平面グラフの空間埋め込みの結び目解消数と交点数 の関係について
秋本 裕太
(早稲田大学
)∗1(谷山公規氏(早稲田大学教育学部)
との共同研究)
この報告は
2019年
12月
18日(水)から
21日(土)まで日本大学文理学部百周年記 念館国際会議場にて開催された研究集会「結び目の数理
II」における表題の講演内容を まとめたものです。(その後の発展や証明の細部等は
[1]にて発表予定です) 世話人の茂 手木公彦先生、市原一裕先生に厚く御礼申し上げます。
1. 結び目の不変量対の実現問題
(1)
結び目の不変量の実現問題
K:
結び目全体の集合
,X :集合
,α :K →X :結び目の不変量 であるときの
Imfを決 定するという問題は古くから研究されています.
例
1.1. f = ∆ :K →Z[t±1] :アレキサンダー多項式 に対して
Im∆ = {p(t)∈Z[t±1]| p(t−1) = p(t), p(1) = 1}(2)
結び目の不変量対の実現問題
K:
結び目全体の集合
, X, Y :集合
, α: K → X, β : K → Y :結び目の不変量 である とき
,φ:= (α, β) :K →X×Y, (α, β)(K) = (α(K), β(K))に対して
Imφ⊂X×Yを 決定するという問題を考えます
.定理
1.2. c:K →Z≧0 :結び目の交点数
, u:K →Z≧0 :結び目解消数
φ= (c, u) :K →Z2≧0, PK ⊂ K :素な結び目全体
(1)Imφ={(0,0)} ∪ {(x, y)∈Z2>0 | y≤ 1
2(x−1)} (2)φ(PK) = φ(K)\ {(6,2)}
Imφ
を表した図が下図になります
.∗1169-8050 新宿区西早稲田1-6-1早稲田大学 大学院教育学研究科 e-mail:[email protected]
また
u(K) = 12(c(K)−1)
を満たす結び目
Kは以下の定理で決定されています.
定理
1.3. (Taniyama)[2] K :結び目
u(K) = 12(c(K)−1)⇔K : (2, p)-torus knot
2. 空間グラフの結び目解消数と交点数の実現問題
先述した結び目に関する結び目解消数
uと交点数
cの対の実現問題を空間グラフに一般 化を考えていきます. 絡み目では起きない空間グラフ特有の性質から簡単に一般化で きないことを報告します
.(
以下
SE(G) := {f|f :G→R3 :埋め込み
},f ∈SE(G)とします
) knotted projectionと
trivializable graph絡み目
Lの任意のダイアグラムは交点の上下を適当に入れ替えることで
trivial linkのダイアグラムが得られることと
, trivial linkの鏡像は
trivial linkであることから
u(L)≤ 12c(L)
が成立します. しかし一般の
planar graphの空間埋め込みではダイアグ ラムの交点の上下を入れ替えるだけではほどくことができないダイアグラムが存在し ます
.例
2.1.上図の立方体グラフの空間埋め込みのダイアグラムは交点の上下をどのように入れ 替えてもほどくことができません
.交点の上下をどのように与えてもほどけていないダ イアグラムが得られるはめ込みを
knotted projectionといいます
. knotted projectionを持たない
planar graphを
trivializable graphといいます. [3]
non trivializable graph
の結び目解消数と交点数
u(f) :f(G)
が
Gの
R2× {0}への埋め込み
tの像へ移るために必要な交点の上下入れ替 えの最小回数,
c(f) := min{c( ˜f)|f˜(G) :f(G)のダイアグラム
}と定義します.
例
2.1の空間埋め込み
f3に対し
c(f3) = 3となり
, u(f3)を考えると
, f3(P3)は立方体グ ラフの対面の
cycleの埋め込みがそれぞれ
Hopf linkとなっていて, 次のページの図のよ うに
1回の交差交換で多くて
2つの
Hopf linkしかほどくことができないため
u(f3)>1となります
.f3(P3)
は
2回でほどくことができるため,
u(f3) = 2であることが分かり, 一般の
planar graph Gと
f ∈SE(G)に対して
u(f)≤ 12c(f)
は成立しないことが分かります
.3. trivializable graph の結び目解消数と交点数の関係
trivializable graph
に関しては
knotted projectionを持たないため絡み目と同様に以下 の定理が得られます
.定理
3.1. ∀G: trivializable graph,∀f ∈SE(G), u(f)≤ 1 2c(f) u(f) = 12c(f)
を満たす空間埋め込み
fの特徴付け
結び目解消数が交点数の半分となる結び目は自明な結び目のみで, 絡み目については以 下の結果があります
.定理
3.2. (Taniyama)[2] L:µ成分絡み目に対して次の
(1),(2)は同値
(1)u(L) = 12c(L)
(2)L
は以下をすべて満たすダイアグラムを持つ
•
各ループは単純閉曲線
•
各
2つのループは交代射影図
ここでは
trivializable graph Gに対して
u(f) = 12c(f)
を満たす空間埋め込み
f ∈SE(G)の特徴を決定することを考えます
.まず
u(f) = 12c(f)
を満たす自明でない空間埋め込み
fを持つ
planar graphは以下の 定理によって決定されます
.定理
3.3. G:planar graphに対し
,以下の
(1),(2)は同値
. (1)u(f) = 12c(f)
を満たす
Gの自明でない空間埋め込み
fが存在する
(2)Gは
disjoint cycleの組を持つ
(1) ⇒ (2)
の対偶は
[4]において決定されている
disjoint cycleの組を持たない
graphの 空間埋め込み
fが
u(f)< 12c(f)
であることを示すことで得られます
.定理
3.2の類推として
, G = H :Handcuff graphの空間埋め込み
fが
u(f) = 1 2c(f)を満たすときの特徴を決定しました
.定理
3.4. H :Handcuff graph ,f ∈SE(H)に対して
,次の
(1),(2)は同値
(1)u(f) = 12c(f)
(2)f(H)
は以下をすべて満たすダイアグラムを持つ
•
各ループは単純閉曲線
• 2
つのループは交代射影図
•
すべての交点はループ同士
以下の図は
Handcuff graphとその空間埋め込みであり
, u(f) = 12c(f)
を満たしてい る例となっています
.定理
3.4の証明の概略
(1)⇒(2)
の対偶を示すにあたって以下の補題を用います
.補題
3.5. G: trivializable graph,f ∈SE(G), ˜f(G) :f(G)のダイアグラム
f(G)˜上である辺が自己交差を持つとき
, u( ˜f)≤ 12(c( ˜f)−1)
補題
3.5の証明
自己交差を除き半分以下の交点の上下を入れ替えることでほどくことができます
.補題
3.5より
,ダイアグラムの各ループは単純閉曲線とします
.このとき下図のよう に
1つのループが他の成分の上, もしくは下となるように交差交換するとほどくことが できるため
,ループ以外の成分に交点があるダイアグラム
f(H)˜は
u( ˜f) < 12c( ˜f)
を満 たします
.最後に
2つのループが交代射影図でないダイアグラム
f(H)˜が
u( ˜f) < 12c( ˜f)
を満たす ことを示します
. ˜f(H)には交点の上下が交代になっていない
2交点が存在します
.その
2交点を除き片方の成分がもう片方の成分の上
,もしくは下になるように交差交換 すると
,元のダイアグラムの各ループが単純閉曲線であること
,交点は全てループ同士 であることからループに
diskが貼れる空間埋め込みのダイアグラムが出現します
.よっ て
u( ˜f)≤ 12(c( ˜f)−2)
を満たします
.参考文献
[1] Y. Akimoto and K. Taniyama, in preparation.
[2] K. Taniyama, Unknotting numbers of diagrams of a given nontrivial knot are un- bounded, J. Knot Theory Ramifications 18(2009), 1049-1063.
[3] K. Taniyama, Knotted projections of planar graphs, Proc. Amer. Math. Soc. 123(1995), 3575-3579.
[4] K. Taniyama, Cobordism, homotopy and homology of graphs in R3, Topology, 33(1994), 509-523.