長崎大学学芸学部自然科学研究報告第16号99‑107 (1964)
帯電防止剤の効果に関する研究(第3報)
(昭昭39年10月7日受理)
石崎ダイ
Studies on the Effect of Antistatic Agent (Part 3)
Dai ISHIZAKI
Abstract
1) Cloths of lOO% Vonnel and of lOO% Tetoron treated with antistatic agent increased their stain‑proof property and their detergency. The treatment was quite effective.
2) The effect of the treatment on the stuff blended with synthetic fibers is
not so strong as on 100% Tetoron or Vonnel but its staining tendency turnsweaker and detergency increases.
3) The rate of blending synthetic fibers has a close relation to its effect.
When a testing cloth includes hygroscopic fiber more than 50%, antistatic
agent treatment brings a counter result. Accordingly, when a testing cloth includes it more than 65%, it is proper to use antistatic agency.4) Some of testing cloths have a tendency to choose their suitable antistatic agents. Animonic surface active agent is proper to Vonnel, while ampholytic surface active agent is proper to Tetoron.
5) In case of the cloth blended with synthetic fibers, whether is an original cloth or a refined one, I found its electric resistance weekened and stain‑
proof property given and I found no dust‑pick‑up. There came out no change of the result in 90 days.
緒言
さきにVonnel,Nylon,Tetoron,Acetate各100^のものを,帯電防止剤で処理した場合,
*長崎大学学芸学部家政教室
100
石 崎 ダ ィ(1)Acetateには処理の効果があまりみられなかったが,他の布は何れも防電剤で処理し たものが,無処理布より汚染性低く,洗浄性は向上する。 (2)布に附着した防電剤は1回の 洗浄で脱落するが,同時に附着した汚れも除去されるため,無処理布より洗浄効率が高い。
(3)処理効果の経日変化は吸湿性の少いTetoron,Vonne1はNylonに比べて変化が少く 防電効果の保持がよい等について報告1)2)した。ところが目常の被服としては,静電気を帯び 易い合繊布10G%のものより,吸湿性繊維を混紡したものがよく用いられている。 そこで今回 はTetoron,VonnelにCotton,Reyon,Woolを混紡した布に対し防電剤処理がどのよう な効果をもたらすものか,主として汚染性,洗浄性につき検討した結果を報告する。
実 験 方 法 1.供試布は第1表の通りである。
第1表 試 布 諸 元
Sample Vonnel Vonnel Cotton Vonnel Hyplan Vonnel Woo1
100%
50%
50%
70%
50%
70%
50%
Tetoron100%
Tetoron 65%
Reyon 55%
Tetoron 65%
Cotton 55%
Textile
WeavePlain
Weave
TwiII
Weave
Plain
Weave
〃
〃
〃
〃
Density of yarn
%% 51 50
50
22
48
2859
28 26
27
25 55 25
50
Thickness
(mm)
0.254 0.401
0.415
0.546 0.188 0.506
0,228
Wまdth
(cm)
10×15
〃
〃
〃
〃
ヴ
〃
Weight
(9)
1.571 2.446
2.506
2.055 1.545 2.658
ユ.802
Surface Reflect零ve
Index(%)
74.2 78.2 79。7 74。2 77.6 80,0 79.9
2.防電剤は次の3種を嘆用した。
D I…アルキル入ルフォネドト型のアニオ}/活性剤 D2…イミダゾリγ型の両性界面活性剤
D3…アマイド型の両性界面活性剤 3.防電剤処理
試布は10×15佛に切り,中性洗剤0.4%浴比1150,温度40土10Cで30分間浸漬処理を行 い,2回すすぎ自然乾燥して精練布とした。次に各防電剤を濃度1・5%,常温で浴比1:
100とし,第1報と同様にして処理布を調製した。
4.汚染性の検討
汚染性は湿式汚染と乾式汚染と更にCarbon BlackのDust−pick−upについて行った。
帯電防止の効果に関する研究(第5報) 101
・湿式汚染は油化学協会法の汚染布調製法に準じ次の汚染浴組成で常法に従って1分間汚染し 日立製光電反射率計で表面反射率を測定した。調製した汚染布は2日問CaC1。入りのデシヶ
一ターに保存し洗浄試験に供した。
汚染浴組成
玉川C級圧縮Carbon Black……0.].89
CC14(CaC12で脱水後精溜(沸点77±10C)…4009 流動パラフイγ一…・………・・…・1.59
牛脂極度硬化油…一・・……一・……0.5g
乾式汚染法は一定粒度の透明なガラス球2009をビーカーに取り, これに19のCarbon Blackを入れガラス棒で充分撹伴する。これを回転円筒式汚染試験機に入れ,常法に従って試
布を汚染した。
CarbonBlack Dust−pick−up方法は第1報の通りで,処理効果の経目変化をみるため,
処理後2日,18日,30日,90目について検討した。
5.洗浄性の検討
各試布の処理布,無処理布につき次の条件で洗浄力試験を行った。
洗浄条件
洗剤…中性洗剤0.4%
浴比…1:100 温度…40士1。C 時間…30分
試験機…撹伴型洗浄力試験機 すすぎ…100ccの蒸溜水で2回
洗浄後常法に従って洗浄効率を出した。
実験結果と考察
Vonne1の汚染性を示すと第2表の通りで,これを分散分析したものが第3表である。
第2表 Vonnelの汚染率(%)
原 布
精練布 D!
D2 D3
Al
Vonnel lOO%
60.9
57.2 49,7 50.7 60.9A2
Vonnel50%Cotton50%
61.8 59.9 58.2 57.9
60.5
A3
Vonne170%Hyplan、50%
66.4 59.5 57.4 59.0 59.4
A4
Vonnel70%Wool 50%
60.4
60.ワ
54.4 56.9 59.0
io2
第3表
石 崎 ダ ィ
分 散 分 析 表 Source of Variance
A D
A×D
AD
E
Total
Sum of Squares SA
SD
SA・DSAD SE
So175.84 454.90 250.07 858.81 159.25
998.06 φ
5 4
12 19 40 59
Mgan Square
57』95 115.75
19.17
5.48
Variance Ratio 16.65**
52.68**
5.51**
Significant at l%1eve1
5 4 12
F40(0・01)一4・51 F40(0・01)一5・85 F40(0・OD−2・66
分散分析の結果試布間,防電剤間に高度の有意差がみられた。次に各試布聞の有意差を検討 するため,平均値の差の信頼限界を求めた結果,・試布では1%水準の有意差が2.0,0.5%水準 の有意差が1.5となった。これより汚染性の判定をすると次のようになる。
原布に於て…A3》A2〜A4〜A!
精練布に於て…A2〜A3〜A4》A l D1に於て…A2〜A3》A4》Al
D2に於て……A3〜A2〜A4》AI A3》A4 D3に於て……A1【》A2 A1>A3〜A4
防電剤間では1%水準の有意差が2.3,5%水準の有意差が1・7,これより判定すると次のよ
うになる。
A1に於て……原布〜D3》精練布》D1〜D2
A2に於て……原布・》D3〜精練布>D1〜D2D3》D l A3に於て……原布》精練布〜D3 》D2 D3>D l A4に於て……原布〜精練布>D3>D2》D!
即ち試布間ではVonne1100%が最も汚染率低く混紡布は何れも汚染率が高い。しかし混紡 布の各原布の汚染率より防電剤で処理したものが汚染率低く,殊にD1処理では優れた防汚性
が認められだ。D、処理はあまり効果は認めらなかった。
洗浄性を第4表に分散分析を第5表に示す。
F検定の結果試布間,防電剤間共に高度の有意差が認められた。更に個々の洗浄効率の有意 差をみると,試布間では1%水準の平均値の差の信頼限界が1.2,5%F水準の信頼限界が0.9,
これより判定すると,
原布に於て…A1》A3》A4〜A2 精練布に於て…A1》A3》A2》A4
第4表
帯電防止の効果に関する研究(第5報)
Vonne1の洗浄性(%)
103
,試
原 布
精練布 DI D2 D3
Al
VonnellOO%
19.6
20.9 26.519.8 17.7
A2 A3
Vonne150% Vonne170%
Cotton50%・Hyplan50%
10.8
7.7 9.8 8.5
7.8
15.1 9.5
12.ワ12.6 11.8
A4Vonne170%
Woo1 50%
11.1 5.5 8.5 ワ.9
12.0
第5表 分 散 分 析
表
Source of Variance
A D A×D
AD
E
Total
Sum of Squares
SA
SD
SAYDSAD SE So
1445.65 102.55 185.00 1755.20
49.04 1782.24
φ
5 4
12 19 40 59
Mean Square
481.88 25.64 15.41
1.22
Variance Ratio 594.99紳
21.Ol**
12.6**
Significant at 1%leve1
5 4 12
F40(0・Ol)一4・51 F40(0・Ol)一5・85 F40(0・01)一2・66
Dlに於て……A1》A3》A2》A4 D2に於て……A1》A3》A2・》A4
D3に於て……A1》A3〜A4》A2
防電剤間の平均値の差の信頼限界は1%水準が1.4,5%水準が1.0となり,これより判定す
ると次のようになる。
A1に於てD1》精練布>D2〜原布》D3 A2に於て原布>D1》D2〜D3〜精練布 A3に於て原布》D竃〜D2〜D3》精練布 A4に於てD3〜原布》D1〜D2》精練布
即ちVonnel100%が最も洗浄性が優れ殊にD,処理は顕著な洗浄性を示した。混紡布のA。,
A・では原布の洗浄性はよいが,精練布より処理布が高度の有意差で洗浄性がよく,殊にD1処 理が良好である。A2,A・間ではA。が1%水準の有意差で優れているが, これは混紡率が異
るためと思われる。
次にTetoronの汚染性の結果を第6表,その分散分析を第7表に示す。
ユ04
第6表
石 崎 ダ ィ Tetoronの汚染性
.試
I Al Tetoron100%
原 布 精練布 D1 D2 D3
45.6 47.5 59.6 45.6 45.0
A2Tetoron 65%
Reyon 55%
56.6
59.8 52.8 54.4 57.4A3Tetoron 65%
Cotton 55%
52.6 55.8 49.6 54.9 57.2
第7表 分 散 分 析
Source of Variallce
A D A×D
AD
E
Tota1
Sum of Squares
SA
SD
SA×1)
SAD SE So
1204.20 251.01
57.97 1495.18 58.99
1582.60 φ
14 50 44
Mean Square
602.ユ
62.8 4.74
1.96
Variance Ratio
507.2**
52.05**
2.41*
Significant at 1%1evel
F51隅F5謡:113F5111:lll
平均値の差の信頼限界を求めるど試布間では1%水準の有意差が1.5, 5%水準の有意差が
1.1である。判定は次の如くなる。
原布に於て……A2》A3》A霊 精練布に於て…A》A3》A1 D!に於て………A2》A3》A l D2に於て………A2〜A3》Al D3に於て1………A2〜A3》A覧
防電剤間では1%水準の有意差が2.2,5%水準の有意差が1.5,これより判定すると,
A1に於て……精練布>原布〜D3〜D2》D1原布>D2 A2に於て……精練布》D3〜原布》D2>D l
A3に於て……D3〜精練布〜D2》原布》Dl D3》D2
即ちTetoronの汚染性もTetoron100%が最も低く混紡布はそれより高度の有意差で汚染 性が大となっている。混紡布間ではA3の汚染性が低い。しかしA2,A。の精練布よりD1処理 布は遙かに汚染率低く,処理の効果が認められる。
Tetoronの洗浄性を第8表に,分散分析を第9表に示す。
帯電防止の効果に関する研究(第5報)
第8表 Tetoronの洗浄性
105
原 布
精練布 Dl D2 D3
AlTetoron100%
14.9
19.412,5
21.518.5
A2Tetoron 65%
Reyon 55%
0.8 0.6 2.8 5.8 2.1
A3Tetoron 65%
Cotton 55%
7,5 5.7 7.4
11.9
5.4
第9表 分 散 分 析
Source of Variance
A D A×D
AD
E 0
Sum of Squares
SA
SD
Sム×D
SAD
SE So
1018.50 145.25
95.20 2095.54 25.41
2117.18 φ
14 50
44
Mean Squares
509.15 55.81 11.65
0.78
Variance Ratio
652.76**
45.91**
14.95**
個々の洗浄効率の差の信頼限界を求めると試布間では1%水準の有意差が1。0, 5%水準が 0.7,防電剤間では1%水準の有意差が1.4,5%水準が0.9。 これより判定すると試布間では 原布に於て……A量》A3》A2
精練布に於て一・・A霊》A3》A2
D1に於て……A1》A3》A2 D2に於て………A1》A3》A2 D3に於て………A1》A3》A2
防電剤間では
A1に於て……D2》精練布>D3》原布》D竃 A2に於て……D2>D璽〜D3》原布〜精練布 A3に於て……D2》原布〜D》D3》精練布
即ち試布間ではTetoron100%のものが最も洗浄性よく,混紡布はそれに比し低下するが A2・A・間ではA・がよく,防電剤間ではD2で処理したものが最もよく,精練布は極めて洗浄 性が悪い。従って混紡布もA2,A・のような混紡比であれば防電剤で処理したほうが汚染性低
く洗浄性は向上する。
回転円筒式汚染機による乾式汚染は,実験誤差がかなりあり明確な結論はくだしかねるが,
次のような傾同はみとめられた。
106
石 崎 ダ ィVome1では100%のものが汚染率低くCottonを50%混紡したものは他に比し汚染率が大 で洗浄性も悪く,湿式汚染の結果と合致している。
Tetoronでも100%の試布が汚染性低く,Cotton混紡は汚染性が大であった。しかし洗浄 性は他より遙かに優れ,殊にD2,D・処理を行ったものは高い洗浄効率を示した。
Carbon Black Dust−pick−up
本実験には関係湿度の影響が大なる故3),実験室内の湿度には特に留意し,R。H74±2%で 行った。Tetoron,Vonne1共100%のものは精練布が僅か吸着した。混紡布も精練布が極僅 か吸着したが,処理布は全く認められなかった。衙90日以内での効果の変化は全くみられなか
った。
以上のように混紡合成繊維布を防電剤で処理した場曾の汚染性,洗浄性は無処理布より汚れ にくく,付いた汚れは除去され易く,処理の効果は認められるが,100%合繊布を処理したと きのような顕著な効果はみられなかった。これは帯電防止剤の挙動がその分子全体の構造と,
処理される繊維の種類に関係し,Cotton,Reyonを混紡した場合,防電剤の極性基と繊維素 の水酸基が結合して,防電剤の非極性が繊維から外向きに配列することに起因するものと思わ れる4)。従って繊維表面は実際的には防電剤により疎水性になっている。このことはVome1 にCottonを50%混紡したものが,Hyplan30%混紡したものより汚染性が大で洗浄性が悪 かったこととも合致している。 Reyonは洗浄性が低いことも実験の結果5)明かになっている が,今回の実験でもTetoronにCottonとReyonと同比率で混紡した場合Reyon混紡布 の洗浄性が極めて低いことが認められた。従ってReyonの混紡布はさけたがよい。
防電剤処理の可否は合成繊維に混紡される吸湿性繊維の比率によってきまり,混紡比が50:
50%,或は吸湿性繊維が50%以上のときは防電剤で処理する必要はなく,合繊が65%以上の時 は防電剤で処理したほうが防汚性と,洗浄性の促進に役立ち,品質保持上望ましい。
総 括
Vonne1にCotton,Hyplan,Woo1を,TetoronにCotton,Reyonを混紡した布を,
アルキルスルフォネート型のアニオγ活性剤,イミダゾリγ型の両性活性剤,アマイド型の両 性活性剤でそれぞれ処理した場合の効果を,Vonnel,Tetoron100%布の汚染性,洗浄性と 比較検討した結果次の点が明かになった。
1.Vonne1,Tetoron100%のものは防電剤処理により防汚性がまし,洗浄性は向上し,
処理の効果が顕著に認められた。
2.混紡布は100%のものほど処理の効果はみられないが,処理布が無処理布(精練布)よ
り汚染性低く,洗浄性は向上する。
3.混紡の比率が処理の効果に大きく影響し,吸湿性繊維が50%以上の場合は,防電剤処理 により逆効果をもたらす。従って合成繊維が65勿以上の時は防電剤で処理したほうがよい。
帯電防止の効果に関する研究(第3報)
107
4.試布により防電剤に選択性があり,Vomelにはアルキルスルフォネート型のアニオy 活性剤が,Tetoronにはイミダゾリ⊃/型,或はアマイド型の両性活性剤が適する。
5.Carbon BlackのDust−pick−upは混紡布の原布,精練布とも,混紡により既に電気 抵抗は低下し防汚性が賦与されているため,処理布と顕著な差はなく,殆どDust−pick−up
はみられなかった。
また90日以内での処理効果の変化も認められなかった。
最後に防電剤は第一工業製薬,竹本油脂,ライオソ油脂より,試布は三菱レーヨン,帝国人 絹の各社より御寄贈いただきましたことを感謝し,実験に尽力された越川安子氏に感謝する。
参 考 文 献 1)石崎=家政学雑誌 12,512(1961)
2)石崎:家政学雑誌 14,8(1965)
畢)∫.W.S。Hearle:Med.Textile Mag.,55,52(1954)