氏名・(本籍)
学位の種頬 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件
学位論文題目
論文審査委員
大久保 純 一(北海道)
工 学 博 士
工博甲第 46 号 平成2年3月 2 3 日 学位規則第5条第1項該当
電子科学研究科 電子材料科学専攻
機能性含金属プラズマ重合薄膜に関する研究
夫 強 茂
孝
桐 形 坂
片 尾 田
長授 授 授
員 教
委教 教 助
︵ 田 垣吉 稲授
授
教
助 教
弘 訓 宏
論 文 内 容 の 要 旨
含金属有機化合物は有機半導体や化学センサーなどの機能性薄膜の開発に応用されている。これは 有機膜中に存在する金属が膜の物理的,化学的,および電気的性質に変化を与えることに起因してい る○機能性薄膜の生成法としてのプラズマ重合法は出発物質(モノマー)に含金属有機化合物を用い ることによって,容易に有機膜中に金属を取り込むことが期待できる。しかし,含金属有機化合物は 常温で固体であることが多いので,従来のプラズマ重合法をそのまま用いることは困難である。しか
し,常温において固体の物質は反応系内の圧力を下げることによって昇華性を増し,プラズマ重合の モノマーとして適用が可能となる。本研究は,含金属有機化合物をモノマーとし,低圧力下でプラズ マ重合をすることによって,機能性含金属プラズマ重合薄膜の生成を目指したものである。
第1章では,近年の新材料開発に対する要求,そしてそれとともに発達してきた薄膜作成技術の特 徴を述べた○さらにこれらの新材料に対する要求の背景に,今後のプラズマ重合,すなわち低圧力下 でのプラズマ重合法によって得られる膜の高機能化への考え方を述べ,本論文の序論とした。
第2章では,低圧力下でのプラズマ重合を可能とするためのプラズマ重合装置として∴磁場印加型 高周波プラズマ重合装置を開発する上で,理論的な背景を述べている。本装置は反応系内に磁場を供 給し,それを制御することによって,プラズマ重合の低圧力領域への拡張を図ったものである。以下 はこの装置によって研究が進められた。
第3章では,以下の低圧力下でのプラズマ重合の基礎的な研究として,テトラフルオPエチレンを モノマーとしたプラズマ重合に関して述べた。反応系内の圧力の低下はC=C結合などのモノマー分
−145−
子の特徴を保持した膜を生成した。プラズマの放電出力の増加はプラズマ中のフラグメントの多様化 とその挙動の活発化によって,炭素一炭素結合およびフッ素化の進んだプラズマ重合膜を生成した。
また,基板温度の上昇は基板表面での低フッ素化分子の堆積あるいはフッ素原子の脱離を促進し,膜 の化学構造を大きく変えた。
これより,低圧力下でのプラズマ重合では反応系内の圧力,プラズマの放電出力,および基板温度 が生成するプラズマ重合膜の化学構造を左右する重要な成膜因子であることが分かった。以下はこの 成膜因子をパラメータとして研究を進めることにした。
第4章では,機能性含金属プラズマ重合薄膜の生成にあたり,アルミニウムーアセチルアセトン錯 休をモノマーとしたプラズマ重合について述べた。反応系内の圧力の低下は反応系内に存在する活性 種の平均自由行程を伸ばし,モノマー分子の化学構造の特徴を保持した含アルミニウムプラズマ重合 膜を生成した。この時のアルミニウムはA1−0基として存在した。低圧力下でのプラズマの放電出 力の増加は有機成分による架橋構造を発達させると同時に生成膜の化学組成を大きく変えた。低圧力 下での基板温度の上昇は基板表面上での有機成分の酸化および脱離を促し,酸化アルミニウム〔Al(−
0−)n〕を含むプラズマ重合膜を生成した。
第5章では,亜鉛一アセチルアセトン錯体のプラズマ重合を行ない,アルミニウムーアセチルアセト ン錯体の結果と比較することによって,モノマーの性質がプラズマ重合膜に及ぼす影響について検討 し,その結果について述べた。低圧力下で生成した膜は含亜鉛プラズマ重合膜であり,その化学構造 は高度に架橋していながらも,アセチルアセトンの特徴を保持していた。プラズマの放電出力の増加 は生成するプラズマ重合膜の析出速度を上昇させたが,亜鉛の取り込み量を減らす結果となった。こ の生成膜の析出速度の増加はアルミニウムーアセチルアセトン錯体の結果と異なった。それはプラズ マ中で高分子化反応を進める有機成分の違いによるものと考えられる。すなわち,金属とアセチルア セトンとの分裂のしやすさが影響したものと推察される。また,基板温度の上昇に伴う膜中の亜鉛の 存在量は室温から170℃までは増加し,アルミニウムーアセチルアセトン錯体の結果と同様であった。
しかし,それ以上の基板温度では亜鉛の存在量は著しく低下した。
これらの結果より,モノマーの性質は生成する含金属プラズマ重合膜に大きな影響を及ぼす重要な 因子であることを確認した。
第6章では,生成する含金属プラズマ重合膜の一酸化炭素ガスセンサー素子への応用を検討した。
モノマーにはインジウムーアセチルアセトン錯体を選び,反応系内の圧力を6.6×10. ̄2Pa,プラズマ の放電出力を60W,基板温度を室温としてプラズマ重合を行なった。その結果,生成した膜峠含ィ、
ンジウムプラズマ重合膜であり,このプラズマ重合膜を用いたガスセンサー素子は覿処理(350℃で 3分間)および白金触媒の添加によって,一酸化炭素に対し高い感応性を示した。また,この素子は 一酸化炭素,水素,プロパン,およびェタノールの中から選択的に一酸化炭素に感応することができ,
その応答速度も1分以内と早く,一酸化炭素ガス検知器として十分に応用が期待される。
第7章では,本研究で得られた研究成果の総括を述べ,本論文の結論とした。