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第三章 不登校中学生おける調査 第一節 目的

第四節 考察

1.不登校中学生全体の特徴

不登校中学生全体の特徴として,不登校中学生は共通して一つ以上の登校回避感情下位尺度の得 点が,一般中学生に比べて高く,何らかの登校回避感情を強く感じているといえるだろう。また,

不登校中学生の標準得点の平均をみると,一般中学生の分布に対して「学校生活への嫌悪感」は上 位

15

%以内,「授業への拒否感」は上位

28

%以内,「教師への不信感」は,上位

36

%以内,そして

「友人関係での孤立感」では上位

11

%以内に分布していることがわかった。つまり不登校児童生徒 は正規分布の端の方に位置しており,それを本研究では定量的に表すことができたといえる。

また,学校ストレッサーについては,全ての下位尺度において不登校中学生の方がストレッサーを高 く認知している傾向が強いことが明らかとなった。本間(

2000

)が指摘するように,斥力が引力を上回 り,不登校行動が出現したのだと考えられる。頻度と嫌悪性についてそれぞれの平均点をみてみると,

頻度,嫌悪性ともに不登校中学生の得点の方が高かった。つまり,不登校中学生は,学校で嫌なことに 遭遇する確率が高い環境に居たか,あるいはもともとある出来事に対して嫌悪感を強く抱く傾向がある のかもしれない。登校回避感情よりも顕著に一般中学生との差が出ており,不登校中学生は学校ストレ ッサーを高く認知していることがわかった。菊島(

1997

)においては,不登校傾向の高い者は生活にお いてより多くのストレッサーを認知しているということが明らかとされていたが,本研究においても,

不登校中学生におけるストレッサー認知の高さが明らかとなった。さらに,佐藤(

1979

)は,不登校児 の特徴として固さや傷つきやすさ,神経質などを報告したが,ある出来事に対して頻度を多く感じ,嫌 悪性を高く感じやすいという傾向は,これらの特徴と関連しているのではないかと考えられる。しかし,

本調査で測った学校ストレッサーは,過去数カ月間のものであると想定して測定されたものだが,イン タビュー調査により,中学生になってから学校へ登校していないため小学校の時の学校ストレッサーを 回答していると予想される者や,長期間不登校状態であるためいつの時点の学校ストレッサーであるの か不明である者がいるということが明らかとなった。不登校になった時点ではそれほど学校ストレッサ ーが高くはないが,不登校状態が長期化する中で,学校に対する嫌な思い出が増幅し,学校ストレッサ ーの認知が高くなった可能性もありうる。個人内要因として取り上げた変数である,レジリエンスの得 点を見てみると,一般中学生と不登校中学生の間にはあまり特徴的な差は見られない。不登校中学生が,

個人内要因として,元々ストレッサーを感じやすいのか,それともストレスフルな環境によって不登校 状態となり後にそのストレッサーの認知が異常に高くなってしまったのか,本研究でははっきりと言及 することはできない。

ソーシャルサポートについては,全体的に一般中学生の平均よりもやや下の位置に分布している。仮説⑦に 関しては支持される方向にあった。インタビュー調査によって,適応指導教室に通っている不登校中学生の中に は担任教師が変わったり,クラス替えなどによって環境が変化したり,友人や家族との関係性が変わったりした者

もいた。そのような変化の中で,ソーシャルサポートへの期待も変化していると考えられ,不登校になった時点で のソーシャルサポートとの区別をする必要があったと考えられる。

不登校中学生の充実感に関しては,適応指導教室での充実感と,適応指導教室からの部分登校での充 実感,そして学校への挑戦における充実感について尋ねている。中村ら(

2011

)の研究により,適応指 導教室から学校への登校行動は,適応指導教室での充実感が高まり,それから適応指導教室からの部分 登校での充実感が高まり,次に学校への挑戦を決意するという

3

段階である。本研究における不登校中 学生のデータを見てみると,全体的に適応指導教室での充実感の平均点はやや高い(

3.43

4.15

点:

5

点満点)。一方部分登校での充実感は,適応指導教室での充実感より低く(

2.34

3.85

点:

5

点満点), 学校への挑戦の平均点は

2.47

5

点満点)である。データ収集時では,全体的に,適応指導教室での充 実感を高めつつ,学校で楽しいと思えるように少しずつ学校へ近づいていく段階であったと考えられ,

不登校中学生の充実感の程度を定量的に表すことができたといえる。

2.不登校中学生の登校回避感情の様子

不登校中学生の登校回避感情の標準得点を見てみると,「学校生活への嫌悪感」が高い者がほとんどで あり,

90

年代の研究(森田,

1991

;本間,

1991

;古市,

1991

など)にみられるような学校を休みたい,

学校へ行きたくないという感情が,不登校現象へ強く関係していることがわかる。一方で,本研究では

「学校生活への嫌悪感」が低くその他の下位尺度の高さによって不登校となっていると予測される者も 存在した。つまり「学校生活への嫌悪感」のみでは不登校行動を説明できないといえるだろう。本研究 では渡辺・小石(

2000

)の尺度を用いて多面的に登校回避感情を捉えたが,このようにさまざまな角度 から登校回避感情を考察していくことが重要であるということが示唆された。

また,不登校中学生を

5

つのグループに分けた。登校回避感情によって,それぞれのグループの特徴 を見てみると,第

1

クラスターのグループは,「学校生活への嫌悪感」と「授業への拒否感」が高い傾向 がある。学校を休みたいという思いが強く,授業が苦痛であると感じているようだ。また,第

2

クラス ターと第

3

クラスターに比べて,「友人関係での孤立感」が高かった。第

2

クラスターのグループは,第

1

クラスターと同様,「学校生活への嫌悪感」と「授業への拒否感」が高い。さらに,「友人関係での孤立 感」が他のクラスターに比べて低いと言えるだろう。第

3

クラスターのグループは「学校生活への嫌悪 感」が高いが,「授業への拒否感」や「友人関係での孤立感」は低いのが特徴と言えそうである。学校を 休みたいという思いは強いが,授業は苦痛ではないし,親しい友人が学校にいると感じているといえる だろう。第

4

クラスターは,「学校生活への嫌悪感」や「授業への拒否感」は低いが「友人関係での孤立 感」が高いグループである。学校を休みたいという思いは低く,授業も特に苦痛であるとは感じていな いが,学校の友人関係において楽しいと感じていないと思われる。最後に第

5

クラスターは,第

4

クラ スターのグループと似ており,「学校生活への嫌悪感」や「授業への拒否感」が低く,「友人関係での孤 立感」高い。しかし「友人関係での孤立感」は第

4

クラスターよりも低かった。

以下,クラスターごとに諸変数について考慮しながらさらに特徴を考察していく。

2-1.「学校生活への嫌悪感」と「授業への拒否感」,「友人関係での孤立感」がやや高いグループ 第

1

クラスターに分類されたグループについて,諸変数の値を見ていく。学校ストレッサーについ

て,回答した者の得点を見てみると,教師ストレッサー,学業ストレッサー,部活動ストレッサー が他のタイプよりも低いといえそうだ。試験や成績のことに対して気にしたり,嫌だと思ったりす ることはなかったようだが,授業は苦痛であったようだ。適応指導教室での充実感を見ても,勉強 をすることに対しては楽しいと感じている傾向がある。一方で,学校で勉強することに対しては楽 しいと感じておらず,家や適応指導教室で勉強するのは楽しいが,学校で勉強するという行動には 拒否感が出てしまう可能性がある。

さらに,このタイプの大きな特徴として,一般中学生よりも全てのソーシャルサポートへの期待 が低いことと,適応指導教室の他のグループと比較しても適応指導教室でのサポートへの期待が低 いことが挙げられる。内面共有性が高いことから,何か辛いことがあった時などには誰かに話しを したいし聞いてもらいたいという思いが強い傾向があると考えられるが,社交性,楽観性の低さや サポートへの期待が低いことなどから,人と関わることを苦手としており,周りの人にサポートを 求めたいが上手くそれができないため,周りの人への期待が低いのかもしれない。インタビュー調 査の結果からも,希薄な対人関係を築いている者や対人関係上のトラブルがある者が他のクラスタ ーよりも多いという印象を受けた。適応指導教室での居場所感が他のグループよりも高いため,質 問紙調査時点では,適応指導教室で自分は役に立っている,ありのままでいられるという感覚があ り安定した状態であったと予想される。ソーシャルサポートは登校回避感情を低下させうる要因で あるため,今後は人とのコミュニケーションを築く中で,誰かに頼ったり,気持ちを打ち明けたり する経験を意識的に積み重ねながら,ソーシャルサポートへの期待を高めていくことが望まれると 考える。

2-2.「学校生活への嫌悪感」と「授業への拒否感」が高く「友人関係での孤立感」が低いタイプ 次に,第

2

クラスターのタイプをみてみる。全体的に学校ストレッサーの認知が非常に高い。成績や 試験の結果を気にし,良い結果が出なかったりしたために,授業が苦痛であると感じていると考えられ る。また,授業を行う教師との関係性も影響しているかもしれない。このタイプは,教師との関係性が 苦痛であると感じている傾向があるが,中には進級等をきっかけに担任の教師が変わった者もおり,部 分登校での先生との関係においては充実感を得ていると考えられる。加えて,教師への不信感は低いこ とから,教師とは特に問題なく接することができると考えられる。しかし教師は困ったときに何もして くれないだろうと感じている傾向がみられており,教師に対して,どうせ先生は自分のことをわかって くれないといったあきらめや決めつけの気持ちを持っている可能性が考えられる。

友人ストレッサーに関しても非常に高い値であるが,友人関係での孤立感は低い。これには内面共有 性の低さや社交性,楽観性の低さが関係しているのではないかと考える。つまり,社交性・楽観性が低 いことから,もともと人と上手く付き合うことを苦手としていて,神経質なところがあるのかもしれな い。また,内面共有性も低いことから,辛いときや悩んでいる時に自分の気持ちを話したり聞いてもら ったりしたいと思っていないということがわかる。さらに,ソーシャルサポートの値も一般中学生に比 べて低い。そのためストレッサーを軽減する要因がなく,ストレッサーを高く認知した可能性があると 考えられる。一方で,内面共有性の低さなどから,特に親しい友人がいないことが自分にとって危機的 な状況であると認識しておらず,友人関係での孤立感は低くなったのではないだろうか。

また,適応指導教室での充実感や居場所感も,他のタイプの通所生に比べて低い傾向があった。一方

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