求 め る こ とが で きな い」 と定 め て い る。 な お 、 書 類 の 提 出等 に つ いて は、 特 許 法105条2項 に 同様 の規 定 を設 けて い るが 、 同条3項 は 、 さ ら に、 この 場 合 に お いて 、 書 類 所 持 者 の 提 出拒 絶 に対 す る 「 正 当 な理 由」(特 許105 条1項 但書)の 有 無 に つ い て意 見 を聴 くこ とが 必 要 で あ る とき は、 秘 密保 持命 令 の 下 で 当 事 者 等 に書 類 を開 示 す る こ とが で き る こ とを定 め て い る。

2)訴 訟 記 録 の 閲 覧 等 の制 限

民 事 訴 訟 法(平 成8年 法律第109号)92条1項2号 は、 「 何 人 も、 裁 判 所 書 記 官 に 対 して、 訴 訟 記 録 の 閲 覧 を 請 求 す る こ とが で き る」 と した91条1項 の 例 外 と

して 、 「 訴 訟 記 録 中 に 当 事者 が保 有 す る営 業 秘 密(不 正競 争 防止法 第2条 第6項 に 規 定 す る営業秘密 をい う。 第132条 の2第1項 第3号 及 び第2項 にお いて同 じ。)が 記

載 され 又 は記 録 され て い る こ と」 に つ い て 「 疎 明 が あ っ た場 合 に は 、 裁 判 所 は、

当該 当事 者 の 申 立 て に よ り、 決 定 で 、 当 該 訴 訟 記 録 中 当 該 秘 密 が 記 載 され 、 又 は記 録 され た部 分 の 閲 覧 若 し くは謄 写 、 そ の 正 本 、 謄 本 若 し くは抄 本 の 交 付 又 は そ の 複 製(以 下 「 秘 密記 載部 分 の閲覧等 」 とい う。)の 請 求 をす る こ とが で き る 者 を 当事 者 に 限 る こ とが で き る。」 とい う 「 秘 密保 護 の た め の 閲 覧 等 の制 限 」 の

手 続 規 定 を導 入 して い る。

秘 密 保 護 の た め の 閲 覧 等 の 制 限 は、 第 三 者 に訴 訟 記 録 を閲 覧 ・謄 写 させ な い

とい う趣 旨で 設 け られ た もの で あ る。 この秘 密 保 護 の 手 続 規 定 を設 け る過 程 で 、

法 務 省 民 事 局 参 事 官 室 が 平 成3年12月 に発 表 した 検 討 事 項 で は、 閲 覧 制 限 の ほ

(12)

か 、 訴 訟 審 理 を 非 公 開 とす る こ とが で き る場 合 を 明確 に す る こ と、 非 公 開 とす る場 合 に必 要 が あ る と き は、 当 事 者 等 に 対 しそ の期 日に お い て 知 っ た 秘 密 の 保 持 を 命 ず る こ とが で き る こ と等 が 挙 げ られ て い た 。 秘 密 保 護 手 続 の導 入 につ い

12)

て は 、検 討 の結 果 、 訴 訟 記録 の閲 覧 等制 限 の 制 度 の み が設 け られ る に至 っ た 。し た が っ て 、 相 手 方 当 事 者 との 関 係 で は、 法 制 度 上 の 保 護 を 求 め る こ とは で き な い 。 そ の こ とか ら、 閲 覧 等 の 制 限 は、 未 だ 十 分 な秘 密 保 護 手 続 とは言 い難 い も

13)

の と指 摘 され て い た 。この 点 が検 討 課 題 と して 残 され る と こ ろ とな る。

(4)特 許 法 等 に よ る秘 密 保 持 命 令 1)立 法 趣 旨

平 成16年 の 「 裁 判 所 法 等 の 一 部 を改 正 す る法 律 」(平 成16年 法律第120号)に よ り、 不 正 競 争 防 止 法 の ほか 、 特 許 法 、 実 用 新 案 法 、 意 匠 法 、 商 標 法 及 び著 作 権 法 に秘 密 保 持 命 令 につ い て の規 定(特 許105条 の4な い し6、 実用30条 、意 匠41条 、 商標39条 、著作Il4条 の6な い し8)が 設 け られ た 。

特 許 権 侵 害 訴 訟 に お い て は、 当 該 侵 害 行 為 の有 無 を立 証 す るた め の 証 拠 が 当 事 者(特 に被 告)に 存 在 す る こ とが 多 いが 、 この証 拠 に営 業 秘 密 が 含 まれ て い る 場 合 、 これ を提 出 す る こ と に よ り営 業 秘 密 が 公 知 に な っ て し ま い、 そ の結 果 と して 営 業 秘 密 は喪 失 す る。 この こ とは 、 不 正 競 争 防 止 法 に係 る営 業 秘 密 の 不 正 使 用 が 問 題 とな る事 案 に お い て も、 原 告 と被 告 の秘 密 情 報 の 内 容 が 異 な る もの で あ る場 合 に 、 被 告 が 請 求 棄 却 の判 決 を求 め て 自 己 の 秘 密 情 報 を証 拠 と して提 出 す る と、 同様 の 結 果 を招 来 す る こ とに な る。 この よ う に、 営 業 秘 密 に係 る事 項 に つ い て 主 張 ・立 証 が 必 要 とな る場 合 に生 じ る弊 害 を 当 事 者 が 懸 念 せ ざ る を

え な い こ とか ら、 営 業 秘 密 を含 む書 類 等 の収 集 ・提 出 に は当 事 者 にお い て 困 難 を伴 い 、 裁 判 所 の審 理 に も障 害 とな る。

この 点 に関 して は、 先 に述 べ た とお り、 平 成8年 民 事 訴 訟 法 改 正 時 に 、 秘 密 保 護 の 手 続 規 定 を設 け る過 程 で 、 法 務 省 民 事 局 参 事 官 室 が 発 表 した 検 討 事 項 で は、 同 改 正 で 導 入 され た 閲 覧 制 限 の ほ か 、 訴 訟 審 理 を非 公 開 とす る こ とが で き る場 合 を 明 確 に す る こ と、 非 公 開 とす る場 合 に必 要 が あ る とき は 、 当事 者 等 に 対 しそ の期 日 に お い て 知 っ た秘 密 の保 持 を 命 ず る こ とが で き る こ と等 が 挙 げ ら

14}

れ 、 当時 か ら既 に指摘 されて いた もので あ る。秘 密保持 命令 の趣 旨は、知 的財産

権 侵 害訴訟 にお いて、 営業秘 密 を含 む準備書 面 や証拠 につ いて 当該 訴訟 の遂 行

(13)

営業秘密の侵害 に対する法的措置 103 目的以外 の使用 や、 訴訟 関係人 以外 の者(傍 聴人や第三者等)へ の開示 を禁止 す るこ とに よ り、 営業秘 密 に係 る知 的財産 の保 護 に寄 与 す る制度 と言 え る。

2)秘 密保持命 令 の適 用

秘 密保 持命 令 は、特 許権 等 の侵害 訴訟 にお いて特許 発 明 との対 比又 は先使用 権 の抗 弁 の主 張 の ため、被 告 が 自己 の作成 す る製 品の構造 や実 施 方法 の内容 を 開示 す る場合 等 に適用 され るもので あ り、被 告側 か ら申 し立 て られ る こ とにな る。 同様 の 申 し立 て が、実 用新 案侵 害訴 訟や プ ログ ラムの侵 害訴訟 等 にお いて も考 え られ るほか、不 正競 争 防止法 に係 る事件 に おい て も原 告 の営業 秘 密 との 対比 のた め に被 告が 自己の技術 ノウハ ウや顧客 名 簿 を開示 す る場 合等 に も秘 密 保 持命 令 の 申 し立 てが あ り得 る。秘 密保 持命令 は、訴 訟 手続 にお いて開 示 され た営業秘 密 の保護 を 目的 として導入 され た もの で あ り、 訴訟提 起 前 に訴 訟手 続 と無 関係 に当事者 にお いて取得 した営業秘 密 はそ の対象 外 で あ るが ゆ え に、原 告 の営業 秘 密が秘 密保 持命 令 の対象 とな る こ とは ない。

3)書 類 提 出拒絶 に対 す る正 当 な理 由

書類所 持者 の提 出拒絶 に対 す る 「 正 当 な理 由」(特許105条1項 但書)が あ る場 合 には、 営業 秘密 に係 る当該 書類 の提 出義務 が免 除 され る。 「 正 当な理 由」 にっ い ては、 当該 書類 に記載 され て い る情報 の性質 や秘 密性 の関係 度合 い を考 慮 し なが ら、開示 す る こ とに よ り書 類 の所 持 人が受 け る不 利益 と申立人 が受 け る不 利益 とを比較衡量 して判 断す るもの とされ ていた(工 業所有権審議会 「 特許法等の 改正 に関す る答申」 〔1998年12月14日 〕)。ここで は、 「 営 業秘 密 の保 護 の必 要性 と 訴訟 追行 上 の必要性 、 す なわ ち、公 表 され る こ とに よる所持 者 の不 利益 と真実 発見 ・裁 判促進 とい う司法 の利 益 のバ ランス が判 断 され るべ きで あ る」 とされ

15)

る。

文 書 提 出命 令 に基 づ き文 書 が 提 出 され る場 合 で も、 営 業 秘 密 の 不 必 要 な 開 示

を避 け る適 切 な措 置 の決 定 が 要 請 され る(東 京高決平成9・5・20判 時1601号143

頁)。 この場 合 に は 、提 出 され た文 書 の 閲 覧 ・謄 写 の方 法 等 を訴 訟 指 揮 に基 づ き

決 定 す る こ とも必 要 で あ る(東 京地決平成9・7・22日 判 時1627号141頁)。 文 書 の

一 部 に営 業 秘 密 が 含 まれ て い る場 合 に は 、 そ の部 分 を 除 い て 提 出 を命 ず る こ と

が で き る(民 訴223条1項 第2文 、最 決平成13・2・22判 時1742号89頁)。 営 業 秘 密

が 記 載 され た 書 類 につ い て 書 類 提 出 命 令 の 申 立 て が な され 、 そ の 書 類 に っ き書

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類 の保持 者 にお いて提 出 を拒 む正 当 な理 由が あ るか どうか を判 断 す るた めに必 要 があ る と認 め る ときは、民事訴訟法223条6項 と同様 の イ ンカ メラ手続で書 類 を提 示 させ るこ とがで きる(特 許105条2項)。 秘密保 持命令 制度 の導 入 とイ ンカ メ ラ審 理 とが相 まって、秘密 保持 命令 に よ る保護 の下 で書 類提 出命 令 を発令 す る場 合 が拡 大 す る こ とが予想 され、提 出 され る書 類 の範 囲 も広 が る もの と考 え

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られ て い る 。

平 成15年 改 正 に よ り、 イ ンカ メ ラ手 続 が 不 正 競 争 防 止 法 に も導 入 され た が 、 大 量 の 文 書 が 裁 判 所 に提 示 され た 場 合 に は、 裁 判 所 だ け に よ る判 別 は不 可 能 に

な る。 当事 者 の 協 力 が必 要 な 以 上 、 裁 判 所 の訴 訟 指 揮 に よ っ て 文 書 提 出 命 令 に よ り提 示 され た 文 書 の 営 業 秘 密 が 不 必 要 に開 示 され な い よ う にす る た めの 閲 覧 と謄 写 の 手 続 、 な らび に書 証 と して の提 出手 順 を工 夫 す る必 要 も あ る(東 京地決 平成10・7・31判 時1658号178頁 〉 も あ る。

(5)公 開 停 止

憲 法82条1項 は 裁 判 公 開 の原 則 を 定 め る と と も に、 裁 判 官 の 全 員 一 致 で 「 公 の 秩 序 又 は善 良 の 風 俗 を害 す る虞 が あ る」 と決 した場 合 に は、 例 外 と して 対 審 に よ る裁 判 を非 公 開 とす る こ とが で き る(憲 法82条2項)。 営 業 秘 密 に係 る訴 訟 につ い て は 、 裁 判 の公 開 を制 限 す る真 に止 む を得 な い事 情 が あ り、 か つ 裁 判 を 公 開 す る こ とで 適 切 な裁 判 が 行 わ れ な くな る場 合 を考 慮 し、 これ を憲 法82条2 項 の例 外 規 定 に該 当 す る もの と して 、 平 成16年 の 「 裁 判 所 法 等 の一 部 を改 正 す

る法 律 」 に よ る不 正競 争 防止 法 の改 正 に よ り、 「 当 事 者 尋 問 の 公 開停 止 」 を行 う 場 合 の要 件 と手 続 とを明 確 に定 め る こ と と した(不 競13条)。

当 事 者 尋 問 の公 開 停 止 規 定 は、 侵 害 訴 訟 に お け る 当事 者 等 が 、 営 業 秘 密 に該 当 す る もの につ い て 尋 問 を受 け る場 合 に お い て は、 「 裁 判 所 は、 裁 判 官 の全 員 一 致 に よ り、 そ の 当 事 者 等 が公 開 の法 廷 で 当 該 事 項 につ い て 陳 述 をす る こ とに よ

り当 該 営 業 秘 密 に基 づ く当 事 者 の事 業 活 動 に著 しい 支 障 を生 ず る こ とが 明 らか

で あ る こ とか ら当 該 事 項 につ い て 十 分 な 陳 述 を す る こ とが で きず 、 か つ 、 当該

陳 述 を 欠 くこ とに よ り他 の 証 拠 の み に よ っ て は 当該 事 項 を判 断 の 基 礎 とす べ き

不 正 競 争 に よ る営 業 上 の利 益 の侵 害 の 有 無 に つ い て の適 正 な裁 判 を す る こ とが

で き な い と認 め る とき は 、 決 定 で 、 当該 事 項 の 尋 問 を公 開 しな い で 行 う こ とが

で き る」 と して い る(不 競13条1項)。

(15)

営業秘密の侵害 に対す る法的措置 cos

皿 刑 事 的措置

1序

不 正競 争 防止法 は、 すで に述 べ た よ うに、市場 にお け る公正 な競 業秩 序 の維 持 とい う公 益 と営業 上 の信 用 とい う私益 の両 者 を保 護 法益 と して い る。 その両 者 の どち らに比重 が あ るか は、各 不正競 争行 為 に よって異 な る。法 定 の不正 競 争類 型 に該 当す る保 護法 益 の侵害 について は、 当事 者 間 に おけ る民事 的救済 措 置 が設 け られ て い るが 、保 護法 益 の侵害 が 顕著 な行 為 には刑事 罰 も科 され る。

法定 の不正 競 争類型 に該 当す る営業秘密 の侵 害 に対 して も、法 的措 置 として民 事救 済制度 と刑事制 裁制 度 が設 け られて い る。

不正 競 争 防止法 は、規 制 の対象 とな る不正 競争 行 為 を一般 的 ・抽 象 的 に定 義 した規定 を(一 般規定)を 設 けず 、 当該不正競 争行為 を類 型 ご とに列挙 し、 その 構 成 要件 を明規 す る とい う限定列挙 主義 を採 用 して い る。 当該類 型 に列 挙 され た不 正競 争行為 に対 し、民事 救済措 置 を定 め たの が不正 競 争 防止法 の主 要部 分 で あ るが、 同法21条 は刑 事制 裁 に関す る規 定 として、他 の民事 的措 置 と区別 さ れ る。不正競 争防止 法所 定 の罰則 に該 当す る不正 競 争行 為 が、 同時 に刑 法 その 他 の法令 にお け る罰 則 の構 成 要件 に該 当す る場 合 に は、罪 数処理 につ いて一 般 法 と特別法 の関係 に立 たず、 その適用 を妨 げない とされて い る(不 競21条7項)。

これに よ り、処 断刑 にっ いて は、最 も重 い刑 で処 断 され る こ とが 明確 化 され た。

刑法 には、 営業 秘 密 の不 正 利用行 為 を直 接、念 頭 に置 いた規定 はな いが、情 報 を化体 した媒体 としての有体物 に関 しては、窃盗 罪(刑 法235条)や 横領 罪(同 252条)に 該 当す る可能性 が あ る。本来 、情報 とい う無体 物 の窃取 を 目的 とす る 行 為 に対 して、有 体物 に着 目 した犯 罪類 型で あ る窃 盗 罪 や横領 罪 を適用 して対 処 す るた め には、情報 媒体 物 の移転 を伴 わ な けれ ばな い。 この点 に関 し、一般 的 に営業 秘 密 の不 正利用 行 為 を処罰 す る規 定 を設 け る必要 性 が 国 の内外 か ら要 請 されて いた ところで あ る。

不 正競 争 防止法 にお いて、営 業秘 密 に係 る 「 不正 行為 」 等 へ の刑 事罰 の導 入

に あた って は、労働 者 の退 職 ・転職 の 自由や、 報道 機 関 の取材 ・報 道 の 自由等

の、昭和40年 代 か ら50年 代 にか けて の改正 刑法草 案検 討時 にi提起 され た課題 等

に も十分 に配慮 し、処 罰 の必 要 性 と刑事処 罰 の謙抑 性 のバ ランス を図 り、 明確

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かつ適 切 な構 成要 件 を規定 した と説 明 されて い る。

2営 業 秘 密侵 害 罪

営 業 秘 密 に係 る 「 不 正 競 争 」 行 為 と して 罰 則 の 対 象(「 営業 秘密侵 害罪」)と な る もの は、 次 の とお りで あ る。

(罰 則)

第21条 次 の 各 号 の いず れ か に該 当 す る もの は 、10年 以 下 の 懲 役 若 し くは1000万 円 以下 の罰 金 に処 し、 又 は これ を併 科 す る。

一 詐 欺 等 行 為(人 を欺 き、人 に暴行 を加 え、 又 は人 を強 迫 す る行為 をい う。 以下 同 じ。)に よ り、 又 は管 理 侵 害 行 為(営 業 秘密 が記載 され、 又 は記 録 され た書 面 又 は記録 媒 体(以 下 「 営業 秘 密 記録媒 体 等 」 とい う。) の 窃 取 、 営 業 秘 密 が 管 理 され て い る施 設 へ の侵 入 、 不 正 ア クセ ス行 為(不 正 ア クセ ス行 為 の 禁 止 等 に関 す る法 律(平 成ll年 法 律第128号) 第3条 に規定 す る不 正 ア クセ ス行為 を い う。 以下 同 じ。)に よ り、 取 得 し

た営 業 秘 密 を、 不 正 の 競 争 の 目的 で 、使 用 し、 又 は展 示 した者 二 前 号 の使 用 又 は 開 示 の用 に供 す る 目的 で 、 詐 欺 等 行 為 又 は管 理侵

害 行 為 に よ り、 営 業 秘 密 を 次 の いず れ に か に掲 げ る方 法 で 取 得 した もの

イ 保 有 者 の 管 理 に係 る営 業 秘 密 記 録 媒 体 等 を取 得 す る こ と。

ロ 保 有 者 の 管 理 に係 る営 業 秘 密 記 録 媒 体 等 の 記 載 又 は記 録 につ い て 、 そ の複 製 を 作 成 す る こ と。

三 営 業 秘 密 を保 有 者 か ら示 され た者 で あ って 、 不 正 の 競 争 の 目的 で 、 詐 欺 等 行 為 若 し くは管 理 侵 害 行 為 に よ り、 又 は横 領 そ の 他 の 営 業 秘 密 記 録 媒 体 等 の管 理 に係 る任 務 に 背 く行 為 に よ り、 次 の い ず れ か に 掲 げ る方 法 で 営 業 秘 密 が 記 載 され 、 又 は記 録 され た 書 面 又 は記 録 媒 体 を領 得 し、 又 は作 成 して 、 そ の 営 業 秘 密 を使 用 し、 又 は 回 示 した 者

イ 保 有 者 の 管 理 に係 る営 業 秘 密 記 録 媒 体 等 を領 得 す る こ と。

ロ 保 有 者 の 管 理 に係 る営 業 秘 密 記1r媒 体 等 の 記 載 又 は記 録 に っ い

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営業秘密の侵害に対す る法 的措置 107 て 、 そ の複 製 を作 成 す る こ と。

四 営 業 秘 密 を保 有 者 か ら示 され た そ の 役 員(理 事、 取締 役 、執 行 役 、 業務 を執 行 す る社 員、監 事若 し くは監査 役又 は これ らに準 ず る者 をい う。

次号 において 同 じ。)又 は従 業 者 で あ っ て 、 不 正 の競 争 の 目的 で 、 そ の 営業 秘 密 の管 理 に係 る任 務 に背 き、 そ の 営 業 秘 密 を使 用 し、 又 は 開 示 した者(前 号 に掲 げ る者 を除 く。)

五 営 業 秘 密 を保 有 者 か ら示 され た そ の 役 員 又 は 従 業 者 で あ っ た 者 で あ っ て 、 不 正 の競 争 の 目的 で 、 そ の 在 職 中 に、 その 営 業 秘 密 の 管 理 に係 る任 務 に背 い て その 営 業 秘 密 の 開 示 の 申込 み を し、 又 は そ の 営 業 秘 密 の 使 用 若 し くは開 示 につ い て 請 託 を受 け て 、 そ の 営 業 秘 密 を その 職 を退 い た 後 に使 用 し、 又 は 開 示 した 者(第3号 に掲 げ る者 を除

く。)

六 不 正 の競 争 の 目的 で 、 第1号 又 は第3号 か ら前 号 まで の罪 に 当 る開 示 に よ って 営 業 秘 密 を 取 得 して 、 そ の 営 業 秘 密 を 使 用 し、 又 は 開 示 した 者

(第2項 以下 、略 〉

上 記 の営 業 秘 密 に関 す る罰 則 は、 営業 秘 密 侵 害 罪 と称 すべ き処 罰 類 型 で あ る。

それ は 、第1に 営 業 秘 密 を 違 法 な 手 段 で侵 害 す る 「 詐 欺 侵 害 罪 」(不 競21条1項 1号 〉及 び 「 記 録 媒 体 取 得 複 製 罪 」(同2号)、 第2に 営 業 秘 密 を合 法 的 に 取 得 し た 者 が 侵 害 す る 「 記 録 媒 体 領 得 複 製 罪 」(同3号)、 「 役 員 等 背任 罪 」(同4号)及 び 「 退 職 役 員 等 使 用 開 示 罪 」(同5号)、 第3に4号 か ら9号 まで の 処 罰 類 型 の共 犯 を罰 す る 「 取 得 使 用 開 示 罪 」(同6号)で あ る。

不 正 競 争 防止 法 は 、 営業 秘 密 に 係 る 「 不 正 競 争 」 行 為 にっ い て 、2条1項4 号 か ら9号 まで に定 め る 「 不 正 競 争 」 行 為 の す べ て を 刑 事 罰 の 対 象 とす る の で

は な い 。 営 業 秘 密 侵 害 罪 の 対 象 とな る 「 不 正 競 争 」 行 為 に つ い て は、 平 成2年 改 正 に よっ て 民 事 上 の 差 止 請 求 等 の 対 象 と され て い る営 業 秘 密 に係 る 「 不 正 競 争 」 行 為 との比 較 の 上 で 、 特 に違 法 性 の 高 い 行 為 を処 罰 の 必 要 性 と許 容 性 の観 点 か ら絞 り込 み、 平 成15年 改 正 及 び平 成17年 改 正 に よ り刑 事 罰 の 対 象 と して新

18)

た に類 型 化 した も ので あ る。本 条 違 反 者 に対 して は、10年 以 下 の懲 役 若 し くは

(18)

1000万 円 以 下 の 罰 金 に処 せ られ 、 又 は これ が 併 科 さ れ る(21条1項 柱 書 〉。

3そ の 他 の 処 罰 規 定

不 正 競 争 防 止 法 は、 営 業 秘 密 侵 害 罪 の ほ か 、 裁 判 所 の 秘 密 保 持 命 令 に違 反 し て 営 業 秘 密 を使 用 し又 は 開 示 した者 に つ い て 刑 事 罰 を科 して い る(不 正競争21条

1項10号)。 また 、 両 罰 規 定 も設 け られ て お り、 法 人 又 は人 の業 務 と して、21条 1項1号 、2号 若 し くは6号 の行 為 を行 っ た場 合 に は、 行 為 者 を 罰 す るほ か 、 当該 法 人 に対 して て3億 円 以 下 の 罰 金 が 科 せ られ る(同22条1項)。 これ ら営 業 秘 密 侵 害 罪 等 の犯 罪 は、 営業 秘 密 の性 質 を考 慮 して、 親 告 罪 とされ て い る(同21 条3項 、22条2項)。 さ らに、秘 密 保 持 命 令 につ いて は、命 令 に違 反 して 日本 国 外

に お い て 営業 秘 密 を使 用 ・開 示 す る行 為 を処 罰 す る規 定 が 設 け られ て い る(同21 条4項)。 この 国 外 犯 の 処 罰 規 定 は、 平 成17年 改 正 に よ り設 け られ た もので あ る。

な お 、 営 業 秘 密 の保 護 を強 化 す るた め に 、 営 業 秘 密 侵 害 罪 及 び 秘 密 保 持 命 令 違 反 罪 につ い て 、 懲 役 刑 の上 限 を10年 、 罰 金 刑 の上 限 を1000万 円 に 引 き上 げ る

と と も に、 法 人 重 課 につ い て3億 円 以 下 の 罰 金 に 引 き上 げ る こ と と した の は、

平 成18年 改 正 に よ る もの で あ る。

IVむ す び に

営業秘 密 の保護 に係 る法 的措 置 につ いて は、近年 の相 次 ぐ法改 正等 に よ り、

か な り強化 され た。政 府 の知 的財 産推 進 計画 において も、営 業秘 密 の保 護 を強 化 すべ きで あ る と して い る。営業 秘 密侵 害訴訟 にお いて は、 訴訟 指揮 に よって 不必要 な秘密 の開示 を しな い ような措置(決 定)が 要 請 され るが、 当事者 間の秘 密保 持 契約 の役 割が 重視 され る。今後 は この2つ の要請 をめ ぐる実務 の展 開が 活発 に な る もの と思 われ る。

1>拙 著 『営 業 秘 密 の 法 的 保 護 』(中 央 経 済 社 、2002年)28頁 以 下 参 照 。 2)田 村 善 之 『 不 正 競 争 法 概 説 〔 第2版 〕』(有 斐 閣 、2003年)359頁

3)山 本 庸 幸 『 要 説 不 正 競 争 防 止 法 〔 第4版 〕』(発 明 協 会 、2006年)268頁

4)田 村 ・前 掲366頁 、90頁

(19)

営業秘密の侵害 に対す る法的措置 109

5)谷 口 知 平=甲 斐 道 太 郎 編 『新 版 注 釈 民 法(18)』(有 斐 閣 、1999年)600頁 〔 小 野 昌 延 執 筆 〕

6)経 済 産 業 省 知 的 財 産 政 策 室 『逐 条 解 説 不 正 競 争 防 止 法 〔 平 成16・17年 改 正 版 〕』'126頁 7)経 済 産 業 省 知 的 財 産 政 策 室 『逐 条 解 説 不 正 競 争 防 止 法 〔 平 成15年 改 正 版 〕』104頁 8>経 産 省 ・前i渇7)104頁

9)三 木 浩 一 「 特 許 権 侵 害 訴 訟 に お け る 当 事 者 の 情 報 収 集 手 段 の 拡 充 」(ジ ュ リ ス トll62号, 1999年)57‑58頁 。

10)小 松 一 雄 『不 正 競 業 法 の 実 務 』(新 日 本 法 規 出 版 、2005年)87頁

Il)高 橋 宏 志 『重 点 広 義 民 事 訴 訟 法(下)〔 補 訂 版 〕』(有 斐 閣 、2006年)151頁 。

12)三 宅 省 三 ほ か 編 集 代 表 『 注 解 民 事 訴 訟 法(2)』(青 林 書 院 、2000年)262頁[森 脇 純 夫], 佐 上 善 和 「 秘 密 保 護 と訴 訟 記 録 の 閲 覧 の 制 限 」 竹 下 守 夫e今 井 功 編 『講 座 ・新 民 事 訴 訟 法

(1)』(弘 文 堂 、1998年)339頁

13)森 脇 純 夫 「 秘 密 保 護 の た め の 訴 訟 記 録 の 閲 覧 等 の 制 限 」 三 宅 省 三 ほ か 編 『 新 民 事 訴 訟 法 大 系(1)』(青 林 書 院 、1997年)253頁

14)森 脇 ・前 掲13)276頁

15)高 部 眞 規 子 「 知 的 財 産 権 訴 訟 に お け る秘 密 保 護 手 続 の 現 状 と課 題 」(ジ ュ リ ス ト1317号) 191頁

16)高 部 ・前 掲15)1317号191頁 、

17)経 産 省 ・前 掲6)166頁 18>経 産 省 ・前 掲6)163頁

(本学法学部教授)

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