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確認的因子分析における因子的不変性の評価

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(1)

確認的因子分析における因子的不変性の評価

その他のタイトル Evaluation for the factorial invariance in confirmatory factor analysis

著者 柴田 満, 辻岡 美延

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 16

号 1

ページ 91‑132

発行年 1984‑12‑21

URL http://hdl.handle.net/10112/00022747

(2)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第1 1984, pp. 91‑132  ISSN 0287‑6817 

確認的因子分析における因子的不変性の評価

柴 田 満 ・ 辻 岡 美 延

Evaluation for the factorial  invariance in confirmatory factor analysis  Mitsuru Shibata and Bien Tsujioka 

Abstract 

The・problems  of  the  factorial  invariance  were  discussed  from  confirmatory  point‑of‑view  in  factor  analysis.  First,  antinomy between invariance of  factor‑

pattern obtained by  procrustes  or  patternmax  rotation  and  that  of  factor‑score  obtained by  factormax  rotation  (in  the  least  square  sense)  was  explained by means  of  both  mathematical  formulations  and also empirical  numerical  examples of  the Y‑G  Personality Questionnaire. 

The r:esults indicate that the method proposed by Corbal lis and Traub for maximizing  the  invariance  of  the  components  in  common  factor  space  which  are  the  product  of  two matrixes  of  the  factor‑patterns  and  the  factor‑scores  is  not  successful  for  solving  the  antinomy and  it  .is  rather  akin  to  factormax  rotation method. 

Secondly,  the  fixation  problem  of  factor  axes  or  the  constraint  of  the  factor  correlations was discussed in  connection with the criterion matrix or target matrix  for  the procrustes  rotation.  In  order  to  confirm  the  positions  of  axes  in  common  factor  space  obtained from  different  samples  or modalities,  writers  propose  the  necessity of  criteria  named  pan‑criterion,  trans‑criterion  or  over‑al criterion. 

Thirdly,  evaluative  indexes  for  factorial  invariance  : congruence  coefficient,  Euclidian distances of  differences between vector terminals etc.  were evaluated and  compared by using the numerical  examples of the  longitudinal and crossmodal Y‑G test  data.  (author  abstract) 

key words : factor analysis, factor invariance, rotation, procrustes rotation, patternmax,  fatormax, constraint of axes, YG Personality Inventory, evaluative index 

抄 録

因子的不変性の問題が,因子分析における確認的観点から論じられた。まず第一に,最小二乗 法的意味においてのプロクラステス回転あるいはパタンマックス回転によって得られた因子バタ ンの不変性と最,]:ヽニ乗法的な意味においてのファクターマックス回転によって得られた因子得点 の不変性の間の二律排反問題が, 数学的展開と YG性格検査の経験的数値例の両方によって説 明された。その結果,因子パタンと因子得点の両行列の積である共通因子空間における成分の不 変性を最大化するために CorballisTraubによって提案された方法は,二律排反の解決に 成功せず,むしろファクターマックス回転法に近似していることが判明した。

第二に,因子軸の固定問題あるいは因子間相関の固定問題が,プロクラステス回転のための基 準行列すなわち標的行列に関して論じられた。異なる標本あるいは相面から得られた共通因子空 間における因子軸の位置を確認するために,筆者らは,汎基準,転移基準あるいは通基準と呼ば れる基準の必要性を提案した。

第三に,因子的不変性のための評価指標,すなわち,一致性係数や補助指標としての対応変品 ベクトル頂点間のユークリッド距離,対応変蓋ベクトル間の灰角,直交因子負荷輩ベクトル間の 誤差平方和の総和などが,縦断的な YG検査資料や交叉相面的な YG検査資料を使って評価 比較された。

キーワード:因子分析,因子的不変性,回転,プロクラステス回転,パタンマックス,ファクタ ーマックス,因子軸の固定, YG性格検査,評価指標

本稿は柴田が起草し,これに辻岡が加筆したもので,その中心的貢献は柴田により行われたもので ある。

(3)

関西大学『社会学部紀要」第16巻第1

〔 要 約 目 次 〕

〔 問 題J.  ・... ・.. ・.. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・.. ・... ・.. ・.. ・.. ・ ・ ・ ・ ・.. ・ ・ ・ ・ ・ ・.. ・.. ・... ・.. ・.. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・... (93) 

(因子的不変性の二律排反問題と因子軸の定位問題および因子的不変性 到達度の指標の不充分性についての問題提起とその解決策)

〕 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(94)

1.  因子パタンの不変性と因子得点の不変性の二律排反 2.  Corballis Traubの試論の検討

3.  正準回転と不変性 4.  不変性評価の諸指標

(A)  構造の評価指標

①  誤差平方和平均の平方根

②  因子負荷の相関係数

⑧  一致性係数

④  補助指標としてのユークリッド距離とベクトル央角 (B)  因子得点の評価指標

①  縦断的資料の因子得点評価法

PinneauNewhouseの因子得点評価法

③  辻岡の因子得点評価システム (C)  総合評価システム

〔結果と解釈〕 ・....................................................................................(110)  1.  解釈上の留意点

①  対応変量間相関の高い資料 Table 1右上三角行列 (YG再検査資料)

対応変量間相関の低い資料 Table 1左下三角行列 (YG異教示下資料)

2.  Corballis & Traubの解法の比較数値例 Table 2 (YG再検査資料)

3.  正準型回転と基準設定型回転の比較数値例 Table 3‑1,  3‑2  (YG再検査資料)

4.  対応変量間相関の低い場合の Patternmax型と Factormax型の比較例 Table 4 (異種教示下の YG検査資料)

〕 ・...................................................................................(118)  1.  三解法間の相互関係

2.  因子的不変性の到達度 3.  正準回転と因子軸の定位問題

〔コンピュータ ...................................................................(119) 

①  サプルーチン CONFlE(正準型Cliff法;横断的研究用)

②  サブルーチンCONF2E(正準型 Nesselroade法と Cliff法;縦断的研究用)

⑧  サブルーチン CONF2D(基準設定型 Corballis法;縦断的研究用)

いずれのプログラムも斜交回転のアルゴリズムを追加している。

〔参考文献〕 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(131) 

(4)

確認的因子分析における因子的不変性の評価(柴田・辻岡)

〔 問 題 〕

因子分析における「因子的不変性」 (factorialinvariance)の問題は,因子分析論当初以来の 重要課題であり,多くの研究者によって問題解決の努力が傾けられてきた。そのうち,異なる被 験者集団から別個に得られた複数個の因子負荷量行列を,ある仮説にもとづいた理想的な構造に 導くための,所謂 プロクラステス法 については, Mosier(1939),  Schonemann (1966),  Browne (1967)らの,また再検査資料のような,所謂 縦断的因子分析a (longitudinal factor  analysis)の研究については, Corballis  & Traub  (1970) Nesselroade(1972)らの研 究が代表的な研究といえる。また,得られた結果の因子的不変性の評価指標の研究としては,

Tucker (1951),  Pinneau & Newhouse (1964)らの研究が注目される。一方,最尤法による 演繹的な統計的検定法を用いた確認的因子分析法 (confirmatoryfactor analysis)としては,

Joreskog (1967)以降の研究があり,今後の重要テーマとして注目すべき議論を提供している。

しかし,従来の最小二乗法的な確認的因子分析法としても解決をせまられている問題が山積して おり, Meredith(1964),  辻岡 (1975)らは被験者母集団と標本集団との関係に注目しつつ,因 子的不変性の追求を行なうぺきことを提案して来た。

筆者らは先の2論文(辻岡・柴田 1983,柴田・辻岡 1983)において,上記の諸研究分野のう ち,とくにプロクラステス問題と縦断的因子分析法をとりあげ,因子負荷量(またはパタン)行 列の不変性を追求する "Patternmax型解法 とよぶ方法と, 因子得点行列の不変性を追求す "Factormax型解法"とよぶ方法について,数理論を展開するとともに,実際の数値例を用 いて,両者の比較を行なった。その際, Patternmax型解法としては, Schonemannの直交プ ロクラステス法とそれに続く基準集団の斜交変換行列による両集団の同時回転が,実質科学的解 釈にとって最良解を導くことを提示した。また, Factormax型解法としては,正準回転に留ま Nesselroadeの解法を改良して,基準となる解釈可能な因子得点行列への回転をはかる基準 設定型解法を提案した。

このように一応の問題解決が得られたとき,筆者らの眼前に次に述べるような因子的不変性に ついての「二律排反問題」が浮かび上がって来た。すなわち,因子バタン行列の不変性はPattern‑ max型解法により,また因子得点行列の不変性は Factormax型解法により求めやすい。これ

は,それを求めるための仮定として,回転される一方の行列に対する他方の行列を一定と仮定す るが,一方の行列の最小二乗解を得る過程で,一定であるべき他方の行列がかえってそれと矛盾 するような結果となるという事実にもとづいている。本論文では,まずこの矛盾を解決しうる可 能性のある解法として Corballisらの研究を検討してみた。

本論文の第二のテーマは,所謂因子の不変性を求める場合の因子軸の位置づけの問題である。

本論文では,因子的不変性を論ずる場合,当然その因子軸体系は固定されるべき筈であるとする 立場から,これを「因子軸の定位」とよぶことにした。この場合にも求められた因子は当然実質

‑ 93 ‑

(5)

間西大学「社会学部紀要」第16巻第1

科学的に有意味でなければならない。解釈不可能なものは,いくら数学的に最適解であるとして も,無意味である。また,辻岡・柴田(1983)において検討されたプロクラステス回転は, 2個の 行列の最小二乗近似を求めるものであるが,今後,多数の研究例が存在する場合の因子軸の定位 の問題が生じてくるであろう。さらに方法と考察の節で後述するように実質科学的解釈のための

“単純構造の原理• (principle  of  simple  structure)と最大近似のための 不変性の原理 (principle of invariance)の独立な二原理を,資料の分析段階のどの時点で沌入するかによっ て,因子軸の定位の仕方が多少異なることになり,ここでも新たな定位問題が生じるのである。

本論文ではこの解決法を明示的に提示することはできなかった。また,上記の不変性の二律排 反問題についても, Corballisらの解法は,問題解決とはならないことが,方法論的検討および 数値例の分析からあきらかにされた。

また,因子的不変性の到達度を評価するためのいくつかの指標について検討した。因子的不変 性そのものの主目的指標, たとえば一致性係数は, 因子パクンの平行的比例性 (parallelpro‑ portionality)を具現するための必要条件となる指標には違いはないが, 変量群ベクトルのノル ムの大小によって撹乱され,場合によっては因子的不変性のための十分条件指標とはならないこ とがあるなど,不変性到達度の評価指標には種々の難点,不十分性が伏在している。そこで本稿 では,これらの不十分性を補うための補助指標として,因子的不変性の主指標に加えて,変量ベ クトルについてのいくつかの補助指標の祁入を提案した。また,そのためのコンビュータ・プロ グラムの開発も行なった。

本論文のような方向の研究には,数理論,実際の数値データ,コンピュータ・フ゜ログラムの三 つが共存し,これらを検討して,また,次の問題提起がなされるというような経験的問題解決法 が最良の方策である。今回の発表では,数値例として test‑retestと異種教示の YG性格検査 が用いられたが,さらに他の領域についても検証できればと考えている。

〔 方 法 〕

1 .  

因子パタンの不変性と因子得点の不変性の二律排反

本論文の主題である Patternmax型解法による因子的不変性と Factormax型解法による因 子的不変性の二律排反の問題を明らかにするため,まず2種の確認システムの概要を整理するこ とから始めよう。因子分析モデル公式は,一般に,

(1)  Z=FA'+UD 

とあらわされる。因子分折の一般的解法においては,このモデルを前提として,実質科学上有意 味な直交あるいは斜交の因子パタン行列 A (nxm次)が求められ,ついで直交あるいは斜交の 因子得点行列 F(Nxm次)が求められる。ここで, Nは被験者数, nは変量数, mは因子数 である。また, Z (Nxn次)は観測変量の標準得点行列, U (Nxn次)は独自因子得点行列,

(6)

確認的因子分折における因子的不変性の評価(柴田・辻岡)

D (nxn次)は独自因子得点を標準化してあらわすための対角行列である。

このモデルのうち, 右辺第一項の因子パタン行列 A と因子得点行列 Fによって構成される 行列 FA'(Nxn次 ) は , 行 列 Zであらわされる全成分行列および UDであらわされる独自 因子成分行列に対して, 共通因子成分行列と呼ばれる。本稿で比較の対象となる Patternmax 型解法による確認システムと Factormax型解法による確認システムは,この共通因子成分行列 FA'のいずれか一方の行列の不変性を追求する解法過程をとる。すなわち, 2集団 A,Bのそ れぞれの直交時の因子分析モデルを,

(2‑a)  ZA =FAoA

'+UADA (2‑b)  ZB=FBoB,。'+UBDB

とするとき, Schonemann(1966)の解法を基礎とする Patternmax型解法は, 2種の直交因 子パタン行列に関する誤差行列 Ep(nxm次)を,

(3)  Ep=B,‑AT

とあらわし,未知の変換行列 T(mxm次)に閃する正規直交条件のもとで, tr(Ep'Ep)を最 小化する問題となる。また, Nesselroade(1972)の解法を基準設定型に変形した柴田・辻岡 (1983) Factormax型解法は, 2種の寵交因子得点行列に関する誤差行列E1(Nxm次)を,

(4)  E1=FB0‑FA01'i。

とあらわし,同じ<' 未知の変換行列 T。に関する正規直交条件のもとで,

tr(E/E1)を最 小化する問題になる。

ここで,とくに注意を換起したいことは, (3), (4)式に起因する 2解法の二律背反性が, さら に,④目的関数設定時の立場の相違と⑥解法施行後の分析結果の相違という二面性をもつという ことである。まず,前者のR目的関数設定時の立場の相違とは, Corballis& Traub (1970) 指摘しているように, 2つの解法の目的関数が,次の2つの異なる視点から設定されているとい

うことである。

①被験者を要素とする因子得点を一定と考えることには難点がひそんでいる。たとえば, 1 目の調査と 2回目の調査の間に意見の変化を伴うような実験をしたり,外的条件としてそのよう な圧力が加わった場合には,テストの得点は変化するし,それに伴って,因子得点も変化するの が自然である。また,因子の解釈,命名は因子負荷によって行なわれるが,この解釈の土台であ る因子負荷の一定性を想定する方がより自然である。

②人間の発達を考慮した場合,因子負荷といえども一定ではない。たとえば,各能力変量は年 齢とともに,一般因子に対する負荷が減少し,特殊因子に対する負荷が上昇する。また,これは 実質科学的にも自然なことであり,学習や訓練によっても,このような現象はおこりうる。

この2つの立場を,先のRの視点から, 2種の解法における目的関数と関連させて整理する と,①の立場は,因子負荷行列の一定を仮定して,因子得点行列のみを用いて誤差行列を構成す Factormax型解法の立場であり,③の立場は,因子得点行列を一定と仮定し,因子パタン行

‑ 95 ‑

(7)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第1

列のみを用いて誤差行列を構成する Patternmax型解法の立場であるといえよう。

一方,上記の立場にもとづいて,⑥解法を施行した後に得られる結果を考えると,誤差に関す る目的関数設定段階の立場とは裏腹に,解法の対象となった行列が最小二乗法的に近似した行列 になると期待されるのに対し,一定であるとする仮定のもとに最小二乗近似の対象とならなかっ た他方の行列は,より大きな誤差を内包することが多い。

もっとも望ましい結果は,一方の行列の最小二乗近似をはかることが,もう一方の行列の近似 を相当程度高めることであり,一方の行列の近似が,もう一方の行列の近似を誘導する場合であ る。柴田・辻岡 (1983)によって用いられた縦断的資料 (YG性格検査の test‑retestdata) 分析においては,この誘導が相当程度成功している。 これは, Factormax型解法において,最 大化の目標となる対応因子得点間相関行列を規定する相互相関行列 RAB(nxn次)で示されると ころの,時点 A,Bの共変動成分が,相当程度大きいためである。したがって,仮に,この共変動 成分の小さい資料を用いて Factormax型解法を施行した場合には,先の資料にみられた誘導を 期待することは,きわめて困難となる。その結果,同一の資料に Patternmax型解法と Fae‑ tormax型解法を施行した場合,解法の対象となった行列は,最小二乗法的に最大の近似を示し ても,もう一方の行列の差異が,解法施行前より増大する例も稀ではない。

このような相矛盾する結果を,いかなる不変性のバラダイムで位置づけるかが,本稿の主題で ある。

2.  Corballis & Traubの試論の検討

先述の Corballis& Traub (1970)の指摘から明らかなように, 共通因子成分を構成する2 種の行列のいずれか一方を一定と仮定して目的関数を構成する立場は,種々の実質科学的矛盾を 内包している。しかし,このような矛盾の認識にもかかわらず,今日まで,この問題を克服する 解法はあらわれていない。この問題に対するもっとも直接的な手続きとして,共通因子成分全体 を考慮する解法モデルが考えられる。すなわち,いずれか一方の行列を一定と仮定することが,

実質科学的矛盾を内包する不合理な仮定であるならば,両行列の変化を許容しうる解法の可能性 を検討する必要が生まれてくる。

ここでは,まず,この両行列の変化を許容しうる解法の可能性を,共通因子分析モデルの基本 にかえって検討し,その特質を考えてみよう。因子分析モデルにおいて,共通因子成分全体を考 慮するという前提のもとでも,実際に最小二乗近似を求めて回転される対象は,因子パタン行列 と因子得点行列であることに変わりはなく,両行列の回転による変化を許容する解法をめざすも のである。たとえば,このような前提にもとづく Corballis& Traubの解法では,縦断的研究 における A,B両時点の相互相関行列 RABの共通因子分散部分 RAB(nxn次)に最小二乗近似するように,両時点の両行列を同じ変換行列で回転する手続きを考えている。本稿では,共通 因子成分の近似最大化解法の一試論として,この Corballis& Traubの解法をとりあげ,彼ら

(8)

確認的因子分析における因子的不変性の評価(柴田・辻岡)

の説明に準拠しながら,さらにわれわれの視点をも追加し,この種の解法の問題点を明らかにし てみよう。

さて,因子分析モデルの (2‑a)式および (2‑b)にもとづく共通因子分散部分のみの共変動を RAs (nxn次)と表示するとき,これは,

(5)  RAa=A

b 1

'Fso)B,'

と定義される。ついで,因子軸と因子得点軸が表裏一体であることから,直交因子パクン行列と

.  .  . 

直交因子得点行列を,各時点ごとに,同一の変換行列を用いて回転する。すなわち, A時点にお いては,正規直交条件,

(6)  TA'TA=TATA'=I 

にもとづく正方正規の変換行列 TA(mxm次)を用いて, A。および FAoを回転する。また,

B時点においては,同じく正規直交条件,

(7)  Ts'Ts=TsTs'=I 

にもとづく正方正規の変換行列 Ts(mxm次)を用いて, B。および Fsoを回転する。このと き,先の(5)式は,

(8)  RAa=AI(..l.FAo'Fso)IB,'

=ATA'(N Fso)

1 ' .  

B

' 。

とあらわされる。 Nesselroade(1972) Corballis&Traubの解法モデルが,この(8)式にお ける因子得点部分の正準相関分析を前提とした解法であり,その部分を,正準相関分析モデルに 従って,

(9)  .4Aa=TA'(

FAo1

凡 )

Ts 

とあらわすとき, .4Aa(mxm次)は, m 個の正準相関係数を対角要素にもつ対角行列であり,

正準変量として最大化された 2つの時点の対応因子得点間相関をあらわすことを指摘している。

Corballis & Traubの手続きに準拠して,この(9)式の関係を(8)式に代入し,さらに,

(10)  L=TA.4AsTs' 

と定義すると,この(9)式および(10)式の関係から,先の(8)式は,

(11)  RAa=A。LB,'。

とあらわされる。

次に,先の (2‑a)式および (2‑b)式にもとづく最小二乗解法を念頭において,誤差行列 EA (Nxn次),島 (Nxn次)を,

(12‑a)  EA =ZA ‑if A ‑FAoA

。 '

(12‑b)  Es=Za‑Us‑FaoB,

。 '

‑ 97  ‑

(9)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第1

と設定する。ここで, UA(Nxn UB(Nxn次)は,独自因子成分を簡略化してあらわす 行列である。すなわち, (2‑a)式および (2‑b)式の因子分析モデル公式の表記を用いれば,

UA=UADA,  UB=UBDBとあらわされる行列であり,計算過程の繁雑化を避けるため,便宜的 に簡略に表記したものである。

ついで,この 2つの誤差行列の組合せを, EAA=心 島'EA,EBB=¾ 'EB,EAB=点瓦 島,

EBA=‑EB'1  尻, EAB=EBA1と定義し,この各組合せの誤差平方和の合計を考えると,

(13)  e=tr (EAAEAA') +tr (EBBEBB') +tr (EABEBA) 

とあらわされる。この総和の最小化を,直接, (8) (11)式を前提とする回転技法で達成すること Corballis& Traubによれば,不可能ではないにしても,きわめて困難である。 そこで,

彼らの解法においては, 2段階に分けて解を求める手続きをとっている。すなわち,第一段階と して, (13)式の第1項および第2項の最小化の問題を考え,ついで第2段階として,第3項の処理 を考えるという 2段階方式をとっているのである。まず,第 1段階においては, A, B両時点の 相関行列をそれぞれ別個に主因子分析(あるいは, Harman& Johnes  1966による Minres 法)し,第1項および第2項の最小化をはかる。ついで, 3項の EABを,共通因子得点行列

と独自因子得点行列に関する以下の仮定,

(14‑a)  ‑FAo'UA=‑FBo'UB=O 

(14‑b)  ‑FAo'UB=‑FBo'UA=O N  N 

(14‑c)  ‑UA'UA=UAA (対角行列)

(14‑d)  ‑ UB'V戸 如 ( 対 角 行 列 )

(14‑e)  ‑UA'UB=UAB (対角行列)

および(11)式にもとづいて展開すると,

1  1 

(15)  EAB 喩Z心—刃如 UB-A。 (N凡o'FBo)B,。'

=RAB‑UAB‑ALB,'

=RAtB‑A

LB,

I(・:RABt=RAB‑UAB) 

とあらわされる。 この(15)式を前提として, (13)式の第3項を最小化する行列 Lを求め,さらにこ れを用いて,変換行列 TA, TBを求める手続きが第2段階にあたる。

この最小化の手続きにおいては,まず,未知の行列 Lおよび UABに関する目的関数を,

U6)  / (L,  UAB) =tr (EABEBA) 

と設定する。ついで未知の行列 Lの各要素について上記の目的関数を偏微分し, その結果をす

(10)

確認的因子分析における因子的不変性の評価(•柴田・辻岡)

べて0とおくと,

聞 一1 aJCL, uAB) 

2  aL  =B,。'(RAB‑UAB)'A。‑B,。'B,。LA。'A。=0 となる。さらに,行列 Lについて整理すると,

⑱  L=(A。'A。)‑1A。'(RAB‑UAB) B,。(B,。'B,)→。

とあらわされる。

また,同じく未知の対角行列 UABの各要素について, U6l式の目的関数を偏微分し,その結果 をすべて0とおき, UABについて整理すると,

U9)  UAB=diag (RAB‑ALB,')

となる。このU8l式およびU9l式においては,行列 Lのが個の要素に関する m2個の線形方程式 と対角行列 UABのn個の対角要素に関する n個の線形方程式が設定されている。この解は,

一般に, U8l式とU9l式の繰返し計算の手続きによって求められるが, Corballis & Traub Browneの指摘にもとづいて,直接解の計算が可能であることを示唆している。

このいずれかの方法によって求まった行列 Lを用いて,変換行列 TA, TBを求めるには,一 般に行列 LEckart‑Young(1936)の分解技法が用いられる (Corballis& Traub 1970,  p.85)。すなわち,実行列 LEckart‑Young分解は,正規直交行列 P=TA,対角行列 4=

4AB, およびもう 1つの正規直交行列 Q=TBの転置によって,

(20)  L=P4Q'=TA4ABTB' 

と一意的にあらわされる。柴田・辻岡 (1983)によれば,この種の分解を応用して,基準時点を 決めて回転する転移変換型解法を実施する場合の変換行列 T(mxm次)は, B時点を基準と

したときには,

(21) 

T i

=PQ'=TATB'

となり, A時点を基準としたときには,

(22) 

T i 。

=QP'=TBTA'

となる。この(21)式,(22)式の転移変換型の解および Corballis& Traubの相互変換型の解から明 らかなように,基準を設定するか否かにかかわらず,また,どの時点を基準とするかにかかわら ず,最小二乗値の一意性が保証されることはあきらかであり,すでに辻岡・柴田 (1983),柴田・

辻岡 (1983)において詳述したところである。

この Corballis& Traubの解法は, (8)式に示したように,因子パタン行列と因子得点行列の 回転を想定し,彼らの意図にもとづいて,両行列の変化を許容する解法モデルの設定を試みてい る。しかし, (9)式および(10)式に示されたように,あらかじめ因子得点行列部分の正準相関分析を 想定しているため,解法の結果に与える因子パタン行列の影響は,きわめて微細なものとなる。

すなわち,標準得点行列ZA, ZBのそれぞれの共通因子成分部分のみを反映する標準得点行列の 部分行列を ZAt(Nxn Z(Nxn次)とするとき, (18)式の右辺のカッコ内が,

(11)

間西大学「社会学部紀要」第16巻第1

(23)  RAB‑UAB=R心=ーZA'Z

とあらわされることに注意すると, Eckart‑Young分解の対象となる行列 L (24)  L=(A01 A。)‑IA,。‑

‑CZ'AtzB。(B,。IB,一)。1=‑FAo'FBoN 

とあらわされ, 2つの共通因子得点行列 FAo(Nxm FBo(Nxm)の内稿の形で表現され ることがわかるのである。ここで,共通因子得点行列 FAo,FBoは,それぞれ,

(25‑a)  FAo=ZAtA。(A。'A。)̲I  (25‑b)  FBo=ZBtB。(B,。'B。)‑1

である。これは, Harman(1976)によって, "idealvariables"の概念にもとづく因子得点と 呼ばれたものであり,共通因子部分のみを反映する標準得点行列の部分行列 Z

Z計が求まる のであれば, FAo, FBoは,真の因子得点として求まるという構想にもとづいている。 しかし,

実際には, Z

Z計のみを分離することはできないので, Harmanほ,この代用としてZA,ZB  を用いることを提案している。この因子得点の推定式は, Horst (1965)によって祁かれた共通 因子得点の推定式と同一のものであり, また,芝 (1971)によって, F1と命名された共通因子 得点の推定式と同一のものである。

Horstの説明によれば,この因子得点の推定式は, (1)式の共通因子分析の基本モデルにおける 独自性成分 UDを最小化するという甚準から求められるものである。すなわち, (1)式を移項し

(26)  UD=Z‑FA' 

とするとき,この左辺の独自性成分の平方和 (27) 

(F)=‑tr{(UD)'(UD)) 

を最小化する問題となる0 (27)式に(26)式を代入して, これを未知の因子得点行列 Fの各成分で偏 微分し,その結果をすべて0とおくと,

(28)  1 af(F) 

2  aF  =FA'A‑ZA=O 

となる。この(28)式を,因子得点行列 Fについて整理すると,

(29)  F=ZA (A'A)1 となる。

ところで,柴田・辻岡 (1983)においては, Patternmax型解法と Factormax型解法の本質 的な相違に焦点をあててこれを検討したため,因子得点の推定誤差の問題を内包する共通因子分 析の結果による比較を避け,主成分分析の結果による比較を中心として検討を進めたが,この際 に用いられた主成分負荷行列を基礎とする主成分因子得点の算出式も,上記の(29)式と同一形式で

(12)

確誌的囚子分析における因子的不変性の評価(柴田・辻岡)

あった。 これは,主成分分析法が, 独自性の成分を考えない主因子法とみなされる(芝 1979) ためであり,この場合の(29)式は推定式でなく,真の主成分因子得点の算出式となる。しかし,主 因子負荷行列を基礎として求められる(29)式の因子得点は,数多い共通因子得点の推定式(芝1971) 1つを与えるものである。また, この見地から,前論文(柴田・辻岡 1983)における(31)式〜

(41)式の展開(横断的研究における対応因子得点間相関の性質)を再検討すると,この(41)式におけ る結論は,主成分分析を適用した場合のみならず因子得点の推定値として(29)式を用いた場合の共 通因子分析にもあてはまる。共通因子得点の推定式は数多く,その推定モデルの理論的背景の相 違によって推定値に微妙な差異を生ずるが,一般に,前論文の(31) (41)式の分散処理の本質にか かわるほどの大きな差異を生ずるものではない。

さて,このような視点をふまえて,再び先のU8l式あるいは(24)式で表現されるところのCorballis

& Traubの解法の性質を明確にしてみよう。 (18)式あるいは(24)式の表現から,この解法が,前論 文の主題であった Factormax型解法ときわめて類似することは明らかであるが,この関係は,

以下のような展開によって明示されよう。

まず,その対角要素の跡和が, Factormax型解法の最大化目標となるところの直交の共通因 子得点間相関。CAs(mxm次)は, A,B両時点の共通因子得点のための直交の重み行列を,

WAo (nxm Wso(nxm次)とすると,

(30)。CAB=WAo1 RAB WBo 

とあらわされる。このとき,右辺の相互相関行列 RABが,推定誤差なく,共通囚子成分と独自 因子成分に完全に分離できるならば, (23)式の表現から,この RAB

(31)  RAB=RAtB+UAB 

とあらわされる。この(31)式を, (30)式に代入し,直交の共通因子得点のための重み行列を, (25‑a) (25‑b)式にならって,

(32‑a)  WAo=A(A'A)1 (32‑h)  WBo=.8。(B'B。)1

と定義すれば, Corballis型解法と同形となるが, この(31)式における両成分の分離に関する構想 の相違が両解法の相違そのものであるといえよう。すなわち, Corballis& Traubの解法が,

相互相関行列 RABにおける共通因子分散の推定を,対角要素の推定に帰している((18)'(24) のに対し, Factormax型解法は,共通因子得点のための直交の重み行列 WAo,WBoによって,

RABから抽出される分散を共通因子分散の推定値とみなしているのである。

この両者の推定値は, (31)式の直和分解が,推定誤差なく完全に行なわれるときにのみ一致し,

両解法の基本式である(18)式および(30)式は,(23) (32‑a) (32‑b)式の関係を考慮して,

(33)  WAo'RABWBo=WAo1 (R +UAB) WBo 

=WAo'R WBo+WAo1 UAB WBo 

‑101‑

(13)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第1

=‑FAo'FBo+O N 

=‑F. N 1 FBo

(34)  W'(RAB‑UAB)  WBo= WAo'RABtWBo 

=‑FAo'FBo N 

と展開される。このように,両解法の相違の程度は, (31)式の直和分解の成否にかかわるものであ り,解法モデルの基本そのものにかかわるものではない。 このような展開から, Corballis& 

Traubの解法は,理論式の上で完全に Factormax型解法と一致し,本質的な囚子分散処理の 過程は, Factormax型解法そのものであるといえよう。

3.  正準回転と不変性

2つの直交因子空間に対して正準回転を施こす相互変換型解法については,前2論文(辻岡・

柴田 1983, 柴田・辻岡 1983)においても, Cliffの解法 (Patternmax型 解 法 の 一 例 ) や Nesselroadeの解法 (Factormax型解法の一例)として検討された。しかし,これらの論文に おいて,筆者らは,プロクラステス解法後の最小二乗値の一意性を示すにとどまり,単純構造度 や因子間相関を背景とする因子軸の定位の問題については言及しなかった。この因子軸の定位の 問題とは,正準回転によって成立した 2つの直交因子空間を,単純構造の原理によって回転し,

因子分析的解釈をはかる場合に生じるものである。

この因子軸の定位問題を具体的に示すため, いずれも Patternmax型解法に属する CliffO) 

解法の最終解への経路と Schi:inemannの解法の最終解への経路を対比してみよう。まず, Cliff の解法では,正準回転後の2個の因子負荷量行列を,超行列 C (Znxm次)の形式,

1 5 1   c~{'."•"./

2n  B。T,

に組合せる。ついで, この行列全体の単純構造をみいだすため, 行列 C全体を Varimax 転する〔この手続きについては Berge (1977)に記述がある)。 このとき, TA (mxm

TB (mxm次)は,正準回転における直交プロクラステス変換行列である。ここで Varimax 転後の因子負荷量から成る超行列を Cv(2nxm Varimax変換行列を Tvc(mxm次)と すると,これらの関係は,

(36)  Cv=CTvc 

とあらわされる。また,必要に応じて, Promax法などによって斜交回転を施し,さらに単純構 造化をはかる場合の一連の関係式は,

(14)

確認的因子分析における因子的不変性の評価(柴田・辻岡)

(37)  Cp=CvT1c=CTvcT1c 

となる。ここで Cp(2nxm次)は, Promax回転後の因子負荷量から成る超行列であり, Tic (mxm次)は, Varimax解から Promax解への因子軸変換行列である。なお,単純構造への 回転技法は,直交,斜交を問わず,種々提案されているが,本論文では,直交で Varimax 斜交で Promax法を採用している。

一方,基準行列を設定する Schonemannの解法では,辻岡・柴田 (1983)において記述され たように,プロクラステス回転後の標本集団 (A集団)の因子負荷量行列に, 基準集団 (B集 団)の Varimax変換行列 Tvs(mxm次),および Promax回転に伴う因子軸変換行列 Tis (mxm次)を乗じて最終斜交解を求めた。 この一連の手続きを,上記(35)(37)式にならって展 開すると,プロクラステス回転後の超行列 S

~s~ •[— _A:,

̲m

2n  B

。 ]

と定義される。ここで, T

(mxm次)は, Schonemannの解法によるプロクラステス変換行 列である。この(38)式に,基準行列の各変換行列を乗じて,最終斜交解 Sp(2nxm次)を,

(39)  Sp=SvT1B=STvBTtB 

と表現する。ここで, Sv(2nxm次)は, TvBを用いた Varimax回転後の因子負荷量から成 る超行列である。

上記のような2種の解法過程によって求められるところの最終斜交解では, 2種の解の因子間 相関は,一般に,

(40)  T1c'T1c~T1B'T1B

となり,異なる因子軸体系をもつことになる。このように同一の資料に対する 2種の分析結果 において,異なる因子間相関が求められるという事実は,因子的不変性を確認するための基準体 系を確定する上で, 1つの不確定性となる。

また,この2つの解法過程を,操作目的の観点からみると,相互変換型解法が,標本,基準の 区別なく超行列全体の単純構造化をめざしているのに対し,転移変換型解法は,基準集団の因子 軸体系を保持することをめざした手法であるといえよう。

4 .  

不変性評価の諸指標

因子的不変性の評価指標に関しては,かなり古くから, Henrysson(1957), Wrigley (1958),  Harman (1976), Pinneau & Newhouse (1964)などによって比較検討が行なわれている。し かし,これらの比較検討を概観すると,種々の評価指標は,その目標達成の点からいずれも十分 なものとはいいがたい。そこで,前2論文において展開した総合評価システムにおいては,いく

‑103‑

(15)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第1

つかの評価指標を組み合わせ,その短所を相補う形で,体系的な評価法を構成しようと試みた。

ここでは,この総合評価システムの特徴を明らかにするため,本論文の主題である因子パタンの 不変性と因子得点の不変性の不一致の問題をふまえながら,現在使用されている各評価指標の問 題点を再度検討した。

(A)  構造の評価指標

ここでは,各指標の適用範囲を一般化するため,因子負荷量という表現によって,因子と各変 量の関係を代表し,これを一般的な意味で構造と総称することにした。したがって,ここでいう 構造とは,因子構造 (factorstructure)や準拠構造 (referencestructure)を直接示唆する

ものではない。

①  誤差平方和平均の平方根 (root‑mean‑squaredeviation) 

この指標は,同一の変量から成る 2組の因子負荷量行列(各列が対応する因子から成るものと する)の各対応要素の差から成る行列を E (nxm次)とするとき,

(4U  e,m.=

diag(E'E)} t 

となる。ここで, e,ms(mx 1次)は,対応する各因子負荷量ベクトルに関する誤差平方和平均の 平方根を各要素とするベクトルである。

Harmanの指摘によると, この指標の問題点は,対応する因子の一致度の高低を判断する目 安としての役割を必ずしも十分に果たせないところにある。すなわち,対応する因子が完全な一 致を示した場合にのみ, その値がゼロとなることは明らかであるが, この完全な一致を示す値 に,どの程度接近すれば,良い一致 (goodagreement)とみなされ, どの程度離れれば,悪い 一致 (badagreement)とみなされるのかを判断する拠りどころがないというのである。

③  因子負荷の相関係数 (correlationcoefficient of factor loadings) 

2つの変量の関係の高低の程度を評価するもっとも一般的な指標として,相関係数がある。こ の指標は,先の平均誤差平方和の平方根の場合と異なり,その高低によって,一致の程度をあら わすことが可能であるが,因子負荷量に対して,この指標を適用することには,種々の疑念があ

Pinneau & Newhouse (1964)は,この問題に関して,以下のような簡明な指摘を行なって いる。彼らは,この問題を考える前提として, 行列 Aにおける任意の因子負荷量ベクトル a; (nxl i=l,2, ……, m心の負荷量が, 0.850. 00の間で変化する一方で,行列 Bにおけ る任意の因子負荷量ベクトルb;(nx 1 j=l, 2, ……, m心 の 各 負 荷 量 が , ベ ク ト ル む と 同 形の分布で, 0.85 ‑0.85の間で変化している場合を想定している。このとき,相関係数の算出

(16)

確認的因子分析における因子的不変性の評価(柴田・辻岡)

に伴う標準化の手続きに伴って,ベクトル a,における最小値の負荷量0.00の標準化後の値が,

ベクトル b;の負の最大負荷量ー0.85の標準化後の値と同値になることは明らかであり,きわめ て矛盾した手続きをとることになる。すなわち,標準化の手続きを行なうことによって,当該の 因子との大きな共分散を示すー0.85という値が,当該の因子と全く共分散をもたない0.00という 値と同等に評価されるという矛盾を生み出すというのである。

⑧  一致性係数 (coefficientof congruence) 

先の相関係数の算出においては,標準化の手続きを用いたため,上記のような矛盾を生じた。

ここで述ぺる一致性係数の指標は,この問題点を配慮したものであり,各因子負悔量ベクトルの 平均からの偏差を用いる標準化の手続きにかわって,各負荷量ベクトルそのものを規準化する手 続きをとっている。すなわち,因子負荷量ベクトルそのものを,その各要素の平方和の平方根で 規準化した2つのベクトルの内積を用いることによって,標準化手続きの矛盾を克服しようとし たのである。これを, 2つのベクトル a;,b; を用いてあらわすと,一致性係数 C;;

(42)  C;;=  a/b;  となる。

しかし, Harman(1976)によって指摘されたように,この平均からの偏差を用いない処理過 程そのものが,新たに一致性係数の問題点を生みだすことになる。すなわち,平均からの偏差を 用いないこのような指標には,相関係数に適用されている有意性検定を利用できず,その結果と して,この指標の値の解釈をきわめてあいまいなものにしてしまうというのである。もちろん,

一致性係数の値の分布を求めることによって, なんらかの検定を試みようとする研究 (Nessel‑ roade & Baltes 1970,  Nesselroade, Baltes & Labouvie 1971)も散見できるが, 十分なも のではない。

また,この指標のあいまいさの問題は,以下の Pinneau& Newhouse (1964)の指摘によっ て,より明白となろう。彼らは, 4つの変量から成る2つの因子負荷量ベクトル a;,b; を想定

した上で,まず, a;の各要素が, 0.01, 0.02,  0.03,  0.04であり, b;の各要素が,順に0.91,  0.92,  0.93,  0.94である場合の一致性係数について検討している。このとき,この 2つのベクト ルの内容は,実質科学的見地からみると,あきらかに相異するものであるが,変化の推移が同一

(0.01きざみで,順に上昇変化)であるため, (42)式にもとづく一致性係数は, きわめて高い値 (0.92)となってしまう。このことは,この指標が, Cattell(1944)のいう "parallelpropor‑ ti~nal profiels"の性質を反映するものであり,変量ベクトルの長さの差を度外視した相似形

(浅野 1971)を評価する指標となっていることを示すものである。

次に,彼らは,ベクトル a;の各要素が,順に 0.2,  0. 4,  0.  1,  0. 3であり,ベクトル b; 各要素が,順に 0.3, 0.2,  0.4,  0.1である場合について検討を加えている。この場合にも,負

‑105‑

Table 1 Two Triangular Correlation Matrixes Analized (Right Upper Triangle:  Test‑Retest of YG, Left Lower Triangle: Ideal Friend Image‑Self Image)  I 目‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑紐,,血血ity」I D first session I second session  C I N 0 Co Ag G R T A  s I D C I N N Co A雹GR T
Table 2 Comparison o f  F a c t o r i a l  I n v a r i a n c e  by t h r e e  s o l u t i o n s  ( P a r t   I  ,  I I )  
Table  3 ‑ 2   Comparison o f  2  t y p e s  o f  r o t a t i o n  
Table  4  Comparison o f  Promax, Patternmax a n r l  Factormax s o l u t i o n s   o f  t h e  Y‑G I n v e n t o r y  u n r l e r  d i f f e r e n t  i n s t r u c t i o n s  ( P a r t   I ,  I I ,  f i l ) 

参照

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