中国における専利法の第二次改正について (中川良 延教授神田修教授退職記念号)
著者名(日) 張 玲
雑誌名 山梨学院大学法学論集
巻 49
ページ 281‑310
発行年 2003‑03‑10
URL http://id.nii.ac.jp/1188/00000875/
論 説
中国における専利法の第二次改正について
中国南開大学法学部助教授 張玲
281 中国における専利法の第二次改正にっいて
目 次
はじめに
WTOの加盟に備え︑↓包雰協定に基づく改正について
三 手続きの簡素化と司法救済措置の整備について 1 特許権者による販売の申し出の権利 2 実用新案と意匠に関する審決に対する訴えの提起に 3 起訴前の仮司法措置による特許権保護の強化 4 特許強制許諾制度の整備 二 権利主体の利益を平等的︑適切的に保護するための改正について 1 国有企業の特許技術に対する権利性質に関する改正 2 職務発明創作の発明者又は考案者の利益に対する保護の強化 3 意匠特許権の付与条件に関する改正
一281一 中国における専利法の第二次改正について
281論 説
中国における専利法の第二次改正について
中国南聞大学法学部助教授
次
はじめに 一 WTO の 加 盟 に 備 え ︑
H︐E3 協定に基づく改正について
1
特許権者による販売の申し出の権利
2 実用新案と意匠に関する審決に対する訴えの提起に
3
起訴前の仮司法措置による特許権保護の強化
4特許強制許諾制度の整備
ニ権利主体の利益を平等的︑適切的に保護するための改正について ー国有企業の特許技術に対する権利性質に関する改正
2
職務発明創作の発明者又は考案者の利益に対する保護の強化
3
意匠特許権の付与条件に関する改正
手続きの簡素化と司法救済措置の整備について
目
張 玲
‑281‑
法学論集 49〔山梨学院大学〕282
1 手続きの簡素化
2 実用新案権の行使に関する条件
3 特許技術の善意実施行為
おわりに
参考文献
はじめに
私は︑二〇〇一年六月から九月にかけて︑再び山梨学院大学から招聰を受け︑客員研究員として︑﹁日本の特許
法における特許権の保護﹂を研究テーマにして来日した︒
山梨学院大学では︑小野寺規夫教授︵元東京高裁民事部部長判事︶のご手配で︑私は大学の同僚である張麗霞さ
んと共に東京地方裁判所で研修する機会に恵まれた︒研修は二〇〇一年七月九日から七月コニ日までの短い期間で
はあったが︑私にとっては本当に得がたいチャンスであった︒そのため︑私は行く前にきちんと勉強して︑できる
だけより多くのものを身につけようとひそかに決意をした︒
私と張さんはそれぞれ東京地裁民事二二部︵調停専門部︶と同じく民事二九部︑四六部︑四七部︵いずれも知的
財産部︶で研修した︒研修中︑私たちは各部の裁判官にいろいろな問題について教えていただき︑裁判官と一緒に
法廷を傍聴し︑資料を集め︑裁判部での研究会に参加して︑多彩な研修活動を行った︒また︑調停部部長田中信義
一282一
1 手続きの簡素化 実用新案権の行使に関する条件 特許技術の善意実施行為
おわりに 参考文献 2
3はじめに
‑282‑
私は︑二
OO
一年六月から九月にかけて︑再び山梨学院大学から招轄を受け︑客員研究員として︑﹁日本の特許
法における特許権の保護﹂を研究テ
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マに
して
来日
した
︒
山梨学院大学では︑小野寺規夫教授(元東京高裁民事部部長判事)のご手配で︑私は大学の同僚である張麗霞さ
んと共に東京地方裁判所で研修する機会に恵まれた︒研修は二
OO
一年七月九日から七月一三日までの短い期間で
はあったが︑私にとっては本当に得がたいチャンスであった︒そのため︑私は行く前にきちんと勉強して︑
でき
る
だけより多くのものを身につけようとひそかに決意をした︒
私と張さんはそれぞれ東京地裁民事二二部(調停専門部)と同じく民事二九部︑四七部(いずれも知的
四六
部︑
財産部)で研修した︒研修中︑私たちは各部の裁判官にいろいろな問題について教えていただき︑裁判官と一緒に
法廷を傍聴し︑資料を集め︑裁判部での研究会に参加して︑多彩な研修活動を行った︒また︑調停部部長田中信義
判事と同部坂詰春男主任書記官は︑私たちのためにわざわざ東京家庭裁判所と簡易裁判所の各調停を見学する機会
を提供してくださった︒この見学を通して︑日本の地方裁判所の仕組みや家庭裁判所と簡易裁判所の仕事の取り扱
い方がすこしずつわかるようになった︒とくに︑東京家裁の大ホールに設置されている母子像や児童室はとても印
象的であり︑それには感心した︒家庭裁判所を訪れる人々は︑そこで家庭の安らぎの雰囲気を感じる︒紛争に悩ん
で緊張する心情はすこしずつ緩和されるのではないかと思う︒国民に身近な日本司法についてその実情の一面を知 ﹁ ることができて嬉しく思う︒とにかく今度の研修は︑私にとって忘れることのできない思い出となった︒
283 中国における専利法の第二次改正について
現在︑中国︑日本︑韓国三力国の特許庁は同じ内容の特許について三力国で同時に特許権を取得することができ
る制度をつくることに合意したようだ︒
二〇〇二年から段階的に特許審査の基準共通化などを進め︑最終的には審査結果を相互に受け入れるようにする
という︒そうすることによって︑自国で認可された特許についても三か国で保護を受けることができるようになっ
てくる︒三か国は特許庁長官の定期会合を行い︑本年︵二〇〇一年︶九月に東京で開く予定の初会合で制度づくり
の協議を始めるという︒このため︑中国の専利法︵日本の特許法に相当する法律︶と日本の特許法との比較研究は
学術上・実務上からも重要な意味を持つのである︒ただし︑日本の裁判官たちのほとんどは︑ヨーロッパの特許法
について詳しい知識を持っているが︑中国の専利法に対してはあまり知らないと伺っている︒そのため︑私は︑本
稿で︑中国の一番新しい専利法改正の内容を紹介しようと思う︒そこで︑日本の皆さんに中国の専利法の理解に少
しでも役に立つことができれば幸いと思い︑この論文を書こうと思った次第である︒
一283一
判事と同部坂詰春男主任書記官は︑私たちのためにわざわざ東京家庭裁判所と簡易裁判所の各調停を見学する機会
を提供してくださった︒この見学を通して︑日本の地方裁判所の仕組みゃ家庭裁判所と簡易裁判所の仕事の取り扱
い方がすこしずつわかるようになった︒とくに︑東京家裁の大ホ
l
ルに設置されている母子像や児童室はとても印象的
であ
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それには感心した︒家庭裁判所を訪れる人々は︑そこで家庭の安らぎの雰囲気を感じる︒紛争に悩ん
で緊張する心情はすこしずつ緩和されるのではないかと思う︒国民‑に身近な日本司法についてその実情の一面を知
ることができて嬉しく思う︒とにかく今度の研修は︑私にとって忘れることのできない思い出となった︒
中国における専利法の第二次改正について
現在︑中園︑日本︑韓国三カ国の特許庁は同じ内容の特許について三カ国で同時に特許権を取得することができ
‑283‑
る制度をつくることに合意したようだ︒
二
OO
二年から段階的に特許審査の基準共通化などを進め︑最終的には審査結果を相互に受け入れるようにする
という︒そうすることによって︑自国で認可された特許についても三か国で保護を受けることができるようになっ
てくる︒三か国は特許庁長官の定期会合を行い︑本年(二
OO
一年)九月に東京で開く予定の初会合で制度づくり
の協議を始めるという︒このため︑中国の専利法(日本の特許法に相当する法律)と日本の特許法との比較研究は
学術上・実務上からも重要な意味を持つのである︒ただし︑日本の裁判官たちのほとんどは︑ヨーロッパの特許法
について詳しい知識を持っているが︑中国の専利法に対してはあまり知らないと伺っている︒そのため︑私は︑本
283
稿で︑中国の一番新しい専利法改正の内容を紹介しようと思う︒そこで︑日本の皆さんに中国の専利法の理解に少
しでも役に立つことができれば幸いと思い︑この論文を書こうと思った次第である︒
法学論集 49〔山梨学院大学〕 284
知的経済を中心に︑ハイテクが非常に速いスピードで発展しつつある二一世紀は︑中国の科学技術及び経済発展
にとってかなり重要な時期であり︑産業構造の調整と最適化も経済発展の主題としてクローズアップされる時期で
もあろう︒
特に︑WTOの加盟にともない︑中国の企業はますますより激しい競争を強いられるであろう︒技術進歩と新規
創作の中で︑特許制度はより大きな役割を果たせると思われる︒その背景に︑二〇〇〇年八月二五日︑中国の第九
回全国人民代表大会常務委員会第十七回会議は﹁中華人民共和国専利法についての修正決定﹂を可決した︒改正専
利法はすでに二〇〇一年七月一日から施行された︒今度の改正は一九九二年九月の第一次改正後に行われた第二次
改正である︒この二回の改正はそれぞれ特色をもっている︒第一次改正は特許権者の保護の拡大を中心に︑いろん
な実体規範を増加した︒たとえば︑特許権者に輸入権を付与する︵一一条︶とか︑方法発明に対する保護は当該方
法によって直接的に得られた製品にも及ぶことがある︵二条︶とか︑食品とドリンクと調味料と薬品及び化学方
法によって得られた物質は︑特許出願できることになった︵二五条︶とか︑特許権の存続期間を延長し︑発明特許
権は二〇年︑実用新案と意匠特許権は共に一〇年とした︵四五条︶ことなどである︒
今回の改正は︑特許権者の保護を強化し︑特に手続きに可操作性を持たせることに重点を置いた︒改正された条
文は全部で三五ケ条にも及んでいる︒↓匹諄協定に基づき︑わが国の専利法の中で関連ある規定はさらに整備さ
れた︒特許出願及び審査︑特許権の保護や︑侵害紛争の解決手続きなどの面で新しい法律条項を設けている︒これ
によって︑特許手続きを簡素化し︑特許権の保護を強化している︒
一284一
知的経済を中心に︑ハイテクが非常に速いスピードで発展しつつある一二世紀は︑中国の科学技術及び経済発展
にとってかなり重要な時期であり︑産業構造の調整と最適化も経済発展の主題としてクローズアップされる時期で
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︒
特に
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WTO
の加盟にともない︑中国の企業はますますより激しい競争を強いられるであろう︒技術進歩と新規創作の中で︑特許制度はより大きな役割を果たせると思われる︒その背景に︑ニ
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年八月二五日︑中国の第九回全国人民代表大会常務委員会第十七回会議は﹁中華人民共和国専利法についての修正決定﹂を可決した︒改正専
利法はすでに二
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一年七月一日から施行された︒今度の改正は一九九二年九月の第一次改正後に行われた第二次
改正である︒この二回の改正はそれぞれ特色をもっている︒第一次改正は特許権者の保護の拡大を中心に︑
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な実体規範を増加した︒たとえば︑特許権者に輸入権を付与する(一一条)とか︑方法発明に対する保護は当該方
法によって直接的に得られた製品にも及ぶことがある(一一条)とか︑食品とドリンクと調味料と薬品及び化学方
法によって得られた物質は︑特許出願できることになった(二五条)とか︑特許権の存続期間を延長し︑発明特許
権は二
O
年︑実用新案と意匠特許権は共に一O
年とした(四五条)ことなどである︒今回の改正は︑特許権者の保護を強化し︑特に手続きに可操作性を持たせることに重点を置いた︒改正された条
文は全部で三五ケ条にも及んでいる
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H E3
協定に基づき︑わが国の専利法の中で関連ある規定はさらに整備さ︐れた︒特許出願及び審査︑特許権の保護や︑侵害紛争の解決手続きなどの面で新しい法律条項を設けている︒これ
によって︑特許手続きを簡素化し︑特許権の保護を強化している︒
WTOの加盟に備え︑↓匹雰協定に基づく改正について
今︑わが国はWTOに加盟しようとしている︒しかし︑その場合WTOは加盟しようとする国に対してまずその
国の関係ある法律がWTOの規定に一致するかどうかの審査を行うことになったため︑知的財産権の面では︑わが
国は一九九二年の法改正を通して専利法を↓国評協定に近づけさせた︒今回の改正は↓困評協定により規定さ
れた保護基準に符合するレベルに達している︒
285 中国における専利法の第二次改正について
1
特許権者による販売の申し出の権利
↓国雰協定第二八条第一項は以下の定めがある︒﹁特許は︑特許権者に次の排他的権利を与える︒@特許の対象
が物である場合には︑特許権者の承諾を得ていない第三者による当該物の生産︑使用︑販売の申し出若しくは販売
又はこれらを目的とする輸入を防止する権利︒㈲特許の対象が技法である場合には︑特許権者の承諾を得ていない
第三者による当該技法の使用を防止し及び当該技法により少なくとも直接的に得られた物の使用︑販売の申し出若
しくは販売又はこれらを目的とする輸入を防止する権利︒﹂である︒
わが国の専利法第一三条は上記の規定に比べれば︑特許権者に販売の申し出に対する禁止権が付与されていなか
ったと言う問題がある︒↓国雰協定に合わせるために︑改正法では発明と実用新案特許権者に販売の申し出と言
う専用権を付与することになった︒
一285一
WTO
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盟 に
備 え
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基 づ
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正 に
つ い
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今︑わが国は
WTO
に加盟しようとしている︒しかし︑その場合WTO
は加盟しようとする国に対してまずその国の関係ある法律が
WTO
の規定に一致するかどうかの審査を行うことになったため︑知的財産権の面では︑わが国は一九九二年の法改正を通して専利法を吋包
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協定に近づけさせた︒今回の改正は同︐E3
協定により規定された保護基準に符合するレベルに達している︒
中国における専利法の第二次改正について
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特許権者による販売の申し出の権利
‑285‑
同 ︐
E3
協定第二八条第一項は以下の定めがある︒﹁特許は︑特許権者に次の排他的権利を与える︒制特許の対象が物である場合には︑特許権者の承諾を得ていない第三者による当該物の生産︑使用︑販売の申し出若しくは販売
又はこれらを目的とする輸入を防止する権利︒
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特許の対象が技法である場合には︑特許権者の承諾を得ていない第三者による当該技法の使用を防止し及び当該技法により少なくとも直接的に得られた物の使用︑販売の申し出若
しくは販売又はこれらを目的とする輸入を防止する権利乙である︒
わが国の専利法第一三条は上記の規定に比べれば︑特許権者に販売の申し出に対する禁止権が付与されていなか
285
ったと言う問題がある︒司自
3
協定に合わせるために︑改正法では発明と実用新案特許権者に販売の申し出と言う専用権を付与することになった︒
販売の申し出とは︑広告または商店或いは展覧会で展示されるような方式で商品を販売しようとする場合の許諾
を指す︒ 現実の生活の中で︑ある企業は特許製品を無断で製造し︑或いは特許侵害製品をほかの企業から買った後でこれ
らの侵害製品を販売するために各種のメディアで広告を出したり︑展覧会で展示したりする行為に対して︑従前の
専利法では︑特許権者はそれを禁止することができなかった︒特許権者が事後︑侵害製品を実際に販売した当該企
業に対して権利を主張して訴を提起することしかできないのが現状である︒この方法では侵害を早めにつきとめ︑
侵害製品を世の中に流通させることを防止することができないと言われている︒
今回︑改正された第二条では︑特許権者は許諾を得なかった販売予備行為に対して直接に訴を提起することが
できるようになった︒そして︑萌芽状態にある侵害行為を消滅させ︑特許権者の利益を有効的に守ることができ
る︒ 販売の申し出は︑単にある商品を売ろうとする意思表示の行為である︒当該行為は︑売るという行為とも違う
し︑売りたいという申し込みとも違う︒売るという行為は︑商品の所有権を譲渡するという特徴がある︒売りたい
という申し込みには条件もある︒一つは申し込みの内容を具体的に確定することである︒二つは申し込み者はその
内容の約束を受けることである︒しかし︑販売の申し出は以上の特徴と条件を満たしていない︒したがって︑販売
の申し出は売る申し込みの申し出にすぎない︒
一286一
販売の申し出とは︑広告または商庖或いは展覧会で展示されるような方式で商品を販売しようとする場合の許諾
を指
す︒
現実の生活の中で︑ある企業は特許製品を無断で製造し︑或いは特許侵害製品をほかの企業から買った後でこれ
らの侵害製品を販売するために各種のメディアで広告を出したり︑展覧会で展示したりする行為に対して︑従前の
専利法では︑特許権者はそれを禁止することができなかった︒特許権者が事後︑侵害製品を実際に販売した当該企
業に対して権利を主張して訴を提起することしかできないのが現状である︒この方法では侵害を早めにつきとめ︑
侵害製品を世の中に流通させることを防止することができないと言われている︒
今回︑改正された第一一条では︑特許権者は許諾を得なかった販売予備行為に対して直接に訴を提起することが
‑286‑
できるようになった︒そして︑萌芽状態にある侵害行為を消滅させ︑特許権者の利益を有効的に守ることができ
販売の申し出は︑単にある商品を売ろうとする意思表示の行為である︒当該行為は︑売るという行為とも違う る
し︑売りたいという申し込みとも違う︒売るという行為は︑商品の所有権を譲渡するという特徴がある︒売りたい
という申し込みには条件もある︒一つは申し込みの内容を具体的に確定することである︒二つは申し込み者はその
内容の約束を受けることである︒しかし︑販売の申し出は以上の特徴と条件を満たしていない︒したがって︑販売
の申し出は売る申し込みの申し出にすぎない︒
287 中国における専利法の第二次改正について
2
実用新案と意匠に関する審決に対する訴えの提起
改正前の専利法第四三条第三項及び第四九条第三項によると︑特許庁に設けられた専利再審委員会が︑特許出願
人︑特許権者および特許取り消し請求人の実用新案と意匠に関する再審請求に対して下した決定及び実用新案と意
匠の特許無効の請求に対して下した決定は︑すべて終局決定であると定められている︒そして︑改正前の専利法
は︑実用新案と意匠に対しては行政手続きの規定しかなく︑司法手続きによる保護条文を設けていなかった︒
しかし︑改正前の専利法第四三条第二項には︑発明特許出願人と発明特許権者と発明特許権取り消し請求人は︑
専利再審委員会により下された決定︑及び発明特許権の取り消し決定と発明特許権維持決定に不服があるとき︑こ
れらの決定が送達された日から三カ月以内に︑裁判所に訴えを提起することができると規定されている︒従って︑
改正前の専利法は︑発明に限って行政手続きと司法手続きの二重保護の条文を設けたことになる︒それに対して︑
実用新案と意匠は︑発明と同じく︑専利法の保護対象であるにもかかわらず︑不公平な待遇を受けて︑関係当事者
は︑専利再審委員会がくだした決定に司法手続きによる救済措置を求めることができなかったのである︒
そのほか︑↓国雰協定は第三部﹁知的所有権の行使﹂の第一節コ般的義務﹂第四一条第四項でなされる最終
的な行政決定に対して︑少なくとも法律面について︑最終で司法上の︑司法当局による審査の機会を与えるべきで
あることが明らかに定められている︒しかも︑第四部﹁知的所有権の取得及び維持並びにこれらに関する当事者間
の手続﹂の中に︑知的所有権の取得及び維持に関する手続き︑及び国内法で規定された手続き︑行政取り消しや当
事者間の異議︑無効と取り消し手続きに対してくだされた終局の行政決定は︑すべて司法あるいは準司法当局の審
一287一
2
実用新案と意匠に関する審決に対する訴えの提起
改正前の専利法第四三条第三項及び第四九条第三項によると︑特許庁に設けられた専利再審委員会が︑特許出願
人︑特許権者および特許取り消し請求人の実用新案と意匠に関する再審請求に対して下した決定及び実用新案と意
匠の特許無効の請求に対して下した決定は︑すべて終局決定であると定められている︒そして︑改正前の専利法
は︑実用新案と意匠に対しては行政手続きの規定しかなく︑司法手続きによる保護条文を設けていなかった︒
しかし︑改正前の専利法第四三条第二項には︑発明特許出願人と発明特許権者と発明特許権取り消し請求人は︑
中国における専利法の第二次改正について
専利再審委員会により下された決定︑及び発明特許権の取り消し決定と発明特許権維持決定に不服があるとき︑こ
‑287‑
れらの決定が送達された白から三カ月以内に︑裁判所に訴えを提起することができると規定されている︒従って︑
改正前の専利法は︑発明に限って行政手続きと司法手続きの二重保護の条文を設けたことになる︒それに対して︑
実用新案と意匠は︑発明と同じく︑専利法の保護対象であるにもかかわらず︑不公平な待遇を受けて︑関係当事者
は︑専利再審委員会がくだした決定に司法手続きによる救済措置を求めることができなかったのである︒
そのほか︑吋自 3 協定は第三部﹁知的所有権の行使﹂の第一節﹁一般的義務﹂第四一条第四項でなされる最終
的な行政決定に対して︑少なくとも法律面について︑最終で司法上の︑司法当局による審査の機会を与えるべきで
あることが明らかに定められている︒しかも︑第四部﹁知的所有権の取得及び維持並びにこれらに関する当事者間
287
の手続﹂の中に︑知的所有権の取得及び維持に関する手続き︑及び国内法で規定された手続き︑行政取り消しゃ当
事者間の異議︑無効と取り消し手続きに対してくだされた終局の行政決定は︑すべて司法あるいは準司法当局の審
査を受けなければならないと規定されている︒
また︑第三二条にも﹁特許を取り消し又は特許権を消滅させる決定については︑司法上の審査の機会が与えられ
る︒﹂と定められている︒
わが国の専利法を↓困評協定の規定と一致させようとするために︑今回の法改正では実用新案と意匠に関する
特許出願の却下の再審及び特許権無効の終局審判権を裁判所に授与した︒すなわち︑当事者は実用新案と意匠につ
いての再審請求に対して専利再審委員会がくだした決定に不服の申立てをなしたとき︑北京市中級裁判所に訴えを
提起する権利を有する︒それによって︑司法保護を受けることができるようになった︒
3 起訴前の仮司法措置による特許権保護の強化
↓困評協定の第五〇条によれば︑司法当局は︑次の目的を実現するために迅速かつ効果的な暫定措置をとるこ
とを命ずる権限を有する︒
@ 知的所有権の侵害の発生を防止すること︒特に︑物品が管轄内の流通経路へ流入することを防止すること
︵輸入物品が管轄内の流通経路へ流入することを通関後直ちに防止することを含む︒︶
㈲ 申し立てられた侵害に関連する証拠を保全すること︒わが国の専利法は起訴された特許侵害者に対してのみ
差し止めを命じることができるが︑起訴前の仮保護措置が定められていないため︑即時侵害と言う概念もない
のである︒このため︑特許権者は他人が侵害を行おうとしているのに気がついたにもかかわらず︑それを阻止
する権利がないため︑裁判所に保護措置を求めることができない︒しかし︑現実社会の中で︑ある侵害行為に
一288一
査を受けなければならないと規定されている︒
また︑第三二条にも﹁特許を取り消し又は特許権を消滅させる決定については︑司法上の審査の機会が与えられ
る︒
﹂と
定め
られ
てい
る︒
わが
国の
専利
法を
叶︐
E3
協定の規定と一致させようとするために︑今回の法改正では実用新案と意匠に関する特許出願の却下の再審及び特許権無効の終局審判権を裁判所に授与した︒すなわち︑当事者は実用新案と意匠につ
いての再審請求に対して専利再審委員会がくだした決定に不服の申立てをなしたとき︑北京市中級裁判所に訴えを
提起する権利を有する︒それによって︑司法保護を受けることができるようになった︒
‑288‑
3
起訴前の仮司法措置による特許権保護の強化
凶 ︐
E H
協定の第五
O J
条によれば︑司法当局は︑次の目的を実現するために迅速かつ効果的な暫定措置をとることを命ずる権限を有する︒
(a)
知的所有権の侵害の発生を防止すること︒特に︑物品が管轄内の流通経路へ流入することを防止すること
(輸入物品が管轄内の流通経路へ流入することを通関後直ちに防止することを含む︒)
︑ ︑ . ︐ ︐ ︐ L u
︐ ︐ ︐ ︑ ︑
申し立てられた侵害に関連する証拠を保全すること︒わが国の専利法は起訴された特許侵害者に対してのみ
差し止めを命じることができるが︑起訴前の仮保護措置が定められていないため︑即時侵害と言う概念もない
のである︒このため︑特許権者は他人が侵害を行おうとしているのに気がついたにもかかわらず︑それを阻止
する権利がないため︑裁判所に保護措置を求めることができない︒しかし︑現実社会の中で︑ある侵害行為に
289 中国における専利法の第二次改正について
対して︑もし裁判所に起訴する前に速やかに阻止しなければ︑特許権者は補償されにくい損害を蒙る可能性が
ある︒特許権者が他人の侵害行為を現実に蒙った後になって︑それを阻止する権利を有すると言うやりかたは
特許権者にとって非常に不利である︒
今度の専利法改正は︑一方では特許権を有効的に保護するために︑他方では↓匹評協定との相違をなくすため
に︑第六一条を追加した︒これによって︑特許権者は起訴前に司法機関に保護措置をとることを求めることがで
き︑即時に侵害をストップする権利を有するようになった︒これはわが国の不法行為理論に大きな発展となった︒
民法通則第一一八条によれば︑個人又は法人の特許権は︑実際の侵害を受けて侵害結果を発生した場合に限り︑侵
害の取り消し︑影響の消除︑損害賠償を求めることができると定められている︒侵害結果を発生したことは不法行
為に不可欠な構成要件となっている︒それによると︑ある者が許諾を得ずに特許技術を実施しようとした場合で
も︑実際の損害が発生しなければ︑侵害行為にならないことになる︒しかし︑即時侵害は︑実際の損害がまだ発生
していないにもかかわらず︑侵害のおそれが既に存在している行為であるとするのである︒もし︑適時にそれを抑
止しなければ実際の侵害をもたらす可能がある︒そして︑即時侵害は法律の禁止範囲にはいるべきである︒それに
よって︑改正後の専利法は︑即時侵害について相応的措置を定めた︒即ち︑特許権者は相手方の特許侵害行為を行
おうとすることを証明できる証拠があれば︑裁判所に財産の保全措置をとることと︑それに関係のある行為をスト
ップさせることを命じることを求めることができる︒そうすれば実際の損害の発生を抑制し︑特許権者の利益を十
分に保護する目的が達せられるのだろう︒
一289一
対して︑もし裁判所に起訴する前に速やかに阻止しなければ︑特許権者は補償されにくい損害を蒙る可能性が
ある︒特許権者が他人の侵害行為を現実に蒙った後になって︑それを阻止する権利を有すると言うやりかたは
特許権者にとって非常に不利である︒
今度の専利法改正は︑一方では特許権を有効的に保護するために︑他方では吋
E3
協定との相違をなくすために︑第六一条を追加した︒これによって︑特許権者は起訴前に司法機関に保護措置をとることを求めることがで
き︑即時に侵害をストップする権利を有するようになった︒これはわが国の不法行為理論に大きな発展となった︒
民法通則第一一八条によれば︑個人又は法人の特許権は︑実際の侵害を受けて侵害結果を発生した場合に限り︑侵
中国におげる専利法の第二次改正について
害の取り消し︑影響の消除︑損害賠償を求めることができると定められている︒侵害結果を発生したことは不法行
‑289‑
為に不可欠な構成要件となっている︒それによると︑ある者が許諾を得︑ずに特許技術を実施しようとした場合で
も︑実際の損害が発生しなければ︑侵害行為にならないことになる︒しかし︑即時侵害は︑実際の損害がまだ発生
していないにもかかわらず︑侵害のおそれが既に存在している行為であるとするのである︒もし︑適時にそれを抑
止しなければ実際の侵害をもたらす可能がある︒そして︑即時侵害は法律の禁止範囲にはいるべきである︒それに
よって︑改正後の専利法は︑即時侵害について相応的措置を定めた︒即ち︑特許権者は相手方の特許侵害行為を行
おうとすることを証明できる証拠があれば︑裁判所に財産の保全措置をとることと︑それに関係のある行為をスト
ップさせることを命じることを求めることができる︒そうすれば実際の損害の発生を抑制し︑特許権者の利益を十
289
分に保護する目的が達せられるのだろう︒
4
特許強制許諾制度の整備
わが国は一九九二年専利法を第一次改正した時︑すでに↓困評協定の関係ある規定を参考にして︑既に専利法
とその実施細則に関わる規定を改めた︒その改正を通じて︑↓匹評協定の基本的要求を符合するレベルにまで達
した︒ただ︑ある用語と表現は↓困雰協定の関係規定とはまったく同じようにはならなかった︒今度の法改正は
特許強制許諾制度をより整備させるために以下の三つの方面で修正と調整を行った︒
第一︑クロスライセンスの条件をより厳しくした
↓匹評協定第三一条第−号は︑利用発明に対する強制許諾について厳しい条件を定めている︒第二特許にかか
る発明には︑第一特許に係る発明との関係において相当の経済的重要性を有する重要な技術の進歩を含むと言う条
件を備えなければならない︒しかし︑わが国の専利法には︑第二特許にかかる発明は︑第一特許に係る発明より技
術の進歩を有することだけを条件にしていた︒それは︑明らかに︑↓困評協定による条件がわが国のものより厳
しく設定されていることになる︒このために︑今度の法改正は︑第五〇条に﹁顕著な経済的意義において重大な技
術的進歩を有する﹂と言う表現を用いている︒このように︑一般的な技術的進歩を持っている第二特許権者は︑第
一特許発明と第一考案に強制許諾を求めることができず︑第一特許権者と実施許諾契約を結ばない限り︑自分の特
許技術を実施することができない︒さもなければ︑不法行為になるというのである︒
第二︑特許権者の利益に対する保護を強化し︑下された強制許諾を法定の条件に合わせることとなった
↓国評協定第三一条第b号は︑特許管理機関は強制許諾を下してから速やかに特許権者に通知を出すことを要
一290一
特許強制許諾制度の整備
3
協定の関係ある規定を参考にして︑既に専利法わが国は一九九二年専利法を第一次改正した時︑すでに吋自 4とその実施細則に関わる規定を改めた︒その改正を通じて︑司
E3
協定の基本的要求を符合するレベルにまで達した︒ただ︑ある用語と表現は司自
3
協定の関係規定とはまったく同じようにはならなかった︒今度の法改正は特許強制許諾制度をより整備させるために以下の三つの方面で修正と調整を行った︒
第一
︑
クロスライセンスの条件をより厳しくした
︑H︐
E3
協定第=二条第I
号は︑利用発明に対する強制許諾について厳しい条件を定めている︒第二特許にかかる発明には︑第一特許に係る発明との関係において相当の経済的重要性を有する重要な技術の進歩を含むと一一一日う条
件を備えなげればならない︒しかし︑わが国の専利法には︑第二特許にかかる発明は︑第一特許に係る発明より技
術の進歩を有することだけを条件にしていた︒それは︑明らかに︑吋
E3
協定による条件がわが国のものより厳しく設定されていることになる︒このために︑今度の法改正は︑第五
O
条に﹁顕著な経済的意義において重大な技術的進歩を有する﹂と言う表現を用いている︒このように︑一般的な技術的進歩を持っている第二特許権者は︑第
一特許発明と第一考案に強制許諾を求めることができず︑第一特許権者と実施許諾契約を結ばない限り︑自分の特
許技術を実施することができない︒さもなければ︑不法行為になるというのである︒
第二︑特許権者の利益に対する保護を強化し︑下された強制許諾を法定の条件に合わせることとなった
EF
協定第=二条第b
号は︑特許管理機関は強制許諾を下してから速やかに特許権者に通知を出すことを要同 ︐291 中国における専利法の第二次改正について
すると規定されている︒また︑第9号は強制許諾をもたらした状況が存在しなくなり︑かつ︑その状況が再発しそ
うにない場合には︑その許諾を取り消すことができるものと規定している︒
以上の内容に似ている規定はわが国の専利法実施細則︵第六八条︶にもあるが︑今度の改正は強制許諾の授与と
終止が同等な法律効力を持たせるために︑強制許諾の授与を専利法に設け︑強制許諾の終止を実施細則に設けた方
法はあまり妥当ではないと思われる︒そして︑実施細則の関連規定は適当な改正をしてから︑それを専利法第五二
条の中に書きこまれた︒そうすることによって︑強制許諾制度は立法技術上でより完全なものとなったといえる︒
第三︑強制許諾を得た単位又は個人に訴権を付与した
↓困評協定第三一条第﹂号は︑加盟国において強制許諾の使用料に関する裁定について司法上の審査又は他の
独立の審査を受ける機会を提供すべきであると規定している︒即ち︑特許権者及び強制許諾を得た者は特許行政機
関による使用料に関する裁定に不服がある場合には︑司法手続き又は行政再審査手続きを利用し︑自分の利益を守
ることができるとしている︒それに対して︑わが国の専利法第五八条は︑特許権者が特許行政機関による強制許諾
の使用料についての裁定に不服があるときには︑裁判所に訴えを提起することができるとする規定しかない︒
しかし︑強制許諾を得た者は強制許諾の使用料についての裁定に不服があるときに︑訴えを提起できるかどうか
について法律上の規定がない︒それによって︑強制許諾を得た者は使用料についての裁定に不服がある場合でもそ
れを起訴するに法的根拠がなかったのである︒今度の改正は︑当事者の利益を平等に保護するために︑第五五条に
は特許権者及び強制許諾を取得する単位若しくは個人が国務院の特許行政部門による強制許諾の使用料に関する裁
定に不服のあるときは︑通知を受け取った日から三ケ月以内に裁判所に訴えを提起することができるとする規定を
一291一
すると規定されている︒また︑第
g
号は強制許諾をもたらした状況が存在しなくなり︑かつ
︑
その状況が再発しそ
うにない場合には︑その許諾を取り消すことができるものと規定している︒
以上の内容に似ている規定はわが国の専利法実施細則(第六八条)にもあるが︑今度の改正は強制許諾の授与と
終止が同等な法律効力を持たせるために︑強制許諾の授与を専利法に設け︑強制許諾の終止を実施細則に設けた方
法はあまり妥当ではないと思われる︒そして︑実施細則の関連規定は適当な改正をしてから︑それを専利法第五二
条の中に書きこまれた︒そうすることによって︑強制許諾制度は立法技術上でより完全なものとなったといえる︒
第三︑強制許諾を得た単位又は個人に訴権を付与した
中国における専利法の第二次改正について
吋何
j
回3
協定第三一条第号は︑加盟国において強制許諾の使用料に関する裁定について司法上の審査又は他の独立の審査を受ける機会を提供すべきであると規定している︒即ち︑特許権者及び強制許諾を得た者は特許行政機
関による使用料に関する裁定に不服がある場合には︑司法手続き又は行政再審査手続きを利用し︑自分の利益を守
ることができるとしている︒それに対して︑わが国の専利法第五八条は︑特許権者が特許行政機関による強制許諾
の使用料についての裁定に不服があるときには︑裁判所に訴えを提起することができるとする規定しかない︒
しかし︑強制許諾を得た者は強制許諾の使用料についての裁定に不服があるときに︑訴えを提起できるかどうか
について法律上の規定がない︒それによって︑強制許諾を得た者は使用料についての裁定に不服がある場合でもそ
れを起訴するに法的根拠がなかったのである︒今度の改正は︑当事者の利益を平等に保護するために︑第五五条に
291
は特許権者及び強制許諾を取得する単位若しくは個人が国務院の特許行政部門による強制許諾の使用料に関する裁
定に不服のあるときは︑通知を受け取った日から三ヶ月以内に裁判所に訴えを提起することができるとする規定を
法学論集 49〔山梨学院大学〕 292
設けている︒
二 権利主体の利益を平等︑適切に保護するための改正について
市場経済は︑平等に競争することができるものでなければならない︒平等に競争することは市場経済主体が平等
な権利の享有を基礎としている︒第二次専利法改正は正に市場経済の規則に対応するために︑以下の内容の改正を
行った︒
1
国有企業の特許技術に対する権利性質に関する改正
前の専利法第六条に設けられた特許権の権利性質に関する規定は︑計画経済体制から生まれたものである︒それ
は企業の所有制の性格によって異なった権利を付与している︒国有企業は︑特許技術に対して保有することしかで
きないが︑他の企業は特許技術に対して所有することができる︒このような規定によって国有企業は他の企業と競
争する時に︑不利な地位に立たされる︒しかし︑市場経済の中で異なった所有制の企業は市場経済主体として活動
すべきであって︑所有制の性格はそれに対して何の影響をも与えるべきではない︒
わが国において経済体制改革以来︑国有企業に本格的な市場経済の主体たる地位を与える作業はずっと行ってい
る︒今度の専利法改正は︑市場経済の客観的な要請に適応させるために︑経済体制改革︑特に国有企業改革の成果
として︑国有企業に他の所有制企業と同じように特許権を所有させることにした︒この改正は︑わが国のWTO加
一292一
設け
てい
る︒
49 (山梨学院大学〕
権利主体の利益を平等︑適切に保護するための改正について
市場経済は︑平等に競争することができるものでなければならない︒平等に競争することは市場経済主体が平等
な権利の享有を基礎としている︒第二次専利法改正は正に市場経済の規則に対応するために︑以下の内容の改正を
行っ
た︒
‑292‑
1
固有企業の特許技術に対する権利性質に関する改正
前の専利法第六条に設けられた特許権の権利性質に関する規定は︑計画経済体制から生まれたものである︒それ
は企業の所有制の性格によって異なった権利を付与している︒固有企業は︑特許技術に対して保有することしかで
きないが︑他の企業は特許技術に対して所有することができる︒このような規定によって固有企業は他の金業と競
争する時に︑不利な地位に立たされる︒しかし︑市場経済の中で異なった所有制の企業は市場経済主体として活動
すべきであって︑所有制の性格はそれに対して何の影響をも与えるべきではない︒
わが国において経済体制改革以来︑固有企業に本格的な市場経済の主体たる地位を与える作業はずっと行ってい
る︒今度の専利法改正は︑市場経済の客観的な要請に適応させるために︑経済体制改革︑特に固有企業改革の成果
として︑固有企業に他の所有制企業と同じように特許権を所有させることにした︒この改正は︑わが国の
WTO 加
293 中国における専利法の第二次改正について
盟にとって︑格別な意議をもっている︒それは国有企業が国際市場競争の中で特許制度を有効に利用し自分のため
に有利な地位を築くことができることである︒
以上の改正に関連して︑もう一つ国有企業の特許権に関する改正がある︒国有企業が特許を出願する権利及び特
許権を譲渡する場合には︑上級の主管部門の承認を得る必要をなくしたことである︒以前︑国有企業は特許技術の
保有者であるので︑特許技術を譲渡するときは︑国務院の関係主管部門の承認を得なければならなかった︒今は︑
国有企業は︑改正された専利法第六条によって︑特許技術の所有者となったため︑国有企業は自分の状況判断と市
場事情によって特許を出願する権利及び特許権を譲渡するかどうかについて自分で判断することができることにな
った︒
2
職務発明創作の発明者又は考案者の利益に対する保護の強化
わが国において︑職務発明創作は二種類がある︒一つは所属単位の任務を執行するために完成された発明創作で
ある︒もう一つは主として所属単位の物質と技術条件を利用して完成した発明創作である︒前者は︑どの国におい
ても職務発明創作と見られている︒後者については︑各国の特許法は異なった態度をとっているが︑主な考え方は
自由発明創作と見なされている︒
わが国の専利法は単位の利益を守るために︑それを職務発明創作としていた︒しかも︑二つの種類の職務発明創
作に対する特許を出願する権利及び特許権はすべて単位に帰属させている︒無差別に法定原則を採用し︑単位と発
明者及び考案者との約定を許さないのである︒このような硬直とした規定は単位と発明者及び考案者に対して事実
一293一
盟にとって︑格別な意議をもっている︒それは国有企業が国際市場競争の中で特許制度を有効に利用し自分のため
に有利な地位を築くことができることである︒
以上の改正に関連して︑もう一つ固有企業の特許権に関する改正がある︒国有企業が特許を出願する権利及び特
許権を譲渡する場合には︑上級の主管部門の承認を得る必要をなくしたことである︒以前︑国有企業は特許技術の
保有者であるので︑特許技術を譲渡するときは︑国務院の関係主管部門の承認を得なければならなかった︒今は︑
国有企業は︑改正された専利法第六条によって︑特許技術の所有者となったため︑国有企業は自分の状況判断と市
場事情によって特許を出願する権利及び特許権を譲渡するかどうかについて自分で判断することができることにな
中国における専利法の第二次改正について
った
︒
‑293‑
2
職務発明創作の発明者文は考案者の利益に対する保護の強化
わが国において︑職務発明創作は二種類がある︒一つは所属単位の任務を執行するために完成された発明創作で
ある︒もう一つは主として所属単位の物質と技術条件を利用して完成した発明創作である︒前者は︑どの国におい
ても職務発明創作と見られている︒後者については︑各国の特許法は異なった態度をとっているが︑主な考え方は
自由発明創作と見なされている︒
わが国の専利法は単位の利益を守るために︑それを職務発明創作としていた︒しかも︑二つの種類の職務発明創
293
作に対する特許を出願する権利及び特許権はすべて単位に帰属させている︒無差別に法定原則を採用し︑単位と発
明者及び考案者との約定を許さないのである︒このような硬直とした規定は単位と発明者及び考案者に対して事実
法学論集 49〔山梨学院大学〕294
上の制限となり︑特に従業員の発明創作に対する積極性を引き出すことには不利となるのである︒
この二つの種類の発明創作には区別が存在している︒後者は大体︑従業員の趣昧で完成され︑従業員の職務に関
係がないし︑単位の業務範囲にも属しない可能性がある︒この場合には︑単位には利益にならないのでその特許を
出願しようとする気がない︒しかし︑法律は単位に特許を出願する権利を付与している︒それに反して︑発明者又
は考案者たる従業員は特許を出願しようと思っていても︑特許を出願する権利を持っていないので出願することが
できない︒これによって︑従業員と単位との間に紛争がよく起こる︒
今度の法改正は︑この二つの種類の発明創作を区分して︑職務発明創作の権利帰属に対して実質的な修正を行っ
た︒所属単位の任務を執行するために完成した職務発明創作は︑その特許を出願する権利及び特許権は︑相変わら
ず法定原則を実行して単位に帰属する︒それに対し︑主として所属単位の物質と技術条件を利用して完成した職務
発明創作の場合には︑契約優先原則を導入して︑その特許を出願する権利及び特許権の帰属については︑発明者及
び考案者と単位とが契約を締結することを通じて約定することができる︒約定をした場合には︑その約定に従い︑
約定をしていない場合に限り︑法律に従って単位に帰属することになるとした︒
さらに︑従業員の発明創作に対するやる気をさらに高めようとして︑もう一つの改正が行われた︒職務発明創作
たる特許技術が実施された場合には︑以前は︑法律に従って︑特許権を与えられた単位は︑発明者及び考案者に奨
励を与えなければならないとされた︒今回は︑法律に従って︑特許権を与えられた単位は︑合理的な報酬を与えな
ければならないことになっている︒合理的の意味は︑報酬の額が職務発明創作の応用の範囲及び取得した経済効果
を考慮して決定されるとするものである︒
一294一
294
上の制限となり︑特に従業員の発明創作に対する積極性を引き出すことには不利となるのである︒
この二つの種類の発明創作には区別が存在している︒後者は大体︑従業員の趣味で完成され︑従業員の職務に関
係がないし︑単位の業務範囲にも属しない可能性がある︒この場合には︑単位には利益にならないのでその特許を
出願しようとする気がない︒しかし︑法律は単位に特許を出願する権利を付与している︒それに反して︑発明者又
は考案者たる従業員は特許を出願しようと思っていても︑特許を出願する権利を持っていないので出願することが
できない︒これによって︑従業員と単位との聞に紛争がよく起こる︒
今度の法改正は︑この二つの種類の発明創作を区分して︑職務発明創作の権利帰属に対して実質的な修正を行っ
た︒所属単位の任務を執行するために完成した職務発明創作は︑その特許を出願する権利及び特許権は︑相変わら
‑294‑
ず法定原則を実行して単位に帰属する︒それに対し︑主として所属単位の物質と技術条件を利用して完成した職務
発明創作の場合には︑契約優先原則を導入して︑その特許を出願する権利及び特許権の帰属については︑発明者及
び考案者と単位とが契約を締結することを通じて約定することができる︒約定をした場合には︑
その
約定
に従
い︑
約定をしていない場合に限り︑法律に従って単位に帰属することになるとした︒
さらに︑従業員の発明創作に対するやる気をさらに高めようとして︑もう一つの改正が行われた︒職務発明創作
たる特許技術が実施された場合には︑以前は︑法律に従って︑特許権を与えられた単位は︑発明者及び考案者に奨
励を与えなければならないとされた︒今回は︑法律に従って︑特許権を与えられた単位は︑合理的な報酬を与えな
ければならないことになっている︒合理的の意味は︑報酬の額が職務発明創作の応用の範囲及び取得した経済効果
を考慮して決定されるとするものである︒
295 中国における専利法の第二次改正について
表現の言葉が奨励から報酬へ変わることは︑発明者及び考案者にとって︑重要な意味を持っている︒奨励と言う
表現は︑単位の利益から考えたものである︒それは︑単位に主動的な地位を占めさせて︑発明者または考案者に二
次的地位しか与えていなかった︒単位は奨励を与えるかどうか︑並びに奨励の額をどのぐらいにするかを決める権
利を握っている︒発明者及び考案者としては消極的に受け取るしかないである︒しかし︑報酬と言う表現は︑分配
制度の分野に属している︒それは︑発明者及び考案者に受動的な地位から主動的な地位にまで変化させてきた︒報
酬とは︑発明者及び考案者の発明創作を進んでいる過程に支払った知的労働の対価である︒そして︑単位は︑職務
発明創作を利用して利益を得ると同時に︑発明者及び考案者は報酬を得るべきである︒報酬は︑奨励よりも発明者
及び考案者が得るべきものだと言う意味が強く感じられる︒
3
意匠特許権の付与条件に関する改正
発明創作に対して︑日本と中国とは法体系が違うのである︒日本において︑﹁特許法﹂と﹁実用新案と意匠法﹂
とは三つの法律によって調整されている︒中国においては専利法一つで﹁発明﹂︑﹁実用新案﹂と﹁意匠﹂とを含ん
でいる︒意匠とは︑専利法の保護対象にしているにもかかわらず︑それは︑製品の形状︑模様若しくは色彩又はこ
れらの組み合わせにより作り出された美感に富み︑かつ︑工業分野での応用に適した新しいデザインと言われてい
るので︑本質上は一種の作品である︒それによって︑著作権により保護された美術作品と︑又は︑商標法により保
護された商標図様と衝突は起こりやすいのである︒ある商人はフリー・ライドの方式で︑他人の著作権のある美術
作品︑他人の登録商標の図様を自分で生産又は提供した商品又は役務と結びつけて︑意匠特許を出願してしまう︒
一295一
表現の言葉が奨励から報酬へ変わることは︑発明者及び考案者にとって︑重要な意味を持っている︒奨励と言う
表現は︑単位の利益から考えたものである︒それは︑単位に主動的な地位を占めさせて︑発明者または考案者に二
次的地位しか与えていなかった︒単位は奨励を与えるかどうか︑並びに奨励の額をどのぐらいにするかを決める権
利を握っている︒発明者及び考案者としては消極的に受け取るしかないである︒しかし︑報酬と言う表現は︑分配
制度の分野に属している︒それは︑発明者及び考案者に受動的な地位から主動的な地位にまで変化させてきた︒報
酬とは︑発明者及び考案者の発明創作を進んでいる過程に支払った知的労働の対価である︒そして︑単位は︑職務
発明創作を利用して利益を得ると同時に︑発明者及び考案者は報酬を得るべきである︒報酬は︑奨励よりも発明者
中国における専利法の第二次改正について
及び考案者が得るべきものだと言う意味が強く感じられる︒
‑295‑
3
意匠特許権の付与条件に関する改正
発明創作に対して︑日本と中国とは法体系が違うのである︒日本において︑﹁特許法﹂と﹁実用新案と意匠法﹂
とは三つの法律によって調整されている︒中国においては専利法一つで﹁発明﹂︑﹁実用新案﹂と﹁意匠﹂とを含ん
でいる︒意匠とは︑専利法の保護対象にしているにもかかわらず︑それは︑製品の形状︑模様若しくは色彩文はこ
れらの組み合わせにより作り出された美感に富み︑
かつ
︑
工業分野での応用に適した新しいデザインと言われてい
るので︑本質上は一種の作品である︒それによって︑著作権により保護された美術作品と︑又は︑商標法により保
295
護された商標図様と衝突は起こりゃすいのである︒ある商人はフリ
1
・ライドの方式で︑他人の著作権のある美術作品︑他人の登録商標の図様を自分で生産又は提供した商品又は役務と結びつけて︑意匠特許を出願してしまう︒
法学論集 49〔山梨学院大学〕 296
わが国の法律によって意匠の特許出願は︑形式審査の原則が採用されている︒そして︑特許行政部門は意匠の特許
出願について︑初歩的な審査を経て拒絶の理由が発見されないときは︑意匠の特許権を与える旨の決定をし︑相応
の特許証を発給し︑同時に︑登録及び公告をしなければならない︒公告日から出願者は特許権者になって︑適法な
権利者となる︒この後︑著作権者又は商標権者は︑意匠特許権者の意匠の中で自分の作品又は商標図様があること
を発見して︑意匠特許権者に対して侵害を訴えるときは︑意匠特許権者は自分がもつ特許権と言う理由で抗弁を行
う︒特許権は国務院の特許行政部門が法律に従って︑授与されたものであるので︑当該意匠特許は︑他人のある著
作権の美術作品又は登録商標の図様から作られたことを明らかにするにもかかわらず︑裁判所も当該意匠特許の効
力を直接に否定する権限はない︒著作権者又は商標権者は︑特許法第四五条により︑特許再審委員会に当該意匠特
許権の無効宣告を請求する場合に限る︒しかも︑無効宣告の手続きに入った後︑もし特許権の無効を宣告し︑又は
特許権を維持する旨の特許再審委員会の決定に不服がある場合には︑通知を受け取った日から三か月以内にどちら
からでも裁判所に訴えを提起することができる︒こうすると︑著作権者又は商標権者は︑長い時間を待たなければ
ならない︒この過程で著作権者又は商標権者たる先権利者は︑自己の利益が十分な保護を受けることができなくな
るのである︒
以上の問題を解決するために︑先権利者の利益から考え︑かつ︑フリー・ライドを抑制して︑今度の法改正は第
壬二条で︑﹁他人が先に取得した適法な権利と抵触するものであってはならない︒﹂と言う条件を加えている︒
意匠特許権を付与する条件について︑もう一つの改正がある︒
第二三条で︑先行意匠と﹁同一又は類似﹂から﹁同一及び類似﹂と変更された︒法理から言えば︑意匠特許権を
一296一
わが国の法律によって意匠の特許出願は︑形式審査の原則が採用されている︒そして︑特許行政部門は意匠の特許
出願について︑初歩的な審査を経て拒絶の理由が発見されないときは︑意匠の特許権を与える旨の決定をし︑相応
の特許証を発給し︑同時に︑登録及び公告をしなければならない︒公告白から出願者は特許権者になって︑適法な
権利者となる︒この後︑著作権者又は商標権者は︑意匠特許権者の意匠の中で自分の作品又は商標図様があること
を発見して︑意匠特許権者に対して侵害を訴えるときは︑意匠特許権者は自分がもっ特許権と言う理由で抗弁を行
う︒特許権は国務院の特許行政部門が法律に従って︑授与されたものであるので︑当該意匠特許は︑他人のある著
作権の美術作品又は登録商標の図様から作られたことを明らかにするにもかかわらず︑裁判所も当該意匠特許の効
力を直接に否定する権限はない︒著作権者又は商標権者は︑特許法第四五条により︑特許再審委員会に当該意匠特
許権の無効宣告を請求する場合に限る︒しかも︑無効宣告の手続きに入った後︑もし特許権の無効を宣告し︑又は
特許権を維持する旨の特許再審委員会の決定に不服がある場合には︑通知を受げ取った日から三か月以内にどちら
からでも裁判所に訴えを提起することができる︒こうすると︑著作権者又は商標権者は︑長い時間を待たなければ
ならない︒この過程で著作権者又は商標権者たる先権利者は︑自己の利益が十分な保護を受けることができなくな
るの
であ
る︒
以上の問題を解決するために︑先権利者の利益から考え︑かつ︑
フリ
l
・ライドを抑制して︑今度の法改正は第二三条で︑﹁他人が先に取得した適法な権利と抵触するものであってはならない︒﹂と言う条件を加えている︒
意匠特許権を付与する条件について︑もう一つの改正がある︒
第二三条で︑先行意匠と﹁同一又は類似﹂から﹁同一及び類似﹂と変更された︒法理から言えば︑意匠特許権を