中国の農村金融と新たな金融組織 1
薛 軍
Abstract:
China government has been encouraging some new type of rural financial institu- tions to further boost its rural economy, such as
:Village and Town Bank, Rural Fund Mutual Cooperation, Rural Non
‑Bank, etc. At the same time, the new financ- ing pattern
(Farm Household Community
)was created after the government launched the Law of the People's Republic of China on Specialized Farmers Cooperatives
.This article analyzed the reality of China rural area, focusing on the urbanization and industrialization process at the macro level, discovered the supply and demand in the rural financial system and the financing market. It fur- ther explored the mismatches between the government rural policies and the reali- ties.
Keywords:
Macro Finance, New Rural Financial Institution
,The Law of the People's Republic of China on Specialized Farmers Cooperatives
1 中国農村部のマクロ金融環境
1.1 生産・支出・分配から見た農村部の実態
今の中国は高い成長率を保つ一方,経済構造2を少しづつ調整している。本論文の冒頭に,
まず国内総生産(
GDP
)の三面等価原理(生産=支出=分配)から,第一次産業である農 業の位置づけを踏まえて,都市化・工業化の進行中に縮小している中国農村部の実態をマク ロ的に分析してみよう。1.1.1 生産(総供給)から見た産業構造の変化による農業現代化・産業化が求められている 表1‑1に示されたように,2009年に中国の第1〜3次産業及びその労働力の構成は,それ ぞれ10.3%,46.3%,43.4%と38.1%,27.8%,34.1%である。両方とも日本の1960年にほ
1 本稿は長崎大学経済学部100周年寄付金による「研究支援」をいただき,深く感謝しております。
2 ここでの経済構造とは,産業構造,消費と投資構造,内需と国際貿易構造,所得分配構造などのGDPと 直接関わる経済構造を指す。現在の中国では,産業構造,都市部と農村部,地域構造,貧富などいろんな格 差問題があるため,経済構造全体の調整が問われている。
表1‑1 Primary Industry and Its Number of Employed Persons at Year-end Composition of GDP
出所:中国統計局(2010)
ぼ相当することが伺える。ちなみに2008年の日本のそれぞれの構成は,1%,27%,72%と 4.2%,27.35%,68.45%である。
現在中国の第1,2,3次産業及びその労働力の構成が両方とも日本の1960年にほぼ相当 することは,工業化都市化の進行中のため,農業の比重が次第に減っていることも意味する。
これらの産業レベルアップの中に,農業の現代化・産業化が求められている。
1.1.2 支出(総需要)から見た消費における都市部対農村部の格差の是正による農村部の 需要喚起が求められている
支出から見れば,2008年中国の
GDP
のうち,消費が48.59%(うち,国民35.30%,政府 13.27%),資本形成が43.54%(うち,固定資本41.13%),貿易ネットが7.86%によって構 成する。図1‑1に示したように,中国の過大な固定資本形成の中に,第2次産業,特に製造業の比 率が高すぎる一方,対農村部の投資は少ない。
また,表1‑2と表1‑3に示されたように,2009年中国都市部対農村部の消費構成は76.2:23.8 である一方,中国の都市部対農村部の人口構成は,46.59:53.54である。半分以上の人口が 農村部にいる中国では,その消費構成の格差が大きすぎる。今後,工業化と都市化による第 1次産業の縮小を通じて,如何に消費構成のアンバランスの是正及び農村部の需要を喚起さ せるかが求められている。
1.1.3 支出(分配)から見た国民所得格差の是正による農村部所得の増加が求められてい る
先進国と比較すれば,中国全体の労働者報酬が低すぎる一方,営業純利益が相対的に高く,
特に大型国有企業セクターの部分が高すぎる。国内の格差では,1990〜2008の18年間,都市 部と農村部一人当たり収入増加対比が8.45倍:4.94倍,即ち1.71:1になっていた。
国民所得格差の是正,特に農村部所得の増加が求められている(表1‑4を参考)。
図1‑1 固定資産投資成長率(都市部:農村部) 固定資産の投資額(億元)(都市部:農村部)
注:左図では上の線が都市部,下の線が農村部,右図では上の部分が農村部,下の部分が都市部をそれ ぞれ指す。
出所:中国農業部ホームページhttp://www.moa.gov.cn/zwllm/nytj/tjsj̲1/index̲1.htm
表1‑2 Household Consumption Expenditures Components of GDP by Expenditure Approach and Population Composition
出所:中国統計局(2010)
表1‑3 Household Consumption Expenditure
出所:中国統計局(2010)
表1‑4 Per Capita Annual Income and Engel's Coefficient of Urban and Rural Households
出所:中国統計局(2010)
1.2 農村部資金の供給及び流出問題
1.2.1 中国農村部の資金供給及び農民の「三重の搾取」問題
現在の中国は新興経済大国といわれても,まだ農民の国家から工業化への移行中,即ちま だ発展途上国である。上記1.1に示したように,中国の農民人口はまだ全人口の半分以上を 占めており,農業現代化・産業化が求められている。
ところが,今までの中国は農業現代化・産業化に必要な投資をしていない。図1‑5に示さ れたように,1978年の中国改革開放以後,農業向け貸出の全産業貸出における比率は,一番 高くも1988年の7.72%のみである一方,1995年にわずか3.05%しかなかった。
この現象がずっと起こっている背景は,伝統的に中国の農村部における「三重の搾取」の 存在のためである。この三つの搾取を図1‑2によって解釈できる。
つまり,まず,工業品と農産品のはさみ価格によって,農民の生産物である経済余剰を搾 取することである。二つ目の金融余剰搾取とは,農民に貸付より,農村部での金融拠点によ る農民の預金を吸収して,その預金を都市部に回していくことである。最後の利潤余剰搾取
表1‑5 農業向け貸出の総貸出における比率(%)
年 比 率 年 比 率 年 比 率
1978 6.25 1990 6.84 2000 4.92
1979 6.36 1991 6.70 2001 5.09
1980 6.96 1992 6.70 2002 5.24
1981 6.60 1993 6.50 2003 5.29
1982 6.72 1994 4.92 2004 5.55
1983 6.54 1995 3.06 2005 5.92
1984 8.18 1996 3.14 2006 5.86
1985 7.05 1997 4.42 2007 5.90
1986 7.51 1998 5.14 2008 5.81
1987 7.59 1999 5.11 2009 5.61
1988 7.72 1989 7.21 出所:周立(2010)
図1‑2 中国農民の「三重の搾取」
出所:周立(2010),38ページ
とは,農村部でのフォーマル金融が少ないまたは金利が高いため,さまざまな金融組織の貸 付金利による農民の収益を搾取することである。
「三重の搾取」は,中国農村部に資金の不足,資金の流出などの問題を反映している。
1.2.2 中国農村部資金の流出問題
上記図1‑2に示された「三重の搾取」における金融余剰搾取に関しては,毛沢東時代の計 画経済体制ではもちろんであったが,1978年 小平による改革開放以後でも,その実態はほ とんど変わっていない。むしろ深刻になっていると思われる。つまり,農村部の預金を都市 部に回して,重工業化に使うというやり方は過去旧ソ連の計画経済体制の特徴かもしれない が,市場経済に移行中の中国改革開放モデルに,工業化と都市化を促進するためにも,同じ 手口を利用している。
一方,今までの中国では,収益重視のため,農村関連の銀行業界の法人数及びその従業員 数(表1‑6を参考)や,県レベル金融業界の拠点数(表1‑7を参考)など,極端に減ってきて いる。
表1‑6 中国の農村銀行業界における法人数と従業員数
2006 2007 2009
従業員数 法人数 従業員数 法人数 従業員数 法人数 農 村 信 用 社 634,659 19,348 8,348 570,366 3,056
農 村 商 業 銀 行 20,003 13 17 66,317 43
農 村 合 作 銀 行 37,188 80 113 74,776 196
村 鎮 銀 行 19 3586 148
貸 出 会 社 4 75 8
農 村 資 金 互 助 社 8 96 16
郵 政 貯 蓄 銀 行 237,389 1 109,403 1 132,536 1 合 計 929,239 19,442 109,403 8,510 847,752 3,468 出所:CBRC2006〜2007及び2009年報より
表1‑7 県レベル金融業界の拠点一覧表(箇所)
2004年 2005年 2006年 2007年
合 計 134073 128728 123974 12.4万
郵 政 貯 蓄 23239 23468 23695
農 業 発 展 銀 行 1555 1533 1517
農 業 銀 行 16926 15511 13175 1.31万
農 業 商 業 銀 行 535 524 505
農 業 合 作 銀 行 1800 2142 2515
農 業 信 用 社 60869 55953 52089 5.2万
証 券 会 社 664 680 711
先 物 会 社 15 15 23
保 険 会 社 11130 12548 14135
担 保 会 社 752 975 1365
質 屋 499 602 713
そ の 他 16089 14777 13531
出所:中国人民銀行(2008.9),7〜8ページ
農村部関連の金融業界に行われていた整理整頓のため,農村部の金融拠点数,特に未発達 地域では,非常に不足の状態にある。
CBRC
(中国銀行業監督委員会,以下同)によれば3, 1)2007年末まで,農村部における銀行業の営業拠点数が108173ヶ所,全国の57%を占める。3 中国農村金融協会(2008),59ページ
2)また,1つの郷鎮あたりに平均3.56拠点,5.97の行政村に平均1拠点,平均1万農民に 1.54拠点がある。3)2009年末までに,全国に2792の郷鎮では,金融拠点が不在。さらに農 村金融サービスの空白である郷鎮が342ヶ所ある。
これらの農村部から撤退・合併のブームの中に,実は従来主力である工業銀行,中国銀行,
建設銀行,農業銀行という中国国有四大商業銀行の動きが大変注目される。表1‑8に示され たように,1997年アジア通貨危機の翌年からの3年間で,この四大商業銀行の県レベルにお ける拠点縮小のスピードが速く大変衝撃的であった。その内,過去農村部業務がメインであ った農業銀行でも,三年間で一気に377箇所,全部県レベル拠点での15.4%を縮小した。
収益第一との方針を実施している結果は,現在の中国農業銀行は銀行名だけ「農業」とい うままに,既に普通の商業銀行と何も変わらなく,図1‑3に示された2007年農業銀行貸付業 務の内訳の中に,農業関連の内容がわずか9%に過ぎなかった。
またそのほか,2007年に農林漁牧畜の中国国家開発銀行貸出での割合は,もっと低かった,
ごく0.52%のみであった。
表1‑8 1998〜2000年四大商業銀行の県レベルにおける拠点縮小一覧表
撤退・合併数 全部県レベル拠点での比率
工 商 銀 行 541 27.8%
中 国 銀 行 204 18.6%
建 設 銀 行 464 24.1%
農 業 銀 行 377 15.4%
出所:許清正(2009),51ページ
図1‑3 中国農村銀行は収益第一
出所:『中国金融年鑑』2008
2 中国の農村金融体制
2.1 間接金融が中心とする中国金融体制における農村金融市場 2.1.1 中国の間接金融4と中国農村金融組織の特徴
中国の農村部における資金の需要について見てみよう。資金の農村での需要については,
どんな国でも,①経営活動での需要,②生産活動での需要,③生活・生存面での需要との三 大需要に分けられるが,先進国と発展途上国の間に差があると見られる。図2‑1に示された ように,伝統型と現代型のそれぞれ中国農村部において資金の需要は,ピラミッドのような 存在に見える。
図2‑1 中国農村金融市場における需要
伝統型農村 現代型農村
注:①は経営活動での需要,②は生産活動での需要,③は生活・生存面での需要をそれぞれ指す。
一方,中国金融システムの最大の特徴は,やはり間接金融を中心とする資金調達体制であ る。即ち,国民経済全体は銀行融資に依存しすぎていることである。全体を見れば,銀行業 からの資金調達はおよそ80%を占めており,対照的に直接融資先である株式市場と債券市場 からの融資比率は全体のおよそ20%に過ぎない。これは計画経済から市場経済への移行期に おいて,中国の証券市場が未だに未発達であることを反映している。農村部のみを見れば,
正式なデーターがないが,もっと低いと見られる。
1978年の中国改革開放以降,中国銀行,中国農業,中国建設,中国工商という現在の四大 商業銀行を相次いで設立させた。また,1994年の商業銀行法により,中国政府は,上記の四 大商業銀行からさらに政策金融に関する業務を分離させ,新たな国家開発,中国輸出入,中 国農業発展という三大政策銀行を設けた。1980年代後半から現在に至るまでに,地方政府や 国有企業などの出資による商業銀行の設立や外資系金融機関の中国進出,ないしは2007年か ら始まった個人でも設立可能な村鎮銀行など,移行期における中国の金融体制を徐々に充実
4 薛軍「第1編中国の証券市場」,川村雄介編集『図説 アジアの証券市場 2010年版』(財)日本証券経済 研究所2010年4月を参考されたい。
させている。また一方,非金融機関も同時に徐々に拡大している。
現在まで,中国の農村金融市場には,いろんな金融組織が存在しており,大体政策銀行,
商業銀行,共同組合と三種類に分けられ,その特徴などは次の通りである。
(1) 政策銀行系
国家開発銀行:インフラ建設及び農業資源開発に関わる大型プロジェクトがメイン;拠点 が少ない
農業発展銀行:食糧備蓄などがメイン;業務範囲が狭い (2) 商業銀行系
農業銀行:主力プレーヤー;近年に収益第一のため,拠点が縮小している 農業商業銀行:地域の主要なプレーヤー;従来の農村信用社より転身;収益第一
郵政貯蓄銀行:拠点が多い;2007年より新規参入,業務内容が広い;貸付より預金業務が 遥かに多い;収益第一
農村信用社:農村の末端に拠点が多いが,近年収益重視のために県の中心部に集中傾向;
顧客のほとんどが農家と小規模企業
村鎮銀行:2007年より新規参入者;資金・拠点・活動範囲などが限られる
小額貸付会社:民営の新規参入者,正式な金融機関ではない;規模が小さい;貸付業務の みのため,将来性が見えない
(3) 共同組合系
NGO
小額貸付組織:未発達;規模が小さい農村資金互助社:2008年より新規参入者;政府から期待されるが,設立条件が厳しいため,
まだ数が少ない
その他の民間金融:地下金融とも言われ,従来長い間に存在,規模が大きい
2.1.2 農村金融市場における金融組織の位置づけ
中国農村金融組織では,フォーマル金融とインフォーマル金融に分けれらる。中国を含め て,世界中に,未発達国や地域の農村部において,インフォーマル金融が盛んに行われる。
一方,フォーマル金融組織が,農村近代化に伴って展開されていると見られる。現在の中国 では,フォーマルな農村金融体制が強化し続けられている。
図2‑2に示されたように,農村信用社,農業銀行,農業発展銀行,郵政貯蓄銀行という4 つの従来のフォーマル金融以外には,村鎮銀行,小額貸付会社,資金互助社という三つの新 しいパターンも誕生した。
これらの金融組織の農村部経済展開における位置づけに関しては,図2‑3に明確に示して くれた。
図2‑2 農村金融市場における金融組織の位置づけ(1)
出所:周立(2010),68ページ
図2‑3 農村金融市場における金融組織の位置づけ(2)
出所:謝(2009),61ページ
2.2 中国農村金融市場の管理監督と不良債権5
中国の金融管理体制は,改革開放以降,大きく変化している。従来は,人民銀行が単独で 金融政策や管理監督などの機能を果たしていた。現在は,急速な経済発展に対応するために,
2003年中国の経済・金融社会で中央銀行と並列に,
CBRC
(中国銀行監督管理委員会)が設 立された。5 薛軍「第2章第1節 中国の証券市場」,川村雄介監修・著(財)日本証券経済研究所編『アジア証券市 場とグローバル金融危機』(社団法人)金融財政事情研究会2010年3月を参考されたい。
CBRC
が,中国国務院に直轄され,それぞれの法律と法規に基づいて銀行業界において,発展戦略及び各業界の法律法規の策定や実務運営に対する監督管理を行っている。2009年末 まで,
CSRC
は全国に2074の拠点を持ち,そのうち全国各エリアに36の銀行監督管理局があ り,その下に300の銀行監督管理分局,さらに1,735の監督管理専員オフィスが設けられてい る。農村部に対する監督管理については,北京にある
CBRC
本部に「合作金融機構監督管理 部」が設けられ,農村部の預金類金融組織や最近誕生したばかりの新型農村金融組織などが この部署及びその下に各エリアでの部署の管轄に入る。また,全国農村合作金融組織の農村 部関連の業務に対して,表2‑1に示されたように,そのリスク評価と警報指標システムなど が設定されている。他方,農村金融を含めて,中国の不良債権には,過去において一時は非常に高い水準にあ った。例えば,2003年の中国四大国有商業銀行である中国工商,中国建設,中国農業,中国
表2‑1 中国農村合作金融機構リスク評価と警報指標システム
指 標 名 黄色警報値% 赤警報値% 動態警報値%
1.自己資本比率指標
自己資本比率 ≦4 ≦0 減少1以上
コア自己資本比率 ≦2 ≦0 減少0.5以上
2.流動性指標
任意準備金比率 ≦3 ≦1 減少1以上
資産流動性比率 ≦25 ≦10 減少5以上
借入資金比率 ≧4 ≧8 上昇2以上
3.安全性指標
不良貸付比率 ≧26 ≧42 上昇
予想不良貸付損失比率 ≧15 ≧25 上昇3以上
予想不良貸付損失の補充率 ≦18 ≦6 減少3以上
1位顧客の貸付額比率 ≧46 ≧62 上昇15以上
前10位顧客の貸付額比率 ≧200 ≧300 上昇5以上
前10位顧客の利息未払比率 ≧16 ≧32 上昇5以上
非融資の不良資産比率 ≧26 ≧42 上昇
4.収益指標
資産利益率 ≦0.2 ≦0 減少0.1以上
利子回収率 ≦70 ≦60 減少10以上
5.総合発展能力指標
預金成長率 ≦6 ≦2 減少5以上
不良貸付残額減少率 ≦0 ≦‑10
固定資産比率 ≧90
注:動態警報値は期間内の変動数値を警報するもの。
出所:CBRC(2004)
銀行の不良債権率は,それぞれ21.56%,11.90%,30.07%,18.07%,合計平均25.26%で あった。
ところが,不良債権率を抑制するために,中国は,四大国有商業銀行に対して,1)2004 年に公的資金850億米ドルの注入,2005年より資本市場での上場促進(農業銀行以外は全部 上場),4つの金融資産管公司(華融,長城,東方,信達)による不良債権の回収,という 政府側の対策と,2)不良債権の資産化・証券化という市場側の対策,3)さらに収益第一と いう銀行側の効率化対策(第1節参考)を打ち出した。結局,中国の不良債権率は2004年か ら低下し,2008年になると平均2.42%という先進国の水準になった。
ただし,その好調の中に,やはり農村金融に関する不良債権率が一番悪い(表2‑2参考)。 また,不良債権の業種別から見れば,農業関連は依然として悪いと言える(表2‑3参考)。
表2‑2 近年中国商業銀行不良債権の内訳
単位:億元・%
2009 2010.1Q 2010.2Q 2010.3Q
額 比率 額 比率 額 比率
不良債権 4973 1.60% 4701 1.40% 4549 1.30% 4354 1.20%
その内訳
主要商業銀行 4010 1.41% 3840 1.30% 3674 1.20%
大型商業銀行 3627 1.80% 3400 1.59% 3248 1.46% 3087 1.35%
株式制商業銀行 637.2 1.00% 609.6 0.86% 592.1 0.80% 586.7 0.76%
都市商業銀行 376.9 1.30% 365.9 1.19% 360.7 1.11% 339.1 1.00%
農村商業銀行 270.1 2.80% 265.8 2.47% 288.2 2.34% 284.4 2.16%
外資系銀行 61.8 0.90% 59.8 0.74% 60.4 0.72% 56.6 0.65%
注:商業銀行は大型商業銀行,株式制商業銀行,都市商業銀行,農村商業銀行,外資系商業銀行を含む。
主要商業銀行は大型商業銀行と株式制商業銀行をさす。
大型商業銀行は中国工商銀行,中国農業銀行,中国銀行,中国建設銀行,交通銀行を指す。
株式制商業銀行は中信銀行,光大銀行,華夏銀行,広東発展銀行,シンセイ発展銀行,招商銀行,上 海浦東発展銀行,興業銀行,中国民生銀行,恒豊銀行,浙商銀行を含む。
出所:2009データーはCBRC2009年報より
表2‑3 2009年中国業種別不良債権率の前6位 不良債権率
1 宿泊と飲食業 4.82
2 農林水産牧畜 4.52
3 文化,スポーツ,アミューズメント 3.24 4 科学研究,技術サービス,地質探査 2.98
5 自動車ローン 2.92
6 クレジットカード 2.83
出所:CBRC2009 年報より
3.新たな農村金融組織の誕生・展開
3.1 新型農村金融組織の政策及びその促進プラン 3.1.1 新しい政策が実施する前の農業金融組織改革
2000年までに,中国農業金融市場に参入していた主な組織は,図3‑1に示されたように,
銀行業金融機関である農業銀行,農業発展銀行,農業信用社,郵便貯金のほかに,ノンバン クである中国扶貧基金会やその他の民間金融組織にもある。
図3‑1 農村金融制度の変遷(2000年まで)
出所:岡嵜久実子(2010)
上記2.2に述べたように,2003年中国四大国有商業銀行の農業銀行は,不良債権処理を機 にして収益第一という方針に変えて,従来不合理化の農村部から手を退きだしていた。遂に 2010年に上海株式市場と香港株式市場に同時
IPO
できた。2000年前後,中国は農村信用社という農村部資金調達の柱に対して,新たな改革を実施し 始まった。2009末までに,当時3.5万社近くあった農村信用社が,3056社だけ残させられた。
また同時に,国の促進政策によって,従来の一部農村信用社は,ローカル経済などの状況に 合わせて,再編統合に基づいて全国範囲に43社の農村商業銀行と196社の農村合作銀行であ る地域商業銀行までに変身されていた(表1‑6参考)。
「三農(農民・農村・農業)」を支持するために,従来の郵便貯金制度も見直され,2007 年3月,郵政貯蓄銀行が正式に設立され,農村部のマイクロファイナンスの機能を拡充され ている。2008年末には,全国営業拠点数が3.7万箇所がある。
3.1.2 農村部における新たな金融組織
中国第11次五ヵ年規画(2006〜2010)の初めの年の2006年12月に,急増している農村部資 金需要にの対応策の1つとして,2006年12月,
CBRC
は「農村地域における銀行業金融機 関の参入政策を調整緩和し,社会主義新農村建設をよりよく支援することに関する若干の意 見を公布した。その中に,農村部の振興のために,過去になかった村鎮銀行,農村資金互助 社,貸出公司(ノンバンク)という3種類の新型農村金融組織の設立が促進されることにな った。また,2008年5月に「小額貸出公司の試行に関するガイドライン」が公布され,もう1つ のノンバンクである小額貸出公司の設立も促進し始めている。
これらの4つの金融組織は,いずれ小規模であり,ローカル地域と密接にして,且つ営業 領域が限定されいるなどの特徴を持つ(表3‑1参考)。
表3‑1 新型農村金融組織
新型農村金融組織 新型非金融組織
村鎮銀行 貸付会社 農村資金互助社 小額貸付会社
資本金 県(市)≧300万元 郷(鎮)≧100万元
≧50万元 郷(鎮)≧30万元村
≧10万元
有限公司≧500万元;
股©公司≧1000万元
株主数 『会社法』に従い ≧10人 『会社法』に従い
株主資格 発起人が銀行業の金融
機関であること 商業銀行また は農村合作銀 行の全額出資
自発参加の農民及び農 村中小企業
すべての合法な資本
株主構成 発起人である銀行業の 金融機関の株式所有権
≧20%,その他の株主 はいずれ≦10%
一当たりの株主の持ち株比率は≦10%
自己資本比率 ≧8% ―
預金準備率 現地農村信用社の水準 を参考する(注1)
営業範囲の制 限
県域以下,範囲外の貸 付は禁止
県域以下 村(鎮)域以下,範囲 外の活動は禁止
県域以下,範囲外の貸 付は禁止
預金業務の制 限及び金利
なし,金利は中央銀行 基準金利以下
禁止 なし,金利は中央銀行 基準金利以下
禁止
貸付金利 中央銀行基準金利の0.9〜4倍
注1:農村信用社の預金準備率は銀行業の中では一番低い方であり,普通15%。その内,「三農(農業・
農村・農民)」貸付が多い場合は相対的に高い。また資産規模が相対的に小さい1379の県(市)レ ベル農村信用社では,その預金準備率が12%である。
出所:中国人民銀行農村金融サービス組(2008.9)
3.1.3 新型農村金融組織の及びその促進計画
CBRC
は,2009年7月に,『新型農村金融組織2009〜2011年総体計画』(表3‑2の一覧表を 参考)という発展促進プランを発表した。当計画の内容は,2008年から2011年の3年間をかけて,さらに1300社ぐらいの新型組織を 設立することによって,全国のすべての郷・鎮の銀行金融サービスをカバーする計画である。
ところが,当計画の展開スピードがあまりに速すぎると言われ,発表してから計画通りに 実施できていないとの予測もある。今までの実績から見れば,2011年までの3年間計画が完 成できないかもしれない。例えば,村鎮銀行と資金互助社の場合を見ると,計画は2008年と 2009年がそれぞれ416社と59社であるが,実績は2009年末までにそれぞれ148社と16社のみで あった。その達成率はそれぞれ35.6%と27.1%しかなく,大差があった。中国上層部のエリー トたちの考え方と農村部での実態との乖離が典型的に反映されている。
表3‑2 新型農村金融組織の展開プラン(CBRC,2009年7月23日)
3.2 新型農村金融組織に関する貸付金利
中国金融機関の貸付金利は,まだ完全に自由化されていないため,利率の上限と下限が中 央銀行に設けられている。
表3‑3に示されたように,村鎮銀行,貸付会社,農村資金互助社,小額貸付会社(ノンバ ンク)である4種類の新型農村金融組織の貸付金利に関する設定は,農村信用社より幅が大 きいが,小規模・小口金融という面から見れば,金利設定の自由度が依然としてまだ厳しい と思われる。
人民銀行貨幣政策司の調査により,従来,農村金融機関が「三農」に関する貸付金利につ いては,次のようである。
1)農業関連貸付の加算平均金利は人民銀行である中央銀行基準の1.31倍,その内の73.4%
は1.5倍に集中していた。
2)農村信用社の60%以上は,中央銀行基準金利の1.5〜2.3倍,加算平均の1.6倍であった。
3)2007年12月,実験とする全国初の7つのノンバンクである小額貸付会社は,中央銀行基 準金利の3.03倍であった。
また,張暁燕(2008)は,インフォーマルの利率については,2002〜2006年,中国各地で の調査により,インフォーマル金融における年間利率は12〜60%であり,当時中央銀行基準 金利年率5.58%の2.15〜10.75倍であったことを判明した。
よって,農村部に関する貸付金利は,商業銀行⇒農村信用社⇒新型農村金融機関⇒インフ ォーマル金融という順ではないかと考えられる。
表3‑3 新型農村金融組織の貸付金利に関する規定 全国レベル商業銀行,都市商業
銀行,農村商業銀行
農村合作銀行,農村信用社,県 レベル農村信用社聯社
村鎮銀行,貸付会社,農村資金 互助社,小額貸付会社 中央銀行基準金利
の0.9〜4倍
中央銀行基準金利 の0.9〜2.3倍
中央銀行基準金利 の0.9〜4倍 出所:中国人民銀行農村金融サービス組(2008.9)
表3‑4 中国人民銀行が公表した人民元貸出基準利率(2011.2.9更新)
種 類 年利率(%)
1.短期
6ヶ月 5.60
1年 6.06
2.中長期貸出
1〜3年 6.10 3〜5年 6.45 5年以上 6.60
3.3 外資銀行HSBCの村鎮銀行への参入
3.3.1 村鎮銀行における外資系銀行業界の積極的な参入
図3‑1に示された新型農村金融組織の政策に関して,外資銀行の村鎮銀行への参入制限は ない,むしろ歓迎していると思われる。
この促進政策に対して,欧米系銀行の
HSBC
(香港上海銀行,以下同)を初めとする数 多くの有力外資系銀行は,中国ローカル民営企業6と同じ,この政策をチャンスと捉えて,中長期的な計画を組んで,中国の農村部に積極的的に参入しているようである。残念ながら,
日系外資系銀行はまだ慎重に情況を見ているようである7。
2007年12月には外資系の第1号として,
HSBC
(香港上海銀行)が湖北省の農村部に100%出資の村鎮銀行を立ち上げ,翌年の2008年に重慶市大足と福建省永安市に村鎮銀行2行を 開業させた。また
HSBC
は,今後,全中国に1000社を展開していくというスローガンを出 している。このほか,スタンダードチャータード銀行は内モンゴル自治区フフホト市ホリン ゴル(和林格爾)県に,香港の東亜銀行は,同行初の中国農村部向け金融機関となる陝西省 富平東亜村に,それぞれ村鎮銀行1行を設立した。また,2010年10月湖北省に中国銀行とシンガポール国営投資会社のテマセク・ホールディ ングが合弁の村鎮銀行である「中銀富登村鎮銀行」を設立した。同行は続けて2社目も同省 で開設する予定であり,また今後,中国農村部で400社という展開プランを宣言した。
3.3.2 外資系HSBCの中国村鎮銀行への参入及びその問題点
HCBC
の中国初の村鎮銀行は,湖北随州曾都県に,2007年12月100%独資で設立した。立 地する曾都県は,人口80万,香港向けの椎茸・松茸など農産品の輸出が多い。そのために,農家の生産用や中小業者の小規模経営用などに関連する金融,特に融資市場が大変大きいた めである。
2009年6月まで,
HCBC
は従来の資本金1000万元から4000万元に増資させ,営業拠点2 つ,職員計46人を持つ。また,同時に預金残高が9937万,貸付残高が5774万(うち農家向け が21%の1190万,農業関連企業向けが39%の2224万,非農業関連企業向けが40%の2360万)があり,不良債権率が0である。
金利については,6ヶ月〜1年間は7.14%のみであり,現地の農業信用社の10.04%より も低い。
現在までに開発した貸付商品は,在庫担保,株式担保,車所有権担保,農協社員連帯担保,
支出超過貸付,「企業+農家」貸付などがある。
ところが,設立して以来,村鎮銀行
HSBC
はさまざまな問題に直面している。6 農業事業に関わる有力国有企業又は国有商業銀行は慎重に対応しているようである。
7 いろんな原因で日系銀行業界にはまだ慎重に見ているようである。この件について,筆者は2006年12月か ら日本の大手銀行の関係者と話しているが,いずれに消極的な考え方を見せてくれた。
まず,小規模経営のため,規模の経済性になっていない。2009年1〜6月,営業支出の 376.55万元に対して,営業収益が131.25万元にとどまり,赤字が245.3万元。営業支出のう ち,人件費がとても高く,43.8%の165万元を占める。規模の経営になるためには,全国範 囲に村鎮銀行の設立展開が必要である。
また,村鎮銀行
HSBC
自身の資金力がまだ弱い。資本金が1000万元から4000万元までに 増資したが,同じ顧客への貸付が5%以内に制限されるため,4000万元でも最大200万の貸付 しか提供できない。この問題を解決方法としては,やはり引き続き,更なる増資の拡大であ ろう。さらに,業務展開に関わるインフラ整備の不足や,業務範囲・商品品目の制限が多いなど の問題がたくさんあるため,いずれこれらの問題を解決するまでに,時間・カネなどを必要 とするものと思われる。
4.農村部のマイクロファイナンスと『専業合作社法』実施以来の新たな融資 パターン
4.1 中国農村部におけるマイクロファイナンスの現状
中国農村部におけるマイクロファイナンス(小額融資又は小額貸付とも言う)の実態を明 らかにすれば,まず,農村部融資の需給関係から把握する必要がある。図4‑1は,従来の銀 行融資も含む農村向け小額融資,民間向け小額融資,貧困向け小額融資という農村部の融資 商品に関わる供給者側(金融組織・ノンバンク)と需要者側(農家・生産者・企業)との需 給関係から見たマイクロファイナンスの位置づけである。
現在,中国農村部では,主に次の4種類のマイクロファイナスがまとめられる。
1)農村信用社が発行した農家小額信用貸付と農家連帯担保貸付。これらは現在までに依 然として中国農村部マイクロファイナンスの最も重要な構成部分である。
2)村鎮銀行,小額貸付会社(ノンバンク),農村互助社など,最近誕生した新たな農村 金融組織が展開しているものである。
3)財政から一部利息補助による貧困農家向けの特別政策貸付である。
4)郵便貯蓄銀行が発行する預金担保による貸付業務である。
日本の農家の場合では,希望融資額どおりに至らないかもしれないが,中国では,マイク ロファイナンスを希望してもまったく融資できないかもしれないということが現実にたくさ ん存在し,特に未発達の内陸農村部にある(表4‑1参考)。
近年,中国は農村部におけるマイクロファイナンスの展開を推進させており,関連政策の 調整や新しい領域の開拓などを強化している。顧客層も従来の農家生活・生産から農村部の 小規模企業の経営までに拡大させて,また同時に貸付額に関する限度も従来低かった水準か ら,現在の普通一件あたり平均3〜5万元,発達地域であれば一件平均10〜30万元のレベル
図4‑1 農村融資商品の需給関係から見たマイクロファイナンスの位置づけ
注:小額融資はマイクロファイナンスのことである。
出所:朱乾宇(2010),143ページ
表4‑1 2007年末まで中国農村マイクロファイナンスの実態(CBRCより)
全国農家数(億戸) 2.26
融資需要がある農家数(億戸) 1.23
小額融資及び農家連帯担保融資の取得した農家数(万戸) 7819
融資取得した農家数/全国農家数(%) 33
融資取得した農家数/融資需要がある農家数(%) 63.6 出所:朱乾宇(2010)
までにアップさせた。そのほか,1)新たな貸付種類や方法の創新,例えば農村信用社の貸 付と銀行クレジットカードの一体化など,2)貸付期間の柔軟性対応,3)手続きの簡素化・
承認時間の短縮化,4)財政支持,特に農村信用社に向け,5)農家信用のインフラ整備な ど,さまざまの方面で力を入れている。
4.2 『専業合作社法』実施に伴う新たな融資パターンの誕生
4.2.1 「保険+専業合作社・協会+農家」という新たな融資パターン 2007年7月1日,『中国農民専業合作社法』が実施開始した。
中国政府は,『専業合作社法』を実施する最大の目的として,少数且つ小規模の農家たち が自らの共同体である専業合作社(以下,合作社)を立ち上げることを通じて,従来守れな い利益を一部確保できるようにすることである。ある意味で,合作社は有力企業との対抗組 織とも言える。
ところが,中国農村部での合作社には,日本の農業協同組合と違う。その最大の弱みは,
融資の機能がなく,企業ではないことである。
『中国農民専業合作社法』が公布され,農家融資の困難を解消するために,中国一部の農 村地域に,「企業+農家」,「企業+協会+農家」という融資パターンが出来た。即ち,有力 企業の下に展開されて,又は一部農業専業協会がリードされている農業産業化組織などを生 かす総合的な金融サービスの創新である。この金融サービスの創新は,特に信用担保の面で 大きな役割を果たしている。
また,『中国農民専業合作社法』実施以来,農家による合作社の役割を生かして,「政策保 険+専業合作社・協会+農家」という農家向けの新たな融資パターンが誕生した。即ち,政 策的な保険の支援を受けて,専業協会・合作社をベースにして,農家に総合的な金融サービ スを提供することである。
4.2.2 まもなくできそう1つパターンの将来像
中国の合作社は日本の農業協同組合と違い,融資の機能が持たされていない。ところが,
前述に紹介したように,近年農村部に推進されている資金互助社は,ミニバンクに類似して,
融資以外,預金などの金融機能もあるため,まさに合作社のその欠点を補充する新しい農家 間での共同金融組織と考えられる。
筆者が最近5〜6年で農村部に対する現場調査の経験から考えれば,まもなくもう1つの 融資パターンが出てくるのではないかと個人的な予測をしている。
その新しいパターンは,「有力企業+専業合作社・協会+農家+村鎮銀行・資金互助社+政 策保険」である。即ち,大規模現代化の生産・物流の下における金融資本と産業資本(農業)
の連携の新しいパターンである。
しかしながら,このパターンが出来たら,むしろ大変な問題になるかもしれない。即ち,
それは,中国の農業問題の解決方法ではなく,むしろいろんな社会問題,貧富格差,従来農 村社会の崩壊をもっと激化させるかもしれない。
一体,都市化・工業化に進行中にある中国農村部のこれらの問題を解決する方法が本当に ないのかについては,中国の地方政府の役割をどうやって生かせるかに係わると考えている。
新中国が設立して以来60年間, 小平の改革開放政策が実施して以来30年間,中国の農村 部にはいろんな変化が起こっているが,小規模な耕作という農業生産方式が変わっていない。
これからの30年間に,仮に中国経済が米国を追い越しても,この小規模経営の生産方式は変 わらないであろう。現在まだ一部の中国人が「大規模」という考え方を常に新農村建設の際
に持ち出しているが,国の実情をあまりにも知らないためである。
また,農業生産・経営の一般的な特徴は,1)自然条件に制限されること,2)農産品価 格変動が大きいこと,3)農業投資期限が長いことなどである。これらの特徴を考えれば,
農村部に対する融資のリスクが割合大きい。よって,通常,農家は一般の企業より融資を受 けることが難しい。そこで,政府政策のサポートの役割が大変重要である。
近年中国農村部において,「三農」問題を解決するために,合作社や資金互助社・村鎮銀 行などさまざまな農家共同体や新たな金融組織などを次々誕生させた。しかし,実際現場に 行けば,政策の方針とずれることがしばしばあることが分かった。「小規模」生産・経営と いう永遠な中国農村部の実態に基づいた金融政策でなければ,中国社会を支える基礎である 農村が崩壊にしか繋がらないと考えられる。
参 考 文 献
岡嵜久実子「中国農村金融制度改革の現状と課題:銀行業金融機関の再生と三農政策に呼応した取組みの中間 評価」,『金融研究』2010.4
王曙光など『農村金融機構管理』中国金融出版社2009.6 許清正『中国農村供給パターン研究』南開大学博士学位論文2009 謝 『農村金融:体制突破と体制改進』華中農業大学博士学位論文2009 周立『中国農村金融:市場体系と実践調査』中国農業科学技術出版社2010.5 朱乾宇『中国農戸小額融資影響研究』中国人民出版2010.4
中国人民銀行農村金融サービス組「中国農村金融サービス報告」2008.9
中国人民銀行随州市中心支行課題組「村鎮銀行経営困境与可持続発展―我が国初の外資村鎮銀行に関する調査
―」,『武漢金融』2009年第9期
中国人民銀行など『中国金融年鑑2008』中国金融年鑑編輯部2008.12 中国統計局編『中国統計年鑑2010』中国統計出版社2011.9
中国農村金融協会『中国農村金融改革30年』中国金融出版社2008.12
『中国農民専業合作社法』2007.7.1
張暁燕『中国農村民間金融市場運営機制研究』西北農林科教大学博士学位論文2008
CBRC「中国銀行監督管理委員会2009年報」2010 中国銀行監督管理委員会ホームページwww.cbrc.gov.cn CBRC「農村合作金融機構リスク評価と警報指標システム(試行)」2004