Kobe University Repository : Kernel
Title
中国の鉄道事業分野における規制改革と競争政
策(1)(Regulatory Reform and Competition Policy in the
Chinese Railway Industry (1))
Author(s)
施, 海淵
Citation
六甲台論集. 法学政治学篇,61(1・2):113-138
Issue date
2015-03
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81008777
初めに
中国経済は現在、急速なギアチェンジや痛みを伴う転換、従来の刺激策の消化のプロセス をたどっている。2014 年第 3 四半期のデータからは、中国経済が巨大な下方圧力にさらされ ながらも、合理的な範囲での動きを保っていることがわかる。成長率の落ち着いた「新たな 常態」(1)はリスクを解消しつつ強化されている。中国経済は2014年下半期、7.5%の成長目標 を保つことができるのか。構造改革はどのような困難に直面しているのか。 このような背景の下では、中国鉄道・高速鉄道の飛躍的発展は中国経済の持続的な発展の 起爆剤になるのか、また、鉄道事業分野における構造改革・規制改革はこれからの成長をど (1) 2014 年 12 月 9 日から 11 日にかけて開催された中央経済政策会議において、新常態(ニューノーマ ル)を認識し、新常態に適応し、新常態を引率することが、現在および今後の一定期間における中 国経済発展の重要な客観的法則(ロジック)であると提起された。李克強総理(中共中央政治局常 務委員)は 2015 年 4 ∼ 6 日に広東省深セン市及び広州市を視察した時、「現在、中国経済の発展は新 常態に入り、多くの新たな試練に直面している。経済を合理的範囲内に保つには、確固不動として 改革開放を推し進め、構造的改革によって安定成長と構造調整のバランスを取ることを重視し、改 革の質を高め、発展をより調和のとれたものにし、中高速の経済成長の維持を後押しする必要がある」 と指摘した。 すなわち、2015 年は中国が改革を全面的に深化させる上での節目の年であることを示唆した。経 済が新常態(ニューノーマル)に移行したことを新常態の下での経済成長とは、成長率 8.5 ∼ 11.5 % の高度成長から 6.5 ∼ 8.5 %の中くらいの成長へ移行することを意味し、こうした調整の過程で、中 国経済に崖っぷちに硬着陸するような事態は出現しないとみられる。経済自身が下振れ周期と構造 調整の痛みの時期にある中、2015 年の第 1 四半期(1-3 月)および第 2 四半期(4-6 月)の国内総生産 (GDP)成長率は 7 %を下回る可能性が高いが、第 3 四半期(7-9 月)は安定的に回復上昇して、通年 で7%前後の成長率を維持することである。中国の鉄道事業分野における
規制改革と競争政策(1)
施 海 淵
のように支えていくのかは目が離せない。 中国の鉄道は現在、乗客数、貨物輸送量、貨物取扱量、換算輸送トンキロ(貨物と旅客の 総計値)が世界 1 位となった。鉄道重点プロジェクトの竣工・開通により、世界初の高冷地 帯の高速鉄道であるハルビン−大連高速鉄道、北京−石家荘、石家庄−武漢区間の旅客専用 線が開通した。世界で運行距離が最も長い高速鉄道である北京−広州高速鉄道が全面開通し、 合肥−蚌埠高速鉄道、武漢−宜昌高速鉄道等の重点プロジェクトも順調に開通した。鉄道テ クノロジーイノベーションの水準が大幅に向上し、高速鉄道、高原鉄道、重荷重輸送等の分 野で、一連のテクノロジーイノベーション成果を獲得した。中国の鉄道の全体的な技術水準 は、世界の先進国の仲間入りを果たした。 第 12 次五カ年計画期間(2011 − 2015 年)の残り 1 年間において、2013 年の全国鉄道固定 資産投資として 6500 億元が拠出され、このうちインフラ投資が 5200 億元となり、5200 キロ 以上が拡張された。 中国の鉄道事業分野における規制改革の起爆剤として、旧鉄道部の撤廃による政(政府部 門の管理)経(政府部門の経営)分離の動きである。「さらば、鉄道部!」。中国国内外のウェ ブサイト上で 2013 年 3 月 10 日の時点で、この言葉が広まっている。2013 年 3 月 14 日の全国 人民代表大会(全人代=国会)で解体が決まった中国鉄道部(鉄道省)は、2013 年 3 月 17 日には、これまで正門に掲げられていた「中華人民共和国鉄道部」のプレートが外され、「中 国鉄道総公司」として新たなスタートを切った。2 兆 6 千億元(約 39 億円)の債務や関連の 無形資産、知的財産権などはすべて、同社が引き継ぐことになっている。制度の改正が実施 されても公益性は保つとされているが、鉄道チケットは市場の状況に合わせて調整するとい う。旧債務と遺産、公益と市場をどのようにバランスを保ちながら前進するのか、同社はス タートから難題が山積みである。 新しい国務院機構改革・機能転換計画は多くの機関の調整・整理統合に関わる内容であっ た。中でも最も注目されたのが鉄道部(鉄道省)がどうなるかである。中華人民共和国と同 い年の「鉄道のボス」が間もなく歴史の舞台から姿を消すことは、今回の改革がより力強く、 より広範囲かつ深いレベルで国務院機構の機能転換を加速するものであることを意味してい る。 歴史的に見ると、新中国の成立から 60 年余りの間、何度も調整はあったものの、鉄道部 は常に中国人の交通と緊密に関わり、国家建設に大きな貢献を果たしてきた。近年も中国の 鉄道は著しく発展し、「スカイウェイ」「高速鉄道」といったセールスポイントも得た。だが 改革の一層の深化に伴い、鉄道部の「政経癒着」問題が顕在化し、利益の固定化が改革の障 害となってきていた。政経分離と機能転換によって政府機構がより効率的に社会に貢献でき るようにすることから、今回の機構改革で鉄道部を解体する根本的な目的であると期待され ている。鉄道部以外にも、今回の改革で国務院は再度「スリム化」する。省庁統廃合によっ
てクリーンで効率的なサービス型政府の誕生が促されると信じるに足る理由がある。 旧鉄道部が経営危機状態に陥り、そのまま推移すれば近い将来に鉄道が十分な役割を果た し得ないおそれがあったことに加えて、国家財政の観点からも、もはやほおっておけない状 態になりつつあったことから、鉄道事業分野における規制改革というドラスティックな改革 が断行されたのである。 旧鉄道部の解体により発足した鉄道総公司も大きな国営企業へと発展し、結局は行政の市 場独占状態が続くのであろうか。自主経営権を持つため、鉄道チケットの値上げに踏み切る のであろうか。政府から企業への変化は、看板を変えるだけというほど簡単な問題ではない。 政府が干渉したいという強い衝動を克服する一方、同社が現代企業としての制度を確立し市 場に健全な競争が生まれる状況を作り出せるか、それが新の改革への道である。 鉄道事業分野においては、鉄道市場では参入に際して上下分離方式(2)を採用することは望 まれる(3)。同方式はEUの共通鉄道政策においても導入されているが、列車運行事業者は最終 サービスの供給においてボトルネックとなる線路施設を所有する事業者に対して線路使用料 (2) もともと上下分離という用語は、下部構造(インフラ)の整備・保有・運営にかかわる意思決定 主体と、上部構造の経営にかかわる意思決定主体との分離を意味したと思われる。しかし最近の議 論では、下部構造自体について建設あるいは保有と管理運営を分離する意味にも用いられている。「上 下分離」という言葉は、本質を表した用語ではない。欧州ではseparation of infrastructure and oper-ationとされており、「官民の機能連携(functiona1 partnership)」、「保有と運行の会計分離」等の用 語が望ましい。なお、上下分離政策は、鉄道ばかりでなく、鉄道とともに伝統的な費用逓減産業の 一角をなしてきた電力や電気通信などの諸産業でも進展中である。サービス事業(産出や供給)と インフラ事業を分離することにより、前者を伝統的な自然独占規制政策の束縛から解放し、参入や 価格の自由化を通じてこれを競争的産業に育てようとする一連の施策は世界の大きな流れであると いってよい。 (3) 鉄道事業の上下分離方式に関して考察した既往の文献として、例えば堀雅通(1996)「上下分離」 とオープンアクセス−競争政策の観点から「前編、後編」『運輸と経済』、Vol56, No.5、pp.79 − 87、 斎藤(2000)「鉄道の上下分離に関する諸問題」『三田商学研究』、Vol43, No.3,pp.39−52、山口(2001) 「鉄道の上下分離制度の実態的研究(前編、後編)」『運輸と経済』、Vol61, No.1、pp.63 − 72、No.2、
を支払う方式が採られている(4)。1970年代以降注目されてきた鉄道の上下分離(5)政策は、鉄 道の特性からみて、普遍性の高い鉄道政策として評価され、導入が進められている。上下分 離は、線路と輸送の事業主体を分離することで、結果的に鉄道事業の責任領域を明確化する ことに貢献する。たとえば、上下分離は、鉄道事業の企業的領域と公共的領域を区分し、「私」 と「公」の役割分担を明確にする。このような「公設民営」タイプの上下分離は、「私」的 部分における競争の促進と、「公」的介入の範囲の明示化に寄与する(6)。 このように、いずれの上下分離も輸送主体側の固定費用負担を軽減し、経営リスクを回避 することで、鉄道輸送の存続・維持を図ることができる。こうした上下分離は、一方で鉄道 事業に内在する公共的領域(公共性、公的規制・公的助成を要する部門)と企業的領域(独 立採算原則、企業性・市場原理を重視する部門)を分離、明確化することで、「公」と「私」 (4) EUの鉄道輸送市場においては、1991 年の指令 440 号で国際複合輸送または国際グループの行う国 際輸送サービスに関して、鉄道インフラヘのオープンアクセスが明示されている。例えば中村(1999) 「21 世紀に向けたEU交通政策の新たな挑戦」『運輸と経済』、Vol59, No.8、pp.21 − 32 を参照。そし て 2001 年の指令では、2003 年 3 月以降に免許を保有する全ての鉄道事業者がネットワークの 90%以 上の区間へのアクセスを可能とすることが示されており、2008 年までに全区間へのアクセスが可能 となる予定である。 (5) 政策論的にいえば、上下分離は、交通調整論、総合交通体系(イコールフッティング)、鉄道の公 設民営論の流れを汲むものであり、これら政策論の根拠は、鉄道事業の費用構造上の特性である平 均費用逓減(劣加法性)の性質にある。平均費用逓減は、需要が減少局面に至ると採算問題を生じ させるからである。上下分離の経済学的根拠は、1)平均費用逓減による市場の失敗の回避、2)利 用可能性等の外部経済効果への対処、からなる。加えて、足の確保などの公平性に基づく根拠も提 示される。上下分離の具体論においては、下部部分である線路費用の負担が問題となる。効率上の 観点からは、ラムゼイ価格体系、二部料金、multi-part料金などが推奨される。しかしながら、現実 的には、費用負担問題として公平性の検討や列車運行事業の採算性、路線使用料に対する公的規制 との整合性などの課題が避けられない。藤井彌太郎[監修]中条 潮・太田和博[2001]『自由化時 代の交通政策』(東京大学出版会)p.155を参照。 (6) 例えば、京都高速鉄道や関西高速鉄道といった都市高速鉄道は、鉄道線路施設の建設を公共投資 で行い、輸送事業を民間セクターとした上下分離方式である。整備新幹線は、線路施設の建設を日 本鉄道建設公団が行い、JR旅客会社が受益の範囲内の貸付料を支払って輸送事業を行う上下分離方 式である。また整備新幹線の開業に伴い、並行在来線の経営を継承した青森県の青い森鉄道も上下 分離方式で運営されている。 日本の鉄道の上下分離については、以下のような機能と役割を指摘できるであろう。まず、都市 高速鉄道の場合は、巨額で長期の懐妊期間を要する鉄道線路施設の建設と保有を分離することで、 輸送主体側の資本費負担を軽減し、経営リスクを回避するとともに、輸送主体を民営化することで 経営効率の向上を図るという機能がある。また輸送需要の乏しい地方鉄道の上下分離については、 鉄道線路の維持・管理費を輸送主体から分離させることで、経営の安定化に資する役割がある。む ろん線路主体に対しては公的な支援が必要とされる。
の役割分担を明示している。 日本においても、従来、鉄道事業においては免許・認可制による参入規制が行われてきた が、事業免許が付与される際の基準の一つが「供給される輸送力が需要を上回らないこと」 であり、「需給調整」は運輸行政の最も重要かつ根源的な役割の一つであった。しかしながら、 昨今の規制緩和の潮流の中で、旧運輸省は、平成8年12月に自由競争の促進により交通運輸 の分野における経済活動の一層の効率化・活性化を図るため、その根幹をなしてきた需給調 整規制を原則として廃止するという運輸行政の転換に踏み切った。 また、運賃規制については上限価格制導入を柱とする新しい運賃制度が採用されるに至っ ている。こうした規制緩和の動きは、法的な視点からは、いわゆる業法から独占禁止法へと いう形でとらえることができよう。鉄道事業においても規制緩和の進展に伴い相当広範にわ たって独占禁止法が適用される可能性があり、かつての業界慣習や実務先例にとらわれてい ると、思いがけない落とし穴(独占禁止法違反)に足をとられる危険性がある。 本稿においては、中国の鉄道事業の規制改革と民営化及び独占禁止法の視点からこれらの 問題について日本の経験を参照しながら考察を加えることとしたい。 第一節 中国の鉄道事業分野における現況と規制改革の必要性 2013 年末、中国高速鉄道の運行区間総延長距離は 1 万キロを超えていた。気づかぬうちに 中国はドイツ、フランス、日本などの先進国を追い越し、世界一の高速鉄道大国になってい る。毎日、全国を行き来する高速列車は 2500 便余りにも達し、高速鉄道に乗って「地上で 飛んでいる」旅客の数も 300 万人も超えている。注目すべきことは経済発展に対する高速鉄 道のけん引力であって、早くも高速鉄道開通前の建設期間中に現れていた(7)。高速鉄道が開 通した後、経済へのけん引力が一層直接かつ、多様になる。北京・天津都市間鉄道の開通に よって両市が手を携え「同一都市圏」になり、わずか一年の間、北京市のGDP が 10.1 %増 で、天津市が16.2%増えた。高速鉄道の急速な発展は、経済の飛躍的前進を引っ張り、鉄道 沿線の中小都市にも発展促進効果をもたらし、中小都市の急速な台頭に寄与している(8)。昨 (7) 専門家の研究では、鉄道建設投資と関連産業の間に 1 対 10 のけん引効果があると示している。鉄 道投資が 1 万元投入するごとにセメント 2 トン、鋼材 0.32 トンが必要だ。この試算に基づくと、2014 年鉄道インフラ整備 8000 億元の投資にはセメント 1.6 億トン、鋼材 2500 万トンを消費することにな り、800万人の雇用を創出することができる。 (8) 山東省曲阜市は孔子の生まれ故郷である。高速鉄道の開通によって、曲阜市のホテル業界の新増 ベット数が 30 %に上り、全市ホテル入室率が 5 %以上も増えた。曲阜市の楊鳳東市長は、「高速鉄道 は交通線だけではなく、経済線、旅行線、民生線でもあり、地方にとっては生命線とも言える。小 都市や町の経済の羽ばたきに翼を与えてくれた」と感慨深く話した。
年から中国の高速鉄道は東部から中西部へ拡大し、全国をカバーする巨大な高速鉄道網が形 成しつつある。数々の高速鉄道が辺鄙な山を越え、荒涼たる砂漠を通っていき、それによっ て、中西部の都市が沿岸部の大都市と連動し、東部、中部、西部の共振による経済の共同発 展が実現できた(9)。高速鉄道は変革であり、社会の流れを変えるものでもある。2011年、中 国の都市化率は 51.27 %に達しており、都市部人口が初めて農村人口を超えた。2020 年には 都市化水準が60%を突破すると見込まれている。同じく2020年、『中長期鉄道網計画』によ れば、中国では時速 200 キロを超える高速鉄道の運行総延長距離は 5 万キロに達することに なる。 中国の高速鉄道の総延長は既に1万4620キロに達している。中国は高速鉄道の総延長が世 界で最長で、運行速度が最速の国となった。これは中国の高速鉄道技術の飛躍的な進歩によ るものである。 中国鉄路総公司は 2014 年 1 月 9 日に、創設以来で初となる政策会議を開いた。党組織書記 で総経理の盛光祖氏は、「2014 年は国の鉄道に 6300 億元(約 10 兆 9000 億円)の固定資産を 投じ、総延長を6600キロ以上追加する。乗客輸送量は前年比10%増の22億7000万人、貨物 輸送量は 2 %増の 32 億 8000 万トンを予定している。国の鉄道およびその持株会社は、8.1 % 増の6542億元(約11兆3000億円)の輸送収入を実現する」と語っている。 2013 年の中国の鉄道は 6638 億元(約 11 兆 5000 億円)の固定資産投資を完了し、総延長が 5586 キロ追加され 10 万キロを突破した(うち高速鉄道の総延長は 1 万キロを突破)。乗客輸 送量は前年比 10.7 %増の 20 億 7500 万人に達し、ピーク時は 1 日で 1000 万人を突破した。通 年の貨物輸送量は 32 億 1600 万トンに達した。通年にわたり、責任の重大な鉄道交通事故が 発生しなかった。 盛氏は、「確定された鉄道建設計画によると、2014 年と来年の 2 年間で、中国の鉄道は 1 兆 2000 億元の固定資産投資を完了し、第 13 次五カ年計画期間(2016 − 2020 年)も高水準を 維持することになる。2014 年の鉄道建設は中西部を重点とし、同時に鉄道投融資体制の改 革を推進し、社会資本に対する、都市間鉄道・都市内鉄道・資源開発性鉄道・支線鉄道の所 有権と経営権の開放を加速する。地方政府および社会企業の株投資・資産再編・フランチャ イズ制度などによる、鉄道建設への投資もしくは鉄道経営・開発への参与を支持する」と発 (9) 龍里県は貴陽市の近くにある人口わずか 22 万人の小さな町だ。数年前、広州等からのビジネス 調査があったものの、結局プロジェクトが周辺他県に回された。理由は交通が不便だからだという。 だが、今はすっかり様変わりした。建設中の貴陽―広州高速鉄道は龍里を通るというニュースが伝 わると、龍里は一晩のうちに「金の鳳凰」に変身し、ほぼ二日おきに広東省からのビジネス調査団 が市場調査にやってきている。「我々のハードルは今高いよ。一部のプロジェクトには興味がないの だ」と地元役人が強気に話している。
言した。 2014 年 11 月 25 日に、中国製の電力牽引駆動システムとネットワークコントロールシステ ムを搭載した中国北車(中国CNRコーポレーション·リミテッド)の高速列車「CRH5A」は、 「5000 キロ本線試験」の最終段階に入った。同列車は完全な自主化を実現した両システムを 搭載した初の高速列車で、中国の高速鉄道コア技術が「国産化」から「自主化」への移行を 実現しつつあることを示した(10)。 また地方政府は鉄道建設に対する投資に意欲的である。国家は現在、内需拡大政策を大々 的に推進している。内需には、消費需要と投資需要が含まれる。後者の多くの部分を、鉄道 建設に向ける必要がある。地方投融資プラットフォーム等の重要サイクルを調整した場合、 鉄道建設プロジェクトの投資加速を促すであろう。 国家の中長期鉄道網建設計画によると、鉄道建設は今後数年、一定の投資規模と増加率を 維持する。鉄道固定資産投資額が 2013 年に 6500 億元(約 9 兆 1000 億円)に達するが、これ は合理的なことであろう。中国は2008年以降、国際金融危機に対応するため4兆元規模の投 資計画を実施し、その多くが鉄道に投じられた。その頃より、鉄道固定資産投資が増加して いる。その後、鉄道運行中の一連の事故により、投資規模がやや減少した。 しかし鉄道建設は長期スパンで見ると、依然として巨大な投資空間を持つ。まず西部大開 発が継続されており、東部地区の産業が中西部地区に移転している。中西部地区の資源・商 品を輸送するためには、鉄道建設を加速する必要がある。鉄道という輸送方式は、道路など その他の方式よりも省エネであり、コストパフォーマンスが高い。水運はより低コスト・省 エネであるが、輸送時間がかかり交通網を形成できないため、鉄道の比較優位が際立ってい る。 国家の中長期鉄道網建設計画によると、鉄道建設は今後数年、一定の投資規模と増加率を 維持する。鉄道建設にあまりの巨額が投じられていると疑問視する声があるが、実際にはそ うではない。中国の鉄道建設の実情を見ると、過度の建設などではない。鉄道は公益性の高 い事業であり、前進を維持する必要がある。中国の鉄道は多いのではなく、まだ不足してい (10)中国北車(中国CNRコーポレーション·リミテッド)の関係者は、「両システムは高速列車の最 も重要な部分だ」と述べた。電力牽引駆動システムは「高速鉄道の心臓」、列車の動力源で、高速鉄 道の高性能かつ快適な運行を左右する。ネットワークコントロールシステムは「高速鉄道の脳」で、 列車の一挙手一投足を決定・指示する。この 2 大コア技術の自主開発は、高速列車製造メーカーの 革新的な創造力を示す根本的な指標となる。中国南車株洲電力機車研究所は 11 月 4 日、3.0 版「高速 鉄道の動力」、高速列車用永久磁石同期牽引システムが国家鉄道検測・試験センターの地上試験・審 査に合格し、間もなく高速列車に搭載されることになったと発表した。これは中国がドイツ、日本、 フランスなどの国に続き、同技術を把握した世界でも少数の国になったことを意味する。
るのである。 鉄道の負債問題も注目されているが、中国の鉄道債券は国債の格付けと同様で、大きな問 題は存在しないという意見も存在している。すなわち、この問題では、一部の現象にとらわ れるのではなく、大局を見据える必要がある。例えば青蔵鉄道は開通後に赤字を計上し続け ているが、その重要な意義、チベット経済・社会にもたらす大きな効果・利益と比べれば、 取るに足らないものである。 一方、2013年3月18日にまで中国鉄道を管理する旧鉄道部の「政経癒着」問題が顕在化し、 利益の固定化が改革の障害となってきていた。政経分離と機能転換によって政府機構がより 効率的に社会に貢献できるようにすることは競争的秩序を保ち、消費者利益の促進、中国経 済の持続的発展にとって必要不可欠であることは言うまでもない。 19世紀に形成された鉄道中心の交通(陸上)システムにもっとも適合性の高い交通政策(自 然独占型規制体系)が、長い歳月と試行錯誤の末にようやく完成の域に達したのは 20 世紀 初頭のことであった(11)。しかし、歴史の皮肉のたとえどおり、これとちょうど時期を同じく して、欧米諸国を中心に自動車交通や商業航空輸送がいよいよ初期成長期を迎えようとして いた。そして交通市場の競争化現象は、20 世紀後半の約半世紀をかけて、自然独占型規制 体系を旧式化させ、解体に追い込んでいくのである。鉄道が交通政策の主役を務めた時代は 去り、1980年代以降の先進諸国では交通産業に対する規制緩和が広く実施されるようになっ た。 鉄道の歴史はおよそ 190 年になるが、この間、鉄道経営を取り巻く市場環境、市場構造は 大きく変わった。とりわけ第二次大戦後のモータリゼーションの進展や、航空輸送の発達は、 鉄道産業を斜陽化させ、自然独占を理由とした旧来の鉄道事業規制を形骸化させた。こうし た鉄道を取り巻く経営環境の変化は、国ごとにいく分かの相違はあるにしても、一般的な傾 向として共通している。 鉄道事業はネットワーク産業である。鉄道が提供するサービスは、鉄道線路というネット ワーク構造を形成するハード・インフラストラクチャーを介して生産される。このネット ワーク・インフラストラクチャーを経由することで、サービスの生産に関わる規模の経済性、 範囲の経済性が実現される。こうしたことが、鉄道事業をして自然独占的ないし寡占的な産 業組織を形成する主因となっていた。 こうしたハード・ネットワークを有する事業は、固定費用ないし共通費用の存在が大きい ためネットワーク効果が顕著にみられる。またネットワークの利用者は誰もがこれを公平に (11)米国の 1920 年交通法、英国の 1921 年鉄道法、1920 年のドイツ鉄道国有化、1906 年の日本の鉄道国 有化、などがその事例である。
利用できるべきである、という考え方がある。いわゆるユニバーサル・サービスである。こ うした概念は、鉄道のようなネットワーク産業において強く主張され、社会的内部補助を正 当化する理由付けともなっている。 全国ネットの鉄道旅客輸送は、多くの国において、長い間、国有鉄道という公業によって 提供されてきた。鉄道ネットワークの整備はいずれの国において重要な政策課題となり、政 府所管の下で強い市場規制を受けてきた。全国一元的な旅客輸送サービスの提供を義務付け られた国有鉄道は、まさにユニバーサル・サービスのインフラストラクチャー整備機関とい えた。 確かに国有鉄道という組織は、いずれの国においても、その経済発展の段階においては、 鉄道ネットワークの形成、ユニバーサル・サービスの提供に大きな役割を果たした。しかし ながら、ネットワークの整備が完了し、さらに鉄道に代わって競争的な交通機関が登場した 今日においても、ネットワーク効果のみに依存した社会的内部補助の正当化は困難となって いる。鉄道事業は市場において一見独占的な地位を保っているようにみえるが、一部の都市 鉄道を除けば、もはや独占力を行使できない状況に置かれている。 第 18 回党大会は行政体制改革の深化を明確に指示した。この中国共産党中央の計画に基 づき、踏み込んだ調査研究と広範な意見聴取を経て、比較論証を重ねた結果まとめられた今 回の改革計画は「新指導部はさらに大きな政治的勇気と知恵を出して、様々な障害に向き合 い、改革の難題を解決する」との明確なメッセージを再び発した。 理論的にはいかなる制度設計または機構の設立も、その時代の問題を解決するためのもの であり、合理性と必然性を備えている。また、こうした制度は時代の変化に伴い発展・変化 するのが必然だ。ただ、それぞれの歴史的境目において既存の制度が自ら進んで「引退す る」ことはなく、その反対に常に残存する力を揮おうとするのが常だ。例えば漢代の官吏任 用における推挙科目「孝廉」も、最初は貴族政治の独占を突破して、政府と社会の双方向性 実現のルートとなったが、次第に新たな門閥新貴族を生み出し、社会の活力を長期間阻害し た。システムに活力を与えるはずの制度が次第に機能しなくなってもなお存続し、自己改革 の力もなく、システムの健全な運用に影響を与えたのである。これは一種の「制度的惰性」 と見なすことができる。こうした惰性は中国にも西側にもある。欧州の福祉国家の制度設計 は長い間称賛されてきたが、欧州債務危機に直面して、高福祉のもたらす多くの問題を直視 し、改革を急がなければならなくなった。 このため、ある制度がより根本的な目的に効果的に資することがもはやできなくなった時、 改革の気運が生じ、まず無形の構想、後に有形の措置によって、制度の惰性を叩くことにな る。中国共産党第 11 期中央委員会第 3 回全体会議以来、国務院機構はすでに 6 回の改革を経 て、社会主義市場経済体制に基本的に適応した組織メカニズムと機能システムを形成した。 だが、現行の行政体制には新たな情勢や課題の要請に適応できていない部分が依然多く存在
する。国務院部門の機能の位置づけ、機構設置、職責分業、運用メカニズムなどにはまだ問 題が少なからず存在する。こうした問題は体制改革の深化、制度・メカニズムの整備、特に 機能転換を通じて解決する必要がある。 今回の改革は重大で社会的関心の高い困難な部分に関わるものであり、経済・社会発展に 計り知れない影響を与えるのは必至だ。改革の重点は市場や社会に権限を移し、ミクロへの 干渉を減らすと同時に、マクロ管理を改善・強化し、事後監督・管理を厳格化することにあ る。これは制度の惰性の突破を図ることを意味している。多くの機関にとっては、長年来形 成してきた既得権益があり、権限を手放すことは利益を譲ることを意味する。いわゆる「改 革とは自分の肉を切ること」との比喩は、改革の難関攻略の難しさをイメージ的に代弁して いる。 改革はたゆまぬ深化のプロセスであり、一挙に達成することは不可能であるし、立ち止 まって前に進まないわけにもいかない。第18回党大会以来、作風転換の8つの規定から行政 体制改革と機能転換加速までの数々の措置に、民衆は中央が改革の難関において、しっかり とした力強い手段をより多く繰り出すことが期待されている。 戦後における、日本、欧州、北米及び中国の都市間鉄道旅客輸送のシェアの推移をみると、 いずれの国、地域においても、鉄道輸送が自動車輸送によってそのシェアを奪われている。 当初、主として民間資本によって設立された鉄道会社は、その後、多くの国で国策的な見地 から統合化が進み、国有化、公企業化された。国有鉄道の時代、鉄道は陸上交通の独占的地 位を誇ったが、自動車の登場により、急速にその市場を失い、経営は悪化した。このような 状況に対して、当時の交通政策は、鉄道網の整備とその独占的な行動規制に重点を置いてい た。やがてモータリゼーションの進展から市場がさらに競争的になると、経営難に陥った鉄 道を競争から保護することが鉄道政策の主眼となった。このとき、鉄道の独占を容認、つま り参入規制を課し、内部(相互)補助を認容することで、 鉄道事業の存続を図るという、参 入規制内部補助型の交通市場政策が採用された。 19 世紀後半から 20 世紀初頭にかけて鉄道事業分野における自然独占の解明が進み、それ がやがて交通産業に対する伝統的な経済的規制体系、いわゆる “参入規制・内部補助” 型規 制体系を先進各国にもたらしたように、20 世紀後半から先進各国で本格化した交通市場競 争は、交通調整政策の失敗過程を踏んだものの、今度は伝統的な規制体系の根底的な見直し、 規制緩和論を各国にもたらした。前者の過程が交通(とくに鉄道)企業の国有化や都市公共 輸送の公的一元化を伴ったように、後者の過程が、これらの民間還元に止まらず、新たな分 野(とくに交通インフラ事業)を加えた交通産業の民営化政策を伴ったのは歴史の必然に類 する現象であるといっていい。とはいえ、いかに競争化が進展し、自然独占が崩壊したといっ ても、交通産業内の自然独占要因までが排除されたわけではない。ここに交通インフラの整 備や運営に関わる諸活動と民営化政策との両立・非両立に関係する。
鉄道の競争力を強化するためには、規制改革が必要である。にもかかわらず、旧来の参入 規制・内部補助型の施策に依拠した競争制限的な交通政策、鉄道政策が継続されていた。す なわち、不採算だが社会的に必要なサービスを内部補助させるために、参入規制をして競争 を抑制する政策がとられてきたのである。その結果、鉄道の再生のためには何ら有効な手だ てが得られぬまま、各国の鉄道は未曾有の経営難に直面していった。そうした国有鉄道の経 営を維持していくためには巨額な財政援助が必要とされたが、政府の財政難からそれは不十 分、ないしは、ほとんど実行されないまま終わっていた(12)。 従来鉄道事業では、一国全体の路線網を公企業−公共企業体が独占的に保有し運営する ケースが一般的であったが、1980 年代後半以降、日本、ヨーロッパ諸国を中心として各国 で相次いで鉄道改革が進められ、今日、サービス供給主体及び制度のあり方は大きく変貌を とげつつある。鉄道改革の具体的な内容及び程度は、各国の社会・経済状態、思想、交通の 位置づけ等の違いを反映して様々であるが、何らかの形、程度で民営化あるいは商業化と いった組織形態、制度の変更とネットワークの分割(アンバンドリング)が実施されている 点で共通しており、それにより直接の目的であったか否かはともかく、各事業主体の内部効 率も改善されていると言えよう。 これらの鉄道改革がなされたのは、(1)鉄道そのものを有効に機能させるため、(2)鉄道 事業を支える国家の財政的状況の変化に対応するため、という 2 点からとらえることができ る。 第二節 日本の鉄道改革からの示唆 すでに 150 年近くの歴史を有する日本の鉄道は、蜘蛛の巣のごとく日本のすみずみまで広 がっている。その情景は列車をこの国のひとつの文化的符号とし、鉄道を愛する多くの「鉄 道ファン」まで生み出した。日本国有鉄道(現JR)はその歴史の中で一連の苦境を経た後、 民営化改革の道を歩まざるを得なくなった。民営化により、イメージやサービスは大幅に改 善されたが、一方で安全面の問題も浮き彫りとなった。2005 年 4 月 25 日の列車脱線事故で は600人余りが死傷した。その苦しみを教訓とすべく、JR西日本サイトのトップページには 現在も、事故を忘れないという再出発への想いがつづられている。 日本の鉄道史は民間鉄道を起源とする。19 世紀末の大規模な私営鉄道建設時代を経て、 日本の鉄道は一定の規模に形作られた。1940 年頃、日本の鉄道は国有化が完了、半世紀を 費やした。国有化後20年も経たずして、日本の鉄道に一連の問題が出現した。 日本の国土交通省の資料によると、1960 年代、自動車・航空機が輸送業に打撃を与え始 (12)井手秀樹「2004」『規制と競争のネットワーク産業』(勁草書房)pp.115 - 119 を参照。
めた。第二次大戦後、数十万人の鉄道労働者が海外から帰国、国有鉄道システム(以下「国 鉄」)に雇用された。彼らの退職、そして年金問題が国鉄にとって巨大な財政の闇となった。 40万人の雇用者を抱える巨大な一元組織は、精緻な業務振り分けが不可能で、関係は混乱し、 業務意識も薄らいだ。1964 年から 1986 年まで国鉄は赤字が続き、とりわけ 80 年代以降、毎 年の赤字は1兆円を超えた。 こうした中で行われた人員整理と運賃値上げが、国鉄をさらなる悪循環に陥れた。1969 年から1985年に至るまで、日本政府は4回にわたり国鉄財政再建計画を打ち出した。しかし 最終的にはいずれも実現には至らず、国鉄破産を防ぐため、1987 年に国鉄民営化改革が行 われた。 国鉄は民営化に当たり、「日本国有鉄道改革法」など一連の法案を基に、1987 年 4 月 1 日 から、巨大な国鉄は所在地ごとに7社に分割された。同時に、日本政府は「国鉄清算事業団」 を設立、政府が国鉄の財産・債務の清算、職員の職場確保の責任を負った。 国鉄は旅客会社 6 社(JR 北海道、JR 東日本、JR 東海、JR 西日本、JR 四国、JR 九州)、貨 物会社 1 社(JR 貨物)に分割された。「JR」は「Japan Railways」の略称であるが、いずれ の企業も「JR」の頭文字がつくが、相互に線路を延伸したり、共通の乗車券制度などを有 する関係を除けば実質的には独立した法人であり、それぞれ「個性」を有している。各社の ロゴマークは異なる色の「JR」レタリングである。しかし肝要なのは、7 社の運命が同じで はないことであった。 2006 年までに、JR 東日本、JR 東海、JR 西日本は完全な私営鉄道企業として上場を果たし た。だが他の 4 社は多くの路線が地理的条件などの理由で、いまなお国の「保護下」に置か れている。 国鉄の分割民営化後、37 兆 1 千億円の国鉄の「長期債務」も分割された。うち 22 兆 5 千億 円は「清算事業団」が引き継ぎ、11 兆 6 千億円はほぼすべて、JR 東日本、JR 東海、JR 西日 本に振り分けられた。にもかかわらず、この 3 社は民営化以降黒字を保ち続けており、「JR の奇跡」と呼ばれている。 昭和 20 年(1945 年)生まれの人が、旧国鉄職員のイメージについて横暴、傲慢、話が 通じない、と 3 つの言葉で総括している。分割民営化以降、JR のイメージは上昇を続けた。 JR 東海の 1988 年に始まったクリスマスをテーマにした CM の数々は、いまなお日本の大学 で成功例として取り上げられている。CM は人々の故郷を想ういとしさと遠距離恋愛の切な さを見事に表現した。キャッチコピーは「帰ってくるあなたが最高のプレゼント」であった。 JR 東日本、JR 西日本の駅構内には託児所が設けられ、JR 東日本は東京駅など十数駅で、 Wi-Fi 無料開放を始めた。JR の路線は日本全国に分布し、各都市圏を結んでいる。もっとも 日本には大手私鉄など民間鉄道企業がそれぞれの強みを備え(大手私鉄は全国 16 社)、地元 に根ざし、JRの路線が伸びていない地域をカバーしている。
日本の名門校の多くには自主的なサークル「鉄道研究会」がある。早稲田大学鉄道研究会 の河原慶・幹事長は「研究会によりさらに多くの人に鉄道に興味を持ってもらい、鉄道文化 のおもしろさを感じていただけたら」と語っている。 鉄道文化体験は研究会メンバーの重要活動のひとつ。列車走行中の音の録音、列車をモ チーフにした写真撮影、鉄道模型収集などだ。彼らは鉄道会社のイベントにも参加する。 JR・私鉄をとわず、車両基地開放見学会、記念乗車券発行、特別列車運行といった多種多 様なイベントが常時開催されている。一般的にはイベント開催に積極的な企業ほど、より多 くの「ファン」が集まる。 しかし、2005 年 4 月 25 日、JR 西日本の列車 1 編成が兵庫県尼崎市で高速走行中に脱線、 運転士を含む 107 人が死亡、500 人以上が重軽傷を負った。この事故は国鉄分割民営化以降、 最も重大な事故となった。調査の結果、事故の直接の原因は運転士がブレーキ操作を誤り、 カーブで減速しなかったためである。 日本のマスコミは事故原因について、運転士が列車を遅延させないために減速を行わな かった、と伝えた。また、JR 西日本は正確な運行ダイヤを確保するため、柔軟性のない無 理な規定を運転士に課していた、とも指摘している。遅延の多い運転士には、「暴力的」再 教育(直接的原因と関係ないレポートや作文、就業規則の書き写しのほか、複数の管理者に 取り囲まれ、どう喝・暴言・罵声を浴びせられ、給与も減額された)を受けるというのである。 この種の再教育は国鉄時代から受け継がれてきた。日本のマスコミは事故を振り返るとき 国鉄民営化に言及する。分割民営化後にサービスのあり方、スピードが追求され続け、最も 大切な安全が軽視された、とみている。 JR 西日本は事故後、ふたたび利用客の信用を勝ち得るべく、事故の再発防止に向けた慎 重な姿勢を示し続けている。現在に至るまで、JR 西日本のサイト最上段には “再出発への 誓い” が掲げられている。 交通機関の安全以外の核心的問題は運賃である。日本の鉄道の運賃について語るとき、短 距離旅行であれば、大手私鉄はJR に比べて総体的に手ごろだ。長距離旅行ならば、JR の最 も手ごろでバックパッカーに最適な乗車券「青春18きっぷ」を語らずにはいられない。 「青春18きっぷ」は主に若者を対象としているが、実際には誰でも購入できる。毎年、春・ 夏・冬の学生の休みにあわせてのみ発売される。価格は5回(人)分で1万1500円(約750元)。 1枚でJRの6つの旅客会社の列車が1日乗り放題となる。普通列車、快速列車、宮島フェリー などが利用可能だが、新幹線や特急などの列車には乗車できない。ひとりで 5 回に分けて使 うこともでき、ゆったりと旅を楽しむ人が日本周遊をするのに持ってこいである。また最大 5 人で一緒に使うこともできる。大阪から東京まで、ひとりの片道料金はたったの約 150 元。 一般的な新幹線利用なら、片道で少なくとも1万円(約650元)は必要である。
第三節 新たな国務院機構改革計画について 2013 年 2 月 26 − 28 日に中国共産党第 18 期中央委員会第 2 回全体会議が北京で開催されて いた。主要議題は国務院機構改革計画、国家機構と全国政協の指導者の提案人選であった。 議事日程に基づき、今回の会議では「国務院機構改革・機能転換計画(草案)」のほか、 第12期全国人民代表大会第1回会議に推薦する全国政協指導者提案人選について話し合われ ていた。 国務院機構改革関連の議題は特に注目される。第 17 回党大会、特に第 17 期中央委員会第 2 回全体会議が「行政管理体制改革の深化に関する意見」を打ち出して以来、省庁統廃合を 中心とする中国の政府機構調整は、国内外に注目され続けてきた。 2008 年 3 月の国務院機構改革計画公布後、国務院は交通運輸部(交通運輸省)など 5 省庁 を新設し、国務院構成機関の数を27とした。この調整もメディアに「省庁統廃合の第1ラウ ンド」と称された。 2012 年 11 月の第 18 回党大会でも省庁統廃合が再び取り上げられ、報告では「省庁統廃合 を着実に推進し、機関の職責体系を整える」との指示が出された。 第 18 期中央委員会第 2 回全体会議でも国務院機構改革が議題になることは、第 18 回党大 会の打ち出した行政体制改革に関する重大な措置を実行に移すものであり、ほどなく開催さ れる「両会」で新ラウンドの国務院機構調整が推し進められることを意味するものでもある。 国務院の部級機構を 4 つ(うち部は 2 つ)減らすこととしている。副部級機構は増減が相 殺されて数に変化はないが、改革後、国務院弁公庁を除く省庁数は25となっている。 その主な内容として、すなわち (1)鉄道の政経分離を実行 鉄道部(鉄道省)の鉄道発展計画・政策策定の行政機能を交通運輸部(交通運輸省)に 移すとしている。また、国家鉄道局を新設し、交通運輸部の管理の下、鉄道部の他の行政 機能を担うとし、中国鉄道総公司を新設し、鉄道部の企業機能を担うとして、鉄道部は解 体することになった。 (2)国家衛生・計画出産委員会を新設 国家人口・計画出産委員会の人口発展戦略、人口発展計画および人口政策の研究・策定 機能を国家発展改革委員会に移すとしている。国家中医薬管理局は国家衛生・計画出産委 員会が管理するとし、衛生部と国家人口・計画出産委員会は解体することになった。 (3)国家食品薬品監督管理総局を新設 国務院食品安全委員会は維持し、具体的活動は国家食品薬品監督管理総局が担うとして いる。国家食品薬品監督管理局と国務院食品安全委員会弁公室は解体することになった。
(4)国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局を新設 国家ラジオ映画テレビ総局と国家新聞出版総署は解体することになった。 (5)国家海洋局を再編 国家海洋局は中国海警局の名で海洋権益維持・法執行を行い、公安部(公安省)の指導 を受けるとしている。ハイレベルの政策調整機構である国家海洋員会を新設し、具体的活 動は国家海洋局が担うことになっている。 (6)国家エネルギー局を再編 国家電力監督管理委員会の機能を国家エネルギー局に統合し、国家発展改革委員会が管 理するとしている。国家電力監督管理員会は解体することになっている。 第四節 「国務院機構改革・機能転換計画」と鉄道民営化の動き 2013 年 3 月 19 日に北京復興路 10 号の入り口で、「中華人民共和国鉄道部」(鉄道省)の看 板が外され、「中国鉄路総公司」(13)の看板に取り替えられた。2013 年 3 月 10 日に「国務院機 構改革・機能転換計画」が発表されたことを受けて、中国の鉄道部門はこれまでの歴史に別 れを告げ、新たな発展の軌道にのった。 中国鉄道総公司の成立により、元の鉄道部の公務員 903 人はいくつかのグループに分かれ、 交通運輸部や国家鉄道局、地区局などに異動となり、また地方での高速鉄道プロジェクトも 引き続き継続してゆくことになっている。 中国鉄路総公司は中国国務院の認可を経て、「中華人民共和国全民所有制工業企業法」に 基づき設立された、中央政府が管理する国有独資企業である。中国財政部が国務院を代表し 出資者の職責を担い、中国交通運輸部、中国国家鉄路局が法に基づき同社に対して業界監督 管理を行うことになっている。 この「国務院機構改革・機能転換計画」はまさにこれまでのどの行政体制改革よりも重要 な位置に据え、また、省庁統廃合の推進において揺るぎない、力強い一歩を踏み出したと言 えよう。なぜならば、今回の改革による機関の機能調整は、いずれも国の経済と国民の生活 (13)中国政府網は 2013 年 3 月 14 日にウェブサイト上で、「中国鉄路総公司設立の関連問題に関する国務 院の回答」を発表した。中国鉄路総公司の設立資本金は 1 兆 360 億元。過去の債務問題が解決される まで、国は同社の国有資産の収益を徴収しない。また鉄道改革費用を増加しないことが明らかにさ れた。
に関わる重要分野ばかりからである(14)。 まず鉄道管理の政経癒着(15)に「メスを入れる」。計画は鉄道の政経分離を行い、鉄道発展 計画・政策の策定という旧鉄道部(鉄道省)の行政機能を交通運輸部(交通運輸省)に移し、 交通運輸部が総合交通運輸システムの建設を全面的に担うとしている。今回の改革が順調に 実施されれば大衆の交通機関選択の幅が広がるうえ、航空輸送、鉄道輸送、道路輸送間のシー ムレスな接続が実現し、交通運輸システムの産業能力とサービス効率が大幅に高まると期待 されている。 旧鉄道部の関連資産・負債・人員は中国鉄路総公司に編入されることになり、旧鉄道部所 属の 18 の鉄路局(広州鉄路集団公司、青蔵鉄路公司を含む)、3 社の専門輸送公司、および その他の企業の権益は、中国鉄路総公司の国有資本とされる。 また、旧中国鉄道部は、法に基づく民間資本の鉄道分野への進出を奨励すると表明し、各 (14)また、計画出産は中国の基本国策であるが、現在の国家人口計画出産委員会の機能はすでにあい まいになっている。このため計画出産管理体制と医薬衛生体制の改革を深化するには全体的な検討 が必要となる。今回の改革計画では衛生部(衛生省)の機能、国家人口計画出産委員会の計画出産 管理・サービス機能を整理統合し、国家衛生計画出産委員会を新設する。これは統合的なリソース 配分、国の基本的薬品制度の制定と実施、計画出産の管理・サービス業務の強化と改善に資する。 食品の安全性は庶民の関心が最も高い重要な問題である。だが中国では食品の監督・管理は複数 の機関が担当しており、食品の生産、流通、消費の主管機関はばらばらで、責任がはっきりせず、 監督・管理が難しくなっている。今回の改革計画では、新設する国家食品薬品監督管理総局に管理・ 監督機能を基本的に統一する。今後、食品の安全性の問題は農業部(農業省)と国家食品薬品監督 管理総局のみが管理し、農地から出荷後ただちに統一された管理機構による全段階の管理下に入る。 計画はまた、新設する国家衛生計画出産委員会が食品の安全上のリスクに対する評価と食品安全基 準の制定を担うと定めている。これはつまり「選手」と「審判」を分けて、権力のチェック・アンド・ バランスを実現するものである。 エネルギーは人類にとって最も重要な戦略的物資である。今回の改革では副部級の行政機構であ る現在の国家エネルギー局と部級の事業機構である国家電力監管委員会の機能を整理統合し、行政 管理機構である国家エネルギー局を新設し、国家発展改革委員会の管理下に置く。これはエネルギー 発展戦略の効率的な実施、資源利用計画と産業政策の合理的な策定、エネルギー監督・管理の強化 にとって、非常に重要な意義を持つ。 (15)北京市第2中級人民法院(地裁)は2013年7月8日、収賄罪と職権濫用罪に問われた元鉄道部長(元 鉄道相)の劉志軍被告に執行猶予2年付きの死刑、政治権利の終身剥奪、全資産の没収を言い渡した。 北京市第 2 中級人民法院は審理の結果、劉被告が鄭州鉄道局武漢鉄道分局党委員会書記、分局長、 鄭州鉄道局副局長、瀋陽鉄道局局長、旧鉄道部(旧鉄道省)運輸総調度長、副部長(次官)、部長(鉄 道相)を歴任した 1986 年から 2011 年の間に職務上の立場を利用して邵力平、丁羽心ら 11 人に昇進、 工事受注、鉄道貨物運輸計画獲得などの便宜を図る見返りに、計 6460 万元余り相当の財物を不法に 受け取ったことを明らかにした。
種の投資家に対する平等な待遇を強調し、民間資本に対して特別な条件を追加しないとした。 鉄道建設はこれまで、「計画経済の砦」とされてきたが、なぜ今になり民間資本を受け入 れることになったのか。この原因について「資金不足」と指摘した。中国の鉄道改革が全体 的に遅れる中、民間資本の開放による改革推進が期待される。すなわち、民間資本の受け入 れは、現在の建設資金の逼迫によるものである。 中国国家発展改革委員会は2012年、貨物輸送を中心とする9本の鉄道の建設を許可したが、 資金面の問題により、現在に至るまでその内の 1 本も着工されていない。現在の鉄道インフ ラ建設は、2011 年末の 2000 億元超(約 2 兆 5000 億円)の融資により維持されているが、通 年の投資需要との間に大きな隔たりがあった。 全国範囲で停止されている鉄道プロジェクトは、1 万キロ以上に達している。停止されて いるプロジェクトのうち、約半数は設計時速200キロ以上の高速鉄道である。 旧中国鉄道部の計画によると、2012 年の固定資産投資は 5000 億元(約 6 兆 2500 億円)を 予定していたが、1 − 4 月に完了された固定資産投資は、前年同期比 48.3 %減の 895 億 9700 万元(約 1 兆 1200 億円)にとどまった。第 1 四半期のデータによると、中国鉄道部の負債総 額は2兆4000億元(約30兆円)、負債比率は60.62%に達した。 そして、旧中国鉄道部は 2013 年 3 月 17 日、2012 年第 1 期短期融資債券を発行し、資金 調達規模が 200 億元(約 2500 億円)に達した。資金調達説明書によると、旧中国鉄道部が 2012年末時点で獲得した銀行信用状規模は、2兆元(約25兆円)を上回った。 漢宜高速鉄道(武漢―宜昌)は、2013 年 3 月 16 日より試験運転を開始した。これは、中 国の「四縦四横」鉄道網の一本目の「横線」である滬漢蓉快速鉄道(上海―武漢―成都)が 年内に全線開通することを意味する。 同情報は、低迷期に陥っている鉄道建設にとって好材料となる。旧中国鉄道部の統計によ ると、2013年1−4月、鉄道固定資産投資は前年同期比48%減の896億元(約1兆1200億円)、 インフラ投資は54%減の717億元(約8963億円)にとどまった。 しかし業界関係者は、「鉄道投資が低迷期を脱し、投資が再び促される」と分析している。 旧中国鉄道部は 2013 年 3 月 17 日、2012 年第 1 期短期融資債券を発行し、資金調達規模が 200 億元に達した。中国鉄道部はまた資金調達説明書で、旧中国鉄道部が 2012 年末時点で獲 得した銀行信用状規模は、2 兆元(約 25 兆円)を上回ったと発表した。銀行からの融資拡大 に伴い、鉄道建設が徐々に推進されると見られる。 中国鉄路総公司 鉄道の所有権・経営権を一部開放し、地方に権限を移譲することで、地 方の鉄路局の鉄道管理・鉄道建設などの積極性を高め、安定的な操業度を維持できる。社会 に開放することで、より多くの資金源を獲得し、中国鉄路総公司の負債圧力を一定程度緩和 できる。 中国政府網が 2013 年 8 月 19 日に発表した「鉄道投融資体制の改革による鉄道建設推進の
加速に関する国務院の意見」(以下、同意見)は、鉄道投融資体制の改革を推進し、さまざ まな方式・ルートから建設資金を調達することを提起した。 同意見は、「統一計画・多元的投資・市場運営・政策補助の基本思想に基づき、鉄道発展 計画を制定し、全面的に鉄道建設市場を開放し、新たに建設される鉄道に対して分類投資建 設を実施する。地方政府と社会資本に対して、都市間鉄道・市内(郊外)鉄道・資源開発型 鉄道・鉄道支線の所有権・経営権を移譲し、社会資本の鉄道建設への投資を促す」とした。 中国国務院常務会議は 2013 年 5 月 6 日、「鉄道投融資体制改革プランを制定し、社会資本 の既存の幹線鉄道などに対する投資を促す」と提案した。上述した同意見は、5 月の会議の 内容を詳細化したものである(16)。 同意見は、鉄道投融資体制の改革と鉄道建設推進の加速は、「工業化・都市化の進展の加 速、関連産業の発展のけん引、投資の合理的な増加、交通輸送構造の改善、社会の物流コス トの削減、人々の安全な外出にとって、かけがえのない重要な働きを持つ」と明確に指摘した。 これは鉄道市場のさらなる市場化に向けた、象徴的な出来事だと言える。地方に権限を移 譲することで、地方の鉄路局の鉄道管理・鉄道建設などの積極性を高め、安定的な操業度を 維持できる。社会に開放することで、より多くの資金源を獲得し、中国鉄路総公司の負債圧 力を一定程度緩和できると期待される。 旧鉄道部の財務報告によると、昨年第 3 四半期の旧鉄道部の総資産は 4 兆 3000 億元、負債 総額は2兆6600万元(中国のGDPの約5%)に達している。 そのような動きを受けて、中国の地方政府は地方鉄道に外資・民間資本の誘致に意欲を示 している。鉄道建設に伴う資金圧力に対して、鉄道システムは単一的な融資方法による資金 源の拡大の打破を試みている。一部の地方政府は現在、鉄道のこれまでの資金調達方法を変 えようと模索している。例えば江西省は既存の債券市場融資および私募債融資の他に、海外 融資という新ルートの積極開拓を表明したほか、「江西省鉄道産業投資基金」の設立を示唆 した。業界はこの動きを、鉄道融資体制改革の一つのシグナルであると見ている。 江西省の鉄道建設は全国トップクラスの資金源を確保している。その資金調達ルートには 主に、銀行間債券市場融資、私募債融資、海外融資新ルートの模索、「江西省鉄道産業投資 基金」設立模索などが含まれる。 旧中国鉄道部は主に、鉄道建設基金、中央予算内投入、鉄道自己資金、鉄道債券、銀行貸 付・支払勘定等により資金を調達している。既存の資金調達ルートと比べ、江西省が提案し た外資誘致、「江西省鉄道産業投資基金」の設立は、新たな試みとなる。このうち鉄道建設 (16)専門家は、「中国経済の発展には、依然として鉄道の建設が欠かせない。鉄道がなければ、中国の 製鉄・石炭産業の発展に影響し、客観的に見て西部地区の高度発展を阻害する」と指摘した。
の外資誘致について、旧鉄道部はこれまで余り取り上げておらず、鉄道建設の外資誘致はほ んの一部に過ぎなかった。ただ、江西省は外資誘致の具体的な方法について、関連細則を発 表することに至っていない(17)。 第五節 省庁統廃合改革前回改革との共通点と相違点 今回の改革計画と以前の第6回国務院機構改革には2つの共通点がある。 第 1 に、前進の歩調が大体同じで、「等速運動」を保っている。両改革ともに国務院の部 級機構は 4 つ減少、うち構成部門(諸外国の内閣機構に相当)は 2 つ減少となる。前回の改 革で国務院の設置する構成部門の数は国務院弁公庁を除く 27 となった。今回の改革では 25 になった。 第 2 に、共に公共サービス部門の整理統合と強化を重点とし、各方面から改革の呼び声が 高く、かつ条件が比較的整った機構を改革対象に選んでいる。例えば前回は人事部(人事省) と労働社会保障部(労働社会保障省)を統合して人的資源社会保障部(人的資源社会保障省) を新設。交通部(交通省)、中国民用航空総局の機能、および建設部(建設省)の都市旅客 運輸指導機能を整理統合して、交通運輸部(交通運輸省)を新設して、政府の人材公共サー ビスと交通公共サービスの全体的能力を高めた。今回の機構改革は公共交通サービス、公共 衛生サービス、公共文化サービスをめぐり行われるもので、旧鉄道部(鉄道省)の行政管理 (17)北京交通大学経済管理学院の趙堅教授は、「鉄道の外資誘致は、世界銀行資本の注入が有力視され ている。外資誘致が実際にどれほどの規模になるかはさておき、地方の外資誘致は都市間鉄道から 着手される可能性が高い。例えば江西省の外資誘致の過程を見ると、外資が投資回収率に対して高 い条件を設定しているため、地方は外資に対して土地開発権を付与し、さらなる優遇措置を講じる ことにより誘致を促すと見られる」と予想した。 外資誘致とは異なり、江西省はまた「江西省鉄道産業投資基金」の設立を模索しているが、これ は鉄道業界で頻繁に取り上げられている。中国旧鉄道部は 2012 年 5 月、民間資本誘致のために発表 した「民間資本の鉄道投資の奨励・指導に関する実施意見」の中で、鉄道産業投資基金の設立の模 索という構想を提案していた。 趙教授は同方式について、「産業投資基金は設立後、長期的な融資が可能なプラットフォームとな る。基金の設立は、鉄道建設が社会資本をより多く導入し、効果的に民間資本を導入することを示 す」と分析した。中国国際経済交流センター研究部副研究員の王天竜氏は、「現在の国際市場を見る と、大量の遊休資本が投資先を模索している。これを背景とし、外資誘致は一つのチャンスと言える。 民間資本の進出もまた、鉄道建設に活力を注ぎ込むだろう」と語った。 ところが業界関係者は、外資にせよ民間資本にせよ、市場資本が鉄道業界への進出を望むかは疑 問だと指摘した。趙教授は、「鉄道システムは現在、石炭輸送鉄道を除く路線のほぼすべてが赤字状 態である。この状態が改善されなければ、外資誘致は一方的な願望に終わってしまう」と警鐘を鳴 らした。
機能の一部を交通部に移し、一部を交通部が管理する新設の国家鉄道局に移すほか、衛生・ 計画出産、食品・薬品の監督・管理機能を整理統合し、新聞出版管理機構、ラジオ・映画・ テレビ管理機構も整理統合する。 しかし、今回の国務院機構改革には異なる点、革新的な点もある。 1 つ目の異なる点は、今回はより大胆な機構の簡素化と整理統合が行われ、関連する省庁 の下の「司」「局」がさらに多く、より大胆な機能の整理統合が行われ、「国務院の異なる機 関がばらばらに担当している同じまたは似た機能を最大限度整理統合する」方針を打ち出し ていることだ。これは国務院機構改革が深いレベルで進行しつつあることを物語っている。 2 つ目の異なる点は前回は省庁統廃合を模索し、どうにか第一歩を踏み出したが、今回は 明確な方向に向かって前進し、かつ整理統合式の改革を通じて、大括りの交通、社会、衛生 構造をほぼ形成し、大括りの文化、エネルギー、市場監督・管理において重大な進展を遂げ ることだ。大括りの省庁の輪郭が次第に明らかになり、形を整えてきたと言えよう。
第二章 中国の鉄道事業分野における規制改革と運賃について
第一節 旧中国鉄道部の解体に伴う問題点について 国務院は発表した「中国鉄路総公司設立の関連問題に関する国務院の回答」によると、中 国鉄路総公司の設立資本金は 1 兆 360 億元であり、過去の債務問題が解決されるまで、国は 同社の国有資産の収益を徴収しないとしている。また、鉄道改革費用を増加しないことが明 らかにされた。 中国鉄路総公司は中国国務院の認可を経て、「中華人民共和国全民所有制工業企業法」に 基づき設立され、中央政府が管理する国有独資企業となる。中国財政部が国務院を代表し出 資者の職責を担い、中国交通運輸部、中国国家鉄路局が法に基づき同社に対して業界監督管 理を行うとしている。 旧鉄道部の関連資産・負債・人員は中国鉄路総公司に編入されることになり、旧鉄道部所 属の 18 の鉄路局(広州鉄路集団公司、青蔵鉄路公司を含む)、3 社の専門輸送公司、および その他の企業の権益は、中国鉄路総公司の国有資本とされている。 鉄路公益性運輸補助メカニズムの構築が、同返答によって明らかにされた。鉄道が負担す る学生・負傷した軍人・農産物などの公益性輸送業務、および青藏線や南疆線などの関連す る公益性鉄道の経営赤字に対しては、鉄道公益性輸送補助メカニズムの構築、財政補助など の手段を研究し、適度な補助を提供するとしている。 中国鉄路総公司は設立後、国家の旧鉄道部に対する税優遇措置を受けるとし、国務院・関 連部門・地方政府が鉄道を対象としていた優遇政策も継続され、鉄道建設債券を引き続き政 府支援債券としている。また、企業の設立・再編に関わる各種税金については、国家の規定に基づき徴収し、鉄道改革費用を増加しないとしている。 旧鉄道部の解体は、政府と企業の分離を実施するための必然的な条件である。政府と企業 が結びつくメカニズムの弊害により、市場が主動的な役割を果たさず、鉄道資源の合理的な 配置が損なわれていた。また行政機能が強い力を握っていたことにより、公平な競争環境の 形成が妨げられていた。機能分担の乱れ、曖昧な権限により、企業が負担すべき経営職責を 政府が負担することが往々にしてあり、経営リスクが増加していた。これらの構造的な弊害 を解消するため、政府と企業の分離という大手術が必要となった。 旧鉄道部の解体は、政府枠組みレベルで政府・企業分離の障壁を取り払っただけに過ぎな い。政府・企業の分離は、看板を取り払うだけの簡単なことではない。これは政府が過度な 干渉の誘惑に勝ち管理を緩めることができるか、企業が経営方針の転換を図り、現代企業制 度を構築し、望ましい市場競争環境を築けるかに関わる問題である。この意義から論じれば、 看板の取り換えは終わりではなく、始まりを示すものであると言えよう。 鉄路公益性運輸補助メカニズムの構築が、明らかにされたことによると、鉄道が負担する 学生・負傷した軍人・農産物などの公益性輸送業務、および青藏線や南疆線(18)などの関連 する公益性鉄道の経営赤字に対しては、鉄道公益性輸送補助メカニズムの構築、財政補助な どの手段を研究し、適度な補助を提供している。 中国鉄路総公司は設立後、国家の旧鉄道部に対する税優遇措置を受ける。国務院・関連部 門・地方政府が鉄道を対象としていた優遇政策も継続され、鉄道建設債券を引き続き政府支 援債券とするが、企業の設立・再編に関わる各種税金については、国家の規定に基づき徴収 し、鉄道改革費用を増加しないとしている。 これは歴史的な一歩であり、挑戦に満ちた一歩でもあると言えよう。旧鉄道部の解体は、 政府と企業の分離を実施するための必然的な条件である。政府と企業が結びつくメカニズム の弊害により、市場が主動的な役割を果たさず、鉄道資源の合理的な配置が損なわれてい た。また行政機能が強い力を握っていたことにより、公平な競争環境の形成が妨げられてい た。機能分担の乱れ、曖昧な権限により、企業が負担すべき経営職責を政府が負担すること が往々にしてあり、経営リスクが増加していた。これらの構造的な弊害を解消するため、政 府と企業の分離という大手術が必要となった。 旧鉄道部の解体は、政府枠組みレベルで政府・企業分離の障壁を取り払っただけに過ぎな い。政府・企業の分離は、看板を取り払うだけの簡単なことではない。これは政府が過度な (18)青蔵鉄道、“日の道”だと誉められ、西部大開発の戦略のシンボル的な工事を実施しているので、 中国の新世紀の四大工事の中の一つである。それの東は青海西寧市から、南はチベット拉薩市まで、 全長は 1956 キロメートルになっている。南疆の鉄道は 1974 年に施工したもので、1999 年末開通して 運営している。北はトルファンから、南のカシュガルまで、全長の約1500キロメートルである。