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シスプラチンによる腎傷害発生機序:

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100 麻布大学雑誌 第 29 巻 2017 年

37

回麻布環境科学研究会 一般学術講演

10

シスプラチンによる腎傷害発生機序:

傷害ミトコンドリアとオートファジー

○大田 尚暉,一宮 光希,中村 啓成,荻原 喜久美,納谷 裕子,島田 章則 麻布大学 生命・環境科学部 病理学研究室

【背景および目的】

抗がん剤シスプラチンは有効な化学療法剤として 様々な腫瘍の治療に使用されている。しかし,臨床 現場では重篤な副作用として腎傷害が問題となって いる1)。 腎傷害の発生にシスプラチン投与後の腎組織 における活性酸素種および炎症の関与が報告されて いる2)。 特に,傷害ミトコンドリア由来の活性酸素種 による尿細管上皮細胞傷害仮説が注目されている(図 1)。

本研究では,シスプラチン投与後のラット腎尿細 管上皮細胞におけるミトコンドリアの傷害像および 生体防御反応としてのオートファジーによる傷害ミ トコンドリア除去(マイトファジー)に注目し,病理 学的解析を行った。

【材料および方法】

Wistarラット 6週齢 オスにシスプラチン20mg/kg を腹腔内投与し,24, 48, 72時間後に剖検を行い,以 下の方法で解析を行った。

1. 血清の分析: BUN,クレアチニン,総AST,ミト コンドリア由来AST(以下m-AST)

2. 腎臓の病理学的解析 HE染色: 傷害像

免疫染色: ミトコンドリア(COXⅣ),オートファ

ジー(LC3, LAMP-1),活性酸素傷害(8-ニトログ アノシン)

電子顕微鏡解析:傷害ミトコンドリアおよびマイ トファジー

1. シスプラチン投与による尿細管上皮細胞傷害の発生機序

(2)

第 37 回麻布環境科学研究会講演要旨 101

【結果】

1. 血清検査

投与72時間後で最も高値を示し,特に腎傷害の指

標であるBUN,クレアチニンにおいて時間依存的に

有意な増加が認められた。このことから,シスプラ チン投与による腎傷害の進行が示唆された。

2. HE染色

投与24時間後の腎皮質に局所的な尿細管上皮細胞

の変性萎縮および空胞変性が認められ,投与24時間 後から72時間後にかけて経時的に傷害巣の拡大およ び壊死が認められた。

3. 免疫染色

尿細管上皮細胞内で経時的なCOXⅣ陽性像の増加 が認められ,特に投与72時間後においてミトコンド リアが凝集していると思われる強い陽性像が確認さ れた。一方,8-ニトログアノシンでは経時的な陽性 像の増加は見られず,投与24時間および48時間にお いて最も強い陽性像が認められた。また,COXⅣお よび8-ニトログアノシンで陽性像が一致している箇 所が見られたため,活性酸素種による傷害ミトコン ドリアの増加が示唆された。LC3およびLAMP-1に おいて,尿細管上皮細胞内で経時的な陽性像の増加 が認められ,特に投与72時間後において強い陽性像 が確認された。また陽性像が一致している箇所が見 られたことから,時間依存的なオートファジーの亢 進が示唆された。

4. 電子顕微鏡解析

経時的な傷害ミトコンドリアの増加および正常ミ トコンドリアの減少が認められた。また傷害ミトコ ンドリアの増加とともにオートファジー様の像が確 認された。

【考察】

シスプラチン投与24時間後から48時間後にかけて 傷害ミトコンドリアの増加およびオートファジーに よる傷害ミトコンドリア除去(マイトファジー)が誘 導される。傷害ミトコンドリアの増加がマイトファ ジーによる防御を上回ると,投与48時間後から72時 間後にかけて活性酸素種が関与した細胞傷害が進行 していくと考えられる。以上のことから,シスプラ チンによる腎傷害の発生に傷害ミトコンドリア・活 性酸素種が関与することが示唆された(図2)。オート ファジー促進剤処置による傷害ミトコンドリア除去 の細胞傷害軽減効果を今後検討したい。

【参照文献】

1) Hanigan, M. H. and Devarajan, P. 2003. Cisplatin nephrotoxicity: molecular mechanisms. Cancer Ther.1: 47–61.

2) Peres, L. A. and da Cunha, A. D. 2013. Acute nephro- toxicity of cisplatin: molecular mechanisms. J. Bras.

Nefrol.35: 332–340.

2. シスプラチン投与による尿細管上皮細胞の形態学的変化

図 2.  シスプラチン投与による尿細管上皮細胞の形態学的変化

参照

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