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中学生における登校回避感情に影響を与えうる要因の検討

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(1)

平成

27

年度 修士論文

中学生における登校回避感情に影響を与えうる要因の検討

弘前大学大学院 教育学研究科

学校教育専攻 学校教育専修 教育心理学分野

14GP101

工藤七央

(2)

目次

第一章 問題と目的

第一章 第一節 はじめに

第一章 第二節 不登校に対する見方の変遷 第一章 第三節 登校回避感情について

第一章 第四節 登校回避感情に影響を与えうる要因 学校ストレッサー 第一章 第五節 学校ストレッサーの軽減効果 ソーシャルサポート 第一章 第六節 学校ストレッサーの軽減効果 レジリエンス 第一章 第七節 登校回避感情に影響を与えうる要因 充実感 第一章 第八節 登校回避感情に影響を与えうる要因 居場所感 第一章 第九節 適応指導教室へ通う不登校中学生

第一章 第十節 本研究の目的

第二章 一般中学生における調査

第二章 第一節 目的 第二章 第二節 方法 第二章 第三節 結果 第二章 第四節 考察

第三章 一般中学生と不登校中学生における調査

第三章 第一節 目的 第三章 第二節 方法 第三章 第三節 結果 第三章 第四節 考察

第四章 総合考察 第五章 謝辞 第六章 引用文献

広く公開される「弘前大学学術情報リポジトリ」への登載にあたり,インタビューによる調査対象者 の詳細な内容に関わる部分については,調査対象者のプライバシーの問題に関わるため,非掲載としま す。この件の詳細についての問い合わせは以下にお願いします。

問い合わせ先

036-8560

青森県弘前市文京町

1

弘前大学大学院教育学研究科 学校教育講座 教育心理学分野

(3)

第一章 問題と目的 第一節 はじめに

学校教育は子ども達のために行われるべきものである。教育の果たす役割の一つに,子ども達が社会 へ適応していくために必要な基礎的能力を育成することがある。各学校では,基礎学力や知識を獲得さ せるだけではなく,子ども達の心身の健康を守り,育んでいくことが求められている。しかし実際には,

学校でのさまざまな出来事や変化を経験することにより,ストレスを感じ,不適応状態に陥る子どもが 少なくない。いじめや暴力事件の発生件数もさることながら,不登校の児童生徒の数では一向に減少傾 向が見られない。

文部科学省の平成

26

年度学校基本調査によれば,全国の不登校児童生徒数は小学校で約

24,000

人,中

学校で約

95,000

人に及ぶ。前年度調査時よりも小学校は

3,000

人,中学校では

4,000

人増加しており,小

学校では

276

人に一人,中学校では

37

人に一人,不登校児童生徒がいるという割合である。中学校におい ては一学級におよそ一人不登校の生徒がいるという計算となり,非常に深刻な状態であるといえるだろ う。さらに,平成

27

年度の学校基本調査の速報値においては,平成

26

年度よりも不登校児童生徒数が増 加しており,小学校では

26,000

人,中学校では

97,000

人に及んでいる。

不登校の問題点として,義務教育における学校での学習の機会の損失や,学校という小さな社会の中 で人間関係を築く経験の不足,生徒指導や進路指導を受けることが少なくなることによる自己指導力向 上のための機会の不足などがある。さらに身体面においても,体調不良や運動不足などの問題がある。

また,不登校が長期化することにより,社会へ出ていくことに怖さを感じ,なかなか家から離れられな かったり,働くことができなかったりなど,義務教育を終えてからの人生においても,何らかの問題が 生じるかもしれない。不登校の長期化を防ぎ,学びの機会の損失を防ぐためにも,不登校問題の解決へ 向けて努力していかなくてはならない。

すべての人には教育を受ける権利がある。児童生徒の不登校の予防へ尽力するとともに,不登校児童 生徒の学校への復帰や,不登校児童生徒が安心して教育を受けることができるよう,力を尽くす必要が あるだろう。

第二節 不登校に対する見方の変遷

不登校は,

Johnson

1941

)が学校へ行きたくても行けない子どもたちのことを「学校恐怖症」と名 付け,退学と区別した後に,登校拒否,学校嫌い,不登校などの用語へと代替されてきた。不登校につ いての研究が始まった当初は,主に,本人の性格特性の問題,親の性格特性の問題,親の養育態度の問 題が取り上げられていた。佐藤(

1979

)は,先行研究で取り上げられた不登校児の性格の特徴をまとめ,

それらの報告からは,不登校児の代表的な性格特性として,内向性・非社交性・神経質・固さ・傷つき やすさ・完全主義などが考えられていることがうかがえる。奥地(

2005

)は,「子の性格が悪い,親が悪 いという考え方」は,不登校の問題を「個人病理」に矮小化するもので,不登校の対応は子どもを「治 す」という考え方で本当に良いのかどうか疑問を投げかけている。

このような初期の不登校に対する見方から,現在では,不登校に対する見方は学校の環境・状況や社

(4)

会的な要因にまで拡大されてきている。そして,

1989

年発足の文部科学省学校不適応対策調査研究協力 者会議において,「登校拒否は誰にでも起こりうるものである」という考えが打ち出され(保坂,

2002

平成

4

年(

1992

)文部省初等局長通知「登校拒否問題への対応」の中で,「不登校(登校拒否)はどの子 にも起こり得る」と言われて以来,不登校は誰にでも起こり得る問題として捉えられるようになってき た。

森田(

1991

)は,不登校を「生徒本人ないしこれを取り巻く人々が,欠席ならびに遅刻・早退などの 行為に対して,妥当な理由にもとづかない行為として動機を構成する現象である」と定義し,

Hirschi

1963

)らの主張する統制論またはソーシャルボンド理論(

social bond theory

)の立場に立ち,不登校 について考察した。この理論は,逸脱行動を分析する際には,なぜそのような行動が起こったかではな く,なぜ起こらなかったのかという観点から分析すべきであるという立場である。つまり,森田(

1991

は,不登校は誰にでも起こりうる問題(文科省,

1992

)であるとすれば誰に起こっても不思議ではない のに,不登校が行動として表れることをソーシャルボンドが押し止めているという考えに立つ。

Hirschi

1963

)は,人は社会との繋がりによって逸脱行動を制限すると考えた。この社会と個人との

繋がりをなしている要素として,①アタッチメント(

attachment

,②コミットメント(

committment

③インボルブメント(

involvement

,そして④ビリーフ(

belief

)という

4

要素を挙げている。

Hirschi

の統制論について考察した麦島(

2000

)によれば,①アタッチメントとは,情緒的繋がりを表している。

情緒的繋がりのある他人が存在しない場合,人は社会との繋がりをなくして,非行をする。②コミット メントは,犯罪行為に対する得失計算や心配のことを表す。非行をすれば,望む高校・大学に進学でき ないという恐れや,将来の職業を失う恐れといった,将来の展望を失うことが,少年の非行防止への最 も大きな歯止めである可能性を示唆している。③インボルブメントとは,社会内の役割を示している。

少年の場合は学業が主な役割であり,その役割に従事していることで忙しく,悪さをする機会も少ない と述べている。また,その慣習に従っていて楽しいなら,悪さを志向する気持ちにもなれないとも記述 している。そして,④ビリーフは,非行をしない信念のことを示している。人々の中には,非行や悪さ をしてはいけないという一般的な信念があるという考えである。

森田(

1991

)はこの理論を不登校に適用できるよう修正を加え,学校社会と個人とのつながりをなし ている

4

要素について次のように考えた。まず,①対人関係によるボンドである。これは,アタッチメ ントに対応しており,対人関係によるつながりである。両親,教師,友人などに対して抱く愛情や尊敬,

あるいは他者の利害への配慮などによって形成される対人関係上のつながりである。次に②手段的自己 実現によるボンドである。これは,コミットメントに対応する。コミットメントの対象は,子どもとし て期待される役割であり,学校生活での学習活動や,将来の目標達成のために努力することなどである。

③インボルブメントに対応するものは,コンサマトリーな自己実現によるボンドである。学校活動にお ける活動自体に,現在の自分にとって価値があると満足することである。最後に,④規範的正当性への 信念によるボンドであり,これはビリーフに当たる。ビリーフは規範へのつながりであり,法律や校則 を正しいと認識する信念のことである。

つまり,不登校の行動化は,ソーシャルボンドによって止められると考えられる。さらに,この考え に立つことによって,不登校のグレーゾーンと呼ばれる,不登校に至っていないが不登校を準備する「登 校回避感情」を持つ一群の児童生徒たちに焦点を当てることが可能となった。

(5)

第三節 登校回避感情について

学校へ行きたくないという感情を「登校回避感情」という(森田,

1991

。森田(

1991

)は中学生を 対象に,登校回避感情はあるが「それでも,一度も休んだことはない」と回答したものを潜在群,「遅刻 や早退をしたことがあるが休まなかった」と回答をしたものを遅刻群,「休んだことがある」あるいは「遅 刻や早退をしたこともあるし,休んだこともある」と回答したものを欠席群,登校回避感情のない者を 出席群とした,4群について比較を行った。その結果,出席群が

27.0

%,潜在群が

42.0

%,遅刻群が

8.0

%,

そして欠席群が

17.1

%であった。「不登校のグレーゾーン」の児童生徒の多さから,登校回避感情は,多 くの生徒に抱かれていることが示唆されている。

本間(

2000

)は,欠席願望と欠席行動を区別し研究を行った。その結果,欠席願望と欠席行動に影響 を与える要因に相違があることが明らかとなった。すなわち,欠席願望には,「友人適応」「学習理解」

「規範的価値」など複数の要因があるが,中学生の欠席行動の抑制要因は,登校に対する「規範的価値」

「学校へ行くことは当然」「病気やけが以外で学校を休むことはよくない」などの項目から成る)にほ ぼ絞られていた。ここでの「規範的価値」とは,学校へ行かなくてはならないという信念のことであり,

規範的正当性への信念によるボンドに相当すると考える。

しかし,「登校拒否すべきではない」「登校せねばならない」という信念は「イラショナル・ビリーフ

(不合理な信念)」であるとし,「登校できたらそれにこしたことはない」という信念へと修正すれば気 が楽になるという提案(国分,

1988

)や,学校に距離を取りたいと感じている状況であるにもかかわら ず,学校には行くべきであり,休んではいけないという意識があって休めないで無理をしている時に,

身体症状が出てくるという意見(奥地,

2005

)などがある。本間(

2000

)自身も,規範的価値が高い生 徒へより高い規範性を求めた場合,葛藤を強め,神経的症状を引き出す危険性があると考察している。

これらの知見から考えると,登校回避感情が高い児童生徒や,不登校児童生徒に対して,規範的正当 性への信念によるボンドを強めることによって学校への登校行動を形成することはリスクを伴うだろう。

一方,登校回避感情に対しては,規範的価値を高める以外に,多様な手立てが存在しうる。前述した ように,本間(

2000

)では欠席願望を規定する要因として「友人適応」「学習理解」「規範的価値」な ど複数の要因があげられている。さらに,斎藤・豊嶋(

2005

)は,登校回避感情の強弱と全体的適応感 の高低という

2

つの軸で

4

群を構成し,ソーシャルボンドとの関連について検討を行った。その結果,

登校回避感情が低く,全体的適応感も良好な群は,ソーシャルボンドの全てが最も強く学校社会と結び ついていることや,全体的適応感が良好でも,学校での活動の楽しさや充実感が無いこと,そしてビリ ーフの弱さが,登校回避感情を高めるということ,そしてアタッチメントは全体的適応感が不良であっ ても登校回避感情の高まりを防ぐことが示唆された。

学校嫌い群は抑うつ気分の訴えが多いことや,不登校にみられる不眠,食欲不振,頭痛・腹痛などの 身体愁訴に関する訴えが多く,不登校のハイリスク群であるという報告(永井ら,

1994

)などもあり,

不登校の予防,そして子ども達の心身の健康を守り,子ども達が学校へ適応できるようにするためには,

登校回避感情そのものを低下させることが重要であると考えられる。

森田(

1991

)や本間(

2000

,そして齋藤ら(

2005

)の研究における登校回避感情は,「学校へ行くの が嫌になったことがある」や,「学校を休みたいと思ったことがある」などの一項目で測られている。古 市(

1991

)では項目数を増やし「学校嫌い感情」を測り,結果としては一因子で捉えられている。一方,

(6)

渡辺・小石(

2000

)は,「学校へ行きたくない」と思いながらも登校している生徒の登校回避感情を不登 校にいたる全段階と想定し,「学校への反発感傾向」「友人関係における孤立感傾向因子」「登校嫌悪感 傾向因子」の

3

因子からなる登校回避感情を測る尺度を作成した。この尺度は,不登校傾向について重 要な側面から測定でき,より詳細に登校回避感情を測ることができると考える。この尺度を用いて研究 を行った地井(

2010

)は,「充実感」と登校回避感情の下位尺度である「登校嫌悪感傾向」との関連を明 らかにしているが,その他の登校回避感情の下位尺度を独立変数として取り扱っている。しかし,実際 には,「学校へ行きたい」という気持ちと「学校へ行きたくない」という気持ちが入り混じっていること が想定される。不登校は子ども達を学校に結びつける力(引力)とストレスなどの学校から離れていく 力(斥力)の両方を含めた包括的な視点から研究していく必要があり(本間,

2000

,多面的な視点から 登校回避感情を捉える必要があるといえるだろう。そこで,渡辺・小石(

2000

)の登校回避感情を測る 尺度の

3

因子を全て従属変数に設定し,多面的な視点からより詳しく登校回避感情を捉える必要がある と考えられる。

第四節 登校回避感情に影響を与えうる要因 学校ストレッサー

本間(

2000

)は,多くの子ども達が休むことなく学校へ通っているのは,子ども達を学校に結び付け る力(引力)がストレスなどの学校から離れていく力(斥力)を上回っているからであると述べた。そ して,学校への登校や不登校の問題は,子どもたちが学校から離れる力(斥力)と学校に向かう力(引 力)の両方を含めた包括的な視点から研究していく必要があるとした。

文部科学省が行った「不登校に関する実態調査」(平成

26

年度

7

月公表)では,「不登校となったきっ かけと考えられる状況」で,「無気力でなんとなく学校へ行かなかったため(

43.6

%)」,「身体の調子が 悪いと感じたり,ぼんやりとした不安があったため(

42.9

%)「いやがらせやいじめをする生徒の存在 や友人との人間関係のため(

40.6

%)「朝起きられないなど,生活リズムが乱れていたため(

33.5

%)

「勉強についていけなかったため(

26.9

%)「学校に行かないことを悪く思わないため(

25.1

%)」など の項目があげられている。また,不登校の子ども達自身が中心となって行ったアンケート調査(奥地,

2005

)では,「子どもどうしの関係」

40.3

%,「学校の雰囲気」

38.8

%,「いじめ」

30.0

%,「勉強」

27.4

%,

「先生」

25.6

%,「よくわからない」

24.1

%という順で,学校へ行かない理由があげられている。野添・

古賀(

1990

)による,医療機関を受診した登校拒否・不登校の患者

156

名の臨床報告では,不登校の発 症契機の約

90

%が,「入学・新学年・転向後の適応不全」「成績の低下」「友人・教師とのトラブル」「い じめ」「クラブ・生徒会活動の気疲れ」などの学校生活に関わる出来事で占められている。これらをみる と,不登校児童生徒は,学校生活において何らかのストレッサーを認知していた可能性が高いと考えら れる。

古市(

1991

)の調査によれば,一般の児童生徒が抱く学校に対する忌避的な感情である「学校嫌い感 情」に関して,小学生男子では,学業上の不適応が主たる要因であり,小学生女子や中学生男子・中学 生女子では友人関係の不適応が主たる要因であることを見出している。その後,古市(

1993

)は,一般 中学生の登校忌避感情と学校におけるストレスフルな出来事の経験の有無について調査を行い,授業,

行事,部活動という出来事が,登校忌避感情と関連のある学校ストレッサーであるということを明らか にしている。よって,学校ストレッサーは斥力であり,登校回避感情を規定しうるだろう。

(7)

他に,学校ストレッサーに関する岡安ら(

1992

)の研究によれば,中学校においては,「教師との関係」

「友人関係」,「部活動」「学業」などの要因が主要な学校ストレッサーであるということが明らかとな った。さらに,学校ストレッサーとストレス反応との関連について検討した結果,「友人関係」と「抑う つ・不安感情」,「学業」と「無力的認知・思考」の間にかなり強い関連性があることが示されている。

また,「教師との関係」や「友人関係」という人間関係のストレッサーが「不機嫌や怒りの感情」と,「学 業」が「身体的な不調」と関連していることが明らかとなった。先述したような不登校のきっかけとし て無気力や身体の調子の悪さやぼんやりとした感覚を挙げている者が多く,学校ストレッサーがストレ ス反応と結びついたと考えられる。さらに,不登校傾向である人は,一般群に比べて生活全般でより多 くのストレッサーがあることも明らかになっている(菊島,

1997

一方で岡安ら(

1992

)の研究において,「部活動」のストレッサーは「学業」に次ぐ高い得点を示して いるにもかかわらず,ストレス反応との関連性はあまりみられなかった。その一因として,「部活動」は

「学業」に比べてソーシャルサポートなどの媒介変数による軽減効果が作用しやすいストレッサーであ ると考察している。

第五節 学校ストレッサーの軽減効果 ソーシャルサポート

学校生活においては,常に楽しいことばかりであるとは限らない。受験などのストレッサーは制度上 完全に除去することはできないし,マラソン大会など,生徒の身体上の健康を目的とした学校行事が,

時にはストレッサーになることもある。さらに,心理的ストレス反応がどのようにして生じるかを考え たとき,その原因をストレッサーにさらされた経験だけに限定することは難しい(岡安ら,

1993

。同じ ストレッサーに遭遇したにもかかわらず,不登校になる生徒もいれば,その出来事を乗り越え,学校に 通い続けることができる生徒もいる。このようなストレス反応の個人差として,ストレスの軽減効果が あると言われている。ソーシャルサポートとはその軽減効果の代表的な一つの概念である。ソーシャル サポート,すなわち,ある人を取り巻く重要な他者から得られるさまざまな形の援助は,その人の健康 維持・増進に重大な役割を果たす(久田,

1987

ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト に 関 し て は , 直 接 的 効 果 と 緩 衝 効 果 に 関 す る モ デ ル が 提 唱 さ れ て い る

Cohen&Wills,1985

。直接的効果(図

1

)とは,ソーシャルサポートが高い場合にはストレッサーの

高低に関わらずストレス反応が軽減されるというものであり,緩衝効果(図

2

)とは,高いストレッサー の場合にのみ,高いソーシャルサポートによるストレス反応の軽減がみられるものである。

渡辺・小石(

2000

)は,学校ぎらい感情をストレス反応と位置づけ,中学生の登校回避感情とソーシ ャルサポート満足度との関連について検討した。その結果,登校回避感情の下位因子である「学校への 反発感傾向」を家族サポート,先生サポート,そして友達サポートの満足感が抑制すること,「友人関係 における孤立感傾向」には,友達サポートだけではなく,家族からのサポートもまた抑制的にはたらく こと,さらに「登校嫌悪感傾向」には,父親サポートと友達サポートが抑制的に働くことが示され,こ の3因子に共通している友達サポートの重要性について述べており,ソーシャルサポートが不登校を予 防する上で重要であることが示唆されている。また,菊島(

1997

)は,不登校群は一般群よりもソーシ ャルサポートへの期待が低いことを明らかにしている。以上から,登校回避感情の低減にソーシャルサ ポートは重要な効果があると考えられる。しかし,渡辺・小石(

2000

)では,ソーシャルサポートの影

(8)

響に関して性差が考慮されていない。岡安ら(

1993

)によってソーシャルサポートの学校ストレス軽減 効果は性差が大きく,男子よりも女子において有効に作用することが明らかにされており,性差につい ても考慮する必要があると考える。

第六節 学校ストレッサーの軽減効果 レジリエンス

ソーシャルサポートのストレスの軽減効果は,性差に加えて,学校ストレッサーの種類,サポート源,

ストレス反応の種類によっても異なることが明らかにされている(岡安ら,

1993

。しかし,不登校児童 生徒においては,必ずしも学校ストレッサーに合ったソーシャルサポートを得られるとは限らない。中 学生においては,友達サポートの重要性が示唆されている(渡辺・小石,

2000

)が,不登校のきっかけ として友人関係をあげる生徒もおり,原籍校での友人サポートに関する満足感を抱かせることは大変難 しいと考える。さらに,いつでも良いソーシャルサポートを受容できる環境を子どもたちは必ずしも選 べない。家族関係,状況などは,どうしようもなく変えられない場合もある。

近年,ストレスなどによる精神的ダメージから立ち直ることのできる個人の特性および能力,スキル,

プロセスについて,ストレス反応の緩衝要因の一つとして,レジリエンスという概念が提唱されている。

レジリエンスについての定義はさまざまあるが,「精神的な回復力」に関連すると考えている研究者も多 い(小塩・中谷・金子・長峰,

2002

。石毛・無藤(

2005

)は,レジリエンスとは,困難な状況やネガ ティブな心理状態に陥っても重篤な精神病理的な状態にはならない,あるいは回復できるという個人の 心理面の弾力性と定義している

レジリエンスはパーソナリティとの関連が予測される。石毛・無藤(

2006

)は,中学生のレジリエン スとパーソナリティとの関連を調査し,レジリエンスの下位尺度と気質特性,性格特性との関連を明ら かにした。さらに平野(

2010

)は,レジリエンス要因を

2

つに分け,持って生まれた気質と関連の強い

「資質的レジリエンス要因」と,後天的に身に着けていきやすい「獲得的レジリエンス要因」を抽出し ている。そして,心理的敏感さの高い人々は資質的レジリエンス要因が低い傾向が示されたが,獲得的

1 直接的効果(岡安ら, 1993

2 緩衝効果(岡安ら, 1993

(9)

レジリエンス要因については敏感さとは関係なく高めていける可能性が示唆された(平野,

2012

不登校は誰にでも起こる問題とされてから,数十年が経過している。個人の要因が不登校の原因であ ると捉えれば,支援方法の一つは本人を変化させることであり,本人の努力が必要となる。この場合,

不登校は特定の資質を持っている生徒に限られることになり,もし本人の資質が変わらなければ学校復 帰はできず,さらに状態を悪化させる可能性さえありうる。しかし,環境が原因で全ての不登校を説明 することは難しい。個人の要因は主たる不登校のきっかけではないにしても,個人の要因が多少なりと も関連しており,学校でのトラブルに上手く対処できず,学校不適応感を抱き続け,周りからの適切な 援助も受容できなかった結果,二次的な現象として不登校状態となるという可能性は否定できない。個 人の要因を変えることに関しては,非常に困難が伴うと考えられるが,個人の要因のうち,周りからの 働きかけによって,後天的に変化させることができるとされる要因がある。これが,「獲得的レジリエン ス要因」(平野,

2012

)である。さらに,獲得的レジリエンス要因は適応感との関連が明らかにされてい る(平野,

2012

石毛ら(

2005

)は,中学生を対象として,レジリエンスが精神的健康にどのように影響を及ぼすかに ついて検討を行い,レジリエンスの下位因子である「自己志向性」と「楽観性」がストレス反応を抑制 するということを明らかにした。田中ら(

2012

)は,ネガティブなライフイベントの経験が多くなった ときに,レジリエンスの下位因子である「楽観性」が低い者に比べて高い者は学校適応感の将来因子の 得点が有意に高くなるということを明らかにした。本研究の学校ストレッサーは,このネガティブなラ イフイベントに対応すると考える。つまり,図

2

のように,学校ストレッサーが高い時にレジリエンス が高い方が登校回避感情が低くなると考えられる。

学校教育の中でレジリエンスの結果を導くための過程を作りだすこと,能力を養うことができれば,

児童生徒の望ましい発達に寄与することができるとともに,不登校を含む不適応や発達課題の克服に苦 慮している児童生徒にも有効である(池田,

2008

)とされている。学校へ登校している児童生徒たちは,

学校ストレッサーを感じても,レジリエンスによる緩衝効果により登校回避感情が高くならないのでは ないかと考える。しかし,レジリエンスと登校回避感情の関連を検討した研究はあまり見受けられない。

レジリエンス概念を用いた不登校生徒支援に関する事例研究はいくつか見受けられる(日髙ら,

2012

ど)が,量的研究はあまりなされておらずレジリエンス概念が不登校支援にとって適切な概念であるの かについて,検討する必要がある。

第七節 登校回避感情に影響を与えうる要因 充実感

学校ストレッサーのような,子どもたちが学校から離れる力(斥力)に対して,学校に向かう力(引 力)は前述したような,学校におけるソーシャルボンドであるといえるだろう。

本間(

2000

)の研究においては,欠席願望を抑制する要因として,「学校が楽しいから」などの項目か らなる「学校魅力」が大きな影響を与えていた。大野(

1984

)によれば,充実感とは,青年が健康的な アイデンティティを統合する過程で感じられる自己肯定的な感情である。また,田上(

1999

)によれば,

充実感とは,人間関係や活動の達成に対する楽しいという思いであり,楽しいという思いが強いほど充 実感は高く,苦痛であるほど充実感は得られない。田上(

1999

)は,生徒がおかれている環境で人間関 係や活動の達成に充実感を獲得できると,自信ややる気を獲得して行動動機が高まり,活動との好循環

(10)

によって,より高次な課題の遂行が可能になるとも述べている。登校できない生徒は,「おもしろくない」

「つまらない」と話すことが多いという報告(若林,

1993

)などから考えると,学校において「楽しい」

と思えることは,肯定的に学校生活を送る意欲となり,登校回避感情と関連があるだろう。

地井(

2010

)の中学生を対象にした調査においては,「充実感」が登校回避感情の下位尺度である「登 校嫌悪感傾向」に有意に影響を与えている要因として挙げられている。しかし,充実感の項目内容とし ては,「生活がすごく楽しいと感じる」「充実感を感じる」などであり,教育現場における具体的な充実 感の内容が反映されているとはいえない。研究の成果を教育現場へ還元するためには,充実感を高める ために教育現場ではどのような支援を行えばよいのか,具体的なことを提案する必要があるだろう。ま た,地井(

2010

)では,「登校嫌悪感傾向」が不登校傾向をもっとも表しているとして,「登校嫌悪感傾 向」のみを従属変数として取り上げて分析を行っているが,多面的に登校回避感情を捉えるためには,

他の登校回避感情の従属変数に関しても分析を行う必要があると考えられる。よって,充実感に関して,

教育現場における具体的内容に改めて,登校回避感情への影響を再度検討する余地がある。

教育現場における具体的な充実感の内容項目から,中学生の充実感を捉えた中村ら(

2005

)は,学校 生活充実感を「学校生活に対するポジティブな気分」と定義し,学校生活で充実感を感じることができ れば,学校生活享受感が高くなると考えている。しかし,中村ら(

2005

)の研究においては,尺度を作 成したところに留まり,実証的に充実感と学校生活享受感の関係についてはまだ検証されていない。本 研究ではこの中村ら(

2005

)の尺度を用いて,登校回避感情との関連を調査を行う。

第八節 登校回避感情に影響を与えうる要因 -居場所感―

また,文部科学省が,

1992

年に「登校拒否(不登校)問題について

児童生徒の「心の居場所」つく りを目指して

」と題する報告書を提出して以来,教育現場において「心の居場所」を提供することが求 められてきた。

2003

年には,文部科学省生涯学習政策局推進課が,「三か年計画で計画的に子どもたち の居場所を用意する」ことを発表した。

辞書などを見ると,「居場所」は,本来物理的な場所を指し示す言葉であったようだが,このような報 告書や発表などから,心理的な意味を含んで用いられることが多くなった(石本,

2009

「青年心理学 辞典」(福村出版,小沢)によると,「居場所(

place in a society

)は,個人がこの社会の中で「居」る「場 所」のことである。」とされ,単に物理的な場所という意味を超え,社会の中での個人の存在に関わる概 念とされている。また,小沢(

2000

)は,このような視点から,「日本語において日常的に用いられ,独 特な意味を含んでおり,生き生きと生きるために必要なものであり,かつ私が私であることを確認し実 感するためのもの(小沢,

2000

」と述べている。さらに,北山(

1993

)においては,自分が「いるこ と」の基盤として居場所を位置づけ,自分が自分であるための環境を居場所とし,個人の存在に関して,

「居場所」が重要な概念であることを示唆した。

西中(

2011

)は,小学生を対象に,具体的な居場所環境についてと,小学生版心理的居場所感尺度に ついて記述を求めた。その結果,被受容感,充実感,自己肯定感,安心感において,居場所なし群が他 の居場所があるすべての群よりも得点が低かった。西中(

2011

)はこの結果を受け,「居場所がある」と 感じることは,心理的に満たされるものであり,「居場所がない」という感覚は,自分の存在に対して危 機を感じたり,不安を感じたりものになりうるということを述べている。このように学校や子どもたち

(11)

が生活している環境における「居場所」の重要性が示唆されている。

また,不登校の児童生徒と居場所との関係へ目を向けて研究が行われており,学校を休みがちになっ ている生徒へ居場所をつくり広げていく支援に関する事例研究はいくつか報告されている(川俣・河村,

2007

;齋藤,

2008

など)。学校に居場所があるという感覚は,引力となり,登校回避感情を低くすると 考えられる。しかし,居場所に関して調査や,居場所と不登校との関連を調査した量的研究はあまり見 受けられない。

杉本・庄司(

2007

)は,「居場所」の有無と不登校傾向との関連を調査し,「居場所」がない方が不登 校傾向は有意に高いという結果を明らかにしている。ここで言う不登校傾向は,登校回避感情とほぼ同 じような問題意識で取り上げられた概念であり,居場所と登校回避感情との関連が予想される。しかし,

ここでの「居場所」は物理的な場所の有無を指している。前述したように,「居場所」という言葉は,今 や物理的な場所のみを指し示すにとどまらず,その場における人のあり方や,感覚などを含む概念とし て,物理的側面と心理的側面の両方をあわせもつものと理解されており,単に物理的空間の有無を問題 にするだけでは,居場所という概念を捉えたことにはならないといえる(則定,

2008

石本(

2010

)によれば,学校適応問題の対策として行われる居場所づくりにおいては物理的な場所を 設けるだけでなく,ありのままでいられ,役に立っていると思えるような人間関係を結べるよう配慮す る必要があり,物理的な居場所の有無というよりも,居場所であると感じる程度(居場所感)を検討す ることが必要であるという。よって,居場所感と登校回避感情の関連を検討する必要があるだろう。

第九節 適応指導教室へ通う不登校中学生

不登校の児童生徒を対象とする研究の多くは,適応指導教室に関するものである。適応指導教室とは,

再登校を目的とした支援を行う場所として設置されている。教育支援センター(適応指導教室)設備指 針(文部科学省,

2003

)によると,「教育支援センター(適応指導教室)とは,不登校児童生徒の集団生 活への適応,情緒の安定,基礎学力の補充,基本的生活習慣の改善等のための相談・適応指導(学習指 導を含む)を行うことにより,その学校復帰を支援し,もって不登校児童生徒の社会的自立に資するこ と」を基本としており,学校復帰や不登校児童生徒の社会的自立を目的として運営を行っている。

門田(

2013

)の調査によれば,全国の

1169

か所の適応指導教室のうち,

2011

年の学校復帰率におい

100

%と回答しているところは,全体の

44

%にも及んでいた。また,下山・須々木(

1999

)は,適応 指導教室通級以前に在籍校に登校できない生徒は

89.2

%であったのに対して,通級後も登校できない生 徒は

28.0

%に減少しており,適応指導教室での援助が生徒の再登校に成果を上げていると述べた。一人 ひとりが自信を回復し,人間関係の練習もできるという点で,適応指導教室が果たしている意味は大き い。

適応指導教室においては,登校回避感情を低下させ,学校へ近づいていけるよう支援をしていくこと が重要であると思われる。なぜなら,不登校状態へ至る以前は,学校へ通っていたはずであり,学校で の登校回避感情が高くなり,不登校状態へと移行した可能性が高く,不登校中学生の登校回避感情は,

学校へ通っている子ども達よりも高いと考えられるからである。しかし,不登校中学生の登校回避感情 に関する研究は見受けられない。定量的に登校回避感情を測り,不登校中学生の登校回避感情の特徴に ついて検討する必要があると考える。

(12)

また,不登校中学生は,斥力の強さが予測される。菊島(

1997

)は,友人関係や集団行動のストレス,

または対教師ストレスを不登校行動の直接的要因として取り上げ,不登校傾向生成モデルを作成した。

平田ら(

1999

)は,児童生徒は,主観的に知覚し解釈したストレッサーもしくは圧力によって,登校・

不登校などの行動を決定していると考え,不登校中学生と学校へ通っている中学生を対象に,不登校生 徒と一般生徒の普通学級に対する認知の差異を検討した。その結果,普通学級では不登校生徒は孤独や 孤立を感じ,教師への管理も低いことが示された。ここでいう教師への管理とは,職員室に呼び出され て注意を受ける事や,教師が規則による校則に対する意識の不足のことである。このような教師の干渉 や注意などは,主要な学校ストレッサーであるといえそうだが,言い換えれば教師と生徒との接触であ る。平田ら(

1999

)の研究では,一般生徒が教師からの管理を受けた時,それをどのくらい嫌だと思っ たかが考慮されていない。学校での出来事に対して本人が嫌だと思った場合に,学校ストレッサーとな りうると考えられ,嫌悪性についても尋ねることで学校ストレッサーの性質をもつだろう。不登校のき っかけとして教師との関係を挙げる者も多く,不登校生徒は教師ストレッサーを高く認知していると思 われる。同じように,友人関係でのストレスや,学業でのストレスにおいても,不登校中学生の方が多 く認知しているのではないかと考えられる。よって,不登校児童生徒の方が一般児童生徒よりも学校ス トレッサーを高く認知していることが予測される。

このような学校ストレッサーの軽減効果として,先ほどはソーシャルサポートやレジリエンスを取り 上げたが,学校へ通っている児童生徒と不登校児童生徒では,ソーシャルサポートの特徴に相違がある ことが明らかとなっている。渡辺・蒲田(

1999

)は,登校児の方が不登校児よりもソーシャルサポート の量全体に対する認知が多いことに加えて,登校児がすべてのサポートを主に友人から得ているが,不 登校児は友人から得ている以上に親,身内,知人,先生からサポートを得ていることなどを明らかとし ている。不登校児童生徒のレジリエンスについても学校へ通っている児童生徒と不登校児童生徒では特 徴に相違があるのではないかと考える。

不登校中学生の充実感に関して研究を行った中村,小玉,田中(

2011

)は,「相談員との関係」「仲間 との関係」「勉強」「活動」の下位尺度からなる適応指導教室充実感尺度と,「学校の勉強」「教師との関 係」の下位尺度からなる適応指導教室からの部分登校充実感尺度作成し,研究を行った。その結果,適 応指導教室での充実感が高まり,適応指導教室での充実感および原籍校とのかかわりの中で得られる充 実感(適応指導教室からの部分登校充実感)が高まり,その後学校への挑戦を決意するという

3

段階を 経て,登校行動が形成されることが示唆された。不登校の児童生徒が学校への挑戦を決意する際には,

適応指導教室や,原籍校とのかかわりの中において,充実感を得ることによって,登校回避感情が低下 することが影響しているのではないかと考える。これらの研究から,学校へ通っている中学生にとって,

学校生活において,友人関係や教師との関係を友好的なものにし,学業に対する楽しさを感じることが,

学校生活での充実感であり,その充実感が,登校回避感情を低減させると考えられる。

(13)

第十節 本研究の目的

以上より,学校ストレッサーは斥力,充実感や居場所感は引力となり,登校回避感情へ影響を与える と考える。その際,学校ストレッサーに関しては,ソーシャルサポートやレジリエンスによる軽減効果 が考えられる。しかし,登校回避感情と,学校ストレッサー及び充実感や居場所感,そしてソーシャル サポート,レジリエンスとの関係についての研究は十分になされているとは言い難い。そこで本研究は,

学校ストレッサー及び,充実感,そしてクラスにおける居場所感が登校回避感情に及ぼす影響を検討し,

不登校の予防・解決に関する具体的な示唆を得ることを目的とする。

さらに,不登校中学生の登校回避感情を測った研究は見受けられない。そこで,適応指導教室に通っ ている不登校中学生の登校回避感情や学校ストレッサー,並びにソーシャルサポートや,レジリエンス について,一般中学生のデータを基準値にし,比較することによって,学校へ通っている中学生(以降,

一般中学生)と不登校中学生の相違について検討を行うことによって,不登校児童生徒に対する支援方 法について示唆を得ることを目的とする。

本研究では,一般に小学生に比べて問題行動や不登校の生徒数が非常に多く,なかなか減少傾向がみ られない中学生を調査対象とした。

仮説

①学校ストレッサーは登校回避感情へ正の影響を与えている。

②充実感は,登校回避感情へ負の影響を与えている。

③居場所感は,登校回避感情へ負の影響を与えている。

④ソーシャルサポートには,学校ストレッサーの軽減効果がある。

⑤レジリエンスには,学校ストレッサーの緩衝効果がある。

⑦一般中学生よりも,不登校中学生の方が登校回避感情と学校ストレッサーの認知が高い。

⑧一般中学生よりも,不登校中学生の方がソーシャルサポートを低く知覚している。

3

一般中学生において予測される変数間の関連 学校生活における

ストレス認知

ソーシャル サポート 学校生活における

充実感 居場所感

登校回避感情

レジリエンス

軽減効果

(14)

第二章 一般中学生における調査 第一節 目的

一般中学生の登校回避感情と,学校ストレッサーや,充実感,そして居場所感との関係について明ら かにし,学校ストレッサー及び,充実感,そしてクラスにおける居場所感が登校回避感情に及ぼす影響 を検討することを目的とする。また,ソーシャルサポートとレジリエンスの学校ストレッサーの軽減効 果についての検討を行う。

第二節 方法

1.対象

青森県公立X中学校に通う

1,2,3

年生

352

名(男子

169

名,女子

183

名)

2.調査時期・手続き

2015

7

月中旬。担任を通して一斉に配布し,その場で無記名式の質問紙を実施,回収した。

3.質問項目

3-1.登校回避感情を測るための尺度

登校回避感情を測るための尺度(渡辺・小石,

2000

)のうち,因子負荷量が

.49

以上の

17

項目

くあてはまらない

から

非常にあてはまる

までの

5

件法)を用いた。

3-2.学校ストレッサー

岡安ら(

1992

)によって作成された中学生用学校ストレッサー尺度の

6

つの下位尺度のうち,因子分 析の結果寄与率が高かった上位

4

つの下位尺度,「先生との関係」「友人関係」「部活動」「学業」のう ち,同じような内容である項目を削除し,

22

項目(

4

件法)を用いた。この尺度は,各項目に記載され た出来事について,過去数カ月間の経験頻度と嫌悪性について評定するものである。対象者には質問項 目に対して,その出来事の最近数カ月の経験頻度(

全然なかった

たまにあった

ときどきあった

よくあった

)とその嫌悪性(

全然いやでなかった

少しいやだった

”“

かなり嫌だった

”“

非常にいやだ った

)をそれぞれ

4

件法で記入するよう求めた。なお,全く経験がなかった出来事に関しては,その嫌 悪性の記入を求めなかった。

3-3.充実感

中村・山本・鹿嶋・田上(

2005

)の中学生の学校での充実感尺度を用いた。

楽しい

まあまあ楽し

どちらともいえない

やや苦痛

苦痛

5

件法

17

項目である。

(15)

3-4.居場所感

「ありのままでいられる」こと「役に立っていると思える」ことから居場所感を捉える尺度(石本,

2010

を使用し,クラスに対する居場所感を尋ねた。

13

項目,

5

件法(

全くあてはまらない

から

非常にあて はまる

まで)

3-5.ソーシャルサポート

学生用ソーシャルサポート尺度(久田ら,

1989

)の項目表現を修正した中学生版のうち,石毛・無藤

2005

)にならい,知覚されたサポートに関する

6

項目を使用した。知覚されたサポートとは,他者か ら援助を受ける可能性に対する期待あるいは援助に対する主観的評価である(岡安ら,

1993

。知覚され たサポートについては,福岡・橋本(

1995

)によって,男子では友人サポートが,女子では家族,友人 のサポートが健康に対して望ましい効果をもっているということが示されている。

この尺度は,将来何か問題が生じたときに,周囲の人々からどの程度の援助が期待できるかを調べる ことを目的とした尺度である。家庭環境の複雑さを踏まえ,父親,母親,きょうだいに関するサポート を,家族サポートという一項目にまとめた。

6

項目(

絶対違う

”“

たぶん違う

”“

たぶんそうだ

”“

きっとそう

までの

4

件法)

3-6.レジリエンス

国内の中学生用のレジリエンス尺度(石毛・無藤,

2005

)を使用した。自分の判断や行動を見直して 自ら問題解決をしようとする自立的な傾向を表す「自己志向性」,物事をポジティブに考える傾向である

「楽観性」,ネガティブな心理状態を立て直すために他者との関係を基盤にしようとする心性を表す「関 係志向性」の

3

因子からなる尺度である。さらに,平野(

2010

)のレジリエンス要因尺度のうち,人と 関わる上で大切となるだろうと予測される「他者心理の理解」と「社交性」という因子のうち

4

項目を 加えている。

全くあてはまらない

から

非常にあてはまる

までの

4

件法)

15

項目。

(16)

第三節 結果

1.各尺度の因子構造

質問紙で実施した各尺度について,因子分析を行った。

1-1.登校回避感情

登校回避感情を測るための尺度について,逆転項目処理後,主因子法,プロマックス回転による因子 分析(因子打ち切り基準は固有値≧

1.0

)を行い,固有値や解釈の容易性などから

4

因子を採用した(表

1

。先行研究では「学校への反発感傾向因子」「友人関係における孤立感傾向因子」,「登校嫌悪感傾向 因子」の

3

因子構造であったが,本研究では「学校への反発感傾向因子」の中に含まれていた,教師や 授業,学校生活に関する項目が

3

つに細分化された。そして,学校生活に関する項目は,先行研究の「登 校嫌悪感傾向因子」の内容と結合して1因子となった。第

1

因子は,

授業を受けているのが苦痛である

.82

と高い因子負荷量を示したため,授業に関する内容であると判断し,「授業への拒否感」

α=.84

と命名した。第

1

因子は

学校ではいやなことばかりあると思う

.77

学校を休みたいという気持ちに なる

.73

と高い負荷量を示した。いずれも学校生活全体への嫌悪感傾向であるため,「学校生活への嫌 悪感」と命名した(

α=.79

。第

3

因子は

先生には安心して何でも相談できる

.89

と高い負荷量を示し,

教師との関係性において信頼感や安心感を抱いているかどうかについての内容であると考え,「教師への 不信感」

α=.73

)と命名した。第

4

因子は

学校の友達と一緒にいると楽しい

.76

と高い負荷量を示し た。全て渡辺・小石(

2000

)の「友人関係における孤立感傾向因子」に含まれている項目であるため,

「友人関係での孤立感」

α=.71

)と命名した。

「学校生活への嫌悪感」には

学校の友達と一緒になって勉強や遊びのグループを作るのは嫌だ

や,

校の友達とのつきあいがうっとうしいと思う時がある

といった,友人関係についての項目も含まれてい るが,「友人関係での孤立感」因子では特定の友達に関する項目であるのに対し,これらはクラス全体を イメージした不特定多数の友達に関する項目内容であると考えられる。

α

係数はそれぞれ

.71

.84

と高く,

十分な内的整合性が確保されたと判断した。先行研究との比較可能性を考慮して,以降の分析では,各 因子について,因子得点ではなく合計得点を用いて,分析を行った。

表 2 学校ストレッサーの因子分析 項目 因子 1  因子 2  因子 3  因子 4  因子1  「教師ストレッサー」 8. 先生が自分を理解してくれなかった .87    -.05    .00    -.03    7
表 5 ソーシャルサポート尺度のソーシャルサポート源別の因子分析 項目 家族 教師 友人 1 . あなたに元気がないと,すぐに気づいてはげましてくれる .83  .81  .77  2
表 6   レジリエンス尺度の因子分析 2.各下位尺度における平均値・標準偏差・範囲及び平均値の比較 下位尺度ごとの,合計得点の平均値と標準偏差を算出した。また,尺度によっては,先行研究により 性差がみられているものもあるため,男女別に再度合計得点の平均値と標準偏差を算出した。並びに, 合計得点の最大値と最小値を表 7 に示す。また,男女の性差を検討するために,下位尺度ごとに, t 検 定を行った。その結果,登校回避感情の下位尺度である「友人関係での孤立感」においては,女子より も男子のほうが高い傾向があっ
表 7    一般中学生の各下位尺度の平均値・標準偏差・ t 検定の結果            ※  左部:平均点, (  )内は標準偏差               右部:合計点     3.各尺度間の関係 各尺度の関係性を明らかにするため,男女別に相関係数を算出した(男子:表 8 ,女子:表 9 ) 。 まず男子の結果からみてみると,登校回避感情と学校ストレッサーの間に中程度以上の相関はみられ なかった。次に,登校回避感情と充実感との間に注目すると,教師への不信感があるほど,教師との充 実感や,勉強での
+7

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