自治体における外部評価の役割と課題(二) : 山 梨県での経験に基づく外部評価論
著者 日高 昭夫
雑誌名 山梨学院大学法学論集
巻 第75号
ページ 1‑114
発行年 2015‑01‑30
URL http://id.nii.ac.jp/1188/00003170/
論
自
説治 体 に お け る 外 部 評 価 の 役 割 と 課 題
︵ 二
︶
││ 山梨 県で の経 験に 基づ く外 部評 価論
││
日 高 昭 夫
目 次 一
はじ めに
││ 外部 評価 の定 義と 論点 二
山梨 県に おけ る行 政評 価制 度の 沿革 三
施策 評価 の導 入と 廃止
││ その 背景 と要 因︵ 以上
︑
・ 合併 号︶ 72 73 四
外部 評価 制度 の導 入と 展開 五
外部 評価 によ る行 政統 制の 可能 性と 限界 六
おわ りに
││ 外部 評価 の役 割と 課題
︵以 上︑ 本号
︶
─ 1 ─
四 外部 評価 制度 の導 入と 展開 四│
一 自治 体に おけ る外 部評 価の 実施 状況 まず
︑自 治体 にお ける 外部 評価 の実 施状 況を 確認 して おこ う︒ 総務 省の 調査 によ れば
︑外 部評 価︵ 行政 以外 の主 体に よる 評価
︶を 実施 して いる 団体 は︑ 全部 で三 百五 十八 であ る︒ 全地 方公 共団 体千 七百 九十 七に 対す る実 施率 は十 九・ 九%
︑行 政評 価導 入団 体全 体九 百七 十七 に対 する 実施 率 は約 三十 六・ 六% であ る︒ 全体 とし てみ ると 外部 評価 の実 施率 は決 して 高く ない のが 現状 であ る︒ ただ
︑自 治体 区分 別に みる と︑ 図 に示 すよ うに
︑都 道府 県や 政令 指定 都市 など の比 較的 規模 の大 きな 自治 体で は実 施率 が高 く︑ 中核 市を 除い て︑ 過半 数の 団体 が外 部評 価を 実施 して いる
︒都 道府 県で は二 十五 団体 が実 施し て いる
︒山 梨県 もそ の一 つで ある
︒ 次に
︑都 道府 県及 び比 較的 規模 の大 きな 都市 ごと の外 部評 価の 導入 率の 推移 を︑ 平成 十五 年か ら平 成二 十二 年ま での 間で みる と︑ 図 のと おり であ る︒ 都道 府県 と政 令指 定都 市は 比較 的早 くか ら実 施し てき てい る︒ しか し︑ 政 令指 定都 市の 実施 率が 右肩 上が りに 上昇 する 傾向 がみ られ るの と異 なり
︑都 道府 県で は平 成十 六年 以降 五割 前後 で 足踏 み状 態が 続い てい る︒ 平成 二十 二年 にお ける 外部 評価 主体
︵行 政以 外の 主体
︶の 内容 は︑ 表 のと おり であ る︒ 第三 者機 関に よる 外部
─ 2 ─
─ 3 ─
53.2%
68.4%
45.0%
51.2%
28.2%
8.6%
19.9%
54.3%
72.2%
47.4% 51.2%
36.1%
28.9%
36.6%
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図 外部評価の実施状況
(出典) 総務省「地方公共団体における行政評価の取組状況」平成22年10月日現在に 基づき筆者が作成。
40.4%
53.2%
46.8% 46.8%
51.1% 53.2%
38.5% 38.5%
50.0%
52.9%
66.7% 68.4%
25.7%
32.4%
54.3%
43.9% 45.0%
25.0% 30.8% 29.5%
39.0%
51.2%
図અ 外部評価の導入団体割合の推移
(出典) 各年の総務省「地方公共団体における行政評価の導入状況」より筆者作成。構 成比は、全団体に対する導入団体の割合を表す。
評価 が︑ どの 団体 区 分で も相 対多 数を 占 めて いる
︒た だし
︑ 中核 市を 除く 市区 町 村に おい ては
︑評 価 対象 とな る事 業等 の 性格 に由 来す ると 思 われ るが
︑﹁ 住民
﹂ を構 成員 に含 めた 外 部評 価が 第三 者機 関 の半 数程 度を 占め て いる 点も 注目 でき る︒
﹁第 三者 機関
+住 民﹂ とい う組 み合 わ せが 多い こと を示 し てい る︒ その 一方 で︑ 議会 によ る外 部評 価
─ 4 ─
表અ 外部評価主体の内容
団体数 構成比 (%)
都道府県政令指定都市 中核市 特例市 市区 町村
議会
48 17.1 団体数 構成比
(%) 団体数 構成比 (%)
NPO 等他団体
団体数 構成比 (%) 第三者機関
団体数 構成比
(%) 団体数 構成比 (%)
4 0.7
その他
5 1.8 20 43.5 11 61.1
住民
13 34.2 16 39.0 139 25.1
0 0 0 0 8 1.4 4 1.4 2 4.3 0 0 0 0 0 0
0 0 5 27.8 2 5.3 7 17.1 62 11.2 32 11.4 1 2.2 0 0
3 6.5 1 5.6 3 7.9 3 7.3 14 2.5 5 1.8
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㘃ૃ䈱䉅䈱䉕ታᣉ䈚䈢䈖䈫䈏䈅䉎 23.4% 10.5% 10.0% 19.5%
ታᣉ䈚䈢䈖䈫䈏䈅䉎 23.4% 52.6% 17.5% 19.5%
0%
20%
40%
60%
80%
図આ 事業仕分け等の実施状況
(出典) 図に同じ。
【行政以外の主体の内容】
※ 構成比は、行政評価を導入している団体に占める割合である(複数回答あり)。
(都道府県については46団体中、政令指定都市については18団体中、中核市については38団体中、特例 市については41団体中、市区については554団体中、町村については280団体中)
(出典) 図に同じ。
は全 体を 通し てき わめ て低 調で ある
︒ また
︑本 稿に いう
﹁狭 義の 外部 評価
﹂と は必 ずし も一 致し ない が︑ いわ ゆる 事業 仕分 けや それ に類 似し た手 法に よる 評価 も実 施さ れて いる
︒平 成二 十二 年十 月一 日現 在で の実 施状 況を 図 に掲 げて おく
︒ 四│ 二 山梨 県に おけ る外 部評 価制 度の 沿革 山梨 県に おけ る外 部評 価制 度は
︑制 度設 計か ら試 行・ 導入
・展 開ま で含 める と︑ 政策 アセ スメ ント 委員 会の 時代 を経 て︑ 今日 の行 政評 価ア ドバ イザ ー会 議ま で︑ 十数 年の 歴史 を有 して いる
︒ 山梨 県政 策ア セス メン ト委 員会 は︑ 平成 十三 年度 に設 置さ れ平 成二 十年 に廃 止さ れる が︑ その 間︑ 知事 交代 のあ った 十九 年度 の休 止を はさ んで 実質 的に は六 年間 の活 動を 行っ てき た︒ また
︑廃 止さ れた 政策 アセ スメ ント 委員 会 に代 わり 平成 二十 年度 に山 梨県 行政 評価 アド バイ ザー 会議 が新 設さ れた
︒ その 詳細 につ いて は後 述す るこ とに して
︑こ こで は表 に 掲げ る政 策ア セス メン ト委 員会 及び 行政 評価 アド バイ ザー 会議 の設 置要 綱の 対比 に基 づき
︑そ の変 遷の 概要 を示 して おく
︒ まず
︑政 策ア セス メン ト委 員会 の変 遷で 注目 すべ き点 は︑
﹁担 任事 務﹂ の移 り変 わり であ る︒ 第一 期が
︑県 の行 う政 策ア セス メン トの 評価 方法 や評 価表 の改 善な どの 行政 評価 のあ り方 に関 する 事項 であ るの に対 して
︑第 二期 及 び第 三期 は︑ 外部 評価
︵第 三者 評価
︶に シフ トし てい る︒ 第二 期以 降︑ 政策 アセ スメ ント 委員 会が 外部 評価 機関 と して の機 能を 付加 した
︒こ のこ とに 対応 して
︑第 二期 以降
︑﹁ 委員 会は
︑必 要が ある と認 める とき は︑ 議事 に係 る 関係 者又 は専 門家 に対 し︑ 出席 を求 めて 意見 若し くは 説明 を聴 き︑ 又は 必要 な書 類の 提出 を求 める こと がで きる
﹂
─ 5 ─
─ 6 ─ 及び行政評価アドバイザー設置要綱の変遷
任期 第期
H22-24 名称
第期
任期
行政評価アドバイザー会議
同じ
「行政評価の実施に関する要綱」(平成20年月15日制 定)第()に基づき、県の施策・事業を対象に実 施する行政評価において、評価の客観性、透明性を高 めるとともに、専門的立場からの意見を聴くため、山 梨県行政評価アドバイザー会議を置く。
設置
H20-21
外部評価に関するこ 行政評価結果の外部評価に関すること と
ઃ
同じ 次の事項について調査し、意見を県に提出する
所掌 事項
同じ その他行政評価に関すること
અ
同じ 行政評価制度の改善に関すること
同じ アドバイザー会議は、学識経験者等優れた識見を有す る者のうちから、知事政策局長が委嘱するアドバイザ ー名をもって構成する
組織
同じ アドバイザーの任期は年以内とし、再任を妨げない。
ただし、アドバイザーが欠けた場合における後任者の 任期は、前任者の残任期間とする
同じ 同じ
会長 等
─ 7 ─
表આ 山梨県政策アセスメント委員会設置要綱
H13-14
任期 第期
政策アセスメント委員会 名称
同じ 次の事項について審議し、
必要な助言等を行う 担任
事務
同じ 同じ
山梨県政策アセスメント委 員会の組織及び運営に関し、
必要な事項を定める 趣旨
H15-16 H17-18
第期 第期
政策アセスメント制度の改 善に関すること
施策評価の手法等に関する こと
政策アセスメントの評価表 の改善などに関すること
政策アセスメント結果の外 部評価に関すること 事業評価・事前評価の手法
等に関すること 政策アセスメントの評価手
法に関すること
ઃ
政策アセスメントに関する 次の事項について審議し、
意見の提出、必要な助言等 を行う
その他政策アセスメントに 関すること
આ
その他政策アセスメントに 関すること
第三者評価に関すること その他政策アセスメントに
関すること અ
同じ 委員は、政策アセスメント に関し学識経験を有する者 及び県民のうちから知事が 委嘱する
同じ 委員 人以内で組織する 委員人で組織する
組織
欠員を生じた場合、補欠の 委員を委嘱したときは、当 該補欠の委員の任期は前任 者の残任期間とする
同じ 同じ
委員の任期は年とする。
ただし、再任を妨げない 任期
会長は委員の互選 会長及び会長代理は、委員
の互選によりこれを定める
同じ 会長及び副会長を置く
委員会に会長及び会長代理 を置く
会長
等 副会長は会長の指名する者
をもって充てる 同じ
会長は、会務を総理し、委 員会を代表する
副会長は、会長を補佐し、
会長に事故あるときは、そ の職務を代理する 会長代理は、会長を補佐し、
会長に事故あるときは、そ の職務を代理する
─ 8 ─ 会議
同じ アドバイザー会議は会長が招集する
アドバイザーは、県が作成する行政評価調書及びその 付属資料等により専門的見地から行政評価の内容調査 等を行う
調査、
意見 の聴 取
同じ 会長は、必要があると判断した場合には、調査結果を とりまとめ、提言等を行うことができる
会議は原則として公 開する
知事政策局行政改革推進課 庶務
アドバイザーは、必要があると認める場合には、関係 者の出席を求めてその説明若しくは意見を聴くこと、
又は関係者からの資料の提出を求めることができる
同じ
平成20年月15日から施行 付則
同じ この要綱に定めるもののほか、必要な事項は、別に定 める
その 他
同じ
平成22年月18日か ら施行
─ 9 ─
同じ 同じ
会議は、会長が招集し、会 長が議長となる
会議
会議は、委員の二分の一以 上が出席しなければ開くこ とができない
意見 の聴取等
会議の議事は、出席した委 員の過半数で決し、可否同 数のときは、議長の決する ところによる
企画部新行政システム課 同じ。ただし、平成16年度
より企画部新行政システム 課に変更
企画部総合政策室 庶務
同じ 委員会は、必要があると認 めるときは、議事に係る関 係者又は専門家に対し、出 席を求めて意見若しくは説 明を聴き、又は必要な書類 の提出を求めることができ る
平成17年月19日から施行 平成15年月16日から施行
平成13年月23日から施行 施行
期日
同じ 同じ
この要綱に定めるもののほ か、委員会の運営に関し必 要な事項は、会長が委員会 に諮って定める
委任
(出典) 各年度の設置要綱に基づき、筆者作成。
こと が明 記さ れ︑ 外部 評価 に伴 う意 見聴 取の 権限 が追 加さ れて いる
︒ また
︑委 員構 成が 第一 期の 五人 から 第二 期以 降は 六人 に増 員さ れる とと もに
︑委 員か ら互 選に より 選出 され る会 長が 副会 長を 指名 する こと に変 更さ れた
︒外 部評 価の 試行 や本 格実 施を 具体 的に 進め るう えで
︑こ の六 委員 制は 一 定の 意味 を持 つこ とに なる
︒ 次に
︑平 成二 十年 度か ら導 入さ れた 行政 評価 アド バイ ザー 会議 は︑ 主と して 外部 評価 機関 とし て設 置さ れた ため
︑ 設置 の趣 旨に は﹁ 県の 施策
・事 業を 対象 に実 施す る行 政評 価に おい て︑ 評価 の客 観性
︑透 明性 を高 める とと もに
︑ 専・ 門・ 的・ 立・ 場・ か・ ら・ の・ 意・ 見・ を聴 く﹂
︵傍 点は 筆者
︒以 下同 じ︶ こと が明 記さ れた
︒そ のた め︑ 政策 アセ スメ ント 委員 会 では
﹁政 策ア セス メン トに 関し 学識 経験 を有 する 者及・ び・ 県・ 民・ のう ちか ら知 事が 委嘱
﹂と され てい たの が︑
﹁学 識経 験者 等優 れた 識見 を有 する 者の うち から
︑知 事政 策局 長が 委嘱 する アド バイ ザー
﹂と され た︒ 委員 会方 式か らア ド バイ ザー 方式 への 転換 は︑ 県民 の﹁ 代表 性﹂ より も﹁ 専門 性﹂ の担 保に 軸足 をお く変 更で ある こと がわ かる
︒六 人 制か ら三 人制 への シフ トも その こと と関 係す る︒ 関連 して
︑政 策ア セス メン ト委 員会 にお ける
﹁会 議﹂ は︑ 委員 の過 半数 の出 席の 下で
︑﹁ 会議 の議 事は
︑出 席し た委 員の 過半 数で 決し
︑可 否同 数の とき は︑ 議長 の決 する とこ ろに よる
﹂と して
︑合 議︵ 多数 決︶ 方式 の意 思決 定 手続 きを 規定 して いた
︒こ れに 対し て︑ 行政 評価 アド バイ ザー 会議 では
︑合 議方 式を 採用 して いな い︒ 調査 や意 見 聴取
︑資 料提 出な どの 権限 は個 々の アド バイ ザー に与 えら れて いる
︒﹁ ア・ ド・ バ・ イ・ ザ・ ー・ は︑ 県が 作成 する 行政 評価 調 書及 びそ の付 属資 料等 によ り専 門的 見地 から 行政 評価 の内 容調 査等 を行 う︒
﹂﹁ ア・ ド・ バ・ イ・ ザ・ ー・ は︑ 必要 があ ると 認め る場 合に は︑ 関係 者の 出席 を求 めて その 説明 若し くは 意見 を聴 くこ と︑ 又は 関係 者か らの 資料 の提 出を 求め るこ と
─ 10 ─
がで きる
︒﹂ さら に︑
﹁会 長は
︑必 要が ある と判 断し た場 合に は︑ 調査 結果 をと りま とめ
︑提 言等 を行 うこ とが でき る﹂ とし て︑ 会長 の権 限が 定め られ てい る︒ 最後 に︑ 政策 アセ スメ ント 委員 が知 事の 委嘱 であ った のに 対し て︑ 行政 評価 アド バイ ザー は知 事政 策局 長の 委嘱 とな って いる
︒法 的に は︑ 執行 機関 たる 知事 の﹁ 附属 機関
﹂と 解釈 され る可 能性 を完 全に 払拭 し︑ 知事 の補 助機 関 たる 職員
︵知 事政 策局 長︶ の外 部助 言者 とし ての 性格 付け が明 瞭に なっ てい る︒ その こと の論 評は 後に 述べ る︒ 以下
︑外 部評 価制 度の 導入
・実 施過 程を 詳細 に検 討し てい くこ とに する
︒ 四│ 三 外部 評価 の制 度設 計か ら試 行・ 実施 へ│
│政 策ア セス メン ト委 員会 の役 割
︵一
︶山 梨県 政策 アセ スメ ント 委員 会報 告書 の提 出│
│施 策評 価一 体型 外部 評価 制度 の提 案 第一 期政 策ア セス メン ト委 員会
︵平 成十 三年 七月 六日
~平 成十 四年 十二 月十 九日
︒以 下︑ 第一 期委 員会 とい う︒
︶ の主 たる 任務 は︑ 行政 評価 シス テム とし ての 政策 アセ スメ ント 制度 の改 善や 今後 のあ り方 に関 して 審議 し助 言等 を 行う こと にあ った
︒そ の集 大成 が︑ 平成 十四 年十 二月 十九 日に 天野 建知 事に 提出 した
﹁山 梨県 政策 アセ スメ ント 委 員会 報告 書﹂
︵以 下︑ 第一 期委 員会 報告 とい う︒
︶で ある
︒ その 主な 意見 の項 目は
︑次 のと おり であ る︒
① 事務 事業 評価 表の 改善 につ いて 事業 の質 的改 革・ 改善 の促 進︑ 職員 の意 識改 革の 促進 及び 県民 への アカ ウン タビ リテ ィの 徹底 の視 点か ら評 価表 を改 善す べき こと を提 言︒
─ 11 ─