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(1)

租税帰着分析 :失業 と技術的不確実性 *

角 野

1.は じめに

租税帰着の理論 は, さまざまな租税改編が もた らす所得分配‑の影響を明 ら か に しよ うとす る分野である Harberger [1962]は二部門二要素モデルを 用 いて,一般均衡 の フ レームワークで初 めて法人所得税の帰着 の分析を行 っ た。Harbergerは,経済を法人部門 と非法人部門 とに分 け,両部門が完全競 争の状態 にある静学的な状況で,法人部門に対 して法人利潤税 を課 した とき に,資本 と労働の機能的分配 にい なる変化が生 じるかを分析 した。

しか し,Harbergerのモデルは,い くつかの制限的な仮定が置かれてお り, その後の租税帰着の展開は, さまざまな方 向へのHarbergerモデルの問題点 の克服 と拡張 とい う一般化 にあった と言 うことがで きる。

Harbergerのモデルの拡張に関 しては,まず,McLure[1975],Mieszkow‑

ski[1967]等は,雇用税,物品税等の種 々の租税,つまり,財産税の帰着分析を 行 った。また,要素需要に関 しては,労働 は完全雇用が前提 とされてきたが, こ れ も現実的な状況を表現 しているとは言えなかった。そこで,国際経済学の分野 では,HarrisandTodaro [1970]が初めて失業が存在す る経済モデルを提示 し,BhagwatiandSrinivasan [1974],Stiglitz [1974]等がモデルの精撤

*

本稿 は1992109日に神戸大学 に於て行われた 「日本財政学会第49回大会」で 報告 した ものに加筆 ・修正 した ものである。学会報告に際 し有益なコメ ン トを頂い た追手門学院大学の岸昌三教授,および名古屋市立大学の経済研究会に於て多和田 寅教投か ら有益なコメン トを頂 いたことに深 く感謝申 し上げる。なお,言 うまで も なく本稿における一切の誤りは筆者の責任である。

409

(2)

410 第 43巻 第 3 ・4号

化を試 みた。その後, このモデルは租税帰着分析に応用 され,Behuria [1984], Miyagiwa [1988]等が さまざまな分析を行 っている。一方,Batra [1975a], Pomery [1983],Sakai[1978],Sandmo [1972]等 は,不確実性下で二部 門二要素モデルを議論 し,Harbergerの確実 な世界 を前提 に したモデルの不 十分 さを指摘 している。 これ らのモデルを租税帰着分析 に応用 した もの として

は,Batra [1975b],RattiandShone [1977a,b]があ る

本稿 の 目的 は, このよ うなHarberger以降の租税帰着の展開を十分 にふ ま え,さ らに一般化す ることであ る。したが って,経済 には失業が存在 し,かっ, 生産技術 にある種の不確実性が存在 していることを想定 した うえで,種 々の租 税改編 に伴 う経済‑の影響を雇用政策 も含めて分析す ることにな る。1)次 に, 本稿の分析の 目的を以下で示 してお くことにす る。

第‑ に,HarrisandTodaro [1970]モデル (以下,HTモデル略す)以 降の議 論 に沿 った経済 に失業が存在 す るモデルを考慮 す る。本稿 で は,Be‑

huria [1984]のモデルに基づいて,二部門を法人部門 と非法人部門 とに分 け, 前者 に於 ける企業が,労働組合を設立 した り,最低賃金率の保障を制度化す る

ことを考慮 し,最 も単純な失業を考慮 した硬直的賃金率をモデルの中に組 み込 み,租税の帰着分析を試み る。

第二 に,Batra [1975b],Pomery [1983],RattiandShone [1977a,

b]等の分析に したが って経済 に不確実性が存在す ることを考慮す る。そ して, 企業 は不確実性要因か らくる リスクに対 し,危険回避 的に行動す ることを仮定

し,租税の帰着分析を試み る。

第三 に,失業 と不確実性要因が考慮 されたモデルで,種 々の租税を考慮 し, それ らの租税の改編 による経済‑の影響を分析す る。伝統的な租税帰着分析で 1)労働者が労働組合を形成 し,制度的に一定の最低賃金率を保障することを企業に対 して請求 し,不当な雇用状況であれば,ス トライキまたは労働争議を起こすことが 想定されていることを意味している。この影響は,一方では,経済に労働者の失業 が存在する可能性を生 じさせ,他方では,企業には生産技術に不確実性要因が含ま れてくることになる。また,企業がより高度な生産技術を用いるようになれば,設 備の故障 ・破損等による損害は莫大であり,生産に対 して リスクは高 くなり,生産 側に起因する不確実性要因は極めて重要な問題となってくることを示 している。

(3)

租税帰着分析 :失業 と技術的不確実性 411

は,資本 と労働の機能的分配にいかなる変化が生 じるかを分析す ることが主た る関心事であったが,失業が存在す る経済では種 々の租税の改編が労働需要 に いかなる効果を もた らすかが重要であ り,雇用効果 について分析を試みる。

議論 は次のように進め られ る。次節ではモデルが提示 され,第 3節では,分 析の準備がなされ る。第 4節では,比較静学の手法を用いて,租税体系の改編 が経済の機能的分配 に与える効果および労働需要 に与え る効果 に関 して分析が なされ る。最終節では,残 された問題が述べ られ る。

2.モデル

本節では,租税帰着理論の伝統的な仮定に したが って,競争的な2地域か ら なる経済を想定 し,第 i地域では財 iを生産 しているとす る。第 1地域 は法人 部門,第 2地域 は非法人部門 とす るが,第 1地域の生産技術 には不確実性が存 在 しているものとしよう この時,各地域の代表的企業の生産関数を,

xl‑Fl(Ll,K')a

x2‑F2(L2,K2)

とす る.ただ し,L71,Klはそれぞれ第 i地域の労働,資本需要量を示 してい る。生産関数 は,一次同次で,限界生産力 は正で逓減的,二階連続微分可能, 準凹 とす る。 さ らに,αは確率密度関数g (α)を持っ確率変数であ り,本稿 で は,単純化のために, a‑Xl/Eα> 0 と してお こう。2) したが って,a の定義か らEα‑1, およびEXl‑Fl(Ll,Kl) が示 され る。

生産要素 に関 しては,次のよ うに仮定をお く 資本及 び労働 は両地域を完全 に移動可能であ り,税 引 き後 の報酬率 は両地域で均等す るはずであ るか ら, 各 々,R,Wとす る。さ らに,賃金の硬直性の存在を仮定 し,余剰労働が生 じ ているとす る。賃金の下方硬直性 は,最低賃金率の制度および労働組合の組織

2)Pomery [1983]においても同様の単純化がなされている。

(4)

412 43巻 3 ・4号

化 の結果 と して生 じて い る と解釈 され る したが って,Behuria [1984] 同様のアプローチを施せば,税引 き後賃金率 (W )が硬直的 と仮定 され る。

この とき,第 i地域の税引 き後利潤 (7Tz)は,

7rl‑ TllTcIPIFl(Ll,Kl)a‑ TLIWLl‑ TKIRKl] (2a)

7T2 Tc2P2F2(L2,K2)‑ TL2WL2‑TK2RK2] (2b) で定義で きよう ただ し,P2‑ 1と正規化 し,T1‑ lltl;Tcz‑ 1‑tcz;

TLt‑ 1+tい ;TKl‑ 1+ tKtと定義 し,0≦ tl,tCt< 1;tit,tKl≧ 0 とすれば,tl,tC i,tLz,tK.は,各 々,第 1部門の利潤税率,第 i部 門の物 品税率,雇用税率,資本税率を示す とす る。ただ し,利潤税 はフル ・ロス ・オ フセ ッ ト(rulllossorrset)であると仮定す る。 3) まず,第 1部門 (不確実性 部 門)の企業の 目的 は税引 き後利潤 につ いての期待効用 (E [Ul(7Tl)]) 最大化 と仮定す る。ただ し,その行動は,危険回避的 (U.'()>0,Ul''()<0)

とし,さ らに,Arrow ‑Prattの絶対的危険回避減少関数を, ra(7rl)‑ ‑Ul"(7rl)/ Ul'(7rl)

のよ うに定義すれば, この下では,ra'(7rl)<0である。 4)

期待効用最大化 よ り, TLIW PTcIPIFLI TKIR‑PTcIPIFK l

が成立す る。ただ し, βは リス ク ・プ レミアムであ り, p‑ElUl'(Trl)a]/ElUl'(7Tl)]>0

(3)

(5)

で定義す る。 5) また,FI,は,第 j部門の生産関数の第 i要素 による偏微係数 3)Batra [1975]においても,同様なrulllossorrset潤税が仮定されている。

4)酒井 [1982]を参照せ よ。

5)酒井 [1982]では,βの正値性の証明がなされている。

(5)

租税帰着分析 :失業 と技術 的不確実性 413

を示 している。 (4)および (5)を税引き後利潤の定義式 (2a)に代入す れば,

7rl‑ TllTcIPl(a‑P)Fl(Ll,Kl)] (2a') となることが確かめ られる。

また,第 1部門の生産関数 に確率オペ レーターを施 し,Ea‑ 1であること に注意 し,オイラー定理を用いれば,

EXl‑Fl(Ll,Kl)Ea‑Fl(Ll,Kl)‑FLILl+FKIKl (l') となる。そこで,第 1部門の期待効用最大化の条件式 (4a)および (4b) を (1')に代入 し,若干の式操作を施せば,

PTcIPl‑CLITLIW+CKITKIR (6)

が得 られる。ただ し,CLl‑ Ll/EXl,CKl/EX.を定義 し,第 1部門の労 働および資本の投入係数を示す。

次に,第 2部門 (確実性部門)の企業の目的は,通常の税引き後の利潤最大 化 とす ると,(1b)および (2b)か ら,

Tc2‑ CL2TL2W +CK2TK2R (7) が成立 しなければな らない。ただ し,CL2‑ L2/x 2,CK2K2/x 2を定 義 し,第2部門の労働および資本の投入係数を示す こととす る。

各部門の労働市場の雇用条件 は, Ll‑ CLIEX I

L2‑ CL2x 2

が成立 していなければな らない。ただ し,Lz.は第 i部門の雇用量を定義する。

一方,資本市場 は完全利用が成立 しているか ら,

(6)

414 43 3 ・4

CKIEXl+CK2x2‑K (9)

の均衡条件が得 られ る。ただ し,K は経済 に存在す る資本の総量を定義す る.

要素需要条件 については,生産関数が準凹かつ一次同次を仮定すれば,各々 の投入産出係数 は,産 出規模 と独立 して決定 され,,投入価格のみの関数 として 示す ことがで きるか ら,

Cり‑Cz,(TLJW,TK,R),i‑L,K ;j‑1,2 (10)

が成立 している。

労働市場では,余剰労働の存在か ら税引き後賃金率の硬直性が仮定されており,

I,V‑W 3円ilE

が成立す る。

生産物市場の需給均衡条件 は,Harberger [1962],BallentneandErs [1975]に したが って,代表的家計 と政府の財貨 に対す る選好 は同一かつ相 似拡大的 と仮定すれば,相対価格のみの関数 として示す ことができる さらに, 第 1部門では期待需要 と期待供給が一致す るように決定 され ると考えることに すれば, 6)

EXl‑H (Pl) (12)

で表 され る。ただ し,Hは第 1財の需要関数を定義 し,‑H '(Pl)<0である.

以上 をま とめれば, (2a'), (5), (6), (7), (8a), (8b), (9), (10), (ll), (12)の合計13本の方程式を持 ち,内生変数 は,Ll, L2,EXl,x2,W,R,‑CLl,CL2,CKl,CK2,Pl, β,7rl の合計13個で

ある。

6)RattiandShone[1977b]で用 い られた財需要面 のモデルの組込 みに従 うもの とす る。

(7)

租税帰着分析 :失業 と技術 的不確実性

3.予備的考察

(2'), (5)を全微分 して を消去すれば, γ1E^xl十γ1Pl+7,2β‑‑γ1(テ1+テcl)

415

(5')

が得 られよ う。 7)

ただ し, を変化率 (例えば,jSl‑ dPl/Pl)を表す と約束 し,γiは,各々, γ1‑‑E[U"(α‑β)2]TITcIPIEXl>0,

7,2‑ 1E[U"(α‑β)]TITcIPIEXl+E[U']W,

を定義す る。 ざらに,以下の分析のためには次の補助定理を必要 とす る。

補助定理 1

絶対的危険回避減少の仮説の下では,E[U"(α‑β)]>0 となる。 8)

したが って,補助定理か らγ2>0が成立 していることが分 かる。

(6), (7), (8a), (8b), (9)を全微分す ることによ りr

CL.炉 +CKIR‑Pl+β+ Tcr (CLlfLl

+

CKlfKl)

eL2炉+6K2j‑fc2‑(CL2fL2+CK2fK2) lL li llLl(E^x l+C^Ll)

ん2f2‑ん2(妥2C^L2)

AKIE^xl+lK2X2 ‑(lKIC^Kl+lK2C^K2)

(6')

(7') (8a') (8b') (9')

を得 る。ただ し,Le (‑ Ll+L2),A,0を各々,総労働需要量,物理的クー

7) (5')の導出については,角野 [1988a,b]を参照のこと。

8) E[U"(a‑β)]>0の証明は,RattiandShome[1977],角野[1988a]を参照 のこと。

(8)

416 43 3 ・4

ムでの要素集約性 (ただ し,経済に存在す る余剰労働を除いた相対的な資本労 働比率で示される。),要素価格 シェアでの集約性 と定義すれば,lLj‑L]/Le, lKj‑K,/K, Ail+ん 2‑ 1{ i‑L, K, OLi‑TLIW/ TcIPl, CL2‑

TL2W/Tc2,0Kl‑ TKIR/ PTcIP" OK2‑ TK2R/Tc2, CL,+CK,i,

j‑1,2である。

要素需要条件 (10)を変化率で示すために,第 j部門における労働 と資本の 代替弾力性を次のよ うに定義す る。

6,‑‑(col,‑C^Kj)/(好一虎)>O,j‑ 1,2 また,第 j部門は費用最小化 していることか ら,

eLjCLj+ CKjCKj0,j‑1,2

とす る条件式を得 る。 さらに, (ll)を全微分すれば,

‑0

を得 る。また,生産物市場の需給均衡の条件式 (12)を全微分すれば,

EX1‑‑elPl

(13)

(14)

(ll')

(12') が得 られ る.ただ し, elは第 1部門の生産物 に対す る需要 の価格弾力性を定 義 し,非負の符号を もつ とす る。 したが って,(13),(14), (ll')か (10)

を全微分 して変化率で表 した式 は, C^L5‑0Kj6jR^‑eKjC,(fLjfK,)

C^K,‑‑CLjdjR^+eLj6,(fLj‑ fK,),j‑ 1, 2 として整理 され る。

ここで, (5'), (6'),(7'), (8a'), (8b'),(9')は,各 々 (10a),

(lob), (ll'),(12')を用いて整理すれば,

(9)

租税帰着分析 :失業 と技術 的不確実性

‑γ1'E^x l+ y2β‑‑γ1(fl+fcl)

CKIR^‑ ‑(1/el)I;1+テcl‑ (eLlfLl+CKlfKl) eK2R^‑fc2‑ (OL2fL2+eK2fK2)

417

(5'') (6") (7'') とな り, また,(8a'),(8b') はLe‑ L l+L 2であることに注意すれば,

LelLILl+lL2L2

lEX l+ lL2x 2+ SLR

‑ SLl(fLl‑fKlト SL2(fL2‑fK2)

が得 られ, さらに,

lKIE^x l+ lK2度 2‑ 8KR^+ SKI(fL1‑ fKl)

18K2(fL2‑ 亮 2)‑ 0

(8'')

(9")

を得 る。ただ し,

yl'‑ yl(1‑el)/el,

SL17'LleKldl>0, 8L2 YL26K262>0, 8LSLl+SL2,

8KlyKleL161> 0, 8K2‑ rK2CL262>0, 8KSKl+SK2, を定義 してお く

以上か ら (5''),(6''),(7''),(8''), (9'')の方程式体系 は,次のよ う な体系で整理 され る。

JA'‑BT' た だ し,

∫‑ 2

2

oo

0

11/

o

i:iG1

00

1

00

12&CQb<

o

1

00 0

(15)

(16)

(10)

418 43 3 ・4

2220&&

o

JI

111

&o&6ohj

o

0lU00

11000

A‑[E^x I x2 fe Rn β]

222o&cQk

o

l11

o&o ヽノ口Z1′し

T‑[テ1 f cl 李 。2 fLl fL2 f Kl fK2]

を定義す る

最後に,(15)で表 される方程式体系について吟味 してお こう。そ こで,(16) で定義 され るヤ コピア ン行列 Jの行列式の符号を確定 しなければな らないか

ら, その値を実際に計算すれば,

IJl1K2eK2[72/El‑ γ1']

1K2eK2[(r2‑ Yl)+Ylel]/ el (16') が求め られ る。そ こで, IJ Lの符号 を確定す る十分条件 は以下の補助定理で 与え られ る。

掃助定理 2

絶対的危険回避減少の仮説の下では,(r2rl)>0が満たされるか ら,tJl>O を得 る。 9)

以上か ら (15)の体系の IJ Iの符号の正値性が確定 したか ら,以下では具 体的な租税帰着分析を行 うことにす る。

9) (γ2‑γL)>0の証明 は角野 [1988b]を参照の ことO

(11)

租税帰着分析 :失業 と技術的不確実性 419

4.租税帰着分析

本節では,租税パ ラメーターT‑IT. TcI Tc2 TLI TL2 TKI TK2 I

の改編が要素所得分配率および労働需要量 に与える効果を比較静学の手法を用 いて分析す る。

4‑1.利潤税 の帰着効果

(15)か らクラーメル公式を用 いてR/ を求め ると次のよう,になる だ しTl<0とす る。 10)

LJl(A/テ l) ‑0

これは次のよ うにまとめられ る。

命題4‑1‑1

絶対的危険回避減少の仮説の下で は, フル ‑ロス ・オフセ ッ トな利潤税 は, 賃金 ・資本 レンタル率に中立的な効果を もち,資本 と労働 に等 しく税負担をか

ける。

利潤税は賃金 ・資本 レンタル率,つ まり要素所得分配率 に対 してディス トー ションとして働かない ことを示 している。また,正規化 された第2財価格では か った実質的な資本 レンタル率が変わ らない ことを示 している。Harberger

[1962]で は確実性下で分析がな され,超過利潤が生 じる可能性 はな く, こ の命題で導かれた租税帰着の分析 はなされていないが,本稿では不確実性下で 分析がなされてお り,(2T')で表現 されているように超過利潤の存在する可能 性か ら,上述の命題が新たに導かれたわけである。

次に,労働需要量に与える効果 (LC/テ1)について触れてお く。 (15)か ら, 10) Tl‑i‑tlだか ら,Tl<0tl> 0を意味 していることに注意 してお く。

(12)

420 43巻 3 ・4号

LJL(I/fl)ニー刷oK2γ1

なる関係が導かれ るが,を物理的タームでの要素集約性 (ただ し,経済 に存在す る余剰労働を除いた相対的な資本労働比率) と定義すれば,

lAl‑AL,lK2‑lL2lKl‑ lLl‑ AKl‑ lK2‑ lL2

で表 され る そこで,次のような命題を与え る。

命題 4‑1‑2

絶対的危険回避減少の仮説の下で は, フル ・ロス ・オフセ ッ トな利潤税 は,第 1部門が労働 (資本)集約的であれば,経済全体の労働需要量を創出 (減少) す る効果を も

ここで得 られた命題 は不確実性下で失業が存在す る場合 の租税帰着 の結果 であ り,本稿 の分析 によ って得 られた新 たな命題 であ る。次 に この命題 につ いて解釈を行 ってお くことに しよ う 利潤税 は需要代替効果のルー トを通 じ て雇用創 出(減少)効果を引き起 こすが,これ は次のよ うに解釈で きる。 まず,

ここで各部門の労働の投入係数の定義式を思 い起 こしてみ ると,各々,CH

Ll(Wl,R)/EX l(Wl,R),CL2‑L2(Wl,R)/x 2(Wl,R)であ り,労 働投入 ・生産物比率で表示 され,賃金率 と資本 レンタルの関数で表す ことが可 能である。 したが って,利潤税によって賃金 ・資本 レンタル率が変わ らなけれ ば,各部門の労働投入係数 は変わ らない。 したが って,利潤税による需要代替 効果 は,第 1生産物 (X l)の生産を減少 させ,第2生産物 (x 2) の生産を増 加 させ るか ら,第 1部門の労働投入の減少 と第2部門の労働投入の増加 によっ て, これ らの生産物の変化分が相殺 されていなければな らない。その結果,余 剰労働が存在す ることを考慮 している本稿の経済では,労働投入量が増加 また は減少す る余地が残 されてお り,利潤税 によって雇用創 出 (減少)効果が生 じ ることになるわけである。

(13)

租 税帰着分析 :失業 と技術 的不確実性

4‑ 2.物品税の帰着効果

(15)か らクラーメル公式を用いてR/テclを求めると次のよ うになる。

lJl(R/ Tcl) 0

ただ しテcl<0とす る。 11'これは次のようにまとめ られる。

421

(18a)

命題4‑2‑ 1

絶対的危険回避減少の仮説の下で は,第 1部門に対す る物品税 は,要素所得分 配率に中立的な効果を も

第 1部門の物品税 は,要素所得分配率 に対 してディス トーシ ョンが働かない ことを示 している。 また,正規化 された第 2財価格ではか った実質的な資本 レ ンタル率が変わ らないことを示 している

次に,労働需要量に与える効果 (Le/チcl)について触れてお く (15)か ら,

lJl(Lle/Tc.) ‑1lleK2(r2γ1) で表 され る そこで,次のような命題を与える。

(19a)

命題4‑2‑2

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 1部門に対す る物品税 は,第 1部門が 労働 (資本)集約的であれば,経済全体の労働需要量が創出 (減少)す る効果 を もっ

第 1部門の物品税 は,需要代替効果のルー トを通 じて雇用創 出 (減少)効果 を引 き起 こすが, これは利潤税 と同様の解釈が可能である。つ まり,第 1部門 の物品税 によって賃金 ・資本 レンタル率が変わ らなければ,各部門の労働投入 係数 は変わ らないか ら,需要代替効果であるX lの減少 とx 2の増加 をLlの減 ll) Tc1‑ 1‑tclだか ら,Tcl<0tcl>0である。

(14)

422 43 3 ・4

少 とL2の増加 によって相殺 し,労働投入量 は,経済全体でみれば増加 または 減少す ることにな るわ けで ある. この命題 は,Behuria [1984]の結論を一 部確認 した もの と言える。つま,り,命題4‑4‑2と併せて考慮すればより明 確であるが,第 1(法人)部門が資本集約的な らば,物品税は雇用減少効果で あるか ら好 ま しくない租税 と言えるか らである。

(15)か らR/TC2は次のよ うになる ただ し,Tc2<0とす る。12) lJI(RA/ PC2)ニスK2(γ2/el‑γ1')

これは次のようにまとめ られる。

(18b)

命題4‑2‑3

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第2部門に対す る物品税 は, レンタル率 を下落 させ る

2部門の物品税が要素所得分配率に対 してディス トーシ ョンとして働 くこ とを示 している。 また,正規化 された第 2財価格ではか った実質的な資本 レン タル率が下落すると解釈されよう。次に,労働需要量に与える効果 (LC/Tc2)

について触れてお く。 (15)か ら,

lJl(Le/Tc2)ー刷 CKly2+(γ2/e1‑γl')

×(ん28K+lK28L)

で表 され る。そ こで,次のような命題を与える

(19b)

命題4‑2‑4

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 2部門に対す る物品税 は,第2部門が 労働集約的であれば,経済全体の労働需要量が減少す る効果を もつ。

12)Tc2‑1‑tC2だか ら,Tc2<0tc2>0である。

(15)

租税帰着分析 :失業 と技術的不確実性 423

第 2部門の物品税 は,需要代替効果のルー トを通 じて雇用減少効果を引き起 こすが, これは次のように解釈が可能である。つまり,第2部門の物品税によっ て資本 レンタル率が下落すれば,各部門の労働投入係数 は小 さ くなる。一方, 需要代替効果であるX.の増加 とx 2の減少がLlの増加 とL2の減少を もた

らすが,投入係数の減少 は経済全体の労働投入量の減少 になっている。

ここで,各部門に共通税率を課す一般物品税について触れておこう これは,

Tcl‑Tc2‑Tc とおいて分析で きるか ら,要素所得分配率 に対す る効果 は, (18a),(18b)か ら,

IJI(R^/fc)^K2(r2/El‑γ1') これは次のようにまとめ られる

命題 4‑2‑5

絶対的危険回避減少の仮説の下では,一般物品税は,レンタル率を下落 させ る。

命題4‑2‑1, 4‑2‑3か ら分か るように,第 2部門の物品税の効果が 支配的 とな ることを示 している。

経済全体の労働需要量に対す る効果について も (19a),(19b)か ら

IJl(fe/fcl)ニーllJ[eK2(γ2‑γ1)+eKlγ2] + (γ2/ el‑ γ1')( 28K+AK28L )

が得 られ る。そ こで,次のような命題を与える。

命題4‑2‑6

絶対的危険回避減少の仮説の下では,一般物品税 は,第2部門が労働集約的で あれば,経済全体の労働需要量が減少す る効果を もつ。

命題4‑2‑2,4か ら分か るように,第2部門の物品税の効果が支配的 と

(16)

424 43 3 ・4

なることを示 している。

4‑3.雇用税の帰着効果

(15)か らクラーメル公式を用いてR/テLlを求めると次のようになる。

lJl(A/ TLl)‑ 0

これは次のようにまとめ られ る。

(20a)

命題4‑3‑1

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 1部門に対す る雇用税 は,要素所得分 配率に中立的な効果を も

第 1部門の雇用税 は,要素所得分配率 に対 してディス トー ションが働かず, また,正規化 された第 2財価格ではか った実質的な資本 レンタル率が変わ らな い ことを示 している。 この命題 はHarberger[1962]以降の帰着分析 の結論 か らす ると,一見奇妙な もの といえるが,本稿では,賃金硬直性を仮定 してい るための 自然の結論である。つまり,雇用税の負担 も移動可能な資本に転嫁が なされていることが理解で きよ う。

次に,労働需要量 に与え る効果 (Le/テLl)について触れてお く。 (15)か ら,

lJl(fe/fLl) ーllleK2eLlγ2‑ 6K2(γ2/ El一γ1')

×(lL28Kl+AK28Ll)

で表 され る。そ こで,次のよ うな命題を与える

(21a)

命題4‑3‑2

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 1部門に対す る雇用税 は,第 1部門が 労働集約的であれば,経済全体の労働需要量が減少す る効果を も

(17)

租税帰着分析 :失業 と技術 的不確実性 425 第 1部門の雇用税 は,需要代替効果のルー トを通 じて雇用減少効果を引き起 こす。第 1部門の物品税によって賃金 ・資本 レンタル率が変わ らず,各部門の 労働投入係数 も変わ らないが, これ は需要代替効果であるX lの減少 とx 2 増加を L.の減少 とL2の増加 によって相殺 していることを意味す るが,労働 投入量の変化を経済全体でみれば減少す ることになるわけである。

(15)か らR/TL2は次のようになる。

Ill(R^/fL2)ーAK2CL2(72/ e1γ1') これは次のよ うにまとめ られ る

(20b)

命題4‑3‑3

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 2部門に対す る雇用税 は, レンタル率 を下落 させ る。

2部門の雇用税が要素所得分配率 に対 してディス トー ションとして働 き, 正規化 された第2財価格ではか った実質的な資本 レンタル率が下落す ることを 意味 している。 この命題 も,一見奇妙ではあるが,命題 3‑ 3‑ 1と同様 に賃 金硬直性が効 いているためで,雇用税の資本‑の転嫁の状況が,実質資本 レン

タルの下落 という結果 によって顕著 に現れている結論である。

次に,労働需要量に与える効果 (L e/ テL2)について触れてお く (15)か ら,

lJl(fe/fL2)LlleKleL2‑(γ2/el‑γ1)

×[eK2(lL128K2+lK28L2)+CL2(ん 28K+lK28L)] (21b) で表 され る。そ こで,次のよ うな命題を与え る。

命題4‑3‑4

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第2部門に対す る雇用税 は,第2部門が 労働集約的であれば,経済全体の労働需要量が減少す る効果を もつ。

(18)

426 第 43巻 第 3 ・4

2部門の雇用税 は,需要代替効果のルー トを通 じて雇用減少効果を引き起 こす。第 2部門の雇用税は,資本 レンタル率を下落 させ,各部門の労働投入係 数を小 さくす る。一方,需要代替効果であるX lの増加 とx 2の減少がLlの 増加 とエ2の減少を もた らし,投入係数の減少が経済全体の労働投入量の減少 を引 き起 こす と解釈で きよ う

ここで,各部門に共通税率を課す1 投雇用税について触れておこう これは,

TLl‑ TL2‑ TLとおいて分析で きるか ら,要素所得分配率 に対す る効果 は, (20a),(20b)か ら,

IJl(A/ テL)‑ ‑1K2eL2(r2/el‑γ1')

となる。 これは次のようにまとめ られる。

命題4‑3‑5

絶対的危険回避減少の仮説の下では,一般雇用税は, レンタル率を下落 させ る。

命題4‑3‑1,4‑3‑3か ら分かるように,第2部門雇用税の効果が支 配的であることを示 している。

経済全体の労働需要量に対する効果について も (21a),(21b)か ら

1Jl(fe/T^L)ニー刷 (CK2eLlCKleL2)y2

‑ (γ2/el‑γ1)(ん 28K+AK28L)

が得 られ る。そこで,次のような命題を与える。

命題4‑3‑6

絶対的危険回避減少の仮説の下では,一般雇用税 は,第 2部門が労働集約的で あれば,経済全体の労働需要量が減少す る効果を もっ

命題4‑3‑2,4‑3‑4か ら分かるように,第 2部門の雇用税が支配的

(19)

租税帰着分析 :失業 と技術的不確実性 に働いていると考え られ る。

4‑4.資本税 の帰着効果

(15)か らクラーメル公式を用いてR/TKlを求めると次のようになる。

lJf(A/テ K.) ‑0

これは次のよ うにまとめ られ る

427

(22a)

命題4‑4‑1

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 1部門に対す る資本税 は,要素所得分 配率に中立的な効果を も

第 1部門の資本税 は,第 1部門の雇用税 と同様の効果を示 していると解釈 さ れる。

次 に,労働需要量 に与 え る効果 (Le/TKl) について触れてお く。 (15) か ら,

IJt(fe/fKl)ニー刷 CK26Kly2+eK2(γ2/elγ1)

×(lL28Kl+lK28Ll) で表 され る。そ こで,次のよ うな命題を与え る。

(23a)

命題4‑4‑2

絶対的危険回避減少の仮説の下では,第 1部門に対す る資本税 は,第 1部門が 資本集約的であれば,経済全体の労働需要量 を創出す る効果を も

第 1部門の資本税 は,需要代替効果のルー トを通 じて雇用創 出効果を引き起 こす。第 1部門の資本税 は,賃金 ・資本 レンタル率を変化 させず,各部門の労 働投入係数 も変化 しないが, これは需要代替効果であるXlの減少 とx 2の増

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