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緒言

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Academic year: 2021

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(1)

長崎大学教育学部自然科学研究報告第24号37‑40 (1972)

ヘキサフルオロダイシロキサンの

回転‑振動スペクトルおよび構造

浜田圭之助・森下浩史

長崎大学教育学部化学教室 (昭和47年10月51日受理)

The Rotation‑Vibration Spectra and Structure of Hexafluorodisiloxane

Keinosuke HAMADA and Hirofumi MORISHITA

Chemical Laboratory, Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki

(Received Oct. 31 ,1972)

57

Abstract

It is a pending question whether Si‑X‑Si type molecules are linear or bent.

Some references support that those molecules are linear and the others, that those are bent.

The present authors synthesized hexafluorodisiloxane (F3SiOSiF3) and obtained the rotation‑vibration spectra of vasSi‑O‑Si of the molecule. The rotation‑vibration spectra are considered in connection with the structure of Si‑X‑Si type molecule.

緒言

Si‑X‑Siタイプの分子は,直線形卜3)か折線形4‑6)か,まだ確定されていない。

著者は,ヘキサフルオロダイシロキサン(F3SiOSiF3)を合成し7),振動スペクトルを測定 した。このスペクトル中の1186cm‑‑と1284cm‑1の1対のバンドを, Si‑X‑Siの構造との関 連においてv,ォSi‑X‑Siの回転‑振動スペクトルとして考察を試みたo C附記参照〕

(2)

58 浜田圭之助・森下浩史

 F3SiOsiF3を合成するために,市販品のC1、SiOSiCl3をSbF3で弗素化した。このとき,

触媒としてSbC1。を用いた。

 F。SiOSIF3の沸点は一25.5。Cで,低温における分別蒸溜と分別凝縮を併用して,分離精製

した7)。

 液相のラマン・スペクトル測定には,試料を肉厚硝子管に封入し,気相のラマン・スペクト ル測定には,室温で,ガラス管内の試料圧を760mmHg程度にしたものを調製した。

 ラマン・スペクトルはAr+あるいはKr+レーザーを使用したレーザー・ラマン分光光度計 で測定した。

 赤外スペクトルはPerkin・Elmer521型のスペクトロメーターを使用した。

 気相の場合,セルの光学物質は塩化銀を用いたので,大体550cm一一以下の領域は測定の範 囲外であった。

結果およぴ考察

 Fig.1に液相のCl3SiOSiC132),および気相のF3SiOSiF3のラマン・スペクトル,ならび に,赤外スペクトルを示している。

 F.SiOSiF.の振動スペクトルは,Fig.1の示すように,F3SiOSiC夏3の455cmdバンドや SiF、の800cm バンドが現われているように思われる。すなわち,不純分として,SiF4や F3SiOSiC13を混入しているおそれがある。しかも,赤外スペクトルの600cm一!以下の領域が 測定不能であったので,本分子の振動スペクトルの帰属は今後の研究に期する。

 しかしながら1186cm−1と1284cm の対をなすバンドが,F3SiOSiF3の赤外スペクトに 現われているが (この中央値は,1255cmdである。)Si−X−siタィフ。の分子はすべて,こ のような対バンドを持ち,一応,低波数バンドを,Si−X−Siの非対称伸縮振動(ンα3Si−0−Si)

と帰属しているが,高波数バンドの帰属は確定されていない。

 たとえば,C13SiOSiC132)では,1104cm申一砂α3Si−0−Si)と1224cm 一,C13SiN(H)SiC133)

では1199cm一1(ンα,Si一:N−Si)と1294cm−i,Me3SiN(H)SiMe33)では1171cm曽1(堀Si−N−Si)

と1251cm一一,F3SiOSiC132)では1146cm一1(ンα8SiOSi)と1200cm 一付近のショルダーバン ドと,いった具合である。

 これら前例にしたがえば,F3SiOSiF3のレ。,SiOSiに1186cm4が帰属できる。

 しかし別の考え方もできる。つまり,1186cm一1と1284cm とを,Si−0−Siの非対称伸縮 振動の回転一振動スペクトルのP枝およびR枝とすることである。

 このP枝,R枝の包結線の間隔は98cm一一であり,次式を利用して,25。Cにおける回転定 数,Bを計算すると5.9cm,一である。

   ∠レp丑=2.5585/百T cm,18)

 そして,Bはまた,次式のように表わされる。

   Bニh/8π21c8)

 h:フ。ランクの定数,6.626×10}27erg・sec  c:光速,2,998×10一。cm/sec

 I:主軸に垂直な軸に関する慣性能率

(3)

    ヘキサフルオロダイシロキサンの回転一振動スペクトルおよび構造      59

       0

  (イ)

      222  156        (P)蘇59

       182      Raman

       (P)5㍑5(P)5・・ A       、    9       ヨヨ   ず

a蹴aly8.Pi且( )    (p)67・慶2    逃ノ1

      ずへ び  も ダ

     (⊥》      !〉、1

一一一}一 一一一一一一一一齢一。一一臼一甲一一,幽一。一一一一軸9一一軸鞠一一一馳岬 ρ幅馬_騨一_一_一_一       し

惣oo lloo looo goo 800 700 600 500

惣2匙

1104

958 769

685

617 轟65

0  30  20

11

522

IR/CCl耳

ce ll wlndo㌧KRS−5

 (ロ)

Ra鵬ロ(〃)

(P)947

 (P)6う6   (P)502   ()275  151

(p》8,,( 6(P)460 ・5≧濁1,5

      (P)5 1500 1200 1100 ユ000 90 0  70

128毎

第1図

 1098   尊5      716       773       909

      665 1186 10皿     8ラ5

     85

(イ)q3SiOSiCl3(液)(・)

612

6聴

500 50  20   10

m

coUwindo鷲ノAgC1

F3SiOSiF3(気)のスペクトル

12解  126『

1294

   1円2,

97

  μ86

コ       ゆ

lL畠云競轍,

1 \,

 第2図(a)1186cm『一および1284cm鱒一バンド  (b)F3SiOSiF3のボンドの長さおよび原子価角

 先に求めた回転定数B=5.9cm 一を上式に代入して,慣性能率を求めたところ,次の値を 得た。   1。bs=4.8×10『4。g・cm2

 一方,図2に示すように,si−O=1.65A,si−F=1.55A,∠FSiF=109◎28 (正四面体 角)として,1=Σm両2に基づき計算して得た慣性能率は,次の値となった。

(4)

40 浜田圭之助・森下浩史

    1σαε=570×10−40g・cm2 両者の値は,全く違っている。

 しかしながら,P枝とR枝の回転構造の組成の差の平均は,12.5cm 一および15cm一1であ る。これら回転構造成分の間隔は2Bに等しい。したがって,2B=12.8cm『一から得られる Bの値はB編6.4cm一一であって,先にP枝とR枝の間隔から得られたものと大体一致する。

 今のところ1186cm一一と1284cm一1の両者を,ンα,Si−0−Siの回転一振動スペクトルのP枝 およびR枝と断定できる確証はないが,もし,これらが,P,R枝であるとしたら,回転一振 動スペクトルのP枝とR枝の出現は,Si−0−Si軸に平行なバンドに他ならない。 したがっ て,Si−0−Siが直線である有力な証拠となりうる。

 Fig.1のスペクトルは,ただ,振動スペクトルのみを得る目的のものであったので,今後,

詳細な回転一振動スペクトルを測定して研究する積りである。

1)R.C.Lord,D.W.Robinson and W.C.Schumb,∫肋θ7。Chθ肱S召o.,78,1527(1956)

2)E.A.Robinson and K.Hamada,S づ.β瀦」乙勲6。E伽o.ノVα8』σ3罐づU痂o.,23,65(1972)

5)E.A.Robinson and K.Hamada,        ibid,      23,69(1972)

4)」.E.Griffiths and D.F.Sturman,Sρ80≠70σh加 o召・40如,25A,1415(1969)

5)H.B廿rger and K.B廿rczyk,      ibid,       25A,1891(1969)

6〉L.R.Aronson,R.C.Lord and D。W。Robinson,∫Ch蹴.Phys.,55,1004(1960)Some of  them describe in the erratum(∫Ch伽Phys.,35,2245(1961))that some bands which  were evidences for bent Si−0のSi in the present Ref.6 are spurious.

7)H.S.Booth and R.A.Osten,∫/1卿ε角Chθ〃2.Soo。,67,1092(1945)

8)G.M.Barrow, lntroduction to Molecular Spectroscopy McGrow Hi11,N。Yり1962,P。85

〔附記〕その後,気体状態でCl3SiOSiCI3の赤外スペクトルを測定したところ,ンαsSi−O−Siの回転スペ クトルとしてP枝,R枝を得た。また,このP−R間隔の観測値はSi−o−Si直線としての計算値とよく一致 した。これよりF3SiOSiF3のスペクトルを類推するに,1186cm一一バンドがレα8Si−0−SiのP枝で,このシ ョルダーとして現われているバンド(1155cm一1)がR枝であろう。このように考えると,本文中で一致し なかったP−R間隔の観測値と計算値もよく一致する。

 以上の事実からF3SiOSiF3は直線分子であることは略々確実であるが,更に今後の研究に侯つものであ

る。

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