所得税と法人税の統合
113所得税と法人税の統合
小林威
1.法人税の負担
法人税負担を考えるばあいに,この租税が法人利潤に帰着するのか,ある いは,前転して消費者の負担に帰するのか,または賃金稼得者に転嫁するの かを区別しなければならない。それによって最終負担の階層が異なってくる からである。
法人税の転嫁について観察すると,法人税が必ずしも常に株主の負担にな るとは限らない。理論分析においても,企業の目標を利潤極大よりも売上げ 極大とするときは,前転の可能性が大きい。さらに,寡占の存在,管理価格 の存在を考慮すると,法人税が転嫁して消費者価格を上昇する傾向が多分に ある。実証研究でも法人税の転嫁を決定づける研究は未だに現われていない が,税率と課税後の収益率および課税前の利潤率との関係を重視すれば,
100パーセント以上の前転が支持される。これに対して国民所得のうち法人 部門で生ずる課税前の利潤のシェアと法人税率との関係を重視すれば,法人 税は前転もしなければ後転もしないで,株主の負担に帰する。このような実 証研究は,1927年から71年まで税率の変化とこれらの諸関係についてアメリ
カを舞台として行なわれた。要するに実証研究でも法人税が転嫁するか否か
(1)
について決定的証拠が見出だされていない。しかし,最近では法人税の一部 が前転する可能性は多くの学者によって支持されている。
こうなると,法人税の真の負担者を決定するには,これらの要因を含めて 考えなければならないが,ここでは租税の帰着問題を一切無視して,法人税
は株主により負担されると仮定して議論をすすめる。
法人を営利目的のための個人の集合であると解釈するとき,法人所得から
法人税を支払い,分配された配当所得から所得税を支払うならば二重課税と
なり,株主の税負担が霊くなる
oいま乙こに限界所得税率が
30パーセントの株主
Aを想定しよう
o法人税率 を
40パーセントとして,課税後の利潤がすべて配当されると仮定する
oある 企業の課税前利益のうち,
100万円が
Aの持株比率分だとする。このばあい,
Aの 配 当 金 は60
万円となり,かれはこの追加収入に対して
18万円の所得税 を支払わなければならない。企業で生じた
100万円の所得に対して,
Aは法人 税と所得税とを合わせて58 パーセントの租税を支払う。同じ限界税率に属 する B~乙 100万円の勤労所得が増加したとする。 B はこの追加額に対して,
30万円の所得税を支払えばよいので,
30パーセントの負担率となる
D所得の源 泉が異なるために,
Aは58パーセント,
Bは30パーセントというように,租 税の負担率が異なってくる
o法人と個人の二重課税制度は,個人の立場から みて,重課となりがちである。
法人擬制説の立場から発せられる二重課税制度の批判には,つぎのような ものがある
o( 1 ) 所得の源泉i とより負担率が異なることは,水平々等を達成し難い。
(2)
配当所得とそれ以外の所得との間の税負担の均衡が保たれない。
(3)法 人税率が比例税率であり,所得税率が累進税率であることから,株主間で租税 負担率が逆進となる
o (4)社内留保は株主の所得とならなし
1から,高額所得 者は利潤を配当するよりも内部留保することを望み,キャピタノレ・ゲインの 形でとれを回収する
o (5)株式による資金調達を,社債や借入金による資金 調達よりも重課する
D配当金には課税されるが,利子文払は法人の経費とみ
なされて課税されないからである
o以上の理由から法人税の負担を公平に配分するような租税制度が要求され る 。
註(1)
法人税転稼の実証研究では,
1963年
ζiクルジザニヤクとマスグレイヴが共同し
ておこなった労作が話題をよんだ。かれらは計呈経済学を利用して,
1935‑42年
と ,
1948‑59年の両期間にわたる法人税の転嫁を推定した
(M.Krzyzaniak and R. A. Musgrave,The Shifting of the Corporate Income Ta,乞 Ba1 t
i‑ more,
1963)。それによると,拡二人税は最高で
134パーセントも転稼したことが
所得税と法人税の統合 115 明らかにされた。しかしこの実証研究には多くの批判が寄せられて,ゴードンは 同じ手法を用いて,ただ変数を変えただけで法人税が転嫁しないとの結論に到達 した (R.
J .
Gordon,The Incidence of the Corporation Income Tax in U. S. Manufacturing, 1925‑62", American Economi・cReview, ¥io1 .
57, Sept. 1967, PP. 731‑58.)またホーjレはコップ=ダグラス函数を用いて控 え目ではあるが,法人税は転嫁しないと結論した(C.Ha l1, Jr., Direct Shift‑ ing of the Corporate Income Tax,
1919‑59",
Proceedings of American Economic Association for 1963, PP. 258‑71.)。カナダではクjレジザニヤク たちのモデルを使用して100パーセント以上の法人税転嫁が報告されており,ゴ ードンと似た手法では70パーセントの転嫁が推計されている(R.J. Levesque, The Shifting of the Cortorate Income Tax in the Short Run, Studies of the Royal Commissionon, NO.18,Ottawa, 1965.‑‑B.
Spencer,The Shifting of The Corporate Income Tax in Canada", Canadian Journal of Economics, Vo1 .
2, Feb. 1969,pp. 21‑34.)。クノレジザ、ニヤクたちの研究に対する批判と再批判は
M.
Krzyzaniak ed. , E丈fectsof Cortoration Income Ta,乞 Detroit, 1966.にまとめられている。な お,邦語文献としてほ, rr租税財政論集第2渠』昭和
4S年所哉の山本栄一「法人 税の短期転稼をめぐって」がある。2. 株主問における租税負担の配分
法人税は一般に累進要素があると考えられているo第
1
表l
乙示されている ように,株主の所得が高くなれば,所得のうちで配当の占めるシェアが大きくなるからである。
この表はアメリカの所得税申告書をもとにして,調整粗所得 (AG1)
別
に配当金収入を割当てて作成されている。第2行はA GI!と占める配当所得 の平均割合であるo第3行は異なるAGIでの配当額を示しているo第4行 は税引利潤のうち3分のlが配当され, 3分 の2が内部留保にまわされると仮定 して,株主階層毎の内部留保額を示している。第5行の税額は課税前の利潤に48パーセントの法人税率を乗じて算出されるoすなわち税額をTとすれば,
T = O. 48 (3 + 4 + 5 )である口
trJ 1
表
納 税 者
A B C D E F
. A G 1
( 調 所 整 組 得 )
$5,
000 $10,
000 $30,
000 $ 75,
000 $150,
000 $ 750,
000 2配
A G当
I金 に の 占 比 め 率 る
1.5% 1.0;;ぢ 5.0% 8.0% 9.5% 10.0%3.
配 当 金
8 75 $ 100 $ 1,
500 $ 6,
000 $ 14,
600 $ 75,
0004.
留 保 額
$ 150 $ 200 $ 3,
000 $ 12,
000 $ 29,
300 $ 150,
000 5.法 人 税 額
$ 205 $ 276 $ 4,
140 $ 16,
560 $ 40,
434 $ 207,
000 6.調整した
AGI $5,
355 $10,
476 $37,
140 $103,
560 $219,
734 $1,
107,
000 7.平 均 税 率
3.8;;ぢ 2.6% 11.1% 16.096 18.4% 18.7%出所:
R .
A. Musgrave and P. B. Musgrave, Public Finance in Theory and Prartice, New
York,
1973,
P. 275.第
6行の調整された
AGIは
(1+4+5)であり,調整粗所得
l乙内部留保 と法人税額を加えたものである
o第
7行は調整した
A G1I 乙対する法人税率 を示したもので,最低所得階層の Aで逆進となるが, B以後は累進となる
oAが逆進となるのは,乙の階層には退職生活者が多いと考えられるので,比 較的株式保有率が高いからかも知れない。
第
1表は
1969年のアメリカの所得税申告をもとにして作成されたものであ る
o所得が大となるに従って最低所得階層を除いては,株式保有率が高くな るから,法人利潤がすべて株主に分配されたと仮定しても第
7行が示すよう に,株主当りの法人税率には累進効果がみられる。
しかし第
7行をみて,株主階層別の法人税が累進的であるとは断定できな い。現在どこの国でも配当所得には法人税と所得税の両方が課せられるが,
内部留保に対しては法人税だけが課せられているからである
oその結果,株
主
1人当りの内部留保が大きければ所得税がそれだけ少くてすむからであ
る 。
所得税と法人税の統合
1173. 所得税と注人税との統合
法人が株主と別個の存在ではなくして,個人の営利機関であると解釈する ならば,当然,法人の利益はすべて個人に帰属するものであると考えられよ う
Oいま 7 tを法人税課税前の株式持分に按分した利益, dを課税後の配当 率 ,
tpを所得税率
teを法人税率とする。配当所得に対して法人税と所得 税の両者が課せられれば,法人と個人の両部門で支払う税額の合計
T..は ,
T.. = (te
十
tpd)πとなる。
乙れに対して,法人税として一旦支払った分は所得課税の際に控除される べきであるとするならば,その税額
TJは ,
TJ =te
7 t
+tp d (1 ‑tr)7 t となり,差額は
T..‑TJ=tpdteπ
である。所得税率,配当率,法人税率,利潤のすべてが正であるから,明ら かに配当所得があるばあいには,通常所得よりも重課されることがわかる
oしかし,この結論を出すのは早計である
o法人所得が持株 l ζ 応じて株主の 個人所得に割当てられるべきであるならば,株主の所得は
d7tではなくて,
zだからであるO
法人税が存在しないで,内部留保がおこなわれないならば,すべての法人 所得は株主に帰する。そうなれば,法人所得に対しても個人所得税だけが課 せられることになる
D法人税と所得税との統合は,この観点からなされる。
統合税額と, T"とを比較すると,
Te=T..‑tp
7 t
=(tp d +teーし
) 7 t
となる
oTeをマスグレイヴ夫妻に倣って超過税とよんでおこう
(Musgrave and Musgrave,
op. cit. p.280(n).)。超過税がプラスか, マイナスになるかの関係は, t
P<‑(l‑d)と 一 一 一
̲!o̲一一ーとの大
きさによって決定される。しを4
0パーセントとして,
dを
0,0
.3,
0.5と
するならば, tp はそれぞれ40パーセント, 57パーセント, 80パーセントの 水準で Teが負となるO 換言すれば,所得税の限界税率がこの水準を超える
ところでは,統合により更に余分の税額が課せられることになるo
この関係は,第2表に示されている。納税者の所得階層は第1表と同じで あり,正の超過税は,現行制度のもとでの過納額をあらわすD
第2表は, 100ドノレの法人所得を所得階層別株主に按分した場合の現行税 額と統合税額を比較して超過税を計算したものであるD この表では,法人税 引後所得を30パーセント配当したばあい,無配のばあい,全額配当したばあ いを想定しているO 第 2表はマスグレイヴ夫妻の『前掲書』に従っている が,明らかに計算のミスと思われる数字を訂正しておいた。
第
2表 納 税 者
A By u
c ‑ 2
nd
D
一 務
円 ︒ E
F
一脳
門J4
所 得 税 率 149o 19% 64%
30
.I"f 一セント ~iè 当
法 人 税 額 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 自
己 当
金
$ 15.60 $ 15.60 $ 15.60 $ 15.60 $ 15.60 $ 15.60 所 得 説 額 $ 2.20 $ 3.00 $ 5.00 $ 8.60 $ 10.00 $ 10.90 租 税 合 計 額 $ 50.20 $ 51 .
00 $~.oo
$~.OO
$ a.oo $ a.oo統 合 税 額 $ 14.00 $ 19.00 $ 32. 00 $ 55. 00 $ 64. 00 $ 70. 00 超 過 税 $ 36.20 $ 32.00 $ 2
1 .
00 $1 .
60 $ ‑6.00 $ ‑11.10II 0パ ー セ ン ト 配 当
租 税 合 計 額 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 $ 48.00 超 過 税 $34. 00 $ 29. 00 $ 16. 00 $ ‑7. 00 $ ‑16. 00 $ ‑22. 00
m
100パ ー セ ン ト 配 当租 税 合 計 額 $55.30 $ 57.90 $ 60.60 $ 76.60 $ 8
1 .
30 $ 84.40 超 過 税 $41 .
30 $ 38.90 $ 32.60 $ 21 .
60 $ 17.30 S 14.40出所:Musgrave and Musgrave,。ρ.cit., pp. 278‑279, p281.
所得税と法人税の統合 119‑ この表からわかるように,限界税率の低い所得階層では,何等かの方法を 講じない限り二重課税により過納になっていること,および完全な統合以外 では法人税の逆進を阻止できないことに留意すべきであろう。
4. 各種統合法の比較
所得税と法人税との二重課税を除去する統合法は,負担の均衡に主眼をお いて考えられている。乙の問題解決案として提案されたものは,つぎのよう である(井藤半弥『租税論』昭和32年所載「法人所得の二重課税J)。
(1) 法人所得税の全廃 (2) 強制配当法
( 3 )
法人利益法分法(紙上配当法,組合課税法) (4) 譲渡利益課税法(5) 棚卸法
(6) 支払配当控除法
( 7 )
源泉徴収法 (8) 受取配当税控除法 (9) 受取配当額控除法これらのうち,完全な統合法は (1)および(2)と(3)であり,考え方によっては (4) と(5)も乙れに近い。
(2)の強制配当法は,法人利潤の全額を株主に配当するように強制して,個 人の局面で他の種類の所得と総合課税する方法である。しかし,課税のため に留保を認めないことには反論がつよいし,このような政策目的を達成する には,留保分に対して懲罰的な高い税率を課さなければ実効がないから,実 際的な提案とはいえない。
(3)の法人利益按分法は,法人税を全廃して,法人所得は配当されたものも 留保されたものも株主の保有株式数に投分して,個人の段階で所得課税する 方法である。アメリカでは最初の述邦所得税である1861年の所得税でこの方 法が採用された。
法人税を廃止するか,否かは,実施上の方法論に過ぎないが,この方式は
二重課税を除去する完全な方法である
D本稿第
3節の説論も,法人利益按分 法を背景においている。租税配分が個人の負担能力を基準として決定される べきであるならば,この方法は最も理想的なものであり,法人税による逆進 性も防止できるからである。
この方法は窮局において法人税率を株主の所得に応じた所得税率に均しく することである。カナダのカーター委員会は,乙の点 l 乙着服してま乙とに巧 妙な方法を案出した。それは,個人所得の最高税率を
50パーセントにして,
法人税率も同率にする方法である。こうすれば,
tpくしの所得階層にある株 主は,過納分を還付されるからである
O同委員会では,このように法人段階 で所得税を源泉徴収する方法を提案したが,大企業の内部留保分について は,乙れを株主の所得に按分するか否かは企業の自由選択とした
(Report0/ the Royal Commission on Taxation
,
Vol .
4,
Ottawa,
1966,
pp. 3‑98.
)。内部留保を個人所得にグロス・アップするのが任意であるばあいに は完全統合がお乙なわれるときも,然らざるばあいも生じる。かように原理 上一歩後退せざるを得なかったのは,法人利益法分法が実施上多くの問題を 含んでいるからであろう
o完全統合を実施する問題点は,法人側と個人株主側の両者にある
o企業を 経営する立場からみれば,利益の一部を社内に留保して自己資本を増加する ことが必要であろう。しかしこの課税法を実施すると,社内留保を少なくさ せて,外部資本への依存率を高くさせるおそれがある。わが国で支払配当軽 課を実施しているのは,内部留保を重課する目的よりも,社債あるいは借入 調達と,株式調達との聞の税制不均衡による点を勘案したものである
o借入 と株式との資本調達の関係については,近刊が予定されている大川政三編
『財政学』の第
3章「租税論」で論じであるから,とこでは省く
o株主側からみれば,法人所得のうち社内保留された分を,他の個人所得と
同一視して課税することは支払困難を惹起しがちである
o留保所得は株主に
実現していない所得であり,株主が自由に処分できないからである
Oこの
納税対策として,グローヴズは株主の税額に応じて法人が現金支払いをした
り,株式配当をおこなうことを研究している
(H.M. Groves,
Integration所得税と法人税の統合
121 of Corporate and Personal Taxes, "
Production,
Jobs and Taxes,
New York,
1944,
pp.37‑‑38.)。しかし,グローヴズの指摘するように株主の 要求,特に小株主の要求は,法人の経営政策で受けいれられることは余り期 待できない ( i
bid.)。また,大株主は会社の利益を自分の都合のよいように 調整して,彼等の所得税負担の軽減をはかる乙とができるので,租税負担の 均衡が達成されるか否かは明らかでない。それにもかかわらず,この方法の 長所は,二重課税に対する「最も論理的,直接的なそして妥協を許さない解 決法 ( i
bid.)Jである
o(4)
の譲渡利益課税法は,法人税を廃止して,配当金を個人の段階で所得課 税し,留保分に対しては株式の譲渡により実現されたキャピタノレ・ゲインを 普通の所得税率で課税する方法である。
キャピタノレ・ゲイン課税を有効なものとするには,つぎの方法が必要とな ろう。すなわち,上限税率と特例条項を廃止すること,キャピタノレ・ロス控 除制限をなくすことおよび構造的実理を設定すること。これらである
oキャピタノレ・ゲイン税をもって内部留保に対する課税に代用すると,納 税延期による留保所得を優遇することになる。この方法の提案者であるサイ モンズも,納税延期による無利息の税金を貸すことは仕方ないとあきらめて いるようである。乙の提案はサイモンズからグローヴズへの覚え書として,
グローヴズの『前掲吉 j
40ページに紹介されている。
内部留保をキャピタノレ・ゲイン課税の形で徴収することは,完全な統合法 であるといえない。その理由は,株価が内部留保を反映して形成されるならば とも角,株価は乙のほかに企業の内容や将来の予想収益,配当率,市場の環 境,その株式に対する人気など程々の要因により形成されているからであ る
o確かに内部留保は株価形成の大きな要因であるが
1株当り
20円の内部 留保があるから,株価が
20円高くなるとは限らない。多くのばあい,予想収 益の向上を期待して更に株価が高い位置にあるであろう
oもし,キャピタノレ
・ゲインに非課税または軽減課税の措置が認められていれば,大株主は法人
利益を内部留保して,後日それをキャピタノレ・ゲインの形で回収するととを
望み,留保を刺戟することになる
oそれゆえ,乙の方法が採用されるには,
同時に厳格なキャピタノレ・ゲイン課税が実施されなければならない。
(5)
の棚卸法は,株式の発生ゲインを所得とみなして課税する方法である。
乙の案は,
Committee on Taxation of the Twentieth Century Fund,
Inc.でシャウプを委員長としブラウおよびニューカマーを副委員長とする研究会 の 報 告 書 で あ る
Facingthe Tax Problem,
New York 1937.の
476‑484ページに提案された。
この方法が完全統合を達成しない理由は,キャピタル・ゲイン課税方式の ばあいと同じである
oこの方法の特性は納税延期による税額の利子相当額を 節約できないこと,および,株式のキャピタル・ゲインとロスの課税問題を
も解決する点である
o反対にこの方法の短所は,毎年個人所有の株式を評価する乙と,個人段階 に実現していないキャピタノレ・ゲインに課税することおよび納税のために株 式を処分しなければならないこと等である
D毎年評価の;頃を避けながら,しかも原理的に同じ方法を,実現した株式のキ ャピタル・ゲインに適用する方法として,ヴィクリーの提唱する累積平均法 がある。乙れは,ある一定時期または納税者の死亡時に評価益が実現したとみ なして課税する方式である。乙のばあい,過去の所得額と既納税額に利子を 加算して計算して延納による利益を阻止する
(W. Vickrey,
Agenda for Progressive Taxation,
New York,
1947,
pp. 172‑195) 0乙れは非常に 織密なものであるが,実施に困難な面が多い。
以上の方法に対して,
(6)以下のものは二重課税による負担の均衡をはかる ことができない。完全統合という目的からは前四者よりも劣るが,それだけ に実施の便宜という特性を有している
O(6)
の支払配当控除法は,法人所得のうち留保分については法人税を課し,配 当分については所得税を課す方法である。この方法は配当とほかの所得との 均衡は保たれるが,社内留保と配当との問の負担の均衡が保たれない。
この方法で社内留保と配当との聞の負担の均衡を維持するには,留保分が
配当されたときに所得税を課して既納の法人税と調整すればよい。これで完
全な統合が達成される。しかし上場している株式の株主のばあい,留保当時の
所得税と法人税の統合
123株主とそれを分配したときの株主とが同一人でないばあいがしばしばある
oこのような際には税務行政が極めて複雑になるので,完全な統合がお乙なわ れるか否かについて,大きな疑義が存する
o(7)
の源泉徴収法は,第
3節の
Tjと全く同じ課税法である
oそれゆえ,社 内留保が多ければ個人段階での実質的課税軽減となる
oこの方法でも留保分 が後日配当されたときの措置が問題となるであろう
o(8)
の受取配当税控除法は,法人所得に対して留保,配当の区別なく法人税 を課する。配当金には所得税がかけられるけれども,所得税から配当額の一定 割合を控除する方法である。カナダ政府はカーター委員会の提案した「天才 的方法
J (G. F. Break,
Integration of Corporate and Personal Taxes on Income, "
National Tax Journal,
Vo1. 22,
March,
1969,
p. 39.)を 採用するのに醇 J~ して 1971年にこの方式を導入した。同国では,受取配当額 の約
3分の
lを所得税控除している
D日本でもこの方法をとっているので,受取配当税控除法については,次節 で批判する
o(9)
の受取配当額控除法は,法人段階での課税法は
(8)と同じであるが,受取 配当額の一部を所得に算入しない方法である
o(8)は税額控除だが,
(9)は所得 控除である点が異なる。この方法は二重課税問題を解決しないばかりか,配 当所得の低額所得者への重課,高額所得者への転課という逆進性がさらに強
くなる
o5. 現行の日本の課税様式
わが国では二重課税の一部を緩和する方法として,つぎの方式が現在お乙 なわれている。法人所得のうち配当分に対しては,
30パーセントの課税,留 保分には細かい規定を除けば
40パーセントが課税される。配当が個人株主に 分配されると,つぎの方法で所得税が課せられる
O年間
1企業からの受取配当金が
5万円以下の小株主は
15パーセントの源泉
徴収だけで所得申告をする必要がない。これ以上の配当金のある株主に対し
ては,株主のほかの所得が
1,
000万円以下と
1,
000万円以上の
2つに分けて課
税法が異る
o,1000万円以下の株主は,受取配当額の
10パーセントを所得税 額から控除する。
1,
000万円以上の株主は,受取配当額の
5パーセントを税 額控除する。
わが国の現行方式は,つぎに指摘するように原理上多くの問題を有してい る
oまず留保分と配当分の税率の差である
D配当軽減措置は西ドイツでも採 用されているが,わが国では常に自己資本の充実が叫ばれている
oこの方法 はそれに逆行するものであるといえよう
o配当軽減措置は,借入調達と株式 調達との聞の税法上の取扱いの差異を一部緩和するために設けられているか
もしれないが,それについては乙乙で触れないでおく
oつぎに配当所得を軽課しており,配当の一部を税額控除している点であ る
o乙の方法の欠点として井藤博士はつぎのように指摘された。
Iこの方法 には,手続簡便という長所があるが,前記二方法(支払配当控除法と源泉徴 収法)に比して原理上つぎの欠陥がある
D付配当所得と留保所得と個人の他 の所得という三者間の税率が異なるため,その聞の負担が不均衡となる
o仁
j配当所得についても,所得高の少ないものには比較的霊課,多いものには軽 課となる
o……乙の方法は,組合課税方法などのように,法人税と個人所得 税の重複を完全に廃除し,両税を統合するものではない。単に重複課税にと もなう配当所得の負担の調整,軽減をする作用があるに過ぎない。随ってこ れと同じ目的は,単に法人税率の軽減によっても,ある程度までは達成され る
Dしかも法人税引下の場合には,免税点以下の低額所得者も,それだけ法 人税引配当手取金を増し,この方法に比して負担は軽減されることになる」
(井藤半弥『前掲書
J120‑121ページ)
0わが国の方法は,配当軽課率と所得税額控除との聞に論理的一貫性が存在
しない。
30パーセントの法人課税のために受取配当額の
10パーセントが,な
ぜ税額控除されのか。ほかの所得が
1,
000万円以上の株主の控除率は,なぜ
5パーセントになるのか,これが説明できない。法人税と所得税との統合を目
的としているならば,法人税率と限界所得税率との関係で控除される税額が
決定されなければならない。それゆえ乙の方式は非論理的,間接的にして全
く妥協の産物であり,かつ逆進作用を伴うものであるといえよう
o最後にモ
所得税と法人税の統合
125デノレを設定して逆進性を説明しておく。
乙〉にほかの所得が
1,
000万円以下で限界所得税率が, それぞれ5
0パーセ ント,
30パーセント,
.10パーセントの株主
A,B Cがいるとしよう
oある企 業から年聞この
3人に配分される法人所得が法人税引前の段階で各々
100万 円 ,
40パーセントの法人税を支払った後の段階で
60万円,このうち
3分の
2が社内留保されて,配当額が2
0万円だとする
OA, B
,
Cはそれぞれ2
0万円の配当に対して所得税は,
A (20XO.5)ー (20XO.1) = 8 B (20XO.3)ー (20XO.1) = 4 C (20)
く
0.1)ー
(20XO.1 )
= 0となり, 累進課税が適用される。 しかしながら,
100万円がすべて配当され て,法人税がないと仮定すれば各々の所得税額は,
A
( 1
00XO.5) =50B ( 1
00XO.3) =30 C( 1
00 XO.1) = 10となる
oこれから既納の法人税を控除すると,
A 10
B ‑10 C ‑30