• 検索結果がありません。

坂 本 幹 雄

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "坂 本 幹 雄"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

65

書 評

RogerE.Backhouse InterpretingMacroeconomics

ExplorationsintheHist・ ・ノacroeconomzcThought

Routledge,1995,VIII‑{‑241p.

坂 本 幹 雄

MikioSAKAMOTO

T

本 書 は4部12章(う ち新 稿 が5章 分)か ら構…

成 され て い る が 、ま ず は も っ と大 き く2っ の 部 分 に 分 け る こ とが で き る。 前 半4章 ま で は 経 済 思 想 史 の 方 法 論 を 論 じて い る。 後 半 は 著 者 ロ ジ ャ ー ・E・ バ ッ ク ハ ウ ス の 採 用 す る ア プ ロー チ を 実 際 に ケ イ ン ズ を起 点 とす る マ ク

ロ 経 済 思 想 史 に 適 用 した 諸 章 か ら な る 。 著 者 は 相 対 主 義 と 構 成 主 義 の 両 者 を 批 判 し、歴 史 は 多 様 な 目的 の た め に 多 様 な 方 法 で 書 か れ ね ば な ら な い と い う多 元 主 義 ・折 衷 主 義 の ア プ ロ ー チ を 表 明 して い る。 第1部 「ヒ ス トリ オ グ ラ フ ィー 」 の 第2章 で は 、 経 済 学 史 に お い て 断 続 性 は あ る が そ れ を 誇 張 して は な らな い と して ダ ス グ プ タ の 『経 済 理 論 の エ ポ ッ ク ス 』(1985)の 極 端 な 相 対 主 義 を 退

け る。

第3章 ・第4章 で は 科 学 社 会 学 や 文 芸 批 評 の 影 響 を受 け た 最 近 の 相 対 主 義 と して ワイ ン

トラ ウプ の 経 済 学 史 へ の ア プ ロー チ を取 り上

げ て い る。 著 者 は ワイ ン トラ ウ プ の 『動 学 安 定 化 』(1991)に お い て 表 明 され た 合 理 的 構 成 を し りぞ け て 歴 史 的 感 性 だ け を 重 視 す る よ

うな こ と に な る歴 史 的 構 成 主 義 ・文 化 史 に 立 脚 す る ア プ ロ ー チ を 批 判 し て い る。

著 者 は ワ イ ン トラ ウプ の 経 済 学 を ヴ ィ トゲ ン シ ュ タ イ ン の 言 語 ゲ ー ム に 還 元 して これ を 経 済 思 想 史 に 適 用 す る 立 揚 と 見 な し 、 ま た ロ ー テ ィー の ドク ソ グ ラ フ ィー 批 判 も ウ イッ グ 史 観(ハ チ ス ン 、 シ ュ ンペ ー タ ー 、 ブ ロ ー グ等 の 立 場)批 判 の 立 場 に お い て 同 類 と して 批 判 して い る。 著 者 に よれ ば 、 ワ イ ン トラ ウ プ のthickhistory(マ ク ロ ス キ ー)はthick だ が 一 次 元 で あ り、説 得 と交 渉 以 外 に 探 究 課 題 は な く真 理 と進 歩 の 問 題 の 出 番 は な い 。 ホ イ ッ グ性 は 避 け られ る も の で は な く 、解 釈 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー 論 に 基 づ く 歴 史 記 述 、thick historyで あ っ て も 特 定 の 哲 学 的 立 場 を 反 映 せ ざ る を 得 な い の で あ る。 基 準 の放 棄 は 評 価 の 放 棄 で あ っ て 、 ホ イ ツグ 史 の 立 場 に 批 判 的 な ロー テ ィー=ワ イ ン トラ ウプ の ア プ ロー チ

(2)

66 季刊 論 集 Vol.XXVII,No.1・2

は 、 経 済 学 に お け る 学 史 の 批 判 的 役 割 を放 棄 す る とい う点 か らひ じ ょ うに 保 守 的 で あ る と い う。

II

著 者 は 旧 来 の 伝 統 的 ・多 元 主 義 的 な ア プ ロー チ に 加 え て 、 ま さに 多 元 主 義 で あ る か ら近 年 の 新 しい 方 法 を 両 立 可 能 とみ て 積 極 的 に採 用 して い る。 科 学 哲 学 の 方 法 論 と限 定 は加 え る も の の ラ カ トシ ュ のMSRPを マ ク ロ経 済 学 の 展 開 に積 極 的 に 適 用 す る。 さ らに マ ク ロ ス キ ー を 中 心 とす る レ ト リ ック 研 究 の 成 果 も採 用 し フ リー ドマ ン の 方 法 論 等 を 論 じて い る。

著 者 は ま ず 主 と して 現 代 理 論 の 立 場 か ら分 析 す る と い う伝 統 的 な ア プ ロ ー チ に 則 っ て 、 第2部 ケ イ ン ズ 以 前 の マ ク ロ経 済 学 」 で ホ ブ ソ ン(第5章)、 ウ ォ ー カ ー(第6章)、 ミ ッ チ ェ ル(第7章)、J.M.ク ラ ー ク(第7章)の 4人 を 取 り上 げ 、 か れ ら は ケ イ ン ズ に 比 べ て 何 が 欠 け て い た の か とい う視 点 か ら分 析 して い る。

ホ ブ ソ ン は 、過 少 消 費 説 の 信 条 に お い て ケ イ ン ズ に つ な が る け れ ど も 、工S.ミ ル の よ う な 古 典 派 の 概 念 的 フ レー ム ワ ー ク に則 って お

り、 結 局 、 貨 幣 理 論 に お い て フ ロー と ス トッ ク との 区 別 が な く、保 蔵 の意 義 が 理 解 で き な か っ た。 過 少 消 費 説 とい っ て も 投 資 と貯 蓄 の 区別 が で き な か っ た 。 ホ ブ ソ ン は ケ イ ン ズ で は な くハ ロ ッ ド=ド ー マ ー の 長 期 停 滞 論 の 先 駆 者 と して 位 置 づ け られ て い る。

ウ ォ ー カ ー は 需 要 不 足 よ り も そ れ に 伴 う 生 産 水 準 の 低 さ を 強 調 した 点 で ボ ブ ソ ン と は 異 な る 。 ケ イ ン ズ の 「ア ニ マ ル ・ス ピ リ ッ ツ 」 に 相 当 す る も の に よ っ て 「ハ ー ド ・タ イ ム ス 」 か らの 脱 出 を説 い た。 ウォ ー カ ー の 問 題 は 協 調 の 失 敗 と い う こ と で も あ っ た 。 しか し ウ ォ ー カ ー の フ レー ム ワ ー ク は ヒ ュ0ム

カ ンテ ィ ヨ ンの そ れ と似 て お りケ イ ン ジ ア ン で は な か っ た 。

ケ イ ンズ とア メ リカ 制 度 学 派 の ミ ッチ ェル 、 J。M.ク ラー ク は 不 確 実 性 概 念 を 重 視 した が

理 論 的 フ レー ム ワー ク が 異 な る。

第3部 「方 法 論 とマ ク ロ経 済 学 」 は マ ク ロ 経 済 思 想 史 へ の 方 法 論 の ア プ ロー チ を適 用 す

る。 第8章 は科 学 哲 学 の 方 法 論 の 自覚 の な い (innocent)マ ク ロ経 済 学 の 状 態 を(1)ル ー カ ス の い わ ゆ る 「フ リー ・パ ラ メ ー タ ー 」(極 大 化 行 動 の 根 拠 の な い パ ラ メ ー タ ー)の 積 極 的 な 排 除 、(2)ケ イ ン ジ ア ン 対 マ ネ タ リス ト 論 争 の タ ー ム で 記 述 して い る。

第9章 は マ ク ロ 経 済 学 史 の 主 要 な 方 法 論 的 評 価 基 準 と して ア ・プ リオ リズ ム 、 素 朴 な 反 証 主 義 、 お よ び ラ カ トシ ュ のMSRPの3 っ を あ げ 、 ケ イ ン ズ 革 命 か らニ ュ ー ・ク ラ シ

カ ル ・マ ク ロエ コ ノ ミ ク ス に 至 る ま で の 半 世 紀 に及 ぶ マ ク ロ経 済 学 史 を概 観 し、 現 在 の と こ ろ は 、 ラ カ トシ ュ のMSRPを ケ イ ン ズ 経 済 学 の 変 化 を も っ と も うま く説 明 で き る も の と して 支 持 す る。 そ し て と りわ け新 奇 な 事 実 の 予 測 に 成 功 した 点e理 論 的 ・経 験 的進 歩 が 評 価 基 準 と な る 点 が 重 要 で あ る。

そ して 第10章 で マ ク ロ経 済 学 の ネ オ ・ワ ル ラ シ ア ン ・リサ ー チ ・プ ロ グ ラ ム と して こ れ を試 み る。 こ の ア プ ロ ー チ は フ リー ・パ ラ メ ー タ ー 追 放 ス トー リー と も多 く の 共 通 点 が あ る とい う。 ケ イ ン ジ ア ン 対 マ ネ タ リス トあ る い は ケ イ ン ジ ア ン対 ニ ュ ー ・ク ラ シ カ ル ・ マ ク ロエ コ ノ ミ ク ス の よ うな リサ ー チ ・プ ロ

グ ラ ム の 分 け 方 で は 最 適 化 行 動 ・極 大 化 行 動 とい う両 者 に共 通 の 要 素 を 見 落 と し て しま う と い う。

こ の ア プ ロ ー チ の 問 題 点 の ひ とっ は 、 ブ リ ー ドマ ン が 漏 れ て しま う点 で あ る 。 そ こ で 第4部 「レ ト リ ッ ク と マ ク ロ 経 済 学 」 と して 第11章 で マ ク ロ ス キ ー を 中 心 とす る レ

(3)

June1998書 評RogerE.BackhouseInterpretingMacroeconomics 67

ト リ ック 研 究 の 成 果 を 援 用 しな が ら フ リー ド マ ン の 方 法 論 を 別 個 に 論 じて い る。 そ して ブ

リー ドマ ン を 道 具 主 義 者 や 反 証 主 義 者 で は な くデ ュ ー イ ア ン ・プ ラ グ マ テ ィ ス トの 異 端 経 済 学 者 と結 論 づ け て い る。

第12章 は ム ー ス と レイ ヨ ン フ ー プ ッ ドの レ ト リ ッ ク分 析 に よ る 比 較 論 で あ る。 両 者 の 盛 衰 の 違 い は マ ク ロス キ ー の レ トリ ック 分 析 で は 解 明 で き な い と 主 張 し て い る 。 著 者 は あ る 経 済 学 者 の 著 作 を 理 解 す る た め に レ ト リ ック 分 析 の 意 義 を認 め る も の の 、 そ れ は ヒ ン ト以 上 の も の で は な く、方 法 論 的 解 釈 上 の チ ェッ ク で あ る と の 立 場 を と る。 経 済 学 者 自 身 の 表 明 した 方 法 論 ・レ トリ ッ ク ・実 践 の3 っ か ら考 え る 必 要 が あ る とい う。 そ して レ ト

リ ック と実 践 の2つ を 混 同 し な い よ うに と注 意 を 促 して い る。

III

著者の多元主義か らは知識 と歴史の多面性 ・ 複 雑 さに対 して謙 虚 な態度 で アプ ローチす

る姿勢が窺 える。それが近年 の相対主義の成 果を認 めつつ もその行き過 ぎを厳 しくただ し ている、 とい う本書の基調 となっているのだ ろ う。

ラ カ トシ ュ のSRP支 持 は 本 書 の 際 立 っ た 特 徴 で あ る。 た だ し(マ ク ロ)経 済 学 史 に お け る主 要 な 流 れ を と りあ げ て そ の 全 面 展 開 が な され て い る わ け で は な く、 あ くま で もマ ク ロ経 済 思 想 史 に お け る ネ オ ・ワル ラ シ ア ン ・ リサ ー チ ・プ ロ グ ラ ム に 限 定 され て い る。 そ の 他 のRPと の オ ー バ ー ラ ップ が 気 に な る (現 に そ う指 摘 も して い る)が 、他 のRPの 析 は 当 面 、 本 書 で は 対 象 外 と さ れ て い る。

著 者 は 多 元 主 義 の 立 場 に 立 っ て 、 現 代 マ ク ロ経 済 思 想 史 に 関 して は と りわ け 方 法 論 の 観 点 か ら の ア プ ロー チ を 有 効 と 見 て そ の 重 要 性 と役 割 を強 調 して い る。 しか し こ の 多 元 主 義 が 旧 来 の 伝 統 的 ア プ ロー チ を 含 む か ら とい っ て 、経 済 学 史 家 が こ れ で 安 心 と方 法 論 を気 に せ ず 自分 の 研 究 に 専 念 で き る 、 とい うこ と を 許 す も の で は な か ろ う。

最 後 に こ の 多 元 主 義 の 課 題 は 何 だ ろ うか 。 著 者 は 「thicknessと 一 般 化 と の 間 の 適 切 な バ ラ ン ス 」 を熟 慮 し本 書 を 著 した の だ ろ う。

は た して そ の バ ラ ン ス を と る基 準 は 何 だ ろ う か 。 著 者 は 「こ の バ ラ ン ス の性 質 は 考 慮 され

る 特 定 の 問 題 に よ っ て 決 定 され る」 と い う。

こ の 点 が ひ じ ょ うに 重 要 な ポ イ ン トに な る の で は な か ろ うか 。

(脱 稿 目1996年12月30日) (提 出 日1997年6月6日)

参照

関連したドキュメント

“Breuil-M´ezard conjecture and modularity lifting for potentially semistable deformations after

○○でございます。私どもはもともと工場協会という形で活動していたのですけれども、要

Abstract: About 2,900 residential land of Kumamoto City, received a severe damage by liquefaction of 

Key words: Kumamoto earthquake, retaining wall, residential land damage, judgment workers. 1.は じ

本判決が不合理だとした事実関係の︱つに原因となった暴行を裏づける診断書ないし患部写真の欠落がある︒この

[r]

その認定を覆するに足りる蓋然性のある証拠」(要旨、いわゆる白鳥決定、最決昭五 0•