責任会計 と予算差異原因の知覚
中 善 宏
はじめに
業績管理会計のプロセスは,その会計処理の技術的側面では,評価基準 とし ての予算あるいは標準原価の設定,実績把握 と差異の分析か ら成 り,他方,会 計情報の行動的側面を意識す る場合 には,それは, 目標の伝達 と動機づ け, さ らには業績評価か ら成 るとされ る。 これ ら2つの側面を架橋す る概念 に責任会 計がある。責任会計 は,周知のよ うに,組織 における管理責任単位の権限 と責 任 に会計数値を結び付 けることによ り,会計情報の統制効果を確保 しよ うとす るものであ る。そ こで は,その よ うな会計処理 によって当核責任単位 のモチ ベ ー シ ョンと業績 の向上が もた らされ ると予定 されてい る。 この研究 の 目的 は,先行刺激 としての会計情報 と,結果 としての個人のモチベーシ ョンおよび 業績 との間にある認知 プロセスに焦点をおいて,責任会計 におけるその間の暗 黙の仮定をい くぶん詳細に検討す ることにある。
まず,予算管理において,管理者 は,予算差異の発生原因をどのように知覚 す るかを検討 して,その予算差異発生原因の知覚の背後にある,因果関係の認 知構造の究明を試みたい。 この認知構造 は,予算差異 に対す る統制可能性 と責 任 との関係 に新 たな観点を与え るであろ う。ついで, 責任会計の議論 に際 して, 適用例 として しば しば示 され る若干の具体的な処理手続を とりあげ,それ と上 の認知 プロセスとの関係を検討 したい。 さ らにまた,差異原因の知覚が個人の 特性,すなわち,パーソナ リティによって異なることを明 らかにす る。
〔137〕
138 商 学 討 究 第42巻 第2・3
号
以下で,議論の展開にともなって提示するデータは,わが国上場製造企業の 中間管理者,主 として課長職位にある人びと68 名に対 して質問紙調査を行 って 得た ものである。
Ⅰ.因果構造の検言 寸
管理者 は,予算差異の発生原因をどのように知覚す るのであろうか。責任会 計 における責任 あるいは統制可能性の基準 は,その意図す る目的を考慮すれ ば,究極的にはす ぐれて認知論的な現象である。責任会計 とモチベーションお よび業績 との関係を検討す る前 に,管理者 による予算差異をめ ぐる因果関係の 知覚 と,そ こに内在する因果構造を究明 してみたい。
責任会計 は,
Ferrara(1964)によると,「 責任会計の本質 は,原価や収益を 責任領域 と結びっけて集計 し,それによって,標準原価や予算か らの差異を責 任を有す る個人 あるいはグループに跡づ けることである」と定義 され る。また, 多 くの管理会計の文献では,管理者業績の評価 は,当核期間において,彼が直 接影響力をおよぼす ことのできる業績側面 に限定 されなければな らないと主張 され る。責任会計の このよ うな責任 あるいは統制可能性の基準が管理者行動に 対 して持っ意味を明 らかにす るためには,予算または標準原価 と実績 との差異 を もた らす原因が管理者 によってどのように知覚 され,そ して知覚される原因 の分類を支配する原因帰属の認知構造が どのよ うな ものであるかを明 らかにす る必要がある。
人 は,行動の結果を何 らかの原因に帰属 させ ることによって,環境 について の首尾一貫 した理解を得 ようと努める.そ して,そのような理解が,その後の 彼の行動 に大 きな影響をおよぼす。人の原因帰属 と行動 との関係を研究す る心 理学 に帰属理論
(attributiontheory)がある。以下で, この帰属理論 を予 算管理の場に援用 して,そ こでの管理者行動の手がか りを探 ることにす る。
モチベーションをテーマ とす る帰属理論において,因果認知の構造 は,図表
1に示す よ うに
,3つの次元,す なわ ち, 帰属 の所在
(locusofattribution),
安定性
(stability),および統制可能性
(controllability)によって構成 さ
責任会計 と予算差異原因の知覚 図表 1 予算差異原 因の分類次元
139
安 定 帰 属 の 所 在
内 部 外 部
統制不能
統制可能
能力
訓練 あ るいは経験 内発 的モ チベ ー シ ョン ふ だんの努 力
勤 勉 あ るい は怠惰
部下 の能力 タス クの困難皮 部下 のふ だんの努 力 職務上 の コ ンフ リク ト 業績 測定 プ ロセ ス
不 安 定 帰 属 の 所 在
内 部 外 部
統制不能
統制可能
疲労
個人 的な職務 とは 無 関連 な一 時的事情 努 力
誘 因 に対 す る反応
厳格 な予算 経済状況 運
部下 の協力
一 時的 な上 司 と部下 間 の コ ンフ リク ト
部下 の時 々の努 力 外生 的モ チベ ー シ ョン
れる 8つのセル ( 所在 2水準 ×安定性 2水準 ×統制可能性 2水準)によって表 される。まず,帰属の所在 は,ある行為の結果を もた らした原因が,個人の内 部にあるかそれ とも外部の環境のなかにあるかの区分によって定 まる次元であ る。第 2の安定性の次元 は,原因が,安定であるか,あるいは不安定であるか の区分を もた らす次元である。ある原因が時 と場合によって変化す るな らば, それは不安定原因である。そうでなければ安定原因である。第
3の次元,統制 可能性の次元 は,原因が,当核個人の意思的な統制の下 にあるか,あるいはそ
うでないかの区分によって張 られ る次元である。
内部所在の原因について言えば,能力 は,安定かつ統制不能であり,ふだん
の努力 ( 勤勉 ・怠惰)は,安定的で,かつ統制可能である。気分や疲労 は不安
定かつ統制不能であ り,一時的な努力は,不安定かつ統制可能である。外部所
在の原因については,タスク困難 は,安定かつ統制不能であり,部下のふだん
の努力 は,安定かつ統制可能 と知覚 され るであろう
。連 は,不安定かつ統制不
140 商 学 討 究 第42巻 第
え
・3号
能であ り,組織階層間の一時的なコンフ リク トは,不安定で統制可能 と知覚 さ れ る
。予算業績 に対す る原因の知覚をこのように先験的に構造化す ることは,後 に 議論す るように,差異情報のモチベーションと業績 におよぼす影響を組織的に 解明す るための基礎を与えるのであるが,差異原因の知覚 は予算管理の実際に よって左右 され るのであろ うか ら,上 に示すような理論的な認知構造が,必ず しも管理者の持っ現実の認知構造に対応す るとは限 らない。それゆえ,予算管 理 における管理者行動の基礎 にある業績結果に関す る実際の因果構造を確かめ
る必要がある。
わが国上場企業の管理者
68名 に,
Birnburgetal.(1977)および
Shieldseta
l .
(1981 )による予算差異原因を提示 して,過去約
1年間において,それ らの 差異原因が予算差異の原因にどの程度の影響度をおよぼ したかを評価 させた。
図表
2は,共通性反復推定付 きの主因子法 によって
,19項 目の差異原因に与え られた評価得点 を因子分析 して,固有値 1以上 の因子を抽 出 し, さ らにバ リ マ ックス回転 した後の因子負荷パター ンを示 している。
因子 Ⅰは,内部所在の差異発生原因を総括 している。 これは内部原因の因子 と称す ることがで きる
。因子 Ⅱは,部下および組織階層間の相互作用要因 と強 く相関 している。 この因子 は, したが って,組織関連原因の因子である。因子
Ⅲは,職務困難あるいは職務の容易 さを意味する因子である。因子Ⅳは,部下 の能力, 目標明瞭性および予算の業績反映度を包括す る因子である
。これは予 算妥当性の因子 と解釈で きる。因子 Ⅴは,運あるいは外部経済環境 に関す る因 子である。
先の理論上の認知構造 と比較 して,各因子の次元上の配置を解釈す ると,ま
ず,帰属の所在の次元が最 も強 く現れている。因子 Ⅰは,内部所在の諸原因を
包括 してお り,安定性の次元 と統制可能性の次元に基づ く認知上の区分は,そ
こではまった く現れていない。因子 Ⅱは,外部所在かつ統制可能な原因か ら構
成されている。因子 Ⅲは,職務困難の因子であるか ら,その属性 は,外部,疏
制不能,安定の原因を示 している。因子Ⅳは,外部,安定そ して統制不能な原
責 任 会 計 と予 算 差 異 原 因 の知 覚 141
因を要約 している。因子Ⅴは,外部,不安定かつ統制不能な原因か ら成 ってい
る。
この予算差異原因の因子分析か ら得 られた因子負荷パ ター ンか ら推測 される 管理者の予算管理 における実際の認知構造の特徴 としては,まず第一に,因果 の所在の次元が強 く働いていることである。差異原因の帰属 にさい して最 も強 く表われ るのは,それが 自己の内にあるのか,あるいは外 にあるかの区分であ るようである。内部所在の差異原因については,安定性および統制可能性の次 元による区分 はなされていない。 しか し,外部内在の原因に関 しては, これ ら
2
つの次元が現れているようである。すなわち,認知次元の差別化 と分化がな され,知覚の肌理が細かい。
図表 2 予 算 差 異 発 生 原 田 の 因 子 パ タ ー ン (回 転 後 ) 因
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
内部 組織 タスク
原 因 関係 困 難
子
Ⅳ Ⅴ
予算
妥 当 運 共通性
1.部下の能力 2.職務困難 3.ふ だん の努力 4.仕事の矛盾 5,予算 の業績反 映 7.ふ だん の部下 の努力 8.厳格 な予算
9.経済環境 10.今期の努 力 ll.好運
12.他部門 との調整 13.階層間の意思疎通 14.今期 の部 下努 力 15.管理能力
16.経験 と訓練
17.報酬制度 (部下) 18.報酬制度 (自分) 19.仕事‑ の打 ち込 み 20.元 気
固有値 寄与率
0.142 0.290 0.025 0.587 0.256 0.515
0.056 0.140 0.614 ‑0.010 0.195 0.437 0.655 0.250 0.065 0.116 0.039 0.510 0.169 0.234 0.119
0.128 ‑0.051 0.048
0.385 0.604 ‑0.218
‑0.142 ‑0.113 0.826
0.029 0.013 0.289 0.806 0.315 ‑0.047 0.101 0.206 0.048 0.286 0.742 0.161 0.361 0.786 0.065
"0̲.̲46T2 ̲̲0̲.A萱̲6 ‑0.312 0.820 0.403 0.139 0.752 0.464 0.045 aL599 0.058 ‑0.175 臥̲69B 0.052 ‑0.184 臥̲≦迫4 0.111 0.011 0.764 0.246 0.001
QijL3 0.141 0.423
QiJiL1 ‑0.015 0.407 0.271 0.141 0.654 0.225 0.058 0.769
0.255 0.680 0.612 0.079 0.074 0.763 0.035 0.655 0.485 0.048 0.180 0.693 0.145 0.094 0.782 0.156 0.194 0.609 0.062 ‑0.150 0.880 0.111 ‑0.114 0.808 0.186 0.213 0.462 0.177 0.228 0.604 0.105 0.081 0.847 0.131 0.036 0.662 5.221 2.605 1.429 1.403 1.265 11.923 0.438 0.218 0.120 0.118 0.106 1.000
142 商 学 討 究 第42巻 第 2・3号
企業組織は責任の体系である。因果構造を規定す る
3つの次元の うち帰属の 位置の次元 は,心理学的な意味での責任の概念 に対応す る
(Weiner,1
979)0 行為の結果を もた らした原因が 自己の うちに求め られる程度 において,その責 任の程度が決定 され る。ある行為の結果 に関す る責任の有無 は,そのような結 果を もた らした原因が個人の内にあるかあるいは外にあるかによって判断され る。組織階層関係の中で,部下の業績に対す る上司の反応 は,業績結果に関す る上司による因果所在の判断によって異なって くる。 リーダーシップ行動 に帰 属理論を適用す る研究において,上司は,部下の低い業績の原因を部下の内的 な安定要因に求める傾向があるのに対 して,部下 は,それを外部要因に求める 傾向にあることが指摘 され る
(Mitchel1‑Wood,1
980)。原因帰属の このちが いは,部下の業績 に対す る上司の反応に相違を もた らし,彼 らの問にコンフリ ク トを生 じさせ
(Martinko‑Gardner,1
987),恐 らくは因果所在の次元を顕 在化 させ るであろう
。また,外部所在の原因は,芳 しくない業績に対す る弁明 の余地を与え, 自己の自尊心を維持す るのに役立っ とされる。 このようない く つかの理 由によって,因果所在 は予算差異発生原因の知覚を支配す る第一義的 な次元 となると考え られる。
管理者職能の基本 は,経営の外部環境 に対す る適応にある
。相対的に低い階 層の管理者は,環境 に直接対応す る機会が多いか ら,より詳細な知識 と経験を 持っようになるであろ う。さ らには, 組織内における他部門 との交渉 と調整 は, 管理者職能の重要な部分である。また, リーダーシップの有効な遂行 には,部 下の業績 と行動 に関す る原因帰属にさい して も,内部原因のより詳細な判断を 必要 とす る。部下の低い業績の原因が能力 ( 統制不能 ・安定原因)に求め られ るか,努力 ( 統制可能 ・不安定原因)に求め られるかによって,上 司の反応 は 異なって くる
(Gioia‑Sins,1
986)。 このよ うな管理者行動をめ ぐる状況は, 予算業績の外部所在原因について,よ り詳細な認知の構造を生 じさせ るであろ
う。
責任 会計 と予算 差異原 因 の知 覚
Ⅱ. 因果構造とモチベーション .業績
予 算 差 異 原 因 の認 知 構 造 が, 実 際 に どの よ うな もの か につ い て の手 が か りを得 た後 で, 次 の 課 題 は, この よ うな認 知 構 造 とモ チ ベ ー シ ョ ンさ らに は業 績 との 関係 を検 討 す ることであ る
。個 人 の モ チベ ー シ ョン あ るい は達 成 欲 求 と原 因 帰 属 との 間 に はか な り明 瞭 な関係 が 認 め られ て い る。
Kukla(1972)は, 図
原因帰属の程度 876
図表 3 モチベー シ ョンと原 田帰 属
143
表
3に示 され る よ うに,
個人の達成要求の相違が成功 あるいは失敗の後の原因帰属 にバ イアスを生 じさ せ ることを実験室実験で検証 している。達成欲求の高い個人 は,成功 した場合 に,高 い能力 と努力が,それを もた らした原因であると知覚す る。達成欲求の 低 い人 は,成功 に際 して明瞭な原因帰属の傾 向を示 さない。他方,失敗 した場 合 には, 達成欲求の高 い人 は, 低 い人 と比べて, 結果を努力不足 に結 び付 ける。
しか し,達成欲求の低 い人 は,結果 を低 い能力 に結 び付 ける。要す るに,モチ ベーシ ョンが高 くなるにつれて,結果を 自己の内的な原因に帰属 させ る傾 向が あ る
(Weinereta1
.,1
971;Weiner,1
974)。予算管理 におけるモチベーシ ョンの問題 に関連 して最 もよ くとり上 げ られて
きたの は,期待理論
(expectancytheory)で あ る。 House(1971 ) , あ るい
は
Ronen‑Livingstone(1975)に したが えば, このモ チベ ー シ ョン ・モ デル
は,つ ぎのよ うに定式化 され る。
144 商 学 討 究 第 42巻 第2・3号
M‑IVb+Pl
(
ⅠVa+写PI 2iEVi), i ‑
1,2,‑ ,n
M
‑仕事‑のモチベーシ ョン
ⅠV。
‑成功 したタスク業績 に関連す る内発的誘意性
ⅠVb
‑目標指向行動 に関連す る内発的誘意性
EVi
‑職務 目標の達成 によって得 られ る i番 目の外生的報賞
P1
‑目標指向行動が職務 目標 ( 所与の業績水準)を達成す るであろ うとい う期待。 これは,
(0,+ 1)の範囲の値を とる。
P
2i‑職務 目標 の達成が i番 目の外生 的報賞 を もた らすであろ うとす る期 待 あるいは手段性。 この変数 は,(‑ 1
,+ 1)の範囲の値を とる。
期待理論 は,モチベーションの認知モデル と呼ばれ る。刺激 と反応の間に, 人 間の認知事象で あ る期待
(expectancy)あ るいは誘意性
(valence)を変 数 としてモデルに導入 しているか らである。期待理論 は,認知心理学アプロー チに含 まれ る他のモチベーシ ョン理論を統合す る枠組みを与えている。以下で とり上 げ る帰属理論
(attributiontheory)も期待理論 の補完 的な位置 にあ ると解釈 される
(CampbelLPritchard,
1976)。
予算管理 においては,予算業績が差異情報 としてフィー ドバ ックされ る
。何 がそのよ うな予算業績を もた らしたの解釈 に際 して, さまざまな原因が知覚 さ れ,そ して, どの様な原因に差異の発生原因を求めるかによって,その後の彼 の行動 は大 きな影響を受 けるであろ う
。期待理論モデルに含 まれ る変数の評価 もそのよ うな個人の持っ因果関係の知覚 によって定 まって くると考えてよい。
期待理論 は,特定のタスクについての知識 あるいは過去の経験か ら,最終的な
結果の予想 についての信念が導かれ るとい う立場を とるのであるが, この期待
の形成 と誘意性 に関 して,それに至 る刺激情報の受容のプロセスに十分 な考慮
を払 っているとはいえない。個人 による特定の行動の選択 は,確かに主観確率
を加味 した最終的なその結果の誘意性 によって定式化で きるとして も,それは
部分的な側面 に過 ぎない。組織の コン トロール ・システムにおける個人のモチ
責任会計 と予算差異原因の知覚 145
ベーションを議論す るには,人間の情報の検索 と選択,および,結合 と貯蔵 さ
らには認知 シェーマや因果関係の知覚などのプロセスを考慮す る必要があるで あろ う
(Weiner,1
972)。 この点 に関 して,帰属理論 は,期待理論を補完す る関係 にある
。Ronen‑Livingstone(1975)
のモチベ ー シ ョン ・モデル にお け る変数 の う ち,まず誘意性を測定す るために,次の誘導性項 目について,その重要性の評 価を求めた。
図表 4 賛 意 性 項 目 1.昇 給
2.高 給 3.上 司の支持 4.同僚 の支持
5.周 囲の賞賛 ・注 目
6.他 人 に とやか く言 われ ない 7.友人 が で きる
8.特 別 な賞 お よび承 認 9.昇 進
10.人 間的 な成 長 と発展 ll. 自分 に高 い 目標 を課 す 12.他 の人 を援 助す る
13.仕事 を して いて も時間の たっのが早 い 14.安心感 ・自信
15.率先垂範 16.達成感
17.仕事 を して いて も疲 れを感 じない
前者の 9要因が外生的報賞であ り,後者の 8要因が内発的報賞である。達成 行動それ 自体の誘導性 Ⅰ V
bは, 「 『 一生懸命働 く』 ことによって上の報賞が得 られるとした場合 に,それ らが どの程度望ま しいか」を評価 させて測定する。
「Ⅰ
Ⅴ。は,『 予算を達成 した』場合 に,報賞の もつ個人 にとっての価値」を評 価 させ ることで測定す る。すなわち,回答者 は,上の同 じ項 目を
2回評価する ことになる。
Plは, 「 『 一生懸命働 く』 ことによって 『 予算 目標の達成』が得 られ る可能性」を評価 させ ることで測定す る。 P
2tは, 「 『 予算の達成』が報 賞をもた らす程度」を上掲のそれぞれについて評価 させて測定す る。
モチベーションとな らんで,回答管理者の業績水準を も測定 した。業績の測
定尺度 として,Mahoneyeta
l.(1963)によって開発 された, 自己評価 に基づ
146 商 学 討 究 第42巻 第 2・3号
く多次元評価尺度を用いた。 自己評価は,上司 ・同僚の評価 と比 して,高い方 向へのバイアス
(leniencyeffect)を含んでいることが指摘 され る
(Harris‑ Schaubroeck,
1988;Thornton,
1980)。 しか し,他面,上司による評価よ
りも,ハ ロー効果,すなわち,評価次元間に高い相関を示す傾向が小 さいとい う長所を持 っている。
Mahoney
尺度 は,
8つの業績次元の評価尺度 と,
1つの総合業績測定尺度 か ら成 っている。 この尺度の信頼性 と妥当性に関す るこれまでの検討 は肯定的 であ る
(Brownel l ,
1982)。予備的な検討 として, ここでの この尺度 の信頼 性を確かめるために,まず,総合尺度を従属変数,他の
8っの尺度を独立変数 として重回帰分析 を行 った。 結果 として得 られた垂相関 は
,0.76(R2‑0.58)であった。すなわち, この回帰 は,総合評価の58 パーセ ン トを説明 している。
この数値 は,
Brownell
(1982)が これ と同 じ尺度で得 た結果
(R2‑0.608)と ほぼ等 しい。また, この尺度 とともに,過去 1年間における予算の達成度を尋 ねた。 この予算達成度 と
Mahoney総合業績評価得点 との相関 は
0.46(p<0
.
01)であ った
。したが って,総合業績の 自己評価 に関 して は,客観的な予 算業績に対応す る,ある程度の信頼できる業績の自己評価がなされていると解 釈す ることがで きよう。
以下に,予算差異原因の因子分析 によって得 られた各因子の因子得点 と,モ チベーシ ョンの得点および総合業績評価得点 とのス ピアマン順位相関を提示す る。
得 られた相関値 は,予想通 りであ る。予算差異原因の内部帰属 はモチベー ションと相互 に関連 している。また,高いモチベーションは,高い業績につな が っている。予算管理におけるこのような関連を確かめた後で,次に業績管理 会計あるいは責任会計において一般的に主張され る若干の具体的な手続 きを取 上げて,それ らの認知構造 とモチベーシ ョンおよび業績 との関係を探 ってみよ
う。
責任 会 計 と予算 差異 原 因 の知覚
図表 5 予 算 差 異原 因 田子 とモ チベ ー シ ョン,業 績 の 自 己評 価 (総 合 ) お よび予算 達成 度 との相 関
147
因 子
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
内部 組 織 タスク 予算
原因 関係 困 難 妥 当 運 1. 2. 3. 1.モチベー ション 0.42* 0.13 ‑0.02 0.26+ 0.24+1.00
2.業績評価 (総合) 0.31* 0.21? ‑0.17 0.17 ‑0.05 0.22?1.00
3.予算達成度 0.33* 0.42* ‑0.35* 0.35* 0.34*0.19 0.46*1.00
両 側 検 定有 意性水 準 *p<0.01
+
p<0.05?p<0.10
Ⅲ. 若干 の責任会計関連処理
予算 による業績評価の公正 さあるいは予算へのモチベーションに関連 して責 任会計が問題 とされている。会計数値が個人責任に基づいて適切 に構成 され, 管理者の適切な態度 と行動が得 られ るな らば,それは,モチベーションを促進 す る重要な要因 とな りうる。 しか しなが ら, このような主張に反 して,明 らか に個々の部門では統制可能でない固定費およびその他の部門共通費を配賦す る のがむ しろ一般的な実務 のよ うで ある
(Horngren,1982;Merchant,1987)。 管理者の責任の範囲に収 ま らない費用を配賦す る理由はい くつかあるであろう が, ここでは,責任会計の主張の反面か らの検証 として, このよ うな処理が原 因帰属,モチベーシ ョンさらには業績 とどのように関連す るのかを検討す るこ
とに
した い。予算差異の発生原因 として,次の中間管理者に統制不能 と考え られる要因が どの程度作用 したかの判断を求めた。
1 .製造 ・販売す る製品 ・サー ビスの構成割合の変化。
2.
固定費。
3.他部門経費の負担分 (
共通費) 。
これ らの要因は,外生的な原因 として,予算業績が管理者業績を正確 に写像
148 商 学 討 究 第42巻 第2・3号
す るのを妨げる。図表
6は,予算業績 に対す る上の統制不能要因の影響度 に関 す る回答得点 と差異原因因子分析の因子得点,モチベーションおよび業績得点 との相関を示 している。 この図表では
2種類の相関を記載 している。
1っは, 統制不能要因の回答得点か ら5 を引いて, さらにその絶対値をとった修正得点 との相関である (この論文末尾 に添付の測定尺度を参照の こと。修正前の得点
5は,予算業績 に影響 しないとす る中立点である) 。他 は,カ ッコの中に示 し ている,修正前の回答得点をそのまま用いた相関である。
製品構成,固定費あるいは共通費 は,予算差異 に有利 にも不利にも働 くであ ろうけれども, ここではそのよ うな影響の方向を捨象 した,業績評価の撹乱要 因 として作用す る絶対的な変動 に関心がある。その理 由は,回答得点をそのま ま用いた相関は,比較的自明な関係を示すに過 ぎないことが多 い。た とえば, 図表
6のカ ッコ内の相関に見 られるよ うに,製品構成 あるいは共通費の有利な 方向‑の変化 は,予算妥当性のより高い知覚 と結び付いている。前者の業績の 自己評価 との関係 について も同様である。 この ことは理解で きるとして も,そ れ 自体われわれの関心をそそるものではない。 さらに,絶対的な変動のみを取 り出 した修正得点 と,他の変数,すなわち他の質問項 目,あるいは合成変量 と しての因子得点 との相関が統計的に有意な らば,そこには非線形の関係が存在 す ることを示唆 している
。統制不能原因が有利 に作用 しようと,不利 に作用 し
ようと,その方向に関わ らない変動それ 自体の作用を分析す ることによって, より普遍的な議論の展開を試みることにす る。
この責任会計関連処理 と差異原因の因子得点 との相関か ら明 らかにな るの
は,製品構成 と固定費がより大 きな影響力を持 ってお り,共通費の配賦額 は,
マージナルな作用を示すにす ぎないことである。そ して,製品構成 と固定費 と
は, ともにタスク困難の因子 とプラスの相関を持 っていることを除いて,かな
り異なる差異の発生原因 として帰属 されるようである。製品構成の変化 は,内
部帰属の因子および組織関係の因子 に有意 に相関 しているけれども,固定費 は
そ うではない。それは自己の高い能力 と努力,および,組織内の円滑な調整,
部下の努力に結び付け られている。さ らに,固定費は,部下の能力 ・予算妥当
責 任 会 計 と予 算 差 異 原 因 の知 覚 149
性の因子 とマイナスの有意な相関を示 しているのに対 して,製品構成 は,それ
とプラスに相関 している。予算差異の原因 として製品構成の変化 と固定費の存 在が大 きくなれば, ともにタスクの困難度 は高 いと知覚 され るけれ ども,前者 は, 予算が 自己の業績を反映す る程度 を高めると知覚す る方 向に働 き, 後者 は, それを低めると知覚 されている。
図 表 6 統 制 不 能 要 因 と予 算 差 異 原 田 国 子 お よ び業 績 の 自 己評 価 との相 関 予算差異
因 子 1, 内部原因
2.組織 関係
製 品 固定 共通
構成 費 費
0.34* 0.03 0.ll (0.38* 0.13 ‑0.12)
0.21? 0.06 0.04
(0.43* 0.03 0.00) 3.タスク困難 0.28+ 0.29+ 0.09
(‑0.06 0.13 0.32
* )
4.予算妥 当性 0.28+ ‑0.21 ‑0.05 (0.13 0.24+ 0.24+) 5.運 0.15 ‑0.08 ‑0.05
(0.30* 0.42* 0.14)
業績評価 1.計画設定
2.調査研究
3.調 整
4.評 価
5.監 督
6.人員配置
7.交 渉
8.代表機能
9.総合評価
予算達成度
製 品 固定 共通
構成 費 費
0.05 ‑0.22?‑0.16
(0.20 0.07 0.21?)
0.04 0.03 ‑0.04 (0.36* 0.13 0.17)
0.02 ‑0.11 ‑0.04
(0.23? 0.08 0.34
8 )
0.18 ‑0.03 0.08
(0.36* ‑0.04 0.15) 0.18 0.01 ‑0.03
(0.21? ‑0.16 0.04) 0.17 ‑0.21?‑0.ll (0.28+ ‑0.13 0.05)
0.28十 一0.04 ‑0.06
(0.41* ‑0.11 0.17) 0.14 ‑0.04 ‑0.13 (0.10 ‑0.13 0.09)
‑0.03 ‑0.15 ‑0.07 (0.33* 0.06 0.17)
‑0.02 ‑0.25+ 0.03 (0.32* 0.18 0.03) 注 上 の段 の相関 は,製品構成 ,固定費 お よび共通費 の予算差異 におよぼす影響 に関す る
回答得点 か ら5を引いた値 の絶対値 を とり, これ らの修正得点 と上掲 の各変数 とのス ピアマ ン順位相 関であ る。 カ ッコの中の相 関 は,回答得点 をそのまま用 いた ときのそ の相 関であ る。
150 商 学 討 究 第42巻 第2・3
号
製品構成の変化 は,予算を基準 とす る業績評価に際 して,ある種のノイズと 考え られ る。 しか し, このような原因帰属のパ ターンを見れば,製品構成の変 化 は,モチベーションにプラスの作用を している。 この質問紙調査を実施 した のは,急速な為替相場の変動 と,それにともな う外部経済環境の変化 に,企業 が適応を迫 られている時期に当たっていた。産業構造の転換 は,個 々の企業に とっては,生産販売す る製品構成の積極的な変更の試み として現れて くる。予 算の運用に関 して, リーダシップ ・スタイルに多様性が見 られることが知 られ ている。企業環境の変革期にあっては,当初予算に基づ く厳格な運用は適切で ない。環境不確実性 は,予算管理 に一定の限界を与え るであろ う
。その運用 は,
Hopwood(1975)の言 うような,利益意識 スタイルに基づ く弾力的な もの となるはずである。また,
Anthony(1965)の提示す るよ うに, とくに,マネ ジメン ト・コン トロールは,組織の中間管理階層で遂行 され る管理職能 におい て計画 と統制の機能が不可分な ことか ら導かれた概念である。市場の ときどき の状況に対応す る製品構成の変更 は,中間管理階層以下の市場 と直接接触す る 人 々のイニ シャチィブに依存 している。 このことは,製品構成の変化が,業績 評価次元の うち,評価,監督および交渉の次元 と相関 していることか らも推測 できる解釈である。
固定費の影響 は,まさに予想通 りである。固定費の存在が意識 され るのは, 主 として実際業績が予算 に達 しなか った ときであり,それは, 部下の低 い能力, 予算の低い業績反映度,さらには,タスク困難度 と厳格な予算 とい う原因 と共 変動 している。 これ らは,すべて外部帰属の原因であり,安定的で,かつ統制 不能な原因である。 このような原因帰属 は,モチベーションに対 してマイナス の影響を もつ とされ る。統制不能な安定原因に対する帰属は,将来業績に対す る期待の低下 と無力感を生 じさせ る
(Weiner,
1979)。固定費 と業績 との関 係を検討す ると,固定費の影響は,計画次元 と人員配置の次元に有意な相関を 示 している。高い固定費 は,外部環境に対する感受性を高め,予測の誤差の影 響を大 きくす る。固定費の主 たる費 目は人件費であるよ うである。
共通費の配賦 は,いずれの認知次元 とも有意な相関を示 さない。また,業績
責任会計 と予算差異原 因 の知 覚 151
の次元 とも同様である。しか し, 各次元 と有意な相関を示 していないとして も, それ らの大部分 にマイナスの符号が現れている。 ここには共通費配賦 について
も,固定費の作用 と類似のパ ターンが見 られ る。それゆえ,その作用は,固定 費の影響 と同 じ性質を持 ってお り,両者の間には,程度の相違があるに過 ぎな いことを意味 しているようである。
さて,固定費 は, このようにモチベーションにマイナスの影響をおよぼす と すれば,その影響を緩和す る管理上の方策が問題 になる。 これに関連 して,予 算管理における行動研究の一つの焦点 として取 り上げ られてきた参加が考え ら れ る。主 として,それは,予算編成への参加の効果に関心が向けられて きたの であるが,事後的な差異情事酎こ関す る原因帰属において も,予算の編成に際 し ての下位管理者の意見や提案が反映 され る程度が何 らかの影響をおよぼすであ
ろうことが予想 される。図表 7は,原因帰属の因子得点 と責任会計処理 との相 関値を示 している。参加 の測定尺度 として は,
Swieringa‑Moncur(
1975)に よる 「 予算関連行動尺度」か ら,
2つの参加関連質問項 目を選択 して回答者に 提示 した。
固定費の存在 は,タスク困難および予算妥当性 とマイナスの相関を示 してい る。固定費 は,職務の困難度を増 し,予算が 自己の業績を正確に反映す ると知 覚す る程度を低める。 これに対 して,参加 は,固定費の影響 とマイナスの関係 を示す。予算妥 当性 の知覚 は,モチベー シ ョンとプラスの相関
(r‑0.26,
図表
7
責任会計 関連 処理 と原 田帰 属 ・参加 との相 関 因 子Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
内部 組織 タスク 予算
原因 関係 困 難 妥当 運 1. 2. 3, 4. 1.製 品構成
2.固定費 3.共通費 4.参 加
0.34* 0.21? 0.28+ 0.28+ 0.15 1.00
0.03 0.06 0.29+ ‑0.21? ‑0.08 0.31*1.00
0.11 0.04 0.10 ‑0.05 ‑0.05 0.06 0.34*1.00
0.14 ‑0.02 0.18 0.07 0.05 0.03‑0.24+0.05 1.00
152 商 学 討 究 第
4 2
巻 第2・3
号p<0.05)
を持 っているか ら, したが って,参加 それ 自体 は,予算妥 当性 と 有意な相関を示 さないけれども,固定費の作用を緩和す ることで間接的にモチ ベーションに貢献 していると解釈で きるであろう
。Ⅳ.制御所在
責任会計の主張するところは,個人の責任 に会計数値を結びっけることによ り,計画の実施 と,個人のモチベーシ ョンを確保できるとす るものである。 こ の意図す るところは,一見 して明白であ り,すでにみてきたように,心理学的 にも一定の根拠を もっている。 しか しなが ら,責任会計を現実の組織実務 にお いて実施す るのは必ず しも容易ではない。なぜな ら,責任の所在の判断,ある いは,統制可能性の基準 は,当核管理者 の当面す るタスク不確実性の程度 に よって,かな り唆味にな りうるか らである。たとえば,活動 と費用を結び付け る費用関数を正確に推定す ることは多 くの場合困難であり,結果 に至 るまでの プロセスは,時間的な視野を長 くとれば,それだけその評価に非計量的な要素 を加味 しなければな らない。要す るに,業績評価 に際 して,その基礎 となる因 果の客観的帰属が明瞭にはな しえない場合が多 いであろ う
。これ らの事情 に よって,個人の責任の境界 は裁然 とは判別 し難い。統制可能費 と統制不能費の 区分 も同様である。 このよ うに会計数値 とそれに対応す る管理者の責任 との関 係が唆味な場合 には, これまで検討 して きた予算差異の発生原因の特定 は,個 人のパーソナ リティによるバイアスを含むであろう。 この点が次の検討課題で
ある。
人の行動を規定す る要因 としては,その人の価値観 とか態度などが先ず考え
られようが,それよりもより深い所で行動を規定 しているのは,その人のパー
ソナ リティであると言われている
。人が どの様なパーソナ リティを持 っている
かを知 ることによって,その人の行動の予見が可能 になる。 パーソナ リティは,
様 々な観点 か ら定義 され,測定 され るが, ここで は,制御所在
(Locusof Control )に関す る研究を取 り上 げる。人 は,一般に自分の行動の結果 につい
て,その成功あるいは失敗をある特定の原因に帰属 させ る傾向を もっている。
責 任会計 と予算差異 原 因 の知 覚 153
どの様 な原因に帰属 させ るか は,その ときどきの状況 によるけれ ども,しか し, さらにその人個人の側で一定の傾向を持 っていると主張 され る。それは, 自分 の行動 の結果 を, 自分の内にあると考え られ る原因に帰属 させ る傾向 と, 自分 の外 にあって, 自分の力のおよばない と考え られ る原因に帰属 させ る傾向であ る。これ ら
2つの傾 向のどれに傾 くかにつ いて,その程度 に個人差がみ られ る。
すなわち,「 人 には,個人差があ って,成功や失敗あるいはそれによ って もた らされ る賞や罰を 自分 自身の行動や属性か ら生 じ そ して,それに依存す ると 感 じる程度,あるいは成功や失敗が 自分の外 にある力によって コン トロール さ れ, 自分 自身の行動 と無関係 に生 じると感 じる程度 に差が あ る
」 (Rotter,
1966)と主張 され る
。成功や失敗が 自分の行動の結果ではない と知覚 され る場合 には,それ は一般 には運やチ ャンスによって生 じた ものであるとされ る。あるいは, 自分のおか れた環境が複雑で予測で きない とい う知覚を持つよ うになる。物事を この様 に 知覚す る人 は,外部制御所在
(externalcontrol )を持 ってい る人 と して分 類 され る。 これに対 して,物事が 自分 自身の行動 に全面的に依存 してお り,相 対的に外部の力 には影響 されないと知覚 され る場合 には,そのひ とは,内部制 御所在
(internalcontrol )を持 っている人 として分類 され る
。内部所在 は, 事の成否が 自分の行動次第であるとい う信念を持 っているために,外部所在 よ りも, 自分のおかれた環境を コン トロール しようとす る積極的な働 き掛 けを行 う
。外部所在 は,一般 に内部所在 よ りも他人 の影響 をよ り多 く受 ける傾 向を もっている
。図表 8 パ ー ソ ナ リテ ィ (制 御 所 在 ) と原 田帰 属 (N‑56)
因 子 組織関係
内部 組織 タスク 予算 部下 組戟
原因 関係 困 難 妥当 運 努力 調 整
制御所在 ‑0.43* ‑0.12 0.07 0.03 0.05 ‑0.29' ‑0.26+
154 商 学 討 究 第 42巻 第2・3
号
制御所在のパーソナ リティと予算差異の発生原因の因子得点 との相関を図表
8に示 して い る。明 らか に内部原 因の因子 と高 い相 関を持 って い る。 しか し,組織関係の因子 とは,プラスの相関を示すけれども,有意な水準には達 し ていない。 この因子 に高い負荷を持つ質問項 目は,部下の努力 と組織単位間の 調整,上下の意志疎通であった。 これ らの項 目との相関を別に取 ったところ, それ らは,有意であった。内部所在の人 は,そ うでない人 よ りも明 らかに予算 差異の発生原因を自分の制御の下 にあると知覚す る傾向にある。従 って,それ だけモチベーションも高い。
おわ りに
責任会計 は,モチベーションと業績評価 とい う統制会計の基盤に関わる概念 である。 この研究では,予算管理の実務 における予算実施担当者 による予算差 異の知覚 に焦点をあて,その認知構造 とモチベーシ ョンおよび業績 との関係の 究明を試みた。そ して,責任会計処理に関連 して取 り上 げ られてきた若干の統 制不能要因,すなわち製品構成の変化,固定費の賦課および部門共通費の配賦 の影響を,予算差異の原因帰属 に関連させて検討 して きた。 この研究は,図表
9
に示すような変数間の関係 として要約できる。
図表 9 この研究の概要
責任会計 と予算差異原 因の知覚 155
予算管理は,企業の基本的戦略に指導 されるマネ ジメン ト・コン トロールの 領域 において遂行 され る。外部環境の変化に応 じた組織戦略の実施 は,マネジ メン ト・コン トロールの主たる担 い手である中間管理階層 にある管理者 によっ て展開され る。日常業務の中で, 外部環境の変化や市場競争 に対処す ることが,
この階層 に課せ られ る主たる要請であろう
。環境の不確実性が高い場合 には, とりわけ組織の境界領域 にある管理者のイニ シャテイブの発揮が求め られる。
それゆえ,そこでは計画 と統制の一体化 ・不可分性が主張されるのである。
この ことが とりわけ明瞭に現れているのは,差異の発生原因 としての製品構 成の変化である。製品構成の変化 は,外部の社会的 ・経済的要因 と市場競争に その多 くを依存するであろうと予想 され る。 これ らの要因の多 くは,おそ らく 管理者の直接的な責任の外にありコン トロールできない要因であろう
。それゆ え,製品構成の変化に対す る管理者の知覚に関心が もたれたのであるが, この 予算差異発生原因は,当初の予想 に反 して, 自己の努力や能力などの内部原因 と強 く関連づけ られて知覚 されていた。 このような知覚 は,産業構造転換期 と 呼ばれる現在の企業戦略を反映 し, さらには,恐 らくは予算管理をテコとした その戦略実施を背景 とす る,管理者による組織 目標の十分な受容を意味 してい るのであろう
。この ことは,マネ ジメン ト・コン トロールの効果的な実施の行 動的な意味における基盤 となるものである。
責任会計は, コス トを個人の責任に結び付 けて把握す ることであ り,そのさ い,責任会計処理 において もっとも問題 とされるのは固定費の配賦であった。
さきに述べたように, ここでの解析では,固定費,および統計的には有意な相 関を示 さなか ったけれども,部門共通費の配賦 は,モチベーションと業績に関 しては,責任会計で主張 され るとお りの不利な影響を示 している。予算差異の 原因が 自己の内的な原因 として知覚 されることが,モチベーションを促進す る 効果を もた らすのであるが,固定費の予算業績 に対す る影響 は,心理的には予 想通 りマイナスの効果を持たざるをえないようである。
管理会計の文献 においては,予算や標準原価 に基づ く業績評価 にさい して,
責任会計基準の適用が主張 されて きた。 しか しなが ら,企業実務 においては,
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