• 検索結果がありません。

本研究では,登校回避感情をより多面的に捉えることを試みた。従来,登校回避感情を表すと言われ ている「学校生活への嫌悪感」が高い者は多く,

90

年代の研究(森田,

1991

;本間,

2000

;古市,

1991

な ど)にみられるような学校を休みたい,学校へ行きたくないという感情が,不登校現象へ強く関係していることがわ かる。学校を休みたいという気持ちを捉えることは非常に重要であるということが本研究においても明ら かとなった。一方で,不登校生徒の登校回避感情を測ったところ,学校への反発心や学校を休みたいとい う感情を表している「学校生活への嫌悪感」は低く,それ以外の登校回避感情の要因が高い生徒がおり,

学校を回避する感情を一面的にではなく,多面的にみた方が,より詳細に不登校現象を説明しうるとい うことが示唆されたといえよう。

また,「学校生活への嫌悪感」と「授業への拒否感」並びに「教師への不信感」は,因子間相関が高か ったが,それぞれを規定しうる要因の顔ぶれは違っており,それぞれ別の要因が強い影響力をもってい ることによって,これらの下位尺度を分けているということが示唆された。男女差もみられており,登校回 避感情については,男女差を考慮して検討を行う必要性があるといえるだろう。

まず,学校は嫌なことばかりあって学校を休みたいと思う感情を増加させるものとして,男女ともに 友人ストレッサーの影響が強く,男子においては部活動ストレッサーも強い影響力をもっていた。その 以外の学校ストレッサーは,周りの人からの励ましやアドバイス,自分自身の社交性や楽観性,そして 原因を見直したり行動を振り返ったりすることによって,低減されやすいということが示唆された。ま た,このような要因自体も学校を休みたいという感情を低下させる効果を持つということが明らかとな った。さらに,学校を休みたいという感情を低下させる要因として,男女ともにありのままで居られる ことが重要であるということがわかった。女子においては,クラスでの充実感や勉強での充実感が強い 影響力をもっていた。つまり,男子は,学校で自分の嫌なことが起こったり嫌なことをやらされたりし た時,もし周りの支えが無ければ,その人の性格傾向によって,教室で自分らしく居るということがで きず,学校生活自体に反発心や嫌悪感を抱いてしまう傾向がある。女子も男子と同様の傾向がある一方 で,クラスの仲間と一緒に勉強や活動することが楽しいと思えれば,学校生活に対する反発心や嫌悪感 は低くなるということが示唆された。

「授業への拒否感」に関しては,性差が顕著にみられた。男子の場合は,家族と教師の支えを得なが ら,教師と良い関係を築くことで授業や宿題も楽しくなり,授業で苦痛だと感じることが減る。それに 加え,普段からなぜそうしたか行動を見直したり,失敗の原因を考えたりする人は,授業への拒否感が 低いということが明らかとなった。一方女子は,教師との関係が上手く行かなかったり,試験や成績の ことを気にしてしまったり,学校で何か嫌なことがあると,授業も嫌になってしまう傾向があると言え

そうである。そのため,普段から楽観的に物事を考える人は,授業への拒否感が低いといえるだろう。

さらに,女子においてはクラスでの活動や勉強が楽しいと感じるほど,拒否感が低くなりうるというこ とが示唆された。達成目標が熟達目標の指向性と遂行目標の指向性の

2

つに分けられることが提唱され ているが(

Dweck

1986

),本研究における結果に関しては,男子は,熟達目標の指向性に近く,女子は 遂行目標の指向性に近いように見える。熟達目標の指向性とは,知識を学ぶことや学習過程自体が重視 されており,遂行目標の指向性とは,過程よりも結果を重視し,他者より優ることや自分の能力に対し て他者からの肯定的な評価を求め,否定的な評価を避ける傾向があることである。授業において,男子 においては,学習過程自体の楽しさが重視され,女子においては,それよりもむしろ,成績や,他者か らの肯定的な評価を重視していると考えられる。

また,「教師への不信感」については,女子において,友人からのいじめや悪口があったと認知した時 は,不満の矛先は上手く対応してくれない教師へ向かうということが示唆された。また,男女ともに勉 強で楽しいと思えることが教師への不信感を低下させることが示された。そして,教師との関係性にお いては,男女ともに,自分が役に立っている,必要とされているという感覚が重要であり,それに加え て,女子においては,ありのままで自分らしく居ることができるという感覚が重要であるということが 示唆された。ただし,本研究では対象校が

1

校であり,友人関係の良好さが目立っていたため,サンプ ルの偏りがある。今後,サンプルの偏りなどを考慮した上で,再度検討する必要があるだろう。

最後に,「友人関係での孤立感」に関して述べる。男女とも共通して友人関係での孤立感に対して本来 感の負の影響があった。また,ソーシャルサポートやレジリエンスも友人関係での孤立感を低下させる 影響がみられた。

本研究では,実際の不登校中学生のデータを検討することも行った。一般中学生と不登校中学生のデ ータを比較することによって,より詳細に不登校現象に迫ろうという試みであった。一般中学生の傾向 にあてはめて考えてみると,多くの不登校中学生は「学校生活への嫌悪感」が高かった。一方で,学校 生活への嫌悪感以外の登校回避感情の高さもみられており,本研究において多因子構造を採用したこと は妥当であったと考えられる。また,登校回避感情や学校ストレッサーなど,一般中学生に対して非常 に高い数値を示すところがあったが,個人内要因であるとされるレジリエンスに関しては不登校中学生 と一般中学生の間で相違はみられず,学校ストレッサーの値の高さから不登校特有の性質があるとは断 言できない。ストレッサーの認知の高さに関しては,学校ストレッサーを感じた時に良いソーシャルサ ポートを得られなかった可能性や,不登校の長期化によって学校へのネガティブな感情が増してしまう 可能性などが考えられる。本研究においては不登校の期間やいつの学校ストレッサーを想起しているの か明確に捉えることができなかった。また,不登校生徒にとっていつの時点の登校回避感情であるのか,

対象となる教師との関係,そして一般中学生と不登校中学生とで尋ねる項目が変わってしまったことな どが課題として挙げられる。

さらに,本研究ではレジリエンス尺度に関して,学校ストレッサーの高低にかかわらずレジリエンス が聞いており,レジリエンスの特徴である回復性がみられなかったといえるだろう。ネガティブな出来 事との関係をしっかりと整理した上で,調査を行う必要があると思われる。また,本研究では従属変数 である登校回避感情を並列であるものとして扱い,主として重回帰分析や分散分析による検討を行った。

しかし,因子間相関が高い因子もあり,順序関係が含まれている可能性がある。このような順序関係を 検討するために,パス解析や共分散構造分析などの手法を用いて,更に検討する必要があると考えられ

る。

また,質問紙調査時とインタビュー調査時では,本人の様子や環境の変化など,不登校中学生の変化 が予測される結果となった。不登校支援へ効果的な取り組みを提案するためには,協力者の負担を考慮 しながら,一回の実施だけではなく,追調査を行い,適応指導教室へ通っている子ども達の変化を調査 する必要があると考えられる。

関連したドキュメント