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児童の学習不安と学習動機

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

児童の学習不安と学習動機

著者 杉村 健, 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 7

ページ 101‑107

発行年 1971‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/6216

(2)

児童の学習不安と学習動機

杉村  健   藤田  正

     (心理学教室)

 先の研究(杉村,1967:1968)に赤いでは,小学校児藍の学習動機の発達的変化,性差,学業 成績との関係,拾よび因子構造などが検討され島本研究の目的は,学習不安を調べる項目の検討を 中心として学習不安と学業成績の関係拾よび学習不安の因子構造,さらに学習不安と学習動機の関係 を追求することである。を拾,当初は発達的研究を計画したのであるが,都合により6年生のみの資 料について報告する。

方     法

被験者 被験者は高田小学校の6年生4学級で,男子74名,女子71名,合計145名であっ

た。

調査項日 学習動機の誘査には杉村(1967)と同じものが用いられ,学習不安については田研 式不安傾向診断検査(GAT)の中の学習不安傾向15項目を使用した。表1と表2はそれぞれの項目

内容を示したものである。

表1. 学習不安の項目 番号

7 8 9

10 11 12 13 14 15

夜ふとんの中で,あしたの勉強する事がとても気にをることがよくあります払 先生が何か質問する時,いつも自分が指されそうな気がして心配に在りますか。

「テストをする・」といわれると,とても心配に在りますカ㌔

テストで悪い点をとると,いつまでも気に在り ますか。

自分は勉強できないと気にすることがよくあります加

テストの時に,よく知っていたことを思い出せをくなるようを気がして,とても心配にな りますか。

テストが終った後,各条を返してもらうまで,とても気になりますか。

テストがあると悪い点をとりそうな気がして,心配になることがよくありますか。

テストの心配をし古いですむようになりたいと思いますか。

自分のしていることが終る までは,とてもできをいと思うことがよくありますか。

みん在の前で本を読む時,まちがいそうを気がして心配にをり意す和 学校の成績がとても気になりますか。

自分は他の人よりもよけいに勉強のことを気にしていると思いますか。

テストで悪い点をとった夢をみたことがあります加

勉強ができなくて・親や先生にしかられる夢を見る1二とがあります加

(3)

表2 学習動機の項目 番号

2 3 4 5 6 7 8 9

10 11 12 13 14

えらい(りっぱを)人になりたいから 親にほめられたいから

友だちに負けたくないから 春となになって役にたつから 先生にほめられたいから 新しいことを知りたいから 成績をよくするため 親に叱られるから 好きだから 宿題があるから 先生に叱られるから おもしろくて,楽しいから テストがあるから

親にいわれるから

 手続き 調査はそれぞれの教室で授業時尚中に行友われね児童に回答用紙を配布し,質問項目 を調査者が読みあげて回答させるようにした。回答用紙には組,氏名,拾よび性別を記入するところ と,その下に1から15までの奄号(学習不安用)拾よぴその下に1から14までの番号(学習動機 用)をそれぞれ横に並べて書いてある。回答用紙を配布してから,まず学習不安の調査に関して次の 教示が与えられた。

  今からやることぱ,学校の成績とは関係ありません, また他の誰にも見せませんから,

  ありのままを正直に答えて下さい。やり方を説明します。私が短い文を読みますから,

  よく聞いていて『ばい』の時には番号の下にO。『いいえ』の時にはxを書いて下さい。

  ひとつもぬかさずに,○か×のどちらかをつけて下さい。

 黒板に ばい…○、いいえ…×と板書してから,番号と項目をI度ずつ読みあげた。全貴が回答し たことを確かめてから順次,15番まで進み,つづいて学習動機の調査に関する次の教示を与えね   てば,次に皆さんがどんな気持ちで勉強しているかを調べたいと思いますから、正直にありのま   まに答えて下さい。答え方は今までと同じです。

 調査をしている尚に,担任教師からその学級で学業成績のよい著男女4名ずつと1悪い者男女4名 ずつの氏名を記入してもらった。

      結 果 と 考 察

 学習不安の平均点と項目別業昭率  学習不安得点(O点から15点の尚に分布)の平均(標準偏

差)ぱ男子が7.49(2.95),女子が7.41(2.97)であって,ほとんど同じであっ危従来,女子

の学者不安の方が高いという研究もあるが,本結果に関する限り性差はまったく認められなかっね

(4)

 表3は項目ごとに男女別拾よび合計の承認率(『ばい』と答えた%)を示したものである。平均得 点から予想されたように多くの項目に拾いて性差は認められなかっ走。ただ9番では男子が有意に多

く(κ2=6.45,d−f=1,P<.O1),これはテストの心配をしないですむようになりたいという 気持ちが男子で強いことを示している。

表3 学習不安の項目別承認率(%)

○万

1 2 3  4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

男女

32

Q5 47 T1

60  38 V2  鋤

57 T6

47 S8

54 T5

60 U6

96 W0

88 R4

61 S9

70 V0

24 Q8

30 P7

27 P3 合計 30**50 67**3神*58 49 56 64**90* 3舛*57 が*28**2針*2州 が*28**2針*2声*

<合計の承認率と50%(期待値)との有意差を班2検定したものである。>

 **ぱ1%水準,*ぱ5%水準で有嵐

 表の最下行で〆検定が有意であることは,多くの者が承認したかあるいは逆に承認しなかったこ とを示す。承認率の高い項目は3.8.9.12番の4つであり,テストをするといわれたことの心配,

テストで悪い点を取りそうな心配,テストがをくなれぱよいという気持ち,拾よび学校の成績が気が かりであるというようなことが,この年令の支配的な学習不安であるといえよう。逆に承認率の低い 項目は,1.4,1O,13,14.15番の6っであっ走。

 学習不安と学業成信  従来の研究てば学習不安と学業成績との局に負の相関が示されているが・

本研究の結果はどうであろうカもこの点を吟味するために,学級担任教一 tに依頼した学業成績のよい 者と悪い者を摘出し走。方法のところで述べたように,よい着と悪い者が各学級で8名ずつ,合計32 名ずつ抽出されるはずであったが,調査当日の欠席者券よび記入もれのために,上位群は29名(男15 名,女14名),下位群は25名(男14名,女11名)になった。以下ではこれらの著について分析を行を

う。

 まず,掌習不安の平均得点(標準偏差)を算出してみると,上位群では6.24(3.69)、下位群て ば9.65(1.33)となって,この差ぱt(52)雪5.63・P<.O O Iで統計的に有意になっ為す なわち,学業成績のよい者は悪い著にくらべて学習不安得点が有意に低いことを示す。これば従来の 研究と一致するものであっ烏

 次に,このような差が学習不安の15項目のうちどの項目に拾いて特に目立っているかを吟味する

ために,各項目ごとに承認率が求められた。その結果が表4である。

(5)

表4 学業上位群と下位群に拾ける学習不安        (承認率)

口万

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

下位群

繹ハ群

32 60 84 R4 38 52

60 68 72 64 R4 52 脳 48

68 92 40 72 T5 83 31 48

88 V6

48 Q4

36 Q8

32 P7 差 _2 22 3妹26 16 38料16 13  9  9 24 I2 24 8 15

* P〈.05,**lP<.O1 (ノ検定)

 1番以外はすべての項目において下位群が高い(差がプラス)が,κ2検定の結果特に、3番と6 番において有意差があり,また4,11,13番でも有意に近かっねつまり,学業成績の悪い者はよ い者にくらべて,「テストをする」といわれると,とても心配になる(3jとか,テストの時に,よく 矢口っていたことを思い出せなくなるようを気がしてとても心配になる161のである。

 学習不安の因子分析  男女をこみにした145名の資料にもとづいてテトラコリック相関(Thu−

rs tone,1933)を算出したものが表5であり,この相関行列を用いてセントロイド法による因 子分析(清水・斎藤,1965)を行をった結果が表6である。この表からわかるように,15の項目 ぱ2,3の重複を除いてそれぞれの因子に特徴的に負荷しているので,一応これらの因子としてまと められると考えられる。表7はそれぞれの因子ごとに負荷量の多い項 目を抜き出してまとめ先もので

ある。各因子の命名は困難であるが,このように負荷量が分布したことば,項目問に何らかのちがい があることを示唆する。な呑,この結果については,さらに考察してみる必要があると考えられる。

表5 学習不安の相関行列 項 目     番     号

123456789101112131415

1      .05  .24  ,31  .27  .11 一.05  .22  .20  .42  .16  .31  .40  .30  ,57 2      .05      .10  .13  .06  .34  .38  .47  .14  .27  .22  .20  .26  .OO  .08 3     .24  .1O     .23  .15  .42  .37  .36  .20  ,08 ,02  .21  .25  .1.O  .21 4     .31  .18  .23      .3王  .19 ■04. ■19  .15  .15  .09  .32  .3I  .I4  ,17 5     .27  .06  .15  .31      .42  .04  .33  .20  .35  .18  .31  .46  .12  .I0 6     .11  .34  .42  .19  .42      .52  .43  .1.2  .30  .37  .43  .17  .05  ,06 7     一、05  .38   37 一.04  .04  .52      .18  .20 ,03  .30  .55 一・50  .15  ,18

8.22.47.36,19.33.43.18.15.13.23.22.]6一.16■05

9     .20  .14  .20  .15  .20  .12  .20  .15      .O1  .15  .23  .17  .32  .28 10      .42  .27  .C8  ,15  .35  .80  二08  .13  .OI       .12  .08  .03  ,16  .28 11      .16  .22  ,02  .09  .18  .37  .30  .23  .15  .12       .17  .OO  .22  .30 12     .31  .2C  .21  .32  .31  .43  .55  .22  .23  .08  .17      .47  .20  .21.

13      .40  .26  .25  .31  .46  .17  ■5G  .16  .17  .03  .OO  ,47       .17  .30

14     .30  .OO  .1O  .I4  .12」 .05  .15 ■16  .32  ・16  ・22  .20  .17      ,10

15     .57  .08  .21  .17  .10  .06  .18 一.05  .28  .23  .30  .21  .30  .1O

(6)

表6  直交回転後の因子行列

国        子

I 皿 皿 IV h2

1 .08 .59 .51 .08 .6210

2 54 .06 .14 .1O 、3248

3 .45 19 19 .08 .2811

4 00 28 .26 .38 .2904

5 .12 35 16 .51 .4226

6 .63 .OO O1 58 .7334

7 47 一.70 55 .1O 1.0234

8 .63 20 一.19 一一19 ・5091

9 14 49 15 I8 .3146

10 16 28 .08 48 ・2953

H .19 一.07 42 工8 ・2498

12 34 04 5王 3】 4734

18 15 、66 17 .07 ・4919

14 一.15 .l1 .47 .17 .2844

15 .08 .39 .52 一.09 ・4370

2F2 1.7779 2.0435 1.7333 1.1975 6.7522

坊γN .119 .136 .l16 .080 ・113

表7  因子 内 容

第 I

国一

負荷量 6テストの時に,よく知っていたことを思い出せなく在るような気がして,  .63  とても心配になりますカ㌔

8テストがあると悪い点をとりそうな気がして・心配になるととがよくあり  63  ますカ㌔

2先生が何か賀聞する時,いつも自分が指されそうな気がして心配にをりま  .54  す加

7テストが終っ老後・答案を返してもらうまで・とても気になります机    .47

3 「テストをする。」といわれると、とても心配になりますか。       .45

       次頁につづく

(7)

第 13自分は他の人よりもよけいに勉強のことを気にしていると思います加 .66

1夜、ふとんの中であしたの勉強する事がとても気にをることがよくあり .59

因 ますか。

子 9テストの心配をしないですむように衣りたいと思いますか。 .49 7テストが終った後,答案を返してもらう重で・とても気になりますか。 .55 筆 15勉強ができなくて,親や先生にしかられる夢をみることがあり重すか。 .52 I夜,ふとんの中であし九の勉強する事がとても気になることがよくあり .51

因 ますか。

12学校の成績がとても気に在りますか。 .51

14テヌトで悪い点をとった夢をみたことがあり・ます加 .47 11みんなの前で本を読む時,まちがいそうな気がして心配になりますか。 .42 6テストの時に,よく知っていたことを思い出せをくなるような気がして .58

第 とても心配になりますか。

w 5自分は勉強できないと気にすることがよくあります加 51

因 1O自分のしていることが終るまでは,とてもできそうもをいと思うことが .43

子 よくありますか。

4テストで悪い点をとると,いつまでも気になりますか。 .38

 学習不安と学習動徴との関僚 上に示したように学習不安の平均得点と標準偏差にほとんど性差 がをかったので,男女をこみにして度数分布表を作り,1O点以上の者35名を高不安群とし,5点 以下の者37名を低不安群として抽出した。前者の平均得点は11.74,後者ぱ3.30で両群は著しく 異なっている。学習動機の項目に対する「ばし(」の反応を1点とすれば,得点は1からI4の尚に分 布する。その平均(標準偏差)は高不安群が5.63(1.94),低不安群が3.51(2.OO)で、t(70)

=4.52,P<.O lとなり,高不安群の者の方が表2に示されたような動機にもとづいて勉強してい ることがわかる。てば,どの項目に拾いて群差が大きいかをみるために,各項目の承認率を示したも のが表8である。

        表8 高不安群と低不安群に拾ける学習動機 C承認率)

.     I 一       ■

1 2 3 4 5 6  7  8  9  10 I1 12 I3 14 高不安群

癜s安群 43 P6

311

71

R5 86 V3

63

83   74   14   23   43

T7   27   16    3   38

14 P6

3I 57 R 32

17 Q3 差

1

2?*一8 36科13 36科13 3 2餅4桝一2 2榊5 一2 2淋2許一6

* P〈.05,**P〈.O1 (κ2検定)

(8)

 〜検定の結果,7つの項目において有意差が認められね簑からわかるように,何れの箏合も高不 安群の方が有意に高い。具体的には,高不安の者は低不安の者にくらべて,えらい人になりたいω,

友だちに負けたくをい(3),新しいことを知りたい(6),成績をよくするため(7),好きだか ら(9),拾もしろくて楽しいから(12),テヌトがあるから(13)という学習動機をもっている といえよう。これらは先の研究(杉村,1967)における第亙因子と第㎜因子に相当する項目である。

このように,学習不安の程度によって示される学習動機のちがいが,後者の因子分析の結果と対応し ていることは興味深い。

宴       約

 小学校6年生男女145名に対して,学習不安を測定する15項目と学習動機を測定する14項目 の質問が一与えられた。主な結果は次のと知りである。

 川 学習不安得点には性差は認められないが,全体としてみると,多くの者が承認しやすい項目と そうでをい項目とがある。前者はこの年令の支配的在学習不安の内容であると考えられる。

 12,学業成績のよい者は悪い者にくらべて学習不安が低かった。これば従来の研究に一致する。成 績の悪い者は特にテストに対する不安・心配が強い。

 131学習不安項目を因子分析した結果,一応4つの因子が抽出された。その命名は困難であるが,

15項目の問に何らかのまとまりのあることが示唆され私

 (ω 学習不安の高い者ば低い看にくらべて,学習動機得点が有意に高かっねまた,14の項目の うち7項目に拾いて有意差が認められ,これらは杉村(1967)の第皿因子と第1皿因子に相当する項 目であった。

引  用  文  献

清水 利信。斎藤 耕治 1965因子分析法 日本文化科学社.

杉村  健 1967 小学校4年生と6年生の学習動機奈良致鱗教育研究所紀要,第3号,

      45−52.

杉村  健 1968 小学生の学習動機奈良教育穴学教育研究所紀要.第4号・29−34・

日ヨ中教育研究所 不安傾向診断検査(GAT) 日本文化科学社.

Thu r目tonθ, L.L.,θt a■.  1933 Co皿puting ]⊃iagra皿8 for thθ

Tθtrachoric  Corrθ1ation Coθffioients. Univ. of Chicago Prθθs, ChiCagO.

(附記)  本研究にあたり、資料の蒐集にさいしては,高田小学校の校長先生はじめ諸先生の

    券世話にをった。一また,資料の分析にさいしては,心理学専攻生阪本裕子,検日ヨ恵子

    さんのご協力をえね厚く感謝の意を表する。

参照

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