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石松 隆和*・田口 喜祥**

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(1)

磁気軸受における軸のアンバランスの適応制御

石松 隆和*・田口 喜祥**

A New Unbalance Compensation Method for Magnetically

       Supported Rotor

by

Takakazu ISHIMATSU*, Nobuyoshi TAGUCHI**,

  In this paper we propose two feedfoward compensation algsorithms, they accommodate changes of rotor dynamics including rotating speed. The first one determine the compensating signals by identifying system dynamics successively. Whereas, the second one is more primitive like PID algorithm without iden−

tifying system dynamics.

1.はじめに

 磁気軸受は,機械的摩擦がない,潤滑の必要がない,

回転軸の静剛性,動剛性を自由に設計できるなど従来 の機械軸受や,滑り軸受にないさまざまな特徴を持っ ている1も磁気軸受に保持された回転軸におきる振動 は,電気的ノイズ,空力学的,流体力学的,不釣り合 い力等の外乱によるものであると考えられる。これら の中で,不釣り合い力による振動は回転軸の不釣り合 いに起因するもので,避ける事ができない。そのため,

磁気軸受での不釣り合い力による振動の制御は,重要 な問題とされている。不釣り合い力の注目すべき特徴

として,回転力に同期している事があげられる。すで に多くの研究者がオブザーバやノッチフィルタによる 不釣り合い力の補正方法について発表しているが,興 味深いものにフィードフォワード制御の手法を用いて 不釣り合いの補正を行ったものがある2)〜暁フィー ドフォワード制御の基本的特徴は,回転軸の数値モデ ルがわからなくても制御できる。通常使用されている フィードフォワード制御による制御信号は,回転軸の 回転数に同期しており,同期信号の振幅と位相は振動

を抑制するように調整される。この制御方法は一定回 転数で回転軸の振動制御を行う場合などの定常状態で は良好な性能を示す。しかしながら,より回転軸の特 性変化にロバストな制御法を用いれば,回転数が変化 する場合や回転軸の不釣り合い質量の大きさや位置が 突然変化する場合でも対応できるのではないかと考え

られる。

 本研究では,回転数が変化するなどの制御対象の特 性が変化した場合でも対応できる2つのフィードフォ ワード制御アルゴリズムを提案する。最初の1つは,

システムの力学的特性を随時推定して,制御信号を決 定する方法である。また,2つ目の方法は,システムの 力学的特性を推定せずに制御信号を求ある,より簡単 なPIアルゴリズムである。これらの2つのアルゴリ ズムを実際に適応して実験を行ったところ回転数に同 期した振動を抑制する効果を確認した。

 上記のアルゴリズムは,回転軸の変位を最小にした り,磁気力を最小にするなどの方式が考えられるが,

今回は,回転軸の変位を最小にする方式について述べ

る。

平成5年9月30日受理   *機械システム工学科   **海洋生産科学研究科

(2)

40 磁気軸受における軸のアンバランスの適応制御

2.実験装置

 実験装置の概要をFig,1に示す。実験装置は2つ のラジアル磁気軸受とそれにより保持されたロータ,

さらにロータを回転させるダイレクトドライブモー タ,8チャンネルパワーアンプ,渦電流式距離センサ 4台,電流センサ8台,および超高速の制御計算を可 能にするデジタルシグナルプロセッサ(TMS 320 C 30)から構成されている。ロータは重さ9.6㎏のアル ミニウム製で,直径78.6㎜,長さ955㎜,磁性材料で ラミネートされており,2つのセンサリングが取り付 けられている。出力0.75kwのダイレクトドライブ モータは両端のラジアル磁気軸受の中心に取り付けら れている。ラジアル磁気軸受けの寸法は,外径164㎜,

内径80㎜,幅42㎜で,軸受け隙間0.7㎜である。渦電 流式距離センサは,軸受部に取り付けている。ロータ の回転角を測定するために光センサを使用した。パー ソナルコンピュータ(IBM・PCIAT)は,ホストコン ピュータとして使用した。

      motor drive

て正弦波を加えた。正弦波のゲインと位相は,Fig.2 のA,Bパラメータで定まり,ロ一当の力学的特性と 不釣り合い質量の推定値により決定される。

 制御信号Uと変位信号Xとの関係は,周波数領域 で導出すると以下の式となる。

 X(jω)=G1(jω)U(jω)+G2(jω)       (1)

ここでωはロータの回転数,U(1ω)は不釣り合い制 御ための制御信号で,G1(jω)とG2(jω)は周波数伝 達関数である。

  Sinusoida畳  compensation   signal

Uc=; Acos   ■卜Hsin甜

Ref+  +

PD−Controller

Synchronous disturbance

   腿

Force +

X

Magnetic bea戚ng

、塊ρ∴<)ζ

ア葺事

  Ieft magnetic

@  bearin

浮獅b≠撃≠獅モ

asピ、

ght magnelic 

@bearing ll

f.1↑1・.、

  1 ptical

irect−drive motor

mpiifier outputs

撃№獅≠撃刀@c。。,,。1凝駅 ・…

ulse prgcessing

@    輪・ギ  including the 

@      DSP board 

@  謹

⊆;=勲汎,

.騨購欝1鱒

mplifier and sensor 

@ filter rack 

@ pulse signal

enSor signals

ig.1 Experimental Setup

.伝達関数推定による不釣り合い制御アルゴリズム

.1 繰り返し誘導による制御アルゴリズム Fig.2にフィードフォワード制御のブロック線図を す。もし,ロータの不釣り合いによる回転に同期し 外乱がなければ,PD制御装置Gc(jω)は,ロータ 十分安定に制御できる。しかし,ロータに不釣り合 がある場合は不釣り合い質量が回転する事により回 数に同期した励振力を発生するため,PD制御装置 けでは十分な制御が行えない。そこで,ここでは,

転数に同期した外乱を補償するため,制御信号とし

easured displacement signa1

lant:rotor

ig.2 Block Diagram of the Feedforward    Compensation Scheme

式では,XとUはベクトル量として定義している 以下では簡単のためXとUを複素数のスカラ変数

して取り扱う。X(」ω)は計測でき, U(jω)は既知 値なので,G1(jω), G2(」ω)は以下のように二つの なる制御信号Ul(jω)及びU2(jω)を加える事によ

決定する事ができる。

    X2(1ω)一Xl(」ω)

       (2)

G1(jω)=

    U2(jω)一U1(jω)

(j・)一半(jω)蹄G≡呂ii留恥) (3)

こで,XlとX2はU1(1ω)とU2(jω)をそれぞれ加え ときのロータの変位信号である。変位を0とする制 信号U3は次式で求められる。

      (U2−U1)X2

       (4)

   U3=U2        ×2−Xl

の式は,前に加えた制御信号と,その結果生じたロー の変位信号が分かれば,不釣り合い振動を抑制でき 事を意味している。しかし,実際の不釣り合い振動

,外乱やロータの力学的特性の変化の影響を考慮し ければならない。そこで,不釣り合い振動を抑制す 制御信号は,以下に示す繰り返し式を使う事がより 際的だと考えられる。

   U㎞1−U・馨    (5>

(3)

    磯≡畿ゴ   (6)

このことより,システムに制御信号を加え,その結果 の変位信号を観測することにより伝達関数が求められ ることがわかる。制御対象の特性が変化しないならば 伝達関数Gk(jω)はほとんど一定の値をとる事になる ので,ロータに振れ回りが検出された時にのみ繰り返 し式(5),(6)を使用して振れ回り制御信号を更新する。

上述の式は,回転数の変動を考慮した形に拡張する事 ができる。一般に外部励振力を不釣り合い質量による

ものであると考えられるので式(1)は次のように書き換 えられる。

X(3ω)=G1(jω)U(5ω)+ω2G2(」ω) (7)

ここで右辺の第2項はω2の関数である。異なった回 転数ω1,ω2での繰り返し方程式は次のようになる。

X1(jω1)=G1(jω1)U1(jω1)+ωぞG2(jω1)

X2(」ω2)=G1(」ω2)U2(jω2)+ω碁G2(jω2)

(8>

(9)

分小さく抑えられている事を示している。ロータの変 位は20μm以下であった。制御信号を加えない場合,

不釣り合い振動の大きさは0.1㎜であった。

 Fig.4は,全ての回転数で不釣り合い振動が抑制さ れている事を示している。回転数は20秒間に10rot/

secから95 rot/secまで変化させた。全ての回転数で 不釣り合い振動の抑制は認められたものの,性能は十 分満足できるものではなかった。

迎αO14 琴α。12.

暑αOl

蜘oo8・

8 碧αoo6 臥起.

㌔5・

寧臓・

<  0

[eft bea血

ここで,G1(jω)とG2(jω)はω1からω2の間ほぼ一定 であると仮定すると,次式が得られる。

賑1一蝋護)(w艮.1w艮)

Gk=

X・一Xト1(Wk−1Wk)・

U・一U』1(Wk−1Wk)・

3.2 実験結果1

上述のアルゴリズムを実験装置に適応した。

α1)

制御信号の変更は2秒間に1回行った。また,周波数 応答X(jω)はDFT(Digital Fourier Transform)を 用いて求めた。Fig.3はロータの不釣り合い振動が十

0    10   20   30   40   50   60   70

       Rotating speed【玲t/s㏄]

80  90  100

,r O・1

§α05

1価.

5.0.1

     200    400    600    800    1000     Number of contmlling times(1inlervab O5 ms)

Fig.3 Displacement of Rotor with Compensation    at Rotational Speed of 89 rad/sec

Fig.4 Amplitude of the Displacement Signal    under the Various Rotating Speed

制御対象の特性の変化が無視できる場合には特性の 推定が必要なく式(5)のみを用いて,制御が高速に実現 できる点に着目し,次のような実験を行った。式(5),

(6)を用いて振れ回り制御を行い,周波数伝達関数が集 束した後,式(5)のみを用いる制御信号の更新を一回転

ごとに行った。

 Fig.5は不釣り合い質量が我々のアルゴリズムでい かに早く制御されているかを示している。ここでは

タービンブレード欠落をシミュレートするために磁気 軸受を使ってロータに意図的な仮想不釣り合い力をつ けている。不釣り合いの発生直後に振動がおきている

ものの,3回転後には収束している事がわかる。

誓α19

な o・

£.0ユー・

脅一〇,2・一

・酔〆一一・・

0

Fig.5

200   400  600    800    1000    1200    1400 number of s㎜ples*5

Rotor Response Directly after applying aSudden Sinusoidal Disturbance at Rotational Speed of 120 rad/sec

(4)

42 磁気軸受における軸のアンバランスの適応制御

4.伝達関数推定を行わない不釣り合い制御アルゴリ  ズム

4.1 伝達関数推定を伴わない不釣り合い制御の考    え方

 ロータに発生する不釣り合いによる振動変位は正弦 波となる。しかし,もしFig.6に示すようにロータ の回転に同期して回転する座標(x,y)上で不釣り合 い振動を測定すると二次系のステップ応答で近似でき

る。

囲一一

y

Y

  Nu

clii馨1…

xΩt+

Ωt+φつ(

一・学部 X

X

Fig.6 Rotating Coordinate

displacement  sensor

 従来のPI(Proportional Integral)アルゴリズムや PIDアルゴリズムは,制御対象に対する知識があま りない場合は大変有効な手法である事はよく知られて いる。また,1制御の重要な特徴の一つとして,オフ セットを減らす事があげられる。このようなことに着

目することで,不釣り合い振動を抑制するアルゴリズ ムとして次のような不釣り合い制御アルゴリズムが考 えられる。

【不釣り合い制御アルゴリズム】

1)回転している軸のx,,y,座標を求める。

2)x,,y,座標での制御信号Uxr, Uyrを従来のPIア ルゴリズムに基づいて決定する。

例を示すと次のようになる。

       Uxr=一Kpx,(k)一KiΣx,(n)        ⑫       n=0

       

Uyr=一Kpy,(k)一KiΣy,(n)         ⑬       .n=0

3)制御信号Uxr, Uyrを回転している軸と同期して 回転させ,入力する。

この結果,磁気軸受は回転に同期した力を発生する。

この回転に同期した力は磁気軸受に正弦波の制御信号 を送ることにより容易に発生できる。

 DSPを使った磁気軸受システム上でこのアルゴリ ズムを実行させる事は難しくないが,考慮しなければ ならない点がいくつかある。一つの重要な注意点はど のようなタイミングで上述の制御信号を変更するかと いう事である。もし,制御信号の変更が早すぎるとロー タの力学的特性に影響を与えてしまう。一つの容易な 解決法は,制御信号の変更を比較的ゆっくり行うこと であり,このようにするとPD制御装置と不釣り合い 制御装置を独立に設計できるというメリットがある。

以下では,どのようにして上述のアルゴリズムを実施 するかについて述べる。ただし,制御信号Uxrと Uyrは,数回転ごとに変更するものとする。注意すべ き点は,X,, y,が変位センサにより測定される変位デー タx,yをフーリエ変換する事により計算できる事で ある。このことは,振れ回り振動変位が次のように与 えられる事を考慮すれば理解できる。

   X(t)=XrCOS(ωt)十yrSin(ωt)         (④    y(t)=XrCOS(ωt)一yrSin(ωt)      (【5)

上式は回転座標上でのロータ変位(X,,y,)とセンサ信 号(X(t),y(t))の関係を記述している。よく知られ ているようにロータの変位(X,,y,)は以下の離散化 フーリエ変換アルゴリズムにより求める事ができる。

翰一キ恥(ω娠)

斑一ハ顛(ωtk)

ここで,1回転の時間はNの分割時間に分けられる ものとする。以下に1回転ごとに実行されるアルゴリ ズムを示す。

1)1回転ごとに変位信号Xkとykを測定する。

2)式⑯,⑰を使って回転座標上での変位信号の平均   値(X,,y,)を求める。

3)式⑫,⑬を用いて回転座標上の制御信号を変更す   る。

4)以下の式を用いて磁気軸受に制御信号を加える。

   UX=U,建COS(ωt十φ)十UyrSin(ωt十φ)    ⑱    UY=U∬Sin(ωt十φ)一UyrCOS(ωt十φ)    ⑲

ここでφはこのアルゴリズムの安定性を向上させる 設計パラメータである。したがって,このアルゴリズ ムでは安定性を得るために3つの設計パラメータがあ

る。

(5)

4.2 本アルゴリズムの収束性

 提案したアルゴリズムの収束性を考える。制御信号 の更新は振れ回り振動が定常的になった後行うものと 仮定する。また,制御アルゴリズムは解析の簡単化の ため積分項のみを考える。

簡略化した磁気軸受のモデル式は次のようになる。

 文十。文十dx=au十A cosωt十B sinωt     ⑳

夕十。夕刻dy=av十Bcosωt−A sinωt

ここで,XとyはそれぞれX軸y軸上での変位, Uと vは制御信号,AとBは不釣り合いによる外乱である。

複素変数z=x+jy, w=u+lv, D=A+jBを導入する と上式は次のようになる。

一〇.05

旦。.

副05幽 も1.

芸α 5

今一〇.2

.i繭,一…

・〆幽流・・

 0       100      200      300      400      500

         number of samples*5 Fig.7 Dispiacement of the Rotor at     Rotational Speed of 847 rad/sec

loo

600

茗十。乞十dz=aw十De−」ωt

上記より第k回目の制御信号の更新を行った結果の 変位信号をZkとすると

 Zk+1・=(1−KG(jω))Zk       (幼

K=Kie−iφ

よって,収束条件は1−KG(jω)の全ての固有値が複 素平面上で単位円内に存在する事である。

 制御パラメータKlとφを上記に示したように調整 すれば振動は収束する事になる。

4.3 本アルゴリズムの実験結果

 本アルゴリズムを第2章で記述した磁気軸受に適応 した。Fig.7に二番目のアルゴリズムを使って不釣り 合いを制御したときのx,y方向の変位データを示す。

これらの実験では毎回転ごとに制御信号を変更してい る。回転数の変化に対する追従性をみるためにFig.

8に示すように回転数を変化させた。ここでは10rps から90rpsに達するまで10秒を要した。この回転数の 変化による振動の結果をFig.9に示す。

これらの図より,二番目の制御アルゴリズムはロバス ト性に関して優れた能力を持っていることがわかる。

5.おわりに

 本研究では,磁気軸受により保持されたロータに発 生する不釣り合い振動を抑制するために,フィードバ

ック制御の代わりに,2種類のフィードバック制御に よる手法を提案した。

一番目のアルゴリズムとして,推定を伴う方法を提 案した。実験により,一番目に適応したアルゴリズム は1,2回の繰り返しでほぼ最適な制御信号に収束す

B§ 9

80・・

60・・

4{〕・・

20・一

0

1羅.

0   5

Fig.8

  4x1(>3

鷺35.

塩3.

鑑5.

§、.

暴…

喜。;:

<  0

10    15    20    25    30    35    40    45

   number of itelation

Variation of the Rotating Speed

left ma  e1ic beadn

 O    lO    20   30   40   50   60   70   80   90   100          Rotating speed[mt/s㏄]

Fig.9 Amplitude of the Displacement Signal     under the Various Rotating Speed

る能力を持っている事がわかった。タービン翼の欠落 を想定して突然に不釣り合い力が発生する実験を行っ たところ,ロータの振動を数回転の後に制御できる事 がわかった。

また,従来からのPI制御に基づいた不釣り合い制御 法を提案した。この理論の原理は,センサに固定した 座標系とロ一門に同期して回転する座標系の二つの異 なった座標系を考慮することに基づいている。

本手法は制御対象の力学的モデルを必要としないこと が最大の利点である。

(6)

44 twfiimS! tzC 2kS rr 6 wtO 7 Y!< 9 Y J< Opa Piftij am

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       6 g sc wt

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参照

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