学校事務の定義の類型化の研究
A study on classification of definitons for school business
藤 原 文 雄
Funllo FuJIwARA
(平
成16年9月29日受理)
は じめに一学校事務 とは何か という問い一
われわれは平成 14年 度か ら平成
15年
度 にかけて『 ライフコースアプロニチに基づ く学校事務職員 の職務 と専門的力量 に関する実態調査研究(研
究代表者:山
崎準二)』
に取 り組 んだ。 この二年間の調 査研究では(1)学校事務職員は、 どのよ うな職務 をどのように遂行 してお り、 どのような職務態度を有 しているのだろ うか、(2)学校事務職員は、 どのような専門的力量 を有 し、 どのようにそれを形成 して いるのだろ うか、 とい う問いを探究するものであった。Lこのような問いを探究する中で、われわれは、そもそ も学校事務 とは何か とい う根本的な問いに直 面することとなつた。 この問いに直面 した理由は二つある。まず、われわれの調査研究活動で出会 つ た校長や教頭、 さらに学校事務職員です ら共通の学校事務 とは何か とい う定義 を共有 していない とい う事実に直面 し、われわれ 自身の学校事務 とは何か とい う定義 を持つ必要があつたためである。二つ 目の理由は、筆者 らの調査研究のフィール ドであつた静岡県の学校事務職員によりしば しば言及 され た「学校事務 とは、児童生徒の直接的指導を除いた仕事を言 う」とい う定義 に違和感を感 じ、より「しつ
くりする」定義 を探究する必要性 を感 じた とい うものである。
・
静岡県では県教育委員会教育長が 1993年 に市町村立学校 に勤務する学校事務職員の標準的職務 につ いて市町村教育委員会宛てに通知
(い
わゆる「標準的職務の通知」)が出 された。この通知は学校事務 職員の職務 として学校経営に関することを明記 した とい う点で全国的に注 目を集めた。 この通知で、先に述べた「学校事務 とは、児童生徒の直接的指導を除いた仕事 を言 う」と定義がなされた。しか し、
この定義 によれば、校長の行 う経営活動や用務員の行 う環境整備活動 も全て学校事務 とい うことにな り、あま りにもその定義は広すぎるのではないか、 さらにこの定義では学校事務 とい う仕事が組織全 体に果たす機能
(働
き)について何 も言及 されてお らず曖昧さは拭 えない とわれわれは感 じたのである。この学校事務 とは何か とい う定義が異なれば学校事務の専門家たる学校事務職員の果たすべき職務 や専門的力量の内実 も異なつて くる。清原正義は 「どのような学校事務観 に立つかによって、学校事 務職員制度 についての考え方 も異なって くるのであって、 この意味で学校事務観 を確立することは重 要である」0と述べているがわれわれ も同感である。
本稿では、第一章で学校事務を定義する方法が三種類存在 し、それぞれの方法を取 り入れるか どう
かで類型化が可能であることを指摘す る。その上で第二章で、その類型化にしたがい、多様な定義の 間の論争点な どを整理する。そ して、 さらに、第二章で筆者が妥当であると考える定義 に基づいた場 合、学校事務職員、ことに事務主任の仕事は どのように構想できるか とい うことを考えることとする。
1.学校事務を定義する二つの方法
学校事務は誰が担当しているものであれ、学校で行われるすべての仕事の二部分を占めるものであ る。もつとも、1998年 に出された中教審答申『今後の地方教育行政の在 り方 について』の中で提唱 さ れた学校事務の共同実施は、学校事務が学校か ら離れたセ ンターで行われるとい う新 しい可能性を提 言 している。また、古 くか ら学校で行われている事務は学校事務 とい うよりも本来教育委員会が対処 すべ き教育行政事務が学校 に下ろされてお り、学校事務ではない とい う見解 も出されてきた
0。
こうし た ことを踏まえれば、学校事務は学校 とい う場で行われるとい う定義は再検討の必要があるかもしれ ない。 しか し、本稿ではあ くまで学校内における学校事務 とい う前提で論 じることとしよう。さて、学校事務を定義す るとい うことは、学校で行われるすべての仕事の中か ら一定の基準で学校 事務 とい う仕事を抽出し、学校事務 と他のもの と区別することをい う。 この基準の違いにより学校事 務 とい う概念 により周 りか ら浮き出され る部分が違つて くる。 この学校事務/学校事務でない とい う 区別 を行 う方法 として、 これまで大き く二つの方法が採 られてきた。つま り、(1)他の概念 を活用 して 範囲を画するとい う形で学校事務を定義するとい う方法 と、(2)学校事務そのものの機能 を定義すると い う方法である。本稿では前者を消極的方法 として、後者を積極的方法 と名付 けよう。 この一方のみ で定義する研究者 もいれば、二つの方法を両方使 って定義を行 う研究者 もいる。
これまでの学校事務の定義 に関する先行研究を整理 したもの として清原正義 「学校事務論の諸相」
があるが、 この論文は後者の観点のみに注 目して先行研究を整理 したものである。清原は学校事務の 定義 に注 目して、「教育機能論的学校事務論」と「経営機能論的学校事務論」に分類 しているが、筆者 はそれだけでは不十分だ と思 う
0。
学校事務の定義 に関 しては機能のみならず、範囲も重要な論点であつ たか らである。 さて、 この二つの方法を図示すれば 〈図1〉
のようになる。<図1>学校事務の定義の類型
消極的方法有り
〔類型
I〕
〔類型I〕積極的方法無し 積極的方法有り
消極的方法無し
〔類型 Ⅲ〕
より具体的に両者の違いを説明しよう。消極的方法 とは例 えば、先に引用 した静岡県の「標準的職 務の通知」ヽつま り、「学校事務 とは、児童生徒の直接的指導を除いた仕事を言 う」のように児童生徒 の直接的指導 とい う概念を活用 して、学校事務 を定義する方法のことをい う。 この消極的方法 とは領 域 によつて定義す る方法 とも言えよう。
これに対 して積極的方法 とは例えば、「学校事務 における事務は、い うまでもないことだがその事務 が本来それ 自身で重要だ とい うのでな く、その学校の教育方針 を実現す るための教授活動 に奉仕する ことである。アメ リカの学校管理の権威者で
J・ B・
シアーズが、学校事務は教授活動のサー ビスをす る機能であるといっているのはこのことを意味 している」0とい うような定義の仕方のことをい う。こ の定義は、清原の分類 に従えば 「教育機能論的学校事務論」 として区分できよ う。 もつとも、積極的 方法で定義するとい う立場 に立っても、 ど│の
ように学校事務の機能 を定義す るかは多様であ り、次章 で述べ るが、 どのように機能 を把握す るかは優れて論争的な事柄であつた。これ らの積極的方法で定義 を行つているか どうかを横軸 に、消極的に定義 を行つているか どうかを 縦軸 にとれば、四つの象限か らなる類型化が可能である。積極的定義、消極的定義 ともに欠いた定義 はあ り得ないので、次章では三つの類型別 に、 より詳細 に定義 をみてい くこととしよう。
2.類型毎の定義の分析
〔類型
I〕
この類型 に属するのは積極的方法による定義はな く、消極的方法のみで学校事務の定義 を行 う立場 である。 この類型 に属するものは少ない。管見す る限 り、先 に引用 した静岡県のいわゆる 「標準的職 務の通知」の 「学校事務 とは、児童生徒の直接的指導を除いた仕事を言 う」以外に見あた らない。 こ の通知は 「学校運営の重要な一翼を担つている学校事務の重要性 を認識するとともに、学校運営組織 が円滑 に機能するよう努めること」 と述べているが、なぜ重要なのか とい う機能 について踏み込んで いない。 このため、学校事務 とは何か とい う点で曖味 さを否定できない と思 う。
このいわゆる「標準的職務の通知」が 1993年 に出されるまでには静岡県公立小 中学校事務研究会
(以
下事務研究会 とい う)の働 きかけが大 きかつた ことが推測 される。事務研究会 とは 「県立小 中学校の 学校事務 に関する研究、調査並びに会員の資質及び社会的地位の向上を図る」 ことを目的 とする団体 であ り、県費負担学校事務職員は全員加入 している。1992年 に県教育委員会は、この事務研究会か ら の代表 12名 を合む34名
の委員で、「市町村立小 中学校事務職員の職務内容標準化作成委員会」を設置 し、いわゆる 「標準的職務の通知」の内容検討を行つた とい う経緯がある。また、事務研究会は、これに先立ち 1987年 に全国 レベルの事務研究会で「職務内容の明確化をめざ して一職名による段階的 目標の設定一」と題す る報告をしている
0。
この報告は後 に出 されたいわゆる「標準的職務の通知」 とは異な り、消極的方法による定義 とともに、積極的方法による定義 も行って いる。 この報告の中で特筆すべきは、職務内容が標準化 されない一つの理由 として、学校事務職員 自 身の学校事務観 に統一性がないのではないか とい う立場 に立 って学校事務観の統一を主張 した点にあ る。また、従来学校事務職員が考えてきた学校事務 とは 「事務職員が担当する分野」 とい う捉え方で あつたが、今後は教員が児童生徒 に対 して行 う直接教育指導業務及びそれに付随する事務以外の領域 はすべて」学校事務 ととらえるべきだ と主張 した。
従来の考え方 に立てば どうしても教員 と学校事務職員の仕事の分野をどうするか とい う線引きの発 想 に陥 りやすい。後者の立場 に立てば、学校事務は学校事務職員のみが担当するものではな く校長、
教頭、教諭な ど多様な職種の人が行つているのであ り、教育 目標達成のために多職種が協働 して仕事
をするとい う発想に立てるのではないか とい う考 え方 に基づいた主張であつた。 しか し、 この定義 に よれば、校長の行 う経営活動 も用務員の行 う環境整備活動 も給食調理員の行 う給食調理活動 も全て学 校事務 とい うことになる。 これでは、あま りにも広すぎて学校事務のイメージを掴む ことができない とい う弱点を持つ。 さらに敢えていえば、 こうした他の職種 にも影響力を持つ定義を検討する際に、
用務員や給食調理員な どの意見をきちん と聴取 し、彼・彼女 らの合意を得たのか とい うプロセス上の 問題 も指摘できよう。
〔類型 Ⅱ〕
この類型 Ⅱに属するのは消極的方法 と積極的方法の双方で定義 を行 う立場である。いわば、学校事 務の領域 と機能で定義する立場 と言 えよ う。 この類型 にこれまでなされてきたかな りの定義が分類 さ れ るが、それ らを更 に分類すれば、ほ)教育補助機能的立場 一情報・経営機能的立場 とい う軸 と(2)直接 的教育活動 (とそれ に付随する活動)以外の全てが学校事務 ―それ以外、 とい う軸で区分できる。後 者の軸 についての説明は必要ない と思われるので、前者の軸 について説明 しよう。
<図2>学校事務 〔類型 Ⅱ〕の定義の類型
教育補助機能的立場
〔 類型
A〕それ以外
直接的教
.育
活動(と
それ に付 随する活動)以外の 全てが学校事務〔 類型 C〕 〔 類型 B〕
情報 。経営機能的立場
教育補助機能的立場 とは 「学校事務は、学校本来の機能である教育活動を効果的に遂行するための 補助または手段」0とい うように学校事務を教育活動の補助機能 として捉 える立場のことをい う。これ に対 して情報・経営機能的立場 とは、学校事務の機能を情報処理機能 として捉え、「経営管理の手段」0 としてみなす立場をい う。経営管理 とは学校全体の方針を定めた り、その方針 に従つて更 に詳細な方 針 を決めた り、組織 をつ くり、調整 し、評価するな どの活動のことをい う。 こうした経営管理活動 を 適切 に行 う上では正確で的確な情報が必要 とされる。 ここでい う、情報 。経営機能的立場 とは経営管 理 と情報 との密接な関係を前提 にして学校事務 を情報処理機能 として捉える立場のことをい う。一般 企業を合めた事務研究の分野ではこの立場を「経営事務論」0とい う。
わが国の戦後の学校事務の研究史で最初 に登場 し、長 らく大 きな影響力を持 つたのは類型Aの立場 であった。すなわち、学校 における全ての業務を直接業務である教育活動 とそれ以外の間接業務の学 校事務 に区分 し、学校事務 を教育活動への補助機能 として把握する立場である。 この類型Aには以下
に引用するいわゆる「車の両輪」説 も区分することができよう。
「一般 に現代の学校教育の目的の達成は二つの領域の活動に依存する。一つは直接 に児童生徒を指 導する教授活動(teaching act市
ities)で
あ り、他の一つはその背景 としての非教授活動 (nOn̲teaching activities)である。この二つは車の両輪のように、相まっては じめて学校の教育活動は展開すること ができる。前者はい うまでもな く教師の任務であ り、後者は学校事務であって、事務職員の仕事であ る。学校事務は教師が児童生徒 を教育するに必要なあ らゆる背景的活動をなすのが本質である」は0この類型Aに対 して批判を加 える中で登場 したのが類型Bであつた。類型Aに対する批判はその領 域 に対 して とい うよりも、その機能 に対 してな されたものがほ とん どであつた。類型Aの機能につい ての理解 に対する批判は既に触れた企業経営の分野 を対象 とした事務研究分野での 「経営事務論」の 台頭の影響 を受けて 1960年 代 に伊藤和衛・佐々木渡llll、 持 田栄一は
a、
渡辺孝三l131らによつてなされた。これ らの批判は学校事務は教育活動の補助機能 として捉えられ るべきものではな く、その本質は情報 処理であ り、組織 における仕事をつなぎ合わせた り、経営管理の手段 として把握 されるべきであ り、
学校事務観の転換が必要であるとい う主張であつた。 こうした新 しい学校事務観の登場 により、1960 年代か ら 1970年 代にかけて、学校事務研究の黄金期 と評価できる時期が生まれることとなつた。
筆者 も実際の観察可能な形態では、文字を書いた り、計算 した り、コ ミュニケーシ ョンをした りと い う形態をとる学校事務の本質は情報処理であると思 う。また、そ うした学校事務の持つ情報処理機 能は経営管理 にとって重要だ と思 う。今 日のよ うに説明責任が求め られ る時代 には学校事務の重要性 は増 している。 しか し、他方では学校事務の中には直接的に教育活動に役立つ事務 もあること、また 最終的に学校事務は学校の教育活動 に資するものであるべきであるとい う意味で完全に教育補助機能 論的立場 も否定はできない と思 う。
さらに付 け加 えれば、学校 における仕事は一人ひ とりの教師に相当の裁量が委ね られてお り、 自己 完結する仕事が多いため、事務=情報処理 によつて他の部署 につな ぐ必要性が相対的に低い とい うこ と、また教職員数が少ないため口頭 によるコミュニケーシ ョンが主流であ り、大企業のように文書 に よる事務=情報処理の必要性は低い といつた学校事務の特殊性 についての認識 も必要だろ う。
0。
また、冒頭 にも簡単 に触れたが、学校で行われ る学校事務の中には本来は教育委員会で行われるベ き教育行政事務 も含まれてお り、学校事務の全てが学校経営に役立つ情報を産出するわけではない。
県費負担学校事務職員が主 として担当す る県費関係の事務はあま り学校経営の意思決定に役立つ とは 思われない。む しろ、町村費関連の事務の方が学校経営にとつて重要な情報 を提供 していれ るだろ う。
さて、情報処理・経営管理機能的見方の台頭 により、成立 したのが 「学校の一切の仕事、つま り校 務の うちか ら、直接的教育活動および これ に直結 した活動を除いた仕事」として領域 を確定 した上で、
「結合機能であ り、情報処理機能」に動として機能的に把握する類型Bであった。今 日の学校事務研究を リー ドしてきた清原正義 もこの類型Bに区分できる●
0。
さて、学校事務の機能 を教育補助機能的立場 に立つ定義を批判す るとい う立場では類型
Bと
同じ立 場 に立つ ものの、「直接的教育活動 とそれに付随する活動以外の全てが学校事務」とい う領域 について 批判を加 えて独 自の領域 を主張 したのが類型Cである。学校事務の定義 に関わつてその領域 について早い時期 に明確 に問題にしたのは持 田栄一であつた。
持田栄一は 「筆者も、だいたい上記佐々木説 と同様の立場 に立って 「学校事務」を考えているが、 さ らに厳密 にい うな らば、学校の仕事の うち教授活動以外の仕事、すなわち学校経営活動がイコール学
校事務なのではな く、学校事務はそれにかかわ り、それを構成する一つの機能 とい うべ きだろ う」。つと 指摘 し、領域 について問題 にした。 この持 田の指摘を受けてか どうかはわか らないが、佐々木 自身、
学校事務の範囲にういて 「た しかに、間接業務の全体 を事務 と観念することもできるが、 しかしそ う すると、その中には用務員や警備員、 さらに給食調理人な どの単純な労務活動な ども合まれることに な り、事務 についてのわれわれの通念的な理解 とは若干ズレて くる。そこで ここでは、先にあげた事 務の第二の意味 と一致 させて、労務活動を除いて考えることとする」。助とい う考え方を示 した。さらに 佐々木は校長の行 う「意思決定をすることを事務 と呼ぶのは どうであろ うか」に動とい う疑問も示 してい
る。
また、岡崎公典は学校事務を領域 と機能 とい う二つの方法で定義 している。岡崎は学校事務を情報 処理機能 として把握 した上で、「学校内における全活動は、大別 して教育活動 とそれ以外の教育の条件 整備 にかかわる活動 とに類別できる。後者の うち校長の指導・助言活動等の一部 を除 く活動は、「学校 における事務」と一般 にいわれる」120)とぃ ぅ定義を行つている。経営管理活動 と学校事務を区分する立 場だろ う。
これ らの類型Cの論者が指摘 した問題は冒頭 に指摘 した筆者の静岡県のいわゆる「標準的職務の通 知」 に対 して感 じた違和感に通 じるものがあ り、非常に興味深い。学校で行われる全ての仕事か ら直 接的教育活動を除いた全ての領域 を学校事務 として把握すると経営管理活動そのものも合まれて しま う。経営管理そのものの存在が薄 くなつて しま うため、筆者 もそ うした定義 には反対である。伊藤和 衛が言 うように「経営管理 も事務ではない」2助のであ り、事務は経営管理の手段であると理解すべきだ ろ う。では、岡崎の主張するように、学校で行われる全ての仕事か ら直接的教育活動を除いた全ての 領域か らさらに経営管理を除 くとい う領域で定義すればいいのだろ うか。
これ もおか しい。それでも、学校事務 に括 られた領域の仕事の中には情報処理機能 とい う観点では とらえられない業務が含まれて しま う。別段 に用務員な どの人が担 当す る仕事以外 にも情報処理機能 とはみなせない仕事は学校の中に存在す るだろ う。学校事務職員 も情報処理=学校事務以外の仕事を することも当然有る。例 えば朝校舎内の草花 に水をや るのは業務であっても事務ではない。そ うした 事務=情報処理 とい うイ メージで提えられない仕事を全部抜 き出 して領域設定を行 うとい うことは不 可能だろ う。領域 と機能の二つで定義することをやめ、機能だけで定義すれば どうだろ うか。それが 類型Ⅲである。
〔類型Ⅲ〕
この類型Ⅲ とは、積極的方法のみによつて学校事務を定義する方法のことをい う。 この類型Ⅲに属 する定義 を学校事務の研究の中で見出すのは難 しい:既に述べた ように、学校事務の定義を行 う際に は範囲 と機能 による定義が主流だか らである。管見す る限 りにおいては、企業経営を対象 とした 「経 営事務論」では機能や どのような観察可能な姿をとるか とい う実態のみの定義が多 く見 られる。例 え ば、小野寛徳は『経営事務論』
122)の
中で事務を機能 とい う側面で把握する立場を示 している。筆者 も、この小野の立場 と同じように、機能のみで定義すればよい と思 う。学校事務 とは主 として文書を書い た り、記録をした り、計算 した りとい う実態 として、情報処理機能 を果たす もの と定義すればよい と 考 える。この情報処理機能は経営管理 に役立つ こともあれば、直接 に教育活動 に役立つ こともあろ う。
3口
類型Ⅲの立場に立 った際の学校事務職員の職務類型Ⅲのように学校事務を主 として文書を書いた り、記録 をした り、計算 した りとい う実態 として、
情報処理機能を果たす もの として把握 した際に学校事務職員、 ことに事務主任の仕事は どのように構 想できるだろ うか。
<図 3>事務主任の組織上の位置
経営層
総務課
オフィス・マネジャー・・・・ は経 営層に対する指導・助 言
一 ― は他の課に対する指導・助 言
――口自分の部下に対する指揮・監督、指導・助言など
*組
織 の全ての業務は垂直 的には経 営・管理・作業機能に分かれ、水 平 的には教 育、環 境 整 備 。 給 食、財務 、総務 機能に区部 され る。事務 はそれぞれの機能に付随 する情報 処 理機 能のことをいう。
教育課
団
業務
下村哲夫は学校事務=情報処理機能 とい う立場 に立った上で、「これからの事務室は情報センターの 役割 を担 うべ きであ り、事務主任はあわせて情報主任の役割 を果たすべきである」123)とぃ ぅ主張を行つ ているが妥当な見解だろ う。
、
民間企業を対象 とした事務 に関する研究において 「経営事務論」が台頭 した際に、 自らも事務 を行 いなが ら、組織全体の事務=情報処理の在 り方 について分析 し、標準化 し、指導・助言を行 う事務管 理課 (日本の会社でいえば総務課 となろ う)とその責任者の 「オフィス・マネジャー」 とい う管理職 の存在 に大きな関心が寄せ られた。 〈図3)は学校 を念頭 に「オフィス・マネジャー」の組織上の位置 を示 したものである。 この 「オフィス 0マ ネジャー」を念頭 に岩下新太郎は 「事務職員は単 に書記的 な仕事を命 じられ るがままに行 うのではな く、専門的職員 として教務 をも合めた学校事務の全体を見 渡 して、その合理的、能率的処理 について校長のスタッフとしての役割を果たす ことにその職務の専 門性 を見出すべ きである」1241と主張 したが、 これ も下村の主張 と同 じもの として評価できよう。
冒頭で言及 した静岡県のいわゆる「標準的職務の通知」では、学校事務職員の標準的な職務 として 学校経営に参画す ることを明記 したが、学校事務職員が学校経営に参画する理由の一つ として組織全 体の情報管理を行 う「オフィス・マネジャー」だか らとい う理由が挙げられ よう。早い時期か ら渡辺 孝三0)は「職員会議・企画委員会等は、学校の重要事項を審議する機関であるがゆえに、学校の事務管 理者は、 これ に参加するのが職務」 と主張 していたが慧眼であつた と言 えよう。
事務主任は 「オフィス・ マネジャー」であるとともに財務機能の管理を行 う「財務マネジャー」で あるとみなす ことも可能だろ う。元校長でもあった宮前貢は学校事務職員は財務関係の仕事 に関わ り なが らカ リキュラム経営のスタッフとして位置付 けられるべきだ と主張する126)。 ぉそ らくこの構想は学 校経営の実態を踏 まえれば現実的であろ う。
もちろん、学校事務職員は事務主任 として情報管理や財務管理 を行 うとともに、学校全体の経営的 判断 に影響力を発揮するとい う意味で学校経営に参画 し、同時に自ら事務作業や事務以外の業務 も行
うことになろ う。学校事務職員は経営一管理 ―作業 とい う三つの層 に渡つて仕事を行 うのである。
く註〉
(D この問いについての研究成果は『 ライフコースアプローチに基づ く学校事務職員の職務 と専門的 力量 に関する実態調査研究
(研
究代表者:山崎準二)』
科研費報告書を参照のこと。(21 清原正義 「学校事務論の諸相」『学校事務職員制度の研究』学事出版、1997年 、
23頁
。・
13)こ うした主張 として岩下新太郎 「教育事務組織の合理化」持田栄一・河野重男°
・宮田丈夫・伊藤 和衛編『教育事務の現代化』明治図書、1968年 な ど。
14)清原正義「学校事務論の諸相」『 学校事務職員制度の研究』学事出版、1997年 。この他 に学校事務 研究の学説を整理 したもの として渡辺孝三「学校事務経営論」(日本教育経営学会編『教育経営研究 の軌跡 と展望
(講
座 日本の教育経営9)』
ぎ ょうせい、1986年)力`あるが、学校事務の定義 について の考察はない。151 海後宗臣・村上俊亮監修『教育管理学』誠信書房、1961年 、196〜 197頁 。
16)この事務研究会の報告では学校事務 を情報処理機能 として積極的方法 によっても定義 している。
例 えば用務員の仕事は果た して情報処理機能 としてその輪郭 を把握できるだろ うか。尚、 この報告 書 といわゆる「標準的職務の通知」の違いについては、藤原文雄 「学校事務職員の職務 と専門的力 量の研究(7L『月刊
学校事務』
2004年
10月 号を参照のこと。17)岩下新太郎 「教育事務組織の合理化」持田栄一他編著『教育事務の現代化
(講
座現代教育経営
4)』
明治図書、1968年:18)伊藤和衛・佐々木渡『学校の経営管理』高陵社、1964年 、
340頁
。19)山城章『経営事務
(経
営学全集11)』 青林書店、1960年 、古川栄一・高宮晋編『事務管理の理論 と方式(現
代経営学講座7)』
有斐閣、1964年 、小野寛徳『経営事務論』丸善、1970年 な どを参照の こと。00 教員養成研究会編『学校管理』1953年 、
394頁
。 このいわゆる「車の両輪」説 に対する直接的な 批判 として清原正義 「学校事務論の検討」同『地方分権・共同実施 と学校事務』学事出版、2001年 がある。tD 伊藤和衛『学校経営の近代化入門』明治図書、1963年 、伊藤和衛・佐々木渡・中村安喜雄編著『学 校事務詳典』世界書院、1966年 な ど。
│力 持 田栄一 「現代学校 における学校 と学校運営」『学校 (現
代教育学17)』 岩波書店、1961年 な ど。
持 田栄一の学校事務論 については北島一司『 学校事務 と学校の自主管理』東京都公立学校事務職員 組合、1989年 を参照のこと。
α〕 渡辺孝三『新 しい学校事務管理のすすめ方』世界書院、1968年 な ど。
l10 大企業では一つひ とつの仕事を自分で完結することはほ とん どない。書類
(パ
ソコン・ネ ッ トワー ク上の処理 も合む)を通 じて他のセ クシ ョンに仕事をつなげてい くのがほ とん どであ り、また各セ クシ ョンの仕事の進み具合や実績 もほ とんど書類で経営管理層は把握す ることになる。CD 牧昌見『学校の組織運営・事務』ぎ ょうせい、1983年 、275〜
277頁
。aO 前掲、清原正義『学校事務職員制度の研究』14〜
24頁
。 αO 前掲、持 田栄一 「現代学校 における学校 と学校運営」26頁
。l181 佐々木渡 「教育行政事務 と学校事務」持田栄一他編著『教育事務の現代化
(講
座現代教育経営
4)』
明治図書、1968年 、227頁
。19 佐々木渡 「学校事務 とはなにか」『学校事務事典』1975年 、学事出版、
53頁
。201 岡崎公典 「学校事務の役割 と機能」小島弘道
0中
留武昭『 学校経営』日本教育図書セ ンター、1987 年、岡崎公典 「学校事務 とその機能」小島弘道編著『事務主任・事務長の職務 とリーダーシップ』 ̲ 東洋館出版社、1997年 。2D 佐々木 とともに研究を行つた伊藤和衛は事務 を情報処理機能 として理解 した上で、「作業がすなわ ち事務でないよ うに教育することそのものは事務ではない。同様 に経営管理 も事務ではない。けれ ども、総 じて近代経営 とは事務な しにはあ りえない」
(前
掲、伊藤和衛『学校経営の近代化入門』72 頁。)と述べ、経営管理 と事務を区別 した。20 前掲、小野寛徳『経営事務論』
30頁
。この他 に小野は具体的に学校事務が遂行 される形である実 態を問題 としているが事務の捉え方のメインは機能的把握である。20 下村哲夫編著『学校情報運営マニュアル』明治図書、1996年 、16頁 。
1241 前掲、岩下新太郎 「教育事務組織の合理化」306〜
307頁
。OD 前掲、渡辺孝三『新 しい学校事務管理のすすめ方』125頁 。
20 宮前貢「カ リキュラム経営のスタッフをめざそ う」『 学校事務』