熊本駅周辺地域整備におけるデザインマネジメントの 実践的試行と理論的展開
2011 年 9 月
熊本大学大学院自然科学研究科
増 山 晃 太
熊本駅周辺地域整備におけるデザインマネジメントの 実践的試行と理論的展開
2011 年 9 月
熊本大学大学院自然科学研究科
増 山 晃 太
i
目 次
第 1 章 序 論 1
1-1 研究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1-2 研究の立脚・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-3 研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1-4 研究の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
【参考文献】(第 1 章)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第 2 章 熊本駅辺地域整備の概要 6
2-1 周辺地域の歴史的変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2-1-1 鉄道開通以前の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2-1-2 鉄道開通以後の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2-2 整備方針と基本計画の策定と整備概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 2-2-1 整備方針の策定の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 2-2-2 基本計画の策定の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2-2-3 整備に関わる主な組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2-2-4 整備概要と主要な事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2-3 近年の駅周辺整備の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 2-3-1 都市への影響の評価指標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2-3-2 他事例の影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 2-3-3 熊本駅の影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 2-3-4 都市への影響評価のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
【参考文献】 (第 2 章)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
第 3 章 既往研究と関連概念の整理 30
3-1 都市デザインの実践と理論について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
3-1-1 既往研究の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
3-1-2 横浜市の取り組みを対象とした研究の整理・・・・・・・・・・・・・30
3-1-3 MA方式を対象とした研究の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
3-1-4 大規模開発事業を対象とした研究の整理・・・・・・・・・・・・・・・32
3-1-5 熊本駅の取り組みと本論の位置づけ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
3-2 熊本駅周辺地域整備における分析の視点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
3-2-1 都市空間デザイン会議の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
ii
3-2-2 都市デザインの調整の仕組みについて・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3-2-3 マネジメントを対象とした研究の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・37 3-3 都市のデザインマネジメントの理論について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 3-3-1 都市のデザインマネジメントについて・・・・・・・・・・・・・・・・・39 3-3-2 デザインマネジメントの空間的な分析指標・・・・・・・・・・・・・39 3-3-3 デザインマネジメントの時間的な分析指標・・・・・・・・・・・・・40
【参考文献】(第 3 章)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
第 4 章 デザインマネジメントの実践的試行 45
4-1 都市空間デザイン会議の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 4-1-1 都市空間デザイン会議の設置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 4-1-2 WGや本会議の議事録の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 4-1-3 議事内容の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 4-2 都市空間デザインガイドの分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 4-2-1 デザインガイドのデザイン戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 4-2-2 デザインガイドの内部コーディネーション・・・・・・・・・・・・・55 4-2-3 デザインガイドの外部マネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 4-3 3つの景のデザイン戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 4-3-1 3つの景の整備概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 4-3-2 「出会の景」のデザイン戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 4-3-3 「木立の景」のデザイン戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 4-3-4 「水辺の景」のデザイン戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 4-4 「出会の景」のデザインマネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 4-4-1 新幹線駅舎、西口駅広のデザインマネジメント・・・・・・・・・70 4-4-2 東口駅広、交流広場のデザインマネジメント・・・・・・・・・・・74 4-4-3 「出会の景」の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 4-5 「木立の景」のデザインマネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80 4-5-1 熊本駅城山線のデザインマネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・80 4-5-2 「木立の景」の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86 4-6 「水辺の景」のデザインマネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87 4-6-1 坪井川水辺広場のデザインマネジメント・・・・・・・・・・・・・・・87 4-6-2 「水辺の景」の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93
【参考文献】 (第 4 章)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
iii
第 5 章 デザインマネジメントの理論的展開 96
5-1 実践的試行の空間的な整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96 5-1-1 デザイン戦略の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96 5-1-2 内部コーディネーションの考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98 5-1-3 外部マネジメントの考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99 5-2 実践的試行の時間的な整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 5-2-1 デザイン調整の分類図の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 5-2-2 フィードフォワード・展開型の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・106
第 6 章 結 論 108
6-1 本論文のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 6-2 今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110
謝 辞
第 1 章
序 論
1 第 1 章 序 論
1-1 研究の背景
熊本駅周辺地域整備は、人々の暮らしがあり、脈々と受け継がれる土地の履歴を持った 既成市街地の一部を整備区域としている。レオン・クリエの言葉を借りれば「都市の中の 都市
1)」と呼ぶことのできる熊本駅周辺地域の再編は、 「アーバンデザイン」や「都市デザ イン」という分類に入る。 「土地利用や交通計画などの機能的側面から都市を計画する都市 計画(シティプランニング)に対し、建築群、街路、広場、緑地などの都市空間構成要素 の形態に主眼をおいて都市を計画、設計すること
2)」と定義づけられるアーバンデザインは、
しばしば生き物のように捉えられる都市を対象としているため、単体のデザインとは異な るデザインの思考やプロセスを要する。いくつかの異なる点が指摘されている中で、特に 着目すべきは、多様な主体が存在することであり、主体間の調整がデザインの成果に大き く影響することである。 「建築物をデザインすることなしに、都市をデザインする
3)」とも 言われるように、目標とする都市像へ導いていくガイドラインやルールおよびシステムの 運用とともに、具体的なプロジェクトにおいて都市空間構成要素を一体的に整備していか なければならない。
複数の構成要素を一体的に整備するという思想は近代以前から続くものであるが、いわ ゆる現代のアーバンデザインは 1950 年代から 60 年代にかけてアメリカで深刻化した都市 荒廃に端を発する。日本では、60 年代に「都市設計」という言葉でも言い表され、定義そ のものを議題としながら、建築家や都市計画家によって都市設計の領域や職域への言及が 行われていた
4),5)。 70 年代に入ると、神戸市や横浜市などが先進自治体となり、実践の場へ と導入されることとなる。これ以降、時々の社会背景が移りゆく中で、アーバンデザイン の実践の方策と理論の展開は、試行錯誤とともに進められてきた。
横浜市での自治体における実践的な取り組みを先導した田村は、アーバンデザインは単 純な都市設計とは異なり、多数主体を取り扱う関係の技法であるとしている
6)。横浜市の庁 内ではアーバンデザインを「都市デザイン」と言い換えており、 「デザイン」の範疇を個別 の設計ではなく、広義に捉えていることがうかがえる。都市デザインの対象として、住宅 団地やキャンパス計画、再開発事業はたいていの場合建設主体がひとつであるが、開発ビ ルなどの各要素の主体が別々であることも多く、抱える課題や解決の方策において共有す る部分があると述べている
7)。
都市に関わる法制度もこの時期に改正が行われ、1963 年の「建築基準法改正」では建物 の高さ制限が撤廃されて容積率制度を導入、1968 年の「新都市計画法」では市街化区域と 市街化調整区域に区分する線引きと呼ばれる制度などが盛り込まれた。
他方では 1976 年の「神戸市都市景観条例」に始まる、都市の景観保全や形成に取り組む
地方自治体の自主条例による景観行政が活発となり、1990 年代以降は公共事業における景
観デザインの実績も認められるようになった。一方で、自主条例や要綱、行政指導に頼る
景観形成では、実効性の低さを問題とし、法的根拠の欠如への指摘があった
8)。
2
2003 年に策定された「美しい国づくり政策大綱
9)」では、戦後の社会資本整備の量的充 足に対する質の面の問題を指摘し、15 の具体的施策のひとつに挙げる「景観に関する基本 法制度の制定」として「景観法」が 2004 年に制定され、翌年に全面施行した。景観法の意 義については、景観行政の担保、縦割り行政の調整、自治体の責任明確化が挙げられ
8)、景 観行政団体として定められた自治体には権限を与え、これまでの法制度を網羅的に扱うこ とを可能とした。
戦後の日本は、1950 年代から 70 年代の高度経済成長、1980 年代のバブル経済による好 景気と都市は成長・拡大を続け、バブル経済の崩壊後の 1990 年代以降は、急速に非成長・
縮小の都市像を模索する時代へと移ることとなる。しかしながら、都市化に慣れてしまっ た国民は、人口減尐を迎える時代においても成長・拡大を続ける大都市へと流入し、国土 の大部分を占める地域と格差を広げつつある。人口流出による税収の減尐は、財政の縮小 へとつながり、都市基盤や居住環境への悪影響を及ぼし兼ねず、地方都市も他ではない。
このような時代背景の中で、九州新幹線の開業や在来線の高架化に伴う熊本駅周辺地域 整備は進められることとなった。2012 年に政令指定都市へと移行予定の熊本市も景観行政 団体に定められており、人口減尐、財政不足という困難を前にしても知恵を絞ることで、
特色ある都市づくりを進めることは可能なはずである。熊本市を含む人口規模が数十万人 の地方都市は、百万人を超す大都市との差別化を図り、数万人以下の市町村を牽引してい くような役割が期待される。本論文で対象とする、熊本駅周辺地域整備における都市デザ インは、中心市街地や熊本市全域へと影響を与え、周辺の市町村を牽引し、同じような課 題を共有する地方都市を主導していくような存在として、先人の都市デザインの系譜に位 置づけなければならない。
1-2 研究の立脚
都市デザインに関して見られる多くの事例や文献と比べ、学術的な整理は十分であると は言えない。大村は要因として「設計の現場ではそれ自体の忙しさから当面する問題点に 種々研究・対策は講じつつも、それを研究としてまとめるゆとりがない。それ以上に一定 の粗度での多種多様な資料を扱い、総合的判断による決定内容を日常業務とする者には、
学術論文の要求する科学性に馴染めない面がある。その結果計画設計現場の直面する重要 主題が研究対象とはならずに放置されがちである
10)」と指摘し、また前田は「個々の条件 差が大きい、政治や企業判断が作用する、実施段階で事業が細分化するなどが学究を遠ざ けているが、いずれも「即地的かつ現実的に取組む」ためには不可避であり、こうした実 務の動態を受容した上での理論化することが求められている
11)」としている。大村や前田 は、研究対象とする都市デザインの現場で実務に携わることで当面する重要な主題を取り 上げることや、都市デザインが機能する要点と課題の導出を目的とした整理を行った。
狭義の自然科学的な研究では、研究者と研究対象(者)との絶対的分離を前提とするが、
研究者自身が現場に「介入」し、実践として「変化」を促していく研究態度は、 Kurt Lewin
3
が提唱する「アクションリサーチ(action research) 」という概念に示される。アクション リサーチは、基本特性を前述する研究対象者と研究者による共同実践的な側面と、目標と する社会的状態に向けた変化を志向した広義の工学的・価値懐胎的な側面とし、何を望ま しい社会的状態と考えるのかということに関する「価値」判断を伴う研究であるため、普 遍的な価値がリードする社会から、地域、立場、時代によってさまざまに異なる多様な価 値が混在する社会へと変貌する日本社会においては、重要な視点だといえる
12)。
県と市で設置した都市デザインを形成する仕組みの中で、行政、関係コンサルタント、
地元の学識経験者による都市のデザイン戦略に関わる議論、また民間事業者とのデザイン 調整に関わる議論において、筆者は学識経験者の研究室の一員として参画した。
本論文では、熊本駅周辺地域整備における都市デザインの現場において、デザイン形成 の主体として加わりながら、デザイン過程を客体として分析する立場より、仕組みの運用、
デザインの決定までを整理、分析し、課題の抽出と対応の流れを明らかにするものである。
1-3 研究の目的
本論文の対象は 2011 年 3 月 12 日の九州新幹線の全線開業により、 2016 年度を目指す在 来線の高架化までの一期整備が完了した熊本駅周辺地域整備の都市デザインの実践である。
まず、熊本駅周辺地域の歴史的変遷の考察、中心市街地における駅周辺整備と都心部の関
係の分析から整備前、中、後の考え方を整理する。また、都市デザインの系譜に熊本の事
例を位置づけ、マネジメントという指標と生命科学の知見を用いて都市デザインの実践を
記述し、分析を行う。これらを総括することで理論的な展開を試みることを目的とする。
4 1-4 研究の構成
本論文の構成を図-1.2 に示す。
第1 章 序 論(研究の位置づけ)
1-1 研 究 の背景(研究課題の時代背景)
都市デザインの変遷から現代的課題の整理 1-2 研 究 の立脚(研究者の立ち位置)
アクションリサーチという概念による筆者の学術的立場の明示 1-3 研 究 の目的(研究対象の分析手法)
研究対象の歴史的考察と他事例との比較から整備に対する与件の整理(2章)
都市デザインの系譜における研究対象の位置づけ( 3 章)と実践の記述と分析( 4 章)
→熊本駅周辺地域整備を対象としたデザインマネジメントの理論的展開( 5章)
第5 章 デザインマネジメントの理論的展開(展開の提言)
5-1 実 践 的試行の空間的な整理 マネジメントの指標による整理 5-2 実 践 的試行の時間的な整理
デザイン調整の分類図による整理
第 2章 熊本駅周辺地域整備の概要(課題の指摘)
2-1 周 辺 地域の歴史的変遷 鉄道開通以前と以後に分けて整理
2-2 整 備 方針と基本計画の策定と整備概要 熊本駅周辺地域整備の整備概要の確定までの経緯 2-3 近 年 の駅周辺整備の状況
都市への影響評価の指標の提案、他事例分析、熊本駅周辺地域整備の与件の整理
第 3章 既往研究と関連概念の整理(指標の提示)
3-1 都 市 デザインの実践と理論について 都市デザインに関する既往研究の整理 3-2 熊 本 駅周辺地域整備における分析の視点
都市のデザインマネジメントという考え方の提示 3-3 都 市 のデザインマネジメントの理論について
空間的な分析指標と時間的な分析指標の提示
第 4章 デザインマネジメントの実践的試行(事象の分析)
4-1 都 市 空間デザイン会議の経緯 WGや本会議の議事録の整理と考察 4-2 都 市 空間デザインガイドの分析
デザインガイドの考え方の整理 4-3 3つ の 景のデザイン戦略
3 つの景のデザイン戦略の考え方の整理
4-4、 4-5、4-6 3つ の景のデザインマネジメント
3つの景の具体事例におけるデザインマネジメントの考察
第 6 章 結 論(成果の整理)
図-1.1 本論文の構成
5
【参考文献】
1. 「建築と都市 1977 年 11 月号」、pp.69-80、a+u、1977 2. 「建築大辞典 第 2 版」 、pp.5-6、彰国社、1993
3. 「景観用語辞典 増補改訂版」 、p.194、彰国社、1998
4. 磯崎新ら: 「都市設計の諸問題」 、建築雑誌 80、pp.735-740、1965
5. 大村虔一ら: 「都市設計にリアリティをもたらすもの」、建築雑誌 82、 pp.247-251、 1967 6. 田村明: 「アーバンデザインとヒューマンスケール」 、建築雑誌 95、p.9、1980
7. 田村明: 「都市デザインの計画主体」 、建築雑誌 98、pp.5-7、1983 8. 篠原修編: 「景観用語辞典 増補改訂版」 、彰国社、2007.3
9. 国土交通省: 「美しい国づくり政策大綱」 、2003.7
10. 大村虔一: 「大規模再開発プロジェクトの設計に関する一考察-初台淀橋街区の事例か
ら-」 、日本建築学会計画系論文集 第 471 号、pp.67-75、1995.5
11. 前田英寿: 「都市開発事業における都市デザインの展開-民間発意工場跡地開発の事例
-」 、日本建築学会計画系論文集 第 612 号、pp.107-114、2007.2
12. 矢守克也: 「アクションリサーチ 実践する人間科学」 、新曜社、2010.6
第 2 章
熊本駅周辺地域整備の概要
6 第 2 章 熊本駅周辺地域整備の概要
2-1 周辺地域の歴史的変遷
熊本駅周辺地域整備基本計画
1)に示されるまちづくりの理念のひとつに「水と緑の自然や 歴史性を活かしたまちづくり」が掲げられている。近年のまちづくりは、つくる時代から 活かす時代とされ、歴史認識の重要度は増しており、いかに歴史を捉え、どのように整備 を歴史的に位置づけるのかということも同時に問われていると考える。歴史というものは、
その地域に蓄積されていくものであり、いくつかの事柄は現在にも残り、またいくつかの 事柄は失われてしまったか、若しくは隠れてしまっているということもある。これら全て を反映させる必要はないが、地域の様々な蓄積を把握した上で「歴史性を活かした整備」
を進めることは重要な考え方である。
歴史性について、桑子は「履歴」という捉え方で以下のように表している。
「空間のもつ歴史性をわたしは「空間の履歴」と表現してきた。なぜ「空間の歴史」と いわないかといえば、歴史は過去を物語るものだからである。歴史が過去に属するのに対 して、 「履歴」は現在に属する。過去の出来事は現在の履歴に蓄積されている。空間に生じ た出来事が事実として記録され、現在の風景に蓄積される
2)」
空間の形成や整備においては、短絡な歴史的モチーフの引用やオブジェとしての歴史表現 ではなく、個別の事柄が地域の時間軸に積み重なった「履歴」としての位置づけの意義を 示したものだと言える。このような捉え方から、熊本駅周辺地域の歴史的変遷を整理し、
整備で考慮すべき基礎情報とする。
熊本駅周辺地域は 1891 年の鉄道開通を契機に大きく変化してきた場所である。 ここでは、
鉄道開通以前と以後に分け、文献による歴史調査を整理する。文献に関しては、主に熊本 市史、新熊本市史、また対象地の歴史をまとめたものを中心に整理を行った。それぞれの 地名や名称は図-2.1 に示す。
2-1-1 鉄道開通以前の変遷
熊本駅周辺地域は、平安時代に現在の二本木地区(図-2.1①)に国府が存在しており
3)、
当時この地域は熊本の中心であったと考えられる。それ以降、二本木は国府を中心として
繁栄を遂げることとなるが、江戸時代になり熊本藩主の加藤清正によって、産業や商業の
中心が熊本城の城下町に移されることとなった
4)。またこの時代に、加藤清正は主要な土木
事業の一つとして河道変更を行っており、白川と坪井川が合流していた二本木に石塘(背
割堤)(図-2.1②)を建設し、両河川を分断した。これによって、坪井川では白川から放流
してくる土砂の浸入を防ぐことができ、水量が安定したため舟運が発達していった。さら
に、坪井川下流域の灌漑が可能となった
5)。これらの痕跡は現在の白川や坪井川にも残って
おり、熊本市街の骨格は江戸時代に形成されたといって良い。
7 2-1-2 鉄道開通以降の変遷
熊本駅周辺地域で重要な地物や地形である、鉄道(駅)、道路、河川、花岡山・万日山、
周辺施設(寺社など)について整理する。
(1) 鉄道
1891 年、博多-熊本間の鉄道開通に伴い熊本駅が現在よりも南の位置に誕生した
6)。開通 以後、徐々に路線を南に延ばし、 1909 年には門司-鹿児島間を結ぶ九州縦貫の鉄道が開通し た
7)。 現在より南に位置していた駅舎は 1914 年、 駅舎の新築と共に現在の位置へと移動し、
駅前広場の拡張や駅舎の一部改築を経て、1958 年に現在の駅舎が完成した
8)。高度経済成 長期には、1961 年に熊本駅付近に操車場の開設、1965 年に鉄道の電化、1968 年に複線化 が行われ、段々と鉄道の輸送能力が向上していった
9)。
鉄道については、現在の JR(旧国鉄)線以外に市内を走る路面電車と、1944 年に全線 撤去された百貫電車があった。百貫電車の軌道の一部は対象範囲内に存在していたが、そ の期間は 1916 年から 1924 年までのわずか 8 年間だった。百貫電車の軌道跡は現在、市道 として利用されており熊本駅周辺の骨格形成に寄与したといえる
10)。路面電車は、百貫電 車の路線の撤去と同時期に開通しており、徐々に増えていった路線網は、一時期は市街地 を環状で結ぶほどの発展をみせた。しかし、1970 年から一部で路線が廃止され現在に至っ ている
11)。
(2) 道路
1890 年、熊本駅の開設に合わせて現在の電車通りに幅 4 間(約 7.3m)の春日新道(図-2.1
③)が開通し、1902 年の陸軍大演習の際に、春日新道は幅 6 間(約 10.9m)に拡張され、
祗園橋(図-2.1④)まで延伸した。1923 年には、さらに東側 3 間、西側 2 間余りが拡張さ
れ、合計 11 間(約 20m)となり、その翌年には電車と水道が敷設される
12)。春日新道は、
現行の道路幅員が 22mなので市電開通時から大きな変化はないといえる。
また、1936 年に熊本駅と大江渡鹿にあった第六師団兵営を結ぶ幅 12 間(約 22m)の軍 用道路(現在の産業道路) (図-2.1⑤)が開通した
13)。現在の駅周辺整備では、春日新道を 熊本駅北部線として道路幅を 30mに、産業道路を熊本駅帯山線として道の幅を 32mに拡張 する予定である。
(3) 河川
坪井川では、鉄道開通以後、祗園橋
14)、三嬌橋(図-2.1⑥) 、春日橋(図-2.1⑦)の 3 橋 が順に架橋されたが
15)、これらの架橋も一因となり、洪水や氾濫の起こりやすい危険な状 態となっていった
16)。1922 年、1923 年とたて続けに河川の氾濫が起こったため、1924 年 には以前から改修の必要性が指摘されていた石塘堰を春日橋と共に改修した
17)。しかし、
河川の氾濫抑制の目的とは裏腹に、改修の影響で坪井川の氾濫の危険度はより増すことと
8
なったため、1977 年に石塘堰(図-2.1⑧)は一部を残し撤去された。翌年、新しい堰が建 設され現在に至っている
18)。
白川では、明治初期に賃取橋の思案橋(現在の白川橋)が架橋されたが、洪水が頻繁に 起こる河川であったため、この橋も幾度となく流失した。明治期の木造から 1937 年の架橋 時に下部のみ RC 構造となる。しかし、熊本市に大被害をもたらした 1953 年の 6・26 水害 のときに、またもこの橋は流失し、1960 年に鋼橋の白川橋として架橋され現在に至ってい る
19)。このように、両河川とも過去に幾度もの洪水を引き起こしてきている。
(4) 花岡山、万日山
花岡山は明治以前、祗園宮(現在の北岡神社)があったため祗園山と呼ばれていた。 1869 年に桜並木が植えられたことで、現在の名称に変わった
20)。桜並木は、明治中頃に名所と なり、眺望も良かったため花見客で賑わっていたとされている
21)。1930 年には、花岡山が 風致地区に指定され、それまでは整備された道路が無かったが、1933 年に北岡神社から山 の中腹までの自動車道路が整備される。戦後、さらに自動車道路が整備され、1960 年には 現在の道路線形となる
22)。
万日山には、熊本駅西側の台地の上に円墳があったのだが、1961 年の道路工事で消滅し た
23)。同年、鉄道の熊本操車場が開設し、その際に万日山の土砂が使用され山の稜線が大 きく変形した
24)。現在の駅周辺整備においては、花岡山は整備区域に含まれておらず、万 日山は祗園橋から延びる道路のトンネルが建設される予定である。
(5) 周辺施設
平安時代より存在する北岡神社は、1868 年に祗園宮から北岡宮に名称を変更し、1884 年には花岡山山頂より現在の位置(図-2.1⑨)に移動して、1934 年に改修され現在に至る
25)
。 1877 年に、遊郭が熊本市京町から二本木に移転しており、 1956 年の売春防止法の制定、
1958 年の業者の転業まで、二本木は遊郭地として栄えていた
26)。
鉄道開通の影響の大きさを物語るのは、地域の発展と輸送利便性の向上により、紡績工場
の建設地に春日(図-2.1⑩)が選ばれ、1893 年に建設されたことからも分かる
27)。幾度の
改名をしながら、工場は 100 年余りに渡って操業を続けたが、2002 年に熊本工場の撤退と
なり、翌年に熊本市が跡地買収を行った。紡績工場の跡地には合同庁舎の移転が計画され
た。
9
対象範囲
0 500m
N1 2 3
4
5
6 7 8
9
10
①二本木地区
②石塘(背割堤)
③熊本駅北部線(春日新道)
④祗園橋
⑤熊本駅帯山線(軍用道路)
⑥三嬌橋
⑦春日橋
⑧旧石塘堰
⑨北岡神社
⑩春日地区 整備区域
2-2 整備方針と基本計画の策定と整備概要
熊本駅周辺地域整備は 1973 年の九州新幹線整備計画から、1997 年に整備方針を策定、
2005 年に基本計画が策定され、整備に関する骨格が固められてきた。数十年を要する動き であるため、県と市の関わり方、社会状況などの変化に対応し、随時計画の見直しが行わ れてきた。ここでは、 基本計画の策定までの経緯と整備の背景をまとめ、 表-2.1 に整理する。
2-2-1 整備方針の策定の経緯
1973 年 11 月に九州新幹線整備計画が決定され、それ以降県や市では在来線の高架化な どの協議が進められていた。 1997 年 7 月に県と市は「熊本駅周辺地域等整備方針」を策定、
またそのときに県市の役割分担と推進体制を明らかにした協定書が交わされている(表
-2.1<1>) 。整備方針では連続立体交差事業、駅西地区の土地区画整理事業、東西駅前広場、
東西連絡道路の主要四事業が新幹線開業時までに完成を目指すことが合意された。協定に ついては同年 8 月 3 日付の新聞記事
29)で「歴史的合意」と報じられており、それまで尐な からず県と市が対立関係にあったことが分かる。このような自治体間の対立については、
「都道府県 VS 市町村」 として連立事業を進める上で起こる問題の一つに挙げられており
30)、 熊本に限られたことではなくむしろ一般的な課題だといえる。さらに、協定書の締結につ づき 1998 年には合同事務所(駅周事務所)が開設されるなど、県と市が協力していく体制 は整っていった(表-2.1<2>) 。しかしながら、その後整備方針を具体化する作業が順調に進 んではいなかった。
図-2.1 熊本駅周辺地域の整備区域と歴史調査の対象範囲
28)10 2-2-2 基本計画の策定の経緯
2000 年 8 月に在来線高架化の計画区間を当初の約 4km から約 2km 延伸することを県が 表明(表-2.1<3>)、2001 年 8 月には駅周辺へ合同庁舎移転の方針を国が固めるなど(表 -2.1<4>)、新幹線開業へ向けた動きが活発となっていった。2002 年 7 月に整備方針を具体 化するため、県と市、JR の代表を集めた「熊本駅周辺整備検討会議」が設立された(表
-2.1<5>) 。しかし、年度末を予定していた最終方針はまとまらずに延期が決定、会議の運用
も予定していた回数を行うことは出来なかった(表-2.1<6>) 。2004 年に入ると、九州新幹 線の開業が 2010 年度に 2 年前倒しされることが確定的となり(表-2.1<7>)、県と市の遅々 として進まない作業と次々と変化する整備を取り巻く状況との差が顕著となっていった。
このような状況の中、後のデザイン調整の仕組みの立ち上げに尽力した県の担当者(当時 の県駅周事務所・計画課長)と市の担当者(当時の市駅周事務所・所長)が 2004 年 4 月に 駅周事務所に赴任することとなった。当時、整備方針はあったものの具体的な計画につい ては進んでおらず、新幹線開業の前倒しも考慮すると切羽詰った状態であった。そこで、
両担当者を中心に整備計画の具体化に向けて動き出していった。 5 月に設置された「新幹線 新駅周辺整備推進会議」では、熊本駅について新幹線開業を一期整備、在来線高架化を二 期整備と分けて段階整備する方針を確認するとともに、1997 年に結んだ県と市の協定を改 定することが決まった(表-2.1<8>) 。また、10 月には「熊本駅周辺地域まちづくり推進協 議会」を住民の意見を反映させる場として設置した(表-2.1<9>) 。このほか 11 月には経済 状況の悪化で事業化が遅れていた東 A 地区市街地再開発事業について、再開発組合による 施行から市による直接の施行へと大きな方針の転換が図られた(表-2.1<10>) 。その後、 2005 年 6 月 2 日に「熊本駅周辺地域整備基本計画」を策定、県と市で見直した協定書への調印 や事業負担の覚書が結ばれている(表-2.1<11>) 。
都市デザインの指導や事業主間の調整を図る仕組みとして「熊本駅周辺地域都市空間デ ザイン会議」を設立、2006 年 10 月 27 日に第 1 回の「都市空間デザイン会議(本会議)」
を開催し(表-2.1<12>) 、様々な関係者間の調整などを行っている。また、デザイン指導や 調整のベースとなる「熊本駅周辺地域都市空間デザインガイド-本編-」を 2007 年 6 月に 策定し(表-2.1<13>) 、本格的なまちづくりの運用に向けた動きが進められた。
2-2-3 整備に関わる主な組織
「熊本駅周辺地域まちづくり推進協議会(まち協)」:本会議の座長で都市計画を専門と する学識経験者が会長を務める。また、本会議の委員で都市計画と建築を専門とする地元 の学識経験者 2 名が副会長を務め、地元自治会代表 6 名、経済界代表 3 名、公募委員 5 名、
国 4 名、県 4 名、市 4 名の計 29 名で構成する協議会である。事務局は、デザイン会議と同 様に市と県の駅周事務所が担い、 2004 年 10 月 1 日の設置と第 1 回の協議会(表-2.1<14>)
から定期的に開催されている。この会は、住民との意見交換を行う地元に最も近い場とし
て位置づけられている。
11
「新熊本合同庁舎及び周辺地区整備協議会(合庁協)」:本会議の委員で建築を専門とす る地元の学識経験者が委員長を務めており、地元代表者 15 名、地元企業代表者 4 名、国 4 名、県 2 名、市 2 名の計 28 名で構成する協議会である。事務局は、市駅周事務所、県地域 政策課都市圏振興室、九州地方整備局営繕部計画課が担い、 2004 年 10 月 29 日の設置と第 1 回の協議会(表-2.1<15>)から定期的に開催されている。新合同庁舎は熊本駅城山線や南 線に面しているため、外構と街路整備との調整を要する事業である。
「熊本駅周辺整備に関するトップ会議」 :2005 年 3 月 5 日に熊本県知事、熊本市長、JR 九州社長の 3 者が初めて非公開でトップ会談を行った(表-2.1<16>) 。 2006 年 10 月 2 日に 熊本商工会議所会頭、熊本経済同友会代表幹事とまち協の会長を加えた 6 名で非公開のト ップ会議が開催され(表-2.1<17>) 、2007 年 3 月 27 日に第 2 回(表-2.1<18>)、2008 年 3 月 21 日に第 3 回(表-2.1<19>)、2009 年 3 月 31 日に第 4 回(表-2.1<20>) 、2010 年 3 月 22 日に第 5 回(表-2.1<21>)というように、年に一度開催されている。
これら 3 つの主な組織には、それぞれデザイン会議のメンバーが入っており、とくに本 会議の座長は首長レベルから住民レベルのまで幅広く関わっており、全体の組織間の意見 調整を図る上で重要な役割を担っているといえる。
「熊本駅東側地区まちづくり連絡会議(まち連)」 : 63.2ha の熊本駅周辺整備地域のうち、
JR 沿線東側の地区に関わるまちづくりの情報交換を行う会議であり、自治会及び町づくり 組織の代表者の 18 名で構成している。 2005 年 6 月 15 日に設置され、市駅周事務所が事務 局を担っている。
「熊本駅東側地区まちづくり住民会議(まち住)」 :基本計画で示されている 22ha の市街 地整備ゾーンのまちづくりを検討する会議であり、自治会長及びその推薦者の 17 名で構成 している。2005 年 7 月 14 日に設置され、市駅周事務所が事務局を担っている。
これら 2 つの会議は、熊本駅周辺地域整備を契機に地元の機運を盛り上げながら、まち づくりを行っていくことが目的であるため、息の長い活動が必要な取り組みである。
2-2-4 整備概要と主要な事業
熊本駅では新幹線開業を契機として、在来線の高架化完了後の 2018 年を目標とする周辺
整備が進んでいる。主な事業には、駅西土地区画整理事業、駅東 A 地区市街地再開発事業
や合同庁舎移転があり、駅周辺の都市計画道路整備事業などまちなみ形成に関わる事業を
計画している。これらを含めた整備全体は広さがおよそ 63.2ha に及び、長期に渡る大規模
なプロジェクトである(図-2.2) 。熊本駅は明治時代に市街中心部に建設予定だったものが
当時の住民の反対にあい、郊外に春日駅(現在の熊本駅)と池田駅(現在の上熊本駅)の
二つに分けて建設された経緯がある。このため、市街中心部から約 3km 離れており、商業
を中心とした副都心を目指すことが難しい立地にある。このような背景もあり、熊本駅周
辺整備では「パーク・ステーション」というテーマを掲げ、西の花岡山・万日山や東の白
川・坪井川といった周辺の水や緑の自然を活かしたまちづくりを進める構想を持っている。
12
駅東A地区市街地再開発事業
合同庁舎移転
鹿児島本線等連続立体交差等整備事業 熊本駅西土地区画整理事業
九州新幹線整備事業
「九州新幹線整備事業」 :新八代~西鹿児島間は 2001 年 4 月に変更認可があった。線路 延長は 126.836km、総工事費は約 6,401 億円、2004 年 3 月 13 日の開業である。博多~新 八代間は 2001 年 4 月に変更認可、2005 年 12 月に駅部認可があった。総工事費は約 8,134 億円、2011 年 3 月 11 日に当区間とともに全線が開業した。
「JR 鹿児島本線等連続立体交差等整備事業」 :延長は約 6.0km、全体事業費は約 550 億 円(国:258 億円、県:180 億円、市:77 億円、JR:35 億円) 、工期は 2001 年度から 2016 年度である。
「熊本駅西地区土地区画整理事業」 :施工面積は新幹線予定地より西側の約 18.1ha、施工 期間は 2001 年度から 2016 年度、全体事業費は約 300 億円、地区内世帯数は当初が 648 世
帯の 1,367 人、先買後は 466 世帯の 978 人である。主な都市施設の整備としては、春日池
上線(4 車線、30m) 、田崎春日線(2 車線、 18m) 、熊本駅南線(2 車線、 18m)等であり、
西口駅広の新設(A=5,700 ㎡) 、従前居住者用住宅(69 戸) 、コミュニティ住宅(100 戸)
が整備される。
「熊本駅前東 A 地区市街地再開発事業」 :施行地面積は 1.4ha、用途地域等は商業地域で 準防災地域、建蔽率は 80%、指定容積率は 500%、土地所有者は筆頭権利者数 23 名である。
1993 年 7 月に準備組合を発足、 2004 年 12 月に熊本市施行の第二種事業へ転換を決定、 2006 年 2 月に市街地再開発事業の県知事認可を受ける。施設規模は事業認可時点で 16,400 ㎡で あり、公共施設として図書・情報施設センター(仮称)の約 8,000 ㎡を導入予定。
「合同庁舎移転」 :建築計画の予定は敷地面積約 2.5ha、A 棟が約 26,000 ㎡(6 官署、職 員約 1,100 名) 、B 棟が約 25,000 ㎡(7 官署、職員約 700 名)であり、A 棟が 2008 年 7 月
図-2.2 熊本駅周辺地域整備の主要な事業
13
に着工し、 2011 年 1 月に開所、 B 棟が PFI 手法を用いた整備で 2012 年度着工予定である。
関連道路等の整備について、名称、概要、完成年度、事業費を整理する。
「春日池上線(1 工区)」 :L=約 300m、W=30m(4 車) 、2016 年度、約 37 億円。
「春日池上線(3 工区) 」 :L=約 1,282m、W=30m(4 車)、2010 年度、約 122 億円。
「熊本駅北部線」:L=約 320m、W=36m(4 車) 、2006 年度、約 68 億円。
「熊本駅城山線」:L=約 369m、W=36m(4 車) 、2010 年度。
「熊本駅城山線」:L=約 431m、W=30m(4 車) 、2017 年度、城山線で計約 113 億円。
「熊本駅帯山線」 :L=約 240m、W=32m(4 車) 、2010 年度。
「東口駅広」 :面積 A=約 14,200 ㎡、2018 年度、帯山線と計約 145 億円。
上記が、県施工の幹線街路。下記が、市施工の幹線街路。
「春日池上線(2 工区)」 :L=約 306m、W=30m(4 車) 。
「田崎春日線」 :L=約 910m、W=18m(2 車) 。
「熊本駅西口線」:L=約 90m、W=18m(2 車)。
「西口駅広」 :面積 A=約 5,700 ㎡、2016 年度、上記は区画整理事業の中で整備。
「熊本駅南線」 :L=約 113m、W=18m(2 車) 、2010 年度、約 8 億円。
「祗園橋緑地」 :面積 A=800 ㎡、2005 年度、約 5 億円。
表-2.1 の整備に関する流れを大きく 4 段階に分けると、整備方針の策定以前の 1996 年ま でが「方針」 、整備計画の策定以前の 2005 年 5 月までが「計画」 、様々な事業があるため、
明確に区分はできないが、全体の計画から個別の事例の WG における具体例を示した「デ
ザインガイド手引き編」を公表した 2008 年 3 月までを「設計」 、それ以降を「施工」とす
る。 「方針」や「計画」の段階では、整備に関する動きを受け、整備方針から基本計画への
構想の見直しが行われたことがわかる。また、関連会議が立ち上げられ、主要な事業者や
住民との協議ができる場が設けられた。 「設計」の段階に入ると、具体的に整備の事業者や
設計者が決まり、全体のデザイン調整を行うために設置された本会議が 2 ヶ月に一度、 WG
が月に 1 度から 3 度開催され、関係者での協議が行われた。 「施工」の段階に入ると、実働
として事業者や設計者と協議を行う WG は月に 1 度から 2 度開催しているが、本会議は
WG での協議の結果を確認する役割へと移行するため、 数か月に一度の開催となっている。
14
年度、年月 整備に関する動き 人事など 準備会議、本会議 WG 関連会議
1995 1995.08熊本駅周辺地域を副都心と位置づけ 1996
1997 1997.07整備方針策定、県市協定締結<1>
1998 1998.04県市合同事務所開設<2>
1999 1999.06合庁:移転検討を表明(九州財務局) 2000.02福島知事から潮谷知事へ 2000 2000.08在来線:高架延伸の表明(県)<3>
2001 2001.08合庁:移転の方針(国交省)<4>
2002 2002.07熊本駅周辺整備検討会議の初会合<5> 2002.11三角市長から幸山市長へ 2003 2004.03新幹線:2年前倒しへ<6>、年度内の方針策定断念<7>
2004.04 熊本駅西土地区画整理事業所開設(市)
2004.05 新幹線新駅周辺整備推進会議の初会合<8>
2004.06 2004.07 2004.08 2004.09
2004.10 第1回まち協<14>、第1回合庁協<15>
2004.11 東A再開発:組合施行から市施行へ<10>
2004.12 新幹線:2年前倒し決定 第2回合庁協
2005.01 第2回まち協
2005.02 第3回まち協,第3回合庁協
2005.03 第4回まち協、トップ会談<16>
2005.04
2005.05 第5回まち協
2005.06 基本計画策定、県市変更協定締結<11>、東A:計画案公表 第1回まち連
2005.07 第6回まち協、第4回合庁協、第1回まち住
2005.08 第2回まち住
2005.09 東A:都決了承 第1回準備会議 第1回 第3回まち住
2005.10 第1回UD準備会議 第2回
2005.11 東A:「図書・情報センター」計画素案 第2回準備会議、第2回UD準備会議 第3回、第4回 第7回まち協
2005.12 第5回
2006.01 第3回準備会議 第6回、第7回
2006.02 第8回 第4回まち住
2006.03 第4回準備会議 第9回、第10回 第1回シンポジウム
2006.04 都市空間デザイン・UD合同会議 第11回
2006.05 東A:建設業務代行制度(仮)導入 第12回~第15回 第2回シンポジウム
2006.06 第6回準備会議 第16回
2006.07 第5回UD準備会議 第17回~第19回
2006.08 第20回 第8回まち協
2006.09 第21回~第23回
2006.10 第1回本会議<12> 第24回 第1回トップ会議<17>
2006.11 第25回、第26回
2006.12 東A:事業提案競技締切2グループ提出 第27回、第28回
2007.01 在来線:駅舎の設計者公表(県)、新幹線:駅舎素案 第2回本会議 第29回
2007.02 第30回、第31回 第9回まち協、第5回合庁協
2007.03 東A:事業提案競技による施行業者選定 第3回本会議 第32回、第33回 第2回トップ会議<18>
2007.04 第34回
2007.05 第35回 第5回まち住
2007.06 都市空間デザインガイド-本編-策定<13> 第36回、第37回
2007.07 第4回本会議 第38回、第39回
2007.08 第40回
2007.09 臨時会議 第41回
2007.10 第42回、第43回 第1回UDWS
2007.11 東口駅広:設計競技設計者選定(くまもとアートポリス:KAP) 第5回本会議 第44回
2007.12 第45回 第2回UDWS
2008.01 第6回本会議 第45.5回、第46回
2008.02 第47回、第48回 第10回まち協
2008.03 デザインガイド-手引き編-公表、西口駅広:第一次審査(KAP) 潮谷知事から蒲島知事へ 第7回本会議 第49回 第3回トップ会議<19>
2008.04 第50回
2008.05 西口駅広:設計競技設計案選定(KAP) 第51回
2008.06 第52回 第3回UDWS
2008.07 合庁:A棟着工 第53回
2008.08 第8回本会議 第54回
2008.09 第55回、第56回
2008.10 第57回
2008.11 第58回、第59回
2008.12 合庁:B棟当面凍結 第60回、第61回
2009.01 第62回
2009.02 第63回 第4回UDWS
2009.03 第9回本会議 第64回 第4回トップ会議<20>、第6回まち住
2009.04 第65回
2009.05
2009.06 第66回、第67回
2009.07 第68回
2009.08 第69回
2009.09 第70回
2009.10 第71回
2009.11
2009.12 第72回
2010.01 第73回、第74回
2010.02 第10回本会議 第75回
2010.03 第76回 第5回トップ会議<21>
2010.04 第77回
2010.05 第78回
2010.06 第79回
2010.07 第11回本会議 第80回 第11回まち協
2010.08 第81回
2010.09 第82回
2010.10
2010.11 第83回
2010.12 合庁:B棟整備再開 第84回
2011.01 合庁:A棟開所式 第85回
2011.02 第86回
2011 03 九州新幹線全線開業 第12回本会議
表-2.1 熊本駅周辺地域整備に関する流れ
15 2-3 近年の駅周辺整備の状況
熊本駅周辺地域整備の大きな特徴として、これまでの全国の新幹線整備と在来線の高架化 に伴う周辺整備では初の二段階整備であることが挙げられ、新幹線開業の前倒しにより、
熊本駅の駅裏とされていた西側の新幹線駅舎と西口駅広が先行整備される。駅周辺の整備 は、規模が大きく、事業も多様であるため、それぞれが同時期に完成することは尐なく、
たいていは順次整備が完了していく場合が多い。整備全体としては、周辺へ波及する影響 を評価することは難しく、事前、事後に分けると、十数年の時間差が生じることもあるた め、駅周辺整備のような大規模な整備では、各事業の進捗と事中の評価という視点が重要 だと考える。
鉄道の高架化に伴う、土地区画整理事業や市街地再開発事業を行う駅周辺整備は、近年、
いくつかの都市で進められている。市街地における大規模再開発が稀な地方都市を考えた 場合、駅周辺にとどまらない都市全体の活性化や「顔」としての整備に対する期待は高い。
地方都市では、様々な整備が起こりうる大都市と比べて、駅周辺整備による都心部への影 響力は強く、地方都市において駅周辺整備がもたらす都市への影響とその変化を評価する ことは重要である。また、熊本駅の場合、デザインガイド本編に駅周辺地域と都心とのつ ながりが明記されてはいるが、具体的な連携の考え方は示されておらず、新幹線開業や在 来線の高架化を目指した課題であるともいえる(図-2.3) 。
駅周辺整備
都心部 中心市街地
駅周辺整備
都心部 中心市街地
ここでは、いくつかの事例において駅周辺整備の各事業とそのスケジュールに着目し、整 備期間中にもたらされる都市内の異なる位置関係にある地点への影響の差異とその要因を 明らかにすることを目的とする。また、これより明らかとなった事象から、熊本の事例を 検証し、そこで浮かび上がった問題点への提案を行う。
図-2.3 駅周辺整備の考え方と熊本駅と都心とのつながり
31)16 2-3-1 都市への影響の評価指標
地方都市における駅周辺整備に関する既往研究では、文ら
32) ,33)が新幹線駅の立地する都 市の駅周辺整備について、駅前広場との空間的一体化や整備の展開プロセスに着目して整 備特性の類型化を行った研究がある。この一連の研究は、整備区域内における各事業の方 法論を整理したもので、駅周辺を包含する都市全体に言及したものではない。また、土地 区画整理事業に着目し、地価分析から整備効果を計る研究は多数存在するが、鉄道整備と 結びつけた分析になると田村ら
34)の研究など数が限られる。ここでは、駅周辺整備の多様 な事業の進捗による影響を分析している点や、都市全体への整備効果を論じている点に特 徴がある。
(1) 分析の範囲
提案の対象である熊本駅周辺整備と同様な地方都市における駅周辺整備を対象として取 り上げるため、研究対象を以下に示す条件より選定する。
① 地方都市であり都道府県庁所在地の中央駅である
② 駅付近で鉄道高架化事業を計画、進行中である
③ 駅周辺で土地区画整理事業や市街地再開発事業という面的整備を計画、進行中である これらの条件が当てはまる駅として、旭川、札幌(北海道は道北、道央、道東、道南の中 央駅とする) 、富山、金沢、福井、岐阜、奈良、鳥取、高知、佐賀、大分、宮崎の 12 駅(2006 年度時点で整備完了または進行中の駅)を研究対象とする。
各自治体が定めた中心市街地を分析の範囲とする。中心市街地に範囲を限定することは、
地方都市の骨格を形成する元来の都心と駅周辺の副都心という二つの核を含んでおり、人 口規模の異なる研究対象の都市に対して、一定の条件下で分析を行うことが出来る有用性 がある。中心市街地については、2006 年 8 月 22 日に内閣に設置された中心市街地活性化 本部より以前の中心市街地活性化推進室の HP
35)に掲載されている資料を参考とする。
(2) 分析の指標
(a) 駅周辺整備の事業スケジュール
研究対象の駅周辺整備で行われる鉄道高架化、新幹線整備、区画整理事業、再開発事業 やほかの面的整備について駅表と駅裏で整理した事業スケジュール表を用い、以下に示す 主要な事業の特性を考慮して、整備中にもたらす都市への影響の要因を分析する指標とす る。各駅周辺整備の事業については、整備パンフレットや自治体の HP を参考とする。
・ 鉄道高架化 :鉄道による地域の分断が解消されるのは事業完了時
・ 区画整理事業:事業開始時から換地等の整備が進み、徐々に整備が完了していく
・ 再開発事業 :土地の高度利用が図られるのは事業完了時
17 (b) 駅周辺整備と中心市街地の地図
研究対象の駅周辺整備の整備区域と中心市街地の範囲、都心である中央地区(以下、中 央) 、駅表地区(以下、駅表)、駅裏地区(以下、駅裏)、ほか主要な地区を示した地図を用 い、駅周辺整備がもたらす各地区への影響とその要因を分析する指標とする。また、地図 からは各地区の位置関係のほかに、周辺の地勢や都市の骨格を読み取って分析を行う。各 都市の地図については、国土交通省国土地理院の地図閲覧サービス HP
36)の地図を使用する。
(c) 地価の相対グラフ
研究の対象が鉄道駅や再開発事業の場合、鉄道利用者や商業者数の動向を分析の指標とす ることがあり、これらは鉄道利用や再開発地区内の分析には有用である。ただし、都市的 なスケールで駅周辺整備がもたらす都市への影響のような、面的で動的な拡がりが時間と ともに変容する様子を把握することは難しい。
そこで、都市で広く一様に調査が行われており、影響の変遷を追うことができる地価を 指標とする。地価の取り扱いについては山田
37)の研究を援用し、駅周辺地区以外で地価の 最も高い値を 100 (中央)とする相対値で分析を行う。これは、地価を絶対値のまま示すと、
年次間の比較が困難で局地的な変化を見落とす可能性があることと、地価そのものの変動 要因ではなく整備による都市への影響とその要因が重要なためである。
もちろん、都市全体の地価変動を考えた場合、駅周辺整備のみが要因となっているとは言い切れな
い。しかしながら、地価の相対グラフによって表される変化は、都市における駅周辺地区の位置づけ
の変化と言い換えることができ、このような変化をもたらした大きな要因として駅周辺整備を考える
ことは可能であろう。これより、以上の 3 つを分析の指標とする。各都市の地価については、国土交
通省の土地総合情報ライブラリー HP
38)に掲載されている資料を参考とする。
18 2-3-2 他事例の影響評価
(1) 事例の分類
比較対象の駅周辺整備において、地価の相対グラフより都市に及ぼす影響の大小と事業の 進捗から表-2.2 のように 12 駅を分類し、参考事例として金沢
39)、富山
40)、旭川
41)、宮崎
42)
、福井
43)を選定する。尚、整備時期が古く地価が得られなかった鳥取と佐賀、中心市街 地を定めていない奈良は対象から除く。
変化大 変化小 その他
全事業完了 札幌・宮崎 鳥取・佐賀
鉄道高架化完了 金沢・岐阜 福井
一部事業完了 富山 奈良
事業中 旭川・高知・大分
(2) 事例の分析 (a) 金沢の事例
金沢は 2006 年度時点において、鉄道高架化が完了し、駅周辺の面的整備がほぼ完了した 事例である。鉄道高架化が 1978 年から 91 年で完了している金沢では、1970 年から 2006 年にかけて駅表と駅裏で 6 箇所の区画整理事業と駅表で 3 箇所の再開発事業を継続的に進 めている。これらの事業は 2006 年度でほぼ完了しており、今後新幹線整備が進められる(図 -2.4) 。
地価を調査した「片町地区(中央) 」 「本町地区(駅表) 」 「広岡地区(駅裏) 」 「武蔵町地区
(中間地区) 」の 4 地点(図-2.4)について、各地区への影響を図-2.5 のグラフから相対的 に読み解くと、1990 年以降では「駅表」と「中間」が「中央」に年々迫ってきており、 「駅 表」は 2004 年には「中間」と同程度まで、2007 年には「中央」と同程度まで上昇してい ることがわかる。
この影響の要因を図-2.5 の事業スケジュールと照らし合わせて詳述する。まず「駅表」と
「中間」が上昇傾向を示し始めたのは、1986 年、90 年、94 年に再開発事業が駅表で完了 した頃である。1990 年から 2000 年まで「駅表」と駅から約 1km の位置にある「中間」が 上昇を続けていることは、駅表での再開発事業を発端に、91 年の鉄道高架化完了や駅裏で の区画整理事業が継続的に進められたことが要因だと考える。つぎに「駅裏」に着目する と、 「駅裏」が上昇を示したのは 1991 年と 96 年以降である。これは 1991 年の鉄道高架化 完了、1996 年までに 3 箇所の区画整理事業が駅裏で完了したことが要因だと考える。
金沢の場合、鉄道高架化が完了する以前から駅表で再開発事業を完了させ、追随するよう に大型再開発事業が完了したことが重要である。また、比較対象の駅周辺整備のなかでも、
最も多くの事業を最も広い区域で展開しており、とくに駅裏での区画整理事業が特徴的で ある。現段階では「駅表」や「中間」の変化と駅表での整備との連関がみられ、 「駅裏」へ
表-2.2 事業の状況と影響による分類(2006 年度時点)
19
の影響はまだ小さい。今後の新幹線整備による影響で、各地区がどのように変化するのか が注目すべき点である。
図-2.5 金沢駅周辺整備の事業スケジュールと地価の相対グラフ
0 20 40 60 80 100 120
S55/80 S60/85 H2/90 H7/95 H12/00 H17/05 地
価 の 相 対 値
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
地価( 千円/㎡)
片町地区(中央・100) 武蔵町地区(中間) 本町地区(駅表) 広岡地区(駅裏) 片町地区の地価
金沢駅前第一地区第一種市街地再開発事業
駅西第三土地区画整理事業
北陸新幹線 駅西土地区画整理事業
駅西第二土地区画整理事業 金沢駅南地区土地区画整理事業 金沢駅武蔵北地区第一種市街地再開発事業
金沢駅前第二地区第一種市街地再開発事業
金沢駅東広場 金沢駅付近連続立体交差事業
H22/2010
昭和町地区土地区画整理事業
金沢駅北土地区画整理事業
S45/1970 S55/1980 H2/1990 H12/2000
駅 表
駅 裏
図-2.4 金沢の中心市街地と駅周辺整備並びに事業区域
20 (b) 富山の事例
富山は 2006 年度時点において、鉄道高架化は事業計画中で、駅周辺の面的整備が一部完 了した事例である。 鉄道高架化を 2005 年から 16 年までで事業計画している富山では、 1984 年から 92 年までに駅表で 4 箇所の再開発事業を行い、 1988 年から 2002 年までに駅裏で区 画整理事業を中心とした面的整備を進めてきた。駅周辺の面的整備は 2006 年度でほぼ完了 しており、今後鉄道高架化と新幹線整備が進められる(図-2.6) 。
N 0 1km
桜町地区(駅表)
総曲輪地区(中央)
奥田寿町地区(駅裏)
中心市街地 富山駅前西街区第2地区
富山駅前桜町 富山駅前
富山駅前西街区第1地区 富山駅北
富山県富岩運河環水公園
富山駅
N
N 0 1km0 1km
桜町地区(駅表)
総曲輪地区(中央)
奥田寿町地区(駅裏)
中心市街地 富山駅前西街区第2地区
富山駅前桜町 富山駅前
富山駅前西街区第1地区 富山駅北
富山県富岩運河環水公園
富山駅
0 20 40 60 80 100 120
S55/80 S60/85 H2/90 H7/95 H12/00 H17/05 地
価 の 相 対 値
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
地価 (千円 /㎡ )
総曲輪地区(中央・100) 桜町地区(駅表) 奥田寿町地区(駅裏) 総曲輪地区の地価
富山駅北土地区画整理事業 富山県富岩運河環水公園 親水広場
富山駅前桜町第一種市街地再開発事業 富山駅前第一種市街地再開発事業
富山駅付近連続立体交差事業 北陸新幹線
H32/2020 富山駅周辺土地区画整理事業 富山駅前西街区第1地区第一種市街地再開発事業
富山駅前西街区第2地区第一種市街地再開発事
S55/1980 H2/1990 H12/2000 H22/2010
駅 表
駅 裏